ひぃん
仮免試験を終えたその夜、俺たちは共同スペースで雑談をしていた
「明日からフツーの授業だねぇ!」
「色々ありすぎたな!」
「めんどくさいわぁ...」
「一生忘れられない夏休みだった...」
芦戸の言う通り、明日から普通の授業、夏休みももう終わりだ、濃密な夏休みだったせいか休んだ気がしない、手術も受けたし、チェンソーでぶった斬られたし、痛かったわぁ...
なんて思いながら、斬られた胸部分をを撫でる
「...痛いの?」
「ん?いや、痛かったなって」
「...そ、なんかあったら言ってね」
「わかってるよ」
隣に座る耳郎が俺にそう言ってくれた、傷痕も無いし痛む事は無い
俺と耳郎は二人用のソファーに座り、互いに寄りかかって同じスマホで動画を見ている
「.....良いなこの曲」
「でしょ?」
見ているのは音楽系の動画、同じイヤホンを片耳ずつ着けて聞いている、なんか芦戸と葉隠がこっち見てきゃーきゃー言ってるが気にしない
その後も少し雑談をして、時間も時間なので寝る事に、それぞれの部屋に戻ろうとしたその時
「...あの...回能さん、耳郎さん」
「ヤオモモ?」
「どうしたよ」
後ろから、俺たち二人に八百万が話しかけて来た、振り返ると何やら不安そうな顔をしていた、一体なんだ?
「その...お二人に相談がありまして...今からお時間よろしいでしょうか...?」
「ウチは大丈夫だよ、回能は?」
「俺も大丈夫だ、で?相談って?」
「...ありがとうございます...ここではし辛いので...私の部屋に来ていただけますか?」
「わかった」
「あいあい」
俺と耳郎は八百万について行き、部屋に招かれた、相談ってなんだろ...
部屋に入ると、八百万が椅子を出してくれた、空いたスペースに椅子を三つ設置し、そこに座る
「それで...相談って?」
「...はい...その..,実は...最近変でして...」
「変?」
八百万に問いかけると、どこか申し訳なさそうな雰囲気で話し始めた
変?別に変な所は無いけど...
「...最近...心がざわつくんです...モヤモヤしたり...切なくなったり...」
「......」
ざわついたり、モヤモヤしたり、切なくなったり...俺は...いや、俺たちはその感情を知っている、俺達に相談して来たと言うことは、おそらくその感情の正体も八百万は知っているのだろう
「恐らくですが...私は...その...恋を...しているんだと...思います...」
「ヤオモモが...」
少し顔を赤らめてそう話す八百万、恋ねぇ...意外だな...まさか八百万が恋をするなんて...てことはやっぱ恋愛相談か...?相手が誰なのかわからなきゃ始まらないが...
「恋か...誰の事が好きなんだ?」
「えっと....その...」
目を泳がせ、言うか言うまいか迷っている、やっぱ好きな人を言うって恥ずかしいんだな、でも話してもらわなきゃ話が進まない、相手は誰だ?轟...緑谷...飯田...上鳴...接点が多いのはこの辺りか、この中に好きな人が居るのか、はたまた別の人なのか...
俺たちは八百万の言葉を待つ、少しして、一旦してすごく申し訳なさそうな顔をして口を開いた
「...回能さん...です...」
「回能さんね...かい...え?」
「回能に...?」
え?回能さん?回能さんって言った?勘違いじゃ無きゃ俺の名前だよな?嘘でしょ.....
「......回能さんに恋をしていると気が付いたのは本当に最近です...」
八百万の話では、俺への恋だと気がついたのは、神野でのあの一件の後、丁度寮に入る直前の事だったらしい
告白...とまでは行かずとも、寮での共同生活で仲を深められれば、そう思っていたらしい、が、寮に入る直前で俺と耳郎が付き合ったと公表された、その後どうして良いのかわからず、モヤモヤしたまま過ごしていたのだと
「...お二人がお付き合いなさっていると知って...諦めなければと思ったのですが...諦めようと思うほど...気持ちが強くなっていってしまうんです...耳郎さんは友人だと言うのに...嫉妬してしまったんです...」
「ヤオモモ...」
「友人に対して持って良い感情では無いとわかっているのですが...日に日に思いが強くなってしまって...私...どうしたら良いのかわからなくて...!」
「....」
ポロポロと涙を流し始めてしまう八百万
....こういう時、どうすれば良いんだろうか、難しい問題だ
普通に考えれば、ここは断る場面なのだろう、しかし、相手は顔見知りどころか、かなり仲の良い友人、ここで下手なことを言ってしまえば、八百万を傷つけてしまう、どうしたものか....
「じゃあ...さ...共有しない?ウチとヤオモモで」
「「はい?」」
耳郎の発言に思わず素っ頓狂な声を出してしまう俺と八百万、何言ってんの?共有?俺を?ちょっとまって、理解が追いつかない
ちょっと整理しようか、まず、八百万が好きなのが俺で...諦めなきゃって思ってるけど諦められなくて...だから共有しよう....
うん、整理しても尚わからん、なぜその思考に至った
「.....ヤオモモはさ...回能の事、本気で好きなんでしょ?」
「....はい、この気持ちに偽りはありません...」
「で...ウチと回能が付き合ってて...だから諦めなきゃだけど...諦めきれないって...思ってるんでしょ?」
「....はい」
俺を置いて二人で話を進めていく、まって、置いてかないで
「そのせいで辛い思いをしてて...こうやってウチらに相談してくれた訳じゃん....ウチとしては...その...ヤオモモに辛い思いしてほしく無いって言うか...友達が泣いてる所を見たく無いって言うか...って...回能の事も考えないで何言ってんだろウチ...」
気恥ずかしそうにジャックを弄る耳郎、二人はもはや親友と言っても良いほどに親密な関係だ、だからこそ、そんな友達が苦しんでいるのを見たくなかったのだろう
「....私のことを嫌わないのですか...?」
「嫌うわけないじゃん...嫉妬なんて誰だってするし...ウチも...その...嫉妬したりするし...ヤオモモは親友だし...それに...さ」
「.....」
「ウチの好きな人を好きになる人に...悪い人は居ない...って思ってるし...」
「....!!」
なんだか聞いてるこちらも恥ずかしい、告白の時以来、耳郎から面と向かって好きとは言われていない、が、今この場で俺を好きだと宣言した、顔が熱い...
「耳郎さん....!」
「わっ!ヤオモモ!?」
耳郎の優しさを受けた八百万、嬉しかったのだろう、涙を流しながら耳郎を抱きしめた、仲のよろしいこって、俺は蚊帳の外だけどな
しばらく抱き合っていた二人、少しして離れ、八百万が俺と目を合わせる、意を決したような表情で俺を見つめる
「回能さん」
「...はい」
「...改めて言わせていただきますわ、貴方の事が好きです、私と、付き合ってくださいませ」
「....はい、喜んで」
真っ直ぐと俺を見つめるその瞳、その瞳を、俺はただただ美しいと思った、俺が返事を返すと、八百万の顔は嬉しそうに、とても可愛らしい笑顔になった、その後耳郎に「やりましたわ!!」と、とても嬉しそうに報告していた
それは良いんだが...皆になんて説明しようかなぁ...多分峰田とか上鳴辺りがすげえ突っかかって来そう...あと飯田にも何か言われるだろうなぁ...
「どうしたの?」
「...皆になんて説明しようかなって思って」
「耳郎さんの時のように皆さんの前で言うのではないのですか?」
「それでも良いんだけどさ?絶対何か言われるじゃん....」
俺がそう言うと、二人も何か言って来そうな人が頭に浮かんだのか、苦笑いしてしまった…どうしたもんかなあ...
「....元を辿れば、回能が人たらしなのが悪いんじゃん」
「酷い言い草だな...」
「一理ありますわ、回能さんは魅力的すぎるんです」
「八百万まで....」
俺が悪いのか、そうなのか...
まぁ取り敢えずこれで解決...したのかな?ちゃんと説明しないと俺がただのカス野郎に...説明してもカス野郎になるんじゃないか...?付き合った以上誠意を持って向き合うけどよ...
取り敢えず時間も時間だし、部屋に戻って寝るか...
そう思ったその時、八百万と耳郎に肩を掴まれた、なになに、怖いんだけど
「....ウチらにこんだけ言わせといて、アンタ何もしないつもり?」
「....据え膳食わぬはなんとやら、ですわ」
「.......」
.....いや、ね?食わぬはとは言うけどさ、俺らまだ学生だし、「アレ」も無いし、防音も出来ないし、時間もアレだし、明日から新学期だし、ホラ、ね?
そう説明するが...
「....防音なら私が出来ますわ、それに...回能さんの言う「アレ」も、私なら創れますわ」
「....さっきヤオモモと話したんだ、これだけベッドが大きいなら三人で出来るよねって」
「.......」
恐る恐る振り返ると、二人は頬を上気させ、ちょっと怖い目で俺を見つめていた、そして...
「責任、取ってくれるよね」
「責任、取っていただけますよね」
「....はい」
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この日、俺は童貞を卒業した
◇
「喧嘩して謹慎〜!?」
おはようございます、腰が痛いです、回能です
朝起きて来たらボロボロの緑谷と爆豪が寮内の共同スペースを掃除していた、訳を聞くと....何やら昨晩、二人で寮を抜け出し、二人でグラウンドβに行き、個性を使用したガチ喧嘩をしていたのだと、アホだろ...
「馬鹿じゃん!!」
「ナンセンス!」
「馬鹿かよ」
「骨頂」
「ぐぬぬ...」
流石に今回は言い返してこない爆豪、自分に非があったと理解しているからなのかね...にしても馬鹿だけど...
よく謹慎だけで済んだな...下手したら除籍モンだぞ....爆豪に至っては仮免の補修もあるのに...大丈夫か....?大丈夫じゃ無いだろうなぁ...
「んじゃまぁ掃除よろしく」
そう言い残し、俺たちは寮を出て校舎に向かった、歩いている途中、当然と言うか、色恋沙汰にめざとい二人が俺、耳郎、八百万が一緒に降りて来たのを見たらしく、何やら詰め寄って来た
「ねぇねぇ!今朝なんで三人で起きて来たの!?」
「まさか三角関係ってやつ!?」
「...いや...その...」
「実は、私も回能さんとお付き合いさせていただくことになりました」
「「.....え!?」」
脳が理解を拒んだのだろう、数秒フリーズしてしまう芦戸と葉隠、そりゃそうだ、なにせ本人達公認の二股なのだから、いや、二股って言い方良くないな、俺がカス野郎になってしまう...まぁ何にせよ、俺たち三人が合意の上で三人で付き合っている、その事実を知り、芦戸と葉隠の顔が驚愕に染まった、葉隠は見えないけど
俺たちの話は瞬く間に広がっていき、A組全体に広まった、情報早いなぁ...当然と言うべきかなんと言うべきか...上鳴と峰田がとんでもない形相で俺を睨んでた、呪詛みたいなのも吐いてた、こわ、でも二人に手ぇ出したら処す、そしてやはり飯田が風紀がどうとか言ってたけど...合意の上だしと伝えたらすごく唸ってた
そして...
「...はっ、もしかして...三人が腰痛めてるのって...」
「....お察しの通りだ」
「わぁ...///」
ほんとこういうことに関してはこの二人すっごい察し良いよね...
俺たち三人が昨晩していた事を想像し、顔を赤くしてしまう二人、この事も、おそらくクラス中に広まっただろう、流石に生々しい事なのでツッコまれたりしなかったが...峰田?何か言ってくる前に処した
さてさて、そんな波乱もありつつ、幕を開けた新学期、後期は前期以上に色んなことがある、これまでよりさらに忙しなくなるが...
気合い入れて頑張るとしますかね...
おまけ
「ヤオモモはさ、回能のどんなとこ好きになったの?」
「その...優しさや笑顔もそうなんですが...たまに見せる悪いお顔が...その...こっ...興奮する...と言いますか...///」
「...わかる、ウチもアイツのあざとさとか、悪い顔とか見るとドキドキするもん...ギャップなのかな...」
「ギャップ...なのでしょうか...」
皆さんどうも猫耳の人です
はい、と言うわけで、ね、回能くんが大人の階段登りました
次回は閑話となります、ここから閑話も増えていきますのでぜひお楽しみに、といっても閑話は基本書きたいこと書くつもりで居るだけなので...出来れば温かい目で見ていただけると嬉しいです
次回もお楽しみに
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