夢の悪魔は異世界を嗤う   作:カカイリ

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第3話です!
本当はこの話でドワーフ王国の門まで行く予定だったんですが、そうなると3000字超えちゃうので、読みにくいかなと思い、一旦ここで区切ることにしました。
4話と5話で終わらせようかなと思ってます。
それではご覧ください!


03話 夢の悪魔の文明観察

牙郎族との戦いから3日後。

低位活動状態になっていたリムルが、ようやく目を覚ました。

 

目の前には-—

進化したゴブリン達。

 

そして何故か、全員が進化している元牙狼族達がいた。

 

「...で、ランガ。俺はお前の名前しかつけてないはずだが、なんで牙狼達全員が進化してるんだ?」

 

黒い狼—ランガは胸を張って言った。

 

「我が主よ!我等、牙狼族は"全にして個"なのです。故に、我が名は種族名となったのです!」

 

『ほう』

 

『集団で生きる者達としては、実に完成された形だな』

 

1匹の名が、群れ全体の名となる。

つまり、ランガは群そのもの。

なるほど。これはいい生存戦略だ。

ランガによると、前のボスは"全にして個"を信じきれていなかったらしい。もし信じきることができていれば、結果は変わっていたのかもしれないな。

だが。

今の群れは違う。ランガは同胞の完全支配に成功し、牙狼族から嵐牙狼族へと群れ全体が進化したようだ。

 

「へぇ...すげぇな」

 

リムルが感心する。

 

「お褒めに預かり光栄です!」

 

ブォンブォンブォンブォン!!

嬉しそうに尻尾をフル回転する。リムルが風圧で吹き飛ばされそうになる。

 

『HAHAHAHA!そのまま飛べるんじゃないか?』

 

そして。

 

リムルが周囲を見渡すと—

そこには山のような食料が積まれていた。

果物、木の実、肉。

ゴブリン達と狼達が集めてきたものらしい。

 

「これ……どうしたんだ?」

 

リグルドが前に出る。

 

「進化を祝う宴のためにございます!」

 

「しかし!」

 

リグルドが続ける。

 

「リムル様の回復が終わっておりませんでしたので、皆でお待ちしておりました!」

 

「……」

 

リムルは少し驚いた顔をする。

 

『随分と忠義を尽くしているじゃないか』

 

私は肩をすくめる。

 

『悪くない』

 

進化と同時に知性も上がっている。以前の彼等では、こんな食料を前にして、リムルが起きるまで手を出さず待てるはずがない。

 

「食の安定とか、色々課題は残ってるけど...」

 

そして、声を張り上げる。

 

「まずは宴だ!!」

 

「おおおおお!!」

 

歓声が上がる。

 

宴は、夜遅くまで続いた。

肉を焼き、果実酒を飲み、歌い、踊る。

私は焚き火の上でゆっくり回転しながらそれを眺めていた。

 

『HAHA』

 

『文明の第一歩は、いつだって宴から始まる』

 

実に愉快なショーだ。

 

 

 

 

 

次の日の朝。

リムルは全員を集めた。なにか演説をするつもりらしい。

 

「集まったかな?では、ルールを発表する!ルールは三つ。最低この三つは守って欲しい。」

 

どうやら決まりを作るらしい。確かに、ここまでの規模になってくるとルールがないとまとめ上げるのは難しい。

 

1つ、人間を襲わない。

2つ、仲間内で争わない。

3つ、他種族を見下さない。

 

簡単だが、重要なルールだ。特に1つ目。人間社会と敵対すれば、種族の存亡に関わってくる。

 

「宜しいでしょうか!」

 

リグルが手を挙げた。

 

「何故、人間を襲ってはならないのでしょうか?」

 

リグルドが鬼の形相で睨んでいる。

だがリムルは気にせず答える。

 

「簡単な理由だ。俺が人間が好きだから!以上」

 

「なるほど!理解しました!」

 

なんとも単純な理由だ。

だが、リムルは慌てて補足する。

 

「ええとな、人間は集団で生活してる。手を出すと、大きな反動が来る場合もある。本気で向かってこられると、太刀打ち出来ないだろう」

 

それは事実だ。人間は弱い。

 

だが—

数と文明を持つ。

 

「そういう訳で、此方からは手出し禁止!それに、仲良くする方が得だしな…」

 

貿易、技術、情報。

 

他種族との関係は重要になる。

 

中々賢い判断だ。

 

『...ほう』

 

私は空中でくるりと回る。

 

『実に“らしい”ルールだ』

 

「だろ?人間と敵対してもいいことないしな」

 

『HAHA、確かに。数も多いし、面倒な連中だ』

 

『それに——』

 

一瞬だけ。

 

視界の奥に、別の光景が重なる。

 

血。

 

静寂。

 

燃え上がる国。

 

動かない者達。

 

守られなかった者達。

 

空を裂くような悲鳴。

 

そして——

 

その中心で、動かず立ち尽くすリムル。

 

 

『...いや、やめておこう』

 

「ん?」

 

『何でもないさ』

 

私は肩をすくめる。

 

『ただ、そのルール』

 

にやり、と歪む単眼。

 

『いつか、守れない日が来るかもしれないな、と思っただけだ』

 

「は?」

 

『HAHA!気にするな!ただの冗談さ!』

 

 

リムルは怪訝そうにこちらを見る。

 

だが、それ以上は何も言わなかった。

 

 

——この時。

 

その言葉の意味を、理解できた者は誰もいなかった。

 

『...』

 

誰にも聞こえないほどの小さな声で、私は呟く。

 

『その時、君は——どんな顔で、それを選ぶんだろうね?』

 

 

「...ま、いいか」

 

「他に何かあるか?」

 

 

「他種族を見下さない...というのは?」

 

リムルが答える。

 

「いや、お前ら進化して強くなっただろ? 調子に乗って、弱い種族に偉そうにするなよ! って意味だよ」

 

 

「ちょっと強くなったからと言って、偉くなったと勘違いするな!いつか相手が強くなって、仕返しされてもつまらないだろ?」

 

皆、真剣に聞いている。リムルが決めた事だ。破る者は少ないだろう。

 

「そんな所だ。なるべく守るようにしてくれ!」

 

そうして、その場は解散になった。

 

 

 

 

私は暇だったので。

柵に使われていた木材を浮かせて遊んでいた。

木材はぐにゃりと曲がり—やがてメビウスの輪の形になる。くるくると回る建材。

リムルはリグルドをゴブリンロードに任命している。元々村長だった訳だし、適任だろう。

 

「ビル」

 

リムルは呆れた顔で言う。

 

「何してるんだよ」

 

『HAHA!柵で遊んでいるだけだ』

 

「さっさと戻してくれよ」

 

リムルがリグルドを見る。

 

「で、だ。リグルド。家を建ててる様子を見ていたが、下手だな」

 

「お恥ずかしい話です...。今までは、そこまで大きい建物など必要無かったもので...」

 

「ふむ。まあ、大きくなったしな。あとは、衣服関係だが...ちょっと露出が酷すぎる。調達出来ないのか?」

 

「あ!今まで何度か取引をした事のある者達が居ります。その者達からならば、衣服の調達なども行えるやもしれませぬ!それに、器用な者達なので、家の作り方も存じておるやもしれませぬ!」

 

『私が作ってやってもいいんだぞ?』

 

「どうせ変な仕掛けがついてくるだろ」

 

『HAHA!正解だ!』

 

「...全く。なるほど。行ってみるのもいいかも知れないな。で、何で取引してたんだ?金か?」

 

「いえ、冒険者の身包みを剥いだ金銭等も多少はありますが、放置してあります。金よりも、物々交換や雑用で物資を工面して貰っておりました。我らの道具は、その者達に用意して貰ったものなのです。」

 

「ほう。で、何ていう者達だ?」

 

『当ててやろう。ドワーフ族だ』

 

「おお!正解ですぞ、ビル様。我らが取引していたのはドワーフ族です!」

 

「なんでわかったんだ?」

 

『簡単さ』

 

『鍛冶、道具、建築』

 

『この三つが揃えば大抵ドワーフだ』

 

「流石だな。... 行ってみる。リグルド、準備は任せても良いか?」

 

「!!!お任せ下さい!今日の昼には、全ての用意を整えましょう!!!」

 

張り切っているな。流石人...いや、魔物たらしのリムルだ。

 

 

 

 

 

 

 

『ほう』

 

私は空中から村を見下ろす。

 

『これは面白い』

 

牙狼族は偵察と護衛。

ゴブリン達は建築と狩り。

連携は驚くほど良い。たった数日で、村の規模は数倍近くになっている。

本来、違う種族の魔物達はここまで組織的には動かない。

 

だが—

あのスライムの元では違う。

 

『HAHAHAHA』

 

『村作り、進化、文明』

 

『さて、次は何だ?』

 

『魔王か?戦争か?』

 

 

一瞬、間を置く。

 

 

『——それとも、もっと面白い何かか?』

 

 

「おーい、ビル!」

 

リムルが呼びかけてくる。

 

「ちょっと来てくれ!」

 

『ああ、今行く』

 

 

夢の悪魔は——

胸を躍らせていた。

次のショーを、心から楽しみにして。




読んでくださり、ありがとうございました!
このまま次も読んでくれると嬉しいです!
それと、読者としてはどれくらいの文字数が一番読みやすいんですかね?
ではまた!

どちらで進めるのがいいですか?

  • 書籍版の展開で!
  • web版の展開で!
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