無敵のヒーロー(自称)   作:猫耳の人

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時代は終わり、そして始まる、次は...君だ






第三十四話 一つの時代の終わり

「行方不明者二名発見、回能とラグドールだ」

「酷い怪我だ...よく耐えた」

「ギャングオルカ...虎さん...ラグドールを....」

 

脳無から集団リンチを受けていた途中、プロヒーローが八百万の付けた発信機の信号を頼りに来たのだろう、制圧に長けた個性を持ったトップヒーローが集まっている

俺は死に体を気合と根性だけで動かし、背負っていたラグドールを虎に預けた

 

「っ...重症じゃない!!早く止血と応急処置を!!」

「止血は私がしよう、機動隊、移動式牢(メイデン)を!まだ居るかもしれない、ありったけ頼みます」

 

俺の様子を見てMt.レディが警察と機動隊にそう指示を飛ばし、ジーニストが自身のコスチュームの繊維で俺の傷口を締め付けて塞ぎ、止血してくれる

 

「ラグドールよ!返事をするのだ!」

「息はあるのか!?」

「意識は有りますが...ハッキリしてません...奴に...個性を奪われた...守れなくて...すみません...!」

「個性を奪われた...!?」

 

意味がわからないと言った様子のプロヒーロー達、そりゃそうだ、そんな個性聞いたことが無い、俺がそういうとほぼ同時に、奴がこちらに歩いてきた

 

「すまない虎、前々からいい個性だと....丁度いいから貰うことにしたんだ」

「!?」

「奴です...!気を付けて...!」

「止まれ、動くな」

 

声がした方を向き、臨戦体制を取るプロ、しかし...まだ警戒が足りない...!!奴は...オールフォーワンは、規格外なんだ...!下手をしたら...この場にいるプロですら対応できない可能性がある...!

 

「連合の者か」

「誰かライトを...」

「こんな身体になってからストックも随分と減ってしまってね...」

 

一歩、また一歩、こちらにジリジリと歩いて来るオールフォーワン、何をして来るかわからない...!と、また一歩踏み出したその瞬間、ジーニストが、オールフォーワンが着ているスーツの繊維を操り拘束する

ベストジーニストの個性は「ファイバーマスター」、繊維を自在に操作する個性、この人に勝つなら服を剥ぎ取りかつ、全裸で戦うしかないだろう

 

 

「せっかく弔が自身で考え、自身で導き始めたんだ...出来れば...邪魔はよして欲しかったな」

 

刹那、オールフォーワンの腕が一瞬にして膨れ上がる

 

「っ!!ダメだ!!避け━━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

背中に激痛が走る、何が起きた、理解できない、咄嗟にジーニストを庇ったが、何をされたのかさっぱりわからない、霞む目で辺りを見ると、辺り一帯が更地になっていた、激痛によって混乱していた頭がようやくクリアになってきた、オールフォーワンが衝撃波を放ったのだ、いや、衝撃波と言うには生温いほどの威力、爆撃、大砲、否、それ以上とも言えるほどのバカみたいな威力....

 

「カフッ...ケホッ...」

「っ...回能!!大丈夫か!!」

 

俺が庇ったジーニストは幸い軽傷で済んだ、他のプロヒーローも、ダメージこそ負っているが、ジーニストが瞬時に端に寄せ、衝撃波の直撃を防いでくれた、重傷なのは、ジーニストを庇った俺だけ、幸い骨や脊髄にダメージはなく、外傷だけだったが...それ以上に痛みが酷い

 

「さて...やるか」

「っ...なぜ君が私を...!」

「この場で...一番の...足手纏いは...俺です...ならせめて...戦力を...少し...でも...」

「もう良い!喋るな!傷に障る!」

「いいえ...まだ...やるべき事がある...!」

 

体力も肉体も最早限界、それでも俺は立つ、今俺にできることを...!

俺とジーニストが立ち上がると、オールフォーワンがわざとらしく拍手をして話し始めた

 

「さすがNo.4!!ベストジーニスト!!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!!皆の衣服を操り瞬時に端へ寄せた!判断力・技術...並の神経じゃない!そして...君もだ回能君!僕が攻撃をしようとした瞬間からすでにベストジーニストを庇っていた!!やはり君は良い!!ますます欲しくなったよ!!」

「ペラペラと...やかましいぞ...何か喋ってないと生きていけないのかテメェは...」

「その体でまだ煽れるとは...素晴らしいタフネスだ...!」

 

痩せ我慢だっての...!!こちとら体中痛くて今にも意識飛びそうなんだよ...!!

 

「でも...ベストジーニスト、君の個性は要らないな、相当な練習量と実務経験故の強さだ、弔とは...性の合わない個性だ」

 

その言葉と同時に、ジーニストの腹部に、目にも止まらぬ速さの衝撃波が放たれ、命中してしまった、あの威力の物が収束して放たれたのだ、下手をすれば、腹に風穴が空いているだろう、しかし...

 

「っ...?痛くない...どころか...傷が...!」

「何...?」

 

ベストジーニストの傷が完治している、そしていつも以上に活力を感じていることだろう、それだけではない...

 

「っ...痛みが...引いて...?」

「怪我も治ってる...?なんで...」

 

ジーニストによって端に寄せられたプロヒーローも、全員傷が完治している、自分の身に起こっていることに理解が及ばず、少し混乱しているプロヒーロー一同、一体何が起きているのか...この事象を引き起こしているのは、俺だ

 

「━━━━━━━♪」

「歌....?」

 

プロヒーローの耳に、美しい歌声が聞こえてきた、声の出所は、もちろん俺だ、俺が引いた能力、覚えているかな、「セイレーン」、歌を聴いた者の傷を癒やし、強化する能力、その能力を使ったのだ

 

「あんた...!その体でまだ...!」

「効力に全振りしました...!その状態は持って三分です....!今のうちに...!」

 

逃げましょう、そう言い放とうとしたその瞬間、突如空中に黒いヘドロのような物が複数現れた、バシャバシャと音をたてて徐々に大きくなっていく、その次の瞬間

 

「ゲッホ...!!くっせぇぇ...!んっじゃこりゃあ!!」

「爆...豪...!!」

 

そのヘドロのうちの一つから、爆豪が出現した、転移系の個性だろうか、一体何ができないんだコイツは...

 

「片目野郎...ジーパンまで...んでテメェらが...!」

「悪いね爆豪くん」

「あ!!?」

 

オールフォーワンのその言葉と同時に、爆豪が出てきたヘドロ以外のヘドロからも、人が出現した、数は八、出てきたのは...

 

「げええ...」

「んっだこれ臭え!いい匂い...」

 

ヴィラン連合...そのメンバーの全員だ、一体どこから...!

 

「また失敗したね弔、でも決してめげてはいけないよ、またやり直せばいい、こうして仲間も取り返した」

 

...何を言ってやがる...何がしたい...いや...それよりも爆豪を...ダメだ、阻止されちまう...クソ...思考が纏まらねえ...どうすれば...

 

「その子はともかく...この子もね、君が大切なコマだと考え判断したからだ、いくらでもやり直せ、その為に僕がいるんだよ、全ては、君のためにある」

 

不快感が背筋を這い回る、気分が悪い、意識が途切れそうなのに、頭の底に言葉が入ってきやがる....

どうする...どうすれば....

 

「....やはり...来ているな...」

 

何の事だ、そう考えた瞬間、凄まじい轟音と共に、俺たちのヒーローがやって来た

 

 

 

 

 

「全てを返してもらうぞ!!オールフォーワン!!」

 

「また僕を殺すか、オールマイト」

 

 

 

平和の象徴と、悪の帝王が今、対峙した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトとオールフォーワンの戦闘が始まって数十秒、この数十秒で、戦況が大きく動いた、オールマイトとオールフォーワンはタイマンで戦っており、俺達を逃がすため、ジーニストらがヴィラン連合と戦っている、が.....取り漏らした脳無が数体俺達に襲いかかってきた、流石のジーニストも、脳無の妨害があり、こちらに手が回っていない、どうにかしてこの場から逃げなければ...

 

「めんっ...ドクセー...!」

 

どうにかして...爆豪だけでも...だが囲まれてる...逃げられる状況じゃない...!俺たちが邪魔になってジーニスト達もオールマイトも満足に戦えてない...!

 

「オイ片目野郎!!足引っ張ったら殺すぞ!!」

「デケェ声出すな...こちとらボロボロで起きてるだけでもキチいんだよ...!」

 

爆豪と背中を合わせ、ヴィラン連合と対峙する、爆豪が傷付いていないのを見るに...おそらく爆豪は殺さず捕えたいはず...なら、俺が盾になれば爆豪だけでも逃がせる...!

 

「...オイ片目野郎」

「...手短に」

「死んだら殺す」

「...無茶言うな」

 

俺の考えを読んだのか、爆豪が俺に向かってそう話した、こちとら死にかけなんだぞ、ただでさえ足手纏いだってのによ...

 

「来るぞ」

「わぁってるよ!!」

 

おそらく緊急事態、さっさと俺を排除して爆豪を連れて行きたいのだろう、誘拐にしては動きが強引すぎる、爆豪が特に警戒しているのはシルクハットを被った仮面のヴィラン、爆豪が警戒しているのなら要マークだな....

 

「今行くぞ!!」

「させないさ、その為に僕がいる」

 

オールマイトが俺たちの元に来ようとするが、オールフォーワンに阻まれてしまい、それは叶わない、ジーニストらも、脳無の対応でいっぱいいっぱいだ、やはり俺たちでなんとかするしかない...どうすれば...!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈耳郎side〉

 

...衝撃波が放たれた時、ウチらは恐怖で動けなかった、圧倒的恐怖、反応で敵わないと理解してしまったから、巨悪を前に、ウチらは蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった

 

(怖い...!!動けない...!!でも動かなきゃ...!!何のためにここにきたんだ...!!救けるためだろ!!動け!!)

 

ウチが恐怖に震える体に発破をかけ、なんとか動こうとする、けど、それはヤオモモに止められた、見ると、飯田も緑谷と轟を掴んでいた、そこで気がついた、冷静になれていないと、動くにしても冷静にならなきゃ...救けられるものも救けられない...!

 

「っ....!」

 

ヴィランのボスと思しき奴と、飛んできたオールマイトが戦い始めた、でも満足に戦えていないのがわかる、多分、爆豪と回能を救けたいからだろう、そのせいで全力を出せていない、こんなピンチだと言うのに...

 

ウチらは戦う事が許されない...!

 

どうすれば...!

 

「飯田君、皆!」

 

突如、緑谷が声を上げてウチらに呼びかけた、その顔は、僅かな恐怖と、何かを思いついたかのような顔をしていた、もしかして...

 

「だめだぞ...緑谷くん...!!」

「違うんだよ、あるんだよ!決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れる!それでもかっちゃんと回能くんを救け出せる!方法が!」

「....言ってみてくれ」

 

緑谷が、ウチらに作戦を話してくれた、作戦成功の鍵は、切島...

 

「かっちゃんは相手を警戒して距離を取って戦ってる、回能くんは...常にかっちゃんを庇うように動いてる、タイミングは二人とヴィラン達が二歩以上離れた瞬間...!」

「飯田さん...」

「....博打ではあるが...状況を考えれば俺たちのリスクは少ない...何より成功すれば全てが好転する...やろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈回能side〉

 

「っ...」

 

身体中が痛い、目が霞む、血を流しすぎた、もう限界だ...俺達が居る以上、オールマイトが全力を出せない...!どうすれば...!!

どうにかして爆豪と共にこの場を脱出できないかを考える、しかし、いくら考えても脱出する術を思いつかない、逃げ回るのもそろそろ限界だ、捕まるのは時間の問題...そう考えていると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに居るはずのない人間の声が聞こえた、声は上から、咄嗟に視線を上に向けると、そこには緑谷、切島、飯田の三名が居た、それと同時に、視界の端に氷にある氷を捉えた、チラリとそちらに視線を向けると、八百万、轟、そして耳郎の姿があった、それで察しがついた、おそらく俺たちを救けに来てくれたのだろう、しかし...

 

不幸な事に、救助の手が現れたのは、俺の「右側」からだった、故に、一瞬反応が遅れた、その一瞬は致命的な物だった、俺が視線を上に向けた頃には、既に爆豪は切島の手を握っており、俺だけが逃げ遅れた

 

「!!オイ!!」

 

俺に気が付いた爆豪が俺に叫びかける、しかし、彼らはもう俺の瞬間移動の最大射程内に居ない、もはや手は届かない

だから....

 

ドスッ...

 

「カフッ....」

 

俺は刺された、胸部と心臓部を、刀とナイフで、刹那、鮮血が噴き出る、俺の命の終わりを表すかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈耳郎side〉

 

目の前で、回能が刺された、心臓を、刀で

 

「回...能...」

 

血が噴き出るのが見えた、ふと頭をよぎってしまう不吉な考え、アレでは助からない、救けられない、また、何もできずに

無意識に、体が回能の方へ走り出そうとしていた

 

「耳郎さん...!!」

「ヤオモモ...!!」

 

しかし、ヤオモモがウチの腕を掴んで止める、嫌だ、もしかしたらまだ助かるかもしれない、救けられるかもしれない、たとえウチが死んでも、せめて回能だけでも....

そう思ったその瞬間

 

 

 

 

 

 

「騙されたな」

 

 

 

 

 

 

小さく、されどハッキリと聞こえたその言葉、紛れもなく回能の言葉だった、言葉の意図が理解できなかった、騙された?一体何を...

ウチが混乱していると、突如BOMと音がして、回能の体が爆発した、それと同時に、回能の体から煙幕が溢れ出す

一体何が...そう考えていると

 

「悪い...逃がしてくれ...」

「!?」

 

目の前にいきなり回能が現れた、突然だ、瞬きの間に、いつの間にかだ、状況が飲み込めない、でも、たった一つだけ頭の中にある、ここにきた理由だけが、ウチを動かした

 

 

 

 

 

 

 

救けなきゃ

 

 

 

 

 

 

咄嗟に体が動いた、意識のない回能を担ぎ、その場を離れようと動き出す、少し遅れてヤオモモと轟も動き出した、これでようやく、オールマイトも本気が出せる、初めて、ウチは回能を救ける事が出来た、そんな気持ちを押し殺しつつ、ウチらはその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈回能side〉

 

俺だけ逃げ遅れ、トガヒミコとスピナーに体を刺された、噴水のように溢れ出す血液、もはや助からない...

 

 

 

 

 

 

 

 

とか思ってんだろ

 

 

 

 

 

 

 

 

布石はすでに打ってある、ヴィランの思惑通りに大人しく死んでやるつもりなぞ毛頭ない、今コイツらが刺してんのは俺の分身...身代わりだ、ここで一つ、俺の分身について説明しよう、俺と分身は、互いの位置を入れ替えることが出来る、多少条件はあるがな、いわばゴレ◯ヌとか東◯葵だ、そして、俺の分身はある事が出来る、そう、自爆だ

 

俺の分身は、ダメージを受けた状態になると自爆が出来るようになる、相手にダメージを与える物と、煙幕を撒き散らし、ダメージを与えない目眩し用の物の二種類の自爆が、今回使ったのは後者だ

自爆後、二十四時間経過するまでその分身が使えなくというデメリットはある物の、今この場を切り抜ける為には充分すぎる能力だ

 

「騙されたな」

 

その言葉と同時に、俺の分身体が自爆をする、煙幕を出して連合の視界を塞ぎ、本体が逃げたとバレないようにカモフラージュする、作戦は成功、見事耳郎達の元へ移動できた、しかしもう動けない、体に力が入らないし、立っていられない

 

「悪い...逃がしてくれ...」

 

俺がそう言うと、すぐに耳郎が俺を担いでくれた、その事に安心し、俺は思わず意識を手放してしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に俺が意識を取り戻した時、そこは病院だった、窓の外は明るく、日が昇っている、日付を確認してみると、合宿三日目の日付から四日経っていた、どうやら一日で目を覚ましたらしい、あの後どうなった?爆豪は?オールフォーワンは?ジーニスト達とヴィラン連合は...わからない事が多すぎる、幸い、自分のスマホは手元にあったので、ヒーローニュースを見てみる、するとそこには、信じがたいニュースが流れていた

 

「...オールマイト...引退...」

 

オールマイトの引退、そんな記事がデカデカと書かれていた、記事によると、あの後オールマイトは、逃げ遅れた市民を守るため、オールフォーワンが放った衝撃波を正面から受け止めたらしい

その時点で、恐らく活動限界だったのだろう、トゥルーフォームに戻ってしまった、しかし、それでも折れない平和の象徴は、ボロボロになりながらもオールフォーワンと戦い、勝利、最後に「次は君だ」と言葉を残し、引退してしまったらしい

 

....引退って事は...もうオールマイトの中にワンフォーオールは残っていない...結果的に、平和の象徴と引き換えに巨悪を討った、おそらく大赤字だろう、平和の象徴という「柱」が無くなり、一つの時代が終わった、おそらく次のナンバーワンはエンデヴァー...

今回の事件は、おそらくヒーロー社会に良くも悪くも大きな変化をもたらすだろう、その変化が吉と出るか凶と出るか...

 

「....ん?」

 

ナースコールを押そうとニュースを閉じると、一つラインが来ていることに気がついた、一体なんだと思いラインを開くと、差出人はエンデヴァーだった、内容は...

 

『傷が完治したら茶でもどうだ、相談したいことがある』

 

との事、なんとなく相談の内容は察しがつく、取り敢えず了承の返信をしておき、今度こそナースコールを押そうとする、が、突如病室の扉が開き、人が入ってきた、耳にプラグが下がった見慣れた女子だ

 

「...耳郎」

「あ...起きたんだね...良かった...」

 

心底安堵したような表情を見せる耳郎、見舞いに来てくれたのか、耳郎は俺が寝ているベッドの隣に置かれた椅子に座る、この光景前にも見た気がする

 

「.....怪我は?」

「もう大丈夫だよ、完全に塞がってる」

 

そう言って俺は頭と上半身をさする、俺の上半身、そして背中は、かなり酷い裂傷だったと記憶している、前なんて特にだ、なにせチェンソーでぶった斬られたんだから、しかし、俺の体には手術痕どころか、傷痕すら残っていない、そういう個性の人が居るのかな、最近の医療すげぇな、かなり進んでる

 

「そう...よかった」

「ん」

「......」

「......」

 

.....少しの沈黙が流れる、気まずい、ものすんごーく気まずい、分身を介して耳郎の言葉は覚えている、「絶対に無事で帰ってこい」、俺はその約束を破ってしまっている、多分、いや絶対怒ってる、耳郎の顔見れないもん、怖いし、多分余計な発言したらジャック刺される

 

「....ウチ...さ、合宿の時も、USJの時も...ずーっとアンタに救けられてきた」

「.....」

 

急な話題だな、でも確かに、俺は耳郎を救けてきた、やはり何かと縁がある俺と耳郎、もはや運命的な何かを感じる、なんてね

 

「...それでさ、ウチ...回能になんにも恩返し出来てないって思った、救けられてばっかりでさ」

「....」

 

そんな事気にしてたのか、別に俺がしたくてしてる事だし、気にしなくて良いのに....

 

「でさ、今回...アンタを救けられて...嬉しかった、ウチも、アンタのこと救けられるんだって...不謹慎かもだけど...思った...」

 

不謹慎?とんでもない、実際俺は耳郎のおかげで助かった、多分、あのまま行ってたら出血多量で死んでたよ、俺が生き残れたのは耳郎のおかげだ

 

「でも...今回のことだけじゃ...返しきれてないって...ウチは思ってる...だから...さ...えと...」

 

耳郎が言い淀む、俺は別に見返りを求めて救けてるわけじゃない、友達が...大切な人たちが傷ついて、悲しそうな表情をしているのを見たくないから、だから、人を笑顔にするヒーロー、なんてコンセプトで動いてる、強いて言うなら...幸せそうに笑ってくれてることが見返りかな

...なんかキザな事言ってんな、まぁ結論として、何も気にしなくて良いって事だ

俺がそれを耳郎に言おうとするが...耳郎が意を決した様な顔で俺と目を合わせる、なんだ?

 

「だから...今度はウチが...回能を救けるよ、そばに居て...一緒に戦って...辛い時は...ウチがそばに居る、そうやって...返していこうと...思って...る...うん...」

「......」

 

....この光景前にも見たぁ!!デジャヴだよデジャヴ!!USJん時と同じだー!!!既視感ありまくりだよ!!

じゃ、俺も同じ返し、しちゃおっかな〜

 

「...な〜に〜?もしかして告白?きゃっ♡もー耳郎ちゃんったら大胆♡別に気にすること無いのに......もしかして本当に惚れちゃった?♡」

 

多分このあと赤面しながらボディーブローされるんだろうなぁ、あれ痛いんだよ、でも?来るとわかってるから?俺はお腹に力を入れるわけですよ、失敗から学ぶ俺偉い

てなわけで、腹に力を入れてボディーブローが来るのを待っているが...一向に殴られる気配はない、え?焦らしプレイ?俺焦らし系は好みじゃないんだけど

なんて馬鹿みたいな事を考えながら耳郎の方を見ると、耳郎が小さく何かを呟いた

 

「......だよ...」

「え?」

 

小声だったのでよく聞こえなかった、なんて言ったんだろ、気になるので俺はもう一度耳郎に聞き返してしまった、だってマジで聞こえなかったんだもん...

取り敢えず、俺は耳郎がもう一度言ってくれるのを待つ、一息ついて、耳郎が俺の方を見て、いや、睨んで?口を開く

 

「そうだよって言ったの!!」

「........え?」

 

...え?そうだよって...何が?待って待って、情報が完結しない、俺のIQ53万の脳内CPUを持ってしてもわからない、耳郎って無量空所使えたの?何の事を言ってるのかわからない、何がそうだよなのかわかんない、え?

俺が混乱していると、耳郎がもうヤケクソといった様子で立ち上がり、ベッドに手をついて言葉を発し始めた

 

「だからぁ!!ウチが!!アンタに!!惚れたって言ってんの!!」

「........!?」

 

顔を真っ赤にしながらそう言い放つ耳郎、そこでようやく言葉を理解し、耳郎の「そうだよ」の意味を理解できた

惚れた?俺に?嘘だろ...?待って待って、今度は別の意味で頭が追いつかない

 

「....勘違いじゃなくて?」

「...入試の時、USJの時、それに今回...ウチはもう何回も回能に救けてもらった...」

「.....」

「....勘違いな訳無いじゃん...あんな風に救けられてさ...それだけじゃないよ...普段から...気配りもできて...ちよっとした変化にも気付いてくれて....なにより...アンタの...回能の...笑った顔を...好きに...なって...」

「.......」

 

顔あっつい、どーしよ、生まれてこの方女子から告白されたことなんて無いし、免疫があるかって聞かれれば否だ、だってDTだし、経験ないし...

えぇ〜...今耳郎の顔見れないかも

 

「....だから...さ、改めて言わせて欲しい」

「.....」

「ウチ...アンタの事が好き、ずっと一緒に居たい」

 

俺の目を真っ直ぐ見てそう言い放つ耳郎

.....何このイケメン、かっこよすぎるんですけど

....実際、俺は耳郎の事を可愛いと思ってる、怖いの苦手な所とか、普段話してる時の仕草とか...

でも、でもだ、本当に俺なんかで良いのだろうか、A組にはもっと魅力的な男子が沢山居る、緑谷、飯田、轟、常闇、瀬呂...パッと考えるだけでもこれだけの人数の男子が出てきた、しかし、名前をあげた男子達が耳郎と付き合っている姿を想像した時、心がモヤっとした

そこで初めて、俺も自覚した

あぁ、俺って耳郎の事好きなんだな.....と

 

「.....俺なんかで良いのか?」

「なんかじゃない、アンタじゃなきゃ嫌だ」

「....後悔、しないか?」

「するわけ無い」

「....そっか」

 

曇りのない瞳、その瞳が俺を写している、僅かなタイムラグも無しに、即答した耳郎に、俺は少したじろいでしまった、引いたわけじゃない、俺のことをそんなに思ってくれているのだと考えてしまい、恥ずかしくなったのだ

 

「....俺も...俺も、耳郎の事が好きだ」

「.....」

「一緒に居て...気づいたら、好きになってた...んだと思う...自覚したのは今だから...その辺はわからない...でも...でもだ、この気持ちに、嘘は無い」

 

俺も、耳郎の瞳を真っ直ぐ見返す、互いに視線は外さない、耳郎が、俺に好きだって言ってくれたんだ、なら、俺も言うのが筋って物だろう

 

「...改めて、俺からも」

「......」

「俺は...耳郎の事が好きだ、俺も、ずっと一緒に居たい」

 

言った、言ってしまった、はっず...告白ってこんな恥ずかしかったのか...心臓バクバク、口から出そうだ、俺たちの間に少しの沈黙が流れる、その間も、互いに目を合わせたままだ、少しして、顔を僅かに赤くしながら耳郎が目を逸らした

 

「っ...はっず...」

「...なーに照れてんのさ」

 

やっぱ可愛いわこの子、もう誰にも渡さんぞ

 

「...じゃあ...その...これから...よろしく」

 

俺の前に座って恥ずかしそうにそう話す耳郎

ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜、ベリーキュート、なんでこんな可愛いんだよ

...そうだ、ちょっとからかってやろ

 

「ん、改めてこれからもよろしくね、()()

「っ////やっぱあんたあざといわ...」

「んー?なんのことかな」

 

悪戯っぽく笑って耳郎をからかう、しばらく心が暖かくなるような、そんな時間を二人きりで過ごした、後から知ったことだが、実は告白の所からナースさんが見ていたらしい、それを知った俺達が二人して赤面するのはまた別の話...

 




はいどうも猫耳の人です
はい、と言うわけでね、無事耳郎ちゃんとくっつきました
一人目です、いいですか?一人目、デス
これからもっと増えていきますよぉ、プラスウルトラだってね
てな感じで、いよいよ寮入り、共同生活が始まります、ここからは日常回、恋愛回、ギャグ回などなど、増えていきますのでお楽しみに!!
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回能彩目は

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