一勝千金億女   作:ぽぽちん

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 またも設定回。
 それっぽいフラグをちまちま埋めとります。


第十話「希望の使命」

「おう。暇してるかハナ?」

 

「……暇しとるように見える? もうてんやわんややわ~……」

 

 とある昼下がり。

 都心から離れた位置に構える神宮寺組事務所。そこにノゾミとイチカの二人が訪れていた。

 マホガニー製の立派な机に向かい、力なく手をあげるハナ。

 その周りには書類が山のように積まれている。

 どうやら大会運営に関する事務処理のようだ。

 時間が惜しいのだろう、親友の来訪があっても電卓を叩く手は止まらなかった。

 

「嬉しい悲鳴だと考えておくよ。ま、これからもっと忙しくなるんだが」

 

「えぇ!? これ以上忙しくなるん!?」

 

「落ち着けって。悪い話じゃねえ。むしろ良い話だぞ」

 

 あ、これ差し入れな。

 ノゾミが机に置いたのはドーナツの箱。

 チョコやシナモンといった様々なフレーバーがぎっしり詰まったソレを見て、ハナの手がピタッと止まった。

 そしてウキウキ気分で付き人──神宮寺組の若頭──にお茶をお願いし始めた。

 

「今は交流会の事後処理って感じか?」

 

「せや。儲けの取り分とか色々なぁ。ただ一番問題なんは惨歯組の件や。あの後詫びとして殺戮武闘会から何名か闘技者を引き取ったんやけど……まあそれが大変で大変で」

 

「……イチカに噛み殺されたガキと、顔面凹んだツギハギの女と、漏らした暗殺者か?」

 

「噛み殺してねえよ」

 

「ツギハギの娘はしばらく入院みたいやけどね。他の二人はウチ預かりになったんよ。ただ、案の定揉めてな。特にカレンちゃんの方。ウチを狙ったって事もあって、処分するとかしないとかで割れてな」

 

 暗殺依頼主が交流会主賓の菅谷だったのも、また揉める一因になったようだ。

 仁和組は悔恨を絶つためにもカレンを始末しようと躍起になったが、狙われたハナ自身がそれを止めたらしい。

 ハナはカレンの有用性を見抜き、モグラ(スパイ)として用立てるつもりのようだ。

 ソファで優雅に茶を啜るハナに、イチカが口を挟んだ。

 

「ソイツ、言われた通り消した方がいいんじゃねえのか? またお前を狙わんとは限らんだろ」

 

「仁和組を敵に回してまでウチを殺すなんて、そんな気概はあの子にはないと思うわ。この前会った時なんてえらく従順になっとったしなぁ」

 

「ふーん……まあお前がそう言うなら」

 

「あと、やたらと承久ちゃんに会いたがっとったし」

 

「あ~……」

 

「?」

 

 ノゾミは天を仰ぎ。

 イチカは首を傾げた。

 

「まあ……忙しないだけで良い事には違いないんよ。交流戦の効果で裏格闘技経験者が続々と参戦してくれるようになったし?」

 

「それな。ウチの主力が欠場してても試合が成り立つのは実際ありがてえ」

 

「つっても、華のある選手は早々増えねえがな……それよりもだ」

 

 イチカは身を乗り出して、本題を切り出し始めた。

 

「歌舞伎町のバベルタワーって知ってるか?」

 

「最近完成した商業ビルやろ? この間見たけど、ほんまにおっきな所やったよ」

 

「あぁ。実はあのビル、仁和組も施工に噛んでやがってな。地下にデケェ会場を押さえてやがった」

 

「地下って……確かライブ会場になるんじゃなかったか? 国内最大規模の地下ライブハウスみたいな」

 

()()()()()()()

 

 箱からドーナツを取り出し、積み上げるイチカ。

 三段。四段。そして五段を積むと、

 応接机の更に下を指さした。

 彼女が指したのは浅い階ではない、かなり深い場所を指しているように見えた。

 

「秘密の地下五階──仁和組はそこに超巨大裏カジノを作る予定だ」

 

「……マジか!」

 

「はぁ~……流石仁和組さん。やることがエグいわぁ……」

 

 日本三大暴力団の共同出資。

 日本一安全な違法賭博。

 その触れ込みの元、国内最大級の賭博場が出来る……ハズだった。

 

「ハズ? ってことは……」

 

「あぁ。案の定頓挫したよ。どっかの組で先走った馬鹿が出てな。計画は無期限凍結だとさ。そこでアタシ達の出番だ」

 

「え? え? ……もしかしてっ!?」

 

「察しの通りだ。ヴァルキュリアの会場としてそこを使える事になった」

 

 瞬間、ハナもノゾミも両手をあげた。

 棚からぼた餅。瓢箪から駒。

 願ってもない話しである。

 一等地かつそんな豪華な敷地で裏格闘を開催できれば、今まで以上に盛り上がるのは間違いないだろう!

 

「わあああ! 夢のようやわ~っ!」

 

「イチカ、やるじゃねえか!」

 

「へへっ、李にちょ~っとお話したら潔く貸してくれたぜ♪」

 

 ハナ達は両手を握りしめ合って少女のように喜び。

 イチカもまた二人の反応に気を良くしていた。

 一体どんな交渉をしたのかは知る由もないが、きっとアコギな内容なのは間違いないだろう。

 

「ま。元より遊ばせておくくらいなら使って貰った方がいい、っつーことらしくてな。例の件の詫びも込めて格安に貸してくれるそうだ。水道光熱費別で年間一千万。格安だろ? 広さ的には裏格闘技以外のシノギも全然出来る。軌道に乗ればガッポガッポと稼げるぞ」

 

「ウチ、殺されかけた甲斐あったわ~!」

 

「ホントにな!」

 

「もう一回ハナが狙われりゃも~っと絞れたんだがなぁ」

 

「いや、それだけは堪忍な!?」

 

 ケラケラと笑うイチカ。

 積まれたドーナツのうち1つを頬張ると、「ただし……」と付け加えた。

 先ほどとは一転して真面目なトーンだった。

 

「それとは別に。仁和組に警告を受けた」

 

「……え!? 何したん!?」

 

「お前、何か失礼な真似したんじゃねえよな?」

 

「するかよボケ。警告っつーのは承久についてだ」

 

「……!?」

 

 なぜここで承久の話が?

 ノゾミとハナは頭に疑問符を浮かべるが、すぐにハっとなる。

 まさか。

 例の没駄繰組の件がバレた……!?

 

「そのまさかだよ。仁和組はウチに承久がいる事を把握してたらしい」

 

「え……ちょ、イチカちゃん事件はもみ消すって言うとったやろ!? 何してん!?」

 

「どーもこーもねえよ。もみ消した上でバレた」

 

「あああああ、アカンやん!? はよ高跳びせな!? うちら殺されるゥッ!?」

 

「落ち着けハナ。向こうがその気ならとっくに殺されてる。……それで、警告って?」

 

 ワタワタと慌てふためくハナに対し、ノゾミは冷静に続きを求めた。

 この時点で何となく予想はついているようだった。

 

「”承久を手放なせ”だとさ」

 

 ノゾミは「やっぱり……」と神妙に頷いていた。

 予感はあった。

 承久はトップクラスの武術家。

 腕が立ちすぎて敵を作るきらいがあったが……まさか、碌な活躍もさせないまま手放すことになろうとは。

 承久と約束した手前心苦しいがノゾミも自分の命は惜しい。従う他ないだろう。

 諦念の表情を見せると、イチカは食べていたドーナツを飲み込み、補足した。

 

「何も承久の身柄(ガラ)を差し出せ、っつー訳じゃねえよ。承久に深入りするなっていうアドバイス的な感じだ。まるで触らぬ神に祟りなしって感じでな」

 

「へ……?」

 

「李の野郎が教えてくれたぜ。没駄繰組の事件も、更に四年前の惨歯組の事件も、上の意向でもみ消されたんだとさ。分かるか? 自分の庭を荒らされたっつーのに仁和組の会長がわざわざ手を出すなって止めたんだぞ」

 

「あの子が……なんで?」

 

「さぁな。ただ一つ言えることは──承久はとんでもねえ厄ネタって事だ」

 

 イチカが茶を一気に飲み干すと、チラッと付き人を見る。

 察したハナは、そっと若頭を下がらせた。

 人払いである。

 どうやらヤバイネタがあるようだった。

 部屋に三人だけになるとイチカはタバコを取り出し、慣れた仕草で紫煙をくゆらせ始めた。

 

「承久に触れたがらないのは仁和組だけじゃねえ。警察もだ」

 

「……!」

 

「ようやく閲覧許可が出たんだよ。警視庁お抱えの()()()()()がな。アイツの名前を探してみたら、案の定あったぜ」

 

 (マルトク)ファイル。

 それは警察の上位役職のみ閲覧が許可される、激ヤバ犯罪者リストである。

 厳重管理されたその資料には、逮捕された存在はもとより、決定的な証拠が無かったり、政治的な問題で逮捕できずに野放しになっている存在も列挙されている。

 そんな資料の中に、幾重にも判子が押された彼女のページがあったという。 

 

 承久国俊。

 生年月日:3月5日。

 年齢:25歳。

 出生地:東京都不法占拠地「中」- 八鷹(はちおう)

 家族構成:不明

 経歴:

 20XX年12月:当時14歳。東洋電力所有の倉庫にて建造物侵入罪・決闘罪・傷害罪・過失致死傷罪の疑い。

 20XX年3月:当時15歳。警察官への公務執行妨害。傷害罪。

 20XY年3月:当時21歳。仁和組三次組織、惨歯組事務所で組員11名を暴行し逃亡。傷害罪、殺人未遂。過失致死傷罪の疑い。

 20ZZ年9月:当時25歳。仁和組三次組織、没駄繰組経営「ヴェロニカ」にて従業員および客14名を暴行し逃亡。傷害罪。

 特記事項:武術経験あり。流派不明。

 ………………

 …………

 ……

 

「こんだけ明確な証拠がある。ってのに手が出せねえのは、何もアイツの腕っぷしだけの問題じゃねえ。姫奈と同じく政治が絡んでると見ていいだろう」

 

「……後ろ盾がおるってこと?」

 

「あぁ。それも警察もヤクザも手を出せない、とびっきりのな」

 

 ノゾミは戦慄せざるを得ない。

 話を聞く限りでは、承久は中学生の頃には既に裏格闘に携わっていたことになる。

 あまりにも若すぎる。

 中で産まれたという彼女を、一体誰が育てあげたのだろうか。

 そして彼女は一体誰に師事をしたのだろうか。

 さらに……そんな承久を陰ながらサポートするのは一体誰なのだろうか?

 

「アタシはそれこそ財閥みたいな、政府をコントロールできるようなデカイ奴だと睨んでる。例えば──大日本銀行総帥。片原(かたはら)滅堂(めつどう)とかな」

 

「だ、大日本銀行……!?」

 

 ふぅ、と煙が事務所に舞う。

 憂鬱を乗せた、重い重い煙だった。

 

「拳願会のことはノゾミ、お前も知ってるだろ? 企業間の取引をステゴロで決めようっつー、裏格闘の元祖ともいえる興行だ。あれの会長が片原だった。……今は違うらしいがな」

 

「知ってるさ。ウチの選手とは比べ物にならない化け物どもが戦りあってるとか……いざ言われると実感が湧かないな。御伽噺みたいなもんだと思ってたからさ」

 

「きっちり実在してるようだ。ファイルにも書いてあったが、表世界の花形選手達が異種格闘してんだぜ? 大相撲VSプロレス、空手家VSプロボクサー……調べただけで頭がくらくらしてくる」

 

「ウチはもうクラクラやわ……」

 

「そんな大物がなんだって承久に入れ込む? やっぱり闘技者として囲い込みたいからか?」

 

「もしかしたらな。ただ理由まではわからねえよ。分かってるのはアイツには何か強力なバックボーンがいるっつー事だけ。それを踏まえて聞くが……お前、どうすんだ?」

 

 鋭い視線がノゾミを貫いた。

"承久を手放すのか? 手放なさないのか?"

 その目が決断を迫っていた。

 承久は確かに強い。

 ウチの闘技者として囲えば、収益はうなぎ上りだ。

 しかし承久が巨大企業あるいは財閥のお手付きなら……手を引くのも選択として間違いではないだろう。

 今後、承久の元には厄介ごとが舞い込むだろう。

 それも間違いなくヤバイ事件が。

 そのリスクを理解した上でお前は奴を囲い込むのか? と。

 

 ハナとイチカが見守る中、ノゾミはたっぷり数十秒は考え……そして二人に問うた。

 

「交流会の後、私が言ったことを覚えてるか? 女子格は金になる。裏社会はとうとうその事実に気付いちまった、ってな」

 

「競合団体が出てくるか、あるいは既存の団体が女子格闘に力を入れ始める……競争が始まるんよね?」

 

「あぁ。競争は間違いなく激化する。そんな争いに勝ち抜くためには差別化が必要だ。例えば──絶対王者を用意するとかな」

 

「……いいんだな? まだ引き返せるぞ?」

 

「もう腹括ったよ。この世界で生き残るには同業他社との争いは避けて通れねえ。なら、上等だ。誰も文句が言えなくなるまでデカくなってやるさ。そのためにはリスクの1つや2つ、飲み込んでやるよ」

 

 ノゾミの決意に、イチカもハナも口角を上げた。

 

「ヘッ、言うと思ったぜ」

 

「ほんま、ノゾミちゃんはこれと決めたら真っ直ぐやなぁ……」

 

「付き合ってくれるか?」

 

「アホな事聞かんでや。ノゾミちゃんが行くんなら行かん訳ないやろ?」

 

「アタシも乗りかかった船だ。最後まで同乗してやるよ」

 

 三人は頷きあう。

 『負け犬』の烙印を押された自分たちに、ようやく訪れたチャンス。

 これを逃したら、二度と自分たちは日の目を見られないという実感があった。

 ならば。

 どれだけ過酷な道だろうと突き進むしかない。

 三人の決意が改めて固まった瞬間だった。

 

「なら、この話もしておくか」

 

 言うが早いか、懐からメモリーカードを取り出すイチカ。

 ノートパソコンを用意させ、読み込ませると……そこに入っていたのは一本の動画ファイルだった。

 

「何やろ? コレ」

 

「惨歯組の事務所を撮影したモノだ」

 

「はぁ……何だってそんなものを?」

 

 防犯カメラの録画なのだろう。

 事務所を俯瞰視点で撮影している。

 動画は無音で進んでいく。

 組員達が談笑をしているのが仕草で分かる。

 すると不意に。

 廊下に繋がる扉が、部屋の内側に吹き飛んだ。

 あわせて倒れこんできた男性。

 どうやら男は扉ごと吹き飛ばされたらしい。

 そうして開けっ放しになった扉から、スーツ姿の女性がゆっくりと現れた。

 

「! 承久か」

 

「あぁ。丁度4年前の暴行事件の録画だよ」

 

 侵入者に対し銃やドスを取り出すヤクザ達。

 明確な殺意が感じ取れる男達に囲まれる中、承久は余裕を全く崩さない。

 そしてとうとう、発砲が始まると同時に。

 承久がぬるりと動き出した。

 

「??? ……な、何だこの変てこな踊り……?」

 

 右へえっちら、左へこっちら。

 床、机の上、ソファと不規則無軌道に、かつ変なポーズを取り続ける承久。

 民踊を踊っているような仕草は、ノゾミ達を困惑させた。

 しかしそのお陰なのか。

 承久は打たれること無くヤクザに接近していく。

 そして。

 

「!?」

 

 承久が男性とすれ違った瞬間、その男が壁まですっ飛んだ。

 

「え? え? え? えぇ……!?」

 

 一人。一人。また一人。

 承久が近づくだけで床や壁に叩きつけられるヤクザ達。

 中には天井に吹き飛ぶ者もおり、ハナもノゾミも大口を開けてしまう。

 まるで出来の悪いカンフー映画を見ているような気分。

 ヤクザ達も度肝を抜かれたのだろう。

 襲うを諦めて、一斉に別の扉から逃げ始めた。

 

「これだけじゃねえぞ」

 

 カメラが変わる。

 組の廊下を映したもののようだ。

 応接室から逃げたヤクザ達が()()うの体で廊下を走っている。

 廊下に承久がのっそりとあらわれると、ほんの数秒後には瞬間移動したかのように全員を追い越し、逃げ道を塞いでいた。

 

 そして始まる、さらなる無双劇。

 

 先頭にいたヤクザがふわりと浮いたかと思えば、空中で回転し始める。

 それを為したのは当然承久。

 彼女は成人男性を小枝のように振り回し、()()()()()()()他の組員を蹴散らし始めたのだ。

 さながらピンを蹴散らすボウリングの玉のよう。

 いとも簡単にヤクザ達を沈めると、承久は満足したのか何事もなかったかのように組を去っていくのだった。

 

「……なんだよ、どういう技だよ。コレ」

 

「これ……合成映像じゃないんよね?」

 

「証拠映像をこんなヘンテコな映像に変える奴はいねえよ」

 

 ノゾミの脳裏に、先程の映像が焼き付いてた。

 これが合気道だと?

 こんな合気道、見たことも聞いたことがない。

 合気道妙神館?

 万精館合気道?

 心統身一合気道会?

 いや、この世界のどんな流派も当てはまらないのではないか?

 とにかく原理も理合も全く推測がつかない。

 いっそ魔法を使っていると言われた方が、まだ現実味があった。

 そもそもこれは格闘技なのか?

 女性の身でここまでの技を身につけられるのか?

 とにかく疑問が尽きず、また()()()()()

 

「──で、何でアタシがこんな映像見せたかって言うと……このビデオを、姫奈が欲しがった」

 

「ひ、姫奈ちゃんが?」

 

「情報収集だとさ。承久を倒したいから何でもいいから教えてー、だとさ。お礼に()()()()と交換だって言い放ちやがったよ」

 

「……」

 

「ノゾミ。アイツらいずれ潰し合うぞ。お前がしっかり手綱を握らねえと、どう転がってもおかしくない。アタシ達が生き残るんなら、この二人のコントロールは必須だ」

 

 姫奈と承久。

 どちらも違う意味で手に余る存在。

 しかし二人が求めるものは、幸いにも同じだった。

 

 "強い奴、本当に用意してくれるんだろうな?"

 "希望さん期待していますよ、強い相手♡ 私の『同士』になれるくらい強い人♡"

 

(なるほど……これほど強けりゃ、飢えて仕方ないだろうよ)

 

 二人の願いと、この映像を見て。

 ノゾミはようやく自分の使命が見つかった気がした。

 自分がすべき事は姫奈、そして承久の飢えを満たせる相手を探すこと。

 全力をぶつけられて、武の研鑽に繋がり、手応えのある相手。

 それを用意するのが自分の仕事だ。

 そして、その仕事をこなせば、金は(おの)ずとついてくるという確信があった。

 

(私はアイツらに賭け。アイツらは私に賭けた。なら全力を尽くすのが雇用主としての務め……か)

 

 ノゾミは無意識に拳を握りしめ。

 脳裏に浮かぶ二人を、強く睨みつけていた。

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