聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

1 / 26
 国連の命により開かれた緊急招集会議。これに参加した聖龍HEADは国連軍元帥赤犬やその側近、そして数多の武将や悪党達と会合する事に。しかし互いの立場や考えの食い違いから会議は難航の一途を辿る。そんな中、突如として会議場に現れた黒武士の宣告「ミラーガールこと加賀美あつこを殺めて二次元界の全てを無にする」という発言に会議場は騒然と化した。そんな未知数の戦闘力を秘めた黒武士に対抗しようと、会議は対黒武士への対抗策として二次元界と三次元界の戦力を総動員させた【英雄同盟連合軍】の結成に至った。これに対し、国連軍元帥赤犬は次の様に世間に投げ掛けた。
「世界で横行を繰り返す黒武士の脅威を排除するため、誠に遺憾ではあるが……三次元界、二次元界の全戦力を総動員して……これに対処する!!」
 世界の、歴史の全てを無に誘うと断言した黒武士の脅威に、果たして世界は対抗できるのであろうか。

※今回の話は、完全に【ギャグマンガ日和】のパロディです。



現政奉還記 創生の章 昔語り、序幕

[始まった語り]

 

 聖龍隊が世界中の名立たる悪党達と国連軍との同盟軍で、足正義輝に就く黒武士を打倒しようと結束してから数日後。

 そんな聖龍隊の基地で未だ新世代型たちは自分達の意思を繋ぐ共有感知と、闇人の言動を捉える現象が治まる事がなく困惑している状態で世話になっていた。

 聖龍隊の世話を受ける新世代型達と親睦を深めようと、聖龍隊は彼らと談話する場を設けた。

 バーンズたち聖龍隊は、新世代型と何を語らうのだろうか。

 

「そんじゃ、無事に悪党共や国連軍とも同盟連合軍を築けた訳だし、ここは親睦を深め合う為にも座談会を開こうと思う!」

 バーンズが皆の中央で宣言すると、聖龍HEADにスターの名を持つ総合部隊、マン・ヒールズ聖龍隊の面々に新世代型たちが拍手を送る。

「それじゃまずは誰から話を始めてもらおうかな」

 バーンズは座談会の最初の語り手を決めようと、辺りを見渡す。

 そんなバーンズに新世代型の琴浦春香が訊ねた。

「あ、あの……今さら親睦会を開く必要あるんですか?」

 新世代型一同が心中に仕舞っていた疑問をバーンズにぶつける琴浦。そんな彼女にバーンズは言った。

「なあに、お前らにも色々と修司の……オレたち聖龍隊の思い出を聴いてもらう機会を設けたい訳よ。これからの世代を生きるお前らに、聖龍隊の歴史ってモンを知って欲しいのよ」

 バーンズの話を聞いて、新世代型達は静かに床に座り込んだまま場の流れに身を任せる。

 すると此処でミラーガールが、自分の隣に体育座りで座り込むカァチェンに言った。

「ねえ、カァチェン。まずは貴方から何か、みんなに話してみない?」

「え? 私がですか……?」

 突然のミラーガールの提案に、カァチェンは戸惑ってしまう。

 しかし、このミラーガールの提案にその場の皆々は同意した。

「そうだな、カァチェンも少しは人に慣れる為にも皆の前でなにか話してみるのも悪くないな」

「カァチェン、なにか話してみて!」

「緊張しないで、ゆっくり話してみてください」

 キング・エンディミオンに宮内れんげ、そして烏丸さくらがカァチェンに問い掛ける。

 皆の声援に、カァチェンは少し戸惑いながらも遂に話し出す事を決意する。

「そ、そうですか……? で、では、僭越ながら語らせてもらいます」

 慣れない皆の期待を背負い、カァチェンは座談の場にて最初に語り手をさせてもらう事になった。

 

 そして、カァチェンは己の思うがままに語り始めた。のだが

「……そして男がゆっくりと背後を振り返ると……其処には、目玉がくり貫かれた女が血の涙を流して迫っていたのです」

『うわあッ!』『も、もうやめて!』

 カァチェンが語ったのは、なんと身の毛もよだつ怪談話。彼の怪談を聞いて、一同は話を中断させた。

「おいおいおい、カァチェン……お前の怪談、恐すぎるよ……」

 バーンズは血相を変えてカァチェンに怪談話が恐すぎると提言する。

「お、おいカァチェン! お前の話が恐すぎて、姉さんがすっかり怯えちまってるよ!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 カァチェンに彼が語った怪談が余りにも恐すぎて、自分の姉が恐怖で縮こまっていると訴える纏流子。その傍らでは、姉の鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が頭を抱え込んで蹲り何度も謝罪の言葉を泣きながら呟き続けていた。

「申し訳ありません……全ては私が不徳が故に……」

「いやいや、関係ないからね、カァチェン」

「怪談ってのは、相手によっては極端に苦手な人も居るから、気を付ければ良いだけよ」

 自分が不徳なのかと訴えるカァチェンに、ジュピターキッドとカァチェンに語り手を進ませたミラーガールが言葉をかける。

 皆々がカァチェンの語った怪談で、すっかり身が縮み上がった中、座談は次に移る事になった。

「ま、まあ……カァチェンがみんなの様に大勢の前で少しでも話をしてくれたのが何より嬉しかった。では、気を取り直して次の話に行くとしますか!」

 バーンズが進行役を務める一方で、自分の話が余り皆に受け入れられなかった事実に落胆するカァチェン。

 そんな中、聖龍HEADのキング・エンディミオンこと地場衛が言った。

「それじゃ、二番手は俺が話そう。俺と青児、そして修司との昔話だ」

「え? あの盲目の剣士、早見青児とエンディミオン……そして小田原修司の話」

 衛の発言に新世代型二次元人たちは騒然とした。今は両目が潰れて盲目になっても尚、刀で戦える早見青児とエンディミオンそして小田原修司3人の昔話だと聞いて期待に胸踊る新世代型たち。

 

 そんな新世代型たちの期待を前に、地場衛は語り始めた。

 自分と早見青児、そして小田原修司の昔話を。

 

 

 

[議長、怒る(国書編)]

 

 それはまだアニメタウンが国家として当時の国連に認められてない時代のこと。

 当時のアニメタウン市長にして聖龍隊総長、小田原修司(ノーネクタイ)は、仲間である地場衛と早見青児らと共に船で国連本部に向かった。

 船(ボート)のオールを二人で漕ぎ合う衛と青児の前で、修司は仲間のセーラームーンこと月野うさぎが作ってくれた握り飯を頬張っていた。

「あ、なんだよこの握り飯。うさぎの奴、具を入れるのを忘れているよ、具を…………あ、具をグッと入れろ」

「死んでくれ修司」「そうそう、今この場で死んでくれ」

「いや、そんなに寒くなかっただろ、今のギャグ」

 握り飯に具を入れ忘れている事態にギャグを言う修司に死んでくれと告げる衛と青児。

 しかし、そんな二人も握り飯に具が入ってない事態には修司と同感だった。

「いや、だけどホントに具が入ってないおにぎりほど空しいものはないよな」

「責めて塩が有れば良いんだけどな、塩が」

 二人が具なしの握り飯を見詰めて各々思った事を感想していくと、修司はムスッとした顔で愚痴を零す。

「コンニャロ~~……あ、でも塩ならあるぞ」

「えっ、ホントか?」「それは良い、早速出してくれ」

 塩が手元にあると言う修司の言葉を鵜呑みして、衛と青児は塩を出すよう修司に願い出る。

 すると修司は上半身を曝して、一気に自分の肌から汗を噴き出した。

「そりゃっ、パァ~~……」

「「って、お前の汗から精製した塩なんかいるか!!」」

 自身の汗から塩を精製しようとする修司の行動に、衛と青児は激しくツッコム。

「やっぱりね~~!」

 二人からツッコミを受けた修司は次の瞬間、真顔で言い切った。

「では次回をお楽しみに」

「いやいや、まだ国連本部に向かうからね!」

「まだ話は続くからな、オイ!」

 二人のツッコミを聞いて、修司は「マジで?」と訊き返す。

 

 それから小船は進んでいく。

「いや~~、なんだかヌメヌメしてきた……あ、間違えたドキドキしてきた。いよいよ国連議長と会うんだな、俺」

 緊張で胸を高鳴らせる修司に、衛が言った。

「それなんだけど修司。一応、お前がアニメタウン市長兼聖龍隊総長の小田原修司だって事は隠しておいた方が良いんじゃないか」

「え? え? そ、そうだな、そうかも……」

 衛に問い詰められ、修司は自分の顔を擦りながら言った。

「そうか、そうだよな……俺、いま肌荒れているし」

「「お前の肌は関係ないんだよッ!」」

「え、そうか、そうなのか」

「ただれろ! 俺達が言っているのは、そういうことじゃなくて……」

 自分の肌の荒れ具合を説く修司に二人同時にツッコム二人。そして修司に物申した衛は修司に問い質した。

「お前、一応はアニメタウンの主要人物な訳だろ」

「ただれて堪るか」

「アニメタウンの主要人物が、護衛も無しに危険だろ? 俺や衛だけじゃ、心許ないし」

 修司が自分の肌を気にする一方で、衛と青児は修司に危険性を訴える。

 すると修司は二人の話を聞いた上で一つの提案を申した。

「それじゃ俺はアニメタウンにまだ居る事にして、お前達に国書を託した事にしようじゃないか。紙とペン無いか、ここで国書書くから」

「あ、待ってくれ。いま探す……」

 青児が修司に返事した直後、二人は筆記用具が手元に無いか探した。

「あっ、ペンじゃなく筆があった」「でも墨汁が無い」

 この二人の発言に修司は怒った。

「おい! なんでペンじゃなく筆を持っている訳!? それでいて墨汁だけが無いって……それでもお前ら、墨汁戦隊スミレンジャーのブラックとホワイトか!?」

「何なんだよ、その墨汁戦隊って!」

「どっちがブラックでどっちがホワイトだ!」

 修司の台詞に衛と青児がツッコムと、修司は唐突に語り始めた。

「レッドはお前達のこと期待してたんだぞ」

「「だから知らねえって!」」

「レッドことフィッシュ竹中さんは墨汁のプールを異様にスイスイ泳げる」

「「だから誰なんだよフィッシュ竹中って!」」

「この前、溺れた」「「溺れたんかい!」」

 修司の話に二人はツッコミしっ放しだった。

 

 そしてボートは進む。

「いやぁ、墨汁が無いと書けないよ……墨汁、無いかなぁ」

 修司が国書を執筆する為の墨汁を欲する中、彼は目の前でボートを漕ぐ衛を見つめていた。

 そして次の瞬間、修司は衛の腕を掴むとその腕を雑巾の様に搾り出した。

「って、イテテテテテ! 出る訳ねえだろ、墨汁なんか!」

 衛は勢い余って修司の顔を殴り付けた。

 衛に殴られた修司は、衛に弁論した。

「だ、だって絞ったら出そうな気がしたんだもん」

「出る訳ないだろ墨汁なんて!」

「でも実際絞ったら出るもん。フィッシュ竹中さんは絞ったら」

「マジで!?」

「血が」「血ィかよ!? 血は誰でも出るよ!」

 この衛の一言に、修司は真顔で衛に言った。

「そうか、この際字が書けるなら墨汁じゃなくても良いんだ。衛、ちょっと血ィ出せ、顎から」

 と、修司が衛に顎から血を出すよう言い付けていたその時。

 三人が搭乗するボートの真横、その対岸で二人のイチャつくカップルの姿が。

イチャイチャと周りなどお構いなしにイチャつくそのカップルは修司たち三人も見知っている、【マーメイドメロディー】のひっぽとユーリの二人だった。

 このイチャつくひっぽとユーリを目の当たりにして、修司は怒りに満ちた表情で言った。

「良かった……衛が血を出さなくても済みそうだ…………とても血色のいい男がおった……!」

 カップルを見て苛立つ修司に同感していた衛と青児も真顔で修司に言う。

「ビンなら此処にあるから、これに血を入れて来ればいい」

「1リットルぐらい取って来ても大丈夫だと思うぞ、おい」

 そんな二人の同意を得て、3人はひっぽとユーリに近付こうとボートを岸に寄せ始める。

「もっと寄せろ、衛、青児! この距離からじゃ必殺技のフライングセッシュポセイドンは届かない!」

「な、何その技!? ポセイドン?」

 と、修司や衛たちが必死に慌てていると、青児がカップルを視認して慌てて告げた。

「あ、ヤバいぞ修司! あの二人、チューしようとしてやがる!」

「なにィ!? 俺様の目の前でチューしようとするとは……これだから最近の少女漫画は接吻のシーンが多いって論争が起きているんだよ」

「そんな事は良いから、今はまず必殺技を! ポセイドンを!」

 修司に必殺技を急かす衛。

「この距離ならきっと届く、修司お前ならできる!」

「そ、そうか……な、何を根拠に」

 と、修司が衛の提言に戸惑っていると、次の瞬間二人は修司に向かって叫んだ。

「「跳べ! 早くッ!」」

 二人の呼びかけに、ついに修司はボートから飛び出して対岸のひっぽに必殺技を繰り出そうとした。

 が、やはり距離は届かず修司は海に落ちた。

「あっは~~ん……」

「あ、やっぱ届かなかったか」

「あの距離からじゃ、流石に届かなかったな」

 海に落ちた修司を見て、衛と青児は呆れ返る。

「やっぱってなんだよ! お前ら、いま飛べって言ったじゃないか、もうイヤぁ~~」

 と、衛と青児の残酷な言葉を受けて嘆く修司の元に、カップルであるひっぽとユーリが声をかけてきた。

「あの……」「大丈夫ですか?」

 そんな自分に声をかけてきた二人に、修司は水の中から訴え掛けた。

「同情するなら、ポコボコ……くれ」「え?」

「同情するなら墨汁をくれェ~~!」

「えーーーーッ! な、何か知りませんけど……家から墨汁持ってきます」

「あ、そうか、それならついでに塩も持って来てくれ」

「塩も!? わ、分かりました、今すぐ持ってきます」

 修司から墨汁と塩を要求されたひっぽは、素直に家から墨汁と塩を取りに行ってくれた。

「なんだよ、あのペンギン……思ってたよりもいい奴じゃないか」

 修司は感激のあまり涙を流した。

「大丈夫か、修司」

「無責任に飛べとか言ってすまん」

「お前達は思ってたよりもイヤな奴だよ」

 一方で無責任に跳べと発言した二人に、修司は呆れ果てた。

 

 そして三人は、イチャイチャしていたひっぽとユーリから墨汁と塩を手に入れた。

「さてと墨汁と塩は手に入った。なんて国書に書こうか……取り敢えず俺のデンジャラスかつグラマーな生い立ちでも書いておくか」

「いや、そんなこと国連議長に伝えてどうするんだ」

 修司の執筆内容に軽くツッコム衛。

「それじゃこの前、衛が寝言で「もっと揉め」と言ってた事でも書くか」

「だから、そんなアホなこと書くなって……って、ええ!? オレ、そんな事言ったのか? ウソだろ、ウソだよなオイ」

 修司の発言に戸惑う衛。

「それじゃ後は俺が昨日見た夢ぐらいしか書く事ないなぁ」

 そう呟く修司は、昨晩見た衛と青児が合体した異様な存在を思い出していた。

「何でだよ! 他に書く事いっぱいあるだろうがッ!」

 衛がツッコむ中、修司も考える。

「う~~ん……あ、あのさ、俺正装の時もクールビズを意識して、あまりネクタイは締めない主義なんだけど……それお前達に言ってたっけ?」

「ああ、それなら随分前に聞かされた」

「俺も聞いている」

 衛と青児の返事を聞いて、修司は真剣な顔で白紙に向かって国書を記そうとする。

「ふむふむ…………」

「「って、それを書いてどうする!」

「え? ダメ?」

 二人からの激しいツッコミを受けて戸惑う修司。

「もっとこう、国家的な話題を書けよバカ」

「バカって言うな、バカって」

「そもそも修司は国連に向けて、何を訴えたいんだ」

 青児に問われて、修司は焦りながらも答えた。

「まずアニメタウンが日本より完全に独立した、独立国家だって事を認めてもらいたいってのがあるな」

「「それだ!!」」

「そういう真面目なこと書いときゃ良いんだよ最初っから、エーーこの芋虫が!」

「このバカちんが」

「お前ら、どんどん原作じゃ絶対に言わない言葉まで言い出し始めたな」

 衛と青児の言動に驚きつつも、修司は国書をたしなめた。

「どう?」

「日いずる処の天子、書を 日没する処の天子に致す つつがなきや」

「へぇ、洒落た書き出しだな」

 二人が国書の内容に納得しているのを見て、修司はまた言い切った。

「では次回をお楽しみに」

「「もう? もうすぐ国連本部に着くんだよ? これからだよ?」」

「マジで!?」

 

 二人からまたまたツッコまれた修司は、早速国連本部へと足を急がせる。

「いよいよ国連議長と会うのか……」

 果たして、国連議長との対談は上手くいくのか。

 

 

 

[議長、怒る(続きです)]

 

 小田原修司(ノーネクタイ)一行は、船で国連本部へと向かった。

 歴史的に重要な国書も完成し、遂に国連本部へと到着した。

 

「うわーー、遂に来ちゃったよ国連本部。緊張するな」

 と、緊張する修司と共に、衛と青児の二人も本部へと出向く。

 そしてアニメタウンからの使者の来訪はスグに議長へと伝えられた。

「議長、アニメタウンより使者が参っています」

「アニメタウンから?」

 秘書が伝えに行った議長は、タコの様な生き物だった。

「アニメタウンからの国書を賜っているようです」

「よし、通せ」

 実はこの時、国連議長の様なタコの様な生物は内心こう思っていた。

(グヒヒ、バカな連中だ。実はこのワシが議員や秘書たちの記憶を操って改ざんさせて議長に成り済ましているタコタコ星人とは夢にも思うまい)

 あからさまに議長は偽物だった。

 

 そんな議長の前に修司と衛と青児が謁見しに来た。

「アレが国連の議長か……思ってたのと随分違うな」

「なに考えているか分からないですし、やはり修司は正体を隠しておいた方がいいな」

 ひそひそ話で会話する修司と衛。

「そうだな、それじゃ……小田原エレクトリック修司というのはどうだろう?」

「それじゃ小田原修司ってのがバレバレじゃないか!」

 そんなヒソヒソ話する修司と衛たちを見て、議長(偽物)は思った。

「なかなか挨拶せんのう」

 と、偽の議長が挨拶を待ち侘びている最中も、修司と衛は言い合っていた。

「それじゃ小田原グレート・ハンサム・ザ・修司というのはどうだ?」

「ほんっとバカだなお前」

「ムッキーー、またバカって言いやがったよ。お前、1日に何回バカって言えば気が済む訳!?」

「十回は言いたいな」

 そんな言い争う二人に、遂に偽の議長がキレた。

「挨拶しろよ、オイ!」

 これに冷静さを取り戻した修司達は、修司が不満な中を衛と青児が丁寧に自己紹介する。

「あ、失礼しました議長。じ、自分は聖龍隊の地場衛といいます」

「同じく、早見青児と言います」

「「そして此方にいるのが……」」

 二人は同時に修司の偽りの紹介をした。

「「ウンコ大好きウンコ丸です」」

 この紹介に修司は大激怒。喧嘩が勃発した。

「どういうネーミングセンスしとるんじゃ己らーー!!」

「わあっ、仕方ねえだろ、他にいい名前浮かばなかったんだから! もう、喰らえっ」

「わあ、わあ、わあ、わあ……!」

 すると、この喧嘩を前に呆れ果てた偽議長は三人に問う。

「もういいから、国書の方見せてくれないか?」

 すると衛と青児は修司にやり返しながら返事した。

「あ、待ってください、今やっつけるんで」

「ぎゃーーーーーー!」

 衛と青児は修司の瞼を引っ張って、反撃していた。

 

 そして修司達は遂に偽の議長に国書を手渡した。

「うむうむ、これがアニメタウンからの国書か」

「ベロンベロンになっちゃった。もうこれ、まぶたじゃない」

 偽議長が国書を読んでいる間も、修司は伸び切った瞼を認識して唖然とする。

 と、その時。国書を読んでいた偽議長に変化が。

「……なんだ、この国書は? こんな無礼な国書があるか!」

 と、偽議長は国書を修司達の方に投げ付けた。それをまずは直撃を喰らいそうになった衛が手で軽く横へと弾き返す「議長! どうしたんですか?」続いて青児も手で軽く横へと弾いて「何か、不適切な表現でも?」と偽議長に問い返すが、投げ付けられた国書は最終的に修司の顔面へと直撃した。

「大有りだ! まずはこの国連本部を日没する処と書くのが気に食わん! それに対してアニメタウンは日いずる国だと書き表しているのが気に食わん! 宇宙人だと思って舐めるんじゃねえぞオイ!」

 遂に自分が宇宙人だと認めた偽議長は、更に三人に告げる。

「地場衛に早見青児、それからウンコ大好きウンコ丸だったな! 二度とその面見せんな! ……ってゆーか、倒れるの遅っ」

 偽議長はゆっくりゆっくりと倒れていく修司を指摘しながら、三人を追い返した。

 

 そして国連本部より追い出された三人は、途方に暮れながら町の中を歩いていた。

「チックショーーーー、なんであんなに怒っちまうんだ? マジでむしゃくしゃする」

「そっかぁ、ここではああしてた方が得策だったのか」

「ミスっちまったな、此処まで来て」

 怒りに震える修司に反して、冷静に何がいけなかったのか考え付く衛と青児。そんな二人に修司が問う。

「で、結局のところ何がいけなかったんだ? 俺の歯並びか?」

「テメェの歯並びはどうでもいいんだよ!」

 怒鳴り返す衛は、修司にも分かりやすいように説いた。

「国連本部では、本部こそ世界の中心。その他はどうでもいいって考えが、この地には根付いているんだよ。従って、日没するところと書いたのは却って国連本部に大変失礼な記しで、日出ってアニメタウンを記したのが国連本部を大変見下した記しになっていたんだよ」

「もっとへりくだって文書を書けばよかったな修司」

 と、衛の説明を聞いて青児が修司に言うが、修司はほとんど衛の話を聞かず、可愛いワンちゃんに近づいて行ってた。

「ヘイ、お手」

「って、人の話を聞かんかい、このアホがーーッ!」

 修司が犬にお手をさせようとした所に、衛が大回転キックを修司に喰らわす。これに修司は「だってワンちゃん可愛いんだもん」と訴える。

 そしてその犬が、キックを受けて地面に仰向けに寝転ぶ修司の顔面の眼球の上に逆立ちしようとしているところから、衛と青児は唱え始める。

「今は取り乱している暇はないな。早く議長のところに戻って謝らないと」

「ああ、下手したら国連とアニメタウンの間で亀裂が走る……なにか、こう手土産の一つでも持ち寄って謝罪しないと」

 そんな二人に修司が、顔面の両目の上で犬が逆立ちをして視界が塞がれた状態で言った。

「で、でも、衛に青児……手土産って言ったって、ひっぽの奴からもらった塩ぐらいしか手元にないぞ。ギャーー」

「「早く退けろよ犬を!」」

 二人が犬と戯れている修司にツッコミを入れつつ、三人は持参していた塩を手土産に国連総長の元に戻った。

 

 再び国連本部。

「なんだ貴様ら、二度とその面を見せるなと申した筈だぞ」

 怒り心頭の議長(偽物)の前で、修司と衛と青児は困惑してた。

「うわあ、めっちゃ怒ってるよ」

「修司、ほら、早く謝って」

「なんで俺が謝らなきゃならないんだ」

 ここで三人の激しい言い合いが勃発した。

「お前らのどっちかが先に謝れよ」

「俺たちにはイケメンと言う名のプライドがあるから」

「俺にだってプライドのプの字ぐらいはあるぞ……!」

「修司のプの字はプー太郎のプの字だろうが」

「誰がプー太郎だ、このぉ……殺生だぞ」

 そして遂に三人は組み合って、一つの輪っかになりながらも言い合った。

「お前らが先に土下座しろよ、オイ……!」

「い、いいや、そうはならんだろ!?」

 偽の議長は取っ組み合って輪っかになる三人を前に驚愕した。

 と、こんな輪っかな状況下で青児が修司に言った。

「あ、そうだ。修司、議長に手土産があった筈だろ。先に渡したらどうだ?」

 青児に言われて、修司は思い出したかのように塩の入った壺を議長のところに持って駆け出した。

「そうだった。あのこれ……良かったら……」

「フン、土産ごときくらいで我の機嫌が直ると思ったら大間違いぞ……」

 と、修司が偽議長の方まで持って運ぼうとしたその矢先、修司は赤絨毯に足を引っかけて転んでしまった。さらに持っていた塩の入った壺が偽議長に直撃、偽議長は塩を被ってしまった。

「ギャーー、ば、バカな……我の唯一の弱点が塩だとなぜ分かったぁ!?」

「「「そうだったの!?」」」

 塩をかぶって丸い体から蒸気を発する偽議長の告発を聞いて驚愕する修司たち。

「く、クソ……こ、こんなアホなジャップ共の為に……む、む、む、むね……極端に無念」

「「「死んだーー!!」」」

 弱点の塩を浴びて絶命してしまう偽議長タコタコ星人を前に、驚愕してしまう修司たち三人。

 だが、この偽の議長の死により、洗脳されていた人々の記憶は元に戻り。

「あれ? 私はここで何を……?」

 秘書や議員達の記憶はすっかり元通り。

 後にとある島の収容施設の奥で、本物の議長が見付かり、救出されたが。

 

 修司達は本物の議長が死んだと思って、急いで国連本部から逃げ出した。

「「「ひええぇえっ!!」」」

 そして慌てて逃げ出した三人は、しばらく走った後に止まって息を休めた。

「はぁ、はぁ……」

「と、取りあえずコレで国連本部への御使いは終わった訳だな」

 乱れてた呼吸を整え、衛と青児は改めて国連本部がある方角を見つめて想いに浸る。

「「さよなら、国連本部」」

 そんな二人に、修司が真剣な顔で言った。

「衛、青児………………家に帰るまでが、遠足だからな」

「「って、遠足だったのぉ!?」」

 

 修司の言動に最後の最後まで驚かされた衛と青児のお話でした。

 

 

 

[小田原修司の楽しい木造建築]

 

「続いては、僕らが話します」

 そう言って、地場衛と早見青児の次に昔語りを語ろうかと挙手したのは、奴良リクオと澤田綱吉の二人だった。

 二人は小田原修司の昔話を語ってくれた。

 

 

 ある日の事、修司は忙しい仕事の中、アニメタウンのとある場所に向かっていた。

「最近、仕事が多忙ですっかり忘れてたが……建設中の聖龍寺は完成してるかな?」

 聖龍隊の権威を示す聖龍寺の建造を楽しみに来訪する修司。

 だが寺が建っている筈の空き地には、未だ小屋すら建っていなかった。

「ひどく小ざっぱりしてる~~!」

 一驚した修司は、建築を担当させている凄腕技師のニュー・スターズ総部隊長フロートに声をかける。彼は瓦礫や木片だけでも素晴らしい作品を拵える腕を持っている。

「ちょっと、ちょっとフロート。お前に託していた聖龍寺の建築全然できてないじゃないか」

「ああ、そいつなら、ちょいと手詰まりでね……何しろ総長、材料持って来てくれねェんだもん。いくらおれが腕利きの技師と言えど、材料がなきゃ造れねえよ」

「お前の事だから、瓦礫とか木片でも十分に建造できるだろ」

「いくら何でも限度ってもんがあるぜ。その辺の木材で地道に建ててたら、あと30年はかかっちまう」

「えーー、困るよそれ! もうできていると思ってセブンズ・ガードに就任したばかりのツナとリクオに招待状出しちまったんだぞオイ」

 

 その頃、奴良家では。

「郵便でーーす」

「ホゲェ、修司さんから招待状が届いているよ」

 と、其処に同じく招待状が届いた為に困惑しているツナこと澤田綱吉が飛び込んできた。

「リクオくーーん! 大変だ、招待状が、招待状が……!」

「ああ、君の所にも届いたのか。だけど窓から突っ込んでくるのは流石にやめて」

 二人の招待状の中身は、以下の程だった。

「アホのツナ&リクオへ 聖龍寺ができました、ざまーみろ おみやげを持ってこい、いいお土産を持ってこい P.S お風呂上がりの耳掃除は、実に爽快だ」

 この招待状を読んだ二人は、冷めた顔で語り合った。

「ムカつく、聖龍寺だってよ」

「どうせ来なけりゃ来ないで後々面倒だし、適当に行って帰るとしますか」

 

 一方、未だ聖龍寺ができてない現場では。

「とにかく寺を建てるんだ! この際、小屋でも何でもいいから!」

「こ、小屋だけで良いんすか?」

「急げ! 明日までに造るんだ!」

 修司はフロートを急かして小屋を建造させてた。

 

 そして翌日の事。

 ツナとリクオは揃って聖龍寺に向かっていた。

「総長に会うの久しぶりだな。あ、いけね、おみやげ忘れた」

「まあ、この辺の草とかでも良いんじゃない? あとついでに石ころも少々……」

 ツナとリクオは道端の草や小石を袋に詰めて、それをお土産にしようと持っていく。

 そして二人は招待状と共に送り付けられた地図を見て聖龍寺を探す。

「地図だとこの辺だよな、聖龍寺」

 そして二人が発見したのは小さな小屋。

「これじゃないよな聖龍寺」

「なんか書いてあるけど違うよね」

((ここに総長が居れば信じるしかないけど……))

 そんな二人の懸念は的中してしまう。

「居ったァ、なんか歌っているし。ギターの位置、低ッ」

 なんと修司は聖龍寺と下手な字で書かれた板が貼り付けられた小屋の前、そこに積まれた木材の上に座ってギターを空演奏していた。

「やあ、待ってたぞ二人とも。弾き語りしながら」

「いや、弾き語っていませんでしたよね。ギターの位置、低すぎるし」

「実は今日始めたばっかりなんだよ」

「そうなの!? でも流石にギターの位置低すぎだっての解るでしょ!?」

 ツナとリクオの返答に修司はむしゃくしゃした。

「何だよ、折角演奏して出迎えようとしたのに……ギターなんかもうやめてやるよ!」

 修司は首にぶら下げていたギターを木材に叩き付けて破壊した。

「「もうやめた!?」」

 そんなギターを破壊する修司を前に、ツナとリクオは愕然とした。

 

 そして改まって修司は二人を寺(小屋)に迎え入れようとする。

「まあ、取り敢えず入って入って。出来立てほやほやの聖龍寺だぞ」

 だが修司は此処で大事な事を思い出した。

「あ、待った。おみやげは持ってきただろうな」

「え、やっぱ要ります?」

 リクオが問い返すと、修司は叫んだ。

「当たり前だろ! タダで聖龍寺に入れると思うなよ!」

「じゃあ、どうぞ」

 修司は二人から袋を受け取った。

「こちとら、これだけが楽しみで……あ、おめぇら……」

 二人から受け取った袋の中身が草と小石だけだと知って、愕然とする修司。

 

「謝りますから、そんなにへこまないで下さいよ修司さん」

 リクオが修司を励まそうと声をかけるが、修司のメンタルは繊細であった。

「草ってお前ら……石ってお前ら……!」

 三人でコタツの中に入って座卓を囲む中、修司の悲愴は絶えない。

 そんな修司にリクオは内装を取り敢えず褒めた。

「で、でも部屋はイイ感じですね総長。落ち着きがあって」

「そんなにいい?」

「あ、機嫌治った」

「リクオ、君なかなか寺を見る目があるね」

「いや、寺じゃねえし」

 機嫌が直った修司は、二人にお菓子を勧めた。

「あ、お菓子あるけど食べる? ちょっと臭いけど……」

「いりませんよ……ああ、なにこれ!? 獣臭い!」

「何だよ美味しいのに、むしゃむしゃマズッ!」

「マズいの?」

「カニの食べられないところみたいな味がする。呑み込めないほどマズイ! リクオ、ツナ、悪いけど台所でお茶入れて来てくれ」

「えーー? 僕らが入れてくるんですか?」

「僕ら客人ですよ、本来は修司さんが入れてくるのが正しいんですよ」

「ほざきやがれ、俺は総長なんだぞ」

 上から目線でモノをいう修司に呆れながらも、二人は渋々お茶を入れに行く。

「まったく偉そうに」「偉いね君達」

 愚痴を零す二人に対し、修司は目を輝かせて褒める。

 

 そしてお茶を入れた二人は、茶の間に戻る事に。

「臭かった~~、台所からカメムシみたいな臭いがしてきた。大丈夫なのか、この聖龍寺」

 と、ツナが愚痴を言いつつもお茶を運ぶ二人の前に、「お風呂」と記載された扉が目に入った。

「あ、風呂まで。なんで台所に風呂があるんだよ聖龍寺。どんなんだろ」

 気になった二人は浴室を覗いてみると、そこには湯舟に浸かる人物が。

「奴良ヌルオ、沢田アミヨシ」

 自分達を見て間違った名を言う謎の存在に、リクオと綱吉は慌てて修司の元に戻った。

「総長、総長! お風呂に変な人が!」

「ああ、彼はフィッシュ竹中さんだよ。竹中さんにはお前達のこと教えてあるよ」

「いや、僕たち名前間違えられましたけど。ヌルオって呼ばれました」

「僕なんかアミヨシって聞いた事もない名前で呼ばれた!」

 二人が訴えると、修司は素直に謝った。

「ごめん、俺が間違って名前教えちゃったよ」

「なんでだよッ!」

「お前等の名前……覚えにくいんだよ!」

「覚えやすいよ。ジャンプキャラでは覚えやすい名前だって自負していますけど」

 二人の返答に修司は渋々答える。

「じゃあ、後で訂正しとくよ。ヌルとかりくっちとかで良いだろ」

「「良い訳ないだろ!」」

 二人が強く反論すると、修司はまたしても機嫌を損ねた。

「ああ! もう、それより良いから早くお茶くれお茶を!」

「クッソ、ムカつく……!」

 腹が立ったリクオはコタツに湯飲みを置く際、わざと親指をお茶の中に入れて湯飲みを置いた。

「はい、お茶」

「もーーれつに指が入っとるーー!」

 熱々のお茶の中に指を入れて、鬱憤を晴らすリクオの所業に修司は唖然とした。

「流石は俺の推薦でセブンズ・ガードに入った猛者だけの事はある。露骨に地味な嫌がらせするな」

 と、修司が改めてセブンズ・ガードの二人の実力を認めると、茶を置いた二人はそのまま帰ろうとした。

「じゃ、僕らはこの辺で帰りますので」

 親指を真っ赤にしながらリクオ達が帰ろうとするのを、修司は制止する。

「え、もう帰っちゃうの? 泊まっていきんしゃい、布団もあるよ。変な臭いするけど」

「「泊まりませんよ! それに何なの? 布団まで変な臭いって」」

「ええ、そんな枕投げを期待していたのに。楽しみにしていたのになぁ。ねぇ、一生のお願い」

 修司が目を輝かせているのを見て、綱吉が修司に言った。

「それじゃ、その枕ちょっと貸してください」

「うん、いいよ」

 修司が枕を投げ渡すと、綱吉は軽く修司に投げ返した。

「それじゃ僕らはこの辺で」

「待って~~~~!! どこの世界にこんな悲しい枕投げがあるんだ!」

 颯爽と帰ろうとする二人に、飛び出てきた修司の拳がそれぞれの後頭部に直撃する。

「こちとら一生のお願い使ってんじゃボケェ! もっと本気でガンガン攻めてこんかい!」

「でも修司さん、枕でも本気で投げれば痛いですよ」

「見くびるな! 枕だろうが石だろうが華麗に避けたるわい!」

 これを聞いたツナとリクオは、躊躇う事無く土産に持ってきた小石を掴んでは、同時に修司の顔面に投げ付けた。

「そうですか、では遠慮なく」

「(ゴスッ)ポピーー!」

 

 因みにアイスランドポピーの花言葉は慰め

 

 修司は口から夥しい量の血を噴き出して悶絶した。

「直撃じゃないですか総長、避けてくださいよ」

「石はやめろ、石は」

「だって避けるっていうから……」

「分かった、もう何でもありのルールで良いんだな」

「もう帰ってもいいですか?」

「それなら、受けてみろ……思い知れ、湯飲みマッスルアタック!」

 修司は先ほど出された湯飲みをそのままリクオとツナに投げ付けた。

「「危なッ!」」

 二人は首を逸らした事で、直撃を回避した。

 そして柱に激突した湯飲みは散り散りになって、その破片が修司の額に突き刺さった。

「はやーーッ!」

 二人の回避の速さに驚きつつも、額に破片が深々と突き刺さった修司は血を流す。

「もうマジで……マジで許さんぞ、リクオ、ツナ」

「えーー、だって今のは総長の自業自得でしょ」

「黙れ! 俺の辞書に自業自得なんて文字は載って無いんだよ!」

「なんて自分勝手な辞書なの!?」

「自分勝手なんて文字も存在しない……喰らいやがれ!」

 修司は体を丸くして、必殺技を放った。

「超必殺、新時代到来アタック!」

「暴れないでください、こんな狭い部屋の中で」

 リクオが制止するが、部屋の中を動き回る修司を制止するまでには至らなかった。

「文化遺産の重みを知れッ! ……あ、避けられた」

 リクオと綱吉はドヤ顔で体当たりしてきた修司を身を逸らしてかわしてみせる。

「背中イタっ」

 そして修司は背中を激しく壁に強打して蹲る。

 と、修司が壁に激突した瞬間、三人がいる聖龍寺が突如として揺れ出した。

「え、なんですか、地震?」

 リクオ達が動揺していると、修司は慌てて言った。

「あ、ヤバイ! 聖龍寺が崩れるぞ!」

「「崩れるの!?」」

「実はこの聖龍寺、急ピッチで造ったから柱とか色々グラグラなんだよな」

「「グラグラなのォ!?」」

 驚愕する二人の前で、修司は崩壊寸前の聖龍寺の中で叫んだ。

「あーー、こんな事ならこの二人相手に必殺の技使わなければ良かった!」

「それより総長、早く逃げ出さないと……」

 と、次の瞬間、聖龍寺は綺麗に倒壊した。

 

 刻限は既に夕方を過ぎて夜。夜空には綺麗な綺麗な月が照らしてくれてた。

 そんな月の光に照らされる中、二人と一緒に月見をしている修司はリクオとツナに言った。

「俺は、諦めないぞ、リクオ、ツナ……頑張ってギター、続けてみるよ」

 しかしリクオと綱吉はツッコむのも疲れてしまっていた。

 

 

 

 

[富士山]

 

 新世代型たちが聖龍隊が話す昔語りを聞いて、呆然としている所に。

「今度はオレ達が話すよ」と、バーンズと聖龍HEADの面々が昔語りをしてくれた。

 

 

 聖龍隊が闇人が従える異世界の脅威から、全てを守護した後日のある日。

 彼らは日本で有名な富士山を登っていた。

「はぁ、はぁ……もうすぐ頂上だ」

 と、修司は岩肌をよじ登っていた。

 が、次の瞬間、修司は掴んでいた岩肌から手が離れて滑り落ちてしまう。

「わっ、これまでか! 何だか走馬灯の様なものが見える……!」

 と、修司が緩い斜面を無意味に滑り落ちている所に兄弟分のジュニアが呆れながら声をかける。

「そんなよじ登るほどの斜面じゃないよ義兄さん。まだ二合目だし」

「なにっ、まだ二合目? バカな、俺はオカズがカレーならご飯五合は軽く平らげるのに……」

「お前のカレー具合はどうでも良いんだよ! まだ登り始めたばっかなのに、富士山の頂上に着ける筈がないだろうが」

 カレーなら五合は軽く食えると豪語する修司に、バーンズが激しくツッコミつつも説き明かす。

「そんな、まだ二合目だと聞いてドッと疲れた。なんで富士山なんか登っているんだ俺たち。誰だよ、富士山登ろうなんて言った奴は」

 と、修司はくどくどと文句を言い始める。

 

 一週間前のこと。

「来い! 全員集合っ! 聖龍隊集まれっ」

 修司が聖龍隊に号令をかけた。この頃の聖龍隊は、まだ初期のHEADしか滞在してなかった。

「何をそんなにバカ騒ぎしてるんだい。良いから市長と総長としての仕事してよ、バカのくせに」

「バカって言うな! バカって。俺はちゃんと考えているんだからな、凄いこと思い付いたんだからな」

「どうせ犬と猫の先祖は同じって気付いたんでしょ?」

「違う……え、そうなの? 犬と猫の先祖って同じなの? オオカミとヤマネコじゃなくて?」

「ああ、正確にはオオカミとヤマネコの前の先祖が同じ動物なんだって。群れで生きるか単体で生きるかで進化が分かれたっていうらしい」

「へぇ、そうなのか……って、俺が言いたい事はそうじゃなくって!」

 ジュニアと言い合った修司は真説を皆に語り始めた。

「最近、俺らっていうか、聖龍隊そのものが腑抜けっていうか、たるんでる様な気がするんだよな。だからこう、みんなで一緒になって取り組めるなんかイベントみたいな行事をやろうかなって思っているんだけど」

「わあ、それなら良いんじゃない? やろやろっ」

 修司の提案に獅堂光は笑顔で賛同する。

「よし、みんなも賛成の様だし、何をするか。取り敢えず、みんなの黒歴史を暴露するってゲームなんかしない?」

「修司、それみんなが自決するレベルだし、やめようぜオイ」

 提案に対して衛は反対の意見を出す。

「そっか、それじゃ俺たちは何をしようか……ん?」

「なんだよ、急に俺の顔見やがって、気持ち悪いな……心底気持ち悪い、見るんじゃねえぞ、オイ!」

 修司は衛の顔を見続けて、咄嗟に閃いた。

「そうだ富士山だ! みんな! 富士山に登るぞ!」

「ええっ、何で俺を見てそんなこと閃いたの!?」

 修司の閃きに衛は愕然とするしかなかった。

 

 そして時と場所は戻り富士山二合目。

「そうか、俺が富士山に登ろうかと言い出したんだっけ。でもそんなの知らないもん、全部衛のせいだもん」

「駄々ッ子か、お前は!」

「顎にGoって書いてあったもん。目が富士になってたもん」

「何の話をしている!?」

 と、修司と衛が言い合い、聖龍隊の皆がそんな二人の言い合いを傍観している傍らを通り過ぎようとする若者が一人。

「よいしょ、もう二合目辺りかな? あれ、人だ。しかも大勢……こんな早朝に富士山を登る人間が僕以外にもいたんだ。今日の一番乗りは僕かと思ってた」

「何だよ、俺たちだって一番乗りを目指して朝早くから富士山登ってるんだぞ、オイ」

 この時、修司と若者の脳裏に「まさか!」という言葉が浮かんだ。

 そして互いに睨み合う両者。

 すると若者は自らのたくまし過ぎる脹脛を修司に見せ付けた。

「うぎゃーー! なんてふくらはぎ! ああ、もう走馬灯の様なものが見える……」

 修司は走馬灯の様なものを思い浮かべながら、再び緩い斜面を滑り落ちる。

「そんな事で死にかけない!」

「あ、あれ、あの人。スタスタと登り始めた」

 アッコからツッコミを入れられ、春日結が若者が登山を再開したのを聞いた修司は急いで後を追い始める。

「なにっ、あんな足お化けに負けてたまるか! みんな俺についてこいっ!」

「なんだ、まだ登れるじゃないか」

 若者を追う修司を見て、ジュニアが呆れ果てる。

「待てぇ、俺たちを誰だと思ってるんだ。聖龍隊だぞ、あの聖龍隊だぞ」

 先に行く若者に修司が叫びかける。

 すると若者は修司を見下してこう言った。

「このザ・健脚くんを越えられますかね。そんなヒョロヒョロの体で」

「何ィ!!」

 この台詞に修司は深く傷ついた。

「クッソぉ、あいつめバカにしやがって! うおぉ~~」

「ちょっとした事で一々簡単に滑り落ちるなよ、緩やかな坂道を!」

 健脚くんの一言で滑り落ちる修司にバーンズがツッコむ。

 と、ここで滑り落ちていた修司が止まると、彼は不意に思い出す。

「だが聞いた事があるぞ。ザ・健脚くん、物凄く足を鍛えてその足を人に見せ付けているが、なぜか全くモテないというらしい」

 此処で修司は聖龍隊のみんなに忠告した。

「みんな、よく聴け。あの健脚くんもいづれ、俺達同様、歴史に名を遺す二次元人になるだろう」

 実際にはなれませんでした。

「ほ~~ら、俺の脚はもうこんな所まで登っているぞっ」

「あ、待ちやがれ! このキモ足野郎!」

 と、少し先を順調に登っている健脚くんに修司が暴言。

 すると次の瞬間、健脚くんは一気に滑り落ちた。

「うわ! てめぇ、登山者の心を傷つけて良いと思っているのか!?」

「こっちもちょっとした事で滑り落ちてきた!」

 健脚くんもまた修司同様、ちょっとした事で緩やかな坂道を滑り落ちてきた事に火野レイたちは一驚する。

 修司はこの隙を逃さなかった。

「よし、今の内に距離を引き離すぞ、諸君!」

「そんなに急ぐと頂上まで持たないよ」

 皆の忠告を無視して山道を駆け登る修司。だが再び転んでは滑り落ちた。

「うわ~~!」「また滑り落ちた!」

 皆が驚いていると、そこに先ほどの健脚くんが追い付いてきた。

「やっと追い付いたぞ。おや、また倒れてるよ何故か。しめた! 今のうちにあばよ!」

 健脚くんは先に行ってしまわれた。

「あ! こら待ちやがれ、キモ脹脛、キモハギ! あれ、全然平気で登っていってる」

「冷静に考えれば俺の脚はキモくない。むしろ男らしい素晴らしい脚だ。もう惑わされんぞバカめ」

 修司からの悪口を受け付けなくなった健脚くん。

 

 それから九合目。

「あ~~はっは、もう九合目だ。勝負がついたようだな!」

「クソ~~、ハギ助、ハギオ……」

「控えろバカめ! この脹脛はオレのアイデンティティーだ、これからも鍛え続けて人々に見せ付けていくんだ!」

 と、修司と言い合う健脚くんの発言に、アプリコットが冷めた顔で言った。

「それだから女の子にもてないんじゃないの?」

 すると愛野美奈子も言った。

「余計に女が遠ざかるわ」

 この二人の発言に健脚くんは坂道を一気に滑り落ちていった。

「えぇ!? ソリの様な勢いで滑り落ちてきた!」

「そんな! 俺の行動に問題があったっていうのか!?」

 そして健脚くんは一合目まで滑り落ちて、木に引っかかって止まった。

(俺は、自分がモテないのを見る目のない女のせいにしてきた。それならそうと、ハッキリ言ってくれれば良かったのに。世の女どもめ、お前等がちゃんと言ってくれれば俺はモテてたんじゃないか。お前等のせいだーー!)

 健脚くんが一合目で一人思っていたその頃、修司率いる聖龍隊は頂上目前まで迫っていた。

「ライバルが消えたし、いよいよ頂上だな」

 修司たちはいよいよ頂上に辿り着こうとしていた矢先、バーンズが言った。

「そ、それにしてもヤケに寒いな。登る前はあんなにポカポカしていたのに。なんだ、湯冷めか?」

「風呂入ってないだろ! 山は上の方が寒いんだよ」

「あ、よく見たら修司! それにみんなも! 何処からそんな防寒着出したんだよ?」

 いつのまにか着衣している防寒着にバーンズがツッコむと、修司は平然と話し続ける。

「リュックに入れてきたんだぞ、俺ら」

「ズルいぞ、お前等だけ」

「バーンズ、まさかその薄着だけで……上の方、雪が積もっているの解ってただろ」

「上の方の白いのなんか、フケかなんかだと思ってたんだけど」

「フケってなんだよ、汚ねぇよ! 山のこと何も知らずによく一緒に登って来たなオイ! お前一応は王族なんだろ、英才教育で山のこと学んでいるのが普通だろ!?」

 そして遂に修司の口からトドメの一言が。

「そんなバカだからお前、今でも彼女いないんだよ!」

 修司の一言に傷付いたバーンズは、急降下で山道を滑り落ちていった。

 そして健脚くんと同じく、一合目の木に引っかかった。

(オレは、自分がモテないのは聖龍隊副長としての位が高すぎるから、女子たちが遠慮してるとばかり思っていたよ。でも逆に位の高い奴がバカだったら馴染みやすいんじゃないのかな? だから女子達は遠慮せずドンドン接してくれてイイんだよ)

 

 そして場所は戻り、富士山頂。

 修司や聖龍隊の皆はバーンズを残して、山頂を満喫した。

 

 

 

[小田原修司の一週間]

 

 続いて昔語りをしてくれるのは、小田原修司の一番弟子である村田順一だった。

 彼は当時の事を振り返る様に、一言一句丁寧に語り手を熟した。

 

 

「行ってきま~~す」

 やあ、僕は聖龍隊スター・コマンドーの総部隊長になったばかりの頃の村田順一。みんなからはジュンの愛称で慕われているよ。今日は総長に朝早く呼び出されたんだけど、一体なんだろ?

 総長のところに向かっていると、途中で仲間の皆に会った。

「やあ、みんなおはよう」『お、おはよう……』

 みんなまだ眠け眼らしい。これでも早く総長のところに向かわないと。

 合流したのを確認した僕らは、急いで総長のところに向かった。

「あ、総長いた! 総長……って、なんかやってる?」

 総長は「えっさ、ほいさ」と地面を掘っている様子だった。

 すると穴を掘り終えたのか、総長はトンデモない事を言った。

「ふぅ、やっとできたぞ。スター・コマンドー専用落とし穴」

(ななな、なんだって!?)

「ベッチョリといい汗かいた」

(なんか嫌な汗だな)

 兎に角僕らスター・コマンドーは物陰に隠れて総長の様子を窺う事に。

「まったく、スター・コマンドーの連中、最近人気が出て来たからって調子に乗っていやがるよ」

(乗ってませんよ! 毎晩、女の子を口説き回る才人みたいに調子乗ってません!)

「この十メートルの落とし穴で懲らしめてやる」

(じゅじゅじゅ、十メートル!?)

「竹やりも仕込んだし」

(殺す気ですか!?」

「ひぃふぅみぃよぉ、よぉし、ちゃんとスター・コマンドーが結成してからの年数だけは仕込んでるな」

(お誕生日ケーキですか!?)

「こんなのに落ちたら流石のあいつ等もボマーンとか言って叫びそうだ」

(そんな某萌え漫画家みたいな叫び声あげるか!)

「まあ、叫ばずとも激怒は必須だな。あ、そうだ、ジュン達が怒っても大丈夫なように……シャケ入れとこう」

 そう言って総長は自らが作った落とし穴の中に、ちょうど食べていたおにぎりの具材であるシャケを一つまみ入れた。

(それで僕らの機嫌が直ると!?)

「シャケが大好き、スター・コマンドー」

(そんなに好きじゃないです!)

「上手く蓋してと……うんうん、この辺だけ土の色違うけど、ジュン達なら落ちる筈だよな。上ばかり見ているし」

(落ちませんって!)

「一週間かけて作ったんだ、絶対に落ちてもらうぞ」

 この時、僕らの脳裏に在る疑問が浮かんだ。

(え、一週間? そもそも総長は一週間なにやってんだ? 仕事はしているのか?)

「スター・コマンドーとシャケは仲良~~し、シャケイト♪」

(その歌やめろ!)

 

 こうして僕らは一週間の有休を貰い、総長を観察する事にした。

 月曜日

「ジュン達め~~、昨日約束すっぽかしやがって! オマケに今日から一週間有休ってなんだよ! なんだよジュンって、逆さに読んだらパンチュじゃないか!」

(違いますよ!)僕は心の中で叫んだ。

「あ~~ムカつく。良し、今日はこんなスター・コマンドーは嫌だについて考えよう」

(仕事は!?)

 僕たちは総長の今日の日課について心の中でツッコんだ。

 そして一時間後。

「よし、いっぱいできた」

 総長が呟く中、彼は書物に纏めていた。

 

こんなスター・コマンドーは主人公じゃなくモブキャラに格下げだ

 

☆ブラジャーが貝だ

☆森でよく摂れる

☆粘土だ

☆お前もろう人形にしてやろうか!とよく言う

☆滑る

☆語尾に「~スター」を付ける。

例・もみあげはもっとこう……菓子パンみたいにしてくださいスター

☆押すと中身が出る

☆もはやスター・コマンドーじゃない

 

「さ~~てと、今日の仕事終わりっ、寝よ」

(気になるから読み上げろぉ!!)

 僕らは総長に向かって全力で心の中で叫んだ。

 

火曜日

「さてと、今日はスター・コマンドーのモノマネでもするか」

(仕事しろ!)

 僕らがまたも総長に心中でツッコむが、総長には当然届かずモノマネをし出した。

「うへっへっへ、おいらは平賀才人って言いますねん。好物は熟女のヌレヌレパンティーっす」

(ぶっ殺すぞ!!)

 思わず飛び出そうになる殺意満々な才人を、僕らは必死になって押さえ付けた。

「う~~ん、ちょっとしか似てないな」

(ちょっとも似てねえよ!!)

 才人が怒りで我を忘れそうになる中、総長はモノマネを展開する。

「もっと普段着のスター・コマンドーになってみよう」

 そういって総長が次にモノマネしたのは、マグマのモノマネだった。

「人生って……なんだろうか……」

 暗然とした面持ちでモノマネを終えた総長は満足してしまってた。

「あ、今のはちょっと似ていたかな?」

(似てねーーよ!!)

「今日の仕事終わり寝よっと」

(仕事しろ!)

 

 水曜日

「よし、今日は一発ギャグでも考えてみるか」

(仕事しろ!)

 今日も僕らは心の中で叫んだ。

「村田順一っ」

 総長はそう僕の名を叫びながら、両手を前に向かってガっとやった。

(なにそれ?)

「う~~ん、違うなぁ。ジュン達のオタンコナスッ振りが表現されてない」

(あんたがオタンコナスだよ、このオタンコナス!)

 と、僕らが激しく心中でツッコミを入れていると、総長はまた新しい一発ギャグを開示した。

「村田……順一っ」

 手で膝をカパッとやった総長は満足気だった。

 

 木曜日

「さぁってと、今日は何しようかな?」

(今日こそちゃんと仕事してくださいよ総長)

 僕らが心の中で訴えていると、総長は真顔で言った。

「よし、久々にアッコにでも会いに行くか」

(おおっ、まさかここで彼女に会いに行くとは……!)

 僕らが驚愕していると、次の瞬間総長は何かを思い出した。

「いや、待てよ……そうだった、アッコ、いま家族と旅行中だった……」

(そうだった! 残念ですね、総長)

 僕は総長に哀れみの眼差しを向けた。

 

 金曜日

「流石に今日こそは仕事しているだろう……」

 そう愚痴りながら僕らは総長のところに訪れてみると、総長はブランコで遊んでいた。

(うわぁ、楽しそうにブランコで揺れてる~~)

 僕らが眺めていると、総長は唐突に歌い出した。

「スター・コマンドーとシャケは仲良し、シャケイト♪」

(その歌やめろって言っているだろうがッ)

「枕の中も~♪」(しかも続きがあった!)「シャケで一杯~」

(そんな気持ち悪い枕、誰も使わないよ!)

「ラララ、ラララ……ラララ」

(ダメだ、この人……今日も仕事しないよ)

 と、僕らが半ば諦め掛けていたところに、四人の女性たちが。

「あ、総長!」「修司さ~ん」

 駆け寄ってきたのは【デジモンアドベンチャー】の四人のヒロイン、武之内空と太刀川ミミと八神ヒカリと井ノ上京だった。

「今日はイギリスにフランスにイタリアと……ヨーロッパの外交官たちと面会の日でしょ!」

 空さんから指摘を受けて、総長は大変に焦った。

「あ、忘れてたよ、すっかり忘れてた、マジで忘れてた」

 そんな総長を四人のヒロイン達はそれぞれ、右手・左手・右足・左足を持って運んでいく。

「さあ、早く早く」

「分かったから。運ぶな、運ぶなっての」

 そんな運ばれていく総長を見て、僕らは安堵した。

「ああ、なんだ。今日はちゃんと仕事らしい仕事あったんじゃないですか」

 その一方で、設けられた場では三人の外交官が首を長くして待っていた。

「小田原修司とは実際はどの様な人物か。しかし流石は大物の貫禄があるな。外交官である我々を同時に待たせるとは」

「イギリスの外交官殿、そんなに気負わず。ここは相手のペースに呑み込まれてはなりませんぞ。いくら相手が鬼神と恐れられる小田原修司であろうと」

「う、うむ、心得ていますとも。それよりフランス外交官、イタリアの外交官が先ほどから落ち着きがありませんが……」

「ああ、彼は最近離婚したばかりですから。心の拠り所がないのでしょう」

「ふ~~ん……」

 と、二人の外交官が話しているところに、ようやく総長がやって来た。

「聖龍隊総長、小田原修司の御な~~り~~」

(ムッ、ついに来たか!)

 遂に登場する小田原修司を前に、三人の外交官たちの緊張が走る。

 少しずつ、少しずつ戸が開く中、外交官たちは緊張で参っていた。

 そして修司は少しずつ、戸の隙間から縫うように自分の身体を出していった。

 その異様な登場の仕方に、イギリス外交官は妻を、フランス外交官は娘を、イタリア外交官は愛犬を思い浮かべながら世界の終りの様に緊張を走らせた。

 そして総長は扉から身体を縦半分だけ見せると、ニヤリと笑ってそのまま退室してしまう。

「よーーし、今日の仕事終わり!」

 そんな総長を四人が追う。

「待ってください、そんなんじゃ会った内に入りません!」

「外交官たち何故か泡吹いて気絶しちゃってましたよ!?」→緊張の糸が緩んで、気絶しただけ。

「な~~に縦半分だけ見せてるんですか?」

 この話を陰ながら聞いていた僕らは驚愕した。

(縦半分だけ見せたって何!?)

 

 土曜日

「この一週間、総長の様子を観察してきたけど……結局ロクに仕事をしなかった事ぐらいしか分からなかった」

 僕がそう発言すると、他の仲間達も僕同様に酷く落ち込んだ。

「こんな仕事もろくにしてない人の下で働いているボクらって一体……」

「徹之進、考えるな、考えたら負けだ」

「何に負けるんだワン?」

「自分だ、自分に負けるんだ、うん」

「何を訳の分からないこと言ってんの」

 愚痴を零す犬の徹之進に才人が説き伏せるが、最後にルイズにツッコまれてしまう。

 と、そんな暗然と落ち込んでいる僕らの所に【デジモンアドベンチャー】の四人のヒロイン方が総長を呼びながらやって来た。

「総長ーー!」「修司さーーん」

「あ、空さん達。バカがどうかしましたか?」

「あ、ジュン君いいところに! 実はあのバカ、じゃなくて修司さんなんだけど……今日、改めて外交官たちと面会してもらったの。するとなんか、膝を手でカパッとやって「村田、順一っ」って言ったと思ったら急に出て行っちゃって」

「あれをやっちゃったんですか!」

 僕が驚愕ししていると、今度はヒカリさんが語った。

「外交官の人達、気絶はしなかったけど今度はポカンとしちゃってて」

 そういうと、四人は再び総長を探し回り始めて、駆け出した。

「とにかく、総長を見かけたら教えてちょうだい!」

「と、いうか柔道技で押さえ込んで、その状態で呼んでちょうだい!」

「なんて無謀な事を!」

 武之内ミミさんの次に言い出す井ノ上京さんの発言に僕は戸惑ってしまう。柔道を心得た総長を押さえ込むのなんて至難の業だからだ。

(なにやってんだ、総長。とにかく僕らも探さないと……取り敢えず、いつものブランコのところを探してみよう……)

 と、僕たちスター・コマンドーが向かうと、案の定そこに総長がいた。

(いったぁ、やっぱり居たよこの人)

「わ~はっははっは……とりゃっ、痛っ」

 高笑いしながらブランコから飛び降りた総長は、そのまま着地に失敗して「ボマーーン」と泣き叫んだ。

「ううっ、もうヤダこの人生、何やっても辛い……全部、スター・コマンドーのせいだ」

(なんで僕らのせい!?」

 僕たちが愕然としていると、次の瞬間総長は表情をガラリと変えて言った。

「こうなったらスター・コマンドーに無実の罪を着せて、終身刑にするしかないな」

(なんか恐ろしい事いってる!)

 流石に僕らでも、こんな総長の言動に愛想が尽きた。

「人ん家の犬に勝手にシャアと名付けた罪はどうだろうか? よし、ナイスアイディアだ! 今日はいい仕事したな」

(もう放っとこう。心配するのもバカらしい。……さよなら、総長)

 そうして僕らが総長の元を離れようとしたその時だった。

「う~~ん、でもなんか物足りない。なんでだろう? あ、そういえば最近……ジュン達の姿見てないな」

「!」

 僕らを気に掛けてくれる総長の一言に、僕らは引き止められた。

「ちぇっ、どうしたんだあいつ等? 調子狂うじゃないか、俺はこう毎日忙しく働いているってのに、まったく」

「いつ仕事したんですか、総長」

「あ、ジュン! そして他のスター・コマンドーも」

 僕らは遂に痺れを切らして総長の前に出て行った。

「僕たちは一週間、総長の仕事ぶりを……」「ぶりを?」

 だが足を総長の前に踏み入れた瞬間、僕らは、スター・コマンドーは総長が作った落とし穴に落ちてしまった。

「おーーい、大丈夫かお前等ーー」

「大丈夫じゃねえーー!」

「あ、そこ見て見て。シャケシャケ♪」

「いらねーー」

 

 

 

 

[昔語りを聞いて]

 

 と、ここまで聖龍隊のメンバーである地場衛と早見青児、奴良リクオと澤田綱吉、聖龍HEAD、そして村田順一のスター・コマンドーが語ってくれた昔話を聴いて、新世代型たちが問い掛けてきた。

「……あの、今までの話、全部作り話ですよね」

「うん、君たちが話を受け入れやすいように、最初は笑える作り話で場を盛り上げようとしたの」

 琴浦春香からの質問にジュニアが真顔で返答した。

 すると次の瞬間、新世代型達は全員その手に強力な銃火器を持って一斉に聖龍隊に銃口を向けた。

「いやいやいや! 場を和ませようと思っただけだから……!」

「き、君たち!? そんな物騒な武器を持つキャラじゃ無かった筈だよね?」

 突然自分たちに向けられた銃口砲口にバーンズもジュニアも激しく動揺。

 だが真面目に話を聞く姿勢を向けていた新世代型たちの怒りは収まらず、全員偽りの昔話を語った聖龍隊メンバーに攻撃を浴びせた。

「うわあッ!!」「ひぃぃ!」

 逃げ惑う聖龍HEADに村田順一たち。

 

 夕焼けもすっかり沈み、夜が始まろうとしていた刻限に、バーンズやジュニア達は新世代型たちに追い詰められる事になったとさ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。