本日から再開とさせていただきます。
1-1
鐘だけが鳴り響く広場の中、ただ砂埃が舞っていた。シャマシュ様もルシファーもどちらも一歩も動かなかった。
シャマシュ様の手を離れて広場に突き刺さったままの大剣が、その衝撃でいまだに低く鳴っていた。
「……今、私に何をした。」
それはもはや問いではなかった。寧ろ詠嘆に近いだろう。
今、何が起きたのか。その答えを知っているのはルシファーだけだった。宝具は確かに使用された。私と共有されている魔力量が減ったのを感じているから、それは間違いないはず。
だというのに、この場にいる誰もが宝具の効果を理解できなかった。
一言で言えば、何も起こらなかったのだ。けれど何も起こらなかったというにはあまりに空気が変容していた。
「なんだと思う、シャマシュ。」
「……………………。」
「完璧な箱庭の中で、知恵は余分だ。」
その後何を話していたのかは聞こえなかった。
ただ、剣を向けて微動だにしないシャマシュ様が。意地悪く囁くルシファーが。幻影にも似た戦場で彫刻のような静謐な美しさを放っていた。
「お前はどうする、正義の神。」
その後、ルシファーは瞬きの間に消え去った。
静寂。その場にいる誰もが動こうとしない。クック様と顔を見合わせる。
「……結局何だったのアレ。」
「わ、分かりません……。」
シャマシュ様はしばらく目を閉じてじっとしていた。私たちは動いていいものなのだろうか。動いたとして、何も言わずにこの場を去るのもなんだか失礼な気がした。
かといって、先ほどまで自分たちの命を狙っていたサーヴァントと仲良くおしゃべりするというのもおかしな話だ。
どうしたものか、なんて思っていた時。
「なーあー、シャマシュ。聞いてもいいか?」
「うん?どうかしたかな。」
いつの間に移動していたのか、海のライダー様がシャマシュ様の大剣をよじ登っていた。そのまま大剣の鍔に座ってシャマシュ様を見上げている。
「俺ってお前のターゲットなのか?」
「そうだね。」
「そっかー。次から俺を狙うのやめてみるとかどうだ?」
「逃げるのをやめてみようって提案したら、君は受け入れてくれるだろうか?」
「嫌だな!」
「私も同じ答えだよ。」
さっきまで狙う者と狙われる者だった二人が、普通に会話している。ちらりとクック様を見たら頭を抱えてしゃがみ込んでいた。痛々しい程の無言にその心労が伺える。
「あ、あの。」
「ん?どうした姫さま。」
「……とりあえず、ハウスに戻りませんか?」
「それもそうだね。しばらくすれば次の『使命』も通達されるだろう。聞き逃してはもったいない。」
シャマシュ様は海のライダー様を自らの肩に乗せて歩き出す。
……想像以上に仲良し、というか。さっきまでの光景が嘘だったかのよう。神さまと言うのはそういうものなのかしら?
「おーい、置いてっちゃうぞ!いいのかー?」
「私たちも行きましょう、クック様。」
「…………そうだな、うん……。」
頭を抱えたままのクック様とともに、ハウスへと向かった。