これも見てくれてる読者皆様方のお陰です!
このまま書いていくので、これからもよろしくお願いします!
それではどうぞ〜
『あぁ、これだよこれ!これこそが三次元の娯楽の醍醐味だ!』
私は、地上数メートルの空中にあぐらをかいて浮かんでいた。
三次元の生物っていうのは、平和な時は「明日何を食べようか」なんて瑣末なことに脳細胞を使い、いざ破滅が目の前に迫ると、一丁前に運命だの宿命だのという仰々しい言葉を盾にする。
見てごらんよ、あのシズという女を。
彼女の仮面に走るヒビから溢れているのは、ただの魔力じゃない。何十年と檻に閉じ込められ、ついに限界を迎えて飛び出している破壊のエネルギーだ。
おもむろに彼女は立ち上がり、詠唱を開始する。
「召喚魔法?!」
「おいおい、マジかよ?どのランクの召喚だ?」
「・・・ええと、魔法陣の規模からの予想だけど、B+以上の魔物!」
「旦那方、悠長な事言ってないで、止めないと!!!」
さっきまでの様なマヌケな様子は無くなり、やり取りを一瞬で終えてシズを囲むように散開する。
「大地よ!彼女を束縛せよ!
「うぉおおおーーーりゃ!!!
エレンが泥を操り、カバルが肉弾戦を仕掛ける。ギドは影で機を伺う。
Bランクの冒険者、ね。悪くない。
彼らの動きは、この不自由な世界の中では合理的だ。蟻が自分達の巣を守るために、自身の数百倍もある巨大な足に噛み付くぐらいの健気さは感じるよ。
だが、無意味だ。
シズ——いや、彼女を苗床にしている「それ」が指をクィと動かしただけで、小規模爆発が起こった。
——ドォォォォォン!!!
『おっと、テントが粉々だ。全く、私まで巻き込まないでほしいね』
視線を落とせば、三人はまだ生きている。焦げてはいるけど、まだ喋る余裕はあるようだ。
「てか、何を呼び出しているんだ?」
「いやいや、そんな話じゃねーでしょ。あっしの知る限り、召喚中に魔法を無詠唱で発動なんて、聞いたこと・・・」
ギドが何かを思い出したかの様に、動きを止める。
「え・・・、まさか・・・・・・。爆炎の支配者・・・?」
よくわかっているじゃないか。どうやら、私が思ったよりも賢いらしい。
シズは詠唱を続けている。空中に浮かび上がりながら全身が赤く光っているのは、少しシュールで笑える光景だった。
『リムル、このままだと君のご自慢の町作り計画が白紙に戻ってしまうよ?』
「……そんなこと言ってる場合か!リグルド!皆を避難させろ!この付近へ近寄せるな!」
「しかし…」
「命令だ!避難を終えたら、ランガを呼んで来い!」
「はは!承りました!」
リムルは素早くリグルドに命令を出す。
賢明な判断だ。あのジャガイモみたいなゴブリンたちがここにいても、質の良い炭が出来上がるだけだからね。
だが、リムル君。
君はまだ疑っているね? あの冒険者たちが自作自演で君の隙を狙っているんじゃないかって。
『リムル、もし彼らが裏切り者だったらどうする? 今この瞬間に、背後から君を刺そうとしていたら?』
リムルにしか聞こえない様な声で、私は彼に質問を投げかける。
「……その時は、俺が全員食い尽くすだけだ。だが、今はそれどころじゃない!」
『HAHA! 言うようになったじゃないか!』
まあ、あんなに喋っていたのはただのバカだからと思うけどね!
「おい、ギド! 爆炎のなんたらって、なんだ?」
ギドが答えるよりも早く、エレンが問う。
「それって、50年くらい前に活躍したっていう、英雄よね?」
そして、ついにその時が来た。
シズの顔から仮面が剥がれ落ち、地面に転がる。
次の瞬間、彼女の細い体から噴き出した炎が、周囲の空間そのものを歪ませた。
炎の巨人の出現。上位精霊イフリート。
《ユニークスキル『変質者』を発動します》
まただ。あの無機質な「世界の声」が響く。
そしてシズの肉体と精霊を強引に捏ね合わせ、一つの暴力的な生命体へと作り変えていく。
「げぇ!!!イフリートっておま、Aランクオーバーの上位精霊じゃねーか!!!」
「うわぁ…、初めて見た!てぃうかぁ〜、あんなの、どうやっても勝てないんですけどぉ〜!!!」
「間違いないでやす…。あれが、爆炎の支配者でやす!」
ドン!!!
イフリートが放った熱波の一撃で、彼らの
三次元の英雄譚も、上位精霊の前ではただの喜劇だ。
「おい。お前の目的は何だ?」
「ふぅーーー!」
カッ!!
先程の様な全範囲ではなく、こちらに熱波を放ってきた。
リムルはビシュン!と「水刃」を放つが、ヤツに届く前に蒸発して消える。
「胃袋の中の水を全部ぶっかければあるいは……」
『おやおや、リムル君。そんな事をしてしまうと、この辺り一帯が更地になってしまうよ?』
そんな会話をしていると、ランガが走ってきた。
「お呼びですか?我が主よ!」
「いいか、安全な場所に退避してろ!あれは俺が倒す!」
「仰せのままに、御武運を!」
ランガが三人を咥えて去っていく。
広場には、スライム一匹と、
実におかしな取り合わせだ。
イフリート……炎の支配者。
ヤツの周囲は常に数千度の熱を帯び、放たれる一撃一撃が森を灰に変える威力を持っている。
「うーん、近寄れないな……。コンガリスライムにはなりたくないし」
『おいおい、諦めるのが早いんじゃないかい?三次元の生物はすぐに自分の「限界」を決めつけるから困るよ』
「うるさいわ!ってあぶなっ!」
リムルは必死にイフリートからの熱波を避ける。
「ちょ、ビル!何か知ってるなら——」
『知ってるさ』
リムルの質問を遮る様に、私は即答する。
『ただ、君がそれを理解しているかどうかは別問題だ』
「は?どういう……」
リムルの思考が一瞬止まる。理解が追いつかないようだ。
その隙に、イフリートがリムルの足元に巨大な魔法陣を展開する。
幾何学的な図形だ。
「
空間そのものが発火し、逃げ場のない熱の檻がリムルを飲み込む。
直径100メートルの円内が、超高熱の地獄と化した。
『おやおやおや!ついにバーベキューの完成だ。リムル、君の短いスライム生もここで終わりかな?遺言はあるかい? 「もっと美味しいものを食べたかった」とか、そんな安っぽいのでいいなら聞いてあげるよ! 』
彼は死を覚悟し、自分の至らなさを後悔し始めた。
……だが、1秒経っても、2秒経っても、彼の体は溶けない。
「……? 遅すぎないか? ダメージが来ないんだけど……」
《……解。熱変動耐性exの効果により、炎攻撃は自動的に無効化に成功しています》
ぶっ!!!
HAHAHAHAHA!聞いたかい、今の?
「耐性あるの忘れてたろ、このボンクラ!」と言わんばかりの、あの『大賢者』の呆れたようなトーンを!
リムル、君は自分のステータス画面すらまともに見ていなかったのかい?
君を焼き尽くそうとしたあの究極の業火は、君にとっては「ちょっと温かいお風呂」程度の価値もなかったわけだ。
勝負は決まった。
いや、最初から始まってすらいなかったんだ!
『HAHAHAHAHAHAHA!ミス電卓にまで呆れられるなんて、リムル、君は本当に最高だよ!』
いいね。実にいい。
形勢は逆転した。
「今、何かしたのか?」
炎の中から無傷で歩み寄るスライムの姿。
イフリート——いや、シズの口から動揺の声が漏れる。
「ば、バカな!」
リムルは容赦しない。
炎でも焼き切れない、耐性を反映した特製の「粘鋼糸」で獲物をがんじがらめに縛り上げる。
ジタバタと逃げ回る炎の巨人の姿は、まるでお祭りの網で捕まった金魚みたいで、見ているこっちは腹がよじれるほど可笑しいぞ!
「次は、俺の番だろ?」
冷徹な一言。
リムルはゆっくりと、死神のような足取りで歩み寄る。
『さあ、食事の時間だ! 遠慮はいらないよ、リムル。その不格好な精霊を、君の胃袋に収めてしまいな!』
「言われなくても! 『捕食者』!!!」
リムルの体が大きく広がり、イフリートを飲み込む。
光が溢れ、消える。
後に残されたのは、焦げ付いた大地と、一人の老婆だった。
私はゆっくりと、その老婆のそばへ降り立った。
『……ふむ。精霊を失えば、これほどまでに脆いものか。彼女の時計は、もうすぐ12時を回るようだね』
リムルが人間の子供の様な表情——まあ、顔はないけれど——で彼女を見つめている。
「ビル……シズさんは助かるのか?」
『助かる?』
少しだけ考える。意味を定義するように。
『肉体の維持なら可能だろう』
「なら!」
『だが、彼女の魂はこの世界に留まることを拒んでいる。……リムル、君はこの重荷を背負っていく覚悟はあるのかい?』
リムルは黙っていた。
だが、彼の手は震えながらもシズの体に触れていた。
『HAHA! 面白いことになってきた。一人の英雄が死に、その運命をスライムが食らう。……この先に待つのは、救済か、それともさらなる混沌か』
……やっぱりだ。
私は、わずかに目を細めた。
『君だけ、少しズレている』
この世界の流れから。
偶然にしては綺麗すぎる。
必然にしては歪んでいる。
私は空を仰ぎ、見えない次元の果てを見据えて笑う。
『やはり退屈しそうにないね。次は何をするんだい?リムル=テンペスト』
読んでいただきありがとうございました。
前回と比べると文章量が劣っていますが、どうでしたでしょうか?
それと、読者の皆様に質問があります。
今後の展開を、書籍版で進めるか、web版で進めるか……。
一応今はweb版で書いています。ただ、展開でいうと書籍版もいいな、と。
皆様の知恵をお貸しください!
それではまた次回!
どちらで進めるのがいいですか?
-
書籍版の展開で!
-
web版の展開で!