確か4、5話で終わらせるって言ってたんですが...無理でしたね。すみません。思ったより長く使いそうです。
それではどうぞ!
明けて翌朝。
私は重力の方向を90度ひねり、天井を床にして座るという、極めて知性的な姿勢でその光景を眺めていた。
三次元の連中が必死に地面に足を着けているのを見ると、つくづく不自由な生き物だと思うね。
下では、4人のドワーフが魔鉱塊を唸りながら眺めている。
「...そんな希少なのか?これ」
リムルが呟く。
出した本人が、その価値を理解してないとはね。
「お前は、何を言ってるんだ?」
カイジンの呆れた声。
そこからは長かった。実に長い。
魔素だの、精霊工学だの、魔鉱石だの...
『要するに、この世界はファンタジーのテンプレートで塗り固められてるってことだろ?』
「お前、たまに雑だよな...」
『心外だな。本質をついてると言って欲しいね』
そんなことを話していると、魔物のランク等級の話も出てきた。
「そうなんすか!じゃあ、自分もBくらいっすかね?」
『「「「・・・・・・・・・」」」』
この時、リムルとゴブタ以外の全員が思っただろう。
お前がそう思うのなら、そうなんだろうな!、と。
...もう少し、自分の実力を把握した方がいいと思うぞ。
その後の話も続いたが、一つだけ興味深いものがあった。
『魔素を利用した、成長する剣ねぇ...』
「また何かろくでもないこと考えてるな?…いつか自分専用の刀は欲しいな」
リムルを見てみると、目をキラキラ輝かせていた。
今度、そういう類の剣に私の友人でも入れてプレゼントするのも面白いかもしれない。
待つこと10時間。
実に退屈で、素晴らしい時間だった。
私は炉の中を、地獄の炎に変えて手助けをしてやったのさ。
「…今日は妙に鉄の伸びがいいな。調子がいいぜ」
『環境がいいんだろう』
まあ、正確には世界の方を合わせてやってるんだがね。
そして完成した、一本のロングソード。
美しかった。
『無駄もない、余計な思想もない...素晴らしい』
「おお、わかるか。三角さんよ」
『私も本職までとは言えないが、そこそこ知ってるからね』
事実である。
数え切れないほどの武器を見て、壊し、捻じ曲げてきた。
「よし!ここからは、秘密の作業を行う。素材の確認をしたら、悪いけど、全員部屋から出てくれ!」
リムルがそう言い、全員を追い出す。
「材料は、この部屋に全部揃ってる。でも、いいのか?何なら手伝うぞ?」
「うむ。大丈夫だ! そんな事より、三日間、この部屋を覗くなよ?約束だぞ!?」
「解った。お前を信じて待ってるよ・・・。」
『私もかい?』
「いや、ビルは見張っててくれ。頼んだぞ」
『了解だよ、キャプテン・スライム。誰かが来たら、その顔のパーツを入れ替えてやろう!』
「そこまでしなくていいからな?」
扉を閉め、ショーが始まった。
リムルは剣を飲み込み、解析し、そして複製する。
その時間、わずか3分。
床には、カイジンが魂を込めて作った剣と「寸分違わぬ」剣が20本、整然と並んでいた。
『HAHAHA!職人の努力を3分でコピー!これだよ、これこそが君を気に入ってる理由だ、リムル!世界を真っ向からバカにしている!』
「ビル、お前はもう少し職人への敬意ってものを持てよ。俺だって、罪悪感で胸がいっぱいなんだから...」
リムルが呆れたように言ったが、私は笑いが止まらなかった。
『そうそう、その剣。少し気をつけたまえ』
私は一本のロングソードを指差す。
「...おい、お前なんかしただろ」
『持ち主の欲望を強める剣にしただけさ』
「さっさと戻せよ?」
『大丈夫だ。使い方次第だからね』
一瞬、間を置く。
『——もっとも、大抵はろくなことにならないがね』
「おい!」
HAHAHA!いい反応だ!
その後の、扉を開けたドワーフ達の顔と言ったら!
カイジンなんて、「...は?こりゃ、夢か?俺は寝てるのか?」と自分の頬を何回も叩いてた。あの顔を瓶に詰めて、私のコレクションに追加できれば最高だったんだがね。
そして夜。
私たちは祝杯をあげるため、紳士達の店へ向かった。
看板には、「夜の蝶」と書いてある。
リムルは、蛾だったらぶっ殺すぞ!とか考えたみたいだが...
「「「いらっしゃいませーーー!!!」」」
一瞬で崩れたな。
「うわーーー! 可愛いい!!!」
「ちょっとぉ!ワタシが先に目ぇつけてたのにぃ〜!!!」
おやおやおや、リムル君、さっきまで「嫌だけど、しょうがないなー」なんて殊勝な顔をしていたくせに、今やエルフのお姉様の膝の上で、とろけそうなほどリラックスしているじゃないか。
『リムル君?昨日の『呪われた美少女魔法使い』設定はどこへやったんだい? 今の君はただの「デレデレなスライム」だぞ!』
「ぶふっ! ちょ、お前、変なこと言うな! これは、その……交流だ、異文化交流!」
リムルが真っ赤になってプルプル震えるのを見て、エルフのお姉さんたちが「かわいいー!」とはしゃぎだす。
私は酒なんて飲まないが、この歓喜と好奇心混ざった空気は好物だ。サービスしてあげよう!
『レディ達!スライムとドワーフの自慢話より、もっとエキサイティングなものがみたいだろう?これが、本物の魔法さ!』
そう言いながら、私は指を鳴らす。
すると、お嬢さんたちが持っていたカクテルグラスの中から、色とりどりの光り輝く蝶が溢れ出し、店内の天井を舞い始めた。
「わあ! きれい……!」
『HAHAHA!まだ終わりじゃないぞ!』
私が空中で一回転すると、蝶は一斉に弾け、キラキラと光る金貨となって降り注いだ。
金貨が彼女達の手のひらに落ちると、それは自分自身が一番好きな花へと変わる。
「すごーい!三角形さん、面白いわね」
『HAHAHA!だろう?君達の瞳を、ダイヤモンドに変えることもできる。ああ、もちろん冗談さ!』
お嬢さん方に囲まれる私を見て、リムルが呆れたように呟く。
「お前、自分のファン増やしてどうするんだよ。...それズルくない?」
『おやおやおや、嫉妬かい?君も私のようになりたいのなら、そのスライムの体を引き伸ばして、五角形にしてあげようか?』
そんな楽しい時間は、下卑た声によって遮られた。
「おやおや、カイジン殿ではありませんか!いけませんな、この上品な店に下等な魔物など連れ込んでは!」
ドワーフにしては珍しい、細身で長身な男。
そう、ベスターだ。
なんともつまらなさそうな男だ、と思っていると。
「ふん!魔物には、これがお似合いよ!!!」
などと言って、リムルに水をぶっかけた。
『...ほう。私の友人に水をかけるとは、いい度胸だね。大臣君。君の脳ミソを内側からカツカツ叩いて、一生止まらない目覚まし時計に変えてやろうか?』
私が指を鳴らそうとしたその時。
ドォン!!
カイジンがテーブルを蹴り飛ばした。
「おい、ベスター。覚悟はできているんだろうな?」
そして...迷いのない拳が、大臣の顔面にめり込む!
『HAHAHA!いいぞ、カイジン!実にストレートで、人間らしい解決方法だ!もっとやれ!』
「あんま煽んなって...大臣を殴り倒すって、大丈夫かこれ」
『細かいところは気にしない方がいいさ』
リムルは少し不安そうだったが、私は知っている。
欲望に囚われたベスターの醜い心が、この後さらに滑稽なダンスを踊ることをね。
カイジンは殴り倒した大臣を見下ろし、リムルに笑みを向けた。
「リムルの旦那、腕のいい職人を探していたよな!俺じゃ不足かい?」
「その言葉、待っていたぞ!宜しく頼むぞ、カイジン!」
暴力!友情!逃亡!
『物語のスパイスが、全部揃ったじゃないか!』
——次の舞台は、王の前だ。
読んでいただきありがとうございました。
ベスターをもう少し酷い目に合わせてもよかったかも...?
まあ、ビルが指を鳴らさなくてよかったです。
次の話では、いよいよガゼル王です。どうなることやら...
どちらで進めるのがいいですか?
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書籍版の展開で!
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web版の展開で!