夢の悪魔は異世界を嗤う   作:カカイリ

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第5話です!

今回はドワーフ王国編の、カイジン達との出会いです。
少し、鍛冶場の様子が何かおかしくなってる気がします。
気のせいだといいですが。

それではどうぞ!


05話 天才美少女魔法使い(笑)の誕生

 

『HAHAHA!実に見事な投降だったよ、リムル君!3次元の住民らしく、重力に負けてあっけなく捕まった姿と言ったら...最高のコメディだ!』

 

私は警備隊の詰め所、そのど真ん中の空中に浮きながら、腹を抱えて笑っていた。

 

ドワーフの連中は、私という「黄金の幾何学的存在」を前にして、捕獲の手を止めるべきか、それとも拝むべきか迷っているような滑稽な顔をしていたよ。

 

 

さて。

 

床をチーズケーキに変えてやろうかと悩んでいる私の横で、リムルが必死に嘘を並べていた。

 

「実はですね…、僕、魔法使いに呪いをかけられたのです。多分、僕の才能に嫉妬したのでしょう…。僕は幻覚魔法の使い手だったのですよ」

 

私は宙返りしながら、彼の脳内で響く「ミス電卓」の呆れた気配を楽しんでいた。

だが、スライム君の嘘はあまりにパンチが足りない。だから少し、味付けしてあげよう。

 

『やれやれ、リムル。いつまで隠し通すつもりだい? 観念して真実を話してしまいなよ』

 

「おい、ビル!余計なことを——」

 

『HAHA!仕方ない。私が説明してあげよう!』

 

私はパチンと指を鳴らした。

影が歪む。床に落ちたリムルの影が伸び、ねじれ、やがて1人の少女の輪郭を形作った。

 

『実はね、隊長さん。この哀れなスライム...元々は、天才美少女魔法使いだったのさ!』

 

私は、スラスラと頭の中にストーリーを作っていく。

 

『彼女はあまりに才能に溢れていた。それに嫉妬した邪悪な北の魔女が、瑞々しい肉体を奪い、ドロドロの不定形に変える呪いをかけたんだ!』

 

影の少女は崩れ、スライムへと形を変える。

 

「「……はぁ?!」」

 

隊長とリムルの声が重なる。

いい反応だ。

 

『そして私は——』

 

影が私と繋がる。

 

『その魔女に使わされていた呪いの監視役。彼女が二度と人間の姿に戻れないよう、こうして四六時中付きまとっているのさ! 』

 

「監視役...だと?」

 

「そ、そうなんですよ!実は、その呪いを解くために——」

 

それからの2時間は、まさに喜劇だった。

 

リムルが話を盛り、隊長が補強し、私が捻じ曲げる。

 

気付けばそこには——

「僕っ娘の天才美少女魔法使いが呪いを解く旅に出る物語」が完成していた。

 

10巻はいけるね。

 

『HAHAHA!傑作だ!』

 

「…俺たち、何やってんだ?」

 

『創作活動さ。誇りたまえよ』

 

リムルと隊長が、妙な達成感を共有している。

 

...私は仲間外れかい?

 

『そんなにその姿が嫌なら、中身を本物の美少女に詰め替えてあげようか? 歯茎の代わりにピアノの鍵盤を埋め込むのもオシャレだぞ!』

 

「絶対にやめろ!!」

 

おっと、口に出して断られた。相変わらず冗談の通じないスライムだ。

 

「よし!調書が完成した!協力感謝する!しかし、君達の身柄は…」

 

そこへ、バッターン!と1人のドワーフが飛び込んできた。

彼の話を聞くと、鉱山でアーマーサウルス、という魔物が暴れたらしい。

 

私は目を細めた。

 

『おやおや、いい匂いがしてきたじゃないか。恐怖、焦燥、そして...絶望の匂い』

 

ドワーフの慌てぶりって言ったら...最高だったよ。

薬が無い。治癒士もいない。

彼らの知人に「死」が迫っていると言うのに、右往左往するばかり。

 

そこで、我らが天才美少女魔法使い(笑)が動いた。

ペッ!と吐き出された回復薬。

 

「…?あ、何だこれは?」

 

「回復薬ですよ。飲んで良し! 掛けて良し! の優れものですよ!」

 

「は?何でスライムのお前が、回復薬なんて持ってるんだ?」

 

HAHA!さっきの設定はどこへ行ったのやら。

 

髭面の隊長は、藁をも掴む思いでそれを持って走り去っていった。

 

私は暇つぶしに、彼の影を通して少し見させてもらった。

 

あの薬、ただの癒着じゃない。

 

細胞の時間を強引に巻き戻すような、この世界の理を無視した高純度のエネルギーの塊だ。

千切れた腕がくっつくどころか、ついでに持病の腰痛まで治るとはね!

 

『...いいね、さっきの回復薬』

 

「だろ?死んでなかったら、大体の怪我は治る特注品だ」

 

『今度もらおう』

 

「やらんぞ?」

 

ケチな神様もいたもんだ。

 

 

 

1時間後。

待ってる間暇だったので、リムルと一緒にゴブタをサイコロ代わりに遊んでいると、隊長が帰ってきた。

 

「助かった!ありがとう」

 

部屋に入ってくるなり、頭を下げて感謝をリムルに述べてきた。

さらに、3人のドワーフも感謝を述べる。

 

「あんたが、薬をくれたんだってな!ありがとよ!!!」

 

「正直、腕が千切れかけてて、生き残れても仕事なくなるとこだった…ありがとう!!!」

 

「………」

 

彼らの目には、確かな光が宿っていた。

 

...つまらない。

だが、同時に興味深い。

 

「救い」というやつも、悪くない材料だ。

 

 

 

 

翌日。

 

感謝の嵐の中で、リムルは解放された。

さらには、金色の金属25枚を手に入れてね。

回復薬5個と交換したようだ。

 

 

「……なあ、ビル。あの話、結局あいつら信じてなかったろ」

 

『当然さ。だが、問題はそこじゃない』

 

「?」

 

『あの隊長は「悪魔付きのスライム」という厄介払いができるし、君は「恩人」として街を歩ける。嘘は、真実よりも世の中を滑らかにする潤滑油なのさ』

 

私は金貨をジャグリングしながら、空中でくるくると回転した。

 

「...まあ、結果オーライか。でも、いつかボロが出そうで怖いな……」

 

『安心したまえ。ボロが出たら、その時は街全体を燃えるチーズに変えてリセットしてしまえばいいんだから!』

 

「させるか!!」

 

 

 

 

 

 

ドワーフ王国の裏通り。

古びた、だが重厚な佇まいの工房の前に着いた。

 

昨日の髭面隊長...もといカイドウがそこへ入る。

 

「おい!兄貴、いるかい?」

 

何故か私達とカイドウは打ち解けていた。あんな話を一緒に作っただけはある。

 

「お邪魔しま〜す!」

 

「どうもっす!」

 

『失礼するよ』

 

各々セリフを言いながら、カイドウに続いて工房へ入る。

 

「「「あ!!!」」」

 

昨日のドワーフ3人組がこちらを見る。まさかまた会うことになるとは!

 

「何だ?お前達、知り合いか?」

 

「カイジンさん!このスライムですよ!!!昨日俺達を助けてくれた!!!」

 

「そうそう!隊長さん、旦那の弟さんだったんですね!」

 

「………」

 

「おお…!さっき話してたスライムか!昨日こいつらを助けてくれたそうだな、感謝する!」

 

「いやいや!それ程でもあるような、ないような?はっはっはっはっはーー!!!」

 

『おやおや、少し調子に乗りすぎじゃ無いかい?』

 

「それで、どうして今日はここへ?」

 

若干引きながら、私達に聞くドワーフ。

 

すると、我らがカイドウが手短に話してくれた。流石だな!

 

「話は判った。だが、スマン。力になれそうもない…。実はな、こっちも、とある国から依頼を受けててな…」

 

事情を聞けば、実にくだらない。

「ベスター」とかいう小役人が、王の前で彼に無理難題を押し付けたらしい。

材料もないのに、20本の剣を5日で作れ、だと?

 

『3次元の人間関係というのは、どこまでも陰湿で退屈だね。相手を困らせたいのなら、脳味噌をトウモロコシに変えるくらい大体にやればいいのに』

 

「お前にしかできないわ!」

 

いいツッコミだ。

 

「ふっふっふ。はっはっは!はぁーーーっはっはっは!!!おいおい、小物っぽい会話してんじゃないよ?親父!これ、使えるかい?」

 

ドン!と、リムルの胃袋から取り出されたのは、ただの石ころじゃない。

魔力を含み、怪しく脈打つ金属の塊。魔鉱塊だ。

 

「お、おい!これは魔鉱石...いや、魔鋼だと?!」

 

カイジンの目が飛び出さんばかりに見開かれた。

魂の匂いが変わった。絶望が、一瞬で狂信的なまでの希望に書き換えられる。

希望への移り変わりも、悪くはない。

 

 

リムルはここぞばかりに恩を売り、村の技術指導者の紹介を約束させた。

実に賢いスライムだ。無意識に「契約」の重要性を理解している。

 

「親父さん、残り4日。今日を入れても4.5日で、仕上げは可能なのかい?」

 

「…。正直、無理だと思ってる。それでも、やるしかねーんだよ!」

 

『HAHAHA!根性論かい?嫌いじゃない。でも、時間は残酷な時計の針さ。君が鉄を叩いてる間に、太陽は無慈悲に沈んでいくんだ』

 

「ビル、ちょっと黙ってろ。...親父さん、俺に策がある。明日は、落ち着いて最高の一本を仕上げてくれ」

 

「なんだと?お前、素人なんだろ?何が出来るって言うんだ?」

 

「秘密だ。信じろ!信じられないなら、好きにしな。だが、依頼は失敗するだろうけどね!」

 

私は工房の天井から逆さまに座り、リムルの「策」とやらを覗き見る。

 

『...なるほど』

 

一本さえ完璧な見本があれば、あとは彼の胃袋とミス電卓の力で、完璧なコピー品を量産可能ってわけだ。

 

『コピー品、量産、規格化! 文明の進化はいつだって味気ないね!』

 

『でも、そのベスターとかいう大臣が、完璧に揃った20本の剣を見て、どんな風に顔を青ざめさせるか...。その表情が見られるなら、私も少しだけ手を貸してあげてもいいかな?』

 

パチン。

 

私は指を鳴らす。

 

その瞬間、一瞬だけ炉の火が色を変えた。

 

赤でも青でもない。

 

「地獄の業火」だ。

 

空気が歪み、音が遅れる。

鉄を打つ音が、数拍遅れて響く。

 

時間が、わずかにズレる。

 

《告。個体名:ビルサイファーの干渉により、炉の温度が想定外の数値を確認》

 

《さらに、物理法則の逸脱を——》

 

『HAHA!いいだろう?最高の環境だ』

 

さあ、カイジン! 最高の剣を打つがいい!

名工のプライドと、スライムのチート能力、そして悪魔の悪戯心が混ざり合った、最高に不公平な製作作業の始まりだ!

 

 

夜は更けていく。

火花の散る工房の中で、私は次の「面白い展開」を夢見ていた。

明日、この場所でどんな奇跡が起きるのか……。

 

諸君、瞬きせずに見ておくんだな。

 

この物語は——

 

『次に目を開けた時、同じ形をしている保証はないんだからさ』

 




読んでいただきありがとうございました。

ビルとミス電卓...もとい大賢者とのやりとり、書いてて楽しかったので、今後はもっと増やしていきたいと思います。
地獄の炎に耐えれる炉って、冷静に考えるととんでもないですよね。

次の話は、例の小役人が出てきますね。顔のパーツでも入れ替えましょうか。

どちらで進めるのがいいですか?

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