一勝千金億女   作:ぽぽちん

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 説明会兼お色気補充。(色気なし)


第八話「アパート暮らしのクズ」

 天馬希望の生活は、一言で言えば質素だ。

 

 裏格闘『ヴァルキュリア』のオーナーである彼女。

 一興行あたり数百から数千万の駆け額を取り扱う、小さくない団体。その取り分はさぞかし多そうに見えるが……実態はそうではない。

 選手へのギャラ、スタッフ代、コンパニオン代、家賃、水道光熱費etc..etc...。

 それらを加味すると、運営であるノゾミ達の給料は、まだ一般サラリーマンの平均少し上しか稼げていない。

 ゆえに左団扇(うちわ)とは行かず、ノゾミはアパート暮らしを続けていた。

 オルレアン荘。

 築52年、重量鉄骨造。1K35平米。月3万9千円の格安アパート。

 更けば飛びそうなボロ小屋にも見えるその一室に、ノゾミは住んでいた。

 もとより物欲の薄い彼女である。

 部屋にあるのは着替え数着と、食器、冷蔵庫、せんべい布団くらい。

 表で活躍していた頃よりも格段に稼げているが、生活水準を変えるつもりは全くなかった。

 

「はぁ~……飲んだ飲んだ。朝近くまで飲んだのなんて、久々だ」

 

 バランス釜の風呂で体をしっかり温めたノゾミ。

 上は白Tシャツ、下は黒ショーツの油断した姿の彼女は、タオルで髪を乱暴に梳いていく。

 

 何の因果か始まった交流会。

 その結果は上々だと言えよう。

 

 仁和会……いや惨歯組とのわだかまりも消え。

 両陣営WIN=WINの関係になれたのはとても大きい。

 祝勝会ではイチカがガツガツと機嫌よく飯を頬張り。

 ハナなんて喜色満面で無限に酒を飲んでいた。

 勿論、ノゾミもその結果自体は喜んでいた。

 喜んでいたのだが……。

 

 "まだまだケツが青すぎる。もっと考えろよ。俺の手綱を握りたかったら、特にな"

 

 ノゾミの中で、承久の一言が渦巻いていた。

 喉元に引っかかり続けたソレは酒、ましてやシャワーをもってしても洗い流せず。もやもやとした気分だけが残り続けていた。

 

「……クソ。知るかよお前みたいな厄介者。手綱なんて握れる訳ないだろ」

 

 パチン。

 古電灯のライトを消し、薄布団に寝転がる。

 酒で火照った体がじんわりと熱を発する中、ノゾミは考えにふける。

 

 惨歯組。

 仁和組。

 神の軍勢。

 本郷姫奈。

 承久國俊。

 

 出口のない迷路に迷い込んでしまったような閉塞感。

 どれもこれも、抱え込むには重すぎる問題ばかり。

 ドン底から這い上がれたとはいえ、未来は暗く、くすんで見える。

 私は、この先本当にやっていけるのか?

 

「……強くならないとな」

 

 知識的にも。肉体的にも。精神的にも。

 その全てを鍛えなければ生き残れないだろう。

 ノゾミは決意をあらたにすると、本能に従うまま眠りにつくのだった。

 

 ──────────

 ────────

 ──────

 ────

 ……

 

「……んぁ?」

 

 ふと、ノゾミの耳が異音を捉えた。

 金属音。

 ガチャガチャと鳴らされるそれは、部屋のどこかから聞こえてくる。

 まどろみながら体を起こすと、玄関扉、そのドアノブが何度も捻られているのが見えた。

 誰かが部屋を間違えてるのか?

 時計を見れば、時刻は朝10時。

 カーテンの隙間から差し込む光は煌々(こうこう)としている。

 

「まだ3時間も寝ていないっていうのに……はいはい、今行きますよ」

 

 ふぁ、とあくび一つ入れて、応対に向かうノゾミ。

 背中をかきながら、不用心にも扉を開けた……次の瞬間。

 

「──おぅふ……」

 

「あ?」

 

 自分の胸にもたれかかる形で女が倒れこんできた。

 思わず受け止めてしまったが、誰だコイツ?

 よく見ると、何だか見覚えのある髪をしている。

 根元は黒で、途中から金髪を後ろでまとめたコイツは……?

 

「承久、お前かよ!?」

 

「んぁ~……? おまえ、なんでここにいるんだぁ……?」

 

「それはこっちの台詞……う、酒臭ッ!?」

 

 全身からアルコール臭をぷぅんと漂わす承久は、ひどく酩酊しているのか、焦点の合わぬ目でノゾミに抱きついていた。

 

「お前の部屋は隣だろ……! とりあえず離れろ!」

 

「んぁあ……んだよカレンのつぎは、おめぇが抱かれてぇのかぁ? しゃあねえなぁあ……」

 

「んひぃっ!?♡ ち、乳を揉むんじゃねえ!」

 

 いかがわしい手つきで体をまさぐる承久を何とか引き剝がそうとするが……全く離れない。

 どういう原理か知らないが、本人は力を入れてないように見えるのに、接着されたかのようにぴったりとくっついているのだ。

 ノゾミは悪戦苦闘を始める他なかった。

 

 実は承久の寝床を用意したのはノゾミだ。

 邂逅当初、何故かは知らないが根無し草だった承久。

 無職かつ連絡手段も、先立つ金もほとんど持ってないという、お前どこで生きてたんだよ状態だった彼女に、ありとあらゆるライフラインを用意したのだ。

 全ては先行投資のため。

 しかし承久、せっかく作った根城もほとんど利用せず。

 たまに利用したと思えば女を連れ込んでアンアンと近所迷惑を起こすばかりだった。

 

「いいから離れろ……ッ、寝るなら自分の部屋で寝ろ……ッ!」

 

「ん~~……」

 

「キス顔するな気持ち悪い!? あぁもうわかった! 連れてってやるからしっかりしろよ本当に……ッ!」

 

 しつこく迫ってくる承久を引き剥がすのを諦め、肩を貸す。

 いつもなら一匹狼ぶる承久が、ここまで酔い潰れるのは珍しいことだった。

 一体何があったんだろうか。

 ……多分気にした所で、とっても下らない理由な気はするが。

 

「ほら、お前の部屋の鍵はどこにある? ポッケの中か?」

 

「お、お……なんだせっきょく的だなお前~……、その気があったのか~……?」

 

「ねえよ死ね。……どこだ? ここ? あー……これか、お前な。せめてキーホルダーくらい買えよな……ったく」

 

「ちょ、うぇ、まて揺らすな……揺らすと……ぉえ゛ぅ゛ぶ」

 

「わー!? やめろ馬鹿ーッ!?!?!?」

 

 頬をぱんぱんに膨らませた承久を見て、仕方なく家にあげるノゾミ。

 洗面台に連れてった瞬間、承久はリバースマウンテンし始めた。

 それはそれは見事な汚い虹である。

 ノゾミは仕方なく背中をさすり続けた。

 

「ぅぶ……おぇっぷ……おぇぇ……!」

 

「どんだけ飲んでたんだよ……ほら水だ。飲んどけ」

 

「うぅぅ……口移し……」

 

「しねえよボケ」

 

 手渡したコップを死にそうな顔で飲む承久。

 その姿はまかり間違っても、暗殺者相手に無双した女とは思えない。

 コイツほどの実力があれば、裏はともかく表でも名が通っていてもおかしくはないのに。一体どこで燻ぶっていたのだろうか。それとも、ずっと隠れていたとでも言うのだろうか?

 

「よーし吐き終わったな。じゃあ出てけ」

 

「わぁったよぉ……」

 

「ってオイ、何で服脱ぎ始めたんだよ!? 何が分かっただよ、何もわかってねえだろ!?  こら! 馬鹿お前ッ! やめろってっ!?」

 

「うるせぇなぁ……今からねるんだから、ぬぐにきまってんだろ……」

 

「おいいいィィ──ッ!!!!」

 

 ぽーんぽーん、すっぽんぽん。

 着ていたスーツを躊躇なく脱ぎ捨て、あっという間に全裸になっていく承久。

 飾り気のないショーツもブラも、ぽーいとぶん投げると、その裸体が顕になった。

 

 一言で言えば、洗練された体だった。

 

 全身が引き締まっており、無駄な脂肪がなく。

 その肌はどこを見ても傷がなく。

 赤ん坊のようにスベスベの素肌に見える。

 胸はほどよい大きさで、良質な筋肉が彼女の柔軟な体を覆い、まるで彫刻のような美しさを醸し出している。

 まさしく女性格闘家の理想形。

 ウェイトトレーニングでは決して作れない実践的な体は、ノゾミをして思わず見とれてしまうほどであった。

 

「んじゃおやしみぃ……」

 

「って、おいそこ私の布団……! ……はぁ……」

 

 布団に潜り込んだ瞬間、いびきをかき始めた承久。

 ノゾミはため息をつくしかなかった

 

 

 

 § § §

 

 

 

「ふがッ……ん………あぁ……?」

 

 時刻が17時を回った頃。

 ようやく承久は目を覚ました。

 ゆっくりと起き上がった彼女は、自分の部屋より殺風景な場所にいることに気付き、不審がる。

 

「ぁ……? ……俺の部屋じゃねえな」

 

 見れば布団のすぐ隣に、自分のスーツが整頓されて置かれている。

 何でこんな場所にいるんだ?

 そう考えるより先に、頭に刺すような痛みが走った。

 

「っつぅ~~っ……! 流石にチト飲みすぎたな……反省」

 

 布団から這い出た承久はあくびをしながら大きく伸び。

 そしてトイレで用を足した所で、ガチャリ。

 部屋に誰かが入ってきた。

 それは部屋の主であるノゾミ。

 腕には買い物袋がぶら下がっていた。

 

「……ようやく起きたのかよ」

 

「おう天馬」

 

「おう天馬、じゃねえよ。あと何でまだ全裸なんだよ」

 

「なんだ、お前恥ずかしがってんのか? ピュアなのか?」

 

「お前の倫理観のユルさは恥ずかしいと思うよ」

 

 天馬は承久を素通りして、隅っこに置いてあったちゃぶ台に向かう。

 そして、買ってきた総菜をどかどかと並べていった。

 

 唐揚げ7個セット。エビチリ。焼売9個。

 レバニラ。焼鳥セット。肉じゃが。

 大根サラダ。焼きそば。炒飯にマルゲリータピザ。

 シャケとおかかのお握り2つずつ。

 そしてペットボトルのお茶である。

 

 なんだなんだ、と承久が眺めているとノゾミがジロリと睨んだ。

 

「まず服を着ろ。そしたら飯にするぞ」

 

「……おう」

 

 承久はシャツとショーツだけ身に着けると、言われるがままに食卓に向かった。

 

「……」

「……」

 

 ガツガツ、カチャカチャ。

 咀嚼音と箸が器に触れる音が響く。

 最初こそ二人は黙々と食事をかっこんでいたが、腹が満ちていくと心にも余裕が出てくる。

 焼きそばをずぞぞと啜り、お茶を煽った所でノゾミが切り出した。

 

「……で。お前昨日何してたんだ? 前後不覚になるまで酔い潰れやがって」

 

「何って……ナニだな」

 

「あの暗殺者とか?」

 

「そうそう。あの毒使ってきた姉ちゃん。いやー、美味かったぜ? 触り心地良いし胸も尻もそこそこあるし、何より感度が最高だ。面白いようにヒンヒン鳴くから、つい張り切っちまった」

 

「はぁ……ハナが言ってたぞ。何か無理矢理粗相させたとかなんとか」

 

「あれは敏感過ぎるあの姉ちゃんが悪いな。ちょいと弄ったら即漏らしやがった。というかアイツときたら汁っ気が多すぎて多すぎて! ベッドなんてグッショグショになっちまったぞ?」

 

「聞きたくもねえ……で、その後カレンはどうなったんだ?」

 

「どうって、何も。3回くらい気絶させたら全然目覚めなくなったから、ホテルに置いてきた」

 

「最低すぎるコイツ」

 

 肌が驚くくらいツヤツヤなのも、相当楽しんだ結果のようだ。

 承久は焼売とレバニラを同時に口に放り込み、一気に飲み込んだ。

 

「あの姉ちゃんが()()()()酒を奢ってくれたから、ついついハメを外し過ぎちまった」

 

「私の部屋に間違えて突入するくらいだもんな」

 

「あーここってやっぱりお前の部屋か。びっくりする程何もねえなー、儲けてんじゃねえの?」

 

「あいにく金は銀行に全ツッパだよ」

 

「裏格闘のオーナーにしては随分保守的だな」

 

「裏なら、なおさら石橋を叩いて渡るくらいが丁度いいんだよ。今特に欲しいものもないしな」

 

 ふーん。と興味なさそうに箸を運ぶ承久。

 そう、今特に欲しい物はない。

 ()()()()()()()()()()()

 

「そういや承久。お前、ここに来る前は何やってたんだ?」

 

「ん。まあ今と変わらねえよ。裏格闘とか用心棒とか……あとは適当にサバイバルだな」

 

「サバイバルって……っていうか、お前別の裏格闘にいたのかよ?」

 

「大体4年前くらいにな。殺戮武闘会にいたぞ」

 

「──はァ!?」

 

 まさかの過去である。ノゾミはひどく驚いた。

 確かに裏格闘では経歴よりも腕っぷしが重視されることから、ロクに事情は聞かなかったが……。

 承久はピザを頬張りながら教えてくれた。

 

「知らなかったのか? 丁度金がない時期に何でもいいから稼げねえかなーって。適当にチンピラボコしてたらスカウトされてな」

 

「お前……それ早く言えよッ!? でも何で辞めたんだ。お前ほどの実力だったら殺戮武闘会が離さないだろ」

 

「それがなー。俺が辞める前にクビになったんだよなー」

 

「クビ……な、なんで?」

 

「しらんがな。表向きは素行不良っつーことらしいがな。試合態度がどーとか、契約違反ーだとか……ちょっと試合サボっただけでみみっちぃ奴らだよ」

 

「試合サボるのはクビにされても仕方ないだろ……」

 

「うるへー! アイツらがつまらん対戦相手しか呼ばねえのが悪い! カス相手と戦ってモチベ上がる訳ねえだろ!」

 

 聞けば、当時の承久を知るのは葉月ユウのみらしい。

 勿論対戦では瞬殺。

 昨日久々に見たら全身ツギハギになってて笑ったわ、と愉快そうに語った。

 

「それが丁度4年前? クビになってから何してたんだ」

 

「あーそれな。クビついでにファイトマネー没収とかフザケた事言い出したから事務所で暴れたってさ。それで殺し屋とか送られてきて全部返り討ちにしたら、全国指名手配みたいになってなー」

 

「……」

 

 つくづく、覆面を被らせて良かったと思ったノゾミ。

 そうしなかったら翌日には埠頭に浮かんでいただろう。

 

「それがあんまりにも面倒になったから、ほとぼり覚めるまで()に逃げてやった」

 

「中……?」

 

「知らんのか? お前仮にも裏の住人だろう」

 

「生憎、つい数ヶ月前まではタダの無職(プー)だよ」

 

 承久がオニギリ片手に語ってくれたのは、東京近郊に作られた不法集落のことだった。

 ノゾミも話そのものは授業で習っている。

 しかしそこは広範囲に有毒ガスが発生し、人がほとんど住めない場所だと聞いていたが……。

 

「とんでもねえ、あそこにゃ何万人と住んでるぞ」

 

「……!?」

 

「傭兵、不法移民、指名手配犯に殺し屋と、犯罪者の見本市みたいな所だ。当然治外法権。人の死なんて日常茶飯事だぞ」

 

「お前……そんな所に? だが、流石にヤクザとてそこまで怒らせたら追ってくるんじゃねえのか?」

 

「追ってこねえさ。つうか、追ってこれねえだろうな。秩序のねえ暴力だけが支配する街だ。ヤクザごときが入っても、翌日には全員加工肉として店頭に並んでるだろうよ」

 

「……」

 

「あそこじゃ性別も年齢も資産も地位も、それこそ総理大臣だろうと等しく価値がねえ。ただ価値があるのは、己の強さだけだ」

 

 ……ゾッとする。

 この日本にそんな所があったことに。

 そして、そんな所で何年も生き延びてきた承久に。

 

「なぁに、慣れれば楽しいところだ。()()()()()()()何でも手に入るし、(ココ)よか退屈しない。否が応でも実力がつくぞ」

 

「……金を積まれても行かねえよ。それで、最近になって中から出てきたってことか」

 

「おう。そしたらお前にスカウトされた。ラーメンぶっかけ未遂されてな」

 

「未遂だし、実際に犯人だったから仕方ねえだろ」

 

 ノゾミもおにぎりを頬張りながら考える。

 この女の謎めいた出自。

 洗練されすぎた技、武術。

 それは一体どこから来たものなのか、と。

 そして何よりも、疑問なのは──

 

「──何で、私のスカウトを受けた?」

 

「あん?」

 

「『今日の試合は物足りない』『中は退屈しない』。そう言ったよな? 渡辺カレンは……私から見ても中々の実力者だった。それが物足りないって言うなら、裏格闘すらお前の居場所ではないんじゃねえのか?」

 

「……」

 

「いや、中のことは知らないから分からない。分からないが……お前は強い相手を探してる。それなら、まだ中に居た方がお前にとってはプラスじゃないのか……と思ってな」

 

 静かに笑う承久。

 焼き鳥を頬張り、胃に全て収めると、ずい、と体を寄せてきた。

 

「俺ぁな、武術家だ。別にコロシがしたい訳でも、戦争がしたい訳でもねえ。武の追求がしたいんだ」

 

「武の、追求」

 

「おっと、どっかのくたびれた格闘家がいう『自他共栄がどうたら~』とか『人類の平和に寄与する~』とか、どうでもいい御高説を垂れるつもりはねえぞ。この俺の武術が、どこまで高みを望めるのか。それが知りたいだけだ」

 

「……!」

 

()()()()()()()()()()()()、まだ俺の武術は完成してねえ。まだ強くなれる。そう信じてるから俺はお前に乗った」

 

「お前より、遥かに弱い私達のところに?」

 

「そうだ。俺は俺の直感に従った。だから、この行動が最善だと思ってる」

 

「……何だかよく分からないが、期待されてる事だけは分かったよ」

 

「おう。気張れよ」

 

 気付けば、あれだけあった料理はあっと言う間に空に。

 ふぅ、と腹を撫でる二人は、茶で胃を休めはじめた。

 

「それにしたってお前、女癖が悪すぎるだろ……毎日女抱いてねえか?」

 

「オイオイ、お前は俺のオカンか何かか? 武術が強い奴は精力も強いっつーのは通説だろ?」

 

「別に女抱くなとは言わねえけど、もうちょっと控えろってんだよ。あと部屋に女連れ込むんじゃねえ! 壁薄いから丸聞こえなんだよ!」

 

「へーいへい」

 

「馬耳東風かよ……! ったく寝てる間も景安(かげやす)だの、バルボアだの、ヴェロニカだの……寝言うっさかったぞ。抱く相手が多国籍すぎんだろ全く……!」

 

「んな事言ってたのか?」

 

「言ってたよッ!」

 

「……そうか」

 

 茶をすすっていた承久は、ふと窓辺の外を眺めた。

 窓から広がるのは沈みかけた夕日と、それに照らされる住宅街。

 承久は真っ赤に染まった空を、どこか懐かしむように眺め続けるのだった。

 




 オラッ、主人公の裸だぞ喜べオラッ。
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