秘封の話 人生の丸つけ   作:きんつば

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宇佐見 菫子?……知らんな。


六話 メリーさんの兎

 

 

 

 

 

 

 

 

耳をつんざき、焦がすような蝉の歌声。

揺れに揺れる、アスファルト上の陽炎。

 

 

 

ーー今でも色褪せない、夏の記憶。

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、初対面でそんなに仲良くなってしまったのか。正直な話、私はこの場に来るとき多少の覚悟をしていたのだ。『メリーと一真君、ぼっち同士の二人が対面したらマイナスにマイナスを足すようなもの。仲良くなるのは厳しいのかもしれない』と。だが結果として、マイナスにマイナスを掛けてプラスになってしまったようだ。アレ?どういう化学反応?同じ孤高の戦士同士、シンパシーでも感じてしまったの?ぼっちとぼっちはひかれ合うものなの?一体全体、何が起きたのだろうか。私はこれからどう動けばいいのだろうか。その答えがめちゃくちゃほしいと思ったのでした、まる。」

 

「蓮子、貴女すごい失礼なこと言ってるの理解できてる?別に私は一人ぼっちになってしまったのではないわ。一人でいることが好きだから、自分から、なりにいってるのよ」

 

「そうね、メリーはそうよね。私はわかってるわよ。」

 

「おい待て。その言い方だと僕が自然に一人になってしまったみたいじゃないですか。……まぁ、そうなんですけど」

 

「……ごめんなさい一真君。そんなつもりじゃなかったの」

 

「くっそぉコイツ。ウザさに磨きがかかってやがる」

 

お前は自分の腹でも叩いて「ぽんぽこぽん」とでも言ってりゃいいんだ。

 

ーー肺を焦がすような夏の空気は、冷房がかかったこの店の中では、全く別世界での出来事のように感じることができる。

 

今俺は、マエリベリー・ハーンさんと宇佐見 蓮子大魔人(遅刻魔的な意味で)合計三人で集まっていた。俺は魔人の宇佐見 蓮子と二人で集まると聞いていたが、それは間違いであったらしい。そもそも本来、俺は前にここで払った彼女の分の代金を返してもらおうとしてただけであったのだ。それがなぜ彼女のストッパーであるもう一人の女性、マエリベリー・ハーンさんもいるのか。あれ、これもしかしてめんどくさいやつじゃね?と薄々感じだした俺であるが。もう遅い。運命は俺にとって、いつだってディスティニーではなくフェイト。それを忘れていたのであった。

 

「それでは本題に入ろうと思うんだけど、聞いてくれるかな一真君」

 

「はぁ、いやですけど」

 

「……それでは本題に入ろうと思うんだけど、聞いてくれるかな一真君」

 

おいやめろ。実際に与えられてる選択肢を一つにするな。お前は某RPGのせこい王様か。

さすが宇佐見 蓮子。こちらの抵抗もなんのその。グイグイ攻めてきやがる。野球で例えるとめっちゃ無理した投げ方で豪速球を投げる高校球児。 確かにその球の速さじゃ並みの高校生は打てないとは思う。でもそれすぐ肩を壊すからやめなさい。先を見据えることが大事だと思います。まぁ、僕はそんな球も軽く打ち返してホームランにするんですけどね。

 

「いやです」

 

「それではッ、本題に入ろうと思うんだけどッ!聞いてくださいませんか一真君ッ!」

 

「はい。絶対にいやです」

 

「…聞いてくれませんか(泣)」

 

俺はNoと言える日本人である。いや正確には、この大魔人相手には必ず拒否権を適応させるのだ。なぜ、自分から地面の上に隠されず置かれている地雷を踏みにいかなくてはいけないのだ。全くもって理解に苦しむ。

 

「まぁそう言わずに、話だけは聞いてあげましょうよ」

 

「フッ、了解しました。ほらさっさと話せ。聞いてあげます」

 

「さすが一真君ッ!でも私の扱いがメリーと比べると酷い気がするなあッ!」

 

抗議の眼差しをこちらに向けそう言う宇佐見 蓮子。ざまぁ、と少し思ってしまった自分を反省したい。心が荒んできている。でもその原因もコイツだと思うし別にいいんじゃね?むしろまだマシなんじゃね?っとも思ったのだが。それはそれ、これはこれである。流石にマエリベリーさんと宇佐見 蓮子の扱いの差があからさますぎるとは自分でも思っているのだ。

 

だが、だがである。俺に対して借金している宇佐見氏と趣味が偶然あったマエリベリー氏では、断然後者に好感が持てるだろう。というか前者は良い印象より悪い印象しか受けないと思う。故にこの扱いの差は必然なのである。俺が特別ではなく、これがこの世のスタンダード(基準)なのである。つまりーー宇佐見ザマァ。ここらで今までの分を倍返しにしたい。

 

「あ、やっぱりまず本題に入る前に、話したいことが二つあるんだけど、どっちから聞きたい?一つは世間一般から考えると変だと思うこと。そしてもう一つはそれよりさらに変だと思うことなんだけど」

 

「……えぇ」

 

おい、物事はしっかり筋道通して話せ。本題を話すんじゃないのか。……まぁ、それは多目にみよう。こんなことで一々目くじらをたてるような人間はあまり良くないとは思うからである。反省します。

しかし、その話したいこととやらも、どっちを選んでも罰ゲームみたいなもんなんだなぁ。宇佐見蓮子の隣に座っているマエリベリーさんに「メリーさん、君に決めた!」という意味を込めて視線を向ける。すると彼女はただ、曖昧に笑うだけであった。そうか、助け船をだしてはくれないのか……。

 

「ハァ、じゃあお好きな方を先にどうぞ」

 

もう自棄である。

勝手にしてくだしゃあとばかりに、一つため息をついた。そんな俺の態度に構うことなく、宇佐見 蓮子はゴホンと一つ咳払いし、

 

「それじゃあ、後者の方から話そうかな。実はね私達、ーー超能力的なの持ってるのよね!」

 

 

なーんて、バカ(宇佐見 蓮子)がバカ(超能力)なことを言ってきたのでありました。お家に帰して。切実に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、マエリベリーさんもそんなどんとこい超常現象的なサムシングなんですか?」

 

「……蓮子。ものには順序っていうのがあるのよ。わかる?ーー見なさいこの現状を。何故か私、彼に暖かい眼差しを向けられているわ。哀れむような眼差しではなくて、何故か巣立っていく小鳥を見守るかのような、そんな眼よ。もう、少し前の関係には戻れないわ。今の彼は全てを受け入れてくれることでしょう。そう、それはとても……残酷なことなのよ」

 

「ああ!メリーの、マエリベリー・ハーンのメンタルが、一真君のお前らマジかよビームに耐えられない!でもこの反応からわかるように嘘は言ってないんだよ私は!それが、このメリーの態度で証明された!!」

 

おい、お前ちょっと楽しんでるだろ。マエリベリーさんの様子を。本当に友達なの?慰めてあげないの?別にそれでいいならいいけど、反省はしろよ。きっとコイツにもっとも似合わない言葉は後悔だな。それは素晴らしいことだけど、許されることではないから要注意だから。周りがお前の後悔の分請け負ってるから。自覚しなさい。

 

ーー超能力、この言葉を聞いて興味を抱かない人は少なくないだろう。

最近では怪奇現象(オカルト)は非難されるが、超能力と聞くと人は対して恐れを抱かないのではないだろうか。不思議なもんだ。どっちも対して変わらないものだと俺は思うのだがーーまぁ、俺の意見なんてどうでもいい。

 

「ーーで、どんなモンなんです?それ」

 

「ありゃ、意外とあっさり進めていくね一真君」

 

「時間は有限ですからね。超能力なんてわけもわかんねーことは手短に済ませたいんですよ」

 

そうだそう言うことだからさっさと話せ宇佐見この野郎。早くしないとお前の名字の最後にもう一つ『み』を増やしてウサ耳にするからな。

 

ーーそんなバカなことを考えられる程度の余裕が、俺にはある。

 

正直、超能力なんて対してモンではないのだ。いや、それはもちろん規模にもよるところがあるけれども。例えば音速の三倍でゲーセンのコインを飛ばせるだとかあらゆるベクトルの方向を変えることができるだとかその幻想をぶち殺すだとかその程度の規模の話は別である。それは超能力といっても架空の話の超能力である。

 

この世界の、この現実で超能力だとか言われているもの(本当かどうか定かではないが)は、そんな大したモンじゃあない。スプーンを曲げられたら「スゲー!マジモンの念力だー!」となるし、箱の中に隠されているものを確認せずに当てることが出来たら「スゲー!ガチで透視ってあるのかー!」である。それで立派な超能力者である。そしてまぁ、ーーそんなモンなのである。

 

だから実際に「私、エスパーなんです」と現実で面と向かって言われても「へぇー。そっかー、エスパーかー(棒)」と思ってしまうし、その程度のリアクションしか俺は返せない。それに、ーー科学の発展によって得られたモノの方が何倍も恐ろしいのだ。それは僕達人類の歴史を振り返れば理解できることだろう。

 

「じゃあまずはメリーのから話そう」

 

「いや普通言い出しっぺの自分のから話すものよ。私にはそのハードルは越えられないわ」

 

「それでね、メリーのはー」

 

「この子いつも自然に人を無視するのよ。酷いとは思わない?」

 

「そうですね」

 

この人もやっぱ苦労してるな、と同情してしまった。それほどまでにメリーさんは羊ではなくウサギ(宇佐耳蓮子)の飼育が大変なのだ。だったら簡単な話、ウサギを逃がしてしまえばいいと思うのだが、それを彼女はしない。まぁ、それを補ってまで飼うほどの魅力がウサギにはあるのだと言うことなのだろう。彼女は人であると同時に仏でもあったのだ。俺だったら即行で鍋の具材に変える。

 

「メリーはねーー結界の境目が見えるのよ」

 

「ふーん、見えないモノが見えるんですか。ポピュラーな能力ですね」

 

「うわっ、興味が無いと一瞬でわかる反応。さすが一真君、これは予想してなかった」

 

「うっさい。ほら次」

 

ていうかどっちかっていうと超能力者(サイキッカー)っていうより神秘的(オカルティック)な分野じゃね?と思ったが口には出さない。めんどくさいので。

 

「それで私はねーー 星を見ただけで今の時間が分かって、月を見ただけで今居る場所が分かるんだよっ」

 

「……へぇー」

 

「え、なんか感想は?」

 

これも超能力というにはインパクトが足りないなぁ、とは思ったのだけど。それよりなんていうか、最初にマエリベリーさんの能力みたいなモンを聞いたからか、コイツの能力を聞いて俺はただただ、

 

「そのーー地味っすね」

 

「グハァ!!」

 

「ああ!蓮子の、宇佐見 蓮子のプライドが、プライドなんて無いとは思うけどそれらしきモノが!一真君の心からの感想でズタズタに!いいわよ一真君!もっと言ってあげなさい!!」

 

この人もストレス溜まってるんだな、と今この瞬間に満面の笑みで俺に言葉をかけてきた彼女を見て理解できた。満面の笑み、といっても邪悪で満面な笑み、だが。やはり仏であっても宇佐見 蓮子の行いを完全に浄化することは出来なかったようだ。可哀想に。ストレス解消にはジョギングが効果的らしいことを後で教えてあげよう。

 

そして俺は宇佐見 蓮子に、彼女が期待している感想とやらの続きを述べてやった。

 

「地味だしそれに、ーー長い。もっと短くコンパクトにまとめません?何が『 星を見ただけで今の時間が分かって、月を見ただけで今居る場所が分かるんだよっ 』ですか。長ぇよ。地味なくせに長いって救われねぇよ。しかもドヤ顔で言いましたからね。それって野球で気をつかわれて同じコースに山なりの超スローボールが投げられてるのに三球三振するのと同じくらいの酷さですからね。結構恥ずかしい奴ですよ?蓮子さんだから大丈夫かもしれないですけど」

 

「ゴハァ!!!……フッ」

 

「……白い灰になったわ。燃え尽きたのね。同情するわよ。ふふっ」

 

マエリベリーさんは確実に同情してない。笑っちゃってんじゃねぇか。それ外に出さないで堪えてください。僕の貴女の認識が仏から仏を装った小悪魔にジョブチェンジしちゃいます。

 

「ま、まぁ?とにかくそんな感じなのよ」

 

「はぁ、そっすか」

 

宇佐見 蓮子は気を取り直してそう言った。

まぁ、やっぱり超能力なんてそんなモンである。若干、本当に少しだけだが、手から電気とか出たりするのかな?とわくわくしていたのだが。繰り返すが、そんなモンである。胸のトキメキを返してくれませんかねぇ。いや、別に残念になんて思ってないですよ。本当に。本当ですから。

 

 

「で?」

 

「ん?」

 

「いや、それは後者の話でしょう?前者の方はなんなんですか?」

 

「あ、気になる?」

 

「……気になってやってるんですよ」

 

また彼女はいつもの調子を取り戻して、そう俺にニヤニヤしながら聞いてきやがった。

今すぐアイアンクローをして握力最大でお迎えしたいが堪える。なぜなら、早く帰りたいのである。出来るだけ長引かせることはしたくない。っていうか俺まだコイツからお金返してもらってないわ。早く返してくれませんかねぇ、真面目にそう思うのであった。

 

「私達、大学でサークルを作って活動してるのよ。まぁ、まだ出来たばっかで大したことはしてないんだけど」

 

「そうなんですか」

 

「うん。それでその活動内容というものはーーなんだと思う?」

 

「……ナンデショウカネ」

 

しっかり笑顔でそう彼女に答える俺は超真摯である。早く言えやなんて感情を外に出さずにいられるのは数十年生きてきた賜物だろう。一瞬、宇佐見 蓮子が俺を見て怯んだがそんなのは関係のないことである。何か俺の後ろに恐ろしい物体でも浮かんでいたのだろうか?オカルトはそこら辺に転がってるモノなのかもしれない。

 

「そ、その活動はね!この世の謎を解き明かそうみたいな、ですね?そ、そんなモノなんですよ」

 

「ほう、ソレデ?」

 

「いや、……言いたいことはそんだけです」

 

 

何故か萎縮して言葉を止めてしまう宇佐見 蓮子。

おい、言葉を止めるんじゃない。まだ続きがあるだろう?コイツ案外テンションの上下が激しいのである。扱いずれーのである。

 

おそらく、彼女の言いたいことがそんだけというのはほんとうのことではあるのだろう。多分だが、コイツの言った二つの話したいこととやらが終了したのである。と、いうことは、必然ではあるがーーまだ、始めに提示した本題というモノが残されているのだ。

 

「ハァ、本題とやらが残ってるでしょう。それを話してくださいと言っているんですよ」

 

「ああそれ!それで本題なんだけどーー」

 

何となくだが、その本題とやらは見えてきている。二つの言いたいことと言った彼女の言葉を簡単に整理しよう

まず、後者の彼女の超能力があるっぽいという話。これは中身はさほど重要なことじゃない。いや、正確には本題の方にあまり関係のあることではないと思う。例え宇佐見 蓮子の能力が地味でなかったとしても、手から炎が放出みたいな派手なモノであったとしても特に影響はないだろうと思われる。これはおそらくーー私達はこんな人物なんですよーという自己紹介と同義だ。自分達はこんな変な奴です、みたいな?そういうことを俺に伝えてきているのだ思う。

 

そして前者、彼女達がこの世の謎を解き明かそうとして謎の活動をしている謎サークルの話。これが肝なのだ。

おそらくこれは、フライングである。これからコレについて話すからな~の『コレ』をわかるようにするために、予め俺に情報を与えてきたのである。これはそれだけのことだが、これが本題を形成していく最も大きいモノなのだ。

 

よってこれからわかることは、後者が本題の根幹になっており、前者はそれの付属品。つまり彼女が話したい本題というのはーー

 

 

「ーー私達の活動に参加してみない?」

 

 

と、まぁこう言うことなのである。

「光栄な話でありますが、お断りさせていただきます(笑)」と刹那で返したいのだが、そこでめんどくさい活躍をしてしまうのが、その『付属品』なのだ。

そう予め『自分達変な奴なんすよー。マジ関わらない方がいい種類の奴なんすよー』と俺に言ってあるのである。つまりここで俺が断ってしまうと『そっすよねーやっぱ自分らみたいのとは関わりたくないっすよねー』というような話になってしまうのである。

 

……まぁしかし、おそらくこれは俺の考えすぎであるとは思うのだ。実際こんなことを考えてこのような提案をしてくるような人は、いない。この超能力云々の話は本当に何となく言ってみただけか、俺がどのような反応を返すか興味を持って言ってみただけだと思うのだ。だから、そんなひねくれた解釈で受け止めなくて良いだろう。

 

まぁ、でも、なんだ。彼女らにそう『思われてしまう』かもしれないという可能性もあるっちゃあるのである。

別に友達でもなんでもないのだし、そう思われてもかまわねーと言うことは簡単だが。彼女らと話していて俺は結構楽しませてもらったと思う。だから、最後に不快にさせてしまう可能性の芽を摘んでおきたいのだ。

 

つまり、俺がとるべき最善の返答はーー

 

 

「ーーはい。暇だったらいいですよ」

 

「本当!?やっぱ話がわかるね一真君は!」

 

これである。

よし、これから俺の夏休みは予定で一杯だ。これから汗水たらしてがんばるぞい。

 

 

ーーそして俺は、後悔するのである。宇佐見 蓮子とは対照的に、俺に最も似合う言葉は後悔であることを実感するのだ。

ハァ、汗水たらしてがんばるぞい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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