聖杯戦争では時に「最優」と称されるクラス、セイバー。
此度の聖杯戦争でセイバーとして召喚された二騎は今……。
何故か、模擬試合をしていた。
戦闘禁止時間でも戦っていいかとヴィンツェンツィオに聞いたところ、こんな答えが返ってきたからだ。
「ふむ。まあ、怪我しない程度にね?」
どのような戦いをするか。
お互いの真名や素性などよりも、二人にとってはそちらの方がよっぽど重要だった。
故に、屋敷から離れた広場にて、二人は剣を振るう。
自らの身の丈と同じほどある大剣を軽々しく振り回しながら、陽のセイバーが雷のセイバーに突進してくる。
彼が動く度、絢爛な装飾が揺れる。
雷のセイバーはそれを必要最低限の動きでいなしつつ、様子を見る。
「慎重派なのかな。」
避けられて、いなされてばかりでつまらないな。
極東の刀というのはこういう戦い方がデフォルトなんだろうか。
あーあ、もう少し楽しめそうだと思ったんだけど。
…ちょっと遊んでみようか。
陽のセイバーは、突如として強く踏み込むと剣を大きく振りかぶり、そのまま雷のセイバーに向けて振り下ろす。
それまでのような小手先の攻撃ではなく、力を込めた一撃だった。
まるで「逃がさない」とでも言うかのような。
雷のセイバーは避けることなく、真正面からそれを受け止めた。
金属と金属がぶつかり合う音。
しかしそれは、高く美しい音色ではない。
暴力的なまでの、低く長い音だった。
大きな鋸のような形状をした白金の剣は、重く圧し掛かる。
「っははは!!今のを受けるか、雷のセイバー!」
「貴様…今のは殺す気だろうが。」
雷のセイバーの刀ががりがりと音を立てる。
相手を蹴り飛ばすようにして陽のセイバーから離れ、体勢を整える。
が、その隙を与えぬほどに素早く、陽のセイバーは攻撃を続ける。
「チッ。」
あのデカい剣を振り回しながら、蜂のような素早さで移動するとは。
いったいどういう了見だ、あのサーヴァントは。
思考の隙も与えられないほど苛烈な攻撃。
それをいなし続けるのも、恐らく時間の問題だろう。
瞬間、陽のセイバーは後退したかと思うと、その勢いのまま大剣を雷のセイバーに向けて投擲した。
雷のセイバーはすぐさま跳躍し、大剣を回避する。
しかし彼が空中で見たのは、自分と同じ高さまで跳躍している陽のセイバーであった。
咄嗟に身を捻り、突き出された拳を回避する。
あいつ、殴りやがった。
「セイバーなら剣を使え、阿呆が!」
悪態をつく雷のセイバーを面白そうに見下ろしながら、彼はなおも攻撃を止めない。
このまま受け身ではだめだ。
理解するがはやいか、大地を踏み込み陽のセイバーに向けて突進する。
禍々しい気配を帯びた刀が、陽のセイバーに叩き込まれる。
「おおっ?」
「チッ……。」
軽い驚きを見せながらも尚その場に立つ陽のセイバー。
身体を拘束する呪いをものともしないかのように動く。
しかし先ほどより確実に隙が多くなった。
剣を交える。
陽のセイバーは強かった。
それと同じくらい、雷のセイバーも強かった。
互いに互いの実力を認めるには十分な時間であった。
しかし、まだ足りなかった。
確かにこの男は強い。
しかし二人が最も知りたいことは一つである。
戦場にて、お互いに何を思うのか。
雷のセイバーは彼の瞳に慈愛を見た。
正義を見た。
正しさゆえの、厳しさを見た。
陽のセイバーは彼の瞳に怒りを見た。
正義を見た。
正しさゆえの、愚かさを見た。
それだけで十分だった。
一歩引き、刀を納める。
それを見て、陽のセイバーは笑った。
「満足か?」
「ああ。……貴様は。」
「私も満足したよ。ああ、いい戦いだったね。」
「どの口が…。」
彼らはただ、自らの真名を告げた。
「此度の戦いが良いものになることを願っているよ。」
「そうか。」
雷のセイバーはしばし黙り、心の内を咀嚼した。
この男になら、秘密を打ち明けておいたほうが得策だろう。
「どうかしたかな。」
「セイバー。……僕は、」
Episode ”justice”
――――fin.
陽のセイバー
185cm
金髪に赤い瞳。目元は柔らかく、それでいて鋭く熱い。
均整の取れた美しい肉体。金と銀の美しい装飾を身に着けている。白を基調とした古代中東風の服装。
雷のセイバー
182cm
黒髪に紫の瞳。目元が隠れるように長い。光のない瞳。ただ一点だけを見つめるような冷めた瞳をしている。
細身の体に、書生風の薄墨の着物。黒い上着を羽織っている。