やわらか不戦の契り   作:妄想壁の崩壊

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壁外調査終了→エレンの王都召喚の間の日数が早まってることに気づきましたが、そういうものとします。獣の巨人襲来日が原作と変わっちゃいますが許してクレメンス。


会合1

 

【64】

 

時は少し遡る。カラネス区にて会合を終えたエレン、ハンジ、ミケはとある兵舎の一室にて頭を抱えていた。なお、そこにエルヴィンとリヴァイの姿はない。

 

エルヴィンは『女型を捕らえた先の話』があるとしてあの重鎮たちと未だ会議中である。一方リヴァイはエレンの頼みでミカサとアルミン、そしてクリスタを呼びに行った。

 

「まいったなぁ……ねぇ、二人とも。さっきの話、本当だと思う?」

 

「……少なくとも嘘を言っているようには見えなかったが」

 

「俺は、まだ信じきれません……」

 

「はは、だよね……」

 

ハンジはミケとエレンの返事を聞いて乾いた笑みを浮かべた。

 

「107年前に巨人の力でこの壁の世界を作った王様が、巨人の力で今も生きていて、その上私たち調査兵団が長年求めてきた真実のすべてを知ってるなんてさ……クソッ!」

 

そう呟くと、ハンジは強く机を叩き、やるせない怒りをぶつけた。

 

「だったら、私たちが今までやってきたことは何だったんだ……ッ!」

 

ハンジの心の内を吐露したその悲痛な叫びが、エレンとミケにはいたく共感できた。

 

彼らが少し前まで行っていた会合について振り返ろう。壁内の未来を決めるそれは終始険悪なムードであった。理由は上述のとおり、調査兵団と中央憲兵のすれ違いにある。

 

はじめ調査兵団は中央憲兵に、知っている情報について話すように求めた。だが、中央憲兵──ケニー・アッカーマンはこう答えた。

 

「なんか勘違いしてるみてぇだが、俺たちは別に情報を出し渋って調査兵団を見殺しにしたわけじゃねぇよ。命令されて壁に潜む敵を探していただけだ」

 

「誰からの命令だ?」

 

「そこの司祭さんの方が説明に向いてんだろ」

 

リヴァイの質問にケニーはニック司祭を指す。名指しされた彼は王について皆に説明した。

 

「107年前、三重の壁を築いた王だけがこの世の真実を知っている。我々に授けられた知識は限定的なものでしかないのだ」

 

「107年前だって? そんな昔の王様が今さらなんの関係が……」

 

「関係ある。たしかに、王はもうこの世にはおられない。だが、あの御方は107年前から変わらず王としてこの壁の中を支配しておられるのだ。始祖の巨人の力によってな。壁も、その巨人の力によって作られたのだ」

 

明かされた真実に、調査兵団の面々は驚愕した。ナイル、ピクシス、ダリスは事前に知らされていたようではあるが、それでも汗をかいてその事実を飲み込めていないようだった。……いやダリスは汗をかいているが別だ。あれは興奮してる顔である。一体何を想像しているんだろう。

 

調査兵団の中では唯一、エルヴィンただ一人だけがどこか納得したような表情で頷いていた。

 

そして皆が黙り込む中、エレンが一言発言する。

 

「──クリスタは、その王と関係あるんでしょうか?」

 

今度は壁内の真実を知る側が驚愕した。

 

「なぜその名を……」

 

「俺を助けてくれた未知の巨人の中から、クリスタが……いや、クリスタによく似た人物が出てくるのを見ました」

 

エレンはその時の光景を思い出す。あの時、エレンにはあの人物の佇まいが少年のように見えていたのだ。もしあれがクリスタでないとしたら、それは今話に上がっている王に違いない。

 

「彼女は、王がこの世に打ち込んだ楔だ」

 

ニック司祭はクリスタのことをそう呼称した。

 

それ以降、王についての話題はなかった。調査兵団と中央憲兵は女型の巨人──アニ・レオンハートを捕らえる実働部隊を組織、憲兵団とウォール教は住民の避難、駐屯兵団は壁上の監視と固定砲の運用をすることが決まり、調査兵団と中央憲兵は別室にて作戦を練ることとなったのである。

 

エレンは椅子に座りながら、悩ましげな表情でため息をついた。

 

(アニが本当に女型の巨人だった。それだけでも頭がいっぱいなのに、クリスタのことまで……。俺たちを壁の中に閉じ込めた元凶らしい107年前の人物と、あいつに一体どんな関係があるってんだ……)

 

彼は父親のグリシャを思い出す。彼も秘密を抱えたまま、エレンにもカルラにも何も話すことなく消えた。そのことが彼には不満でしかない。エレンは考える。一体どんな理由ならば、自分はそのことを納得できるだろうか。

 

エレンはアニとクリスタの二人と直接話したい気分だった。アニは無理だろうがクリスタならそれができる。だから彼はリヴァイに連れてきてもらうことを頼んだ。ハンジとミケもそれを望んだ。

 

ミカサとアルミンを呼んだのは、明日の作戦に力を貸してもらうためだ。ミカサは兵長ほどではないが並の兵士より強い。アルミンは頭が切れるし……何より交渉が得意だ。アニを捕まえるのに一役買ってくれるだろう。

 

他の104期のメンバーにも頼りになる仲間はいたが……彼らを呼ぶことはできない。アニが敵だった以上、その仲間が104期に潜んでいるかもしれないのだ。鎧と超大型の中身が。

 

明日の作戦の間、彼らはウォールローゼにて一時拘留される手筈となっている。エレンは仲間たちの疑いが早く晴れることを心から祈っていた。

 

「済まない、遅くなった」

 

扉が開く、そこにはエルヴィンと中央憲兵の二人、ケニーとトラウテが立っていた。

 

いや、その後ろにもう一人立っている。憲兵団の印章をつけた彼女のことをエレンはよく知っていた。

 

「ユミル!? お前なんでここに……と言うか、だいぶやつれてないか……?」

 

「あぁ、まぁな……。私が来た理由はこれから話す。取り敢えず座れよ」

 

ジメジメとした陰鬱な雰囲気を纏ったユミルはそう言ってエレンの隣に座り、机に寝そべった。奇しくもそこはケニーの席から最も遠い位置である。

 

「早速だが作戦について話そう」

 

「待ったエルヴィン、リヴァイがまだ戻ってないんだ。ミカサとアルミン、それから……クリスタを呼びに行ってる」

 

「クリスタが来んのか!?」

 

エルヴィンを止めたハンジの言葉を聞いてユミルは飛び起きた。

 

「やっと……やっとクリスタに会える。もう一ヶ月ぶりか? あぁ長かった……うぅ……」

 

「お、おいユミル、落ち着けって。お前、泣いてんのか……?」

 

「調査兵団でぬくぬく過ごしてたお前には分かんねぇよ……グスッ……」

 

「ほんとに何があったんだよ……」

 

変わってしまった同期の姿にエレンはたじろいだ。そうこうしていると、再び扉が開かれる。そこにはリヴァイ、ミカサ、アルミン、そして下を俯き誰とも視線を合わせようとしないクリスタがいた。

 

「「エレン!」」

 

「クリスタ!」

 

エレンの姿を見たミカサとアルミンは彼の下へ。クリスタの姿をみたユミルは彼女の下へ駆け寄った。

 

「エレン、大丈夫? 酷いことはされなかった?」

 

「聞いてほしいんだエレン。信じられないと思うかもだけど、多分、女型の正体は──」

 

「ま、待った、一人ずつ話してくれ。あとミカサは離れろ!」

 

「偽物じゃない、本物のくりすただぁ……すんすん……すりすり……」

 

「え、ゆ、ユミル? 久しぶりだね。ちょっと離れてほしいかな……あと偽物ってなに?」

 

暴走する104期の三人。しかしそれも長くは続かなかった。

 

「おい、ガキども」

 

「おい、クソガキ」

 

リヴァイがミカサとアルミンを、ケニーがユミルを睨みつける。

 

「「座れ」」

 

「「「はい……」」」

 

縮こまった小動物のように大人しくなった三人はしぶしぶ座った。なんだかんだ血の繋がりが濃いアッカーマン叔父甥である。

 

ようやく会議が始められるようになったエルヴィンは一先ずミカサとアルミンに現在の状況を説明した。

 

「アニが女型の巨人なのはもう裏が取れていて、その上全兵団協力の下、明日には捕獲作戦を行う……? あのこれ、僕いらないんじゃないでしょうか……?」

 

「エレンが君を推薦した。女型の正体にも自力で辿り着いたそうだな。是非ともその知恵を借りたい。アルミン・アルレルト」

 

「え、ええと……頑張ります」

 

エルヴィンからかけられたプレッシャーにアルミンは首を縮めて遠慮がちに頷いた。

 

「では、作戦会議を始めよう」

 

「その前に一つ良いかな」

 

ハンジがまたもエルヴィンを遮った。その目はクリスタを見ている。

 

「作戦について話し合う前に、聞きたいことがあるんだ、クリスタ。私たちは君に答えてもらいたいことがたくさんある。私たちは肩を並べて戦う仲間だろう? 教えてくれるよね?」

 

「……私に答えられることなら、答えます」

 

クリスタは後ろめたい気持ちから俯きながらもそう返事をした。ただ事情を知らぬミカサとアルミンだけが険悪な雰囲気に戸惑っていた。

 





続きは明日7:00です。

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