無敵のヒーロー(自称)   作:猫耳の人

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変わる事、それは大変な事だが、不可能な事じゃ無い






第二十六話 地獄の轟くん家with俺

プールでの体力強化を終えた次の日、俺は轟に教えられた病院に足を運んでいた、現在の時刻は9時半、指定の時間まではもう少し時間がある

轟もう来てるのかな

 

「...お?」

 

辺りを見渡すと、見慣れた紅白ヘッドが目に映った、轟だ、どうやら30分前に到着していたのは同じだったらしい、心なしか顔がワクワクしているように見える、あいつも小動物的な可愛さあるよなぁ

とりあえず「もう着いてる」とメッセージを送り、轟がこっちに来るのを待っていると...

 

「...?」キョロキョロ

 

...俺に気づいてないのか、スマホを見たあと、辺りをキョロキョロと見渡す轟、片目が見えない俺が視認できてるから轟が視認できないはずがないんだが...

まあ良いか

 

「よ、早いな轟」

「......どちら様ですか?」

「回能だよ、ボケが始まったのか?」

「.....?」

 

どうやら俺を俺と気づいてなかったらしい、まぁ仕方ない、俺の今の服装は、下はグレーのカーゴパンツ、上は両肩部分がリングで繋がれた濃いめのグレーのノースリーブ、そしてその上に、白いオーバーサイズのゆったりとした上着、それをしたから1段目のボタンだけ止め、肩落としスタイルで着用、そして、フレームが丸い伊達メガネを着けている、初見だったので俺だとわからなかったようだ

俺だと知った時の轟の顔が宇宙猫状態だった、おもしろ

しばらくしてようやく理解したのか、フリーズした状態から回復した

 

「...早いな」

「お前もな、じゃあ行こうか」

 

轟と合流し、病院に入ってお見舞いの手続きをする、病室に向かう途中、看護師の人や患者の人にめちゃくちゃ見られたそらそうか、いつも一人で来るイケメン君がこんな美女*1連れて来たら驚くわな

 

「ここだ」

 

少し歩くと、扉の横に「轟冷様」と書かれた病室にたどり着いた、そこそこ高いところにあるのね

病室に入る前にゴミなどがついていないか確認し、最後に変なところが無いか見る

よし、おかしなところなし

 

「準備できたか」

「おう」

 

短く言葉を交わし、準備ができたことを確認すると、轟が扉を開け、病室に入って行く、俺も後に続くように入る

病室は簡素な作りで、机とベッド、そして洗面所がある、少し病室を見渡すと、ベッドに座り、窓辺から外を眺めている白髪の女性を見つけた

 

「...お母さん」

「...あら、焦凍...と...」

「...初めまして、回能彩目と申します」

「あぁ、この前焦凍が話してた...会いたかったわ、初めまして、轟冷です」

 

顔を合わせて自己紹介する、第一印象はとても儚げな人、それこそ、氷のように触れたら溶けてしまいそうな程に、しかし、顔を合わせて一言二言言葉を交わしてみると、とても柔らかい表情を見せる人という印象に変化した、笑っている顔が轟によく似ている

 

「焦凍から話は聞いていたのだけれど...こんなにかっこいい女の子だったなんて...」

「...轟?俺の性別話してないの?」

「...そういえば話してねえ」

 

んもー!何してんのよこの天然ボーイは!冷さん完全に俺のこと女子だと思ってるじゃん!!

 

「あのー...俺...男です...」

「....え?」

 

ほらー!!!!冷さん固まっちゃったじゃん!!ぽかんとしてるよ!!ちゃんと話しておきなさいよ轟くぅん!!

数分後、ようやく理解が及んだのかフリーズから回復する冷さん

 

「ご...ごめんなさい...少し驚いてしまって...」

「いえいえ、紛らわしい格好してる俺にも非がありますし、よく間違われるので気にしないでください」

「わりぃ回能...」

「轟も謝らなくて良いよ」

 

笑いながらそう言うと、二人とも申し訳なさそうな表情をやめて柔らかい笑みを浮かべた、マジでそっくりだなこの二人

取り敢えず立ち話もなんだからとの事でパイプ椅子を二つ出してくれた冷さん、申し訳ないな、俺は取り敢えずここにくるまでに買った白い花を花瓶に供えてから座る、花を見て優しく笑った、成る程な、花が好きなのか

 

「花...お好きなんですね」

「ええ、貴方が供えてくれた花がとても綺麗で...」

「それはよかったです...」

「....」

「....」

「....」

 

会話が続かなぁい!!この二人わりかし無口な方なのね...どうやって会話を広げようか

とは言ったものの、別にこの空気が居心地悪いと言うわけではなく、なんとなく安心すると言うか、優しい気持ちになると言うか、そんな気がする

 

「...学校でのこと...聞いても良いかしら...」

「...ええ、勿論」

「わかった」

 

冷さんに学校のことを聞かれたので、轟と一緒にそれに答えていく、轟が訓練でビルを凍らせたとか、俺が天井に立ったりできるんだとか、この前の訓練では轟に凍らされそうになったとか、俺が轟にどんなことをもたらしてくれたのか、とか、そんなとりとめのない、普通の話だ

冷さんは終始楽しそうにニコニコしながら話を聞いてくれた、心の底から楽しんでいたのがわかる、途中クスッと笑ったり、優しそうな目で轟を見たり、とても良いお母さんだなと思った

 

「...一つだけ...良いかしら、回能くん」

「はい、なんでしょうか」

「...もし、貴女が嫌でなければ...右目を見せてもらえないかしら」

 

俺にそう話しかけてきた冷さんの顔は興味津々といった様子だった、すごく大人っぽい人だと思ったけど...お茶目なところもあるのね、このあたりが轟にも遺伝したのかねぇ

 

「えぇ、構いませんよ」

 

取り敢えず冷さんのお願いに答えるべく、おれは前髪を上げ、常備しているヘアピンで前髪を止めた、現れたのは、瞳が()()()()()()をしている右目、左目とは違い、イラストのようになっているソレは、普通の人間とは違う異質さを放っていた

 

「...とっても可愛らしい右目ね」

「...初めて言われましたよ、そんな事」

 

少し意外だった、気味悪がられると思ったのだが、愛しむような表情でそう話す冷さん、その顔には取り繕いや嘘は見受けられない、紛れもない本心からの言葉だと理解できた

 

「...初めて見た」

 

無意識だろうか、そう呟くと轟が俺の右目に指を伸ばすのが見えた

 

「見えないだけで痛覚はあるからな?やめてくれよ?」

「...わりい」

 

そんな俺たちのやりとりを見てクスクスと楽しそうに笑う冷さん、その後は学校であったことや、轟とどんなふうに過ごしているかなど、様々なことを話した、そうこうしているうちに一時間が経ってしまう

時の流れってのは早いもんだ

 

「...そろそろ終わりの時間か...」

「また来るよ、お母さん」

「えぇ、楽しみにしてるわ、回能くんも、また」

「ええ、また」

 

別れの挨拶をし、病室を出る俺たち、時刻はもうすぐ12時だ、二人でどこか店によって昼飯でも食おうか、そう言おうとしたその時、轟がスマホを見て声を上げた

 

「回能、このあと時間あるか?」

「あるよ、今日暇だし、何?」

「姉さんがもし昼飯食ってねえならウチに来て食えって言ってる、来てくれるか」

「迷惑じゃないなら」

 

まさかのお呼ばれ、轟のお姉さんが俺を呼んで轟家に来て欲しいらしい、俺としてはありがたい限りだが...

 

「わかった、姉さんにメールしとく」

 

うーん行動力、凄いなこの子、天然なのに即決て、少し待つと、轟のスマホから通知音が鳴り、メールの到着を伝える

 

「...姉さんが飯を作ってくれるらしい、ここから少し歩けば家に着く、着いてきてくれるか」

「わかった、じゃあ行くか」

 

俺は轟の隣を歩き、轟と共に轟家へ向かう、途中途中、轟がスマホで調べた珍しい事を色々と見せてくれた、めちゃくちゃ楽しそうな顔してた、マジで小型動物だなコイツも、犬だよもう

歩く事数十分、正面には立派な和風屋敷が...

エンデヴァーの家でもあるなら納得か....

 

「入ってくれ、姉さんたちが待ってる」

「...おう」

 

思わず惚けてしまった俺にそう話しかける轟、八百万の家とはまた違ったベクトルで豪邸だ、ここに住んでたのか轟...

轟に招かれて家に入ると、エプロンを着用し、眼鏡をかけ、白髪の中に赤色が少し混じったショートヘアの綺麗な女性がいた

 

「初めまして!焦凍の姉の冬美です!」

「初めまして、轟くんの友人の回能彩目です」

 

冷さんに似ているが、こちらの女性はとてとにこやかに笑う、この人が轟のお姉さんか...轟家はみんな美形なのか...

 

「立ち話もあれだし入って!」

「ではお邪魔します...」

 

俺は靴を脱いで揃えてから轟家に上がり、轟と冬美さんに案内され、後をついていくように歩くめちゃくちゃ広いな...うわ、中庭まである、マジで家デカいな

 

「着いたぞ」

 

轟が俺に声をかける、障子扉を開けると、美味しそうな料理が色々並んでいた、そして先に自分の席に座り、スマホをいじっている白髪の男性も見つけた

 

「...ん?姉ちゃん、その子誰?」

 

男性が俺たちに気がつき顔を上げた、視線は俺に向いている自己紹介をしようとすると

 

「焦凍のお友達、前に話したでしょ、回能君だよ」

「あー!君が回能君か!焦凍から話は聞いてるよ、俺は夏雄、よろしく!」

「えと...改めて、回能彩目です、よろしくお願いします」

 

俺の目の前まで歩いて来てそう話す夏雄さん、デッカ、顔はどっちかっていうと冷さん似だけど...体つきはエンデヴァーだな...

 

「話の続きは食べながらしましょう?ご飯が冷めちゃう」

「ああ、さ、回能君も座って、姉ちゃんの料理すげー美味いから」

「それじゃあ失礼して...」

 

俺は轟の隣に座る、てか二人には俺が男だって話してたんだな...いや、轟の話の流れから理解したのか?まぁ良いや、それにしても本当に美味しそうな料理だ、やべっ、よだれ出てきた

 

「「「「いただきます」」」」

 

四人で食卓を囲む、俺が最初に箸を伸ばしたのは唐揚げだ、まだ湯気が出ている、おそらく出来立てだろう、唐揚げを一つ掴み、口の中に放り込む

 

「...!」

 

一口噛むと、中からジワっと肉汁が溢れ出る、それだけじゃない、衣もサクサク、下味もしっかり付けられている、醤油ベースだ

噛めば噛むほど味が溢れ出てくる、食感、味、香り、全てで楽しめる、美味い、ご飯が進む

 

「はふ...ん...はむ...ん〜...!」

「...すげぇ美味そうに食うな」

「んっ...仕方ないだろ、美味いんだから」

 

いやマジで、めちゃくちゃ美味いよ、冬美さん料理上手すぎる、今度教えて貰おうかな

 

「そう言ってもらえて嬉しいな...ねぇねぇ、焦凍は学校でどんな感じなの?」

「あ、それ俺も気になる、聞いて良いかな」

「学校での轟ですか...」

 

2人に聞かれ、俺は学校でのことを思い出しながら話す、冷さんに話したことしかり、体育祭でのこと、普段の訓練でのこと、授業でのこと、休み時間でのこと....

話を聞いている二人はとても笑顔だった、轟の天然エピソードを話すと、冬美さんはクスクスと笑い、夏雄さんは爆笑していた、轟も恥ずかしそうに頬を赤くするが、嫌がっているわけではないのがわかる、可愛いやつめ

その後も食卓を囲みながら轟の話や、俺の話をした、終始とても良い雰囲気だった

 

「「「「ごちそうさまでした」」」」

 

食事を終え、食器の片付けに入る、いやー...美味かった...

食器を洗っている冬美さんの元へ食器を届ける、なんだかとっても嬉しそうだ

 

「...回能くん、焦凍とお友達になってくれて...本当にありがとう」

「...?どうしたんですか急に」

 

冬美さんが食器を運んで来た俺にそう話す、思わず立ち止まってしまった

 

「...焦凍...ちょっと前までずっと怖い顔してて...あんな風に笑うようになったのは本当に最近なの」

「....」

 

確かに、体育祭まではずっと目付き悪かったな、瀬呂にガンギマリとか言われてたし

 

「...あんな風に笑うようになってからは...よく君ともう一人のお友達の話をするの、ことあるごとに「回能が...」って、すごく楽しそうに」

「....」

 

あいつそんな事話してたのか...なんかこそばゆいと言うか...嬉しいような恥ずかしいような...

 

「だから...回能君と...もう一人のお友達がさ、焦凍の事を助けてくれたんだなって思って...すっごく嬉しくて...」

 

冬美さんが優しく微笑みながら俺の方を向き、俺の手を握る、少し冷たいが、そこには弟を思う優しい姉の温もりを感じた

 

「だから...これからも、焦凍と仲良くしてあげてほしいな」

「....勿論ですよ、アイツと一緒にいると楽しいですし」

 

少し照れ隠しをしながらそう言うと、冬美さんの表情がとても嬉しそうなものに変わった、んー、美人さんだ、あと手!!すごい柔らかい!!生まれてこのかた女性に手を握られた事なんてないのに!!*2

さて、食器も洗い終わり、夏雄さんと轟と合流し、冬美さんと四人で居間に戻ろうとすると...

 

「...ん?回能くんじゃないか」

「....エンデヴァーさん」

 

曲がり角で、フレイムヒーローエンデヴァーに遭遇した、髭や目の周りが燃えていない、オフだからだろう

突然目の前に現れたデカい男にすこしびっくりしてしまったものの、エンデヴァーを見上げる、目が合った、顰めっ面で何を考えているのか読めん

 

「...遊びに来たのか、ゆっくりして行くといい」

 

おろ?案外そんなに感じ悪くはないぞ?もっと感じ悪いのかと思ってたが...俺が轟の友達だからかね、なんて考えていると

 

「...飯食ったしもう帰るんだよ、俺も帰る」

「...そうか」

 

夏雄さんが機嫌悪そうにそう話す、轟も少し表情が固くなった、するとエンデヴァーは表情を変えずに一言だけそう呟き俺たちの横を通り過ぎようとする、冬美さんの表情も少し悲しそうに変わった

ふーむ、エンデヴァー単体じゃ別にそんなにだけど...轟家ってなると途端に雰囲気悪くなるなあ、まぁ轟の話を聞いた以上納得だけど...

どれ、お兄さん、ちょっと一肌脱いじゃおうかな

 

「待ってください、エンデヴァーさん」

「...なんだ」

 

俺がエンデヴァーを呼び止めると、エンデヴァーが振り返る、俺はエンデヴァーと目を合わせ、少し微笑みながら...

 

「少し、俺と二人でお茶しましょう」

「.....」

「「「!?」」」

 

そう言い放つ、エンデヴァーの表情は変わらない、轟達の表情は驚愕に染まっていた、はは、おもろ、さて、エンデヴァーの返事は...

 

「...少しだけだ、茶を用意してくる」

「ありがとうございます」

 

そう言ってエンデヴァーは台所に向かった、それを見届けて、俺は轟達の方を振り返る

 

「てなわけで、少しエンデヴァーさんとお茶してから帰りますので...夏雄さん、少し待ってていただけませんか?」

「....わかったよ...」

 

俺がにこやかにそう話すと、夏雄さんが少し不服そうに了承してくれた

 

「茶の用意が出来たぞ」

「分かりました、では、行ってきますね」

「回能...変な事されたら叫べよ、すぐ助けに行くからな」

 

エンデヴァーの事なんだと思ってんだ君は、少なくともヒーローだぞ彼、とりあえず轟には笑顔を返し、俺はエンデヴァーの後ろを着いて行った

 

「....大丈夫かな...」

「...大丈夫だと思うが...」

 

冬美さんと轟の呟きが微かに聞こえた、少しお茶するだけさ、何も心配せんで良いよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈エンデヴァーside〉

 

「少し、俺と二人でお茶しましょう」

 

第一印象は不気味な奴だった、表情こそ柔らかいが、こちらを探ろうとしているのが見え見えだ、いや、隠そうとしていないのか、いずれにせよ、表情の下に隠れた本心が透けて見える、断ろうかと思ったが、その思考に悪意がない事も伝わってきた

 

「...少しだけだ、茶を用意してくる」

「ありがとうございます」

 

俺は茶を汲みに台所へ向かう、緑茶で良いだろう

 

「茶の用意が出来たぞ」

「分かりました」

 

俺が呼びかけると、回能は焦凍達と言葉を交わしてから着いてきた、一体何を考えているんだコイツは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈回能side〉

 

エンデヴァーに案内され、たどり着いたのは、畳の上にテーブルが一つある部屋だ、普通の部屋と違う点があるとすれば、部屋の角に仏壇が置いてある事だろうか

 

「....座るといい」

「失礼します」

 

俺とエンデヴァーは対面で座る、取り敢えずお茶を一口...緑茶だ、美味しい、さて、一息ついたところで改めてエンデヴァーの方を向く、相変わらずの仏頂面だ

 

「それで、何の用だ」

「いやなに、少し貴方と話をしてみたいと思いまして」

 

俺がそう話すと、エンデヴァーは少し顔を顰めた、まぁ仕方ないか

 

「...今日、轟に誘われて冷さんのお見舞いに行ってきました」

「....」

「轟から少し話は聞いていましたけど、聞いていたような事はありませんでしたよ」

 

体育祭で轟の話を聞いた時、最初冷さんは精神状態が不安定なのかと思った、が、話してみると実際はそんな事は無く、とても優しい人だとわかった、轟の顔に火傷の跡がある以上、轟の言っている事に嘘は無いのだろう、そんなことがあったにも関わらず、冷さんは轟と和やかに話をしていたし、轟自身も変わり、自ら歩み寄り始めたのだ

つまり、皆変化し始めている

 

「...何が言いたい」

「....エンデヴァーさん、貴方のオリジン...ヒーローになろうと思ったキッカケはなんですか?」

「.....」

 

俺がエンデヴァーにそう問いかける、すると、エンデヴァーは少し黙ってから...

 

「...貴様には関係のない事だ」

「....」

 

少し不機嫌そうに言葉を漏らした、不敬とかそう言う類のものじゃない、触れられたくない、所謂地雷ってやつだ

だけど、轟家は今のままじゃダメだ、てなわけで、今から()()()を行う

 

「...轟燈矢、13歳、瀬古杜岳にて下顎骨の骨の一部を残し焼死」

「.....!!!」

「個性は...ヘルフレイム、へぇ、貴方と同じ個性だったんですね...ほう、火力は貴方以上だったと、でも冷さん...お母様の体質を受け継いでしまい、個性を使用する度に火傷を負っていた...」

「貴様...!!」

 

何故そのことを、と声を荒げ、俺の胸ぐらを掴むエンデヴァー、炎が漏れ出している、そりゃそうだ、轟家しか知らない事を俺が的確に言い当てたのだから、エンデヴァーの顔、そして()に、怒りが現れる、それだけではない、焦燥...後悔...そして...

 

「後には引けない...ね」

「っ...!!」

 

エンデヴァーの顔がわずかに曇る、何故俺がここまで的確に当てられるのか、言わずもがな、俺の個性だ

今引いた能力は「サードアイ」、文字通り目に関する能力、能力の概要はたった一つ、「心が見える」、それだけだ

都合の良い能力だって?そりゃそうだ、それが(都合がいいのが)俺の個性なんだから

 

「....自分ではオールマイトを超えられないと知った貴方は、自分の夢...いや、野望を子供に託した、第一子が轟燈矢さんだったわけだ」

「.....」

 

エンデヴァーの力が少しずつ弱くなっていく、酷な事をしている自覚はある、だが、今のままではダメだ

 

「貴方は見なかった、いや、見たくなかった...傷付いていく息子を...自分に縛られる燈矢さんを...」

「っ....」

 

完全に力が抜け、俺の服から手を離すエンデヴァー、俯いてしまい、顔が見えない

 

「轟...焦凍が生まれて、そちらに力を入れ始めた時、外の世界を見るように言ったが...それでも個性の使用を辞めず...傷を増やしていったと...」

「...辞めてくれ...」

「貴方の背中を追いかける彼を、貴方は見なかった」

「辞めろ...!」

「そのせいで、燈矢さんは亡くなった、それから後に引けなくなり、焦凍に虐待紛いの訓練をし、冷さんが壊れて今に至る...と」

「辞めろと言っている!!」

 

再び俺の胸ぐらを掴むエンデヴァー、その瞳は揺らいでいるように見える、もう少しか

 

ガシッ

 

「辞めませんよ、No.2」

「....!」

 

俺の胸ぐらを掴むエンデヴァーの腕を掴み、真っ直ぐとエンデヴァーの目を見据える

 

「...もう一度聞きます、轟炎司さん、貴方はどうしてヒーローを志したんですか?」

「....俺は...」

 

目を逸らそうとするエンデヴァー、自分の罪を理解しているからだろう、だが

 

「目を逸らしてはダメです、罪を理解しているのなら、その罪を受け止めなければなりません」

「っ.....」

 

俺の言葉に、エンデヴァーは座り込み、俺もそれに合わせて目の前に座る、少し落ち着いたのか、言葉を発しはじめた

 

「...俺は...誰よりも強くありたかった...No. 1になれる程に...強くなりたかった...」

「.....」

 

弱々しく言葉をこぼすエンデヴァー、火を放出する個性なんてのはありふれた個性だ、そんな個性を、ここまで昇華させたのは、ひとえに彼の努力の賜物であると言えるだろう、エンデヴァー(努力)なんて名前をつけるくらいだ、相当な努力家なのだろう

だが、その努力家な面が、彼を歪ませてしまった

 

オールマイト、平和の象徴たる、名実共に、不動のNo. 1

 

そんな強い光に焼かれてしまった、努力を重ね、本気で追い抜こうとする度に、自分とオールマイトの差を痛感した、追いつこうと必死に努力を重ねた、しかし、差が縮まることは無かった、それどころか、どんどん引き離されていく気がする

強さへの貪欲さ、超えたい相手の背中を追いかける程に実感する

 

格が違うと

 

「.....俺は...奴を...オールマイトを...超えたかった...」

 

一位と二位の差、その数字は「1」ではない、数千、数万、あるいはそれ以上かもしれない

だから、自分の子供に、自分より強い個性を継がせ、超えてほしかった、自分の夢を、子供に叶えて欲しかった、その結果が今だ

燈矢さんが死んで、後に引けなくなった、ここで引いたら、燈矢さんの死が、努力が、無駄だったと言うことになってしまうから

だから、自分だけじゃなく、家族まで追い詰めてしまった

エンデヴァー自身も、そのことは理解はしている、だから、止まれなかった、止まるタイミングを見失ってしまった

 

「...エンデヴァーさん、貴方は、これからどうしたいですか?」

「......俺は...」

「...やり直したいと言うのなら、私もお手伝いしましょう」

「.....!」

 

ここで止まれるのなら、まだやり直せる、皆が変わり始めたのだ、エンデヴァーだけが出来ない、なんて事はない

誰にだってやり直す権利はある、ただ、エンデヴァーはそれが見えなくなっているだけだ、なら、俺は道を照らし、示してやるだけだ、かつて轟にそうしてあげたように

 

「...君は...いったい何なんだ」

「ヒーローですよ、みんなを笑顔にする、ただのヒーローです」

 

顔を上げたエンデヴァーは、過去の冷たい目ではなく、やる気に満ちた、輝く目をしていた

 

「....まだ、間に合うのだろうか」

「挑戦ややり直すことに、遅いなんて事はありませんよ」

「....きちんと向き合えるだろうか」

「それは貴方次第です、でも...そう言えるなら、きっとできます」

「....情けないな、末っ子と同い年の子供に鼓舞されるとは」

「ははは、確かにそうですね、ですので、これから頼り甲斐のある背中を見せてください、俺にだけじゃなく、轟達に、ね?」

「...ああ」

 

良い顔出来るじゃないですか、さっきまでの不機嫌な仏頂面よりも数百倍良いですよ

これからエンデヴァーは変わっていくだろう、勿論良い方向に、少しずつだが、彼も前に進み始めたのだから

 

「...胸ぐらを掴んでしまい悪かった」

「気にしないでください、殴られる事も覚悟してましたし」

「肝が座りすぎじゃないか?」

「よく言われますよ」

 

笑いながらそう話す俺に、エンデヴァーは複雑そうな顔をした、そりゃねぇ?地雷の上でタップダンスしてたようなモンだし?むしろこの程度で済んでよかったと思ってるよ

 

「...茶が冷めてしまったな」

「俺は冷たいお茶の方が好きですよ」

「そうか...」

「...また時間があればお茶してください、相談くらいなら乗りますよ」

 

エンデヴァーの方を振り返り、俺は自分の連絡先をエンデヴァーに渡した、それを受け取ったエンデヴァーは、少し驚いたような顔を見せたあと...

 

「ああ、そうさせてもらおう」

 

とだけ言い、俺の連絡先を登録した

 

「時間もアレですし、行きましょうか」

「...そうだな」

「ここを出たら、最初にやることがありますよ」

「...ああ」

 

エンデヴァー自身も、やるべき事を理解していたようだ、なら多くは語らない、俺はその手伝いをするだけさ

というわけで、俺たちは部屋を出て、轟達が待つ居間へ向かった

 

ガラッ...

 

 

「!!回能...!と...」

「や」

「.....」

「....親父...」

 

俺が帰ってきたのを確認し、安心したような顔を見せる轟だったが、そのすぐ後ろに立つエンデヴァーを見て、顔が不機嫌そうになる、対するエンデヴァーは少し気まずそうな顔だ

 

「...帰る前に、エンデヴァーさんから皆さんに言いたいことがあるそうです、はいどーぞ」

「....」

 

俺に促され、エンデヴァーが居間の座布団に正座する、轟達三人と対面する形だ、俺はひっそりとエンデヴァーの後ろに立つ

 

「....」

「....」

「....」

「....」

「....」

 

.....いや喋りなさいよ、何のために来たんですかエンデヴァーさん?ここで黙ってたらわからないでしょうに...まったく...

 

「はい!黙ってないで喋る!!何のためにここに来たんですか!」ペチンッ

「う...うむ...」

 

俺がエンデヴァーの背中を軽くペチンと叩くと、エンデヴァーは少し考えたあと口を開く

 

「...夏雄、冬美...そして...焦凍...今まで、すまなかった」

「....!」

「え...急にどうしたの...?」

「.....」

 

夏雄さんは驚き、冬美さんは困惑、轟は少し驚いたような顔を見せたあと、すぐに顔を戻した

 

「...先程、回能君と話をした」

「....」

「....俺は...自分の野望の為に...お前たちを見ていなかった...それをわかっていながら...目を逸らしていた...」

 

頭を下げてそう言うエンデヴァー、そんな彼を見た轟達の反応は...

 

「....なんだよ...いきなり...今更心変わりしたってか...?」

 

まず声を上げたのは夏雄さんだ

 

「心変わりしたって...焦凍や母さんにした事...燈矢にぃの事だって...なかったことにはならねぇんだよ!!」

「....」

「俺たちの事何も見てなかったクセに都合が良すぎるんだよ!!」

「...」

 

夏雄さんが出て行こうとする、仕方ない、助け舟を出してやろう

 

「事件解決率No. 1ヒーロー、誰だか分かりますか?夏雄さん」

「...オールマイトだろ」

「不正解です」

「はぁ?」

 

突然の俺の質問に意味がわからないといった反応をする夏雄さん、やっぱり、知らなかったんだな

 

「正解は「エンデヴァー」です、事件解決率だけ見れば、オールマイトよりエンデヴァーの方が上なんですよ」

「....それがどうしたっていうのさ」

「...夏雄さん、この事、()()()()()()()?」

「.....!」

 

知らなかった、そう、知らなかったのだ、つまりどう言うことか...

 

「夏雄さん、貴方も、エンデヴァーさんを見ていなかった」

「.....」

「つまりお互い様なんです、お互いに、お互いの事を何も見ていなかった」

「....」

 

ハッとしたような表情を見せて立ち止まる夏雄さん、これで少しは話を聞いてくれる気になったかな

 

「....さ、続きをどうぞ」

「...ありがとう」

 

その後はエンデヴァー自身が、どう変化していくのかを轟達に話していった、要約すると...

 

これからは皆を見る、だから、俺を見ていてくれ、胸を張って、自分の父親はNo.2ヒーローであると言えるような、そんな父親になって見せる

 

とのこと、かっこいい事言うじゃん

 

「....今色々考えても...多分俺は許せないと思う...」

「...」

 

そう声を上げたのは夏雄さんだ、まぁ、今決断しろって言ってるわけじゃないし、ゆっくり考えてくれると良いな

 

「...でも...回能君に言われて、俺もお前の事何も見てなかったんだなってわかった...許せるかはわかんないけど、見ててやるよ...」

「....ありがとう」

「....」

 

そう言い残し、夏雄さんは出て行った、轟は...

 

「.....親父が変わりてえって思ったなら、良いんじゃねえか」

「.....」

「.....夏にいと同じように、許せるかはまだわかんねぇ、けど、見てるぞ、親父」

「.....ああ」

 

概ね良い反応じゃなかろうか、何はともあれ、これで少しは良い方向に動くだろう、なんて考えていると、冬美さんが俺に話しかけてくる

 

「...回能君はさ...どうしてそこまでしてくれるの?」

「....人の笑顔が好きなんですよ、だから、こんな風に暗いところを見せられると、どうしても明るくしたくなる、ただの自己満足ですがね」

「....そうなんだ...回能君なら、良いヒーローになれそう」

「ありがとうございます」

 

そう言う冬美さんの顔は、とても嬉しそうに笑っていた、良い笑顔だ

 

「やっぱり冬美さんは笑顔の方が似合いますよ、暗い顔より何倍も綺麗です」

「き....///もう!大人を揶揄わないの!」

「あはは」

 

ちょっと冬美さんをからかうとそんな反応が返ってきた、轟から揶揄うのが好きだって事も聞いてたらしい

その後は少しエンデヴァー達と会話をしてから解散、家に帰ることにした

 

「...今日はありがとな」

「俺がしたくてやった事だよ、礼はいらん」

「そうか...回能」

「なに?」

「...またな」

「...うん、また」

 

そう呟きながら小さく手を振る轟、それに応えるように、俺も轟に手を振って帰る、いやー、冬美さんの料理美味しかったな、また食いたい

来週にはいよいよ林間合宿が始まる、どんな合宿になるかはわからないが....ここで力をつけて、みんなを笑顔にできるような、最高のヒーローになってみせよう

 

 

 

 

━━━━━━

 

お♡ま♡け♡

〈冬美side〉

 

「.....」

「冬美先生?どうしたんですか?」

「えっ!?あっ...!なんでもないです!!なんでも!!」

 

回能君がうちに来てくれた日の翌々日、私は学校で仕事をしている

...んだけど...

 

「......」

「...冬美先生?具合が悪いのなら今日は帰っても...」

「あ...いえ!大丈夫です!!」

「そお?なら良いのだけれど...」

 

...あの日以来、気がつけば回能君の事を考えてしまっている、仕事をしていても、書類の整理をしていても、気がつけば、頭の中に回能くんが居る

 

「....」

 

もしかして私....いやいやいや、相手は焦凍と同い年の高校生...6つも離れてる男子だし...

なんて、頭の中で理解はしてるんだけど...

 

『やっぱり冬美さんは笑顔の方が似合いますよ、暗い顔より何倍も綺麗です』

 

....最後に回能君に言われたあの言葉が頭から離れない、本人は多分、揶揄うつもりで言ったんだろうけど...

うぅ〜...なんでこんなに意識しちゃうの〜...

 

「うう〜...」

「冬美先生...やっぱりどこか具合が悪いんじゃ...」

「大丈夫です!!」

「そ...そう...」

 

とにかく!今は仕事に集中しなくちゃ!!お父さんも夏も変わろうとしてくれてるんだ、私も頑張らなくちゃ!

*1
お前男だろ、あと自分で言うな

*2
実は本人が気づいていないだけで、握られた事はある




みなさんどうも猫耳の人です
筆が乗ってしまいつい長くなってしまいました
てなわけで、この時点でエンデヴァーに変化の兆しです、そして、お察しの通り、フラグガタチマシタァ!
てなわけで、次回からいよいよ林間合宿変です
映画編はあとでまとめて書き、並べ替えで間にねじ込みます
次回もお楽しみに

回能彩目は

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