11
戦いたくない。戦う方法を知らないから。
争う意味を知らないから。誰かを傷つけることで、一体何が守れるんだろう。
見たことのない花が咲いている。息吹を感じられない風が吹いている。
この場所は不自然だ。世界の理と言うものが、全てごちゃ混ぜになってしまっている。そんな場所で私は一体何をすればいいんだろう?
不意に、遠くから響いていたヴィーナが止んだ。サラスヴァティさんに何かあったのかもしれない。
どうせ、戦うんなら。
誰かのために戦った方が、きっと性にあってるよね。
けれど、彼女の元へ向かっても、聞こえると思っていた剣戟は聞こえない。ただ、代わりにカルメンのヒールの音が聞こえる。
近づいてどれほど目を凝らしても、二人が広場の真ん中でくるくる踊る姿しか見えない。
「えーっと……。」
どうして二人はこんなことをしてるんだろう……?
「あら、ペルセフォネ。ごきげんよう。」
「うん。……その、二人とも何してるの?」
「んー。気分じゃないから踊ってるだけよぉ。」
わあ、気まま。
「えっと、戦ってるわけじゃない、んだよね?」
「今はね。」
カルメンさんはじいとこちらを見ると、くすくす笑った。
「春ちゃんも強いわよねぇ。」
「えっ?私は戦うのとかはあんまり…。」
「んーん。春ちゃんは攻めより守りの方が強いわよ。自覚ない?」
「う…。」
た、確かに戦うのでも、攻めるより守る方が得意な気はするけど…。カルメンさんは不思議な人だ。
さっき、指さしで私と戦ったのに、今はサラスヴァティさんとダンスをしている。
「あ。」
ふと、彼女の瞳がきゅうと細められる。獲物を見つけた猫みたい。
「いい事思いついちゃった。ふふ、行ってくるわぁ。」
「え、あ、」
「二人ともまたねぇ。」
「ええ、さようなら。気を付けて。」
カルメンさんはそのまま機嫌よさそうに去っていった。
「……そういえば、サラスヴァティさんのターゲットって。」
「いいのよ。」
サラスヴァティさんは楽し気に笑って、ピンとヴィーナをつま弾いた。
もしかしたら、二人は案外似た者同士なのかも?なんて。
12
わかんない、わかんない。全部わかんない。
好きとか嫌いとか、戦うとか守るとか。
好きだから守るじゃ、ダメなの?
「もし。」
雷君がママを殺そうとするのは、嫌いだからじゃないの?嫌われてる人のこと好きって、ママは辛くないの?
「もし。」
ママが守ってくれるのは嬉しいけど、でも、なんでママは雷君と戦って、
「かぐや姫。」
「んあーーーーっ!!!うるさいっ!」
なんなんっ、さっきからウチの後ろトコトコトコトコ!ひよこかっ!
ぐるんと後ろを振り向けば、后羿が立ってる。
「またアンタ?なに、もう…。」
「三秒以内に逃げないと死にますよ。」
「は?」
「許してくれるなら抱きかかえて逃げますが、よろしいですか?」
「え?な、は?」
「失礼。」
「ちょ、話を聞けーっ…!?」
瞬間、ばこーーーんっと大きな音を立てて、瞬きの間にさっきいた場所が吹っ飛ぶ。后羿の踏み込みなのか、それとも他の原因なのかすらわからない。
「んな、な、な!?」
「ふむ、意外に広範囲でしたね。」
なんで冷静なん、もう!こっちはわけわからんのに。
いろいろ怒ろうとして口を開いたところで、また遠くからばごーーんっ!結構音は遠いのに、ここまで振動が響いてる。
「……何が起きてんの?」
「おや、気になりますか?」
「そりゃ気になるでしょ!」
すぐ近くの建物の屋根にとんっと腰を下ろして、ある方向を指さす。
「……ルシファーとシャマシュですよ。見えますか?」
鐘塔の奥……市街地のほうが爆心地らしい。らしい、っていうのは、詳しい位置がどの辺なのかここからじゃ砂煙に紛れて見ることすらできないから。
「なんでこんなとこま、で…。」
見上げた后羿がやけに嬉しそうな顔をしてる。
「……なんか、テンション高くない?」
「バレました?さっきから割り込みたくて。」
「行きゃあいいじゃん。」
「流石に無粋でしょう。」
無粋とか気にするタチだったんだ、アンタ。
「……で、いつまでこうしてるわけ。」
「おや失礼。」
軽い口調のくせに丁寧に降ろして、立ち上がる。
「それでは、これで。」
「は!?ちょ、アンタ何しに来たわけ!?」
ウチの言葉に笑顔で返して、そのままたったかたーっと走っていく。
……マジで意味わかんない、アイツ!