一勝千金億女   作:ぽぽちん

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 ただ直後の更新がクズ要素羅列は非常に申し訳ない……。


第四話「代表選考回」

「え~……今日ここに集まってもらったのは他でもない。我々ヴァルキュリアはなんと、惨歯組の『殺戮武闘会』と交流会を行うことになりました。なので代表者の選考を行います」

 

「「「「おぉ~!」」」」

「わあああああ!! わあああああ!!」

 

 ヴァルキュリア事務所。

 若干手狭な一室にずらりと集まったのは、ノゾミ、ハナ、イチカの3人。

 それと、珠玉の格闘家達である。

 

「チッ! 本郷もいるのかよ」

 

 そう言い捨てるのは瀬名(せな)りく。

 "恐悪凶人姉妹"と呼ばれ、恐れられた埼玉レディース界のレジェンド。

 姉妹のうちの妹で、華奢ながらも驚異的な身体能力を持つ。

 つい先日の大会では姫奈相手に善戦した経歴を持つ。

 

「ひさしぶり~りくちゃん☆」

 

 ニコニコと笑顔を絶やさないのは現役JK、本郷(ほんごう)姫奈(ひな)

 薄桃色の長髪をサラリと流し、いかにもお嬢様然しているが、こう見えてイカレテロリストである。

 軍隊格闘技ベースの容赦ない技の数々と、常人離れした強度の(けん)から繰り出される一撃必殺の拳を叩き込み、先日の大会では危なげなく優勝。

 それでもまだ物足りないと強者を漁っている。

 

「よおジャッキーチェン!」

 

 二人の上から見下ろすのは瀬名りこ。

 瀬名姉妹のヤバイ方と呼ばれる、180cm超えの巨体を持つ天然戦闘体。

 その体格から繰り出されるパワーは圧倒的で、野生動物並の耐久力と勘を持つ。

 (おつむ)が少し弱いのはチャームポイントだ。

 

「柚芭・リーよ! 名前覚えるヨロシ!」

 

 リコに噛みつくのは柚芭(ゆずは)・リー。

 声に出して読みたい、柚芭・リーである。

 中国拳法家で、コテコテの中国人っぽさを見せる彼女。

 珍意六合拳(ちんいろくごうけん)の使い手で、見た目によらずその強さは本物。先日の大会では準優勝を果たした。

 ちょっと常識知らずな所もあるが、その独特なキャラが客には非常にウケがいい。

 

「わあああああ! わあああああ~っ!」

 

「……なあ伊織さん。ハナの姐さんは何であんなに喜んでんだ?」

 

「あぁ……下手すりゃ組同士で戦争勃発しそうなところだったのが、一転して和やかな交流会になって喜んでんだろ」

 

 リコが伊織を耳打ちした先には、両手をあげてはしゃぐハナの姿があった。

 余程気を揉みまくったのだろう。

 涙を流すほど喜ぶ彼女は、頭にパーティハットを被り、肩には「仲良し最高!」のタスキまでかけて、ひとりでクラッカーを何発も連射していた。

 

(仁和会に丁度よく()()()がいて良かったぜ。惨歯組が噛みついてきたことチクッたら逆に感謝されるくらいだったしな……)

 

 イチカが揺さぶりをかけたのは、組対時代の顔馴染である()昭信(あきのぶ)

 異例の若さで仁和組の若頭に出世したエリートヤクザである。

 イチカも知らない事だったが、ハナの親父、神宮寺組の先代は仁和組組長の親友だったらしい。若い頃は二人で散々無茶した仲だったそうで、神宮寺組の先代が亡くなった後、娘のハナをえらく気にかけていたとか。

 ちなみにこの事実をハナは知らない。

 組長は知られたくないそうなので、今後も口外されることはないだろう。

 

「良い感じにまとまって良かったですね~☆」

 

「おい姫奈……お前は自重しろよ」

 

「そうやで姫奈ちゃん!? もう二度とあんな事したらあかんッ! ウチもう生きて日の目見れんかと思ったんよ~!?」

 

「あははは……はーい☆」

 

 ことの発端である姫奈はノゾミとハナに詰められているが、堪えた様子はない。ただ半泣きのハナを見て、流石に申し訳無さは覚えたようだ。

 

「でもなんかわからんけど助かったわ~!!! 交流戦か~、熱いイベントやなぁ!」

 

「あぁ。向こうも生半可な選手は選んでこないだろう。ウチもベストメンバーで挑むぞ」

 

 まだ設立して日は経ってないヴァルキュリア。

 その選手層はお世辞にも広くないが、粒揃いだとノゾミは自負していた。

 

 瀬名姉妹は喧嘩の才能にめぐまれた最強コンビ。

 格闘技の経験はなくとも、その才能で対戦相手をぶっ潰す力に恵まれている。

 柚芭・リーは元殺戮武闘会出身の拳法家だが、その実力はトップクラス。

 中国拳法一筋で戦うも、その並々ならぬ功夫はどんな相手も貫く。

 本郷姫奈は名実ともにヴァルキュリアのトップ格闘家である。

 先の二人と激戦を繰り広げ、まだ本気を拝めない彼女なら、誰が相手でも勝ち抜けるだろう。

 そして、先日スカウトした承久国俊──。

 正直、コレだけの選手がいれば相手が誰であろうと負ける気はしない。

 そうノゾミ達は考えていた。

 

「ところでハナ、交流戦の詳細はどうなってんだ?」

 

「あ。うん。交流戦はね──」

 

 交流戦は、各団体三人の代表での戦闘になり、開催は丁度1ヶ月後。リングは仁和組のフロント企業である、プリンスホテル東京での開催になるらしい。

 会場設営などはほぼ仁和組持ちとのことでヴァルキュリアとしては非常に助かるが、ここまで負担をしてくれると逆に申し訳なくなってくる位である。

 が、申し訳なさとは別に。

 ノゾミはとある1点に引っかかっていた。

 

(……え、1ヶ月後?)

 

「まあでも、このメンバーなら誰が出ても安心やね! 一ヶ月後が楽しみやわぁ♪」

 

「ちょ、ちょっと待ってよハナ姐さん! 1ヶ月後? 私、医者に全治ニヶ月って言われてるんだけど」

 

 たまらずストップをかけたのは瀬名姉妹の妹、瀬名りく。

 彼女の右腕には立派なギプス。

 つい先日の大会で、姫奈にくじかれた物である。

 

「私もケガ間に合わないネ。治る前戦う絶対嫌ヨ」

 

 続けて抗議を出したのは柚芭・リー。

 頭部に包帯が巻かれており、同様に大会で負った怪我であった。

 

「ん~~~? 私はやってもいいですよ~? 片足でも多分大丈夫ですから~♡」

 

 そう余裕を見せるのは本郷姫奈。

 松葉杖をついてギプスで固められた左足をぷらぷらさせている。

 柚芭の震脚で傷つけられたものだった。

 

 どう考えても大会に出せる状態ではない。

 これにはノゾミ達運営サイドは顔を青ざめた。

 

「メンバー……足らへんやん……」

 

「どうすんの……これ……」

 

「……とりあえず。この三人は無しだな」

 

 折角の主力メンツが軒並み使えないのは非常に不味い。

 特に姫奈が出れないのは痛手だった。

 彼女はヴァルキュリアの強さの根幹。

 また強さはもとより、そのスター性は無くてはならないモノになりつつあった。

 

「圧倒的人材不足だな……」

 

「しゃあないよ。ウチ、新興団体なんやし」

 

「──あ。私は出れるよ」

 

 そう呑気に手をあげたのは瀬名りこ。

 瀬名姉妹の姉であり、野生動物に例えられる怪獣だ。

 彼女も先の大会で柚芭リーに崩拳、発剄、鉄山靠のフルコースを食らって敗北するも、怪我はすでに完治し、ケロっとしていた。

 

「流石のフィジカルモンスターあるネ」

 

「姉貴なら大丈夫だな」

 

「私は大丈夫ですって~、出してくださいよ~」

 

「やめとけ本郷。足の怪我は無理すると長引くぞ。──ま、安心しろよ、三人くらい私一人で楽勝だ。怪我人共は大人しく見学してな」

 

「ぶ~!」

 

 姫奈は冗談ではなく本気で出ようとしている。

 勿論、彼女ならそれも可能だろうが、ノゾミとしても怪我のまま出すという選択はなかった。

 そんな闘技者たちの会話をよそに、ノゾミ達はひそひそと相談を続けている。

 

「瀬名(姐)だけは出られそうだ。あと二人、か」

 

「……交流戦を延期できねえよな?」

 

「無理やて……! もう日程まで詰めてしもうてる……!」

 

 なら何で最初から相談しなかったんだ、とノゾミは言わなかった。

 今回、仁和組の提案かつ負担をしてもらってる以上、そもそもスケジュールをコッチに合わせろとは言いだせなかっただろう。

 それにもう起きてしまったのだ、怒るよりも検討したほうが建設的だ。

 

「一応一人は確保できてる。ほら。私が言ってた承久だ」

 

「あぁそう言えば!」

 

「私もそれは考えてた。いや、ベストタイミングだったなノゾミ! ただ……あと一人はどうすんだ?」

 

 承久は確定参加だが、大会は非情にも三人参加である。

 ノゾミ達は再び頭を悩ますことになる。

 

「時間もないし、一から選手を探すのは大変やで? これまでヴァルキュリアに出場した選手で良さそうな子はおるかなぁ?」

 

「これまでのねえ……」

「パっと思いつくのは……」

 

「……」

「……」

 

「戦力になりそうなのはアイツらくらいだよなぁ……」

「……アイツらはダメだな」

 

 ノゾミとイチカの脳裏に浮かぶのは過去、姫奈にワンパンされた選手達。

 しかし彼女たちはそれがトラウマでヴァルキュリアNGになっている。

 到底役に立たないだろう。

 行き詰まり、うーんと(うな)る三人組。

 そこにハイ、と手をあげたのは瀬名(妹)だった。

 

「あのさあ。私が思うにとっておきがいると思うんだけど」

 

「あ? そんな奴どこにいるんだ?」

 

()()()()()()。伊織さん、アンタが出りゃいいじゃん」

 

 まさかの運営側の参戦である。

 名指しされたイチカはそんな提案にため息をついた。

 

「おいおい。私は運営の仕事がだなぁ……」

 

「そうか! その手があったか!」

「身内過ぎて盲点やったわ!」

 

「……おいソコ。勝手に話を進めんじゃねえッ」

 

 イチカはやる気はなさそうだが、ノゾミとハナはビッグアイディア! と大興奮。

 何を隠そう、伊織イチカはガチガチの武闘派。

 ノゾミ達の中で最も格闘センスに恵まれ、格闘家は目指さなかったものの、警察官になってからは犯罪者相手に奮いまくっていた経緯を持つ。

 埼玉で敵知らずと言われた瀬名姉妹を一人でパクったのも、他ならぬイチカの手腕であった。

 

「はいは~い☆ 私は希望さんがいいと思いま~~~す♡」

 

 運営側の参戦が問題ないのなら、と元気よく手をあげたのは姫奈。

 ノゾミの腕に抱きついて大推薦である。

 ニ度仕掛けてまだ仕留められない事が理由……というより、ノゾミの真価を対戦を見て見極めたい意図がありそうだ。

 だがハナはそこにストップをかけた。

 ノゾミには出場()られない理由があるのだ。

 

「あ~~~……姫奈ちゃんは知っとると思うけど、ノゾミちゃんは目(※網膜剥離)の問題がなぁ……」

 

「いや、一応手術はしたんだけどさ、次、再発したらいよいよヤバイって医者に脅されてんだよ。まあ、でも人数が足りないなら……」

 

「──あかんあかん!? 絶対ダメやからね! それするくらいならウチが出場するわ!?」

 

「なんダ? ヤクザ女も闘えるカ?」

 

 親友を庇うようにして挙手をしたのは、まさかのハナである。

 見た目からは全く強そうに見えず、何だったら本人も殴るなんて絶対に嫌というくらいに平和主義のハナであるが、実は彼女、防御スキルと寝技スキルはピカイチ。

 現役時代のノゾミとスパーをして無傷で切り抜けるくらいには防衛のセンスがあり、その寝技は一度かかかればイチカをして地獄だと言わしめるほど巧みなのだった。

 

「そうだぞノゾミ。お前は出るな。お前が出るくらいならアタシが出る」

 

「いや何でだよ。二人は運営があるだろ? なら私が一番暇だし……」

 

「どこの世界にオーナー直々に参戦する興行があるん? ノゾミちゃんはオーナーらしくどっしり構えとってや!」

 

 

 ──その後も、ギャーギャーワーワーと話は続き、

 最終的に決まった闘技者は下記の通りである。

 

【参加者】

・伊織いちか

・瀬名りこ

・承久國俊

 

 急ごしらえではあるものの、手応えは確実にありそうな布陣だった。錚々(そうそう)たる面子に、ノゾミは思わず頷いていたが……それに突っ込んだのはイチカである。

 

「いや、したり顔してんじゃねえよ。肝心の承久はどうしたんだ? 遅刻か?」

 

 選考会という名目で選手達は全員集合のハズ。

 なのに承久の姿は影も形も見当たらなかった。

 

「……い、いや、一報はいれてたんだがな……既読はついてるから来るとは思うんだが……」

 

 疲れを含んだ顔を見せるノゾミ。

 実は承久の連絡応対速度、すこぶる悪かった。

 連絡しても基本反応はなく。

 催促しても五回やって一回反応くらい。

 約束事は平気で破るし、むしろ自分の都合にあわせろと傍若無人っぷりがすさまじい。

『一流の格闘家になればなるほど、性格が壊滅的になる』

 ジムの先輩の格言だが、まさにその通りだとノゾミは思っている。正直、まだ働いて貰ってないが雇ったのを若干後悔し始めていた。

 

「……クソ。出ろ。出ろよ承久」

 

「なんだなんだサボりか?」

「寝坊ネ」

「日にち間違えたのかも☆」

「分かるぜ。スマホってついつい携帯するの忘れるもんな」

 

 何度も電話を繰り返すノゾミ。

 その回数が5回、10回を超えたあたりで、ようやく反応があった。

 

『──おかけになった電話番号は現在使われておりません。(裏声)ピーという音に続けてお名前とご要件をどうぞ(裏声)』

 

「真似る気ないなら真似すんじゃねえ……! おい承久! 約束の時間が過ぎてるぞ! どこで油売ってんだよ!?」

 

『チッ、うるせえなー。休日なんだから好きにさせろよ』

 

 ゲオンゲオンと、スピーカー越しに聞こえる激しい音。

 電子音とチンチンジャラジャラと金属の小気味いい音が連続しており、彼女がパチンコにいるのは明確だった。

 

「休日じゃねえだろ!? お前、顔合わせは今日だって何度も言ったよな!?」

 

『あ? 13日は明日だろ。何言ってんだお前』

 

「お前こそ何言ってるんだよ、今日が13日だ!!!」

 

『……おぉ』

 

「おお、じゃねえ! 今すぐ来い、いいな!?」

 

『今連チャンしてるから無理。じゃあな』

 

 ──ブツッ。

 

 あまりにもあまりな返答に、ノゾミは愕然とし。

 聞こえてきた会話に、他メンバーは不安を顕にするのだった。

 

「……マジでサボりかよ」

「穀潰しネ」

「社会不適合者なんですね☆」

「分かるぜ。連チャン中は無理だよな」

 

「……やっぱハナが出るべきじゃねえか?」

「ウチもそう思えてきたわ……」

 

「いや、だ、大丈夫だ……! 私生活はクソかもしれないけど! 絶対腕は立つハズなんだ! だから信じてくれ!? な!?」

 

 その後も事務所では、ノゾミの説得が懇々と続いた。

 しかし結局、メンバーの不信感を拭うには至らなかったのだった。

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