やわらか不戦の契り   作:妄想壁の崩壊

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ここらへんから書いててめっちゃ楽しい。


南区5

 

【80】

 

巨人となったクリスタはすぐさま次の獲物へと狙いを定めた。近くにいた4、5メートルほどの小さな巨人のうなじは足で踏みつぶし、倒れている12メートルほどの巨人はうなじを噛み千切り絶命させる。

 

クリスタが使える最も攻撃力のある技は、先ほど放った巨人化による爆発である。それによって吹き飛ばされた巨人たちを彼女は一体一体、確実に仕留めていった。

 

巨人の最も恐ろしい点は数だ。彼女の敗北の条件は、巨人を吹き飛ばすことで得られたこの空白のフィールドを巨人に奪われ、囲まれてしまうこと。故に、最初が肝心なのだ。このスタートダッシュが続くうちに、可能な限り巨人を殺し陣地を広げ続けなければならない。

 

(ぱっと見た感じ、巨人の数は60と少し。一度に来られたらひとたまりもない……なら、足並みを揃う前に、可能な限り殺してやる……ッ!)

 

格闘術も何もない。ただ巨人のうなじに食らいつく。それはまるで野生の獣のような戦い方だった。

 

そしてその様子を、104期と調査兵の二人は塔の上から見ていた。

 

「なぁ、お前ら。今、クリスタが巨人になったように見えたんだが……俺の見間違いじゃないよな? 夢じゃないよな!?」

 

驚き、困惑、混乱、様々な感情が入り混じった声でコニーが言った。そしてそう思っていたのはコニーだけではない。

 

「調査兵団は……お二人は知っていたんですか……? クリスタが、巨人だってことに……」

 

ゲルガーとナナバの二人に対しジャンは問う。

 

二人のクリスタに対する態度はどこかおかしかった。新兵の、それも非武装のクリスタに何かを期待するような言動をしたり、クリスタが飛び降りようとしたとき、それを止めようとせず見送ったりと。

 

「あぁ……知ってたよ。直接は見たことなかったけどね」

 

「エレンの例がある通り、巨人の能力は強力な戦力です。それを何故隠してたんですか!?」

 

ジャンはナナバに詰め寄る。クリスタが巨人だと言うのならはじめからそれを活用していれば良かったのだ。そうしておけば、ジャンたちがこの古城の上に取り残されている現状を避けられたかもしれない。

 

そう思い言葉をまくし立てるジャンを、ゲルガーが間に入って宥めた。

 

「落ち着け、調査兵団が彼女の能力を知ったのはごく最近だ。俺たちが伝えられたのも今日……いや、つい昨日のこと。俺らもあいつのこはあまり分かっちゃいねぇよ。それにな……あいつは多分、お前が考えてるほど強力な戦力じゃねぇ」

 

ゲルガーはそう言って下を見た。

 

下では変わらず、巨人となったクリスタが死闘を繰り広げている。だが状況は厳しい。初手で作り上げた優位はもはや無くなり、四方から迫りくる巨人に手を焼いていた。

 

前方だけならば対処できるが、しかし左右と背後からも巨人の手が伸びてくる。クリスタはその手に気がつかず腕を掴まれ、その拳が巨人に丸呑みにされた。

 

『くっ……この! 離しッ……うぉりゃあッ!』

 

巨人のまま言葉を叫ぶクリスタ。そのまま噛まれた腕ごと、噛みついてきた巨人を投げ飛ばした。

 

「い、今言葉を話したのか? と言うか、強いなクリスタ……あいつって確か格闘訓練で上位の成績だったっけ。俺と同じで小さいくせに、よくやるもんだと思ってたんだが……」

 

コニーはその戦いぶりに感嘆するが、ゲルガーはそれを否定した。

 

「いいや、よく見ろ。腕から煙が上がっている……拳を食われたんだ。それに投げ飛ばしたところで、巨人はうなじが無事なら倒れない。あれじゃジリ貧だぞ……」

 

ゲルガーの言う通り、クリスタはジリジリと後退していた。初手で確保したスペースを失い、背後には守るべき仲間たちがいる塔が迫っている。

 

「……ゲルガー、私たちで援護できないかな?」

 

「馬鹿言うな。俺たちにはもうガスも刃も残ってねぇんだぞ……」

 

ナナバの提案に対し、ゲルガーはわざとらしく刃を見せ、空っぽのボンベを叩いて拒否した。行けば死ぬだけだろうと言外に示す。だが、ナナバはそうは思っていなかった。

 

「ガスと刃ならある。二人が残してくれたものが」

 

彼女が指したのは、リーネとヘニングの死体だ。二人の立体機動装置には、まだ何本か未使用の刃と、多少ガスが入ったボンベが付いている。

 

「……そう言う意味かよ、クソッたれが」

 

戦友の亡骸から装備を拝借するのに何も思わないわけではないが、とは言え、今は兵士としてなすべきことをなさねばならなかった。

 

きっとそうすることを、死んだ二人も望んだだろう。

 

「すまん、まだお前たちを寝かせてられねぇみてぇだ」

 

「力を借りるよ、二人とも」

 

手早く立体機動装置を付け替えた二人は、クリスタの援護に向かうべく塔を飛び降りた。

 

【81】

 

飛び降りた二人を見送るコニーとジャン。その背後で、ライナーとベルトルトは話をしていた。

 

「ライナー」

 

「……どうした、ベルトルト」

 

「『今』じゃないのか?」

 

「あ? ……何がだよ」

 

ベルトルトのぼかすような言い方に、ライナーは得心がいかぬ様子である。ベルトルトはそんな彼に呆れたように説明した。

 

「ライナー、僕たちは探し物を求めてここに来たんじゃないか。そしてそれは今、目の前にある。だから……やれるだろ。僕たちにはその力あるんだから」

 

「……そうか! ベルトルト……そうだよな──」

 

今度は理解できたのか、ライナーは激しく頷きベルトルトに同意を示した。ベルトルトはそんなライナーの様子に安堵し、そして続く言葉に絶望した。

 

「──俺たちならクリスタを助けられるじゃねぇか!」

 

「そうだ──え……?」

 

ベルトルトは絶句した。そんなベルトルトの心境などつゆも知らず、ライナーはベラベラと口を紡ぐ。

 

「なんで忘れてたんだ……こんな重要なこと。よし、行くぞベルトルト」

 

「待ってくれ……」

 

「どうした、何を戸惑ってる。いや……そうだったな。お前のは少しデカすぎる。行くのは俺だけにしよう」

 

「ライナー……どうして……」

 

「まさか、クリスタの隣で戦えることになるとは……きっと驚くだろうな。とは言え同じ秘密を抱える者同士と分かったんだ。これからは関係を密に……」

 

「どうして君は──そうなってしまったんだッ!」

 

ベルトルトは叫び、ライナーの胸ぐらを掴んだ。

 

ライナーの様子がおかしいのは、今に始まったことではない。あの日、マルコを殺した日から……いや、もっと前から彼はおかしくなっていった。

 

それはいつだろうか。ライナーが鎧の巨人を継承した日だろうか、マルセルがライナーに印象操作をしたことを告げた日だろうか、ライナーが……マルセルになることを誓った日だろうか。

 

どうだって良い。ライナーがどれだけおかしくなろうが、ベルトルトは別に構わなかった。島の悪魔にどれだけ絆されようとも、構わなかった。ただ一つ。自分たちの目指す共通の願いさえ忘れてくれなければ、それで構わなかった。

 

「──僕たちは故郷に帰ると、誓ったじゃないか……ッ!」

 

ライナーの表情が変わり、体がにわかに震え始める。

 

「お、おいお前ら。どうしたんだよ……? ライナー、お前……もしかしてベルトルトを怒らせるようなことしたのか?」

 

「ベルトルト、落ち着け。こんな状況にまいってるのは全員同じだ。冷静さを欠けば、助かる命も助からねぇよ。だからまぁ……滅多に喧嘩しねぇお前らの間に遺恨が生まれたって言うなら、さっさと解消した方が良い……と俺は思うわけだが」

 

コニーとジャンがベルトルトとライナーを見る。その目は同じ仲間を心配する目だった。

 

「すまない……少し、興奮しすぎた」

 

ベルトルトは、耐えられずに目をそらした。そして、ライナーは……。

 

「──あぁ、俺が馬鹿やっちまっただけだ。すまん二人とも。あとベルトルトも……悪かった」

 

コニーとジャン、どちらにも視線を合わせず、そう告げた。

 





ライナー、君は兵士なのかい?戦士なのかい?どっちなーんだい!せーーーんし!パワー!!!

▽クリスタからの好感度がぐぐぐーんと下がった

なおこのあともライナーは不安定なのでベルトルさんは行動するかどうか頭を悩ませます。ウラニウムかよこいつ。放射線で鎧カバカバだからそんな脆いのか?

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