能力名がオノマトペはダサすぎるって! 作:スーパー・カミオカデン
マジで。
なんやかんや、バビロニカちゃんと盛り上がっていたら1日潰してしまった。夕焼けの中を、オレは1人歩いている。
「──アナタですわね。最近、バビロニカお姉さまのお気に入りになった生徒というのは」
「んあ?」
ふと。
クッキー美味しかったなぁ、と生まれ育った不毛の小島ではまず味わえなかった甘味の素晴らしさを思い出していると、横合いから声をかけられた。
そちらに振り返り──振り返るよりも前に、誰かに突き飛ばされたことで地面に倒れ込む。突然の痛みに苛つきながら下手人の正体を探ったオレは、轟音と共に真横に倒れてきた樹木に飛び跳ねることになった。
「──無事か、おい!」
「おお、ロックスくん。どういう状況か訊ねても……??」
倒れてきた木は植えられていた街路樹だろう。そしてそれをやったのは、オレと、オレを突き飛ばしたであろうロックスくんを睨みつけている、目の前のお姉さまと思われた。
金髪縦ロールの彼女は、目を血走らせ眉間に深く皺を刻み、なんとも凄まじい形相である。
「っ、こいつは最近お前が知り合ったS階級のヤツと交流があったんだ。それで──」
「最低階級のオレとバビロニカちゃんがつるんでるのが許せない、と」
「お姉さまの名前を気安く……!!」
憎悪をふんだんに含んだ声と共に、縦ロールが手を振るう。それに合わせてこちらに不透明な何かが射出され、転がる様にして移動すると、先ほどまでオレたちがいた地面が大きく抉れた。
さて、なんの能力者だ?
「〜〜〜っ、あいつは『
言いながら、鼻先から右頬に向けて走る痛々しい裂傷の痕に指を這わせるロックスくん。それを確認した縦ロールが、下卑た笑みを浮かべた。
「誰かと思えば、ロックスでしたのね。貴方はわたくしの能力の怖さと痛さを知っているでしょう? ……そいつを差し出すのなら、お前は見逃してやりますわ」
……その発言に、そういえば彼は一時期上級生徒に奴隷同然の扱いを受けていたんだったか、と情報を思い出す。
「悪いな。今の俺はもう、あんたの知ってる頃の俺じゃねぇ。友達を売ったりなんかしねえよ」
「そうですの。じゃあ死ね」
縦ロールが、先ほどと同じ様に能力を行使する。明確な殺意が込められた不透明なチカラの塊。当たれば問答無用で肉を抉られる。それが容赦なく射出されたのだ。取るべき行動は1つ。回避だ。
「──あっ。そう言えばロックスくんはどうしてここに?」
「ええ、今聞くのか!? お前がS階級のヤツから脅されたりしてないか心配で見張ってたんだよ!」
「君、良いヤツすぎひん……??」
多少なりトラウマになっているはずの相手であろうとも、果敢に挑む。善性の塊みたいなロックスくんをかっこよく思いつつも、同時に申し訳なくなってしまう。普通にお茶会してただけなんて口が裂けても言えない。
「余裕そうですわね、これならどうかしら!?」
縦ロールが今度は両手を振るう。さっきまでの1振り1つの射出とは異なり、幾つもの塊が風景を揺らがせながら飛来した。
両腕に銀色のエネルギーを纏い、盾の様に形を整えたロックスくん。その姿を視界の隅で捉えながら、オレは縦ロールへ向けて踏み込んだ。
「!? 馬鹿、なにして…!?」
「あら、自殺志願者だったのかしら!!」
叫ぶ2人。その目前で、オレは雨霰の如く飛来する『裂断』の全てを──避ける。
「「えっ」」
ふっふっふ、驚いているな。
こちとら忌み子として流刑地じみた場所に流され、不毛の地で生きるか死ぬかな毎日を過ごしてきた身。こんな攻撃わざわざ能力を使うまでもないわ!!
「くっ、このっ! えぇい、ぬるぬると……全体的に動きが気持ち悪い!」
「普通に傷つく」
縦ロールからの評価に若干ダメージを負いながら、肉薄と言える距離まで接近したオレ。そのまま脚を振るって
「ぎぃ…!? こ、この!」
負けじと能力を発動する縦ロール。
飛来したそれをぬるりと避け、再び太ももに鋭い蹴りを放つ。
「づァっ!!」
意外と応用が効くらしく、剣の様に振るわれた『裂断』をカエルみたいな姿勢で伏せて回避。そこから身を捻って足払い、縦ロールは体勢を崩して地面へと倒れた。
闘いの最中に、それは決定的な隙でしかない。となればやることは勿論──。
「あがぁ!? どっ、どうして太ももばかりを狙いいったぁい!!」
ズパァン! と小気味の良い音が響き渡る。
♭
「──うぐ、あぐぅ。このわたくしが、家畜同然の最低階級の奴らに負けるだなんてぇ……!!」
陽が落ち、薄暗くなった通路を1人の女子生徒が歩いていた。縦ロールの髪型が特徴的な彼女は内股で、壁に手をつきながら蝸牛じみた速度で歩みを進めていく。
とある生徒を相手取った結果、彼女は敗退した。それも相手は一切能力を使わないで、だ。惨敗どころの騒ぎではない。
制服に隠されて分からないが、大きく腫れ上がった両太ももに感じる痛みとは別に、プライドを粉砕された彼女は大粒の涙を流しながら通路を進み続ける。
……と。
「………??」
暗闇の中。視界の先に誰かが立っていることに気付く。一言も発することのないその人物の正体を、目を凝らしたことで彼女は理解した。
「ば、バビロニカお姉さまぁ!?」
どうしてこんな時間にこんな場所に、という疑問よりも先に歓喜の気持ちが勝った彼女は、敬愛してやまない人物との邂逅に、自分の両足の状態も忘れてそちらへ駆け寄ろうとした。力が入らず、痛みも合わさりその場に無様に倒れ込むが、それでも夢中で手足を暴れさせ、少しでも近寄ろうとする。
芋虫の様に這いずる少女を前に、バビロニカは小さく言葉を吐き出した。
「──先ほど見ていましたが、貴女は私の友達を害そうとしましたよね」
「はい!」
「それじゃあ、どうすれば良いかは分かりますよね?」
「はい!」
言って。縦ロールの少女は自慢であろうその髪を掴み取ると、自分の首に巻きつけて締め上げる。
ぎちぎちと音を鳴らしながら、恍惚の表情を見せる少女。次第に泡を吹き始めた彼女は、呻き声と共に床へ倒れ込んだ。
……気絶したらしい。
「…流石に殺してしまうのはあれっ、あれですのでぇ」
そんなことをしたら、折角出来た友達に嫌われてしまう。
ので、煮えくりかえったハラワタを抑え付け、彼女は我慢する。
「──うへっ。うぇへへっ。それにしても、友達とは、良いものです。明日は何をしましょうかっ!」
一応の溜飲を下げた彼女は、明るい声を発しながら通路を進んでいく。
──彼女の名前はバビロニカ。バビロニカ・“P”・ラホー。
見る者全てを魅了する、『
書いてくれ…。