一勝千金億女   作:ぽぽちん

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みっちゃん不在です。
みっちゃん居たらすごいことになってそう。


第五話「ヤクザとくんずほぐれつ」

 交流試合開始がニ週間前に迫ったある日である。

 早朝。クレイシ道場。

 ノゾミが昔、表世界で世話になった総合格闘技の先輩「暮石(くれいし)光世(みつよ)」が運営する施設。

 そこにヴァルキュリアメンバーの一部が集まっていた。

 ノゾミ。イチカ。ハナ。そして姫奈。

 彼女たちの目的は一つ。

 『承久國俊の実力を図ること』。

 すでに不信感を買っている彼女である。

 まずは名誉回復も兼ねて、皆に判断してもらおうとノゾミが急遽場を整えたのだ。

 

 ちなみに姫奈は呼んでもないのに来た。

 怪我をして暇だったのと、どんな選手なのか気になって仕方なかったらしい。

 

「本当に闘えるんだろうな?」

 

「……大丈夫だ。まず間違いなくアタシよりは強いのは保証するから」

 

 イチカが睨む。

 ノゾミはそんな視線を受けず、ただロッカールームの先を眺めていた。

 既にその顔には疲労が浮かんでいる。

 時間通りに承久を呼び出すだけですでに一苦労だったようで、今はバックれないか心配で仕方がないらしい。

 

「えぇ~本当にそうなんですかねぇ☆」

 

「何でお前は頑なに認めようとしないんだ。まだ見てもないだろ」

 

「だって希望さんって自己評価低いですし~☆」

 

 姫奈はノゾミに絡みながら首を傾げている。

 二度も自分の想像を超えてきたノゾミである。

 それより強い相手、と言われてピンと来ないようだった。

 

「──お待たせや~」

 

「おう、ハナ」

 

 まず更衣室から出てきたのは"はんなり極道"、美谷はな。

 今日は長い黒髪を後ろで結んでおり、着物ではなく、黒のタンクトップとスポーツショーツ姿で登場だ。

 なんと彼女、承久の実力を確かめるにあたって、自らスパーリングの相手を買って出たのだ。

 

「いや~、この格好ひっさびさやわ~……高校卒業して、ジムを辞めて以来やね」

 

「でも何だかんだで体は油断してねえじゃねえか」

 

「そうだぜ、コソ練でもしてたのか?」

 

「まさか! ウチ、格闘技やめてからスタイル維持程度の運動しかしてへんかったよ。だからすぐスタミナ切れそうでヒヤヒヤするわ~……」

 

 ハナはノゾミに誘われて格闘技を始めた一人である。

 当初はダイエット+護身目的だったそれは、いつしか目的を超えたスキルをハナに開花させていた。

 ブランクこそあるが、彼女を知る親友達はハナなら安心して任せられると考えていた。

 

「それで、アイツは?」

 

「あぁ。多分もうすぐ出てくると思っとったけど……あ」

 

 噂をすると、何とやら。

 遅れて更衣室からのっそりと現れたのは、(くだん)の人物だった。

 

「うぃ~……」

 

 承久國俊。

 プリンヘアーの髪を後ろでまとめた彼女。

 その服装はハナと同じくタンクトップとショーツ姿。

 しかしやる気がいまいちなのか、かなり脱力気味に見えた。

 

「あの人が承久さんですか~☆」

 

「何だかイチカちゃんに似てると思わへん? 目の感じとか」

 

「どこがだよ。似てねえだろ」

 

 口々に承久を評価するハナ達。

 しかしひと目見て、三人ともその評価を改めていた。

 スタイル、そして立ち振舞に無駄がない。

 筋肉は無さ過ぎず、付き過ぎず。

 緊張し過ぎず、弛緩し過ぎず。

 どこか武闘家らしさを感じられるものだった。

 

(ふんふん……なるほど~☆ 希望ちゃんが太鼓判を押しただけありますね~……確かにやれそう☆)

 

 じっと姫奈が観察をしていると、視線を感じた承久がチラりと見てくる。

 姫奈が動じずに手を降ると、向こうもニマァ、と手を振り返した。

 かなり気色悪い笑みで、思わず「うわぁ☆」と零すほどだった。

 

「紹介が遅くなったが、彼女が承久だ。おい承久」

 

「承久國俊でーす。強い奴とお金とカワイくてエロい女の子がすきでーす。よろー」

 

「……」

「……あ。あはは、よろしゅうな。美谷はなと申します~」

「本郷姫奈です、よろしくお願いしまーす☆」

 

 ノゾミに急かされて行った自己紹介は当然のように壊滅的。

 イチカは挨拶を拒否して睨みつけ。

 ハナは引き気味に挨拶を返す。

 姫奈は無難に挨拶してくれたが、深く関わるまいと既に線引しているようだった。

 

 ノゾミは思わず手で顔を覆っていた。

 コイツという奴はとことん……!

 

「おい承久、仮にも同僚の前で舐めた真似を取るな」

 

「ちゃんと挨拶しただろ」

 

「もっとちゃんと挨拶をしろ」

 

「別に俺は"仲良しこよし"をしに来たわけじゃねえんだ、挨拶なんてどうだっていいだろ。それより今俺が聞きたいのは──そこの姉ちゃん」

 

「え? ウチ?」

 

 まさかの指名。

 一体何を言われるのだろうと、ドキドキするハナだったが。

 

「俺が勝ったらヤらせろ」

 

「死ね」

 

 ノゾミは即座に承久をぶっ叩いていた。

 

「ッて~な~……いいだろ。ご褒美くらいあっても。お前、釣った魚に餌は与えないタイプか?」

 

「お前は褒美の前にやらかした罰を清算するのが先だろ!」

 

「……オイ、コイツ●してもいいんじゃねえか?」

 

「い、イチカちゃん抑えて抑えて! チャカ取り出したらあかん!?」

 

「う~ん、癖がすごい☆」

 

 折角上方修正を受けた評価も、即下方修正である。

 ブレないというか、肝が太いというか……。

 ともかく、とノゾミは咳ばらいをした。

 

「承久。お前はハナとこの場でスパーリングをしてもらう。ここでお前の実力を私達に見せてみろ。内容によっては試合には出させねえし、なんだったら即契約は打ち切りだ」

 

「へーへ。そこの姉ちゃんでねぇ……」

 

「あまりハナを侮るなよ? ディフェンス面にかけては一流……いや、超一流だ。テメェごときじゃ手も足も出ねえよ」

 

「ちょおイチカちゃん!? 何でハードルあげるん!? やめてえな!?」

 

 じろじろとハナに不躾な視線を送る承久。

 それは戦力分析というより、いわば嬢を見定めているようないやらしい目線。

 思わずハナは自分の体を隠し、イチカは再度キレそうになってノゾミに抑えられていた。

 

「まあ正直な話、本気を出すまでもねえ。っつーか本気出したらハナちゃん死んじゃうヨ」

 

「ほらっ! あぁ言うとるんよ!? あかんてっ!」

 

「分かったよ……ただ手加減するにしろ、生半可な結果じゃ納得しないと考えろよ」

 

「うーい」

 

 そうして、ハナと承久はグラウンド上で対峙する。

 ハナは腰と重心を落とし、両手を前に出した総合格闘技(そうごう)の構え。

 承久は無構え。ありたいに言えば、自然体で突っ立っているだけ。

 ノゾミは二人の準備が整ったのを確認すると、その片手を振り上げ──、

 

「じゃあ準備はいいか? ──はじめッ!!!!」

 

 ──バッ、と振り下ろした。

 

「……」

 

「……」

 

 開幕はどちらも動かない、"見"の姿勢。

 それはお互いに責めあぐねている訳ではなく、相手が仕掛けてくるだろう、そう考えての"見"である。

 

(……構えない、って事は……なんやろ。流儀がない? それとも、むしろそのポーズが既に構えになっとるってこと? えらい隙だらけには見えるんやけど……)

 

 観察するハナ。

 スパーリングパートナーを買って出た以上、相手に仕掛けてもらうと考えていた。ゆえにこそ、待ちの姿勢を続けていたのだが……一向に攻めてこない。

 何を考えてるのだろうとハナが疑問に思ってると、承久はふと、何かに気付いたように両手を叩き始めた。

 

「あ……そういや俺がスパーする側だもんな。いつも教える立場だったから忘れてたわ」

 

「え?」

 

「んじゃ行くからな~、ちゃんと受け身とれよ~?」

 

 そのまま歩いてくる承久。

 勿論構えることなく、まるで「ちょっと散歩するか」といった気構えのない歩みである。

 あまりに普通に歩いてくるので虚を突かれたハナ。

 ズケズケと間合いに侵入し、手を出さざるを得なくなる。

 そうして、組みつこうと左腕を伸ばしたところで──、

 

 "スパァンッ!"

 

「え? ……きゃッ!?」

 

 ──気付けば、ハナはぐるんと前に一回転して、尻もちをついていた。

 

 その結末には、誰もが目を見開いた。

 ノゾミはもとより、姫奈も驚き。

 イチカに至っては口をあんぐりと開けていた。

 

「えぇ!? い、今の何? なんか勝手にぐるんって……!」

 

「お、おい、ハナ何やってるんだよ?」

 

「いやウチのせいやないよ!? 手を取ろうとしたら体が勝手に……!」

 

 ハナは混乱しきっている。

 イチカの目からはハナが勝手に転んだかのように見えていたが、ハナは手を取った瞬間、世界が勝手に回転したと錯覚するくらいには不思議な事が起きたという実感があった。

 そして。

 その現象を正確に見極めていたのはノゾミと姫奈だけだった。

 

「……あれって」

 

(やわら)……ですね~☆」

 

 ノゾミの目は、その一部始終をしっかり目に焼き付けていた。

 ハナの左手が承久の右手を掴もうとしたその瞬間、承久の左手がハナの伸ばした腕を引っ張り、同時に、左足で軸足を狩って転ばせていたのだ。

 ただ、その一連の動きがほとんど同時、かつ瞬間的に実行されたせいで、ハナが勝手に転んだように見えたのだろう。

 

「合気道かぁ。なるほど、道理で読みが深いわけだ」

 

「人体の反射に付け込んだ格闘技ですもんね、人体の仕組み、力の流れを理解しておかないと出来ない芸当……すごいなぁ……☆」

 

 姫奈の見てる先では、再びハナに近寄った承久が、ハナを見事に投げ飛ばしているのが見えた。

 小手返し。

 四方投げ。

 入り身投げ。

 (すみ)落とし。

 呼吸投げ。

 仕掛けと、投げの手際はどれも徹底的に無駄がなく。

 まるで約束組手を見ているような気分にさせられた。

 

(この人……すごい()()ですね~……☆ うーん、そそるなぁ……♡)

 

「よいしょっと」

 

「ふぎゅ! ……ふええ!? ちょぉ、なんで!? 全く動けへん!?」

 

 しまいにはスッ転んだハナの上に承久が座りこみ。

 ハナは抵抗できずに動けなくなってしまっていた。

 なるほど、実力差がありすぎる。

 想像以上の強さに、イチカも感心する他なかった。

 

「……やるじゃねえか」

 

「だろ!? だろ!?」

 

「これで性格が良かったら文句ねえんだが」

 

「……それは……うん、そうなんだが……な……?」

 

 ごにょごにょと尻すぼみになるノゾミ。

 イチカの厳しい目は、しかしながら承久に向き続けていた。

 確かに腕は立つように見える。

 だが実践と約束組手は違う。

 実際の戦闘で、こんなスムーズに投げられるのか?

 

「おい承久。お前ハナに一度捕まって見ろ」

 

「あ?」

 

「イチカちゃん?」

 

 イチカの提案に、ノゾミはなるほどと頷く。

 それは実践形式、特に組み伏せられた状態での対応力を見ようというのだ。

 確かに気になるところである。

 裏格闘はラフプレー上等の世界。

 最初こそヨーイドンでスタートだが、どんな技が繰り出され、どんな展開になるかは分からないからだ。

 

「美女に組み敷かれるのは役得だなぁ~~、ささっカマンカマン!」

 

「……ウチすっごい嫌なんやけど!?」

 

「我慢しろハナ。むしろビッチの力見せてやれ」

 

「ビッチちゃいますぅ! 清純派ですぅ!」

 

 おっかなびっくり承久の腕を掴んだハナ。

 しかし一度掴むと、そのまま引きずり込むようにして素早くテイクダウン。

 承久を仰向けに転ばせ、その左脇に自身の右腕を突っ込み、左腕は右脇で固定。右肩に体重をかける形で動けなくする。

 いわゆる崩袈裟固(くずれけさがため)と呼ばれる、柔道の抑え込みの体勢である。

 一切モタつきのない自然な動きは、姫奈と承久を驚かせた。

 

「へぇ~……はなさんの動き、凄くいいですねっ。ブランクがあったなんて信じられないです☆」

 

「だろ? アイツは打撃は全くダメダメだが、寝技に関していえば天才だぜ」

 

 まるで自分のことのように嬉しそうに語るノゾミ。

 その言葉を裏付けするように、承久が拘束を切ろうとすると淀みない動きで体勢を変更。マウントは譲らず、相手の片腕をあげさせた状態で両腕で抱え込む『肩固め』に移行。頸動脈を抑え込み、相手の意識を奪おうとする。

 させじと承久が左方向に寝転がり、逆に体勢を崩そうと狙うが、相手の動きにあわせてハナは再び移行。次の瞬間には『ギロチンチョーク』をかけている形になる。

 まさしく変幻自在の寝技術。

 次々と繰り出される寝技の数々はどれもが一級品で、一度捕まれば無限に体力を奪われること間違いなし。

 イチカもノゾミも、ハナの寝技から逃げ出せたことは数えるほどで、イチカをして「大蛇に巻き付かれているみたいだ」と称する彼女のテクニックは、裏格闘でも十二分に通用するものだった。

 

(……通用する……筈なんやけどなぁ)

 

 しかし、寝技地獄を見せているハナ本人は……全く楽観視していなかった。

 むしろ承久にすんなり技が通っていることに、不信感すら覚えていた。

 

「にょほ~、抜け出せねぇ~」

 

(この人、苦しがるどころかなんで喜んどるん!?)

 

 なにせ承久は鼻の下を伸ばしただらしない顔を見せ続けていたのだから。

 

 寝技は技の都合上、肌同士の接触が多い。

 高確率でお互いの上半身が密着し、両足は絡み、そしてたわわな胸部は押し合いへし合う。

 どうやら承久、ハナの体を寝技を通して堪能している節があった。

 

(それに、あと少しってところでロックが決まらん。要所要所で絶妙にハズしてくるわ……!)

 

 お陰で次から次へと寝技を展開する必要があり、体力の浪費が激しい。

 しかも次の寝技を誘導されているようにも感じとれる、これまた不思議な感覚があった。

 そのせいで、ハナはいつもより疲弊し、汗だらけ。

 一方で承久はまだまだ涼しい顔をしているときた。

 自分のブランク抜きにしても、相手の実力の高さを痛いほど感じて仕方がない。

 

(この人が上手いっちゅーのはあるけど……ウチも自信あったのに、これはちょっと凹むわぁ……)

 

「別に凹まなくてもいいぞ?」

 

「へっ?」

 

 そんな寝技の最中である。

 承久の声がハナに届いた。

 

「俺が易々とロックを抜け出せねえのは久しぶりだ。お前さん、確かに実力あるな」

 

「ど、どうも……?」

 

「ただ雇い主はド派手な結果が欲しいようなんでな。そろそろ抜けさせて貰うぞ」

 

「えぇっ!? そ、そう言われても手は抜かんで……!」

 

「俺には関係ねえよ」

 

「──わぁっ!?」

 

 寝技への返し技、それを嫌ったハナがポジションを変えようとした瞬間を狙われた。

 承久の足と腕が瞬間的にハナの全身に絡まって、その動きを加速させる。

 するとハナは勢い余って承久の体から射出される形となり、なすすべなくグラウンドに転がってしまう。

 

「ひえッ!?」

 

 たまらず起き上がってガードを固めようとするハナ。

 しかし構えた時には承久は視界から消えていた。

 一体どこに!?

 

「ハナ、後ろだッ!」

 

「えぇ!? ちょぉ、いつの間に!」

 

 イチカの声に慌てて振り返るが、またも居ない!?

 嘘やろ、じゃあどこに!? 

 混乱するハナだったが、次の瞬間である。

 首根っこを掴まれたと感じたら──彼女の意識はプツンと途切れてしまうのだった。

 

 ───………

 ──……

 ……

 

「お、おい! ハナは大丈夫なんだろうな!?」

 

「大丈夫。()()()()だけだ」

 

 承久はハナを横たえると、ノゾミ達の元に戻ってきた。

 頸動脈の抑え込みで、一発で気絶……!

 ノゾミはもはや言葉が出なかった。

 格が違う。

 いや、違いすぎる。

 技術、対応力、機転、そのどれもがSS級。

 あの難攻不落のハナを、簡単にあしらう力量は、この広い世界でどれだけいる事か!

 

 ノゾミの野心が疼く。

 承久という強いカードが入ったことで、

 交流会の勝利はまさに盤石のものとなった。

 そして、それは交流会のみならない。

 承久(コイツ)がいれば、ヴァルキュリアの未来は間違いなく明るいだろう。

 

「──で。審査の結果はどうよ?」

 

「私は文句ないね。イチカは?」

 

「チッ……認めてやるよ」

 

「そりゃお気に召してよかった。俺ぁてっきり、アンタだけは癇癪起こして認めねえとか言うかと思ってたぜ」

 

「あぁッ!?」

 

「オイ馬鹿! 何でお前はすぐに喧嘩売るんだよ!?」

 

(この人格破綻っぷりだけが玉に瑕だけどな……)

 

 今にも暴れ出しそうなイチカを抑え込んでいると、ふと、ある人物が気になった。

 それは隣で観戦していた本郷姫奈。

 先程まで楽しそうに眺めていた彼女だが、何だかとても静かなのだ。

 

「テメェ調子乗るんじゃねえぞ……! 今のはハナが本気出してなかったお陰だ、わかってんのか!?」

 

「おー怖。本気出したらどうなるんだ? 次は裸でくんずほぐれつしてくれるのか?」

 

「●すぞゴラァッ!!!!」

 

「………………………りたいなぁ……♡」

 

(うわ……ッ!)

 

 ノゾミは彼女を見て、すぐに後悔した。

 そこには一方向にじぃっと視線を向ける姫奈の姿があった。

 瞬きを忘れ、穴が開くほど見つめ続ける先は、当然のように承久。

 姫奈の全身からは、どろりと粘着質な、愛憎混じった狂気的な念が漏れ出ていた。

 

 もしも松葉杖がなかったら。

 もしも体調が万全だったら。

 もしも人目がなかったら。

 今すぐにでも飛び掛かっていきそうなほど、臨戦態勢だった。

 

「──ヤりたいなぁ♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ 戦りたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ 闘りたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ 犯りたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ 嬲りたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ 殴りたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ●りたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい♡ ヤりたい──」

 

 ぶつぶつと呟き続けるのは呪詛にも近い、愛。

 ノゾミは自身への興味が薄れたことに安心するとともに、完全にロックオンされた承久を憐れむのだった。 

 

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