無敵のヒーロー(自称)   作:猫耳の人

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絶対に救けたい、その想いだけが....







第三十二話 どうしようもなく、救けたい

 

〈no side〉

 

ヴィランの襲撃があった直後、ブラドキングが通報していたようで、ヴィランが去っていった15分後に救急や消防が到着した

被害は...生徒40名の内、ヴィランのガスにより、意識不明の重体が13名、重・軽傷者10名、無傷で済んだのは16名だった、そして...

 

行方不明、2人

 

うち一名が、プロヒーロー一名と共に、大量の血痕を残し、行方不明となっている、そして、プロヒーロー一名が頭を強く打たれ重体...

 

一方で、ヴィラン側は三名の現行犯逮捕、彼らを残し、他のヴィランは跡形もなく姿を消した

彼らの楽しみにしていた林間合宿は、最悪の結果で幕を閉じた

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

翌々日、緑谷は、あの後すぐに合宿所近くの病院に運ばれた

二日間の気絶と悶絶を繰り返し、高熱にうなされたらしい、その間リカバリーガールが治癒を施してくれたり、警察が訪ねたらしいが、緑谷は一切覚えていなかった

 

(お母さんの字......)

 

ふと視界に入ったベッドの隣にあった皿に入ったリンゴ、そこに置かれていたメモを緑谷が見つけた

 

「...洸太くん...無事かな...」

「あー緑谷!!目ぇ覚めてんじゃん!!」

 

緑谷が目を覚ました直後、病室の扉を開けて上鳴達が入って来た、それを皮切りにゾロゾロと入って来るA組の生徒達...

 

「テレビ見たか!?学校今マスコミやべーぞ」

「春の時の比じゃないよね...」

「メロンあるぞ、皆で買ったんだ!デカメロン!」

「迷惑かけたな緑谷....」

「ううん...僕の方こそ...A組皆で来てくれたの?」

 

常闇の言葉に緑谷が言葉を漏らす、その言葉に、飯田が答えた

 

「いや...八百万君が頭を酷くやられここに入院している、昨日丁度意識が戻ったそうだ、だからここに来ているのは彼女を除いた...」

「....「17人」だよ」

「爆豪と回能いねえからな」

「ちょっ轟...」

「.....」

 

居ないメンバーは、八百万、爆豪、回能の三人、うち二名は、ヴィランに誘拐されてしまっている、手が届かなかったから、奪われてしまった

 

「...オールマイトがさ...言ってたんだ、手の届かない場所には救けに行けない...って...だから、手の届く範囲は必ず救け出すんだ...」

 

だが、緑谷は手の届く場所に居ながら、手を伸ばせなかった、必ず救けなければならなかった、緑谷の個性は、その為の個性なのに...

 

「相澤先生の言った通りになった...体...動かなかった...」

 

緑谷の瞳から涙がこぼれ落ちる

この場にいる誰もが同じ気持ちを持っている、爆豪も、回能も、どちらも救けられなかった、手が届かなかった

 

「━━━━━じゃあ今度は救けよう」

 

突如そう言い放つ切島、一体どういう事だと一同の視線が切島に向けられる

 

「実は俺と...轟さ、昨日も来ててよォ...そこでオールマイトと警察が八百万と話してるとこ遭遇したんだ」

 

切島曰く、八百万がB組の泡瀬に協力してもらい、ヴィランの一人...脳無に発信機を付けることに成功したらしい、そして、その信号を受信するデバイスをオールマイトと警察に渡しているのを見たとの事

つまり、その受信デバイスを八百万に作ってもらい、自分達で爆豪と回能の救出に向かうというのだ

その言葉を聞き、飯田がかつて、復讐に囚われていた時の事を思い出す、他者に、友に迷惑をかけ、傷つけてしまった事を

 

「オールマイトの仰る通りだ!!プロに任せるべき案件だ!!生徒(おれたち)の出て良い舞台ではないんだ!!馬鹿者!!」

「んなもんわかってるよ!!」

 

声を荒げる飯田の言葉に、少し食い気味に答える切島、どちらも友を眼前で失った悔しさも、何もできなかった無力さがある、だが、今回は飯田の言う通り、彼らの出て良い事件ではないのだ

しかし...

 

「でもさァ!!何っも出来なかったんだ!!ダチが狙われてるって聞いてァ!!なんっっも出来なかった!!しなかった!!ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!!」

 

その言葉は悲痛な程に、何も出来ずに、おめおめと友を奪われた、何もしなかった自分に腹が立つ、そう言外に告げていた

 

「切島落ち着けよ...こだわりは良いけどよ...あとここ病院だぞ...!」

「飯田ちゃんが正しいわ」

「飯田が!皆が正しいよ!!でも!!なァ緑谷!!まだ手は届くんだよ!!」

 

切島が緑谷にそう呼びかける、緑谷も、その言葉を聞き、先程までの虚な瞳ではなく、生気のある、輝きを持った瞳に戻っていた

 

「えっと...つまり、ヤオモモから発信機のヤツ貰って...それ辿って...自分らで爆豪と回能の救出に行くってこと....!?」

 

芦戸がわかりやすくまとめてくれた

だがしかし、ヴィランは生徒達を殺害対象と言い、爆豪と回能は殺さず攫った*1、生かされるだろうが、殺されないとも言い切れない、ましてや、切島や轟達が行ったら、確実に殺されるだろう、だがそれでも...

 

「俺と切島は行く」

 

二人の瞳には決意が宿っていた、もはや何を言っても止まらない

 

「ふっ━━━ふざけるのも大概にしたまえ!!」

「待て、落ち着け」

 

憤慨する飯田を障子が宥める、左腕には包帯が巻かれており、荼毘に焼かれたとわかる

 

「切島の「何も出来なかった」悔しさも、轟の「眼前で奪われた」悔しさもわかる、俺だって悔しい、だが、これは感情で動いて良い話じゃない」

 

同じく、目の前で奪われた障子がそう話す、A組で特に冷静である彼の言葉は、その場でヒートアップしている彼らを落ち着かせた、彼も悔しいのだ、それでも、頭を冷やし、冷静に物事を考えている

 

「オールマイトに任せようよ...戦闘許可は解除されてるし...」

「青山の言う通りだ、救けられてばかりだった俺には強く言えんが...」

「皆爆豪ちゃんと回能ちゃんが攫われてショックなのよ、でも冷静になりましょう、どれ程正当な感情であろうと、また戦闘を行うというのなら...ルールを破るというのなら、その行為はヴィランのそれと同じなのよ」

 

口々にそう告げる一同、加えて梅雨ちゃんのキツい一言、定められたルールを破るのなら、いくらヒーロー候補生であろうと、ヴィランとなんら変わりはない...

 

「お話中ごめんね、緑谷くんの診察時間なんだが...」

 

ヒートアップした彼らの空気は、緑谷の担当医によってリセットされた、診察時間との事で、皆が緑谷の病室から出ていく、そんな中...

 

「八百万には昨日話をした、行くなら即行...今晩だ、重傷のおめーが動けるかは知らねえ、それでも誘ってんのは、おめーが一番悔しいと思うからだ、今晩...病院前で待つ」

 

切島の言葉が、小さく、されどハッキリと、緑谷に告げられた、その言葉を、最後尾の飯田と、()()()()()()()、聞いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈耳郎side〉

 

回能が行方不明になった、その言葉を聞いた時、ウチの頭の中は真っ白になった、なんで、さっきまで一緒に居たはずなのに、そんな思考だけが頭の中をぐるぐる回っていた

 

━━━━━━

 

「見えた!!ブラド先生も皆も居る!!」

 

ウチはあの時、回能と一緒に施設まで走っていた、道中は何もなく、無事にウチは施設まで辿り着けたんだ

 

「先生!!皆!!」

「耳郎ちゃん!!」

 

ウチが施設に辿り着くと、葉隠がウチに声を掛けてくれた、良かった、一先ず回能はこれで助かる、そう思ってたんだ

 

「先生!!回能の保護をお願いします!狙われてるんです!!」

「あぁ、さっきテレパスを聞いた!今から保護に向かう!」

「じゃあ回能の分身から本体の居場所を...!!」

 

教えて貰おう、そう思って振り返った時、そこに回能の姿は無かった、代わりに、カシャンと音を立てて地面に落ちたガスマスクだけが、そこにあった

 

「....は?」

 

何が起きたのか理解できなかった、分身が消えた?何も言わずに?回能なら一報入れてから消えるはず、なんで...

最悪の可能性が頭をよぎった、そういえば、回能の本体はラグドールに異常を伝えに...()()()()()()()走って行った、それからしばらくした後、一瞬だけ、分身が動揺したような瞬間があった、まさか...

 

「回能....!!」

「耳郎ちゃん!ダメ!!」

 

ウチが回能の元へ走ろうとすると葉隠に止められた、嫌な予感がする、回能が危ない、ここで動かなきゃ、また回能が...

だけど、結局先生にも止められて、救けに行くことは出来なかった、少しして、警察と消防の人達が火の消化と生徒の保護を開始した、そこで聞かされた言葉に、ウチは絶望した

 

「...行方...不明...?」

 

回能と爆豪の行方がわからなくなってしまった、そう警察の人から言われた時、ウチは現実を受け止められなかった、本当に?警察の捜索不足じゃなく?

 

「...アイツ...逃げるのと隠れるのは上手いんです...もしかしたらまだ森のどこかに隠れてるのかもしれません...ウチなら探せる...探しにいかなきゃ...」

 

僅かな期待を持って森の方を見るけど、そこに広がって居たのは青い炎に照らされる夜の闇だけ、その光景を見て、ウチは正気に戻された、あれだけ時間を掛け、森の中を隅々まで探したのに見つからなかった、目撃者は誰も居ない、でも、調査に長けた警察が個性を使って捜索しても見つからなかった、嫌でも理解してしまう、攫われてしまったのだと

 

「あ...あぁ...」

 

結局、ウチは回能に何もしてあげられず、救けられるだけ救けられて、何もできなかった、手遅れだと知って、ただただ膝から崩れ落ちることしか出来なかった

 

....だからこそ、さっきの切島と轟の事を聞いて、希望が生まれた

 

「━━━━━じゃあ今度は救けよう」

 

最初はそんな事出来るわけないって思ってた、でも、話を聞くうちに、その話に現実味がある事を理解した、ヴィランの一人に発信機を付け、その信号を辿って二人の救出に行く、ルール違反だって事はわかってる、でも、ウチにとっては地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸のような物だった

 

「八百万には昨日話をした、行くなら即行...今晩だ、重傷のおめーが動けるかは知らねえ、それでも誘ってんのは、おめーが一番悔しいと思うからだ、今晩...病院前で待つ」

 

最後に、そんな言葉が聞こえた、最前列に居ながらその言葉が聞こえたのはウチの個性のおかげだった、その言葉を頼りに準備を進めた、家に帰って荷物を纏め、両親にバレないように家を出て、ウチは病院に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈no side〉

 

そして、夜

 

病院前では切島と轟が待っている

 

「八百万...考えさせてっつってくれた...どうだろうな...」

「まァ...いくら逸っても結局あいつ次第...」

 

二人が病院前でそう話していると、病院の扉が開いた、出てきたのは、八百万と...

 

「.....!」

「緑谷...」

 

決意に満ちた表情の緑谷だった

 

「八百万...答え...」

「私は━━━...」

「待て」

 

八百万が切島に答えを出そうとしたその時、背後から、飯田が待ったを掛けた

 

「飯田...」

「....何でよりにもよって君たちなんだ...!俺の私的暴走を止めてくれた...共に特赦を受けたハズの二人が....っ!!なんで俺と同じ過ちを犯そうとしている!?あんまりじゃないか....!」

「何の話してんだよ...」

 

飯田が言っているのは、ステインと戦った時の事、私怨に駆られた自分を、その身を賭して目を覚させてくれた、緑谷と轟が、かつての自分と同じ過ちを犯そうとしている、その事に、腹を立てているのだ

 

「俺たちはまだ保護下にいる、ただでさえ雄英が大変な時だぞ、君らの行動の責任は誰が取るのかわかっているのか!?」

「飯田君違うんだよ、僕らだってルールを破って良いだなんて...」

 

緑谷が一歩前に出て、飯田に訳を説明しようとする、その瞬間...

 

 

 

ゴチッ!!

 

 

 

と、鈍い音を立て、飯田の拳が緑谷の頬を殴りつけた、腰の入っていない、明らかに殴り慣れていないであろうその拳、しかし、その拳が、飯田の葛藤と怒りを表していた

 

「俺だって悔しいさ!!心配さ!!当然だ!!俺は学級委員長だ!クラスメイトを心配するんだ!!爆豪くんや回能くんだけじゃない!!君の怪我を見て床に伏せる兄の姿を重ねた!!」

 

飯田の兄、インゲニウム、ステインに負け、重傷を負い、下半身不随になった、飯田天晴...

 

「君たちが暴走した挙句...兄のように取り返しのつかない事態になったら...っ!!僕の心配はどうでも良いっていうのか!!...僕の気持ちは...どうでも良いっていうのか...!!」

 

震える声でそう訴えかける飯田の顔は、怒り、悲しみ、葛藤、様々な感情がごちゃ混ぜになったような、複雑な顔をしていた

 

「...飯田くん...」

「飯田、俺たちだって、何も正面きってカチ込むきなんざねえよ」

「.....!?」

 

轟の言葉に飯田が顔を上げる、轟の言葉を皮切りに、切島や八百万も話し始めた

 

「戦闘無しで救け出す」

「ようは隠密活動!それが俺ら卵の出来る...ルールにギリ触れねえ戦い方だろ」

「私は皆さんを信頼しています...が!万が一を考え、私がストッパーとなれるよう...同行するつもりで参りました」

「八百万くん!?」

「八百万!」

 

皆の意思は硬い、そして..,

 

「僕も...自分でもわからないんだ...手が届くと言われて...居ても立っても居られなくなって...」

 

...トップヒーローは、学生時から逸話を残している、彼らの多くが話をこう結ぶ、考えるより先に体が動いていたと

 

「救けたいと思っちゃうんだ」

 

決意のこもったその瞳は、もう止まらないことを指し示していた

 

「....平行線か...━━━━ならば...俺も連れて行け」

「!?」

 

そして今始まる、社会に大きな変化をもたらす大事件が...

*1
生徒達に血痕の事は伝わっていない、警察側の配慮だ、これが吉と出るか凶と出るか...




どうもみなさん猫耳の人です
今回は誰の視点でも無い視点多かったですね
さて、いよいよ神野戦が始まります
前々から書くと言っていた日常回等等、この辺はやはり寮に入ってからになります、なのでもうすぐですね
次回以降もお楽しみに
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回能彩目は

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