モンスターの言葉が分かれば楽出来ると思った僕の考えは甘かったかもしれない(修正版) 作:ラン乱
(グラン:ん、眠ってたか……。体怠いけど起きるか。)
グランは体を起こそうとするが、まったく動かない。
(グラン:……? なんで起き上がれないんだ。しかも全然動かない。
……また金縛りか? でも、それにしては目は開くし、口も動かせるし……)
その時、目の前に白い衣を纏った女性がふわりと現れた。
白衣の女性「初めまして、ご気分は如何ですか?」
グラン「……気分も何も、ここどこだよ?」
白衣の女性「あら、まだ気づいていなかったの? まあ、無理もないわ。
だってあなた、さっきの落雷で即死したんですもの。」
グラン「は? いや、なんで!? 天気予報では雷なんて言ってなかったぞ!?」
白衣の女性「それについてはごめんなさいね。
冥界のハーデス君と天界のゼウス君が喧嘩して、
ゼウス君の雷が一本、貴方に直撃してしまったの。」
グラン「んな馬鹿な……。」
(グラン:まさかそんなことで……)
グラン「……体って、今どうなってますか?」
白衣の女性「跡形もなく、完全に消滅しました♪」
(グラン:笑顔で言うなよ……聞きたくなかった……)
グラン「……このまま、あの世行きってわけか?」
白衣の女性「いえいえ。今回の件は完全に私たちの不手際。
ですから、特別措置として“異世界転生”を提案させていただきます。」
グラン「転生? どこの世界に?」
白衣の女性「実は天界の神々が、地球の“モンスターハンター”というゲームを気に入ってしまい、
“これは面白い!”とその世界を再現してしまったのです。」
グラン「軽すぎるだろ神様たち……」
白衣の女性「それで、貴方にはその世界に転生してもらいます。」
グラン「……まぁ、仕方ないか。死んでるしな。でもモンハンの世界って……油断したら死ぬよね?」
白衣の女性「だからこそ、特別に“サービス”をお付けします♪」
グラン「サービス?」
白衣の女性「地球人がよく話している“チート”というものですね。
身体能力10倍、空を飛べる、属性無効……好きな能力を1つどうぞ!」
グラン「じゃあ、“モンスターの言葉が分かるスキル”で。」
白衣の女性「え? それだけ? 本当に?」
グラン「うん、それ以上の力があったら目立ち過ぎてやだ。」
白衣の女性「……分かりました。付与いたします。ちなみに、モンハンの知識は?」
グラン「まぁ、だいたい分かると思う。」
白衣の女性「それなら安心ですね。では、新しい人生を存分に楽しんでください。
貴方に幸あらんことを。」
グラン「あ、最後にもう一つお願いがあるんだけど。」
白衣の女性「何でしょう?」
グラン「さっき言ってたゼウスとハーデス、あの二人……子供だよね?」
白衣の女性「ええ、そうよ?」
グラン「僕が行った後で構わないから、その二人を思いっきりビンタしてやってください。」
白衣の女性「ふふっ、分かったわ。ちゃんとヘル君とゼウス君をビンタしてお仕置きしておくわね。」
グラン「ありがとうございます。」
光がグランを包み、その姿が消えていく。
白衣の女性(独白)「ビンタして下さいだなんて……
不思議な子ね。あの子たちのせいで死んだのに、怒らないなんて。
時々、覗きに行こうかしら……」
――15年後、モンスターハンターの世界
ミストル「おーい、いつまで寝てんの。朝よ、朝! ご飯冷めちゃうわよ!」
グラン「はーい、今行きます!」
(グラン:モンハンの世界に転生して15年。名前は“グラン”。
今じゃ特に変わりなく過ごしてるけど……一つ違うとすれば、教官からハンターとしての訓練を受けてるってことくらいか。)
(グラン:なんで訓練してるかって?
それは教官が「お前の父親は立派な上位ハンターだ! その息子を立派なハンターに育てるのが教官の務め!」
とか言って、気が付いたら特訓漬けになってたから。まぁ、悪くないけど。)
ミストル「今日もお父さん、遅くなりそうよ。早朝から出かけてたわ。」
グラン「……そうなんだ。」
(グラン:父さんは忙しくて、なかなか家にいないけど……別に、寂しいわけじゃないよ。)
ミストル「分かってあげてね。あの人も、ハンターとしての責務を果たしているのよ。」
グラン「分かってるよ。僕も、いつまでも子供じゃない。いつか父さんを超える立派なハンターになるのが夢なんだ。」
ミストル「頼もしいわね。誰に似たのかしら♪」
朝食を終え、訓練所へと向かう。
グラン「じゃあ、母さん。行ってくる!」
ミストル「気を付けて行ってらっしゃい!」
~ハンター訓練所~
教官「来たか! 今日からは“実戦演習”だ! 若きハンターよ、準備はいいか?」
グラン「実戦……ですか?」
教官「そうだ。小型モンスター5体の討伐。それが今日の任務だ!」
グラン「本当ですか!?」
教官「ああ! ただし、油断すれば命を落とすこともある。危ないと思ったら即座に撤退しろ!」
グラン「了解です!」
教官「では武器の選択を。どうする?」
グラン「片手剣で行きます!」
教官「よし、ガーグァの荷車で密林へ出発だ!」
~密林~
グラン(独白)「よし……武器は“ハンターナイフ”、アイテムは“回復薬”に“砥石”、あと“肉焼き機”も持ったし……最低限は揃えたな。」
朝の霧がまだ残る密林。その中を一歩ずつ慎重に進んでいく。
グラン(独白)「……あそこにいた!」
視線の先には、茂みの陰で草を食んでいるジャギィの群れ。1体、2体……3体は確認できる。
グラン(独白)「まずは一番端のやつから……忍び足で近づいて……」
背中を見せたジャギィに、グランは気配を消しながら接近する。
ジャギィ1『ボス……まだ戻ってきやせんねぇ。』
ジャギィ2『他の所でメスでも探してんだろ。あの人はほんと女好きだからなぁ……』
ジャギィノス『お前ら、お喋りしてる暇があるなら肉でも運んできな!』
グラン(独白)「おぉ……ほんとに会話が聞こえる。
でも……悪いけど、君たちには僕の試験に付き合ってもらう。」
グランは一気に背後へ跳び込むと、ジャギィ1にナイフを突き立てた。
グラン「おりゃあっ!」
ジャギィ1『ギャアアアア!!?』
ジャギィ2『な、何だ!? ハンター!?』
ジャギィノス『ちょ、ちょっと!?』
グラン「よし、1体目撃破!」
ジャギィ2『こんな時に限ってボスがいねぇなんて……ッ!』
ジャギィノス『もういい! 噛み砕いてやるわよ、人間ッ!』
グラン(独白)「ふん、来い! あと2体――まとめて片付ける!」
そう構えた矢先――
……ザワッ。
森の奥から、異様な“気配”が近づいてくる。木々が大きく揺れ、何かが林を裂いて現れる音。
グラン(独白)「……!? この音、まさか……!」
バサッ、と大きな影が飛び出した。黒くしなやかな身体に、夜の闇のような毛並み。尾が、翼が、鋭く光を反射する。
???(ナルガクルガ)『ほう……こんな所に獲物がいたとは、ツイてるぜ。』
グラン「なっ……ナルガクルガ!?」
ジャギィ2『姐さん後ろぉおお!!』
ジャギィノス『え?』
次の瞬間――ジャギィノスは、ナルガクルガの翼刃に切り裂かれていた。
ナルガクルガ『まず1匹~♪』
ジャギィ2『う、うわああああっ!!』
逃げ出すジャギィに、ナルガクルガの尾が襲いかかる。
ナルガクルガ『逃がすかよッ!』
ジャギィ2『ぷぎゃっ……!』
一撃で昏倒させると、振り返ったナルガクルガがゆっくりとグランに目を向けた。
ナルガクルガ『……人間?』
(グラン:目が合った……! 足が……動かない!?)
ナルガクルガ『気分がいいから見逃してやろうかと思ったが……』
グラン「えっ!? 見逃してくれるの!?」
ナルガクルガ『……ん?』
(グラン:しまった! 驚きすぎて反応してしまった!!)
ナルガクルガ『おい。今、俺の言葉が分かったのか?』
(グラン:ど、どうする!? スキルがバレたらヤバいか!? でも今は……!)
グラン「ご、ごめんなさい! 分かります! モンスターの言葉、分かります! だから食べないでください!」
ナルガクルガ『マジか……? お前、ほんとに理解してるのか?』
グラン「マジです。」
ナルガクルガ『ふぅん……なるほどな。』
ナルガクルガはグランにじりじりと近づいてくる。距離はもう数歩。呼吸がかかる距離。
(グラン:ち、近い……威圧感がやばい……)
ナルガクルガ『で、お前はここで何してたんだ?』
グラン「えっ……あ、卒業試験です。ハンターになるための、小型モンスター5体の討伐任務中です!」
ナルガクルガ『卒業……試験? それが人間の通過儀礼か。で、討伐するってのはどういう意味だ?』
グラン「……簡単に言えば“狩る”ってことですね。」
ナルガクルガ『なるほどな。じゃあさ……その狩ったやつ、俺にもくれよ?』
グラン「……いいですよ。僕は素材さえ取れればいいんで、肉とかは全部あげます。」
ナルガクルガ『マジか!? お前、話が分かるな! これでしばらく飯に困らねぇぞ!』
(グラン:このスキル……命拾いの鍵になったな。)
~5分後~
グランは見事、小型モンスター5体の討伐を完了させていた。
グラン「素材は剥ぎ取ったから、残りはあげるよ。」
ナルガクルガ『7体もいるが、いいのか?』
グラン「その内2体はあなたが倒したものですし、僕のカウントには含まれません。だから遠慮せずどうぞ。」
ナルガクルガ『へへっ、あんがとよ。いやー、良い日だぜ今日は。』
グラン「じゃあ、僕は帰ります。報告しないといけないんで。」
ナルガクルガ『え、帰っちまうのか? もうちょい一緒にいようぜ?』
グラン「それは無理。明日からは正式なハンターとして生活が始まるんで。
またどこかで会ったら、よろしくお願いします。」
グランは軽く頭を下げると、足早に森を後にした。
ナルガクルガ『………………』
しばらくその背中を見つめていたナルガクルガは、ふと何かを思いついたようにニヤリと笑う。
ナルガクルガ(独白)「あの小僧……面白ぇ。今度はもう少し絡んでみるか……」
そう呟くと、死体を口にくわえ、森の奥へと音もなく消えていった――。