俺、船のライダー。
今、肩にマスコットが乗っています。
…………は?
「説明するのに、場所を変えよう。ついてきてくれ。」
全員が立ち上がる。それぞれ気ままに歩きつつ、さっきヴィンツェンツィオと呼ばれていた少年についていく。
え?
あの、この、俺の肩に乗っかってるミニマムキュートマスコットのことは誰もツッコんでくれないの?
え?
「おい、早く行こう!おいてかれるぞ!」
「え、あ、おう…。」
困惑する俺を置いて、皆はどんどん歩いていく。
俺らのことそんなに興味ないですか?
建物の外に出ると、確かに空は黄昏だった。
暮れなずむ太陽は一歩たりとも動こうとしないし、月もそうだった。
星が輝く一歩手前の暗さが、島全体を包んでいる。
空中庭園都市、というだけあって、それなりの広さのある島なのだろう。
風もない場所を歩いていると、まるで作られたミニチュアの世界に迷い込んでいるみたいだった。
ヴィンツェンツィオはとある建物に入っていき、エントランスホールを入ってすぐのところにある大きな扉を開けた。
「入ってくれ。」
示されたとおりに入っていくと、どうやら食堂らしい。
センスのよさげな調度品がお行儀よく並んでいる。
「この屋敷はハウスと呼んでいる。聖杯戦争の間、君たちの好きに使ってくれて構わない。
後で、皆の自室の鍵も渡しておく。とりあえず、お茶を淹れるから皆座ってくれ。」
示されたテーブルの上には、十四の箱が並んでいた。
おそらく、俺たちに向けたものだろう。
各々好きなところに座る。
「船のライダーと海のライダーはこっちだ。」
ヴィンツェンツィオに示された席を見ると、ご丁寧に箱が二つ並んでいる。もうセット扱いじゃん。
「ありがとさん。」
ヴィンツェンツィオの表情は見えない。
目元を布で覆っているからだ。
全員が座ったのを見た彼は軽く頷くと、話し始めた。
「まずは、皆。はじめまして。
僕はヴィンツェンツィオという。
さっきキャスターも言っていた通り、君たちが参加する聖杯戦争の監査役を務める。何かあれば、すぐに言ってほしい。」
相変わらず表情の読めない顔のまま、彼は続ける。
「ルール説明だ。
此度の聖杯戦争には、いくつかルールがある。」
…まあ、長いから要約する。
ヴィンツェンツィオはこんなようなことを話し始めた。
一つ、スティアには「戦闘禁止時間」があるということ。
決められた時間だけは、戦闘をしてはいけない。
一つ、今回はマスターがいない分、同じ陣営ごとに魔力リソースを共有する形を取る。
魔力リソースが減少するにつれて霊基に負荷がかかり、行動に支障が出る。
一つ、戦闘禁止時間の始めごろに、全員に同じ「使命」を課す。
その使命をこなすと、褒美がもらえる。
「褒美って?」
赤いジャケットを羽織った女のサーヴァント…。
先ほど、花のアーチャーと呼ばれていた女が聞く。
ほー、いい女だな。
「それについても、今から説明しよう。君たちの前にある箱を開けてみてほしい。」
言われた通り箱を開けてみると、掌に乗る大きさのボールのようなものが入っていた。
何かの金属でできており、先ほどの天球儀のように魔術的な文様が刻み込まれている。
持ち上げてみると、微かに光を放つ。
それはふわりと浮かび上がり、俺たちの周りをくるくると回る。
ナニコレ?
「それは【ステラ】。君たちの戦闘の手助けをするものだ。
試しに、手をかざしてみるといい。」
よくわからん。
けど、とりあえずやってみるしかない。
言われた通り、ふよふよ光りながら浮かぶそれに手をかざす。
「おお…。」
すると、いくつかのグラフと文字が浮かび上がってきた。
俺とマスコットくんのクラス、ライダー。
残存魔力。
そこから逆算した宝具使用回数、敵性存在の有無。
今の「使命」や自分のターゲットの欄は空白になっていた。
「そのほかにも、自陣営のステータスや宝具が見られるようになっている。必要があれば使ってくれ。」
ヴィンツェンツィオもまた、自らのステラに手をかざす。
「そして、先ほど言った通り…。君たちには魔力リソースを共有してもらう。
これらの回復方法は三つ。
一つ、与えられた使命をクリアして褒美…つまり、魔力リソースを得る。
もう一つは、サーヴァントを打破すること。
そして最後の一つ。それは、その日の戦闘時間を生き残ることだ。
前二つに比べると回復量は少ないが、まあ…。
生き残りさえすれば、最悪なんとかなると思ってくれればいいさ。」
成程な。
生き残りをかけた戦いってことに関しては、なんも変わらないわけだ。
「現状君たちに与えられている魔力は一律。
今以上の魔力量を保有することもできる。
まあ、ため込んでおけばいいというものでもない、使いどころは君たちの判断に任せるよ。」
魔力が一律というのは、平等ではあるが公平ではないな。
俺みたいに宝具や行動に魔力消費の少ないサーヴァントならまだしも、バーサーカーみたいに魔力消費の多い奴らも同じってコトだろ?
ま、ラッキーと思うことにするかね。