かちり、かちり。部屋の時計が音を立てる。
罰のキャスターの部屋に連れ込まれてから、かれこれ五分以上は黙ったままに見つめられている。
罪のキャスターにとって、これほど居心地の悪い空間はなかった。
罰のキャスターも、それを理解していた。
彼女が時折こちらに視線を寄越しては気まずそうに目を逸らすのが、罰のキャスターにとっては滑稽だった。
目の前に座る自分の相棒――罪のキャスターを見ながら、罰のキャスターは考えた。
はて、この女はこんな風だったろうか?
自分の知っているこの女はもっと、野花と戯れる風のような、月を彩る星のような強かで柔らかな女だったはずだが…。
「おい、――――。」
「っな、なぜ私の真名を知っているのですか!?」
「お前、何のつもりだ?」
ぱしりと腕を掴まれる。
緑の瞳がまっすぐにこちらを見た。
その瞳はあまりにまっすぐにこちらを射る。
しかし、何のつもりだと問われても、彼女には想像もつかぬことだった。
彼は一体何を聞きたいのだろうか。
自分の何を知っていると言うのだろうか。
黙ったままでいるのも癪だった。
そもそもなんだって、自分がこんな風に詰め寄られなければならないんだ。
睨み返すと、罰のキャスターは微かに笑った。
「そうだ、お前はそういう女だったはずだ。」
「さっきから何の話をしているのですか。私はあなたのことなど知りません。」
「喪に服すのはよせ。お前がそんなことをしても、何の意味もない。」
「っ……。」
罰のキャスターが、服をつまみ上げた。
黒と濃紺を基調としたドレスは、確かに喪服のように見える。
「肌を晒さず、黒に身を包み…。それで己の罪を償うつもりか?」
「っあなたには!」
「関係ないって?そんなわけないだろ。俺たちはコンビなんだ。
お前に辛気臭い顔をされちゃ、こっちまで調子が出ないってもんだ。」
苦々しげに目を逸らす彼女の顎を掴み、無理やり自分のほうを向かせる。
「俺を見ろよ。俺から目を逸らすな。」
「……離しなさい。」
「嫌だね。」
罰のキャスターにとって、抵抗はスパイスに過ぎない。
その奥にある秘密や本心を暴いて、心をかき乱すための…。
ほんのひと手間に過ぎない。
「いいか。そうやって喪に服すフリをするのはやめろ。嘘の鎧なんざ脱ぎ捨てちまえ。」
「嘘なんかじゃありません、私は本気でっ!」
「じゃあ何故ここにいる?お前には叶えたい願いがあるんだろう。
本気で彼の死を悔い、今までの出来事を反省しているってんなら、お前はここに来るべきじゃなかった。
願いなんて持つべきじゃなかった。」
罪のキャスターが息を飲むのが分かった。
ああ、相変わらず純な女だ。
「素直になれよ。お前は願っちまったんだ。それがどんな願いであれ…。
……俺を、見ろ。」
彼女は目を閉じる。
手袋で秘匿された柔い指が、折れそうな程に握りこまれている。
暫しの沈黙。
閉ざされた瞳が次に開かれたとき、そこには決意があった。
鋭く美しく輝く銀色の決意だった。
「きひっ…いい眼だなぁ、キャスター?」
「……あなたのお名前は?」
「____。」
名を告げてやると、彼女微かに息を飲んだ。
「ご忠告感謝します。あなたの言うことを聞くのは癪ですが…。今だけは、その言葉に従いましょう。」
「そうこなくっちゃな。これから付き合っていくんだ。……せいぜい頑張ろうぜ、相棒?」
Episode "loser"
――――fin.
罰のキャスター
165cm
灰色の髪に妖しく光る緑の瞳。クラゲ髪。耳がピアスだらけ。
女性とも男性ともつかない美しい肢体。背中に大きな傷がある。黒を基調としたシックな服をラフに気崩している。背中がぱっくり開いてるデザイン。
罪のキャスター
147cm
柔らかな栗色の髪に、淡く穏やかな緑の瞳。ふわふわのローシニヨンにしている。眼鏡っ娘。
黒と濃紺を基調とした喪服のようなドレス。黒いタイツを履き、手袋をつけているためほとんど肌の露出がない。