結束いのり、スターフォックスへ   作:山倉衛

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36話 ガールズトーク

 スターフォックスの生徒は、休日朝練が終わると隣のらららぽーとでランチやショッピングを楽しむことが多い。

 

 今日は光、亜子、萌栄、いのりの4人で、モール内のスポーツ店でブレードを研いでもらっている間にランチにすることにした。

 亜子がまずみんなに聞く。

「みんな、何食べる?」

「うちは、ガッツリいきたいかな」

 萌栄がテキトーなことを言うが、実のところ、食事制限が必要な選手はいなかった。

 ライリーは食事指導はしっかりするが、よほど体重過多の子でもない限り成長期の子に食事制限を許さないし、勝手に食事制限をする子には練習させない。

 

「ランチからガッツリかあ……。あまり食べすぎも良くないからね」

 光はさすがに昼食は控えめにしたい方らしい。

「私はカフェランチくらいがいいかな」

 いのりも無難な線から意見する。

 

「いのりちゃんは移籍前は朝練後はどうしてたの?」

 亜子が聞くと、いのりは少し懐かしそうに答えた。

「お母さんやコーチも一緒に、ヨネダコーヒーって喫茶店で食べることが多かったかな。ランチというより、遅い2回目の朝御飯って感じだったけど。私、あそこで食べるナポリタンが好きだったな」

「あ、私も鴗鳥先生の家では、たまにヨネダ行ったよ。フードメニューがどれもすごく量が多かったよね。理凰君とシェアしてたりしてたよ。

 そう言えば、ルクスのホームリンクの大須は、リンクの下にヨネダ入ってたよね」

 同じ名古屋のクラブ出身者で地元トークが始まった。

 

 萌栄がそこに割って入る。

「光ちゃんは何か好きなメニューあるの?」

「えっとね。ヨネダだと、限定メニューのロコモコバーガー。私、目玉焼きが好きだから」

 そこにいのりも追従する。

「ロコモコなら、卵料理専門のハワイアンレストランとかあったよ。こないだ、朱蒴センパイと行ったんだ」

「……私、そこには行きたくないかな」

 光はなんとなくイヤで断った。

 

 亜子がそろそろかとまとめに入る。

「目玉焼きじゃないけど、オムライス専門レストランはどう? 自家製パンもウリで、メニュー次第では少なめにもガッツリにも対応できるよ」

「「さんせーい」」

「そこに決まりね。亜子ちゃん、よろしく」

 

 間もなく店に着くと、予約票をとり、席順までの間は軽くショッピングを楽しんだ。休日ということもあり、かなり混雑している。

 

 まず、光といのりが釘付けになったのはペットショップだった。寮住まいや賃貸住宅住まいでペットが飼えるわけないので、見て楽しむだけなのだが。

「かわい〜」

「かわいいね」

 実際に買うとなると選手の身では世話も大変なのでこうして見るだけである。

 

「うう……金メダル取ってお金が貯まったら、ペットが飼える家を五条工務店のスポンサー割引で建ててもらうんだ……」

 ペットを飼うための前計画が遠大すぎである。

 

 ガラス越しに十分癒された後は、前衛的な生活雑貨店に入る。

 

 光はファンシー系雑貨類の前で立ち尽くす。

「うう……コレ欲しいけど、寮だと使えない……」

 結局、フリル付き枕カバーだけカゴに入れた。

 

「寮生活大変だねー」

 同情する萌栄の買い物カゴにはキモかわ系のぬいぐるみキーホルダーが詰まっていた。

 それを見ていのりは呟く。

「いいなー。萌栄ちゃんは好きなキーホルダーつけられて」

 

 亜子は不思議そうに聞く。

「そう言えばいのりちゃん。ペンくまキーホルダー辞めちゃったの?」

 いのりは寂しそうに答えた。

「うん。スポンサーの五条工務店さんのぬいぐるみつけてるんだ……」

 いのりのカバンには、顔の上半分に覆面をした青年のキャラ「五条くん」のぬいぐるみが付いていた。

 

「そこまで気にする事ないと思うけど」

 呆れたように言う亜子にいのりは言い返す。

「亜子ちゃんのカバンのキーホルダーだって、森久乳業のアイスのキーホルダーでしょ?」

「あはは。わかってくれたんだ。そうだよ。

 でも、好きだからつけてるだけで、別にスポンサーだからつけてるわけじゃないよ」

 

「あははー。いのりちゃんにはこれ! どう!」

 萌栄が余計なものを見つけてきた。

「!? ミミズ飼育キット『ミミポスト』!? ミミズの尿取り出し口付き? ごくり。コレは欲しくなる……」

 ドン引きする光と亜子。ツッコミを入れる萌栄。

「あはは! 本当に欲しいんかーい!」

 

 いのりは少し真面目に逡巡していたが、やがて諦めて棚に戻した。

「ちょっと高いし、ミミズ別売りなのがもったいないね。あと、シマミミズ用なのが……同じ値段でフトミミズ対応してたら衝動買いしていたかも」

 フトミミズ用がなくて良かったと皆、ホッと胸を撫で下ろした。

 

 そうこうしているうちに順番が回ってきたので、皆レストランに入る。

 亜子といのりは一番ベーシックなデミソースのオムライスプレートを、光はちょい高めのホタテソースのプレートを、萌栄はチーズソースのプレートに自家製パンをつけた。

 

 食べながら話題になったのはコーチ陣の話題だった。

「ねぇねぇ。司コーチって、メチャ有能やね」

 萌栄が遠慮なく切り出す。

「あのハーネスだけでもヤバいのに、シューズまでシングルのド高い奴買って、たまにジャンプ練習してるよね。

 シングル経験ないのにこないだ3Lz一応降りてた?」

 光が補足する。

「まだたまにしか降りられてない」

 

 ここで萌栄はちょっと無神経な発言をしてしまう。

「でも、司先生、タッパでかいから、転けた時の音ヤバイわ。ビックリするよー。どてーんって!」

 いのりはたまらず、司の弁護に回る。

「ちょっとぉ! 萌ちゃん! 司先生だって頑張ってるんだから、そんな言い方無いと思うんだけど」

「あ、ゴメン」

 萌栄は平謝りした。

 

 亜子はちょっと悪くなった空気を戻すために別の話題を振る。

「司先生、ルクスでは他に担任いなかったの、不思議ね」

「うん。ルクスではやっぱりヘッドコーチの瞳先生の人気すごいし。

 あ、短期間だけ、こないだ3A跳んだ鴗鳥理凰くんの担任してたけど」

 

 ここで、また萌栄の無神経発言が出る。

「あーあの。光ちゃんと、ラブラブカップルでアイスダンスしてた子かあ」

 光が真っ赤になって咳き込む。

 

 今度はいのりが話題逸らしに入る。

「そう言えば、今度魚淵先生が来るらしいけど、亜子ちゃん知ってる?」

 

 亜子は得意気に答える。

「ハーネス師の魚淵先生ね。ふふーん。実はその情報仕入れてるよ」

 亜子の母、胡荒コーチの情報収集能力はハンパない。その分、余計な情報を拡散されるリスクも高いが。

 

「なんと、今度うちのリンクに、4T習得するために女子の選手が2人来るよ。それに合わせて魚淵先生も来るみたい」

「「4T? 2人も?」」

 4回転ジャンプを跳ぶ選手というだけでも割と事件なのに、それが女子2人となると大事件だ。

 

「そして、その選手たち、実は司先生に何回も教わったことある選手なの。担任とかじゃないけど」

 いのりの頭に「?」マークが付く。

「? 合宿とか、合同練習とかで?」

「ううん。クラブの練習で」

 

 思わせぶりな亜子に、皆頭をひねるばかりであった。

 

 

 

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