今回は牙狼族編となります。
それではどうぞ!
『ほう、村の周りに柵を設置したか』
下に映るゴブリンの村を見下ろしながら、私は空中でくるりと回転する。
『しかも蜘蛛の糸で補強...なるほど、単なる木柵ではないということか』
「ああ、これなら牙狼族といえども柵に当たればただでは済まないだろ?」
『しかもゴブリン達の特訓までしているとはな。最初に会った時とは大違いだ、リムル』
「へへ、そうか?」
『ああ、段々と指導者らしくなってきたじゃないか』
所詮はオオカミ型の魔物...ここまでゴブリン達が対策を練っているとは考えないだろう。
さて—
『HAHA!これはいいショーになりそうだ!』
『スライムとゴブリンvsオオカミの群れ!』
『ポップコーンでも欲しいところだな!』
夜。
森の奥。
黒い影が無数に駆けてくる。
...む。80匹...いや、83匹か。
『後方から回り込もうとしている個体が、3』
なるほど。多少は頭を使うらしい。
中々のスピードで向かってきている。
『リムル、そろそろ来るぞ』
「よし」
「お前らー!警戒体制に入れ!」
ゴブリン達が一斉に動く。
「来たな」
牙狼族の先頭が柵へ突っ込んだ。
だが——
バチン!!
粘糸が引き絞られ、狼の身体が弾き返される。
「ギャウッ!?」
『HAHAHAHA!』
思わず笑い声が漏れた。
『見事だな。真正面から突っ込んだら、ただの自殺だ』
柵の隙間—矢狭間からゴブリン達が弓を放つ。
ヒュッ
ヒュッ
ヒュッ
矢は決して上手くはない。
だが、数が多い。
「ギャゥン?!」
数匹の牙狼が倒れた。
柵をよじ登ろうとした個体がいたが—
ザシュッ!
潜んでいたゴブリンに、石斧で首を叩き割られる。
『ほう……連携も悪くない』
「よーし!そこで止まれ。このまま引き返すなら何もしない。さっさと立ち去れ!!!」
リムルが警告をする。さて、どう動くか。
グルルルルッ!!
ボスと思わしき牙狼族が突撃した。
『おやおや』
私は首を傾げた。
『賢い方かと思ったが、ただの馬鹿だったか』
やれやれ、力量すら分からないか。
一瞬。
ほんの一瞬だけ、世界が歪む。
(今、この一匹の内側と外側を反転させたらどうなるだろう?)
そんな考えがよぎる。
『……やめておこう』
『それじゃあ、つまらない』
大地を駆け抜け、飛び込んでくる。
だが、次の瞬間—
ベチャッ!
粘糸に絡め取られ、動きが止まる。
その一瞬。
リムルの水刃が閃いた。
ザンッ!!
ボスの首が飛ぶ。
『...あっけない』
私は空中でくるくると回転する。
『ボスの自覚はなかったのか?』
リムルが叫ぶ。
「聞け、牙狼族よ!」
牙狼族が動きを止める。
「お前らのボスは死んだ!!!」
森が静まり返る。
「お前らに選択させてやる。服従か、死か!」
リムルは牙狼族に問いかける。
...さて、どう動く?
なかなか奴等からの返事はない。
すると
ズズッ
リムルがボスの死体を捕食する。
そして、巨大な牙狼族の姿へと姿を変える。
『ほう』
『それは中々に面白い能力だな』
グルッ、ウォーーーーーーーーーーーン!!!
とリムルが大音声で咆哮『威圧』した。
「クククッ! 聞け。今回だけは見逃してやろう。我に従えぬと言うならば、この場より立ち去れ!!!」
大方そんなことを言ってるのだろう。
『HAHA!いい演技だな、リムル』
すると、牙狼族全員がリムルに服従をした。
『服従、か。賢い選択だ』
こうして、ゴブリン村での戦いは終結した。
『ハッピーエンド、か?』
私は肩をすくめる。
『いやいや...後片付けの方が、面倒だろうさ』
翌朝。
リムルが作戦を話してくれた。
リムルが言うに、ゴブリン達に牙狼の面倒を見させる作戦!らしい。確かにゴブリンの総数が74匹、牙狼族の総数が81匹だ。ちょうど良いだろう。
「えーと、君達。これから君達には、ペアとなって一緒に過ごして貰う事になります!」
リムルが宣言する。嫌がる素振り見せる者は誰1人としたいないようだ。
「意味は判るか? 取り合えず、二人一組になってくれ!」
そうリムルが言った途端、続々とペアができていく。
コイツら、昨日まで殺し合いをしてたというのに...適応が早いものだ。
「村長、お前らを呼ぶのに不便だ。名前を付けようと思うが、いいか?」
「よ、宜しいの・・・ですか?」
村長がおそるおそるといった様子でリムルに問いかける。何か制約でもあるのだろうか。
「お、おう。問題ないなら、名前をつけようと思う」
リムルがそう言った途端、歓声が上がる。
リムルが村長に名前をつける。どうやら、村長の息子につけられた名前がリグルという名前だったらしい。語呂がいいからということでリグルドという名前をつけるようだ。
「息子にこの名前を継がせる許可までいただき、感涙に耐えませぬ!!!」
そして、リムルは次々とゴブリン達に名前をつけていく。皆幸せそうにしている。
「リムル様…大変有難いのですが……、その、宜しいのですか?」
「む? まあ、問題ないだろ。」
『...村長、いやリグルドか』
「は、はい!なんでしょうか。三角様」
『私の名前はビル・サイファーだ。リグルド、名前を与えると何かあるのか?』
「おや、三角様は知りませんでしたか。魔物に名前を与えると、魔素を大きく消費するのです」
『ああ、なるほど!』
HAHAHA、リムルはそんなことは知らないという顔をしている。これは...魔素の使い過ぎで眠り込むことになるんじゃないか?
リムルが牙狼達の長の息子に、ランガという名前をつけた瞬間。ぐったりとし始めた。
『やれやれ』
『魔素切れだな』
リグルド達が必死に介抱をする。焚き火の近くの上座に座らせるようだ。
——リムルの精神世界。
『おやおやおや、リムル君』
『随分と派手にやったじゃないか』
(あ、ビル...あれ、てかなんで話せてるんだ?)
『HAHA!私は夢の悪魔だぞ?』
『眠ってる状態の他人の精神世界に入るくらい、私にとっては朝飯前というやつさ』
(はは、流石だな...てか、なんで魔素が急になくなったんだ?)
『おや、まだ気づいてなかったか』
『名前だよ、リムル』
私は指を鳴らした。
『魔物に名前を与える行為は、魔素を与えるのと同義らしい』
(あ、そゆこと?!)
『自分の一部を切り分けて配っているようなものだな』
(リグルドのやつ、なんで教えてくれなかったんだ)
『HAHA!無知ってのは怖いな!』
(リグルド達に文句言いてえ...)
『彼らにとっては、常識なんだろうさ』
こうして。
リムルの睡眠が解けるまでの3日間——
スライムの夢の中で話し相手をしてやった。
退屈は、何より嫌いだからね。
ああ、そうだ。
この森—もうすぐもっと面白くなるぞ?
腹を空かせた連中が来るんだ。
それも...とびきり大勢な。
数も質も、今までとは桁が違う。
そして何より——理性がない。
HAHAHAHA!
読んでくださりありがとうございます!
受肉のことをすっかり書いておらず、「は?」となった方もいらっしゃると思われますので、ビルさんが解説してくれるそうです。
『やあ人間共!
その手に持ってるポテトチップス、あとで寄越してくれよ?
さて、私の体についてだったな。
簡単な話だ。
この世界には「魔素」って便利なエネルギーがあるだろう?
どうやら私、この世界に降り立った時—
無意識にそいつを使って体を作っていたらしい。
HAHA!
どうやらこの世界、なかなか気が利くじゃないか。
つまりだ。
この体は—
魔素で出来た仮の身体ってわけだ。
ま、そんなところだ。
それじゃあ人間共。
また会おうじゃないか。』
どちらで進めるのがいいですか?
-
書籍版の展開で!
-
web版の展開で!