モンスターの言葉が分かれば楽出来ると思った僕の考えは甘かったかもしれない(修正版)   作:ラン乱

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竜と歩む者

〜天界〜

澄み渡る空に浮かぶ白の殿堂。そこは神々の住まう“天界”。その一角にある、煌めく水鏡の前で、女神ディオーネは静かに地上を見守っていた。

 

ディオーネ(独白)「……グラン、あなたの選択は、きっと正しいわ。」

 

そこへ、軽やかな足音と共に一人の神が現れる。

 

???「あんら〜? ディオーネちゃん、ここで何してるの〜?」

 

振り返れば、そこに立っていたのは――恋と性愛を司る神、エロースだった。相変わらずまともに服を着ておらず、透けるような布を数枚まとっただけの、ほぼ裸に近い姿である。

 

ディオーネ「エロース!?……せめて服くらいまともに着られないのかしら!?」

 

エロース「ん〜、さっき起きたばっかりなのよん。それにあたしは〜、気にしないわ〜♡」

 

体をくねらせながら、優雅に水鏡へ近づく。

 

ディオーネ「あなたが気にしなくても、周りは気にするの!まったく……神の一人がこんなんでいいのかしら……で、何の用?」

 

エロース「ん〜? だってディオーネちゃんが地上覗いてたから、ちょっと気になっちゃって〜。何か面白いの見つけたの〜?」

 

ディオーネ「……以前あったでしょ? ハーデス君とゼウス君が喧嘩して雷を落とした件。

あの時に地球で巻き込まれて亡くなった子がいてね。そのお詫びとして、転生の機会を与えたの。」

 

エロース「ふ〜ん。で、その子には“特別な力”とか与えたのかしら?」

 

ディオーネ「それが、“モンスターの言葉が分かる能力”だけなのよ。他の力は要らないって断ったわ。」

 

エロース「あらまぁ〜、人間って欲望に忠実な生き物なのにね〜?

不思議な子〜♡ ちょっと気になってきたわ〜……」

 

すると、そこへ小さな足音が。

 

???「お姉ちゃーん!たすけてー!」

 

駆け寄ってきたのは、幼い少年の姿をした神――ゼウスだった。

 

ディオーネ「どうしたの、ゼウス君?」

 

ゼウス「ハーデスがさぁ、ケルベロスをまた放し飼いにして……もう、地獄が更に悪くなってるよ!」

 

ディオーネ「……またアイツは反省してないわね。行きましょう、ゼウス君。案内してくれる?」

 

ゼウス「うん!」

 

ディオーネは小さな神を連れ、その場を立ち去ろうとする。

 

ディオーネ「ごめんなさい、今の聞いた通り、少し離れるわね。話の続きはまた後で。」

 

エロース「気をつけてね〜♡」

 

ディオーネが姿を消すと、エロースは再び水鏡を覗き込んだ。

 

エロース「……この子がグランね〜。ふふ、なかなか可愛い顔してるじゃないの。

ディオーネちゃんには悪いけど……あたしからも、ちょっとした“サービス”をプレゼントしちゃお♡」

 

そう言うと、指先から小さな金色の光球を生み出し、地上のグランめがけて投げ放った。

 

エロース「ふふ、あたしも時々見に来るからね〜。この子の“反応”、楽しみだわぁ〜♡」

 

~地上・森を歩くグラン~

グラン「ん……?」

 

背中にゾワリとした感覚が走る。

 

ナルガクルガ『どうした?』

 

グラン「なんか……今、ゾワってした。」

 

ナルガクルガ『敵の気配はねえな?』

 

グラン「……気のせい、かな。」

 

ナルガクルガ『んなことよりもさ〜、腹減った!飯にしようぜ!』

 

グラン「さっき食べたばかりだろ!」

 

軽口を叩き合いながらも、いつも通りのやり取り。だがその次の瞬間、ナルガクルガの様子が変わる。

 

ナルガクルガ『なあ、お前……』

 

じっとグランの顔を見つめる。

 

グラン「な、なんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」

 

ナルガクルガ『ちょっと……舐めていいか?』

 

グラン「……はぁ!? おい、なんで目細めてんだよ!? 狩猟モードの顔になってるぞ!」

 

ナルガクルガ『いやさ、俺ら“相棒”だろ?』

 

グラン「いや、そんな覚えはないけど!」

 

ナルガクルガ『……その、今から付き合わねえか?』

 

グラン「いや待て!? 呼吸荒いし、どうしたマジで!?」

 

ナルガクルガ『……俺のこと、“ナルガ”って呼び捨てで頼む。』

 

グラン(独白)「なんだこれ……展開早すぎんだろ!?誰だ俺に変な加護くれた奴はっ!!」

 

続く展開で、ナルガの様子がますますおかしくなる。ついには飛びかかってきた。

 

グラン「うわっ!? 冗談抜きでヤバいやつ!」

 

(グラン:……このままじゃ危険だ!気絶させるしかない!!)

 

片手剣を構え、シールドバッシュを狙う。

 

グラン「シールドバッシュッ!!」

 

ナルガクルガ『あがっ!?』

 

その一撃でナルガは気絶。数秒後、目を覚ます。

 

ナルガクルガ『あれ……俺、何してた?』

 

グラン「やっと正気に戻ったか。お前、俺に飛びかかってきたんだぞ……」

 

ナルガクルガ『マジかよ……俺、なんかお前を見てたらぼんやりして……夢中になってた……』

 

グラン「いやいや……俺、男なんだけど?」

 

ナルガクルガ『わ、分かってる。でもなんでだろうな……』

 

(グラン:……絶対アレだろ、神の悪戯ってやつだ!)

 

~森丘~

グラン「草食モンスターもいるな……ひと狩りすっかな。」

 

空腹を満たすため、茂みの向こうにいたアプトノス親子に目をつけたグランは、片手剣を引き抜き、低い姿勢で接近していく。

 

しかし――その時。

 

アプトノス【親】『ニンゲンの後ろにモンスターがいる!?逃げなきゃ!』

 

アプトノス【子】『ママー!怖いよ!』

 

アプトノス【親】『走るのよ、生き残る為に逃げなさい!私が死んでも貴方だけでも逃げなさい。』

 

アプトノス【子】『嫌だ、ママを置いて行けないよ!』

 

アプトノス【親】『言う事聞きなさい!ここで死んでもいいの!?早く行きなさい!』

 

グランの足が、止まった。

 

(グラン:……なんか、余計に殺りづらいんだけど。

モンスターの声が聞こえるスキル、便利っちゃ便利だけど……これ、現実だとキツいな。)

 

ナルガクルガ『おい、どうした?早く狩らねえのか。』

 

グラン「……僕の代わりに狩ってきてくれ。」

 

ナルガクルガ『は?なんでだよ。』

 

グラン「お願い……」

 

数秒の沈黙の後、ナルガは溜息を吐いた。

 

ナルガクルガ『……ま、いいけどよ。』

 

身を沈め、瞬時に距離を詰めると、翼刃を閃かせて突撃する。

 

ナルガクルガ『おらよ!!』

 

アプトノス【子】『わああああ!!!』

 

鋭い刃が子アプトノスの胸を裂き、鮮血が地面を濡らす。

 

アプトノス【親】『坊やぁぁ!!私の子が……嫌よ、嫌ーーー!!』

 

ナルガクルガ『もう一匹!!』

 

刃が再び振るわれ、親アプトノスも絶命した。

 

グラン「…………」

 

ナルガクルガ『……何でお前、やらなかったんだ?』

 

グラン「……声が聞こえると、なんか、殺りにくくて。」

 

ナルガクルガ『はぁ?そんな甘さ、いつか命取りになるぞ。』

 

グラン「……それも、そうだな。」

 

ポーチからナイフを取り出し、淡々と肉を切り分けていく。

 

~休憩と食事~

グラン「さて、肉も切れた。焼くぞ。」

 

グランが取り出したのは、小型ながら高性能な焼肉セット。折りたたみ椅子に腰を下ろし、炭火をつけ、切ったばかりの肉を網に乗せる。

 

ナルガクルガ『……ちっちぇー火だな。これで焼けんのか?』

 

グラン「見てなって。焦げさせないのがプロの技ってやつだ。」

 

香ばしい匂いが立ち込め始める。

 

ナルガクルガ『……ゴクリ』

 

焼きあがった肉を掲げ、グランが声を放つ。

 

グラン「上手に焼けましたー!」

 

「ガブッ」

 

グラン「え?」

 

掲げた肉が、目の前で消える。目の前のナルガクルガが、もぐもぐと咀嚼中だった。

 

グラン「……おい!? ハンター決め台詞中に盗るなっての!」

 

ナルガクルガ『モグ……モグ……』

 

グラン「聞いてんのか?」

 

ナルガクルガ『……ぃ』

 

グラン「は? なんだって?」

 

ナルガクルガ『うめええええええ!!!』

 

グラン「!?」

 

あまりの絶叫に、グランの身体がびくりと跳ねる。

 

ナルガクルガ『何だこれ!?中はジューシー、外はカリッと。これが焼いた肉ってやつか……っ!今までの生肉とは次元が違う!!』

 

グラン「……感想はいいから返せよこの野郎!」

 

グランの拳が、ナルガの顔面を軽く打った。

 

ナルガクルガ『いでっ!?おい何すんだ!』

 

グラン「俺が焼いた肉だぞ!狩った奴だからって先に食うな!」

 

ナルガクルガ『あんな匂い嗅がされて我慢できるわけねえだろ……』

 

グラン「まったく……。もう食ったんだから、いいよな?採取行くぞ。」

 

ナルガクルガ『待て、その前に……この先に会っておきたい竜がいる。』

 

その時だった。

 

「グオオオオ!!!」

 

咆哮が森丘に響き渡る。

 

グラン「今の声……リオレイアか!?」

 

ナルガクルガ『レイアママさん!?まずい、何かあった!』

 

グラン「知り合いなのか?」

 

ナルガクルガ『説明は後だ!早く乗れ!』

 

~森丘・崖上の巣~

ナルガに背を預け、崖を駆け上がると、そこには――リオレイアの巣。巣の周囲では、ドスランポス1頭とランポス4頭がリオレイアを取り囲んでいた。

 

ドスランポス『野郎ども!卵を奪え!』

 

ランポス達『ヒャッハーー!!』

 

リオレイア『この下賎者め!卵は絶対に渡さないわ!』

 

ドスランポス『おうおう、中々強気じゃねえの。俺様はそういう女、嫌いじゃねえぜ?』

 

巣のそばにある金色の卵が、不安げに揺れていた。

 

ナルガクルガ『ママさんが危ねえ!突っ込むぞ!』

 

グラン「待て!下手に突っ込めば卵が危ない!」

 

ナルガクルガ『じゃあどうする!?』

 

グラン「これを使う!」

 

背中からライトボウガンを取り出し、手早く装填。

 

グラン「僕が囮になる!ランポスを引き寄せるから、棘で一気に仕留めてくれ!」

 

ナルガクルガ『……わかった、頼んだぞ。』

 

グランは木陰を抜け、崖の中腹に姿を見せた。

 

グラン「おい、こっち見ろ!」

 

ドスランポス『ああ!?何でニンゲンがここにいやがる!?』

 

グラン「通常弾、発射!」

 

弾がランポス4頭に命中、軽傷を負わせる。

 

ドスランポス『この野郎……野郎ども!ニンゲンを狩るぞ!』

 

怒りに燃えるドスランポス達がグランに向かって突撃した――だがその先には、既に構えていたナルガクルガの影があった。

 

ナルガクルガ『……しゃらくせえ!』

 

振りかざされた尻尾が空を裂き、棘がランポス達を串刺しにする。

 

ドスランポス『くっ、くそがあああ!!』

 

そのまま怒りに任せて突進するも、ナルガの尻尾の叩きつけにより沈黙した。

 

グラン「……上手くいったな。」

 

ナルガクルガ『お前のおかげだ。……ありがとな。』

 

~感謝の言葉~

リオレイア『ナルガ君!? 貴方が助けてくれたのね!』

 

ナルガクルガ『ママさん、無事で良かった!それと、もう1人……』

 

グラン「初めまして、グランと言います。」

 

リオレイア『ニンゲン!?……あなたが、私を助けてくれたの?』

 

ナルガクルガ『そうだ。こいつがいなけりゃ、卵は危なかった。』

 

リオレイアは静かに頭を下げる。

 

リオレイア『ありがとう、グラン……私と、卵を守ってくれて。』

 

グラン「そんな、大したことは……」

 

リオレイアはそっと顔を近づけ、しなやかな首を傾けながらいたずらっぽく微笑む。

 

リオレイア『あなたが私の夫だったら、安心できたのに♪』

 

グラン「へっ!? な、なに言って……!」

 

ナルガクルガ『マ、ママさん!? あの、それは冗談だよな!?』

 

リオレイア『ふふ、当然よ。私はもう既に“リオレウス”という立派な夫がいるもの。……ただ、あの子ったらいつもどこかへ飛び回ってるから。』

 

――と、その瞬間だった。

 

大地が揺れるほどの一撃と共に、森の空を裂いて赤き王が舞い降りる。

翼を広げ、爛々とした双眸に怒りの炎を宿しながら、その巨大な身体が地に降り立った。

 

リオレウス『ニンゲン……!! ここに何の用だ!!』

 

グラン(心の声)「……まぁ、そうなるよね。」

 

赤黒い鱗に包まれた巨体がグランを見据えると、その口からごうごうと炎を吹き上げ始めた。

 

リオレウス『我が炎に焼かれてしまえ!!』

 

首を大きく振りかぶり、今にも火球を吐こうとするリオレウス。その殺意に、グランの背筋が凍りつく。

 

ナルガクルガ『おいおい、ここでそんなもんぶっぱなしたら卵が!』

 

グラン「ちょ、待って話聞いて!? 早合点しすぎだってば!」

 

リオレウス『問答無用! 喰らえッ!!』

 

紅き咆哮と共に火球が放たれようとしたその刹那――

 

リオレイア『――止めなさい!!』

 

高らかに響いたのは、リオレイアの怒声だった。

 

その尻尾が閃き、空を割るように振り下ろされる。

サマーソルトキック。毒を含んだその一撃が、リオレウスの顔面に直撃した。

 

リオレウス『ぐぼあっ!? ……が、がふっ!!』

 

その場にくたりと倒れ込み、紫色の毒が身体に回り始める。

 

リオレイア『何て態度なの!! 私の恩人に向かっていきなり火球!?

頭に血が上りすぎるの、いい加減にしてちょうだい!』

 

リオレウス(苦悶)『わ、我が妻よ……お前が、ニンゲンに襲われているかと……!』

 

リオレイア『この子は、私と卵を守ってくれたの。

むしろ私たちの命の恩人よ!あなたも礼と謝罪をなさい!』

 

リオレウス(言い訳)『で、でも、心配だったのだ!

ニンゲンなど、何を企んでいるかわからん……我が妻が騙されているかもしれんと……!』

 

リオレイア『……じゃあ訊くけど。そんなに私が無力に見える?』

 

リオレウス(小声)『い、いや、そんなことは言っておらぬ……』

 

グラン「あの〜……」

 

話が長引いてきたので、グランがそっと口を挟もうとした。

 

リオレウス『ニンゲン、貴様は黙っていろ! それ以上近づけば、その頭、噛み砕いてや――』

 

リオレイア『話を聞きなさいって言ってるでしょ!!』

 

二度目のサマーソルトが頭上を襲う。

 

リオレウス『ごばあっ!? ふ、またか……! ど、毒が……!!』

 

バタリと倒れ込むリオレウス。毒のせいで全身がしびれ、ぴくぴくと痙攣していた。

 

少し離れた場所でそれを見ていたグランとナルガクルガは、沈黙の後、ため息をつく。

 

ナルガクルガ『……相変わらずだな、この夫婦。』

 

グラン「いつもこうなのか?」

 

ナルガクルガ『まあな。レイアママさんはしっかり者だけど、リオレウスの方はすぐ突っ走る性格だからな……夫婦喧嘩は日常茶飯事だ。』

 

グラン(心の声)「モンスターって……みんなこうなのか?

それに、俺……ハンターとして“人助け”するはずだったのに……

何でモンスターの家庭事情に巻き込まれてるんだろう……」

 

木陰に座り込み、頭を抱えるグラン。

その横で、ナルガクルガは何故かくすくすと笑っていた。

 

ナルガクルガ『でもよ、お前がいて助かった。あの卵、絶対無事じゃ済まなかったぜ。』

 

グラン「……まぁ、こうなった以上、最後まで付き合うしかないか。」

 

風が森丘を抜け、淡い木漏れ日が卵の殻を照らす。

新たな命が、その中で眠っている。

 

グラン(心の声)「……モンスターの世界で生きるって、思った以上に大変だな。」

 

だがその表情には、どこか清々しい達成感が滲んでいた。

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