予約投稿、今一勝手が分からない。何時投稿が一番良いのだろうか……。
【78】
巨人がどこまで侵入しているかを確認するために、誰よりも早く階段を降りたライナー。そして、案の定彼は登ってきた巨人と遭遇してしまった。
備え付けられていた大砲をぶつけることで難を逃れたが、まさかの二体目がコニーに襲いかかり、それを庇ったライナーは腕に噛みつかれてしまう。
なんとか小窓から巨人を突き落とすことに成功した彼らであったが、状況は改善したとは言えない。コニーとベルトルトは一つ上の階の扉まで戻り、そこに返しをつけて厳重に封鎖したが、この古い木の扉が巨人の侵攻を食い止められるとは思っていなかった。
「ライナー、大丈夫? たぶん折れてるよね……添え木と包帯があれば良いんだけど。ジャン、それらしいものはあった?」
クリスタはライナーに応急処置を施すため、まずは置いてあった酒で傷口を洗った。垂れた酒から放たれた酒精の香りが辺りを包んだ。
「ちょうど良い大きさの棒はあったが、包帯に使えそうなものはねぇな」
「そっか……ちょっと汚いかもだけど、今はこれで……」
そう言ってクリスタは己のスカートの裾を引きちぎり、ライナーの腕に巻いた。
スカートが膝丈ほどの長さになり、彼女の艶めかしい脚が露わになる。そして、ライナーの視線はそこに吸い込まれた。
「これでよし。どう? ライナー。痛みはない?」
「あぁ……最高だ」
「良かった……街に戻ったらちゃんとした医者に診てもらってね? 包帯もちゃんとしたものに変えて貰わなきゃ」
「あぁ……そうだな」
クリスタが何を言っても生返事で返すライナーを周囲は呆れた様子で見ている。
「悪い、ライナー。俺がドジだったせいで、怪我させちまってよ……本当、助かったぜ」
「気にするな、コニー。兵士として当然のことをしたまでだ」
コニーはライナーに庇われたことを負い目を感じて謝罪したが、ライナーはそれを当然のこととして返した。
「そうかも知れねぇけど、それを実行できるのはお前くらいだよ……なぁ、ベルトルト。ライナーってやっぱ、昔からこうだったのか?」
ばつが悪そうにするコニーはベルトルトに話を振った。
「……いや、昔のライナーは『戦士』だった。今とは違う」
「なんだそりゃ、『戦士』って何のことだよ……?」
目をそらし気まずそうに答えるベルトルト。ライナーは彼が言うことに全く心当たりがないようで、戸惑った表情でベルトルトを見た。
「きっと昔とは比べ物にならないくらい、ライナーが頼りになったってことだよ。ね? ベルトルト」
クリスタはその発言を好意的に捉え、ライナーの背中を軽く叩いて喝を入れた。クリスタに励まされたライナーは抱いた違和感を彼方へと放り投げる。そしてベルトルトは、それを肯定も否定もせずに曖昧に頷いた。
「お前ら、とりあえず使える物を集めるぞ。なんせ巨人はまだ──」
そして、ジャンが次に取るべき行動を指示したときだ。外から何か大きなものがぶつかるような音がした。
「なんの音!?」
再び音が響く。今度は衝撃で塔が揺れた。何かが屋上にぶつかったようである。
「上からだ……全員、登るぞ!」
【79】
「大丈夫ですか! 今の音は……」
ジャンの命令に従い、全員が屋上へと登る。そこには欠けた塀と、二人の兵士の亡骸を抱えて首を振るゲルガーとナナバの姿があった。
「二人とも即死だ。飛んできた岩か何かにぶつかったらしい。クソッ……」
リーネとヘニングの二人は、104期の様子を見に行こうとしたばかりに運悪く直撃を食らってしまったのだ。ゲルガーはやるせない怒りを込めて壁を叩く。
「岩……? そんなの、一体どこから?」
「そうだ、あの一体だけ壁に向かった獣の巨人! きっとあいつの仕業に……お、おい、向こうから巨人が大勢来てるぞ!?」
コニーは先ほど見た獣の巨人が歩いていった方向をみて驚愕した。つい先程まで何もいなかったはずなのに、林の方向から多数の巨人が、古城めがけて進軍してくる。
「これじゃあまるで、誰かが巨人を操ってけしかけてるみたいじゃないか……」
絶望的状況にナナバはそう呟く。そして塔の上で四面楚歌となり、取り残された彼らはそれを見た。
巨人が来たその方角の先、壁上に登ったらしい獣の巨人が、まるで巨人たちに号令を下すように雄叫びを上げている様を。
(獣の巨人……前にシャルに教えてもらった九つの巨人の一体。でも、あの巨人に無垢の巨人を操る力なんてないはず……そんな、始祖の座標みたいな力なんて……)
まるで始祖の巨人の如き力を示す獣にクリスタは違和感を持つが、今はそんなことを考えている場合ではないと余計な思考を振り払った。
「ナナバさん、ゲルガーさん。二人はあとどれくらい戦えそうですか?」
「悪いが、俺はもう限界だ。刃を使いきっちまった」
「私も、ガスがほとんど残ってない。流石にあの数は……」
クリスタの問いに二人は答えたが、分かったのは二人の力ではこの状況を打開できそうにないと言うことだけだった。
クリスタは悩み、己の手のひらを見つめる。
(私が巨人化する? でも、私が巨人化したところでみんなを助けられるの? 座標は使えないし、シャルほどの格闘技術も私にはない。かといって、何もしないわけにも……どうする、私……ッ)
唯一この場で残された対抗手段は、クリスタの持つ巨人化の能力だけだ。だが彼女の力は今現在、これ以上なく弱体化していると言わざるを得ない。
もともと座標は使えない上に、頼みの綱であるシャルルも機能不全なのである。クリスタもケニーのもとで巨人化訓練を受けある程度は戦えるが、それは無垢の巨人一体二体に対してであり、迫りくる大軍を相手にする能力はない。
もう幾度目かの説明か分からないが、そもそも始祖の巨人は肉体の基礎性能が九つの巨人最弱なのである。進撃や女型のように頭を貫くほどの打撃力は持ち合わせない。顎のような鋭い爪もない。無垢の巨人に対し有効な手段はうなじに噛みつくくらいしかないのだ。
そしてクリスタの持つ戦闘技術もシャルル譲りのカウンターであり、一対多には機能不全である。
ある意味、知性巨人よりも厄介な相手であった。
クリスタは下を覗き込み、塔に群がる巨人たちを見た。このままではいずれ塔は崩れてしまうだろう。
(私一人だけなら逃げられるかもしれない、けど……そんな結末、受け入れられないよ)
そして、背後にいる守るべき仲間たちを見た。
既に二人の犠牲者が出ている。ナナバとゲルガーは険しい表情で頭を悩ませ、コニーは不安そうだ。ライナーとベルトルトは、二人でなにか話し合っている。そしてジャンは──ジャンだけが希望を探し求め、周囲を見渡していた。
「クソッ……こんなところで終われるわけねぇだろ……ッ! せめて、近くに味方が……」
ジャンの独り言がクリスタの耳に届く。
(味方……そう、そうだよ! 時間稼ぎくらいは、きっと私にもできるはず!)
クリスタに一筋の希望が灯った。ウォールローゼに巨人が出現したことは早馬で既に伝わっているはず、ならば援軍が夜間行軍しこちらに来ていてもおかしくはない。
確証なき希望であるが、それでも賭ける価値はあるだろう。
(そうと決まれば……やるしかない!)
「コニー! そのナイフ借りるね!」
クリスタはコニーが持っていたナイフを無理やり奪い取り、塔の際に立った。
「はぁ……? クリスタ、そんなもんでどうするって言うんだよ……」
コニーは訝しむようにクリスタを見た。
「これで戦うんだよ」
「おい正気か、クリスタ! お前まで死に急ぐ必要はねぇ……ここで、味方の援軍が来るのを待つんだ!」
ジャンがクリスタの手を引く。ジャンの言うことは正しい。だが巨人がそれを待ってくれるはずもない。
衝撃で塔が揺れる。こうしているうちにも、巨人によって古城の崩壊は進んでいた。
「ごめん、説明してる暇はないの! ナナバさん、ゲルガーさん! 私が時間を稼ぐから、みんなをお願いします!」
「できるの? クリスタ、君は……」
「やります──これが私の、果たすべき責務だから!」
登る朝日を背景に、そう言ってクリスタは飛び降りた。
「クリスタ──ッ!」
ライナーが叫び手を伸ばすが、クリスタはすでに遥か下である。
彼女は飢えた物乞いのように天を仰ぐ巨人たちの、その伸ばされた腕の海に消えた。
客観的に見ればただ投身自殺をしただけのクリスタに、104期たちは絶望する。しかしその絶望は長くは続かなかった。
閃光と爆発により、数十の巨人たちが吹き飛ばされる。
立ち昇る蒸気の中から姿を現したのは、14メートル級の、金髪碧眼の巨人だった。
女型≒シャルル始祖≧進撃≒強化ユミル顎>原作ユミル顎≒クリスタ始祖……かも。
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