二重人格者が送る青春の物語   作:マグマ焼き豆腐

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不穏

 

「………」

 

「………」ガサゴソガサゴソ

 

…まっずい、ワカモが目の前にいる。

ちょっとシャーレが気になって先生の目を盗んで先に入ったけど…やめときゃよかった。

 

『おい、カイトどうすんだこの状況』

 

「…バレずないようにして先生が来るまで待機かな」

 

「最初からそこにいるのは気づいています。貴方が何もしてこないからこちらも何もしていないだけです」

 

『バレバレじゃねぇか』

 

「バレてたのかよ」

 

「私は探し物をしていますので、そこで大人しくしておいてください」

 

「はーい」

 

『受け入れちゃうの?』

 

ワカモに言われた通り静かにしている。…今のうちに作戦会議でもしようか。

 

「エル君このあとの対策委員会編で話がしたい」

 

『あー、前言ってた黒服とカイザーの契約を切るって話だな?』

 

「うん、正直なんにもしなくてもストーリー通り事が進めば勝手に切れるんだけどさ…」

 

『俺達がいるからストーリー通り進むか怪しいって言いたいのか?』

 

「うん、だからどうにかして契約を切れさせる作戦を立てないと」

 

『そもそもとしてなんでカイザーと黒服は協力してんだっけ?』

 

「確か黒服側はホシノちゃんが欲しい、カイザー側はオーパーツを手に入れる為にアビドス高校を消したい、両者の狙いがアビドスだから協力している…こんなんだった気がするよ」

 

『なるほど…最近の黒服の動向から見てなんかホシノは諦め気味になってる気がするんだよな』

 

「それは僕も思った、恐らく僕が実験体としているからすぐに手に入れる必要もないと考えているのかもね」

 

『なら、黒服をアビドスから離れさせるのが可能性として一番高そうだな』

 

「そうだね、後はどうやって離れさせるかだけど…」

 

『一番の問題はそこだよなぁ…あいつがどうやったらアビドスから手を引くか…』

 

僕達が今後の事に悩んでいると'カチャ'と銃を構える音が鳴る。

流石にワカモの気に触ったかなと思いワカモの方へと視線を向ける。しかし銃口は僕の方へと向いていない。

 

僕は嫌な予感がして銃口の先を見るそこには、先生がいた。

 

「……は?」

 

理解ができなかった。ワカモって最初に先生に一目惚れするんじゃなかったの?なんで銃口を?ゲーム内で描写されてないだけで本当は銃口を向けていたのか?僕達がいるからバグが起きたのか?

 

そんな事を考えている間にも時間は進んでいくトリガーへと指がかけられ遂に銃弾が発砲される

 

「(そんな事今はどうでもいい!急げ…!)」

 

高速移動で銃弾と先生の間に立つ。

 

「(この距離だと大鎌を振れない、先生に当たる可能性がある…。体で受けるしか…!)」

 

『チッ、どけ!カイト!』

 

「(え?うわっ…!)」

 

エル君に無理矢理体から追い出される。

エル君…一体何を…!

 

 

 

「ッラァ!!邪魔だぁ!」

 

俺はメリケンサックで銃弾を弾き落とす。

へへ、まじでこの武器便利だな。

 

「……!」

 

"…カイト!"

 

「残念だったなぁ、厄災の狐ぇ!そう簡単に先公を殺されてたまるかよぉ!」

 

「……」

 

「どうしたぁ?俺に怖気づいたかぁ!?」

 

「あ、あぁ…」

 

「…?おい、どうした?」

 

何か様子がおかしい。…なんか耳が若干赤いし…熱でもあんのか?

 

「…熱でもあんならさっさと…

「し、失礼いたしましたー!!」

……帰…れ……はぁ?」

 

そう言い厄災の狐はそそくさとシャーレから出ていった。

 

「……え?は?ん?何事?どうゆうこと?」

 

俺が突然の出来事にフリーズしていると先公が慌てた様子で話しかけてくる。

 

"カイト!大丈夫?怪我はない?"

 

「……」

 

"カ、カイト?"

 

「…ん?…あぁ、うん大丈夫だ。どこもケガしてないぜ」

 

"よかった…"

 

そうか、今先公は俺をカイトと認識しているのか。いつもの癖で無視しちまった。

 

「先公の方こそ怪我はないか?」

 

"うん、カイトのおかげでね"

 

「そいつは良かった」

 

『なんか僕の名前呼ばれてるのにエル君が会話してるの変な感じがするんだけど…』

 

「(今は我慢しろ。後で変わる)」

 

『えぇ…あ、そういえば、あのメリケンサックどっから出したの?僕そういうの持ってなかったんだけど』

 

「(黒服から説明あったろ?お前が貰った鎌には変な機能がついてて所有者によって武器が変わるってやつ)」

 

『あぁ、あれね。忘れてた』

 

「(割と重要だから覚えとけ?まじで。今回みたいなケースもあるだろうし)」

 

『わかった』

 

 

「お待たせしました」

 

"あ、リンちゃん"

 

俺達がくだらない話をしている間に七神リンがやって来た。

 

「リンちゃんと呼ばないでください。そちらの方は、確か…十六夜カイトさん?なぜここに?」

 

「先公が死んじまったらやべぇからな、見回りしてただけだぜ」

 

「そうですか…ですが、今ここは関係者以外立ち入り禁止ですので勝手にうろちょろしないで下さい」

 

「へーい、次気をつけやすよ」

 

「はぁ…」

 

呆れたようなため息を吐きながら七神リンはテーブルの上からタブレット端末を手に取る。

 

「先生、こちらが連邦生徒会長が残した物。'シッテムの箱'です」

 

"…… タブレット?"

 

「見た目は普通のタブレットですが、製造会社、システム構造、その他諸々全てが不明。私たちでは起動できなかったものですが先生ならこれを起動させられるでしょう」

 

"……"

 

「…邪魔にならないよう私達は離れています。カイトさんもこちらへ来てください」

 

「はいよ」

 

先生から距離を取り七神リンの隣へと行く。

 

数十秒後先公は何かを呟いたボソリと呟いたあとシッテムの箱を起動出来たようで目を閉じピクリとも動かなくなった。

 

『…!?』

 

あんな感じでシッテムの箱の中にはいるんだな。

 

「…そうだ、カイトさん。貴方にも渡す物が」

 

「…俺に?」

 

「連邦生徒会長からお会いした時に渡して下さい、と言われていました。…こちらです」

 

「…腕?」

 

七神リンがシッテムの箱があった机とは別の机から真っ白の機械的な腕を渡される。

…なんか手の甲にシャーレのマーク刻まれてんだけど何?シャーレに当番になれと?めんどくさ。

 

「連邦生徒会長自らが作成した義手らしいです。機能するかは、試していない…試せないのでわかりません」

 

「だろうな」

 

義手をもらい腕に付け、手を閉じたり開いたり、肘を曲げたり伸ばしたりしてみる。……すげぇ、元の腕と一切変わりなく動かせる…。関節とかの概念もないから普段曲がらねぇ方向にも曲がるから元の腕より良いかもしれない。

 

「…この感じからして、まぁ特に問題ないな」

 

「それは良かったです。……すみません少し席を外します」

 

七神リンが電話を取り、この場を離れる。

…恐らくサンクトゥムタワーの制御権が連邦生徒会に渡ったのだろう。

そろそろ帰るか、もう俺がここにいる意味はない。アビドスに戻るとしよう。

 

「カイト、チェンジだ。アビドスに戻るぞ」

 

『………』

 

「カイト?どうした?」

 

『え?あぁ…なんでもないよ、行こうか』

 

「…?」

 

俺はカイトへ体の主導権を渡す。

 

『じゃ、俺は寝てるから着いたら起こしてくれ』

 

「あ…うん、わかった」

 

そう言いエル君は空中で寝た。

…背中とか痛くないのかな、ブリッジみたいな体勢になってるけど…。

 

「まぁ、いいや。ちゃちゃっと帰ろ」

 

シャーレを後にし高速移動でアビドス高校へと向かう。

 

「………」

 

先生が起動するときに呟いたパスワード…

 

 

 

我々は望むジェリコの嘆きを       我々は覚えている七つの古則を

 

 

 

あれはプレナパテスがシッテムの箱を起動した時のパスワード…。ということはこの世界はプレナパテスの……

 

滅ぶ運命の世界。

 

……空は紅く染まり、あちこちでヘイローが砕け散り、…先生とシロコちゃんが色彩に接触され世界を滅ぼしに行く…。

 

そんな世界……認めるかよ。

この世界の運命を変えられるのは…この先のことを知ってる僕しかいない。

……僕は皆みたいに強くないし優しくもない。

 

どうにかしてこの世界の運命を変えるんだ。

ストーリーが捻れて歪むのなら、更に捻じ曲げて歪ませて原作のような世界を…!

 

…だけど今やるべきことはアビドスのこと、世界のことは一旦後回しだ。

 

滅ぶ運命だとは言ってもすぐに滅ぶ訳じゃない。猶予はある。

先生を守りつつ動けば大丈夫な筈だ。

 

「…もう僕の体の事情なんてどうでもいい。目が崩れ落ちても四肢が全部もげようと。僕が先生を守り抜いてハッピーエンドへ導くんだ…」

 

 

捻れて歪んだ終着点を回避する物語は今始まった

 





次回から対策委員会編……の前にカイト達のプロフィールや設定的なやつを書きます。
その次に対策委員会なんですが、対策委員会編の構造あんまり決まっていないので、またかなりの期間を空けるかもしれなです。すみません…。
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