他の話に比べると、少し短いですかね。
それと期間が空いてしまい申し訳ないです。
それではどうぞ!
ドワルゴンでの五日間は、退屈凌ぎには最高のショーだった。
法廷で石の像のように固まっていたあの英雄王の魂を見るのも一興だったが、やはり外の世界はもっといい。
森の入り口で緑色達と合流した。
そして旅立ちの瞬間、笑える余興が始まった。
あの忠犬ランガが、尻尾を千切れんばかりに尻尾を振って「我の背中にリムル様を!」と目を輝かせていたのに、リムルは実に無慈悲な宣告を下したんだ。
「ランガ、ドワーフの二人を乗せてやれ」
——その瞬間のランガの顔と言ったら!
まるで世界中の骨ガムが消滅したような絶望。
そして次の瞬間には、「このボケ共を食い殺せば問題解決では?」という、あまりにも純粋で暴力的な解答に辿り着いていた。
嫉妬に狂うオオカミなんて、そうそう見れるものじゃない。
『やあやあランガ君。そんなに嫌なら、いっそ彼らを骨ごとバラしてから影の中に詰め込めば——』
「ちょっとビルさーん?変な事言うのやめてもらえますー?」
おやおや、リムルにストップをかけられてしまった。
中身を整理してから収納するだけだというのに。
まあ結局、リムルが「俺も黒狼に擬態するから、性能確認のために頼む」なんて甘い言葉を投げかけたおかげで、ランガはシャッキーン!と立ち直った。
そして、リムルが擬態に成功すると——
「素晴らしい!!流石は我が主!!!」
「ふはは!そうだろうとも!お前もこの姿に進化出来るように、励めよ!」
「はは!その期待に応えてみせましょう!」
三次元の忠誠心っていうのは、なんて安上がりで、なんて愛おしいバグなんだろうね。
リムルが擬態した黒嵐星狼テンペストスターウルフをカイジンとガルムが見た瞬間、泡を吹いて気絶した。
リムルは疑問に思っていたようだが……彼らからすれば、目の前に通常よりも大きい黒狼が出現したのだ。生命の危機を感じて当然だろう。
リムルは練習してたらしい『粘糸』で、気絶していた彼らを固定し出発した。
行きと同じく私は隣で浮きながらついていく……が、明らかに速い。
時速100kmオーバーは確実だろう。
この世界の文明レベルからすれば、文字通り魂が置き去りになる速度だ。
ランガの背中にいたドルドとミルドは、目を見開いたまま魂が口から半分ほどはみ出していたよ。
『いいぞ、リムル!もっと飛ばせ!いっそ光速まで加速して、彼らの分子をこの空間にぶちまけてみようじゃないか!』
もちろん、却下された。彼は意外と過保護だからね。
そうそう、忘れていけない奴がいる。
あの緑色の天然記念物、ゴブタだ。
リグル達が黒狼の召喚に四苦八苦してる横で、「呼んだら来てくれたっす!」なんて言い放つ。
「だが、有り得るな。何しろ、ゴブタはこのドワーフ王国とゴブリン村を、徒歩で往復しているのですから!」
往復4ヶ月、これほどの距離を歩いて旅をするなんて真似、常人にはできないだろう。
彼の脳内構造には興味が尽きない。
才能に全振りしているのか、あるいは神に愛されすぎているのか……。彼が寝ているときに、脳内を覗いてみようか。
「なんか寒気がするっす...」
『気のせいじゃないか?』
HAHA!勘がいい奴だ。
◆
夜になった。
リムルが新たな能力の確認をしたいと言うので、私も付き合うことにした。
『ふむ。それで、黒稲妻というスキルを試したいと』
「そうそう、このスキルの性能次第で黒嵐星狼テンペストスターウルフの強さが変わるかもしれないし」
『ならあの大岩がいい。壊れても誰も困らない』
「よーし、やるか」
スライムに戻ったリムルが狙いを定める。
そして——
ピカッ! ………チュドーーーーーン!!!
……これは中々だ。
大岩は跡形もなく消え、周囲半径20mほどがガラス状に変質している。
単なる雷撃の範疇を明らかに逸脱しているな。
「ビル」
『なんだい?』
「目の前の岩に雷が落ちただけ。俺は何もしてない。いいな?」
『……HAHA!ああ、その通りだとも』
必死に自分に言い聞かせて、このスキルを封印しようとするリムルの姿は笑えるものだった。
だが無駄だよ、リムル。一度手に入れてしまった力は、いつか必ず指先から溢れ出すからね。
何事か!と駆けつけてきたリグル達には、
「いやー、目の前に雷が落ちてさ!ビックリビックリ!な、ビル!」
『そうそう、実に素晴らしい雷だった!』
なんていう茶番を披露した。
その後、リムルは脳内で戦闘シュミレーションを開始する。
黒蛇10匹 vs 黒嵐星狼テンペストスターウルフ。
結果は、『黒稲妻』による一方的な蹂躙。
ランク付けをするなら、黒嵐星狼テンペストスターウルフはAランクを超えている、というのがリムルの考えらしい。
リムルの研究は、夜が明けるまで続いたのだった。
翌朝、目を覚ましたカイジン達は青ざめた顔で周囲を見渡していた。
見慣れぬ景色。常識から外れた移動距離。
リムルが説明すると——
「何だと!?普通、2ヶ月くらい掛かる旅になるぞ!どこかの町を経由して馬車を調達したりしないと、食べ物も足りんぞ!!!」
当然の反応だ。
朝食を取りながら「あと二日で着く」と言われた時の顔は、なかなかの見ものだった。
彼らにとっての常識という名の檻。それをこのスライムは、無邪気に踏み潰していく。
「安心しろ!時速60kmくらいに速度落としてやるよ!」なんて慰めていたが、私は知っている。嘘だということをね。
移動中、リムルが尋ねる。
「なあ、カイジン。何で俺についてきたんだ?どう考えても、王様の元に戻るのが正解じゃないか?」
カイジンは笑った。
「ガハハハハ!旦那も案外、繊細なんだな!そんなの、面白そうだからだ!直感で感じたんだ。コイツは、何かしでかすヤツだ!ってな。理由なんてそんなもので十分だろ?」
そう、理由なんてそれで十分さ。彼は尊敬する英雄王の元を去り、常識破りのスライムと、この私...ビル・サイファーの隣を選んだんだ。
私は指を鳴らし、青い炎を弄ぶ。
彼らは気づいていない。
面白いという感情は、時に恐怖よりも恐ろしい破滅を招くことを。
そして同時に、想像を超えた進化をすることを。
「ふん。後で泣き言、言うなよ?俺様は、人使いが荒いので有名な男だぜ?」
「知ってるよ!」
『ようこそ、カイジン。君のその職人気質の魂が、これからどれだけ歪み、どれだけ輝くのか、最前列で観察させてもらうよ』
「はっはっは!三角形の旦那もよろしくな!」
二日後、村が見えてきた。
小さく、脆弱で、守る価値すら疑わしいゴブリンの集落。
かつて私が滅ぼしてきた世界と比べれば、あまりにも取るに足らない。
——だが。
そこには確かに芽吹き始めている。
予測不能な物語が。
『さて、第2章の始まりだ。……準備はいいかい、リムル?君の物語、私は特等席で見守らせてもらうよ』
HAHAHAHAHAHA!!
私の笑い声は風に溶け、森の奥へと消えていった。
それがただの風にしか聞こえないのだとしたら——
それはきっと、まだ幸運な証なんだろうね。
読んでいただきありがとうございました!
次回は、新しいゴブリン達と3人組の話になりますかね〜。
いつ更新かは未定ですが……。
それではまた!
どちらで進めるのがいいですか?
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