モンスターの言葉が分かれば楽出来ると思った僕の考えは甘かったかもしれない(修正版)   作:ラン乱

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目覚めし竜の瞳と、迫る真実

リオレイアが巣に戻り、ようやく落ち着きを取り戻した空気が森丘を包みはじめていた。

 

リオレイア『お騒がせしました。』

 

グラン「あ、いえ。それよりも……」

 

ちらりと視線を向けた先には、毒で地に伏していた夫――リオレウスがいた。

 

グラン「旦那さん、毒状態になってるので……良かったら解毒薬、飲みますか?」

 

リオレイア『あら、優しいのね。早速、夫に飲ませようかしら。』

 

差し出された解毒薬にリオレイアが口で受け取ろうとした、その時――

 

リオレウス『少しでも怪しいと感じたら……直ぐにその身を灰にしてくれようぞ。』

 

グラン「誰がそんなことするか。あんたみたいな勘違い野郎に言われたくないね。」

 

リオレウス『貴様……我を愚弄するか!』

 

リオレイア『あなたは黙って飲みなさい!』

 

リオレウス『おご!?』

 

レイアの強烈な叱責とともに、解毒薬が容赦なく口に流し込まれた。

 

リオレウス『げほっ、ごほっ!』

 

だがその効果は即効だった。リオレウスの体からはみるみるうちに毒の色が抜け、呼吸が安定していく。

 

リオレイア『効果てきめんじゃない。良かったわね、あなた。』

 

リオレウス『う〜む……確かに、そうだな……。』

 

立ち上がったリオレウスは、少しばかり照れくさそうにグランの元へ近づいてくる。

 

リオレウス『……すまなかった。誤解するような真似をした。妻に何かあったら、居ても立ってもいられなくなってしまって……。』

 

グラン「いいよ。奥さんのことを思ってやったんだろうし。でも、周りの状況くらいは把握してから動いてよね。」

 

リオレウス『……うむ、承知した。それと……そなた、我らの言葉がわかるというのは真か?』

 

グラン「ああ、今さらだけどね。」

 

リオレウス『我も長きに渡りニンゲンを見てきたが、竜の言葉を理解する者に出会うのは初めてだ……実に興味深い。』

 

会話の最中、コッ……コッ……と硬質な音が響いた。

 

巣の中心に置かれていた卵のひとつに、亀裂が走り始めていた。

 

グラン「生まれる……んじゃないか、あれ。」

 

リオレウス『なに!?』

 

リオレイア『私たちの子が、遂に……生まれるのね!』

 

緊張と興奮が走る中、殻の中からくちばしが覗き、続いて薄いピンク色の小さな頭が出てくる。

 

リオレウス『おお……!なんと可愛らしい。だが……色が、我々と似ておらんぞ。娘に違いないが……』

 

リオレイア『ええ、普通なら私に似るはずなんだけど……』

 

グラン「その子、亜種だね。」

 

リオレウス『亜種……? それは、なんなのだ。』

 

グラン「(あれ、知らないのか)……亜種は、通常のモンスターよりも戦闘能力が高い種。つまり、強い子が生まれたってことさ。」

 

ナルガクルガ『何でお前、そんな詳しいんだ?』

 

グラン「……習ったから。(ホントはゲームの知識だけどな)」

 

途端にリオレウスが咆哮を上げた。

 

リオレウス『聞いたか、レイアよ!我が娘は強いというのだ!』

 

リオレイア『ええ、今日は本当に驚きの連続ね。』

 

グラン「僕は今、生命の誕生という奇跡に感動してるよ……」

 

その時、ひょこひょこと歩き出した小さなリオレイア亜種が、グランの方を見上げた。

 

リオレイア亜種『あなた、だれ?』

 

グラン「え? 僕のこと?」

 

リオレイア亜種『うん。』

 

グラン「君たちモンスターにとっては敵、ニンゲンだよ。」

 

ナルガクルガ『相棒!? 何言ってんだ!』

 

グラン「黙ってて。……ニンゲンだけど名前はある。グラン。今日からハンターになったばかりの新人だよ。」

 

リオレイア亜種『ハンターってなに?』

 

グラン「モンスターを狩る人。危険な存在から人を守る存在だよ。」

 

リオレイア亜種『ふーん……じゃあ、グランは強いの?』

 

グラン「……いや、別に強くはないよ。」

 

リオレイア亜種『ウソ。』

 

グラン「え……?」

 

リオレイア亜種『卵の中にいた時、感じた。あなたは、強さを隠してる。』

 

ナルガクルガ『本当かよ相棒!?』

 

グラン「な、なんのことだか……」

 

リオレイア亜種『……』

 

グラン「どうした……!?」

 

突如、至近距離から放たれた火炎球。咄嗟に体をひねり、なんとか直撃を回避するグラン。

 

グラン「おい!? いきなり何すんだ! 流石に怒るぞ!?」

 

リオレイア亜種『もっと大きいのいくよ。』

 

二発目――今度は先程より遥かに巨大な火球が一直線に飛来する。

 

ナルガクルガ『レイアママさん! 止めた方が良いと思いますよ!!』

 

だが、リオ夫婦は巣の端で穏やかに見守っていた。

 

リオレウス『見なさい、レイアよ。我が娘があんなにはしゃいでおるわ。』

 

リオレイア『ええ、本当に。誰に似たのかしらね。』

 

グランは思わず呆れ――それでも冷静に構え、迫る火球を盾で上空へ打ち上げた。

 

グラン「――っ!」

 

火球は弧を描いて空に消える。

 

リオレイア亜種『!?』

 

グラン「いい加減にしろ……」

 

その声に、空気が張り詰める。まるで氷の刃のような気配が周囲に拡がった。

 

ナルガクルガ(な、何だ!? 相棒の気配が……変わった……)

 

突如として、グランの姿が消える。

 

リオレウス『なに!? どこだ!?』

 

リオレイア亜種『えっ、うそ――』

 

グラン「こっちだ。」

 

背後――リオレイア亜種の真後ろに現れたグランは、容赦なく首元を掴み上げた。

 

リオレイア亜種『うぐっ!』

 

ナルガクルガ『相棒! それ以上やったら……って、何だその目……!?』

 

グランの瞳――瞳孔は縦に細く、まるで竜そのもの。妖しく、鋭く光っていた。

 

場面は転じ、村の片隅。

 

女性1『ねえねえ、あの子、ハンターになったんだってね。』

 

女性2『私も聞いたわよ、すごいじゃない。』

 

ミストル『ええ、ありがとう。でも……心配なことが一つだけあるの。』

 

女性2『なさそうだけど、何が心配なのよ?』

 

ミストル『あの子が……モンスターになるんじゃないかって。』

 

女性1『モンスター並みに強くなるって意味?』

 

ミストル『全然違うわ。あの子が、“竜の瞳”になった瞬間を……私は一度だけ、見たことがあるの。』

 

場面は再び、森丘へ戻る。

 

ナルガクルガ『俺らと同じ目……!?』

 

リオレウス『娘を離さぬか!』

 

リオレウスが突進する。しかし――

 

グラン「……。」

 

その攻撃を片手で受け止め、そのまま地面に叩きつけた。

 

リオレウス『ぐあっ!?』

 

リオレイア『あなた!』

 

ナルガクルガ『おいおい、どうなってんだよ……。あの力、普通じゃねえぞ!?』

 

リオレイア亜種『くる……し……い……』

 

ナルガクルガ『やめろ相棒! このままだと子供が死ぬぞ!』

 

グラン「……れ。」

 

ナルガクルガ『は?』

 

グラン「俺に攻撃したことを、謝れ。」

 

三竜(リオレウス・リオレイア・ナルガクルガ)『『『そこ!?』』』

 

リオレイア亜種『わ、わかった。謝るから離して!』

 

その言葉を聞いたグランはようやく手を緩め、彼女を解放する。

 

リオレイア亜種『げほっ、げほっ!』

 

リオレウス『大丈夫か!? どこか痛い所はないか!』

 

ナルガクルガ『おい……お前、何なんだよ。自分の目、見てみろ。』

 

グラン「目……? なんのこと?」

 

ナルガクルガ『そこの水面を見てみな。』

 

水面を覗き込んだグランの表情が、凍りついた。

 

グラン「……な、にこれ。俺の目……竜の目……?」

 

鏡のような水面には、確かに“竜の瞳”が映っていた――。

 

ナルガクルガ『知らねえのかよ。

レイアママさんの旦那さんをぶん投げたんだぞ。』

 

グラン「やべえ・・・竜の瞳とかカッケェ、

テンション上がるわ...!」

 

ナルガクルガ『いや、覚えてねえのかよ!

さっきお前がやったことだぞ!?』

 

グラン「・・・あっちが悪いから僕は悪くない。

正当防衛だ。」

 

ナルガクルガ『そうかもしれなえが...、相手は生まれたばかりだぞ。』

 

グラン「...はあ、しょうがないな。」

 

歩きながらリオレイア亜種に近付く。

 

グラン「カッとなって悪かったよ。

だけど、君がいきなり火球放ってくるからだぞ。」

 

リオレイア亜種『それは...貴方の実力がどれ程のものか確かめたかったのよ。』

 

グラン「どういう事だ?」

 

リオレイア亜種『私のパートナーに相応しいのか見極める為の試練だったの。まあ、私も少しは反省してるから許してね。』

 

グラン「パートナーて何の?話が見えてこないんだけど...」

 

リオレイア亜種の子供の話が理解出来ずにいると、とんでもない事を口にする。

 

リオレイア亜種『決まってるじゃないの。

私の旦那に相応しいかの試練って事。』

 

グラン「はあ!?」

 

ナルガクルガ『嘘だろ!?』

 

リオレウス『娘よ!何を言い出すのだ!?』

 

突然の言葉に驚く1人と2頭。

 

リオレイア亜種『予想していた以上に実力もあったし、これなら私の旦那さんとしては充分ね。』

 

リオレイア『あらあら、随分過激な事。』

 

リオレウス『そんな事を言っとる場合か!

我らの娘がニンゲンなんぞに取られてしまうのだぞ!』

 

ナルガクルガ『やべえぞ相棒...どうする?』

 

グラン「・・・」

 

ナルガクルガ『相棒?』

 

黙り込む事数秒、グランの取った行動は・・・

 

グラン「ナルガ、離陸体勢。」

 

ナルガクルガ『え?』

 

ナルガに目線を向け無言の圧をかける。

 

ナルガクルガ『...コク』

 

グラン「レイアママさん、レウスパパさん。

・・・娘さんとお幸せにー!!!」

 

大声で発すると同時にナルガの背に乗る。

 

グラン「逃げるんだよー!ナルガー!!」

 

ナルガクルガ『だろうと思ったよ!』

 

飛び上がりその場から離れようとするが・・・

 

リオレイア亜種『何処行くの?』

 

こちら目掛けてリオレイア亜種が追いかけて来た。

 

グラン「ナルガー!飛ばせー!」

 

ナルガクルガ『無茶言うな!俺は飛行に関しては向いてねえんだよ!』

 

リオレイア亜種『逃がさない...!』

 

狙いを定めて火球を飛ばす。

 

ナルガクルガ『〜っ危な!』

 

グラン「え?」

 

回避した事により体勢を崩し、乗っていたグランが落ちていく。

 

ナルガクルガ『っ...!しまった...!』

 

リオレイア亜種『邪魔よ。』

 

ナルガクルガ『いだ!?』

 

ナルガクルガに体当たりし振り切るリオレイア亜種は、グランに向かう。そして・・・

 

リオレイア亜種『掴まえた。』

 

グラン「勘弁してくれ...。」

 

リオレイア亜種に鷲掴みにされ、

逃げる事が出来ず地上に降りることになった。

 

リオレイア亜種『何で逃げるのよ、未来の妻を置いてひどいわ。』

 

グラン「何が未来の妻だ...ニンゲンの僕には関係ない...」

 

リオレウス『そうだぞ娘よ。

ニンゲンと番になる事などあってはならんのだ。』

 

リオレイア亜種『今パパには聞いてない。

少し黙ってて。』

 

リオレウス『む、娘が反抗期に...』

 

ガックリと項垂れるリオレウス。

 

ナルガクルガ『つうかよ、何でコイツなんだよ。

ニンゲンのうえにハンターやってんだぞ。』

 

リオレイア亜種『もしかして気付いてないの?』

 

ナルガクルガ『何がだ?』

 

リオレイア亜種『この人、古龍の匂いがする。血が、混ざってる。』

 

その言葉に、場が静まり返る。

 

グラン「……え?」

 

ナルガクルガ『……お、おい相棒、マジかよ?』

 

リオレウス『何だと! それは本当か!? ニンゲンよ、何故それを隠していた!』

 

グラン「いや……待って。僕自身、知らないんだよ。けど、たったひとつ心当たりがある……」

 

全員の視線がグランに集中する。重圧を感じながらも、彼は静かに語り始めた。

 

グラン「まだ僕が小さかった頃、ある日崖から足を滑らせて落ちたんだ。落下中、頭を打って意識が途切れて……気がついた時には、体中が血だらけだった。もう駄目だって、死を覚悟した。けど……」

 

リオレイア『……けど?』

 

グラン「その時、どこからか唸り声が聞こえたんだ。近くにモンスターがいると思って、最期は喰われるのかと思った。でも違った――何か、口に液体を流し込まれたんだ。温かくて、力が体に満ちる感覚があった。」

 

ナルガクルガ『……それって、まさか……』

 

グラン「名前は朧げだけど……確か、ナナ・テスカトリって名乗ってた気がする。」

 

三頭のモンスターが一斉に身を固くする。

 

リオレウス『な、ナナ様……!?』

 

リオレイア『あの“蒼炎の女王”が……!?』

 

ナルガクルガ『だとすれば……あの時お前を救ったのは、ナナ・テスカトリ本人か……!?』

 

グランは頷きながらも、その目には困惑が残る。

 

グラン「あれは夢だと思ってた。現実味が無さすぎたし、誰に話しても信じてもらえないと思ってたから、黙ってたんだ。でも……」

 

リオレイア亜種『血の匂いは、嘘をつかない。私達モンスターにはわかるの。あなたの体には、ナナ様の力が、確かに混ざってる。』

 

グラン「……(でも、モンスターの言葉が分かるのは、神様から貰ったスキルのはずなんだけどな)」

 

※心の中で呟くが、それはあえて口にしない。話がややこしくなるだけだ。

 

グラン「とにかく、さっきの“未来の旦那”発言も含めてだ。僕は、君と番になるつもりなんて――」

 

リオレイア亜種『じゃあ、あなたについて行く。』

 

グラン「……はあ!? 何言ってんの!? ついてくるな!」

 

リオレイア亜種『決めたの。パパやママの元より、あなたと一緒にいたい。』

 

グラン「いやいや! 子供は親の元でちゃんと育てられ――」

 

リオレイア亜種『もう巣立つから大丈夫。』

 

グラン「勝手に巣立つな!!」

 

両親の方へ視線を向けると、リオレウスが嘆くように項垂れていた。

 

リオレウス『ニンゲンよ……我はどうすればいいのだ……我が娘が、ニンゲンに恋を……』

 

グラン「こっちが聞きたいわ!」

 

ナルガクルガ『いやあ……相棒、モテ期来てるな。竜からだけど。』

 

グラン「嬉しくねぇよ!!」

 

困惑の波が収まらぬ中、静かに口を開いたのはリオレイアだった。

 

リオレイア『このままじゃ埒が明かないわね……。グラン、お願いがあるの。私達の娘を、しばらくお願いしてもいいかしら?』

 

グラン「えぇ……」

 

リオレイア『もちろん、狩りの基本や世の中の常識もまだ分かっていない子だから、完全に任せるという意味ではないわ。だけど……あの子が自分から“外の世界を見たい”と強く思ったのは、きっといい兆しなの。』

 

グラン「……とんでもないわがまま娘が生まれたもんだよ。……でも、そうだな」

 

覚悟を決め、グランは大きく息を吸って答えた。

 

グラン「分かった。面倒を見てみるよ。ただし!」

 

グラン「まだ孵化していない卵もあるから、君が“狩りの基礎”をちゃんと身に付けて、巣立ちの準備が整うまでの間だけな!」

 

リオレイア『ええ、ありがとう。条件付きでも、引き受けてくれて嬉しいわ。』

 

そして――

 

グラン「リオレイア亜種とか呼びにくいから、君には名前を付けよう。“桜華”ってどう?」

 

リオレイア亜種(桜華)『うん、気に入った。今日から私は“桜華”よ。』

 

グラン「じゃあ、ナルガ。お前も“黒影”にしよう。」

 

ナルガクルガ(黒影)『悪くねえ響きだな……気に入ったぜ、相棒!』

 

喜ぶ二頭の横で、ポツンと立つリオレウスがぽつりと呟く。

 

リオレウス『……ニンゲンよ。我にも名前をくれぬか……?』

 

グラン「……あんた、急にしおらしくなるな……分かったよ。じゃあ、“紅牙(こうが)”だ。リオレイアさんは、仁愛だ」

 

リオレウス(紅牙)『おお……! 紅牙……我が心に、炎が灯ったようだ……!』

 

リオレイア(仁愛)『ふふ、私も名前を貰ったことで、少し気持ちが新しくなった気がするわ。ありがとう、グラン。』

 

こうして、リオレイア亜種“桜華”とナルガクルガ“黒影”、そして名を授かった“仁愛”と“紅牙”。新たな名を手に入れた彼らは、グランと共に次なる目的地へと歩みを進める。

 

グラン「行くぞ、黒影、桜華。」

 

黒影『バッチリ準備はできてるぜ!』

 

桜華『いつでもいいよ、旦那さま♡』

 

グラン「それ、やめろ!!」

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