本当はこの話でドワーフ王国の門まで行く予定だったんですが、そうなると3000字超えちゃうので、読みにくいかなと思い、一旦ここで区切ることにしました。
4話と5話で終わらせようかなと思ってます。
それではご覧ください!
牙郎族との戦いから3日後。
低位活動状態になっていたリムルが、ようやく目を覚ました。
目の前には-—
進化したゴブリン達。
そして何故か、全員が進化している元牙狼族達がいた。
「...で、ランガ。俺はお前の名前しかつけてないはずだが、なんで牙狼達全員が進化してるんだ?」
黒い狼—ランガは胸を張って言った。
「我が主よ!我等、牙狼族は"全にして個"なのです。故に、我が名は種族名となったのです!」
『ほう』
『集団で生きる者達としては、実に完成された形だな』
1匹の名が、群れ全体の名となる。
つまり、ランガは群そのもの。
なるほど。これはいい生存戦略だ。
ランガによると、前のボスは"全にして個"を信じきれていなかったらしい。もし信じきることができていれば、結果は変わっていたのかもしれないな。
だが。
今の群れは違う。ランガは同胞の完全支配に成功し、牙狼族から嵐牙狼族へと群れ全体が進化したようだ。
「へぇ...すげぇな」
リムルが感心する。
「お褒めに預かり光栄です!」
ブォンブォンブォンブォン!!
嬉しそうに尻尾をフル回転する。リムルが風圧で吹き飛ばされそうになる。
『HAHAHAHA!そのまま飛べるんじゃないか?』
そして。
リムルが周囲を見渡すと—
そこには山のような食料が積まれていた。
果物、木の実、肉。
ゴブリン達と狼達が集めてきたものらしい。
「これ……どうしたんだ?」
リグルドが前に出る。
「進化を祝う宴のためにございます!」
「しかし!」
リグルドが続ける。
「リムル様の回復が終わっておりませんでしたので、皆でお待ちしておりました!」
「……」
リムルは少し驚いた顔をする。
『随分と忠義を尽くしているじゃないか』
私は肩をすくめる。
『悪くない』
進化と同時に知性も上がっている。以前の彼等では、こんな食料を前にして、リムルが起きるまで手を出さず待てるはずがない。
「食の安定とか、色々課題は残ってるけど...」
そして、声を張り上げる。
「まずは宴だ!!」
「おおおおお!!」
歓声が上がる。
宴は、夜遅くまで続いた。
肉を焼き、果実酒を飲み、歌い、踊る。
私は焚き火の上でゆっくり回転しながらそれを眺めていた。
『HAHA』
『文明の第一歩は、いつだって宴から始まる』
実に愉快なショーだ。
次の日の朝。
リムルは全員を集めた。なにか演説をするつもりらしい。
「集まったかな?では、ルールを発表する!ルールは三つ。最低この三つは守って欲しい。」
どうやら決まりを作るらしい。確かに、ここまでの規模になってくるとルールがないとまとめ上げるのは難しい。
1つ、人間を襲わない。
2つ、仲間内で争わない。
3つ、他種族を見下さない。
簡単だが、重要なルールだ。特に1つ目。人間社会と敵対すれば、種族の存亡に関わってくる。
「宜しいでしょうか!」
リグルが手を挙げた。
「何故、人間を襲ってはならないのでしょうか?」
リグルドが鬼の形相で睨んでいる。
だがリムルは気にせず答える。
「簡単な理由だ。俺が人間が好きだから!以上」
「なるほど!理解しました!」
なんとも単純な理由だ。
だが、リムルは慌てて補足する。
「ええとな、人間は集団で生活してる。手を出すと、大きな反動が来る場合もある。本気で向かってこられると、太刀打ち出来ないだろう」
それは事実だ。人間は弱い。
だが—
数と文明を持つ。
「そういう訳で、此方からは手出し禁止!それに、仲良くする方が得だしな…」
貿易、技術、情報。
他種族との関係は重要になる。
中々賢い判断だ。
『...ほう』
私は空中でくるりと回る。
『実に“らしい”ルールだ』
「だろ?人間と敵対してもいいことないしな」
『HAHA、確かに。数も多いし、面倒な連中だ』
『それに——』
一瞬だけ。
視界の奥に、別の光景が重なる。
血。
静寂。
燃え上がる国。
動かない者達。
守られなかった者達。
空を裂くような悲鳴。
そして——
その中心で、動かず立ち尽くすリムル。
『...いや、やめておこう』
「ん?」
『何でもないさ』
私は肩をすくめる。
『ただ、そのルール』
にやり、と歪む単眼。
『いつか、守れない日が来るかもしれないな、と思っただけだ』
「は?」
『HAHA!気にするな!ただの冗談さ!』
リムルは怪訝そうにこちらを見る。
だが、それ以上は何も言わなかった。
——この時。
その言葉の意味を、理解できた者は誰もいなかった。
『...』
誰にも聞こえないほどの小さな声で、私は呟く。
『その時、君は——どんな顔で、それを選ぶんだろうね?』
「...ま、いいか」
「他に何かあるか?」
「他種族を見下さない...というのは?」
リムルが答える。
「いや、お前ら進化して強くなっただろ? 調子に乗って、弱い種族に偉そうにするなよ! って意味だよ」
「ちょっと強くなったからと言って、偉くなったと勘違いするな!いつか相手が強くなって、仕返しされてもつまらないだろ?」
皆、真剣に聞いている。リムルが決めた事だ。破る者は少ないだろう。
「そんな所だ。なるべく守るようにしてくれ!」
そうして、その場は解散になった。
私は暇だったので。
柵に使われていた木材を浮かせて遊んでいた。
木材はぐにゃりと曲がり—やがてメビウスの輪の形になる。くるくると回る建材。
リムルはリグルドをゴブリンロードに任命している。元々村長だった訳だし、適任だろう。
「ビル」
リムルは呆れた顔で言う。
「何してるんだよ」
『HAHA!柵で遊んでいるだけだ』
「さっさと戻してくれよ」
リムルがリグルドを見る。
「で、だ。リグルド。家を建ててる様子を見ていたが、下手だな」
「お恥ずかしい話です...。今までは、そこまで大きい建物など必要無かったもので...」
「ふむ。まあ、大きくなったしな。あとは、衣服関係だが...ちょっと露出が酷すぎる。調達出来ないのか?」
「あ!今まで何度か取引をした事のある者達が居ります。その者達からならば、衣服の調達なども行えるやもしれませぬ!それに、器用な者達なので、家の作り方も存じておるやもしれませぬ!」
『私が作ってやってもいいんだぞ?』
「どうせ変な仕掛けがついてくるだろ」
『HAHA!正解だ!』
「...全く。なるほど。行ってみるのもいいかも知れないな。で、何で取引してたんだ?金か?」
「いえ、冒険者の身包みを剥いだ金銭等も多少はありますが、放置してあります。金よりも、物々交換や雑用で物資を工面して貰っておりました。我らの道具は、その者達に用意して貰ったものなのです。」
「ほう。で、何ていう者達だ?」
『当ててやろう。ドワーフ族だ』
「おお!正解ですぞ、ビル様。我らが取引していたのはドワーフ族です!」
「なんでわかったんだ?」
『簡単さ』
『鍛冶、道具、建築』
『この三つが揃えば大抵ドワーフだ』
「流石だな。... 行ってみる。リグルド、準備は任せても良いか?」
「!!!お任せ下さい!今日の昼には、全ての用意を整えましょう!!!」
張り切っているな。流石人...いや、魔物たらしのリムルだ。
『ほう』
私は空中から村を見下ろす。
『これは面白い』
牙狼族は偵察と護衛。
ゴブリン達は建築と狩り。
連携は驚くほど良い。たった数日で、村の規模は数倍近くになっている。
本来、違う種族の魔物達はここまで組織的には動かない。
だが—
あのスライムの元では違う。
『HAHAHAHA』
『村作り、進化、文明』
『さて、次は何だ?』
『魔王か?戦争か?』
一瞬、間を置く。
『——それとも、もっと面白い何かか?』
「おーい、ビル!」
リムルが呼びかけてくる。
「ちょっと来てくれ!」
『ああ、今行く』
夢の悪魔は——
胸を躍らせていた。
次のショーを、心から楽しみにして。
読んでくださり、ありがとうございました!
このまま次も読んでくれると嬉しいです!
それと、読者としてはどれくらいの文字数が一番読みやすいんですかね?
ではまた!
どちらで進めるのがいいですか?
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