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ヘルメット団に属するとある少女にとって今日という日は一生忘れないだろう。
彼女が属するヘルメット団のとある派生勢力の彼女はこの日仲間たちと共にブラックマーケットに武器の補充をしに来ていた。不良集団である彼女たちは常日頃から傭兵や盗賊まがいの事をして日銭を稼いでいた。
そのための補充だったが帰路についた彼女たちはたった一人によって壊滅した。フード付きのマントを羽織ったその人物は武器を一切使わずに素手だけで20人もの彼女の仲間たちを瞬時に無力化すると逃げられないようにかきつく縛り上げて武器を積んだままのトラックに乗せどこかへと移動したのだ。
そして、連れてこられたのがブラックマーケットでも奥深くに位置する、彼女たち程度では絶対に近づかない危険地帯だった。ブラックマーケットは不良以外の善良な生徒も訪れる事がある場所ではあるがそれはあくまで表面の比較的安全な場所の話である。本当に危険と言われている裏路地の奥。複雑に入り組んだそこは本当の悪党か全てをはねのける強者以外は絶対に立ち入ってはいけないと言われていた。もし入り込んだが最後、二度と日の目を浴びる事は出来ず、残りの生涯を最悪な事で終わらせると言われていた。
そんな場所に連れてこられた少女の心境は今にも壊れそうであり、同じように体を震わせる仲間たちと寄り添う事しかできなかった。
「さて、それじゃ一回だけ説明しよう」
少女たちは比較的真新しい倉庫にトラック事入れられ、並ばされていた。そこでようやく自分たちをさらった人物の顔を拝むことが出来た。
その人物はこのキヴォトスにおいて珍しいどころかいないとさえ言われている生身の男性、それも大人と言える青年だった。だが、短髪の黒髪は光を逃さないブラックホールのように深く黒く、真っ赤に染まる目はまるで吸血鬼を思わせるように冷徹で、笑みを浮かべるその口は化け物の物に見えていた。
「俺は君たちの事が知りたいんだ。所属、名前、年齢……。ありとあらゆる事を。勿論、君たちの仲間の事も全部ね」
優し気に語り掛ける男だがその声に感情はなく、何処まで冷徹だった。まるで、言っている事に意味はないと言わんばかりに。
「だが俺としては君たちのような幼気のない少女に無理やり聞き出すのはよくないと考えている。だが君たちは
そこまで言った男は彼女の仲間の一人を掴むと持ち上げた。今になって気づいたが男はかなりの長身であり、持ち上げられた仲間は宙に浮いていた。
「大丈夫。
「ひっ! い、いやぁっ!!!」
バキ! ボキリ! ……ボリ ……ボリ ……
「……!」
その光景に、少女たちは絶句した。悲鳴を上げた仲間のヘルメット事男は
「ああ、そうそう。俺はこういう静かな場所ではうるさいのが嫌いでね。
「っ!!!」
ブチり! ボリ…… ボリ……
そう言いながら男は死んだ彼女の仲間の腕を引きちぎると切断面から大きくかぶりついた。血が噴き出し、男の体を真っ赤に染め上げる。その姿はまさに化け物であり、いつの間にか変色した目と合わせて彼女たちの心は恐怖で染まり切っていた。
「んじゃ改めて。キミたちのありとあらゆる情報を、聞かせてくれるかな?」
そう笑顔で男が言った瞬間、彼女たちは一斉に自らの情報をさらけ出すのだった。
この不可思議な世界にきてどれだけの時間が経過しただろうか?
神様のミスで殺された俺はそのお詫びとして好きな世界に好きな特典と共に転生できるはずだった。
確かに俺は選んだ特典通りの力を手に入れた。それは感謝しているが肝心なのが転生先だった。
俺は東京喰種の世界で金木君たちと物語の結末を見届けたかった。社会人となって自由な時間がほとんどなくなり、REの途中までしか見れなかった俺はこの機会に結末を体感したかったのだ。そのために東京喰種の世界を壊さないような最強の特典を得て傍観者のポジションとして見届ける準備を整えたのだ。
だが、ミスを犯す神様はこんな時でもミスを犯すらしい。
俺が転生したのはキヴォトスという変な国だった。俺も詳しくは知らないがブルーアーカイブというゲームの世界のようだ。よくCMで見ていたが終ぞやる事のなかったゲームだ。何故そんな世界に転生してしまったのか。せめて原作を知っている作品にしてほしい。ピンポイントで知らない作品に転生するなど最悪でしかない。
物語なんて一切知らないから今がどの時間軸なのかさえ分からない。原作開始と思っていたことが実は過去における重要なイベント、なんてことはよくある話である。知識のない俺に原作を特定するのは容易ではないだろう。
そんなわけで俺は絶望した末にぐれた。それはもう悪い方向にぐれてぐれてぐれまくった。ブラックマーケットという闇市の最奥を根城に俺は好き勝手に暴れまわった。この世界では少女たちが平気で銃火器で暴れている世界でなんとも世紀末な様相を見せている。かつての友人が語っていた「GTAみたいな世界」というのは言い得て妙だろう。だが、悲しいかな。そんな少女たちが使う銃火器は俺には一切通用しない。俺がもらえた特典は10個。その中に「喰種になる事」、「大半のクインケすら通じぬ強靭な皮膚と身体能力」があり、その気になれば爆発だって耐え切る事が出来る。加えて「瞬時に回復する肉体」もあるために多少の傷では直ぐに治ってしまう。
東京喰種ではCCG最強の有馬に喰種界最強と思われる隻眼の喰種等厄介な存在が多い。そんな彼らと出会ってしまった場合生き延びられるようにと選んだ特典はこの世界では最強すぎたようだ。
気づけば俺はブラックマーケットの最奥において災害扱いで危険視され、絶対に近寄ってはいけない人物となっていた。基本的に俺が動かべざわつき、道を歩けば全ての戸が閉まる。常に動向を確認され俺が去れば安堵の息をつかれる。正直苛つくがこのくらいで暴れていてはこの世界ではやっていけない事は理解しているつもりだ。
「はぁ、つまらないな」
「ひっ! す、すいません……!」
俺のつぶやきに近くにいた少女が軽く悲鳴を上げて謝罪をしてくる。この前非常食としてとらえた不良グループの少女達にはアジトとしている倉庫の掃除などをさせている。なんとかヘルメット団という組織に属しているようで今度襲撃する予定だ。アジトの情報や構成員の数、使用している武器などは全て彼女たちが
「うーん。暇だ。なんか出来ないのか?」
「す、すいません! わ、私達、はその……」
「まぁいいか」
正直なところこいつらには何も期待していない。掃除させているのだって肉質を保つための行為だ。何もさせないと部屋の隅で縮こまっている事しかしないからな。非常食とは言え食べるなら美味しい状態で食べたいものだ。
「偶には普通の料理でも食うか。お前ら、作れるか?」
「か、簡単なものなら……」
「んじゃ作れ。材料は用意してあるからな」
「は、はい!」
おびえた様子で去っていく少女に俺はため息をつく。彼女たちはヘルメットの中身はともかく他は見分けがつかない。ヘルメットも服装も似た感じの為普段はヘルメットをかぶせている。そこに番号を振り、それで個体を見極めている。
因みに、俺は特典で「普通の料理でも食べられる」ようにしている。だから態々人を食う理由はないのだが人間の肉は高級肉並みに美味い為止める事は出来ていないし辞めるつもりもない。ぐれる前はそうでもなかったが今は吹っ切れているせいか人間を食べる事になんとも思わなくなってしまった。
「お、お待たせしました!」
「チャーハンか。どれどれ……」
出来たのはチャーハンで食べてみれば普通だった。良くもないが悪くもない。そんな味だ。まぁ、簡単な物なら出来ると言っていた通りの味だな。
「普通だな」
「っ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! ど、どうか食べるのだけは……!」
「この程度で非常食を減らす様な事はしねぇよ。ばかにしてんのか?」
「ひっ!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
あー、壊れたレコードのように何度も謝罪を繰り返しやがって。うるさいな。
「黙れ」
「っ!!!」
「今回は罰は与えない。特に期待もしていなかったしな。とはいえ今後はお前が料理当番な。不味い料理作ったらその時はお前が1番になるからな?」
「っ!!! はい! やります! 頑張ります!」
そう言って必死に頭を下げる少女。5番という数字が書かれたそのヘルメットを何度も上下に振っている。
番号はただの識別名ではない。番号は変動制であり、番号はそのまま俺が食べる順番になっている。つまり、この少女は何事もなければ5番目に食べる非常食という事だ。
そしてこの番号は俺をどれだけ満足させたかで変動する。つまり俺に媚び諂ってご機嫌を取らないと食べられるのが早くなるわけだ。まぁ、数が少ない今だからこそ出来る趣向だ。暫くはそれで彼女たちで遊ぶつもりだ。特に1番の少女が見ものだ。このままだと長くはないと知っている為に誰よりも精力的に動き、掃除をしたりご機嫌を取ってくる。ぶっちゃけ暫くは食べる必要はないが彼女には言っていないために明日にでも食われるんじゃないかと気が気ではないだろう。その様子がとても面白い。
「あ、あの。材料なんですがあまり揃っていなくて……」
「あー。そうか、ならば奥の部屋に適当に金を放り込んでいるからそれ使って買ってこい。あ、もし逃げようとした場合はどうなるかわかっているな?」
「も、もちろんです」
そう言って必死に頭を下げて金を取りに行っているが……。まぁ、無理そうだな。
その日の夜、俺の非常食の数は14に減った。
アビドス高等学校はキヴォトスにおいても長い歴史を持つ学校であった。全盛期にはトリニティ、ゲヘナ、ミレニアムの三大学校にも劣らない勢力を築き上げていたこの学校は年々続く砂嵐の影響でその栄華を完全に忘れ去られる程に落ちぶれていた。
街を飲み込む砂嵐はアビドスから住人を奪い、活気を消し去ることとなった。現在では生徒の数は僅か2人にまで減少し、治安が悪い事で有名なゲヘナに匹敵する治安の悪い地域へと変貌していた。
「ねぇ知ってる? 最近不良がとても減っているんだよ」
「暴れるたびに対処していますからね」
だが、それもアビドスに入学した少女、小鳥遊ホシノの活躍で改善しつつある。小柄な体格からは想像もつかない戦闘能力はその辺の不良や武装集団では相手にならず、アビドスの治安は改善に向かいつつあった。それでもアビドスの人口流出は止まらないがアビドスはそれ以上の問題を抱えていた。
「そんな事よりもこの膨大な借金をどうするのかを考えないと……」
「それは分かっているわよ」
アビドスは9億という膨大な数の借金を背負っている。これは歴代の生徒会が砂嵐対策に借金を重ねた結果であり、利子だけでも払いきれない数にまで膨れ上がってしまっていた。
更に、アビドス側は把握すら出来ていないがアビドスの土地の大半がこの借金の担保に奪い取られており、現在では僅かな土地を残し、借金している相手、カイザーコーポレーションの物となってしまっていた。
まさに売れる物は全て売り払い、それでも払いきれない借金がある。それが今のアビドス高等学校の全容であった。
「でもでも、ホシノちゃんのおかげだけじゃなくて不良たちが急速にいなくなっているのよ」
「……指名手配されている人物がいるならわかりますがこの辺の不良にそんな大物はいないでしょう?」
「だから他所の人っていうわけではなさそうなのよ」
ホシノはもう一人の生徒、生徒会長である梔子ユメの言葉に疑問を持つがユメは現在アビドスで起きている異変について疑問を持っていた。
ホシノの活躍によって治安は改善傾向にあるとはいえそれでもここ最近は急速にあり得ない程に治安が回復している。その理由は単純であり、不良や武装集団が次々と消えいているためだ。ホシノが夜通しそういった者達を撃退しているがその何倍もの勢いで行方不明者が続出しているのだ。不良や退学者ばかりという事で捜索こそされていないがこの不可解な出来事に流石のユメも疑問を持たずにはいられなかった。
「たまに町で見かけていたヘルメットを被った子たちも見なくなっちゃったしどうしたのかしらねぇ?」
「……治安が回復しているのは良い事でしょう。まぁ、何か起こっているのか確実のようですが」
一人や二人消えたのならキヴォトスでは日常的な事であった。だが、それが何十人という数に及べばその限りではない。それも可なりの短時間で。ホシノは口ではそう言いつつ何かの陰謀が起こっている可能性を考え、夜の巡回ルートの見直しを考え始めるのだった。
「く、来るなぁ!」
「いやぁぁぁっ!!!」
「今度のは生きが良いなぁ」
新たに捕まえた不良二人にゆっくりと近づきながら俺はふと呟く。これで非常食は100人は超えたんじゃないか? いや、どちらか一方は食べるつもりだしそこまでは行っていないのか?
「おい、これで何人だ?」
「は、はい! 今食べようとしている人も含めて合計102人です」
「お? 100人超えていたのか。ならば両方食べるか」
「な、や、やめ……!」
100人超えているのなら問題ないかと俺は最も好きな部位である太ももに噛みつく。基本的に人間の中で最も筋肉と脂肪のバランスが取れているこの部位は噛み応えと美味さが両立しておりとても好きなんだ。太ももだから逃走を防ぐという意味でもばっちりだしな。
抵抗するならそれはそれで構わない。だが逃げられるのは面倒だ。最初に捕まえたヘルメット団でいきなり5人に逃げられたときは流石に焦った。ばらばらに逃げるから捕まえるのに苦労したし1人に至ってはブラックマーケットからもう少しで出そうになっていたくらいだからな。
おかげで初期のメンバーは今ではたったの5人しか残っていない。だがその5人は俺に食われたくない一心で覚醒した。何とヘイローが変わったのだ。ああ、ヘイローって言うのはここの学生が持っている頭の輪っかの事だ。これの影響か彼女たちは銃弾を喰らっても痛い程度で済む。爆弾でも使わないと死に至る事はないだろう。俺には関係ないがな。
そんなわけで彼女たちは優秀な人材となったから新たにアルファベットを振る事にした。非常食のワンランク上の立場に知ってやったのだ。その時は泣いて喜んでいたな。怠けたら1番からやり直させると言ったら顔を真っ青にしていたがな。
そんなわけで順番に紹介していこう。
先ずはA。料理担当で俺にチャーハンを作っていた人物だ。彼女の腕前はプロ並みにまで成長した。おかげですっかり胃袋を掴まされている。恐らく脱走してもお咎めなしで戻すだけにしようと考えている唯一の人物だ。
続いてB。元々補充部隊のリーダーだった彼女はリーダーシップ方面で覚醒し、脱走への警戒や他の非常食の指揮を執っている。おかげで脱走する人物は今の所新人以外で発生していない。俺の手間が大きく省かれる事となった。
Cについては優秀な誘拐犯となってくれている。スニーキングが得意で現状では数少ないブラックマーケット外での活動を許している個体だ。脱走する可能性は低いだろう。彼女が大切にしている妹が非常食としてここにいるせいでもある。誰にも知られずに捕まえてくればその分だけ妹の番号を後にすると言っているせいでもあるな。俺はこう見えて約束は守るのだよ。
Dは優秀な解体屋兼医師だ。彼女は死体となった非常食の解体を進んでやることで俺の気を惹こうと頑張った結果人体の構造に詳しくなっていた。おかげで適当に四肢を食いちぎっても彼女の手によって死なずに済んでいる個体も多い。外では微妙だがここでは結構な頻度で外科手術を行っている。
最後のE、彼女はハッカーとして覚醒した。元々ミレニアム所属で電子機器には強かったらしいがそればかりに集中した結果単位を落とし、それに切れて退学届けを叩きつけたというなんとも言えない経歴を持っているらしい。そんなわけで俺が気まぐれに持ってくる電子機器でネット環境を整え、情報収集を行っている。更に俺の存在をにおわせる情報も見つけ次第削除したりデマだという方向にもっていく等隠ぺい工作を行っている。恐らく彼女がいなければ俺は今頃各学校に知られていた事だろう。
以上の5人が俺の側近というべき立ち位置に収まっている。5人とも驕らずに頑張っている事から暫くは問題はないだろう。もし、裏切るようならその時は悲しいが美味しくなったであろう彼女たちを食べるだけだ。ヘイローはモブとネームドで形と色が異なる。モブは基本白の丸一つか二重丸だ。こいつらの味は基本的に変わらない。個体で多少味の変化があるだけだ。だがネームドは違う。一回、ヘイローが違うネームドと思われる人物を喰らった事があるが味は格別にうまかった。気付いたら食い終わっているくらいには。
だからこの5人もその時の餌並みに美味しくなっているはずだ。だが俺の方から喰らう事はない。牙を向けられた時、俺は優々として喰らうだろう。美味しく実ったこいつらを。
「ウン。うまい」
とはいえこのモブも普通にうまいからな。これでも満足できている。Aの料理も美味いしな。
「D。出番」
「はい!」
俺の言葉にDは嬉々として非常食に近づいていく。解体ばかりしていたせいか人間の肉体を切断する事に快感を覚えてしまったらしい。新しくCが誘拐してくる度に目を輝かせているからな。
そうやってDが解体した肉は地下に増設した冷凍庫に保存されている。数は凡そ20体分にも及ぶだろう。まぁ、そのうち半分くらいがDと同じ最初に捕まえたヘルメット団だけどな。あの時は見ものだった。仲間の死体を自分たちで解体して冷凍保存させたらかな。涙で顔をぐちょぐちょにして何度も嘔吐を繰り返しつつも解体する様子は見ものだった。こちらに来てから何故か失われし性欲が少し復活したくらいには。
「C。暫くは誘拐してこなくていいぞ。保存した肉も増えて来たしな」
「……わかりました」
フード付きの黒い外套で身を包んだCは無口無表情で何を考えているのか分からない。最初の頃は普通の少女だったのにどうしてこうなったのやら。今では暗殺者とも言える服装になっているがな。
彼女の犯行は何度か見たことがあるが中々手際が良い。今回の不良だって鮮やかな犯行だった。
最初に笑いながら人気のない所を歩いていた彼女たちに無音で近づき催涙ガス入りのグレネードを投擲。怯んだ所を近づいて気絶させる。ちなみに彼女の武器はトンファーだ。接近戦においてはかなり強い武器で相手の反撃を許さずに一瞬で無力化するその様はまさにアサシンと呼ぶに相応しい。これも妹を思う執念がさせる行いか。
「A。久しぶりに調理した肉を食いたい。準備しろ」
「ひっ! は、はい! かしこまりました!」
Aは俺に今もおびえている。俺が話しかければ顔を真っ青にしてドモリながら返事をする。絶対にため口で話さない。いや、これはどいつもそうだったな。むしろDのように積極的な方が珍しいのか? まぁ、どっちでも構わないが。
因みにAは非常食たちの料理も作らせているが基本的に出す肉は全て人間の肉だ。態々肉があるのに他の動物の肉を買うなんて無駄でしかないからな。おかげで肉を使った料理はここで一番の不人気メニューだ。
「1番から10番! 掃除開始!」
「「「「「はい!」」」」」
「11番から20番までDの手伝いだ」
「「「「「はい!」」」」」
Bはその指揮能力で非常食たちを統制している。ネームド化してから軍人っぽい感じの子になっている。元は気の弱い優しそうな感じの子だったのにな。ネームド化すると性格まで変わるというのだろうか? 不思議だ。まぁ、俺が不快にならないのならばどうでもいいことだな。むしろこうしてまとめ上げてくれるのならばそれはそれで好都合だ。今度彼女に似合う軍服でも見繕ってやってもいいかもしれない。
「さて、そろそろ出かけるかな」
これだけの人数だ。食事だけでも膨大な金がかかってしまう。基本的に俺は何でも屋のような事をして金を稼ぐが面倒な時はブラックマーケットの銀行を襲撃して金を得ている。マーケットガード如きに俺を止められるわけがないからな。
「E。なんか面白い依頼とか入ってきているか?」
「そうですね。依頼総数は24件。そのうち護衛依頼が10件、傭兵依頼が11件、その他特殊な依頼が3件となっています」
Eは生真面目という感じの性格だ。正直それ以外の印象があまりない。クラスにいる影の薄い感じの子だ。特にそれ以上言う事はない。
「その3件はどんなのだ?」
「くだらないものばかりですよ。屋敷の掃除、ある生徒の監視、そしてブラックマーケット最奥の調査です」
「成程。そりゃくだらないな」
というより最後の依頼人に関してはいつの日か死にそうだな。基本的にそんな危ない依頼をする奴が長生きできるわけがない。ブラックマーケットの最奥、それはつまり俺が根城にしている場所だ。そんなところを嗅ぎまわる奴なんていれば俺やCによって非常食の仲間入りだ。
ここではここのルールがある。俺みたいなやつでもない限りルールに違反する奴は闇の中に葬られる事になるからな。
「んじゃ仕方ないな。その辺の銀行でも襲ってくるから後はよろしく~」
「了解です。無事の帰還をお待ちしております」
ふっは。
「んー。今日もつまらない一日になりそうだな」
倉庫を出た俺は軽く伸びをして、不可思議な模様が浮かび上がる青空を見ながらそう呟くのだった。
気付いたら長文になっていた。次回からはもっと短めになると思います。