結束いのり、スターフォックスへ   作:山倉衛

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40話 JGP選考会 前編

 JGP選考会

 

 大会ではないが、ジュニア選手の今シーズンを占う最初の大切なイベントだ。

 昨年の派遣選手から、岡崎いるか世代4人がシニアに抜ける女子シングルの今シーズンだが、狼嵜光を始めとした新たな世代が入り、選考会は激戦となると思われる。

 昨年、ジュニア入り初年度でファイナルまで進出して成果を残した結束いのりですら、安心とはいかない。

 

 もちろん、昨年からジュニア入りして2戦派遣に選ばれている胡荒亜子や、昨年は1戦派遣に甘んじたがノービス時代に国際大会優勝経験もある大蜘蛛蘭、同じく1戦派遣ながら、昨年の中部ジュニア躍進の旗手、八木夕凪も忘れてはならない。

 

「こ、こ、今年はせんしゅちゅ、何人だっけ」

 緊張して質問噛んでるいのりに、亜子はため息をつきつつ答える。

「何でいのりちゃんが緊張してるのよ? 昨年日本は世界ジュニアの表彰台取れてるんだから、2戦派遣6人、1戦派遣2人だってば」

 

「私、去年の選考会、転倒して……」

 まだ自信の無さそうないのりの所に、蓮華茶FSCの鹿本すずがやって来た。

「はあぁぁ。かわいいん配るんが忙しい忙しい。鹿本すずちゃんのジュニアデビューを待ってた全世界のみんな、待たせて悪かったなあ? ……ああ、そこにいらっしゃるんはジュニアの先達たちの皆はんではありゃしませんか?」

「「すずちゃん、久しぶり」」

 いのりと亜子の返事がかぶる。

 

 すずはマイペースに亜子といのりの間に座る。

「あらあら。もうすっかりジャパンジャージ姿が板についてらっしゃる姿、ホンマに御立派で羨ましいわ。まあ、今日でウチもその隣に並ばせて頂きますさかい……

 ……なんかいのりはん表情固ない?」

 

「緊張してるんだってさ。去年の選考会で転倒しているからって。おかしいよね」

 亜子からそれを聞いたすずは、イタズラっぽい笑みを浮かべると、立ち上がって会場全体に聞こえるような声で言った。

「みんな〜。

 去年ファイナル行ってメダルまで取ったいのりはんだって緊張してるんだから、初めてのみんなも緊張してて大丈夫やよ〜」

 会場のあちこちからくすくす笑いが起きる。

 

 会場の緊張を解くダシにされたいのりだが、逆に笑みが溢れた。

「あははっ。すずちゃんは余裕だね」

「緊張も何もありゃせんわ。今日は選ばれてもキスクラも表彰台もカメラもないやん! 観客入れてとまでは言わんまでも、みかん箱とかでええから表彰台作らんかい! って思うわ……てか、いのりはんまた背伸びたな」

「そうなのー」

 いのりは明るく振る舞ってはいたが、膝のテーピングが痛々しかった。

 

「少しウチの紅熊センパイにそのタッパ分けたってーな。

 って、そやそや、亜子ちゃん。ちょっと言いたい事あるんだけど」

「何?」

「この、今流行ってる動画。見た?」

 亜子がすずのスマホを覗き込むと、外国語の動画サイトの動画だった。投稿者はイタリアのジュニア選手だった。

「あ、コレこないだの4人シンクロ3A動画」

「そうそう! 何でこれ、ウチも呼んでくれへんの!?

 こんなん、センターでウチ入れたら絶対バズるやん!」

「……たまたま鴗鳥君がウチで3A習得したから撮れただけでしょ?」

 亜子が困った顔で答えた。

 

 因みに動画はイタリアのジュニア選手が、日本のシンクロ高難易度ジャンプ動画を拾って集めてテロップつけたもので、タイトルに「Disperazione(絶望)」とあった。

『この3Aの4人は全員ジュニアで、うち2人はジュニア初年度です』

『この4Sの2人は同じクラブのジュニア選手ですが、クラブにもう1人4S跳ぶ選手がいます。4Lzも跳んだカミサキヒカルです』

『この183cmの4Tジャンパーは幸いな事に今年からシニアです。この142cmの4Tジャンパーも幸いな事にジュニアではありませんでした。彼女は…まだノービスBです』

 最後は、スケート靴を持って神に許しを乞うイタリア女子選手の姿で終わっていた。

 

 いのりはその選手に見覚えがあった。

「あ、この子。去年のJGPファイナル出てたイタリア選手」

「あはは。面白動画作ってる場合かーい!」

 すずがツッコむが、3Aシンクロ動画撮影にこだわってたどの口が言うのか。

 

「そやそや、ちょっといのりはん。お耳かして」

 すずが、いのりに内緒話をする。

「……光はんって今シーズン4回転封印ってホント?」

 いのりは少し慌てて答えた。

「そ、それは知らないよ! 司先生とかじゃないと知らないよ!」

 

 すずは内緒話を続ける。

「いのりはんは、そないに膝テーピングして、4S大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

 即答だった。

 

 すずは、去り際に一言忠告した。

「いのりはん。大丈夫な時とそうでない時に、言い方の態度同じで返事せんと、何か隠してる時とかまるわかりやで」

「!? ……あぐっ! しまった」

「まあ、気をつけてや。それじゃ、ちょっとジャパンジャージ仕入れる準備あるから、またな」

 

 すずが去った後、いのりは近くの司のところに行って聞いた。

「司先生。光ちゃんは、今シーズンはもう4回転封印しちゃうんですか?」

 司は少しためらって答える。

「それは、ちょっと。いくらいのりさんでもヒミツかな?」

 

 いのりは質問を続ける。

「先生は私の4S、不安に思います?」

「いや? 全く大丈夫だよ。なんで?」

 こちらは即答

 

「司先生って、すごくわかりやすいですね!」

 なんだかいのりは緊張も解け、元気を取り戻したようだった。

 




原作53話時点で連載開始して、まだJGPの結果まるでわからないのにここまで執筆してしまう事になるとはおもわなかったぜ!
もう、JGPの表彰台云々、今年の選考数云々わからないが、でまかせで書くぜ! 加筆修正とか知らねー
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