聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

11 / 26
 長きに渡る激しい戦闘による心労からか、うつ病を発症してしまった修司。
 だが彼はそれでも世界中で多くの人々が救いを求めている現状から、闇からの制裁ジャッジ・ザ・デーモンとしての活動を再開しようと乗り出す。
 そして修司はウッズと共に、己がジャッジ・ザ・デーモンである事実を聖龍ロボットメンバーズ通称SRMに打ち明けた。
 その狙いは、今まで彼らスパロボの技術を応用していたガジェットやマシンそれにデーモンスーツに、全面的にSRMの技術を用いてウツの修司でも万全の態勢で戦える様にする算段だった。
 最初は連続殺人鬼にも指定されているジャッジ・ザ・デーモンに協力するのを拒んでいたSRMの面々だったが、当時総司令官の秘書官であったマリネの優しい心遣いや、アイザックからの指摘を受けて渋々ながらもジャッジ・ザ・デーモンに協力する事を受諾。
 こうしてウツに罹り、精神だけでなく体力にも衰えを感じていた修司への完全バックアップ体制が敷かれた。
 そして最初はジャッジ・ザ・デーモンとしての活動に専念していた修司に軽蔑の眼差しを向けていたSRMの面々は、次第に己の信念を曲げず貫き通す修司の姿勢に感化されていった。
 そんな中、Mrフェイクが作り出した万人を鬱病に発症させる劇薬「U・T・U」が革命軍士の手に渡ってしまう。これにより世界中の多くの人々が鬱病に発症して、社会の歯車が著しく狂ってしまう事態が発生。
 更にMrフェイクは世界中に「U・T・U」を拡散させようと輸出を企てるが、そこにSRMの総力を挙げて作り上げたデーモンスーツを着用したジャッジ・ザ・デーモンが登場。Mrフェイクと対峙する。
 そして多くのロボットを交えた戦いの中、Mrフェイクが偽物だと言う事が判明。
 本物のMrフェイクは誘拐したテレビスタッフを利用して、アニメタウン市民を巻き込んだ劇場型犯罪を展開する。
 その末に、一般人と囚人で乗り分かれた船に爆薬が積み込まれ、どちらかが先に爆破すれば助かると言うデスゲームが展開されてしまった。
 ジャッジ・ザ・デーモンとMrフェイクがいがみ合う中、2隻のフェリーに乗っている一般人側も囚人側も相手を爆破する事を拒否する。
 人の善意や良心を利用したこのMrフェイクのゲームに怒り狂うジャッジ・ザ・デーモンだったが、彼から告げられた現実に殺意を失くしてしまう。
 そしてMrフェイクの犯罪を全て制止させたジャッジ・ザ・デーモンこと小田原修司は、ウッズやSRMの面々からの手厚いケアもあって己の中のウツが軽減された事で再び戦場で戦い続ける道へと乗り出す。
 そう、全ての人々に平穏が訪れる日の為に。

 こうしてウツに罹りながらもジャッジ・ザ・デーモンとして戦う道を選び、ガンダムや勇者ロボなどの巨大ロボを搭乗するSRMの面々と協力するまでに心境を変化させた小田原修司の飽くなき闘争心に纏わる噺を聞いて、新世代型達は唖然とした。
 すると、この話をSRMの面々から同じく聞いたスター・ルーキーズの総部隊長ミラールが喜々とした表情で言い出した。
「よっし! 時系列的にいえば、この後のヒールに纏わる話は、私が聖龍隊に加盟した時の事件の様ね」
 ミラールは自分が聖龍隊に加盟した切っ掛けにもなった事件を話せるとして、大いに喜んだ。
 新世代型たちが次はどんな話なのかと、ミラールが語ってくれる話に耳を傾けた。
 それはミラールがまだ、自警団組織ブラッディ・レンジャーズに加盟していた頃の話から物語は語られた。



現政奉還記 創生の章 昔語り:対決!ブラッディ・レンジャーズ

[プロローグ]

 

 長きに渡って幾度となく戦火に見舞われた二次元界。

 そんな二次元界の復興しつつある都市、その裏社会で巡らされた計画について二人の犯罪者達が会談していた。

「……これが製造プロットの図面、か」

「そうじゃ、これさえ内密に作り上げれば、いくらでもドラッグが製造できる」

「しかも、格安で誰にでも購入できるドラッグが大量に……」

「今の時代、高価なドラッグよりも、格安で白銀ーゼのマダム達にも手軽に買える500円のドラッグ……ワンコインドラッグが主流となる」

「誰もが気軽に、そして安価でドラッグが購入できる……」

「ほう、正しく……金のなる木じゃな。このドラッグ製造プロットは」

 二人の犯罪者が、格安の非合法麻薬の製造プロットについて密かに話し合っていた。

 

 同時刻。

 そんな二人の犯罪者が内密に計画を練っている時。

 二人の犯罪者たちが密談する建物の外で、二つの人影が揃って話し込んでいた。

「行くぞ、準備は良いか?」

「ええ、いつでもOKよ」

 そして次の瞬間、犯罪者達が籠っている建物に衝撃と爆発音が響いた。

「な、なんだ?」「待っていてくれ」

 密談していたボスと部下は驚き、部下が様子を見に向かった。

 そして部下が爆発音があった場所へと赴くと、そこは既に外部からの爆発で壁が吹き飛ばされ、強行突入された後だった。

「ブラッディ・レンジャーズ。聞いた事ぐらいあるでしょ、お兄さん♪」

 そして壁を打ち破った子供らしき人影が部下に告げた次の瞬間、一発の銃声が屋内に響き渡った。

 丁度その時、逃げ出す準備をしていた犯罪者ボスは、その銃声を聞いて更に怖気付いたのか早々に秘密通路から逃亡。その直後、ボスが居た部屋の戸を強硬に突破して爆発による硝煙が吹き込んだ。

 そしてボスは息を切らしながら、一部の関係者しか知らない地下室へと逃げ込み、命辛々逃げ延びた。

「はぁ、はぁ……ここなら安全か? 誰かが情報を漏らした以外考えられんが、いったい、誰が……」

 と、ボスが地下室で息を整えていたその時、背後から近づいてくる者にボスは気付いた。

「! 誰じゃ?」

 襲撃してきた輩かと思い、振り返ったボスの視線の先にいたのは。

「私だよ、ボス」

 先ほど襲撃の様子を窺いに向かった自分の側近である部下だった。

 合流した二人はそれから地下の秘密通路を通って、外へと脱出しようとした。

「どうしてあの情報が漏れたんじゃ、完璧な計画だったというのに……」

 ボスは、練りに練った計画が何故漏洩してしまったのか残念そうに呟き続けていた。

 すると同行していた部下が急に立ち止まり、ボスの背後に立ち回る。

「ん?」

 そんな部下の行動に気付いて振り返るボス。すると部下は手を突きだすと、その右手から拳銃が突如と現れてはボスに銃口を向けて狙撃。発射された弾丸はボスの体を貫通した。

「フッ、まったく……全然気付かなかったわね」

 部下が微笑むと、ボスは満身創痍で部下に言った。

「お前が裏切っていたのか……」

 側近中であった部下が裏切っていたのかと告げるボスの言葉に、部下は姿を変えながら言った。

「はは、それは違うわ」

 姿を変えた、いや元の姿に戻った子供は得意げにボスに話した。

「あいつはさっき処分したところ。まあ、でも次はあなたの番だけど……」

 そんな変身して自分を欺いた子供の能力を目の当たりにしたボスは仰天した。

「どういう事だ? その能力は、いったい……」

 そして子供は、容赦なくボスにトドメの一発を放った。

 

 

 2010年1月

 サーズ・スナックが自発的に引き起こした異常気象および内戦で荒廃したアニメタウンは、同じく異常気象に見舞われてた日本同様に、確実に二次元人達の活躍によって順調に復興を遂げていた。

 しかしアニメタウン復興の影で異常者(ヒール)による犯罪も激増しつつあった。

 異常者(ヒール)を取り締まる公式組織《聖龍隊》。其処で活躍し続けてきた村田順一率いるスター・コマンドーは、力で押さえ付けるやり方に疑問を感じ、平和的解決の道を求め総合部隊全員が第一線から退いてしまう。

「なぜ二次元人同士傷つけ合わなければならないんですか……! 僕たちはもう戦いたくありません……」

 総部隊長村田順一を筆頭に皇軍としても活動していたスター・コマンドーの面々は、異常者(ヒール)ハンターとしての職務を放棄してしまう。

 

 スター・コマンドーが戦前から抜けてしまい弱体化した聖龍隊に代わり、非合法に異常者(ヒール)を討伐する自警集団《ブラッディ・レンジャーズ》が活動を始める。リーダー・ブロッド率いる《ブラッディ・レンジャーズ》は一般二次元人からも一目置かれる集団に成り上がっていた。

 しかし、そのブラッディ・レンジャーズから、それまで組織の中心となって活躍していた一人の子供が自らの運命を変える為にレンジャーズから逃亡。

 

「さよなら、ブラッド……絶対、ヒーローになってやる」

 

 そして今……新たな戦いが幕を上げる。

 

 

 

[ファーストコンタクト]

 

 自警団組織ブラッディ・レンジャーズから抜け出した一人の子供。

 その子はブラッディ・レンジャーズが仕掛けた数々のトラップを回避しながら、追撃から逃れていた。

 数多の銃火器を扱える腕前を持つ、その子供は二丁拳銃を自在に扱って目の前のトラップを次々と破壊して突破。

 そして子供は、どうにか追手から逃げ延びたと思い、高速道路の上で一息入れた。

「はぁはぁ……流石にここまで来れば大丈夫かな?」

 子供が少しばかり安堵に浸っていた、その時。

 その子供の背後から巨大な影が襲い掛かってきた。

 

 一方その頃、高速道路を数多くの戦闘マシンが蔓延って占拠されているという通報を受けて、聖龍隊が駆け付けていた。

 現場に駆け付けていたのは、当時まだ鬱から回復したばかりの小田原修司を筆頭とした聖龍隊の新人達であった。

「やれやれ、ゆっくりしていたかったんだが。しかし派手に暴れたもんだな……一体、何があったんだ?」

 修司は未だ完治していないウツから養生していたかった思いとは裏腹に、現場である高速道路の酷く荒れた現状に戸惑った。

「いいか、お前達はまだ新入りの新入りだ。俺が少しばかり戦いについて……異常者(ヒール)を倒すとは、どんなのか手本を示してやるから、お前らは遅れず俺についてこい!」

 修司は当時聖龍隊に加盟したばかりの【マギ】のアラジン/アリババ/モルジアナ、【家庭教師ヒットマンREBORN】の沢田綱吉/リボーン/獄寺隼人/山本武/雲雀恭弥/クローム髑髏、【ぬらりひょんの孫】の奴良リクオ/氷麗(つらら)/首無/青田坊/鴆、【FAIRYTAIL】のナツ・ドラグニル/ルーシィ・ハートフィリア/グレイ・フルバスター/エルザ・スカーレット/ハッピー、【月光条例】の岩崎月光/ハチカヅキ/エンゲキブ、【HEROMAN】のジョーイ/サイ/リナ/ヒーローマン、【デジモンクロスウォーズ】の工藤タイキ/蒼沼キリハ/天野ネネ/陽ノ本アカリ/剣ゼンジロウ/天野ユウ/明石タギル/最上リョウマ/戸張レン/州崎アイル/真下ヒデアキ、【アラタカンガタリ〜革神語〜】の日ノ原革/コトハ、【境界のRINNE】の六道りんね/真宮桜たち聖龍隊に加盟したばかりの新人達の特別監査官として就き、彼らを先導していた。

「行くぞ!」

「タクッ、病み上がりの癖に……」

 新人隊士達を引き連れて先頭を行く修司。だが、うつ病から病み上がったばかりの修司に新人隊士達は不満を覚えていた。

 そんな新人隊士達のもどかしい心情を知ってか知らずか、修司は進撃する。

 目の前に群がる戦闘兵器を次々と躊躇いなく破壊していくその姿は、かつて鬼神として恐れられた頃の修司と差して変わりなかった。

「な、なんて破壊力だ……!」

「本当に最近まで、病気で寝込んでいたとは思えない……!」

 修司の壮絶なまでの攻撃力と破壊力を目の当たりにし、新人達は愕然とした。

 

 目の前に立ちはだかる敵を次々と突破する聖龍隊一行。

 同型の兵器、巨大な兵器、それらを破壊して道を切り開いていく修司を先頭とした集団は進撃しながら、この兵器を街中の高速道路に投下しているのは何者かと思慮にふけていた。

 と、修司達が快進撃を続けていたその時。

「わーー、退いて退いてーーっ!!」

 修司達の後方から声が聞こえてきた。その駆け抜けてくる声の主は男子に見える子供だった。

「おい!? ちょっと待て!」

 修司は自分達を追い越し、走り去ろうとする子供を呼び止める。

「何やってるの!! そんなところでジッとしてたら危ないわ! 早く逃げて!!」

 しかし呼び止められた子供は、慌てた様子で修司達に言うが、そんな子供に修司は問い詰めた。

「お前、この事件の関係者か?」

「事件? なに言ってるの! ……あぁ、ほら来ちゃった! じゃあ私は行くから!!」

「あ、待て!」

 問い詰める中、子供は何かを目撃したのか、その場から逃げ出してしまう。

 修司は行ってしまった子供から事情聴取を取ろうと、新人達を先に向かわせて子供を引き留めるよう命じようとした、その時だった。

 なんと修司達の後方から、巨大な蠍型陸上歩行兵器が接近してきたのだ。

「くそ、一体何が起きているんだ」

 修司は現状況が呑み込めないまま、自分達を追撃してくる蠍型兵器から一先ず退避する事に。

 蠍型兵器は修司たち聖龍隊の面々を追撃しながら、高速道路を進行。退避する修司達は蠍型兵器から発射されるレーザーを回避したり、跳ね返したりして何とか体制を立て直そうとする。

 と、此処で修司は新人達に指令を出す。

「だ、誰か! さっきの子供を追跡しろ! 完全にアイツはこの事件の関係者だ! この蠍の兵器が本当に追っているのも、あの子供だ! 捕まえておけッ」

 すると「俺が行きます!」と、サイ本名をサイモン・カイナが特製のスクーターで高速移動して子供を追跡し出す。

 サイが追跡して、子供に急接近する。「止まれ! 止まるんだ!」サイが制止を呼び止めるが、子供はそれでも逃避行を止めはしない。そこで半ば強引だが、子供の身体を捕まえて動きを止めてから説得しようとサイは腕を伸ばして子供を捕まえようとする。

 そしてサイが腕を伸ばして子供を捕まえようとすると、偶然にも子供の胸の部分に手を押さえ付けてしまった。

「きゃっ、エッチ!」「!!」

 サイに胸を触られて驚く子供、そして子供の胸を偶然ながら触れてしまったサイは唖然とした。

 そしてそのまま子供は再び逃亡を再開してしまう。

 突然のハプニングに一驚してしまうサイは、通信機で後から追ってくる修司達に伝えた。

「そ、総長! さっきの子供は、女……女の子です!」

「なに、女だと!? てっきり男かと思っちまったぜ……」

 修司達は子供の容姿から、てっきり男子かと勘違いしていたが、ここで相手が女子である事に気付いた。

 

 謎の子供の正体が女子であった事に気付いた修司たち一同。

 しかし此処で修司達に問題が発生。数多の戦闘兵器の横行から、先の高速道路は陥没。大きな穴がぽっかりと口を開いていた。

 後方からは巨大蠍型兵器、前方の道は消失。追い詰められた修司達は、やむを得ず陥没した道路へと飛び込んだ。

「飛び込めッ!」

 修司からの声に、新人達は覚悟を決めて陥没した道路へと飛び込んだ。

 そして陥没した道路へと着地した一同は、そこで再び先ほどの少女と遭遇した。

 少女と合流を果たした修司たち一行は、彼女と向かい合って問い詰める。

「……説明してもらおうか?」

「分かったわよ、後で必ずね。でも先にあいつを何とかしなくちゃ……」

 少女の言うとおり、追尾してきた蠍型兵器も陥没した高速道路の穴へと着地して追ってきた。

 逃げ場が完全にない状況下で追い詰められた一同は、蠍型兵器との戦闘を開始するしかなかった。

 すると修司たち同様に追い詰められた少女が、唐突ながらに修司達に話し掛けてきた。

「えーーっと、確かあなたがあの有名な……修司、だったわよね? それじゃ戦闘は得意でしょ! ココは任せるわ。でも、もしもの時は私を呼んでね。こう見えても得意なのよ、異常者(ヒール)ハント。私はミラール、よろしくねーー!」

 自らをミラールと名乗る少女の台詞に呆気に取られる修司たち。

 修司は仕方なく、このミラールと共闘して現状を打破する事を決める。

「ふぅ、面倒なことになったな……後できっちり説明してもらうぞ!!」

 ミラールに言い放つ修司は、こうしてミラールも交えて新人達と共闘する姿勢を示した。

 

 蠍型兵器は、その巨大な両腕からのハサミを振りかざして、前方の新人達を挟み込もうと腕を突き出してきた。

「くっ」

 六道りんねは上へと跳躍し、回避すると死神の大鎌で蠍型兵器を攻撃。だが、掠り傷程度しか付けられず、困惑する。

「六道、無理はするな! 全員、辺りに拡散してから攻撃しろッ!」

 修司は皆に指示を出しながら、自らも蠍型兵器に聖龍剣で攻撃していく。

 しかし装甲の厚い兵器な為か、一度や二度の攻撃では破壊し切れない。

 そこに奴良リクオと澤田綱吉の二人が、巨大兵器に攻撃。蠍型陸上兵器は後方に押し出される。

 二人の活躍を目の当たりに、ミラールは目を輝かせながら蠍型兵器に銃撃を連射する。

 しかし数多の攻撃を受けても活動を停止しない兵器に、修司が命令を下した。

「奴の動きを止めろ!」

 その修司の命令を聞いて、グレイ・フルバスターが氷魔法で蠍型兵器の動きを止める。

 足場を凍らされ、身動きを封じられた蠍型兵器に強烈な一撃を加えようと、岩崎月光がハチカヅキを担いで蠍型兵器をぶん殴る。

 それに続けと、デジモン達が一斉攻撃を仕掛けるものの、蠍型兵器は自由が利く両手のハサミから目前の面々を切り付けようと腕を振り回す。

 真宮桜にリナに蠍型兵器のハサミが直撃する寸前、ヒーローマンと修司が振るわれるハサミを受け止めて制止させる。

「こ、このやろ……!」

 ロボットであるヒーローマンとは違い、生身の人間である修司は聖龍剣でハサミを受け止めつつ、後方の仲間達を死守する。

 そんな蠍型兵器に日ノ原革が剣を振付けて、本体に攻撃する。が、蠍型兵器は停止しない。

「そのまま押さえといて!」

 蠍型兵器の両手を押さえるヒーローマンと修司に願い出ながら、ミラールが二丁拳銃で蠍型兵器を撃ち抜いて行く。

 するとようやく蠍型兵器の装甲が吹き飛んで、内部の機械が露出した。

「そこか!」

 露出した機械部分を目視して、修司は叫ぶと同時に兵器に跳びかかり、露出した機械部分に斬り込んだ。

 と、そこに今度は「私も行くわッ!」とミラールも修司に続いて露出した機械部分に強烈な銃撃を撃ち込んだ。

 修司の剣戟とミラールの銃撃の両方を浴びた蠍型兵器は、動きを停止した直後、爆発し消滅した。

 

 なんとか己の剣術と皆の連携、そして謎の少女ミラールの手助けも相まって蠍型兵器を破壊し得た結果に修司は安堵する。

「やったわね! 私たち、以外とチームワークいいんじゃない? いやぁ、まさか聖龍隊と協力して事件を解決しちゃうなんて……」

 と、自己満足するミラールを前に周りの者たちが唖然としている中、修司はミラールに素早く忍び寄ると彼女の手を取り押さえた。

「わっ! な、なにするのよ!?」

「お前を拘束する!」

 事件の関係者にして、この騒動の中心人物と思われるミラールに手錠を掛けようとする修司に、ミラールは慌てふためく。

 すると、ミラールが被っていた特殊なレンズがはめ込まれたヘルメットが外れてしまい、彼女のブラウンの髪の毛が肩まで零れ落ちた。

「……やはり女か」

 肩まで伸びた鮮やかなブラウンの長毛を視認して、修司達は改めてミラールが少女である事を理解する。

 

 だが、このミラールとの初接触が、この後に起こる戦いの幕開けだと言う事を、このとき修司達は知る由もなかった。

 

 

 

[連行された王女]

 

 どうにか巨大蠍型兵器を撃破した修司たち聖龍隊とミラール。

 だが、この騒動の中心的人物であるミラールを聖龍達が放置する訳はなく、すぐさま修司達に拘束されてしまう。

 そして聖龍隊本部。ミラールは修司や、事件を解決した新人達に護送されながら屋内を歩かされていた。

「逃げも隠れもしないわよ。だからこんなもの外してよ! まるで私が悪い事したみたいじゃない……」

 両手に手錠をかけられるミラールが、手錠を外してもらう様に嘆願するが、この台詞に修司が睨みを利かせた。

「悪い事したみたい……だと?」

「うっ……まっ、まーー確かにしたかもしれないけど。……そっ、そうだ、ほら、私たちのチームワークの相性バッチリだったわね。みんなであの、でっかいのを倒した時これはイケる! って確信しちゃったわ。いいチームになれるかもって」

「……」

 余り悪びれる様子もなく、それどころか先ほどの戦闘での自分達の連携が相性抜群だったと説くミラールの言葉に、修司達は呆れて何も言えなかった。

 

 そして聖龍隊本部の最深部に当たる場所にて、一同は扉の前で立ち止まった。

「そういえば、スター・コマンドーはどうしちゃったの? 最近、見かけないね」

「すぐ会わせてやる。この扉の向こうだ」

 最近になって戦前で活躍していないスター・コマンドーの活躍を見ていないというミラールからの質問に、修司は扉の向こう側で待っていると返した。

 そして扉が開き、眩い光がミラールの視界を覆う。そして次にミラールが目を開いてみると、そこには驚きの光景が広がっていた。

 なんと聖龍隊と関係を持つ数多の世界の財閥や異世界の重鎮達が総動員して着席していたのだ。

「ちょ、ちょっと! これは何なのよっ、なんで世界中の……異世界中の重役ばかりが此処に集まっている訳!?」

 ミラールが問い質すと、修司が厳しい事実を発した。

「お前、あの過激な自警団組織ブラッディ・レンジャーズの一員だろ? お前達の最近の破壊活動は異世界にまで被害が出ている。しかもお前はどうやら組織の中心人物……俺らの世界はもちろん、異世界中のお偉方が注目しているのよ」

「っ……!」

 自分たちの組織が行っていた活動について異世界の重鎮達も注目していると言う事実から、ミラールは衝撃を受けて言葉を失くす。

「連れてきたぞ」

 そんな異世界中の重鎮達が一堂に会する集会尋問に、修司達がミラールを連行してくると彼等に聖龍隊副長のバーンズが労いの言葉を掛ける。

「ご苦労だったな、修司。そして新人隊士の諸君」

 集会尋問にはバーンズたち聖龍HEADはもちろん、今現在戦闘には出撃せずに人命救助や事務作業を中心に活動している村田順一率いるスター・コマンドーも同席していた。

「君か? この騒動の原因は?」

 高速道路上での激しい戦闘や混乱を招いた騒動の中心として連行されてきたミラールに、順一は険しい顔付きで問い掛ける。

「……そうみたいね。まさか、あんな奴まで使って追ってくるなんて思ってなかったのよ」

「何? どういう事だ、追われているのか?」

 順一の問い掛けにミラールが答えると、彼女の返答を聞いて順一が訊き返すと、ミラールは暗い面差しで答えた。

「抜け出してきたのよ……ブラッディ・レンジャーズから。こう見えても私、ハンターなのよ」

「ブラッディ・レンジャーズ……あの自警団を気取っている、ならず者の集団だな」

 ミラールの返答を聞いてバーンズがブラッディ・レンジャーズに対する真っ向な考えを述べる。

 と、バーンズ達HEADの面々が、ミラールがブラッディ・レンジャーズから抜け出た自警団の一人だと述べてたその時。集会尋問に出席していた一人の女王が連行されてきたミラールを遠視して、何か気付いた。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「えっ? じょ、女王様……?」

 その気付いた女王とは、アッコに鏡魔法の道具であるコンパクトを授けた鏡の国の女王であった。女王はアッコ達HEADや修司、そして多くの集会尋問に出席している面々の目など気にせず、連行されてきたミラールに駆け寄った。

「………………」

 駆け寄って来た鏡の国の女王と目が合いそうになると、ミラールは視線を逸らした。

 一方の鏡の国の女王は、ミラールの顔を凝視してみると、一気に表情を輝かす。

「……ミラール……ミラールなのね?」

「……」

「女王、ミラールを知っているのか?」

 女王の問い掛けに無言を貫くミラール。そんな二人を前に、連行してきた修司が問い掛ける。

 すると黙り込んでいたミラールが観念した様子で口から言葉を発した。

「ひ、久しぶり………………ママ」

『ま、ママ!?』

 ミラールが発した「ママ」という言葉に、その場の一同は全員驚愕し、修司なんかズッコケてしまった。

「ま、ママって、お前……お、おい女王。ミラールって……」

 ズッコケた際に打ち付けた腰を摩りながら、鏡の国の女王に問い掛けると女王は切実な表情で語り返した。

「間違いありません。この子は数年前に我が国を抜け出して、行方不明になっていた私の娘……ミラールです」

「じょっ、女王様の娘!? って、事は……そのミラールって女の子は鏡の国の王女な訳!?」

 鏡の国の女王の返答に、アッコは目を丸くして驚きふためいてしまう。

 この鏡の国の女王の話に、会場の誰もが驚き騒然と化していると、目を丸くしながら修司が再度女王に問い掛ける。

「ほ、本当か、女王? そ、それじゃ、ミラールはあのキーオの……」

 修司は顔馴染みでもある鏡の国の王子キーオとミラールの関係性について訊ねようとすると、それにミラールが代弁した。

「あっ、そっか。総長は私のお兄ちゃんと顔馴染みだったっけ?」

「おっ、お兄ちゃん!? ミラールお前、あのキーオの妹か!?」

「!!」

 昔馴染であるキーオに妹がいたという衝撃を受けて、修司もアッコも愕然とする。

「で、でも……なんで鏡の国の王女が、ブラッディ・レンジャーズなんて物騒な組織に入ってたんだ?」

 修司は愕然としながら質問すると、ミラールは昔を思い出しながら渋々答えた。

「わ、私……マナーとかしきたりに縛られた肩身の狭い王宮生活にはウンザリしていたのよ。だから鏡の国から抜け出して……ブラッディ・レンジャーズに流れ着いたのよ」

「ああ、よくある話だ」

 ミラールの話を聞いて、生れ付いての肩身の狭い生活習慣に性が合わず抜け出した話は強ち珍しくないと説く。

 

 と、連行されてきたブラッディ・レンジャーズから抜け出したミラールが、実は鏡の国の王女であった事実を聞いても尚、同席している村田順一達スター・コマンドーは怒りを露わにした。

「君が誰で、何処の出身かなんて関係ない! 君らの内輪もめで、どれだけの被害が出たと思ってるんだ?」

 この順一の問い掛けに、ミラールは渋々答えた。

「反省してるわよ。でも、もうあそこにいる訳には行かなかったし……こんな事になるなんて思わなかったのよ。仕方ないわ」

「仕方ないだと!? ふざけるなっ!」

 反省している様子が見られないミラールの言動に、スター・コマンドーの平賀才人が怒鳴り散らす。

「ま、まあ、才人さん……なにも其処まで怒らなくても……」

 と、そんな猛々しく怒る才人に、集会尋問に出席しているニュー・スターズの一員でもあるアンリエッタが宥めるが。

「アンリエッタは黙ってくれ!」「!」

 と、逆に才人に怒鳴り返されてしまう始末。普段は美女には目がなく、アンリエッタにも色目を使っている才人が彼女に怒鳴り返した言動に、アンリエッタ本人は衝撃を受ける。

(おや、才人がアンリエッタに怒鳴るとは珍しいな)

 この才人の様子に、修司は内心才人の心境の変化に敏感に反応した。

 と、順一や才人を始めとするスター・コマンドーの面々が激しくミラールを非難する中、副長のバーンズがスター・コマンドー全員を宥める。

「落ち着け、スター・コマンドー。ミラール、まずお前が抜け出した理由を教えてもらおうか」

 バーンズはスター・コマンドーを宥めつつ、ミラールがブラッディ・レンジャーズから抜け出した理由を問い質した。するとミラールは神妙な顔で訳を話し出した。

「……ブラッドが……ブラッディ・レンジャーズが変わっちゃったのよ。今じゃ、ただの殺し屋集団。私は彼らに利用されていたのよ……昔は本当に悪いヤツにしか手を出さなかったのに……もう耐えられなかったのよ」

 自分が属していたブラッディ・レンジャーズが変わり果ててしまい、自分は彼らに利用されていただけだと述べるミラールは、これ以上組織にいるのは耐えられなかったと説いた。

 そんなミラールの切実な事情を聞いて、修司が言った。

「奴らはきっと、ミラールを連れ戻しに来るな」

 すると修司の意見を聞いて、副長であり現在は一時的に精神病を患っている修司に代わって総指揮を執っているバーンズが頷いた。

「丁度いい機会だ。ブラッディ・レンジャーズには手を焼いていた訳だし……」

 しかし、このバーンズの意見に順一達スター・コマンドーは真っ向から否定した。

「何を言ってるんです! 戦ったら、奴らの思うツボじゃないですか! また、くだらない戦いを繰り返すだけです」

 過去に自分達が積み重ねた、武力による問題解決を繰り返す所業に真っ向から反対する順一。

「争いは所詮、争い……武力で解決しようとすれば、より多くの命が失われる事に……」

 順一に続いて、自分達の思想を述べるスター・コマンドーの墨村良守。

 すると、このスター・コマンドーの意見を聞いたミラールが順一達に訴え掛けた。

「私が言うのも何だけどさ。ジュン達の言っている事は解るわ。でも戦いでしか解決できない事も実際あるのが現実なのよ! もう話し合う余地なんか無いわ」

 このミラールの発言に、スター・コマンドーは全員目の色を変えてミラールを睨み、白浜兼一がミラールに怒声を投げ掛ける。

「知ったような口を聞くな! 君は黙って今までの罪を償うんだ!」

「お前たち……ミラールはこんなんでも、あくまで王族。あまり暴言を吐くな」

 見かねた修司が怒るスター・コマンドーを宥め掛けるが、彼らの怒りは収まらなかった。

「王族だから、なんです!? どんな地位のある人物だろうと、犯した罪を償わなくていい理由にはなりません!」

 ハイパー・ブロッサムの主張に続き、他のスター・コマンドーも各々の主張を唱えて行く。

「女王だろうが、王女だろうが……こいつは今までブラッディ・レンジャーズで無意味な破壊行為を繰り返してきた無法者! 徹底的に罰しなければなりません!」

「皆さんもご存知でしょう? ブラッディ・レンジャーズが今まで、どれだけむやみやたらに処分や破壊行為をしてきたか! ミラールが例え、王族であろうと、その罪が消える事はないんです!」

 平賀才人もルイズも、ミラールを擁護する気は毛頭なかった。

「今回の高速道路での戦闘兵器投下も、結局はブラッディ・レンジャーズを抜け出したミラールが元の発端! あれで、どれだけの市民が困り果てているか解ってるだろ! ミラールには厳格な罰を与える事を、私達は要求する」

 目の色を変えて、今まで罪を重ねてきたミラールに厳格な罰則を与えるべきだと主張する明石薫らチルドレンの三人組。

 

 もはやスター・コマンドーには自警団組織であったミラールを庇護する考えはないのだろうか。

 争いを嫌い、無益な戦闘を拒むスター・コマンドーはミラールに心を許す事はないのだろうか。

 

 

 

[突然の挑戦状]

 

 と、スター・コマンドーが挙ってミラールに厳しい罰則を与えるべきだと主張していた、その時。

 集会尋問が開かれている会場のマイクにノイズが走り、巨大モニターに砂嵐が発生した。

「!? どうした、何が起こってるんだ!」

 突然の事態に順一が戸惑っていると、オペレーターの総指揮を務めているウッズが訳を話した。

「発信源不明の通信です。画像全モニタに出力します」

 ウッズの操作によって、謎の通信の全出力が映像モニタに投影された。

 すると会場の巨大モニターに映し出されたのは、額部分に大きな傷のある、右目を失った隻眼の男だった。

「ぶ、ブラッド?」「なに!?」

 モニターに映し出された隻眼の男を見てミラールが呟いた名に修司は表情を一変させた。ブラッドとは、余り表に顔は出てないがブラッディ・レンジャーズのリーダーである元軍人の名前だったからだ。

 そしてモニタに映し出された男ブラッドは、そのまま椅子に悠々と座り込んだまま語り始めた。

「聞こえているか! 聖龍隊の英雄達よ。俺はブラッド。ご存知の通りブラッディ・レンジャーズのリーダーだ。わざわざ、こうやって表に出たのは他でもない。逃げ出しやがった俺達の仲間が、こともあろうにお前らの所へ転がり込みやがった。そう、そこにいるミラール、お前だ! そいつを返してもらいたい。……と言ってもそんな簡単に戻ってくるとは思えない。まして聖龍隊の連中が王族でもある、そいつをおめおめと返してくれるとも思えない。そこでだ! ハンター対決ってのはどうだ? 知っての通り俺たちもハンターとして働いている。これまで異常者(ヒール)も数え切れないほど処分してきた。真の異常者(ヒール)ハンターを決めてみないか?」

 突然のブラッドからの挑戦状ともとれる提案に、会場にいる誰もが騒然とする。

 すると村田順一が通信でブラッドに反論した。

「ふざけるな! ミラールと僕たちは全く関係がない! 彼女の為に、君たちと戦う理由はない!」

 しかし、この順一の反論にブラッドは微笑を口元に浮かべると、軽く口を叩いた。

「威勢がいいな……でも口だけじゃないのか? 最近は現役を退いているらしいしな。まっ、腰抜け共には用はねぇ」

 戦前を退いている順一達スター・コマンドーを腰抜けと嘲るブラッド。すると此処でブラッドが新たな提案一方的に投げ付けてきた。

「そうそう。と、言っても手数でも一般兵の質でも俺たちブラッディ・レンジャーズに分があるのは明白。……よってこっちは補欠として、今まで捕まえてきた異常者(ヒール)を戦闘員として使わせてもらうぜ。文句はなしだ。最後に生き残った方が勝ち! 俺たちが負けたらミラールはお前らにくれてやる。当然だが俺たちが勝てば……」

 挑発混じりの台詞で聖龍隊を逆なでするブラッドは、最後に聖龍隊と一緒にいる元仲間であるミラールに言った。

「いるんだろ? ミラール。クビを洗って待ってろよ。フハハハハハハッ!」

 最後には高笑いしながら、ブラッドは通信を切った。

 

 その直後、世界中の異常者(ヒール)発生を監視している総通信士のウッズが突然鳴り響く警報について皆に話した。

「早速動き出したようです。世界各地で異常者(ヒール)発生! 被害の出たエリアを調べます」

 ブラッドが、ブラッディ・レンジャーズが世界各地で猛威を振るい始めた事態に、ウッズは被害が出ている現場の調査に乗り出した。

 

 このブラッディ・レンジャーズからの一方的な宣戦布告に、無益な争いを拒むスター・コマンドーは落胆し、騒動の発端であるミラールは自責の念に駆られてしまう。

「ごめんなさい、私のせいで……」

「まったくだ。君のせいで、また戦いが起こってしまった……!」

 謝罪を述べるミラールに、セレブナイトが憤りをぶつける。

「面倒なことになったな」

 ミラールを拘束および保護した経緯から、ブラッディ・レンジャーズとの全面対決に発展してしまった顛末に修司は考え込んだ。

 すると自責の念で考え込んでいたミラールが、突然周りの皆々に提案を持ちかけた。

「……そうだ! さっき、罪を償えって言ったわよね、ジュン? じゃあ私を聖龍隊の一員に……異常者(ヒール)ハンターにしてよ! 修司や新人のみんなとの息もバッチリだし! なんと言ってもブラッディ・レンジャーズの事ならまかせてよ!」

「えぇ!? な、なにを急に言い出すの、ミラール!」

「ママ、任せてよ! 私、ブラッディ・レンジャーズで色々と銃火器の扱いは学んでいるし、国を抜け出した際に持ち出したミラージュ・ガンでどんな敵も百発百中よ!」

 突然のミラールの提案に驚く実母の鏡の国の女王だが、ミラールは自分の腕を信じてほしいと嘆願。

 しかし、このミラールの提案を彼女を快く思わない順一達スター・コマンドーが反対する。

「何を言うんだ! 君みたいなのをハンターとして……まして仲間として認められる訳ないだろ! 冗談はやめてくれ!」

「本気よ! それが私の罪滅ぼしよ!!」

 反対する順一達に、ミラールは自身の罪滅ぼしとして古巣でもあるブラッディ・レンジャーズと戦う決意を示す。

 と、そんなミラールの決意を目の当たりにして愕然とする多くの中で、バーンズが唱えた。

「ミラールが素直に戻れば問題解決……だが、どうやらそうも行かなくなってしまったらしい」

「!?」

 強制的に自身をブラッディ・レンジャーズに引き渡す気なのかと一驚するミラール。するとバーンズに続いて修司が真実を突き付けた。

「そうだな。奴らはマトモじゃない。当然話し合いも通じないだろう。ミラールが戻ったところで大人しくなるとは到底思えない。それ以前にミラールは……戻る気がないだろうしな」

「さっすが総長! 私のこと解ってるぅ! それに私、前々から総長やジュン達に憧れてたのよ! 私も戦う! 聖龍隊の一員になりたいの!!」

 自分の事を理解してくれている修司の思考に賛同するかのように、自分は修司や順一達に強い憧れを抱いていたと唱えるミラールに、順一は厳しく強く唱え返した。

「憧れだけで務まる仕事じゃない!」

 順一が手厳しい一言を告げた矢先、修司は聖龍隊の新人達を引き連れて出撃しようとしていた。

「ここでゴタゴタ言っていても始まらない。俺は行くぜ」

「あっ、あ、待ってよ!」

 ミラールが自分も着いて行こうと修司達を制止すると、修司はミラールに言った。

「俺たちは俺たちで行動する……ただ、止めはしない。勝手にすればいいさ」

 この修司からの許しともいえる言葉を受けて、ミラールは感激した。

「やった! ジュン、もしバウンティーハンター達を全員捕まえたら私のこと認めてよ!」

 そしてミラールは順一達にブラッディ・レンジャーズを全員捕縛したら認めてくれるよう嘆願すると、順一はミラールに例のブツを投げ渡した。

「そこまで言うのなら……僕たちを納得させてみろ!」

 順一は押収されていたミラールの愛銃ミラージュ・ガンを二丁とも彼女に投げ渡した。

「忘れ物だ」

 順一から愛用しているミラージュ・ガンを受け取ったミラールは笑顔で言った。

「分かった、約束よ」

 そしてミラールは宣言した通り、自らの古巣であったブラッディ・レンジャーズを制止する為に修司率いる聖龍隊の新人勢に合流しに向かった。

 

 しかしミラールを見送った順一達スター・コマンドーは、再び起こってしまった戦火に深く落胆してしまう。

「まただ、また無駄な戦いが繰り返される……」

 そんな順一達に、バーンズが切実な表情で語り掛ける。

「ジュン、スター・コマンドー、そんなに考え込むな。こうなった以上、戦う以外道はない」

 だが、そんな副長や聖龍HEADの慈悲を受け止めながらも、勃発してしまった戦火に嘆くのだった。

「こうやって何度も何度も同じ過ちを繰り返してきた……なぜ二次元人同士が傷つけ合わなければいけないんだ?」

 そんな村田順一を筆頭に、スター・コマンドーは全員揃ってその場から移動して姿を消した。

 多くの権力者や地位ある人々から、職務放棄などの白眼視を向けられたまま。

 

 そして聖龍隊本部から総ての通信士の指揮を執るウッズ・J・プラントが出撃する修司やミラール達に事件発生の地点を伝える。

「ディープフォレスト。忘れられた深い森の中に謎の巨大な生体反応を確認! 至急調査せよ!」

「超高度の1万メートルに所属不明の飛行空母を確認! 直ちに撃破せよ!」

「クラックされたサイバーフィールド、エレクトロスフィアから、ウィルスを排除せよ!」

「セントラルサーキット。サーキット内に仕掛けられた時限爆弾を駆除せよ!」

「強襲を受けた石油コンビナートを奪還せよ!」

「トンネルベース。特殊防衛システム基地が占拠された! 敵のライドアーマーを破壊せよ!」

「ラジオタワー。乗っ取られた中央電波塔を取り戻せ!」

「バトルシップ。海の要塞の脅威が迫る! 進行を食い止め、破壊しろ!」

 以下、合計で8か所の事件現場が修司たち出撃する隊士達に通達されると、修司は新人隊士達に伝えた。

「ブラッディ・レンジャーズが勝負の場に選んだのは、以上の8つの地点です。出撃する地点を選んで、各所の事件を解決してください!

 

「今回の敵であるブラッディ・レンジャーズは、正直俺でも把握し切れてない現状がある。よって、俺たちに同行する元ブラッディ・レンジャーズのミラールの案内の下、進撃する! 異存はないな」

 厳格で強面の修司からの指令に、新人隊士達は反論できなかった。

「さっすが総長! 解ってるじゃないのよっ。それじゃ、私の案内の元、進行する事になったから宜しくね新人さんたち」

「いくらなんでも、裏切らないよな……」

異常者(ヒール)の症状には、裏切り行為も含まれると言うし……不安が残るが……」

 自身の案内の下、進攻する事が決まった事実に得意気になるミラールだが、元とはいえ敵であるブラッディ・レンジャーズの一員だったミラールを信じていいのかと日ノ原革や六道りんねは不安がる。

 しかし修司の言う通り、自警団として名を馳せたブラッディ・レンジャーズの情報はまだまだ未知の部分が多く、その現状や各バウンティハンターの能力を周知しているミラールの協力は必須だった。

 こうして一行は一抹の不安を抱えながら、ミラールと共に各地に出動するのだった。

 

 

[密林の哲人]

 

 修司が容認した事で、聖龍隊新人勢は皆、元ブラッディ・レンジャーズであったミラールと同行する事となった。

 そんな彼らが最初に足を踏み入れたのは、草木が生い茂る深い森、密林。

 密林に到着した一行は、さっそく戦意満々のミラールを筆頭に行動を開始した。

「それそれっ、さあ、私が先陣を切って行くから、修司達は休んでいてもいいかもよ」

「調子に乗るな、ミラール」

 威勢よく先陣を切って飛び出すミラールに、修司が注意する。

 しかしミラールは、早く順一や多くの聖龍隊士に認めてもらいたい一心から敵が蔓延る密林を突き進む。

 襲撃してくる戦闘兵を、ミラールは何の躊躇もなく銃撃して倒していく。

「うぎゃっ」「ぎゃッ」

 ミラールに撃たれて、絶命して行く敵兵。

 しかしジャングルにいたのは、聖龍隊やブラッディ・レンジャーズだけでは無かった。

「た、助けてくれ!」

 なんと密林の奥地で働いていた一般二次元人の姿も確認され、彼らは激化する戦火の中で助けを求めていた。

「一般二次元人も紛れ込んでいる! 救出するんだ!」

 修司の指示を受けて、ルーシィや真宮桜にリナは身を伏せている二次元人達を救出し、安全な場所まで誘導する。

 すると戦前で活躍する新人隊士達が、混戦する戦況で戸惑っていた。

「い、いかん……! この混戦状態じゃ、敵なのか一般人なのか見分けが付かない」

 六道りんねが混戦状態で、敵と一般人の区別が難しい事を指摘すると、修司が周辺で応戦する仲間達に告げる。

「聖龍隊から支給されたスコープがあるだろ! それを目に掛ければ、敵と一般人の区別がつく筈だ! それを見ながら的確に敵だけを突破しろ!」

 修司に言われたとおりに、新人達は支給されたスコープを目に装着して、敵兵と救出するべき一般人の区別を可能にする。

 そして新人達は敵のみを撃破しつつ救出するべき一般人を助け出す。

 すると、ここで奮戦している修司に通信が入った。

「総長! ブラッディ・レンジャーズは、その戦いの様子を全国ネットで中継しているみたいです! 電波ジャックで世界中のテレビに総長達の戦闘が映し出されています!」

 これを聞いた修司は、群がる敵兵を斬り捨てながら答えた。

「それなら、奴らの思う通りにさせてやれッ。俺たち聖龍隊の、新人達の実力を全世界に生中継させてやれ!」

 修司は自分達の活躍を公にするブラディ・レンジャーズの思惑通りに事を運ばせ様子を探ってみる狙いが思案に巡らせていた。

 果敢に進撃して行く修司達一行。しかし此処で上り坂に差し掛かった時、上方からトラップとして巨大な岩石が転がって来た。

「ど、どうしよう! ここじゃ避けられない!」

「避けられないのなら、破壊しろ!」

 ルーシィ達、可憐な乙女たちが狭い道の中央で動揺する中、修司は避ける事が不可能なら破壊するまでと宣言して転がって来る岩石に斬り込んだ。

「うおりゃッ」

 修司の一刀は岩石を真っ二つに切断し、ものの見事に破壊された。

「うっひょぉ、凄いわ総長。こうなったら私も……!

 修司の見事な立ち回りに感激したミラールは、自らも二丁拳銃ミラージュ・ガンで転がって来る岩石を連射で破壊してみせる。

「あ、あの子……なかなか凄いよな」

 修司同様に岩石を意図も簡単に破壊してみせたミラールの技量に驚きが隠せない日ノ原革。

 と、誰よりも前進する修司とミラールだったが、ここで敵の不意打ちにあった二人は一瞬ばかし怯んでしまう。

「こ、この……!」

 修司はすかさず敵に反撃し返り討ちにするが、ミラールは敵の奇襲を受けて上って来た高所から足を踏み外してしまった。

「う、うわっ」「ミラール!」

 敵を倒すのに夢中だった修司は、足を踏み外したミラールに気付くのが少し遅れて、ミラールはそのまま奈落へと落ちそうになる。

 修司以外の、新人達も落下していくと思われるミラールを助けようと駆け出した。

 だが、ミラールは落下しなかった。彼女は自身が着用しているアーマースーツの背面に備えられた小型ジェットエンジンで滞空して事なきを得た。

「なに? みんな、どうしたの?」

 何事も無かったかのように滞空しながら皆に問い掛けるミラール。すると彼女が安全地帯に着陸した途端、修司がミラールの胸倉を掴んで言い寄った。

「どうしたの、じゃねえよ! お前が落ちそうになったから、俺たちゃ余計な心配したんだぞコラ!」

 修司に激しく揺さぶられて目を回すミラールは、それから落ち着くと皆に説明した。

「このアーマースーツは特注でね、一定時間だけはホバリングつまり滞空できる代物なのよ」

 自身が装着しているスーツの機能を自慢げに説明するミラールの話を聞いて、無駄に心臓を高鳴らせたと修司達は呆然とする。

 

 そんなこんなで、一同はジャングルの最深部にまで辿り着いた。

 すると其処で彼らを待ち受けていたのは、硬石で造られた巨大な剣と盾を装備した、厳ついゴリラの獣人だった。

 彼の名はソルジャー・ストンコング。ミラールが語るには、荒くれ者の多いブラッディ・レンジャーズに於いて哲人と讃えられる歴戦の士。武人肌で正々堂々とした戦いを好んでいる。

 しかし、そんなストンコングが一般人を巻き込み、更に危険な異常者(ヒール)を戦闘員として使った今回の反乱に参戦している経緯に動揺していた。

「ストンコング……哲人と呼ばれるあなたまで、こんなバカげた事をするなんて……一体どうして!?」

 ミラールが問い詰めると、ストンコングは険しい面差しで己が真意を唱える。

「我らは……我は既に道をたがえた」

 そして背中に背負っている剣を握り構えるとミラールに信念を説く。

「……ならば、あとは己の信念に従い、突き進むまで」

「でも、今のバウンティハンターのやっている事は……」

 しかしストンコングの真意を聞いても、今のブラッディ・レンジャーズが行っている行為は由々しき事だと述べようとするミラールに、ストンコングは言い放った。

「無論っ! 偽りの策謀家の為ではない!」

 ストンコングは剣を抜刀する構えで更に言い放つ。

「我が戦いは、忠義が為! ……いざ、参らんっ!」

 この自らのリーダーであるブラッドに忠義を貫く姿勢を示すストンコングを前に、修司は彼の実力の高さを見抜く。

「……できるな」

 するとストンコングは修司を視認して、彼を称賛し始めた。

「……貴様が……修司、か……この世で最も勇ましく舞う鬼神よ」

 ストンコングは厳つい顔で、修司に説き語った。

「我が名は、ストンコング。戦いの中でしか己を見出せぬ……そう、そなたと同じにな……」

 このストンコングの称賛を受けて、修司は険しい顔付きで言い返した。

「敵に称賛されるとは、歯がゆいものだ。だが、一つだけ間違っているぞ。……俺は戦いを全てだとは思っていない!」

 するとこの修司の反論を受けたストンコングは喝を入れるかの如く強く言い放った。

「否!!」

 ストンコングは剣を抜刀して修司達に唱えた。

「我は貴様ほど純粋な戦闘に特化した生命(いのち)を見たことはない……ここからは、戦いの為の戦い。参られよっ!」

 

 こうしてストンコングから戦いの始まりを告げられた一行は、歴戦の士であるストンコングと開戦する事に到った。

 武人として、決して手を抜かず、全力で戦う事を望むストンコングは、硬石で作り上げた剣を振り翳して、修司の聖龍剣と激しく火花を散らした。

 力と力、武人としての誇りと誇り、信念と信念がぶつかり合う戦場で修司とストンコングは激しく剣を振るい上げる。

 そんな修司に助太刀しようと、聖龍隊の新人たちもストンコングに攻撃を開始。

 するとストンコングは、自前の得物である盾ガイアシールドを投げ飛ばして新人達に応戦する。

「来たぞ!」

 りんねの一言から、彼やナツ達は投げ付けられたガイアシールドを避ける。

 一方で、修司は未だ激しくストンコングと剣戟を続けてた。

 すると此処でようやく修司はストンコングの硬石で作られた剣を破壊する事が叶った。

 だがストンコングは「この程度で壊れようと……我の念力で簡単に剣も盾も再生できるわ」と、言うとストンコングは高らかに呻り声を上げて自身の両手に硬石製の剣とガイアシールドを蘇らせた。

「なるほど……簡単に武器を破壊するのは不可能って事か」

 再生した武器を目視して、修司は目付きを鋭くさせる。

「ウホホホッ」

 ストンコングは高らかに呻り声を上げると、再生したばかりのガイアシールドを戦前の隊士達に投げ付けて攻撃。そのガイアシールドをヒーローマンが押さえ付けて動きを止める。

 するとヒーローマンがガイアシールドを止めている間に、ナツとグレイそしてエルザがガイアシールドに一斉攻撃。ガイアシールドは瞬く間に粉砕された。

 4人の活躍により、ガイアシールドが破壊された頃、修司の方はストンコングと激しい剣戟を再開していた。

「お前、出来るな……! なんでこんな馬鹿げた反乱なんて起こした!?」

 激しい剣戟の最中、修司はストンコングに何ゆえブラッディ・レンジャーズが起こした反乱に参戦しているのか問うと、ストンコングは真っ直ぐな目で物申した。

「我は、偽りの策謀家の為に戦っている訳では無い……! 我が戦いの全ては忠義! 我らがリーダー、ブラッドへの忠義が為なのだ!」

「忠義心は固く確固たるものか……敵ながら、天晴れ!」

 修司はストンコングのブラッドへの忠義心を称賛しながらも、刀を揮う。

 するとその時。修司の力がフッと少しばかり抜けてしまった。ウツによる症状なのか、修司の力が抜けた瞬間、ストンコングが振るう剣が修司の聖龍剣を弾き飛ばしてしまう。

 聖龍剣を弾き飛ばされて、がら空きになってしまう修司にストンコングは申し付けた。

「もらった!」

 ストンコングは巨大な硬石の剣を振り上げて、修司を叩き切ろうとした。が、その時だった。

「そうはさせない!」

 ミラールが飛び出してきて、ストンコングの顔面に無数の銃撃をお見舞いする。顔面を攻撃され、後ろへとよろめくストンコングを目視しながら、ミラールは修司に言った。

「さあ! 今の内に聖龍剣を!」「あ、ああ」

 ミラールの言葉に返事した修司は、彼女の援護のお蔭で弾き飛ばされた聖龍剣を拾いに行けた。

 そして聖龍剣を素早く拾った修司は、すかさずストンコングに銃撃するミラールに助太刀しようと駆け付ける。

「そう簡単には……行かんぞ!」

 しかしそれを目視したストンコングは再びガイアシールドを再生させると、その盾で修司の斬撃を防ごうと構える。

 すると此処でミラールが修司に呼び掛けた。

「修司! ガイアシールドの中心、コアを狙って! あそこが弱点なの!」

 ミラールの助言を聞いて、修司はガイアシールドの中心にあるコアを斬り付け、そして同時にミラールもシールドのコア目掛けてミラージュ・ガンの銃撃を撃ち付けた。

 二人の攻撃を弱点であるコアに直撃させられて、シールドは一瞬で粉砕。驚愕するストンコングに修司とミラールは二人同時に斬撃と銃撃を浴びせた。

 銃撃と斬撃、二重の攻撃を受けてストンコングは耐え切れなかった。

「見事だぁあああああああああああああ!!!!!」

 修司とミラール、二人の攻撃を浴びてストンコングは称賛の言葉を吼えながら絶命した。

 哲人として、戦士として生き抜いたストンコングらしい、潔い最後であった。

 

 

 

[ラジオタワーの芸人?]

 

 密林の中で待ち構えていた哲人、ソルジャー・ストンコングを撃破した修司とミラール一行は、次なる目的地へ移動する為、巨大移送ヘリに搭乗して移動していた。

 その機内の中で、改めて己の罪滅ぼしとして戦っているミラールに質問が押し寄せた。

 その質問の中には「なぜブラッディ・レンジャーズから逃げ出したのか?」という質問が多数寄せられた。

 これにミラールは得意気に話した。

「そうそう! 言ってなかったわね。私がブラッディ・レンジャーズから逃げ出した理由はコレよ」

 そういうと、ミラールの全身が光り輝き、彼女の姿が一変して、質問してきた内の一人であるルーシィ・ハートフィリアの姿に変わった。

「二次元人の姿や能力を、そっくりそのままコピーして変身できる」

 そうルーシィの姿で語ったミラールは、再び姿を元に戻すと愛想笑いを浮かべながら更に説明した。

「でも……完璧じゃないのよ。ミラーショットを使っても姿を変えられるのは、私に近い体格の二次元人だけみたいなのよ……コピーできる能力にも、限度があるし」

 このミラールの自身の能力の説明を聞いた修司は驚いた。

「その能力……! アッコも使える変身能力か!?」

「驚いたでしょ? へへっ、これも私が国を抜け出した際に持ち出したミラーショットスーツの性能なの」

 ミラールが語るには、彼女が着ているアーマースーツは元々鏡の国にあったのを、国を抜け出す際に持ち出した品であり、更にブラッディ・レンジャーズで改造された専用のスーツらしい。

「その能力で、お前は今までブラッディ・レンジャーズで名を挙げてきたって訳か」

 修司はミラールが、あのミラーガールの変身能力に近い程の変身能力で名を挙げて来たのかと訊くと、ミラールは苦渋な表情で答えた。

「うん、まあね。ブラッドに拾われて……この能力のおかげで強敵を倒してきたんだけど、思いも寄らない事が起きたの」

「思いも寄らない事?」

 ミラールの言葉に、修司達は不思議がった。

 すると移送ヘリは次の作戦地点へと到着したと報告が入る。

「……話の続きは後にしましょう。今は各地で暴れているバウンティハンターを止めないとね!」

 そうウィンクしながら皆に言うミラールは、誰よりも活躍した一心からまだ着陸していないヘリから飛び降りて逸早く事件現場へと急行した。

「あっ、おいおい……ふぅ、いくら認めてもらいたいからって、少し焦り過ぎな面も目立つな」

 修司は誰よりも早く現場に急行する為にヘリから飛び降りるミラールを見て、彼女が少し焦っている様に思えた。

 そしてミラールは、ブラッディ・レンジャーズで改造されたスーツの滞空できる機能を用いて、ゆっくりと地上に舞い降りると事件現場であるラジオタワーを見上げた。

「待ってなさいよ……デポニオン!」

 ミラールはかつての仲間の名を口にしながら、真っ先にブラッディ・レンジャーズに占拠された日本のラジオタワーを駆け上った。

 

 既にラジオタワーの電波塔は、ブラッディ・レンジャーズが解き放った凶悪な異常者(ヒール)が制圧していた。

 そんな状況下で一足先に電波塔に進入して一般人を救出する任務に就いていたニュー・スターズの面々が苦戦していた。

「チクショー―、敵が多すぎて一般人を安全地点まで誘導する事ができねえ……!」

 ニュー・スターズ総部隊長のフロートは、敵が蔓延る電波塔で保護した一般人を安全な場所まで誘導できずに困惑していた。

 そんなニュー・スターズを敵である異常者(ヒール)は容赦なく遠距離から銃撃を仕掛けてくる。

 すると其処に、ミラールが駆け付けてきてニュー・スターズを攻撃する異常者(ヒール)達の頭をミラージュ・ガンで撃ち抜いて倒していった。

「あらら? あなた達は確か……ニュー・スターズの皆さんじゃないの。こんな所で立ち止まっていたんじゃ、敵の恰好の的よ」

「う、ウルセェ! まだ仲間にも認めて貰ってないテメエに言われた義理じゃねぇやい!」

「あらら、ごめんなさい。でもね、異常者(ヒール)相手に躊躇っていたんじゃ、敵の思うツボよ」

 ミラールはフロート達に指摘すると、そのまま進軍しようと駆け出そうとした。

 すると其処に修司達が遅れてやって来て、ミラールやニュー・スターズと合流する。

「ミラール! ……それにフロート! お前らも居たか!」

「そ、総長!」

「オレ達はオレ達で、一般人の救出に駆け付けたんだが……敵が多くて進めなくてよ」

 修司がニュー・スターズに気付くと、マカ=アルバーンやブラック☆スターが修司に状況を報告する。

「よし、俺達が活路を見出す。その間にお前らは一般人の救出と誘導を任せた。敵は俺やミラールで片づける、その後始末は任せたぞ」

 報告を聞いた修司は、ニュー・スターズに一般人の救出と保護そして安全地への誘導を一任させる。

「よし! 俺達はこのままラジオタワーの頂上に進軍するぞ! ニュー・スターズは俺達が敵を片づけ終わった所で一般人の保護を任せたぞ。行くぞ!」

 修司は聖龍隊の新人達と共に頂上へと進軍していく。

 するとまたしてもミラールが一人先走り、単独で進撃してしまう。

「ミラール、先走るな! 焦るとかえってヘマするぞ!」

「平気、平気」

 しかしミラールは修司の注意を聞き流して、先へ先へと進んで行ってしまう。

 だが進撃するミラールの腕は確かで、彼女は倒すべき敵と救出するべき一般人が入り乱れる中、敵のみを狙撃して一般人は狙わなかった。

「……狙撃の腕は、いいようだな」

 そんなミラールの腕前を見て、修司は彼女の狙撃と状況確認の判断力を評価した。

 と、修司達が進軍していたその時、電波塔の真上から巨大なヤドカリ型の戦闘ロボットが、鉄柱を伝って降りてくると触腕とモノアイから出るビームで攻撃してきた。

「な、なんだ! このヤドカリは!?」

「ブラッディ・レンジャーズが仕掛けた戦闘兵器だろう。コイツは俺達が引き受ける! お前らは一般人の保護を続けてくれッ」

 巨大ヤドカリ型ロボットに驚愕するフロートに、修司は彼らニュー・スターズに一般人の保護を続ける様指示する。

 そして修司ら新人勢は、巨大ヤドカリ型ロボットの攻撃で崩落した床を跳び越えながら、頂上へと進軍するのであった。

 そんな修司達の活躍を目の当たりにし、ニュー・スターズは一般人の保護と誘導に専念した。

「それじゃ、おれ達は引き続き救出と誘導に専念しようぜ。戦いは総長達に任せれば、安心だろう」

 フロートは仲間であるニュー・スターズ隊士達に告げると、即座に行動に移った。

 そんな中、ニュー・スターズの一員であるアンリエッタは現場に駆け付ける事は無い平賀才人たちスター・コマンドーの事を思っていた。

「才人さん……」

 今や争いや戦いを毛嫌いするスター・コマンドーは、人命救助の任務とはいえ戦場の真っただ中に立たされる事を嫌い、今回のニュー・スターズの様に戦闘も任務に含まれる事態には関与していなかった。

 

 その頃、修司達は。

 触腕を伸ばして攻撃してくる巨大ヤドカリ型ロボットの猛攻を掻い潜りながら、どうにか頂上付近まで辿り着いた。

 しかしヤドカリ型ロボットは修司達を追い詰め、一つ目であるモノアイからレーザーを直射して修司達を攻撃する。

 すると其処に聖龍隊の通信長であるウッズから通信が入った。

「修司様、皆さん! その兵器の弱点は、一つ目であるモノアイです! モノアイを中心に攻撃して下さい!」

 ウッズからの助言を聞いて、ミラールや聖龍隊の新人達はヤドカリ型ロボットのモノアイに集中攻撃。

 だが、そんな遠距離からの攻撃が得意ではない修司は、聖龍剣で自らに降り注ぐレーザーの攻撃を防ぐしか、やる事が無かった。

「あんたも戦えよ!」

「ウッセェ! 俺は遠距離型の攻撃は苦手なんだよ! 接近戦がメインなんだ!」

 隣で攻撃して行くナツ・ドラニグルにツッコまれる中、修司は接近戦が主な戦術だと説き返す。

 すると、この話を聞いたミラールが一つ思い付く。

「! そうだわ。接近戦が得意な人の為に、私が……」

 そう呟くと、ミラールは床場に掴まっているヤドカリ型ロボットの足を狙撃して破壊。ヤドカリ型ロボットを前のめりに倒してしまう。

 するとヤドカリ型ロボットのモノアイは、足場に急接近して接近戦が得意な者でも容易に攻撃できる様になった。

「今よ! モノアイに攻撃しましょ!」

 ミラールの掛け声に反応し、修司や六道りんね達は彼女と共にモノアイに集中攻撃。

 するとヤドカリ型ロボットは瞬く間に爆発して、電波塔から落下して行った。

「あ~~あ、あんなデカいのが落下したら……余計に公共物に被害が出る」

 修司が被害拡大を懸念する発言を述べると、ミラールは軽々しく口を叩く。

「大丈夫大丈夫。今はそんな事よりも、電波塔を占拠しているアイツを倒さなくっちゃ」

 ミラールは元仲間であるブラッディ・レンジャーズのハンターが待ち受けているであろう電波塔の頂上に急ぐよう、皆を急かす。

 

 そして修司達は巨大ヤドカリ型ロボットを破壊して、ラジオタワーの頂上へと辿り着いた。

 頂上である屋上は、戦闘ステージに改造されており、円形の屋上を取り囲む塀には強力な電気が流されていた。

 そんな屋上で待ち受けていたブラッディ・レンジャーズのバウンティハンターはというと。

「グルグルダス」

 なんと踊りながら登場してきた。

「ガハハハッ! オラの爆笑ステージへようこそダス!」

「? カボチャ?」

「違うわよ、彼はタマネギ型の植物人。トルネード・デポニオン。カボチャに見えなくもないけど、タマネギが正解よ」

 登場してきたデポニオンを見て、修司が黄色い容姿からカボチャかと勘違いするとミラールが正しく指摘する。

 そんな修司に説明するミラールの顔を見て、デポニオンは笑いながら話し掛ける。

「ガハハハッ! ミラール、いい顔になったダスな。一皮むけたダス。でも、オラもむけたダス!」

 するとデポニオンは自分の本体を覆う皮の装甲を開いて一発。

「びろ~ん……ガハハハハッ!」

 と、自分なりのギャグを披露する。

「アハハハ……相変わらずね……」

 昔から陽気な性格で他人を笑わせる事に生き甲斐を感じるデポニオンのギャグを前にし、ミラールは苦笑いを浮かべる。

「ま、まさか!? 電波塔をのっとって、オラの華麗な踊りを放送する計画を止めに来たダスか?」

 そんなミラールの苦笑を前にし、デポニオンは自らの人畜無害な計画を口にする。と、ミラールは平然と言い切った。

「うん。ブラッドもきっと怒ってモニターを壊しちゃうからね!」

「ガーーン……ダス!」

 ミラールからの指摘に悲愴を受けるデポニオンに、修司が追い打ちの言葉を掛ける。

「……おい、もういいか? いくぞっ!」

「ますますガーーン……ダス!」

 自分の踊りやギャグを横目にされて、更に衝撃を受けるデポニオンと修司達の戦闘は勃発した。

 

 トルネード・デポニオン

 ミラールが語るには、陽気で他人を笑わせる事を生きがいにしているが、こう見えてブラッディ・レンジャーズでは「踊る暗殺者」の異名をとる刺客らしい。

 一見するとカボチャに見えるが、実はタマネギ型の植物二次元人であり、電撃系の能力者でもあるらしい。

 

 そんなトルネード・デポニオンは、自らの踊りを世界中に放送しようとする人畜無害な計画を阻止されるのを恐れてか、修司たち聖龍隊に自らの体の装甲を様々な陣形にして攻撃してきた。

「ぐるぐるダス、ぐるぐるダス」

 タマネギの皮に見立てた装甲を、陣形を成して修司達の方に飛ばしてくるデポニオン。

 修司達はデポニオンが飛ばしてくる陣形を横へと回避して攻撃に転ずる。

「これでどうだ!」

 六道りんねが死神の鎌から斬撃を放って、デポニオンを攻撃。するとりんねに続いてナツとグレイの二人もデポニオンにお得意の炎と氷の攻撃魔法で攻める。

「まだまだダス!」

 しかし数多の攻撃を受けても尚、デポニオンは装甲を陣形に変えては、その強力な電撃を帯びた陣形を飛ばして修司達を攻め続ける。

 修司はデポニオンが飛ばしてくる陣形を回避して即座にデポニオンに駆け寄って斬り込む一方、ミラールは回避すると回転運動しながらデポニオンに射撃する。

 すると此処でデポニオンが飛ばしてくる電気を帯びた陣形が、リナや真宮桜たちの方へと飛んでいってしまう。

 二人を死守しようと、ジョーイの命令を受けてヒーローマンが素早く移動し、向かってくる陣形を自力で押し返して防ぐ。

 既にラジオ塔の屋上の周囲の壁は、デポニオンが改造していた為か電流が流れていた為に逃げ場は無かった。

 そんな背水の陣の戦況で、修司とミラールは挙ってデポニオンを攻撃し続ける。

 と、その時だった。修司とミラール、そして他の多くの新人隊士の攻撃を受け続けたデポニオンが、苦しそうに訴え掛けてきた。

「お、お願い……助けて、ダス」

 突然のデポニオンからの救済を求める声に、真宮桜やモルジアナそしてエンゲキブやルーシィが耳を傾けると、デポニオンは苦し紛れに訴えた。

「頼みがあるダス。オラたちを、ブラッドを止めてほしいダス……」

「!? 一体どういうことなの?」

 真宮桜が問い返すと、デポニオンは苦しそうに答えた。

「センセイの……改造を受けて……オラたちは……」

「……センセイ? センセイって何の事なの!?」

 ルーシィがデポニオンを問い詰めるが、次の瞬間デポニオンは転がり回りながら叫んだ。

「止まれないダス……コントロールできないダス……おねがいダス、自分が自分でなくなる前に……救ってほしいダスーー!」

 デポニオンの突然の救いの声を聴いて、愕然とする一同。だがデポニオンは次の瞬間、人が変わったかのように目の色を変えて暴れ回った。

「グルグルダス、グルグルダス」

 先ほどよりも尋常でない程の巨大な装甲の陣形が織り成す電撃の壁を飛ばしてくるデポニオン。

 そんな電撃の壁を飛ばされるだけでなく、巨大な電撃の竜巻を発生させて攻撃してくるデポニオン。

 電撃を纏う装甲の陣形と、周囲に展開される電撃の竜巻の二重攻撃に苦戦を強いられる一行。

「ッ、どうなってるんだ!? いきなりパワーアップしやがったぞ!」

 突如として戦闘力が上昇したデポニオンを目前に、修司は動揺した。

 そしてデポニオンは正気を失ったかのように、円形のラジオ塔屋上で幾度となく電撃の竜巻を発生させて聖龍隊を追い詰める。

「グルグルダス、グルグルダス」

 何重にも仕掛けてくる電撃の竜巻を浴びて、新人達は強烈な電撃に痺れてしまう。

 そんな電撃の嵐とも捉えられる戦況に、ミラールは集中して的を狙った。そして彼女は的であるデポニオンを、電撃の竜巻の中央にいるデポニオンを銃撃で撃ち抜いた。

「ダス!?」

 ミラールに撃ち抜かれて動きを一旦止めるデポニオンを目視し、修司が今が好機と言わんばかりにデポニオンに斬りかかった。

「今だ!」

 修司の斬り込みを同じく視認して、他の聖龍隊新人達もこぞってデポニオンに攻撃を仕掛けた。

 その結果、デポニオンは大打撃を受けて爆死した。

「寒かったダスかぁーーっ!?」

 ミラールの狙い澄ました射撃が勝負の勝敗を決めた結果に、修司たち一同は彼女を称賛する。

 が、ミラールは元仲間であったデポニオンを倒した結果に満足せず、どこか心寂しそうだった。

 

 

 

[バトルシップを撃沈せよ!]

 

 トルネード・デポニオンを撃破し、次なる目的地に移動していく修司たち。

 そんな移送ヘリの機内で、ミラールは先ほど移動中に語った話の続きを修司達に語り出した。

「そうそう、話の続き……私の仲間ブラッディ・レンジャーズには腕利きの二次元人ばかり揃っていたの」

「ほとんどが犯罪者だと聞いているが?」

 ミラールの話を聞いて、その殆どが犯罪者などの無法者だと厳しく聞き返す修司にミラールは慌てて反論。

「そっ、そんなこと無いわよ!! 基本的には悪い事はしない主義! ……そりゃ時には悪い事する連中もいるけど」

「………………それで?」

 ミラールの話を聞き入れながらも、修司が問い返すと彼女は皆に難しい顔で語り明かした。

「でも本当に悪い事なんてする事は無かったのよ。みんなブラッドの指示に従っていたから。なのに……突然みんな変わっちゃったのよ!」

「突然? どういう事だ?」

「ブラッドの言う事を聞かなくなって、異常者(ヒール)ハンターや罪もない二次元人たちまで襲い出したのよ!!」

 ある日を境に、ブラッディ・レンジャーズの面々がリーダーであるブラッドの命令を無視して罪なき二次元人までも襲い出したのだと説くミラール。

 何ゆえ、ブラッディ・レンジャーズのハンター達はある日突然、罪もない民間人にまで牙を向けたのであろうか。

 

 そんなミラールの語ってくれた疑問を聞き入れながらも、修司たち一行は次なる対決の場へと赴いた。

 次の戦場は、放棄された大型戦艦バトルシップを改造して進軍する艦隊の撃破。

 既にバトルシップを停止させようと、多くの隊士が乗り込んで艦内に搭乗されている異常者(ヒール)と激しい攻防を繰り広げていた。

 甲板では激しい戦火で既に火の海に至っている箇所も多かった。

「敵兵である異常者(ヒール)を確固撃破! それに続いて負傷した仲間を救出しろッ」

 甲板に乗り込んだ修司は、襲い掛かってくる異常者(ヒール)を斬り捨てながらミラールや聖龍隊の新人達に指示を飛ばす。

 修司達は襲い掛かる敵兵を攻撃しながら、各所で負傷して身動きが取れない味方兵を救出しながら進撃する。

「戦艦を破壊しろ! これ以上の進軍を許すな!」

 指示を飛ばした修司は、戦艦の進軍を阻止しようと、戦艦の中枢に乗り込み、内部を破壊し尽くしていく。

 そんな修司に感化されて、彼の後を追ってきたミラールもこぞって戦艦の中枢に無数の銃弾を連射して無尽蔵に破壊しまくる。

 二人の破壊活動が功を奏したのか、戦艦は大爆発。あっという間に戦艦は大火に包まれた。

「よし! 次の戦艦に移動するぞ!」

 最初の戦艦を破壊し終わった修司は、次の戦艦も同様に破壊しようと新人達を引き連れて早々に移動を開始する。

 そして皆が移動し終わったその時、最初の戦艦は遂に爆発と同時に沈没して海の藻屑と消えた。

 皆が修司の容赦のない破壊行動に若干引いていると、そこに異常者(ヒール)達が銃を持って集まってきた。

「迎え撃て!」

 群がって来る異常者(ヒール)を前に、修司は迎撃するよう指示を出す。

 敵を前に善戦する新人達。その一方で彼らは負傷した味方兵の救出も忘れず行う。

「あらよっと」

 ミラールも調子よく、転がって回避しながら敵を躊躇なく撃ち抜いていく。

 そして修司は、ヒーローマンやナツなど攻撃力の高い新人達を引き連れて、戦艦の中枢部に潜り込む。そして其処で先ほどと同様、中枢を破壊して戦艦を撃沈させる。

 修司達の労力もあって、戦艦はまたもや大爆発。激しい揺れが甲板で戦闘と救出を行うミラール達に伝わった。

「急げ! 最後の戦艦も爆破させるぞ!」

 修司は最期の戦艦にも進撃を開始させる為、仲間達に呼び掛けて飛び移らせる。

 全員が最後の戦艦に移動した頃には、既にその戦艦は度重なる戦闘で既に沈没寸前であった。

 最期の戦艦に移動し、この戦艦も完全に破壊しようと修司達が懸ろうとしていたその時。

 皆の背後である海から、三体の巨大な影が出現して襲い掛かってきた。

「きょっ、恐竜!?」

「違う! あれは首長竜型のロボットだ!」

 海から出現した三機のロボットを見て驚愕するアリババに、修司がロボットである事実を告げる。

 すると三機の首長竜型ロボットは、口から光線を発射して甲板上の修司達に攻撃してきた。

「はっ、やっ!」

 発射される球状の光線を、修司は聖龍剣で弾きながら首長竜型ロボットへの反撃の機会を窺う。

 すると此処でミラールが球状の光線を発射するロボットの口内に向けて銃を狙撃。首長竜型ロボットの発射装置を破壊した。

「今のうちに!」

 ミラールの合図を聞いて、修司が聖龍剣で斬り込んだ。すると海中から現れた首長竜型ロボットの首は一刀両断され、切断されるとそのまま爆発して粉々に吹き飛んだ。

「よし! 厄介な首長竜型ロボットは破壊できた。お次は、この最期のバトルシップだ!」

 敵が仕掛けてきた首長竜型ロボットの破壊を終えた修司は、最後の戦艦撃破に挑む。

 しかし最期の撃沈寸前の戦艦には、戦艦と一体化している巨大ロボットが修司達の行く手を阻む。

「チッ、最後にこんな大物が待ち受けていたとは……! ロボット周囲にある砲口を狙って攻撃しろ!」

 修司はロボットの周囲に点在している砲口を攻撃して、攻撃の手段を塞ぐ様に指示を飛ばす。

 その修司の指示を聞いて、ミラールはロボットの砲口を狙撃して破壊していく。

 しかし巨大ロボットも黙って攻撃されている訳ではなく、自らの周囲に点在する砲口から砲撃を放って甲板上の面々を攻撃していく。

「きゃあっ!」

 その砲撃は、真宮桜やルーシィ達の目前に飛んできて、辺りを硝煙に巻き込ませる。

 と、そこに修司が駆け付けては砲撃を聖龍剣で斬り付けて、未然に防いでみせる。

「俺が砲撃を防いでいる間に、お前らはロボットを破壊しろ!」

 修司は接近戦では破壊は難しいであろうロボット戦では、自ら防衛戦に徹して仲間を援護する態勢に入る。

 修司が砲撃を防いでくれている間に、ミラールが全ての砲口を撃ち抜いて砲撃の手段を奪う。するとロボットは動きを鈍らせて、次の瞬間には爆発した。

 ロボットが爆発すると同時に、一体化していた戦艦も爆発して吹き飛んだ。

「飛べーーッ!!」

 爆発する戦艦から海に飛び込む様に叫び付ける修司の言うとおりに、ミラールも新人隊士達も海へと飛び込んで爆発から逃れる。

 

 そして全ての戦艦バトルシップが撃沈され、海の底に沈められた。

 海に飛び込んだ修司達は、海中に沈みかけている足場によじ登り、海中から上がる。

 その足場から足場へと飛び移り、移動していくと、案の定沈みかけていた足場が沈んでいき、修司達はバトルシップの瓦礫が山積みになって出来た三つの足場へと移動した。

 すると、皆が三つの頑丈な足場へと移動したその時、移り渡ってきた足場が突如海中からのミサイルで爆破されて後戻りができなくなってしまった。

 皆が突然の事態に困惑していると、海面に背中を向けて立っていたアラジンとモルジアナの背後から薙刀を振るう存在が奇襲してきた。

「そりゃっ」「うわっ!」「ぐっ……!」

 背後の海から奇襲してきた、その魚人型二次元人はアラジンとモルジアナを切り付けると目前にいるミラールに向かって言い放った。

「待ってたぜ……裏切者!」

 この発言に対してミラールは目つきを鋭くさせて言い返した。

「やあ、久しぶりね……卑怯者!」

 互いに罵り合う両者。この時、ミラールと罵り合っていたのは、ブラッディ・レンジャーズの一員であるスプラッシュ・ウオフライ。別名、蒼海からの追跡者の異名を持つ二次元人。

「クッ、痛め付けてやるぜ!? 前から、てめぇの事は気に入らなかったんだよ!」

 更にミラールとは前々から仲が悪く、そんな彼女に暴言を吐く。

「あら、気が合うじゃない……私もまったく同じよ」

 しかしそのミラールも馬が合わないウオフライを罵り合う。

「生意気な奴めぇ~、ぶちのめしてやるっ!!」

 そんなミラールの罵声を前に、ウオフライは戦闘態勢に入ろうとする。

「おい、お前。ミラールとは折り合いが悪かったと見えるが……それ以前に、俺たち聖龍隊に痛め付けられる前に投降した方がいいんじゃないか?」

 と、そんな戦闘態勢に入ろうとするウオフライに修司が問い掛けると、ウオフライは嘲笑しながら修司に言い返した。

「ひゃっははっ! ここまで来れたからって、いい気になるなよ?」

「フッ、お前のバトルシップは海の底だ……無理せず逃げた方が良かったんじゃないか?」

「ばーーかっ! ここまでは計算通りだって言ってんだよ!?」

「?」

「オレの絶対領域に、てめぇら自身がしちまったんだからなぁ!! ひゃはははは、行くぜ!!」

 そうウオフライが叫んだ次の瞬間、ウオフライは海中に飛び込んで身を潜めた。

「みんな気を付けて! アイツは水中からの不意打ちが得意な厄介者なのよ!」

 海中に身を潜めるウオフライの戦法を皆に伝えるミラール。

 すると案の定、ウオフライは足場に点在する新人達の背後から襲撃してきた。

「ひゃっはは!」

 薙刀を構えて斬りかかってくるウオフライの奇襲にエルザや氷麗たちが巻き込まれる。

 そして小心者なのか、ウオフライは斬りかかると即座に海中へと飛び込んで身を隠してしまう。

「ッ、気を付けろ! 背後から奴は襲ってくる。全員、互いに背を預けて奴の攻撃に備えろ!」

 修司が出した指示通り、皆は互いに背を預けてウオフライが潜む海中に背後を向けなかった。

 と、そんな足場の上の状況を海上の遠くから視認したウオフライは、海中でとある仕掛けを発動させた。

(ぐひひ、このミサイルで奴らを引っ掻き回してやる)

 ウオフライは海中に隠していた追尾ミサイルを発射して、足場に固まっている聖龍隊の面々を攻撃した。

 発射された追尾ミサイルは、3つある足場の1つを覆う程の爆撃を見舞い、足場の中央で固まっていた聖龍隊の新人達を爆撃が襲う。

「うわあっ!」「に、逃げろ!」

 突然降り注ぐ追尾ミサイルの爆撃に逃げ惑う新人達。

 そんな逃げ惑う新人達が海中に接近した瞬間、それを見越してウオフライは海中から飛び出て薙刀で攻撃。

 そんなウオフライを修司が駆け寄って斬り付けようとするが、ウオフライは小物の様に再び海中へと逃げてしまう。

 卑怯者とはいえ、地の利を生かした戦法をしてくるウオフライに、苦戦を強いられる修司達。

 しかし多くの新人やミラールがウオフライの姑息な戦術に苦戦している中、修司はある秘策を思い付く。

「!? そ、総長?」

 突然、海面に背中を向けて抜刀の構えをする修司に、澤田綱吉が最初に気付く。

 誰もが修司の突然の行動に不思議がり、謎に思う。そんな中、皆の死角から攻撃してばかりのウオフライが修司の謎の行動に気付いた。

「! あぁん? 何の真似だ? まあ、いい……何に集中しているのか分かんねえが、また海中から斬り付けてやるぜ」

 ウオフライは海に背中を向けている修司にも、死角からの奇襲を仕掛けようと海中に潜った。

「そ、総長! そんな事してたらウオフライのいい標的よ!」

 必ず背後を取って攻撃してくるウオフライのいい的だと修司に問い詰めるミラール。しかし修司は物静かに抜刀の構えを崩さず、態勢を維持するばかり。

 すると案の定、海中からウオフライが飛び出してきて、修司の背中を取って彼を斬りかかろうと迫る。

 が、次の瞬間、修司は聖龍剣を抜刀してウオフライが振り翳す薙刀を背面越しで弾き飛ばした。弾かれた薙刀は海へと落ちて海中に沈んでしまう。

 そしてウオフライが愕然とする暇も与えることなく、修司は背中越しでウオフライの腹部に聖龍剣を突き刺した。

「フッ、必ず背後をとってくると解っていれば、これぐらい造作もない事よ」

 そう微笑すると修司は聖龍剣をウオフライの腹部から抜いて、鞘に戻した。

 一方のウオフライは、死角である背後から襲いかかったにも関わらず、その戦術を逆手に取られて日本刀である聖龍剣を刺し貫かれた事実に、衝撃のあまり思わず笑い出した。

「ふぇ、ふぇっへっへっへっへぇ~~!!」

 チンピラの断末魔っぽい。卑怯者というか小物の台詞らしい最後の言葉を残し、ウオフライは爆死した。

 

 絶対の死角である背後からの攻撃を弾いただけでなく、見えない背後の敵に武器を直撃させた修司の腕前に驚愕する新人達。

 しかし、そんな新人達と同様に驚愕しながらも同時にそんな修司の凄腕に感激してしまうミラール。

「わあ……っ!」

 思わず目を輝かせて修司の抜刀の腕前に感激するミラール。

 こうして地の利を生かして戦って来たスプラッシュ・ウオフライとの戦いは辛くも幕を下ろした。

 

 

 

[石油コンビナードの熱戦]

 

 スプラッシュ・ウオフライとの戦いを終えた修司たち一行。

 次なる目的地に移動する間、修司は戦前にミラールが話していた話題について彼女に問い掛けていた。

「奴らは突然変わったと言っていたな」

「ええ……ある日ブラッドからコピーしたDNAデータを渡すよう言われて……それまでは一度もそんなこと言われたこと無かったのに……」

 難しい顔で語るミラールの話を聞いて、修司は血相を変えた。

「まさか……?」

「そうなの。それから暫くしてみんなが、どんどんパワーアップし始めたの」

「DNAデータを利用したのか? そんな危険な……!」

 二次元人に他者のDNAデータを利用して肉体改造を施すのは、非常に危険な行為だと自覚している修司。するとミラールは堰を切った様に言い放った。

「多分ね……詳しい事は解らないけど。ブラッドは何も教えてくれなかったから……でもこれだけは確か、私はいつの間にか利用されてたのよ!! 私自身が持つ変身能力のせいで!!」

 ミラールは、自身が持つ変身能力のせいで、いつの間にか仲間だったブラッディ・レンジャーズから利用されていた事実に落胆していた。

 

 そんなミラールの苦心を知って、彼女の悲痛な想いを目の当たりにする修司と新人隊士たち。

 だがブラッディ・レンジャーズとの戦いは終わらない。

 次に彼らが向かった対決の場は、ブラッディ・レンジャーズによって強襲されて占拠された石油コンビナード。

 現場に到着した一行は、まずコンビナードに取り残された作業員の救出に取り掛かる。

「大丈夫か? すぐに助けるぞ」

「うぅ、す、すまない……」

「早く! 安全な場所は向こうです!」

 六道りんねや真宮桜たちの懸命な救助活動が続く中、修司を始めとした戦闘員はコンビナードに入り浸っている異常者(ヒール)の敵兵を処理していく。

 既に石油コンビナードには多くの異常者(ヒール)が配置され、作業用の重機も戦闘用に改造されて修司たち進撃する者たちを阻む。

 敵兵の妨害を突破して、修司とミラール達はコンビナードの中心部へと歩を進ませた。

 中には巨大戦闘マシンに搭乗して戦いを仕掛けてくる敵兵も多く存在し、修司たちの進撃を阻もうとするが、修司が一刀両断して返り討ちにしてしまう。

「さっすが総長! 異常者(ヒール)には容赦ないわね!」

「お世辞を言っても、まだお前を正式に聖龍隊の一員と認めたつもりはないからな」

 容赦なく敵を斬り捨てる修司の行動に、多くの新人隊士が引く中、ミラールだけはその情け容赦ない戦術に強い憧れを示していた。そんな彼女に修司は、お世辞に近い台詞を言っても、まだ正式な聖龍隊の仲間とは認めないと厳しい発言を述べる。

 石油コンビナードは、既に多くの戦闘で各所のパイプから火の手が吹き出し、出火している現状であった為か、現場の熱気は凄まじかった。

 

 そんな凄まじい熱気で埋め尽くされる石油コンビナードの中心部に到達した一行。

 しかし、そんな一行の隣を力なく突き進み、歩み出す一体の獣人型二次元人が。

「ウゥ……ウゥ……くっ、苦しい……」

「ハイエナード?」

 それはブラッディ・レンジャーズの一員でもあるミラールの元仲間だった狂乱の炎纏いし戦士の異名をとるフレイム・ハイエナードだった。

「おい、お前がハイエナードか!? 悪いがお前に……お前たちブラッディ・レンジャーズに異常者(ヒール)の容疑がかかっている、大人しく投降してもらおうか……」

 力なく弱々しく歩いているハイエナードに、修司が投降するよう説得しようとするが、既にハイエナードは完全に狂ってしまっていた。

「お前らか? お前達がオレを苦しめているのか!? 分かったぞ! お前達を八つ裂きにすれば、苦しくなくなるっ! そうだっ! そうだろ!? そうに違いない! ヒヒヒ……」

 このハイエナードの狂った言動を目の当たりにして、修司は既にハイエナードが異常化している現状に気付く。

「コイツ、もう完全に正気を失っていやがる! このまま連行するのは無理そうだ!」

 修司が連行するのは不可能だと説いたのを皮切りに、新人達はハイエナードを討伐する姿勢を向ける。

 すると此処でミラールが皆の前に出て言った。

「みんな待って! 私が処理するわ」

 ミラールは、元仲間であるハイエナードを自らの手で処分する決断をする。

「……待ってて、いま、楽にしてあげるから……」

 ミラールは銃口をハイエナードに向けて、彼と一戦始めようとした。

 するとハイエナードは戦闘態勢に移行して、自らが操る物資運搬用の巨大ガゼル型マシンに飛び乗った。この巨大ガゼル型マシンで、狂ったハイエナードはコンビナードを占拠したのだ。

 そして更に驚く事が。なんとガゼルに飛び乗ったハイエナードは3体の分身を生み出して地上の修司達に向けて多方向からのコンビネーション攻撃を仕掛けてきた。

「燃えろーーっ! 燃えろーーっ! 燃えろーーっ!」

 と、分身したハイエナードは狂った様に同じ言葉を叫びながら修司達に火の玉を投げ付けてきた。

「うおりゃぁ! 炎なら、オレの得意分野だぜ!」

 相手が火の使い手なら、こっちが有利とナツ・ドラニグルが進撃するが、ハイエナードの分身に撹乱されて上手く本体に攻撃できない。

 すると此処で、長年ハイエナードと行動を共にしていたミラールが、ハイエナードの分身を見極めて、本体を素早く探し出す。

「みんな! 本物はガゼルの上よ!」

 ミラールが指差したのは、稼働している巨大ガゼル型マシンに乗っているハイエナードだった。

「よし! 俺がガゼルの上に飛び乗って攻撃する! 誰か援護を」

 修司が巨大ガゼル型マシンの上に乗っているハイエナードに接近して攻撃するからと、援護を新人達に任せようとしたその矢先。

 なんとガゼル型マシンから追尾ミサイルが発射され、修司達を追尾してきた。

「み、ミサイル!?」「離れろ!」

 追尾ミサイルを目の当たりにして驚愕する修司や工藤タイキたちは、ミサイルから逃れようと一旦ガゼルから遠ざかる。

 すると追尾ミサイルに続いて、ハイエナードの分身が火の玉を投げ付けて追撃してくるコンビネーション攻撃を仕掛けてきた。

 多方向からのコンビネーション攻撃からの追撃に、ガゼルから発射される怒涛のミサイル攻撃に修司や聖龍隊の新人達は軽く混乱する。

 しかし修司は、この幾重にも仕掛けられてくる正気を失ったハイエナードの攻撃を少しでも緩和させようと指示を出す。

「が、ガゼルを一先ず破壊しろ! ミサイル攻撃だけでも阻止するんだ!」

 修司の指示により、新人達は巨大ガゼル型マシンの破壊に勤しんだ。

 ヒーローマンや本気モードの澤田綱吉の打撃、奴良リクオから放たれる強靭な斬撃。それらが巨大ガゼル型マシンの破壊に繋がって行くのだが、そんな彼らに攻撃を阻害しようとハイエナードの分身が「燃えろーーっ!」と攻撃を仕掛けてくる。

 そんなハイエナードの分身からの攻撃を何とかしようと、獄寺隼人や首無に青田坊らが援護に回る。

 だが、巨大ガゼル型マシンを破壊するのは、新人達の戦力では不足していた。

 これに業を煮やした修司は、互いにチームワークで戦っている新人達を押し退けて戦前に出る。

「遅い! いいか、破壊ってのは……こうするんだ!!」

 業を煮やした修司は聖龍剣を力の限り振り翳すと、その聖龍剣から巨大な斬撃波が繰り出され、巨大ガゼル型マシンを斬り付けた。

『………………』

 修司の驚異的な破壊力を目の当たりにし、愕然とする一同。しかし修司の圧倒的な戦力を前にミラールはまたもや目を輝かせて感動する。

 一方の巨大ガゼル型マシンは、修司の放った斬撃で深い損傷を与えられ、機能停止して爆発してしまった。

 爆発するガゼル型マシンから本体のハイエナードが降りて来ては、未だに正気を失った状態で聖龍隊に迫って来た。

「燃えろーーっ! 燃えろーーっ!」

 狂った様に同じ言葉を連発しながら、分身と共にコンビネーション攻撃を仕掛けてくるハイエナード。

 修司は素早く、ハイエナード達を聖龍件で斬り付けて攻撃するが、全て分身した偽物だった。

 そして本物であるハイエナードは、修司や新人隊士達の上を跳躍しながら火の玉を投げ付けて此方を撹乱しながら攻め続ける。

 しかもハイエナードは再び分身を生み出して、此方を更に撹乱させてくる。

 消しても再び分身を作りだし、此方を撹乱させてくるハイエナード。正気を失っているとはいえ、ハイエナードの戦術は確かなもののようだ。

 そんなハイエナードと彼の分身は、修司たちをいつの間にか包囲してしまってた。

 この戦況にミラールは道を切り開くかの如く、周囲へミラージュ・ガンを連射してハイエナードの分身体に無数の風穴を開けて消滅させる。

 そして最後に残った本物のハイエナードが跳びかかって襲い掛かってくる瞬間、ミラールはハイエナードへ哀れみの銃撃を放った。

 ミラールが放った一発の銃撃は、ハイエナードの体を貫通して、彼の人生に終幕を告げる。

「み、ミラール……」「!」

 と、銃撃を受けたハイエナードが微かに正気を取り戻して自分へ撃ち込んだミラールに声を掛ける。

 そしてハイエナードは静かにミラールに言った。

「あ、ありが、とう……」

 ハイエナードは正気を失い、完全に異常者(ヒール)へと変貌してしまった自分の凶行を止めてくれたミラールに感謝の言葉を述べた直後、爆発した。

「ぐふぉぉおおおおおお!!」

 苦しいからなのか、爆発する瞬間に断末魔を上げるハイエナード。

 

 辛くもハイエナード戦を突破した修司たち聖龍隊の新人勢。

 だが同時に彼らは、古巣の仲間であった存在を、正気を失ってしまった仲間を撃ち抜いた一人の少女の決断と悲愴な想いを痛感した。

 

 

 

[熱血! 暴走野郎]

 

 辛くも異常化しつつあるハイエナードを倒し、彼の苦しみを無くしたミラール。

 そんな彼女は戦闘後、修司達に変わりつつある仲間だった彼らへの想いを伝う。

「バウンティハンターそのものが変わっちゃった。私の知っているブラッディ・レンジャーズは、仲間はもういない……今じゃタダの殺し屋集団」

「……ミラール」

 ミラールの苦心を察し、修司や新人達は彼女の悲痛な心境を痛感していた。

「辛かったでしょ? 周りの仲間が、どんどん変わってしまって……」

 ミラールの悲痛を痛感し、ルーシィが気遣うとミラールは更に語った。

「みんなは自分達のパワーアップの事ばかり考えて、私はひたすらデータ集め。最初はみんなの為と思っていたんだけど……やり方がどんどん酷くなっていって耐えきれず逃げ出したの……それに………………」

「うん? それに、何だ」

「あ、アハハッ、なっ、何でもないわ」

 自身が逃げ出した理由について、更に述べかけたミラールだが、修司に問い掛けられると慌てて口を噤んでしまった。

 しかし此処でミラールは、一つの疑問を皆に明かした。

「でも一つだけ可笑しいのよ。ブラッディ・レンジャーズにはDNAデータを使って二次元人をパワーアップできるような技術を持った奴はいないのよ」

「どういう事なんだ………………」

 ブラッディ・レンジャーズに二次元人を遺伝子操作して強化させる技術を持った人材はいない事を明らかにするミラール。これを聞いた修司は疑心に満ちた。

 

 修司やミラール達が、ブラッディ・レンジャーズが遺伝子操作で肉体を強化していった背景について考えていたのだが、答えが出る訳でも無く、一行は次なるブラッディ・レンジャーズが仕掛けた地点へと到着する。

 其処はセントラルサーキット。ブラッディ・レンジャーズは、このサーキット場に爆弾を仕掛けていた。

「大変です! 周回道路に時限爆弾がセットされました! もう時間が残り少ないです! 急いでください!!」

 サーキット場の周回道路に仕掛けられた時限爆弾を解除する為、修司達はサーキット場を駆け抜けた。

「急げ! 俺達は爆弾を回収して、スグに処理班に渡さなきゃならない! みんな、爆弾を見つけ次第、同行する処理班に渡せ!」

 修司は自分達だけでは爆弾を処理する事は不可能だと見越し、爆弾処理班を同行させた上でサーキット場を進行する案を思い付いた。

 そして修司やミラールそして新人達は各自、爆破処理班と同行して爆弾を見つけて行く。

 しかし、サーキット場にはお約束通り、ブラッディ・レンジャーズが配置させた凶悪な異常者(ヒール)が待ち構えており、進攻する面々を攻撃してきた。

「な、なんでアイツらは逃げたりしないんだ!?」

「爆発に巻き込まれれば、奴らだってタダじゃ済まない筈なのに……!」

 爆弾が傍らに在ると言うのに、怯える様子も見せずに戦闘を続ける異常者(ヒール)の勢力を前に、ナツとエルザ達は戸惑った。

 そんな新人達に修司が声を荒げて言った。

「奴らは所詮、正気を失っている戦闘狂の異常者(ヒール)! 自分達が死んでしまう状況すら分からない気のふれた連中だ! 手加減せず、全員返り討ちにしながら爆弾を除去していけ!」

 そう言いながら修司はサーキット場に点在する異常者(ヒール)を容赦なく斬り捨てて行く。

 敵を容赦なく斬り捨てながら進撃する修司の冷徹な戦いぶりに、新人達は背筋が震えたが、ミラールだけは憧憬の眼差しで修司を見詰めていた。

 修司達は次々とサーキット場に仕掛けられた爆弾を見つけ出しては、それを処理班に渡して爆弾除去に精を出していく。

 そして周回道路を一周して、修司達は全ての爆弾を発見・除去する事に成功する。

 すると全ての爆弾を除去した一行の横を、無人のバイクが通り過ぎた。

「い、今のバイク! 誰も乗ってなかった!」

 無人のバイクが独りでに驀進する状景を目撃して、リナが驚愕すると其処にミラールが叫んだ。

「! みんな、あのバイクを追うわよ! あれはブラッディ・レンジャーズが一人、イノブスキーよ!」

「なんだと!」

 ミラールの発声に修司が敏感に反応した。

 そして修司達はミラールに着いて行く形で無人のバイクを追走し始めた。

 ミラールが語るには、無人のバイクの正体は変形走行が可能なアーマーを着用しているブラッディ・レンジャーズが一人、驀進熱血漢ヘルライド・イノブスキーという猪型の獣人だという。

 ミラール達は驀進するバイク形態のイノブスキーを追走していくと、一行はいつの間にか電流が流れる金網で包囲された円形状のサーキット場に辿り着いた。

「此処は……!」

 修司達が円形のサーキット場に辿り着くと、爆走しているイノブスキーが走りながら修司達に言う。

「ここがテメェらの墓場だ!」

 修司達の周りを爆走しながら完全包囲するイノブスキーに、ミラールが調子よく声を掛けた。

「やあ、総長、元気そうね。あなたを狩りに来たわよ!」

 するとミラールの挑発を聞いてか、イノブスキーは修司達の目前で停止するとバイク形態から人型形態へと変わって、ミラールに面と向かう。

「てっ、てめぇミラール! ブラッドに拾われたくせにぃぃぃ! 恩を仇でかえそうってかぁぁ? それが王族のやり方かっ? ああぁっ!?」

 鼻息を荒くしながらミラールに文句を言うイノブスキーだが、これに対しミラールは平然と反論する。

「そんなに鼻息荒くしなくても……それに、これはある意味恩返しだって思ってるしね」

 このミラールの発言にイノブスキーは怒り猛った。

「ブヒィィィ! なんだとぉ? 上等だぁ、ゴルァ! 勝負しろ、タイマンだぁぁっ!」

 怒りで我を忘れたイノブスキーは、再びバイク形態に変形するとミラール達に向かって驀進してきた。

「わあっ!」

 怒り猛るイノブスキーの突進攻撃に驚き、慌てふためく新人達。

 イノブスキーはその中でも裏切り者であるミラールを狙って驀進し続ける。

「へへっ、そんなに猪突猛進ばっかしてると、痛い目見るわよ!」

 ミラールは軽々とイノブスキーの攻撃を回避すると、イノブスキー目掛けて狙撃を開始。

 ミラールの銃撃はイノブスキーの装甲に着弾するが、イノブスキーは人型形態に変形してサーキット場を操る。

「ブヒッ、ブヒィッ」

 鼻を鳴らしながらサーキット場に回転する炎を出現させ、ミラール達を追い詰めていく。

「あっちっち」

「回転する炎から遠ざかれ! サーキット場の金網付近まで避難するぞ!」

 回転する大火に焼かれかかる中、修司に電流が走る金網付近まで避難するよう指示を出される新人達。

 しかし彼らが金網付近まで避難すると、そこにイノブスキーが驀進してきて突進してきた。

 逃げ場がないまま、イノブスキーに追い詰められていく戦況にヒーローマンが立ちはだかった。

 ヒーローマンは突進してくるイノブスキーを受け止め、自力で押し返そうとするが、イノブスキーは車輪を高速回転させてヒーローマンを横へと弾き飛ばした。するとヒーローマンは高圧電流が流れる金網に衝突し、感電してしまう。

 感電してしまったヒーローマンは、一時的に動きを停止して黒こげになってしまう。

 すると此処で修司が、円形サーキット場を回転する大火を放射する装置を破壊して、罠を止めた。

 そして修司は驀進するイノブスキーを補足しながら話し掛けた。

「ほう、俺と同じ総長か」

「アタぼうよ! コッチはてめぇみたいに鬱病帰りの軟弱な総長とは違うんだっ!」

「御大層なこと言って……結局は暴走族だろ? あまり威張れる事じゃないと思うんだけどなぁ」

「ぼ、暴走族!?  てめぇ……っ!! 上等だぁ、オルァ!」

 走る事に誇りを持っているイノブスキーは、自分を含んだ自身のチームを暴走族呼ばわりされた事に腹を立て、部下達に命じた。

「おうっ、お前ら! やっちまえ!!」

 総長であるイノブスキーの指示で、待機していた部下達はサーキット場に乗り込んで修司達に爆弾を投げ付けてイノブスキーの援護に回り始めた。

「こ、この卑怯者!! タイマンで勝負すると言うのはウソか!?」

 このイノブスキーの行動に六道りんねが爆弾をかわしながら反論すると、イノブスキーは驀進しながら言い返した。

「ぶひょぉ! ウルセェ!! 俺らのことを暴走族呼ばわりした報いだ!」

 もはや言っている事が滅茶苦茶なイノブスキーに、修司が指示を出した。

「こうなったら、この喧嘩かってやる! ……全員! サーキット場に入り込んだ手下共と交戦しろ!!」

 この指示で新人達はサーキット場に雪崩れ込んだイノブスキーの部下達と交戦を開始。

 サーキット場内は修司たち聖龍隊とイノブスキー達の部下達との交戦で、乱闘状態に突入してしまった。

「このヤロッ」

 自分に向かって走って来る敵を、修司は聖龍剣で斬り付けてクラッシュさせるとそのまま部下は電流が走る金網に激突して感電、爆発してしまう。

「テメェら手加減は抜きだ! 敵を潰すなり、斬り付けるなりして、コイツらを一人残らず片づけろッ!」

 修司からサーキット場で猛威を振るうイノブスキーの部下達を残らず殲滅するよう言い渡され、新人達は戸惑う。

 が、その最中でミラールは修司の言いつけを聞く前から部下達を的確に二丁拳銃で射撃して行き、走行不能に陥らせる。

「オレのチームの走りは、こんなもんじゃねえぞ!」

 自分達とは違い、なんの乗り物にも搭乗してない聖龍隊に負かされてばかりの現状に苛立ったイノブスキーは、ミラールに向かって突進してきた。

「おおっと」

 だが、その突進攻撃をミラールは背中に装着しているジェットエンジンで滞空してかわそうとする。しかしミラールが軽くジャンプして滞空していると、その瞬間を狙ったイノブスキーが即座に人型形態に変形してミラールの足を掴んで引っ張った。

「あ!」「コイツめッ……!」

 足を掴まれたミラールは、そのままイノブスキーに引き摺り下ろされ、地面に叩き付けられてしまう。

「きゃあっ!」「ミラール!」

 地面に叩き付けられたミラールを見て、修司が叫ぶ。

「そ、総長……!」

 ミラールが満身創痍でイノブスキーの顔を見上げてみると、イノブスキーの目の色は完全に常軌を逸していた。

「ブヒッ、ブヒィ……!」

 鼻息を荒くしながら、目の色を変えてしまっているイノブスキーを見て、ミラールは罪の意識に囚われた。

「……私が……私が、データなんか集めたから……みんなが可笑しくなっちゃったの……?」

 自分がDNAデータを収集したからこそ、イノブスキーだけでなく他の多くの仲間達も正気を失ってしまったのかと罪悪感に駆られるミラール。

 すると、そこに修司が駆け付け、ミラールとイノブスキーの間に割って入った。

「それは違うぞミラール! 力だけを追い求めてしまったが故に、正気を無くしてしまったコイツらの方にこそ非がある! お前だけの責任じゃない!」

 修司はミラールに激励の言葉を掛けると、それに励まされたミラールは力強い表情で立ち上がった。

 そしてイノブスキーは再びバイク形態で走行し始めると、驀進して修司たちを襲い掛かった。

「コイツ……! まだ走り続ける気かよ……!」

 懲りずに走り続けては驀進するイノブスキーに、日ノ原革が表情を歪ませる。

 そんなイノブスキーの目の前に、修司とミラールが立ちはだかった。

「ミラール、狙撃はお前に任せる……!」「OKよ!」

 修司とミラールは次の瞬間、イノブスキーに仕掛けた。

 イノブスキーが接近してくる寸前、ミラールは銃でイノブスキーの後輪を狙撃して走行不能に陥らせる。

「ブヒッ? ブヒィっ!」

 後輪を狙撃されて激しく動揺するイノブスキー。

 すると今度は其処に修司が、イノブスキーの真横を駆け抜けると同時に、イノブスキーの装甲に真一文字の斬り込みを入れた。

「ブヒョ? ブッヒィッ!!」

 これにより走行不能になったイノブスキーは、そのまま地面を回転しながらクラッシュ。遂には高圧電流が流れる金網に激突してしまった。

「ブヒイイイィイイイイイイイイイ!!!!」

 高圧電流の金網に激突したイノブスキーは絶叫しながら爆発した。

 

「ヘっ、イノシシと言うか、イノブタみたいに良く喚く奴だったな」

 ヘルライド・イノブスキーを突破し、修司は聖龍剣を肩に乗せながら余韻を感じていた。

 そしてイノブスキーの部下であった爆走野郎達も、事無くして全員が連行された。

 

 

 

[全てを見通す管理者]

 

 ヘルライド・イノブスキーが仕掛けた罠を突破した一行は、ひとまず今の現状を報告しようと聖龍隊本部に戻った。

 修司やミラールたち新人達の活躍で、敵対しているブラッディ・レンジャーズも彼らが補欠要員に使っている異常者(ヒール)の処理も進んでおり、更に各地で逃げ遅れた一般人の救出も純情に進んでいる現状に、通信士のウッズと聖龍隊副長のバーンズは話していた。

「各地で逃げ遅れた二次元人たちの救出も順調に進んでいます。これも修司様やミラールさん、そして何より多くの新人の皆様によるお陰ですね」

「ああ、そうだな」

「でも被害は拡大していく一方です。何とかなりませんかね?」

「仕方ない、いくら修司とはいえ限界がある。ミラールも良くやってくれているが、大人ぶっているだけでまだまだ子供だ。彼女の様な新人達に、これ以上の結果を望むのは無理難題だ」

 聖龍隊最強戦力である孤高の小田原修司に加え、新人隊士達や彼らに混ざって活躍するミラール達だけでは限界がある事を示唆するバーンズ。

 

 一方その頃。

 平和をこよなく愛するが故に、争いを避けていた村田順一達スター・コマンドーが集結していた。

 彼らはブラッディ・レンジャーズとの戦いで被害が拡大して行く状況を見て、悩み抜いていた。

 戦前で活躍する修司やミラール達だけでは人命を、被害拡大を抑えるのに限界がある。そんな状況下でスター・コマンドーはある決断を下した。

「……………………………………………………総長、聞こえていますか? 僕たちも出撃します、連れて行ってください」

「ジュンさん!?」

 通信機から、修司に向けて自分達の出撃要請を申し出る順一の言葉に、ウッズは今まで争いを拒んでいた彼らの心境の変化に驚愕した。

「分かった。お前達の好きなようにすると良いさ」

 そんな順一達の決断に、修司は好きなようにしろと返答。すると順一は険しい面持ちで自分達スター・コマンドーの決意を言い表す。

「これで最後にするんだ。本当に最後の戦いにする為にも、やるしかないんだ!」

 この順一達の決起に、バーンズは全聖龍隊士に高らかに告げた。

「よおし! 一気にブラッディ・レンジャーズを叩くぞ!」

 村田順一率いるスター・コマンドーの決起を皮切りに、聖龍隊全体の士気が一気に高まった。

 

「今回からスター・コマンドーの皆さんも出撃します! やっぱり順一さん達は現場が似合いますよ!」

 順一達も出撃する事が決まって、嬉々とするウッズ。

 そして聖龍隊の戦前で活躍する隊士が勢揃いしたところで、一同はブラッディ・レンジャーズが指定した次なる戦場に赴く事に。

 次の指定された場所は、サイバーフィールド。クラックすなわちひび割れたエレクトロスフィアという電脳空間に放流されたウィルスや異質なデータを排除に向かう事だった。

 さっそく聖龍隊は、サイバーフィールドに潜って異質なデータであるウィルスや、データ化されてサイバーフィールドに解き放たれた異常者(ヒール)と戦闘を開始した。

 既に潜入している異常者(ヒール)の軍勢は、データとして送信された武器を装備して聖龍隊を攻撃して行く。

「来たぞ……応戦開始!」

 異常者(ヒール)の攻撃を視認し、修司が反撃の合図を出す。

 次第に群がってくる異常者(ヒール)の猛攻に、戦前で活躍する聖龍隊は懸命に応戦しながら押し返す。

 すると此処で誰よりも敵を多く撃破して行くミラールが、先陣を切り始めた。

「此処は私が活路を拓くわ! みんな私に続いて!」

「お、おいミラール!」「ミラール、待つんだ!」

 突如として自ら活路を拓いて行くミラールの行動に、修司や順一達が制止するが、彼女は猛進してしまう。

 そんなミラールが拓いた活路を、聖龍隊の新人達も後に続いた。

「……ふぅ、何だかんだ言いながら……あの新人共、ミラールに引っ張られていってるな」

 ミラールの隠された指揮能力を認識し始める修司に反して、順一達スター・コマンドーは彼女の危険を顧みない戦術に危うさを感じていた。

 そんな修司や順一の思惑も知らずに、ミラール達はサイバーフィールドを邁進する。

 

 そしてミラールたち新人勢はサイバーフィールドの最深部、ウィルスが放流されている地点まで到達した。

 其処でミラール達を待ち構えていたのは、ミラール自身が苦手とする電子迷宮の管理者スナイプ・アリクイックであった。

「ふぉふぉふぉ……来たの、ひよっ子」

 サイバーフィールドに端末を差し込んで、ウィルスを放出していたアリクイ型の獣人アリクイックは振り返るとミラール達に面と向かった。

「おじいさん、そろそろ引退した方が良かったんじゃないの?」

 ミラールから歳が歳な上に早々に引退した方が良かったのではと説かれると、アリクイックは既に得た情報で知り得た事実をミラールに突き付ける。

「聖龍隊として認められてもおらんひよっ子が、知ったようなことを……」

「なっ!? ……ちぇ、あいかわらず何でもお見通しなのね」

 事実を突き付けられて動揺するミラールから返され、アリクイックは彼女に問い返す。

「ふぉふぉふぉ……もちろん、お前がここに来た理由も知っとる。知ってて、ここにおるのは何故じゃと思う?」

「……敵を知り己を知れば……なの? まったく、相変わらず孔子から色々と学んでいるみたいね」

 指摘を受けたアリクイックはミラール達に告げた。

「ふぉふぉふぉ……全力で来るんじゃぞ? データが狂うでな」

「あら、助かるわ。こっちも手加減は苦手なのよ」

 こうしてアリクイックとの戦闘が開始された。

 まずアリクイックは自分の周囲に飛行型ドローンを召喚し、ミラール達を攻撃させた。

「気を付けて! あの、おじいさんは電脳空間なら色んな武器を召喚して戦うのっ!」

 ミラールの言う通り、アリクイックは次々と武器のデータを召喚しては、それを装備してミラール達を追い詰める。

「そんな召喚したばかりの武器で、俺らを倒せると思ったら大間違いだ!」

 と、そこにナツとグレイが魔法で総攻撃を仕掛け、アリクイック装備する武器を破壊する。

 そしてここぞとばかりにアリクイックに攻撃するのだが、アリクイックはバリアーに護られて無傷だった。

「な、なに!?」

 魔法攻撃を受けて、傷一つ負わないアリクイックを目撃して愕然とするナツたち。

「ふぉふぉふぉ……魔法に関しては既に調査済みじゃ。ミラールが魔法なんぞ使うから、それを極力防げるバリアーを自作したのじゃ」

「ッ……私の魔法を見て学んだ様ね。対策術を……!」

 自身の魔法が原因で、科学力で魔法を粗方防ぐ術を見出してしまった現状にミラールは苦心した。

 その間もアリクイックは次々に大砲や機関銃などの武器データを召喚して、ミラール達と激しい戦いを展開して行く。

 

 と、ミラール達がアリクイックと激戦を展開している所に、遅れて順一達スター・コマンドーが駆け付けた。何故か小田原修司の姿は見えなかった。

「ふぉふぉふぉ……ここまで来るとは流石……かの?」

 新たに現れる順一達の到着にアリクイックは目を鋭くさせて物申した。

「……こんなバカげたこと、いつまで続けるんだ!?」

 争いをいつまで続けるのかとアリクイックに問い詰める順一だったが、そんなアリクイックに思わぬ事を言い返されてしまう。

「ふぉふぉふぉ……いつからその、バカげたこと、が続いていると思う?」

「!?」

 するとアリクイックは順一達スター・コマンドーに厳しい現実を突き付けた。

「歴史が語る数多くの戦いの記録……無くなりはせんよ……」

「違う! 争いのない世界は……理想郷は必ず実現する!」

 順一達が平和な世界、理想郷は実現するのだと反論すると、アリクイックは平然と突っ返した。

「わしらのような意に背く者の屍の上に、そんなものは建ちはせんよ」

「それでも……それでも、僕たちは……この道を信じるしかないんだ!」

 順一達スター・コマンドーは自分達の心中にある理想論を否定されながらも、苦しくも戦いに参戦した。

 そんな真正面で対峙するスター・コマンドーにアリクイックは必殺技の「ファイナルクロー」を前足の爪から発射して順一達に攻撃する。

 その攻撃を順一達は颯爽と回避し、苦心の末ながらアリクイックに攻撃を開始する。

 だが戦いをする事に躊躇いや迷いが生じているスター・コマンドーの攻撃を、アリクイックは召喚した武器で打ち消してしまう。

「何やっているの!? そんな生半可な攻撃じゃ、アリクイックの召喚する武器で威力が打ち消されちゃうでしょう!」

 躊躇いの中で攻撃する低威力の技ではアリクイックの攻撃に簡単に打ち消されてしまうとミラールが指摘する。しかし順一達スター・コマンドーの迷いは、未だに振り払えなかった。

「ホーミングミサイル!」

 すると此処でアリクイックは背中に装備している砲身から無数の追尾ミサイルを発射して戦場にいる多くの聖龍隊士を同時に攻撃する。

「うわあっ!」

 放たれた無数のミサイルで辺りは硝煙に呑み込まれ、多くの聖龍隊士が傷付いた。

「ふぉふぉふぉ……やれやれ、戦いに迷いを生じる者……未だに経験が不足している者……これではデータ通りの戦いにならないではないか」

 スター・コマンドーやミラールたち新人勢の劣弱振りを前にして微笑するアリクイック。

 

 皆がアリクイックの戦術に、いやその前に戦いに迷いを生じる順一達と経験不足なミラール達では苦戦を強いられてしまってた。

 するとその時。ミラールたち新人勢に加わり、順一達スター・コマンドーが参戦してアリクイックと戦闘していると遠くから強烈な砲撃が飛んできた。

 皆が何事かと砲弾が飛んできた方を見据えてみると、そこには巨大なライフル銃を右手に装備している小田原修司の姿が飛び込んできた。

『総長!』

 順一達スター・コマンドーが発する中、修司は超重量級の対戦車ライフルを装備しながら、進んできた。

「遅れてすまない! この対戦車用ライフルのデータを受け取るのに、時間がかかっちまって」

 強力な対戦車ライフルを装備して現れた修司を目の前にしたアリクイックは、修司に向かって話し掛けて来た。

「ふぉふぉふぉ……よう来たの。真の使命を忘れた戦士よ」

「……? 何の事だ?」

 突然のアリクイックからの謎めいた言葉に修司が反論すると、アリクイックは眼光を鋭くさせて語り始めた。

「幾重にも塗り固められたお主の潜在意識という名の記憶から垣間見えたのは……未来の記憶か、はたまた過去の虚像か……」

「……」

「……世界を覆う偽りの存在、偽りを滅ぼす為に生み出された破壊の意思……」

 謎めいたアリクイックの台詞を全て聞き流した修司は、アリクイックに向けて変わらない己の信念を貫き通した。

「ふっ……何を見たかは知らんが、興味ないな。この場でお前を倒す、それが今の俺の使命だ!」

「ふぉふぉふぉ……確かに、迷いは無いようじゃな」

「戯言に付き合っているヒマは無い。いくぞっ!」

 修司は対戦車ライフルをアリクイックに向けて撃ち込んだ。

 するとアリクイックは背中に装備している小型の波動砲で修司の砲撃を消滅させた。

「チッ、正面からじゃ分が悪いか」

 修司は再度、アリクイックに向けて砲撃を撃ち込もうと横へと移動する。

「このヤロッ」

 修司は横へと素早く移動しながら同時にライフル銃をアリクイックに向けて砲撃する。

「ぐっ……!」

 修司からの砲撃を受けて、アリクイックは追い詰められていく。

「全員、気を緩めるな! コイツを倒さなかったら、サイバーフィールドは崩壊して多くの市民が大混乱する! それに経験ってのは、こういう時に会得して補って行けばいいもんだ!」

 修司はスター・コマンドーとミラールたち新人勢の皆々に、同時に助言を説き掛けながら砲撃を続ける。

 すると修司に追い詰められたアリクイックは、最終形態の兵器を召喚して、皆の頭上から弾幕を振り散らした。

「ぐっ!」

 無数の弾幕に攻撃を受ける修司たちは、苦痛に顔を歪める。

 だが修司は攻撃を諦めず、皆に告げると同時に砲撃を開始した。

「ッ……戦え……聖龍隊!!」

 その修司の鶴の一声で、戦いに対して迷いを生じていた順一達スター・コマンドーも、経験不足と嘲笑されたミラールたち新人勢も、一気に目付きを鋭くさせてアリクイックに集中砲火を浴びせた。

「読み違えたかーーっ!!」

 皆の集中砲火を浴びて、スナイプ・アリクイックは爆死した。

 

 データの海ともいえるサイバーフィールドで戦闘技術を熟知していたアリクイックも、所詮は実戦ではその知識を使いこなせなかったという訳だ。

 

 

[疾風! 黒翼の好敵手]

 

 スナイプ・アリクイックをサイバーフィールドで倒した一行は、聖龍隊本部を再び飛び出して超高度1万メートルの上空に向かった。

 1万メートルの上空では、所属不明の戦闘機が複数陣形を取り飛行していた。

 飛行機などの聖龍隊の自機では、飛行している最中に戦闘機から攻撃を受けて忽ち撃墜されてしまうという判断から、修司達はある行動に移る。

 それは陣形を取って飛行する最後部の戦闘機に跳び移って、先頭を行く空中戦艦に急行するという作戦だった。

 無謀ともいえる、この作戦にミラールは背中のホバリングを巧みに使って戦闘機に着地する。

 そんなミラールに感化されたのか、新人達も彼女に続いて戦闘機に着地していく。

 新人勢の勢いを前にして、順一達スター・コマンドーもミラールの後を追った。

 そして最後には小田原修司も大型移送機から飛び降りて、戦闘機の上に着地して戦闘を開始した。

 戦闘機の上には、案の定多くの飛行装置を背負った異常者(ヒール)達が待ち構えており、装備している銃器で応戦してきた。

「攻撃開始だ!」

 修司の指示で、ミラールたち新人勢は一気に異常者(ヒール)達を攻撃して撃墜。異常者(ヒール)は皆、そのまま落下して暗雲の中に消えていってしまう。

 足場の悪い戦闘機の上での戦闘に、新人達が苦戦する中、ミラールだけは慣れた様子で滞空しながら移動して手際よく異常者(ヒール)を倒していく。

 そんな状況で、順一達スター・コマンドーは何かを決意した様子でミラールよりも早く先へと驀進した。

「あっ、ちょっと!」

 ミラールが自分より先に行く順一達を呼び止める中、順一達は驀進して誰よりも先に制圧された空中戦艦へと赴いた。

 

 そして空中戦艦。誰よりも先に到着した順一達スター・コマンドーは、空中戦艦と複数の戦闘機をジャックした相手を呼び付ける。

「……どこだ? 出てきてくれ」

 順一が呼ぶと、彼らの目の前にカラス型の鳥人が現れた。彼こそブラッディ・レンジャーズが一人、ウィンド・カラスティング。カラスティングは自分を呼び付けた順一達を見て、不敵な顔でこう告げた。

「……ふん、できれば戦いたくない……そんな事を思っている顔だな」

「ああ、その通りだ。これ以上、誰も傷ついて欲しくないんだ……」

 もう敵味方問わず、誰一人として傷付いてほしくないと切に願い出る順一達。だが、そんな彼らの理想論をカラスティングは蔑んだ。

「噂通りの甘ちゃんだな、スター・コマンドー。だったら、無抵抗のまま其処で果てるがいい! 甘ったれた理想を抱いたままっ!」

 そうスター・コマンドーに冷たい言葉をぶつけたカラスティングは空中戦艦の上で激戦を開始した。

 カラスティングは片手に一本ずつ短剣を持ち、巧みに使いこなしながら上空から攻めてきた。

「クワっ」「!」

 上空から短剣を手に突っ込んでくるカラスティングの追撃に、日本刀「純心」で受け止めきる順一。

 順一達は上空から数々の戦法で攻めてくるカラスティングを撃ち落とそうとするが、カラスティングは颯爽と攻撃をかわして爆薬入りの短剣を投げ飛ばして攻撃してきた。

 爆薬が詰まった短剣での攻撃にスター・コマンドーは追い詰められる。

「とりゃあああっ」

 更にカラスティングはスター・コマンドーの頭上から刃の様に硬質化させた羽根を真下に向けて発射。順一達を逃げ場のない空中戦艦の真上で追い詰めようとする。

 

 と、順一達が折角の平和的話し合いを持ち掛けても、それを全否定したカラスティングに猛攻されていたその時。

 スター・コマンドーに攻撃していたカラスティングに何処からか銃撃が飛んできた。

 カラスティングは咄嗟に銃撃を回避するが、彼は自分を撃ち落とそうとした相手に心当たりがあるようだ。

「お待たせ! 遅くなったわね」

 カラスティングに銃を撃ったのは、他でもないミラール本人だった。彼女は聖龍隊の新人達と共に駆け付けたのだが、ミラールはカラスティングを見詰めて鋭い目付きで話し掛ける。

「らしくないじゃん? あなたらしくもない。こんなとこに引きこもっちゃって。あなたなら、真っ先に飛んで来ると思ってたのに」

 かつては互いに切磋琢磨する良きライバルで仲も良かったカラスティングを前に問い掛けるミラールに、カラスティングは訊ねた。

「……ミラールよ、今一度お前に訊ねよう……戻ってくる気は、ないんだな?」

「わかってるくせに……」

 ミラールは不敵な顔でカラスティングの問いに答える。

「ふっ、お前らしいな……」

 カラスティングの方も、ミラールの意志の強さに同調したのか、彼女の意志を尊重して戦闘を再開した。

「これでどうだ!」「なんの!」

 カラスティングが投げ付けて来た短刀をミラールは銃撃で弾き返して防ぐ。

「ふっ、やるなミラール。我らの所から逃げ出した後も、鍛錬を欠かさず行っていたな」

「へっ、そりゃまあね。なんせ私は正真正銘のハンターに……ヒーローになるって決めたんだから」

 激しい攻防戦の中で、カラスティングとミラールは互いを称賛し合う様に話す場面も見受けられた。

 そんな時おり始まる談話の中でも、新人達はカラスティングに攻撃を仕掛けていく。が、カラスティングは鳥人の二次元人であるが故にとても素早く、動きを捉えるだけでも苦労してしまう。

 上空から高速移動で飛来して襲い掛かるカラスティングの猛攻にも、スター・コマンドーや新人勢は回避するだけで精一杯だった。

 

 すると其処に、遅れて最後に小田原修司がやって来た。

 戦場である空中戦艦の屋根上に降り立った修司は、カラスティングが投げ付けてきた短剣を聖龍剣で弾き返すと問い詰めてきた。

「倒す前に聞かせてもらおう。お前らの本当の目的はなんだ? ……ミラールを取り戻すことだけが目的じゃないんだろ?」

 この修司の質問に、投げ掛けられたカラスティングは正直に述べた。

「見てみたかったのさ……」

「?」

「ミラールが憧れた、聖龍隊の戦士とやらを。それほどの価値があるのか、試させてもらうぞっ!」

 カラスティングもまた、聖龍隊の実力を見定めたい一心で戦いを仕掛けていた。そして皆と合流した修司にカラスティングは容赦なく攻撃を仕掛ける。

「フンっ」

 修司は鼻息を荒くして、カラスティングからの攻撃を聖龍剣で受け止めた。

 そして修司は自慢の豪腕でカラスティングを押し返した。

「このっ」「クワっ」

 修司に押し返されたカラスティング。すると此処でカラスティングの様子が一変した。

「くっ……クワーーっ!!」

「な、なんだ? 一体なにが……?」

 突然のカラスティングの変化に戸惑う順一達。

 するとカラスティングが聖龍隊を前にして口走った。

「せ、センセイの奴……! こんな時に、わ、私を……」

「なに!? センセイだと……!」

 カラスティングが発した「センセイ」の名に修司が過敏に反応すると、カラスティングは目の色を変えて攻撃してきた。

「クワっ!」「うわっ」

 前方からの突進攻撃に加え、上空からの短剣飛ばしが更に激しく、そして過激に展開されていく。

「か、カラスティング! どうしちゃったのよ!?」

「もう何を言っても無駄だ! 完全に正気を失っちまっている!」

 ミラールが暴走するカラスティングを宥めようとするが、修司がカラスティングの様子を見て彼女を制止する。

 もうカラスティングは正気を失って完全に暴走してしまった。彼を止める手段は無いのだろうか。

 するとミラールがかつての好敵手に向けて銃口を向けた。そして一発、また一発とカラスティングを撃ち抜いた

「グワッ、グッ」

 銃撃を受けて深手を負っていくカラスティング。カラスティングはミラールを真っ直ぐ見据えると、正気を失った瞳を向けたままミラールに短剣を握り締めて突進してきた。

 ミラールはかつての好敵手を最後は安らかに眠らせる為に、躊躇わず一瞬の間にカラスティングと立ち向かった。

 そしてミラールが撃った銃撃は、カラスティングの額に直撃し、カラスティングの動きを止めた。

「ぐわぁああああああああ!!!」

 額に銃撃が直撃した途端、カラスティングは断末魔を挙げて爆発消滅した。

 

 黒翼の好敵手とも言えた親しい仲だったカラスティングを撃破したミラール。

 こうして彼女はまた自らの手で仲間だった存在を処分したのだった。

 

 

 

[幼い破壊者]

 

 超高度1万メートルでの死闘に続いて、聖龍隊が向かった最後の地点。

 それはアニメタウンの復興作業を続けている頭首防衛システムの基地の奪還。

 占拠された基地を奪還し、その基地を占拠している巨大ライドアーマーに搭乗しているブラッディ・レンジャーズの最後の刺客を倒すのが最終任務という。

 さっそく修司たち聖龍隊一行はトンネルベースに突入し、坑道を突き進んでくと配置されている異常者(ヒール)の敵兵を確認する。

「敵だ! 斬り進め!」

 目の前に現れた敵兵である異常者(ヒール)を認識して、修司は迷う事無く斬り込んで進撃して行く。

 そんな修司に続けとばかりに、スター・コマンドーも新人勢も向かってくる敵兵を倒して驀進する。

 順一達スター・コマンドーも、先ほど戦闘したカラスティングから指摘を受けたからか、今度は迷いなく敵兵を斬り進み邁進する。

 スター・コマンドーが本気で戦っている様子を目視し、ミラールも負けじと腕を揮う。

 そんな善戦する順一達やミラール達とは少し違い、修司は何だか次第に狂気染みた様子で敵兵を切り倒していった。

異常者(ヒール)共め! 皆殺しにしてやる!!」

 完全に殺人鬼の様な言動になってしまう修司を目の当たりに、愕然とするミラールや新人達に順一が言う。

「……総長って、気持ちがハイになると殺人鬼っぽくなるんだよ」

 やや呆れ気味で唱える順一の説明を聞いて、ミラールや新人達はますます唖然としてしまう。

 そんな殺人鬼の様に破壊衝動に駆り立てられた修司は、付近にいる敵兵や、敵兵が乗り回すマシンを次々と聖龍剣で切断して破壊して行く。

 その傍らで、トンネルベースに取り残された作業員を救出しながらスター・コマンドーも進軍する。

 が、修司が破壊行動に、順一達が作業員の救出に専念している間にミラールたち新人は勝手にトンネルベースの最深部へと直行してしまう。

「そんじゃ! 敵の処理と救出、任せましたよっ」

「あ、こら! ……ミラール!」

 先に進軍してしまうミラールら新人達を目撃して、順一が制止しようとするが破壊活動に夢中になる修司が起こす爆発でそれどころではなかった。

 

 そしてトンネルベース最深部、特殊防衛システム基地に到着したミラール達は其処で一機のカンガルー型ライドアーマーに搭乗した幼い獣人と遭遇する。

「驚いたかぁ、ミラール!! お前なんかより、うんと強くなったんだからなーー!」

 ミラール達の上方から突如として現れ、同時に自身の力を見せ付けるかのように破壊行動を行うカンガルーの獣人バニシング・ガンガルンは、いつも自分を子供扱いしていたミラールに得意気に話し掛ける。

「もう子供って、呼ばせないぞぉ!」

 しかしこのガンガルンの発言に、ミラールは呆れた様子で言い返した。

「そーーゆーーとこが、子供なのよ」

「ま、また子供だって言ったなぁ!」

「悪い子にはお仕置きしなきゃね……」

 子供と言われ、逆上したガンガルンにミラールは御仕置と称して戦闘を開始した。

 バニシング・ガンガルンは、ブラッディ・レンジャーズでも最年少で子供の様な性格。カンガルーに見立てた専用ライドアーマーを乗りこなし、打撃と衝撃波兵器で白兵戦もこなす事から組織内でも信頼を置かれている。そしてミラールを一方的にライバル視している節があるという。

 専用ライドアーマーに搭乗するガンガルンは、巧みに操縦してミラール達に強力な打撃を撃ち込もうとする。

 が、その打撃をヒーローマンが押さえ込み、更にそこへツナとリクオの二人がガンガルー型のライドアーマーに攻撃する。

 しかし一発や二発では大型のライドアーマーを破壊する事は困難であり、ガンガルンはライドアーマーで拳を打ち込んで周りをけん制する。

「ここは私が!」

 すると雪女である氷麗が氷の息吹を吹き付けて、ガンガルー型のライドアーマーの足元を凍て付かせて動きを封じようとする。

「オレも手伝うぜ!」

 氷麗に加勢しようと氷魔法が得意なグレイ・フルバスターもライドアーマーの足元を凍らせようと仕掛ける。

 そして二人の協力も相まって、ライドアーマーの動きを封じる事が出来たのだが。

「あーーっ、ボクのお気に入りのライドアーマーがっ!」

 専用ライドアーマーの足元を凍て付かされ、困惑するガンガルン。

 だが次の瞬間「へっ、なーーんちゃって! これぐらいの氷なんか……」と、ガンガルンが専用ライドアーマーを操縦すると、意外なほどのパワーでライドアーマーは自力で氷を引き剥がして、再び周辺の新人達を弾き飛ばしていく。

「うわぁ!」「きゃっ」

 ナツ・ドラニグルやルーシィ・ハートフィリアがガンガルンの攻撃に弾かれていく一方、六道りんねが死神の大鎌でライドアーマーを斬り付けようと飛び掛かった。

「こいつめッ!」

 しかしガンガルンはライドアーマーを操縦して、拳から衝撃波を繰り出してりんねを吹き飛ばす。

「ッ!」吹き飛ばされるりんね。

 新人達が専用ライドアーマーを乗り回して猛威を振るうガンガルンに苦戦している中、ミラールは二丁拳銃でライドアーマーを破壊しようと懸命に連射していた。

 

 ミラール達がライドアーマーを何とか破壊しようと色々と策を講じていたその時、そこに作業員救出に乗り出していた為に遅れて来た村田順一たちスター・コマンドーが駆け付けてきた。

「はーーはっはっはーー! 壊れろ! 壊れろ! 壊れろーー!!」

 ミラール達との戦闘で自身の向上した戦闘力に酔い痴れるガンガルンは、更に復旧活動が進められてたトンネルベースを破壊して行く。

「あははははーーっ! 凄い! 凄いよっ! これだけの力が出せるなんて!!」

 センセイからの遺伝子操作で今まで以上にパワーアップした状態に完全に面白がるガンガルンに、順一が制止を願い出る。

「やめてくれーー! せっかく復興したアニメタウンを、これ以上傷つけないでくれ!」

 しかし完全に己の力に酔い痴れているガンガルンはこの制止を聞き入れなかった。

「うるさーーい、ボクに命令するなーー! よわっちーーくせにーー!」

「くっ……また力で……止めるしかないのか!?」

 順一達スター・コマンドーは、またしても武力による制圧でしか物事を解決できないのかと非常に悔んだ。

 そして辛くも順一達スター・コマンドーは苦心の中、ガンガルンに攻撃を開始するしかなかった。

「まだ、戦わなきゃいけないのか……! くっ……各自、周囲に散らばり攻撃するんだ!」

 順一は苦心の中、スター・コマンドーの仲間達に指示を出した。

「また無益な戦いを起こしやがって……! こうなったら、一刻も早く終わらせてやる! おい、新入り! 俺と一緒に接近してあのガキが乗っているライドアーマーを破壊するぞ!」

「が、ガキって言ったな!」

 苦しくも戦いを早々に終わらせる為に、スター・コマンドーの平賀才人は新人である澤田綱吉とリクオの二人に接近してライドアーマーを攻撃するよう指示するが、その指示の内容を聞いてガンガルンが怒りを露わにする。

 そして平賀才人とツナとリクオが接近してライドアーマーに攻撃している最中、元殺し屋組のユウとニナミも戦いに苦心を抱く中、指示を告げる。

「俺達も属性攻撃で遠距離からライドアーマーを破壊するぞ! 俺と赤ずきんと、それにナツ・ドラニグルは炎でライドアーマーをけん制!」

「白雪ちゃんと私、そしてグレイと氷麗ちゃんは氷系の技でライドアーマーの動きを鈍らせるわよ!」

 ユウとニナミの指示に、同じスター・コマンドーである赤ずきんと白雪は頷き、新人であるナツやグレイに氷麗も行動に移す。

 聖龍隊の様々な攻撃に、ガンガルンも次第に追い詰められていくが、お得意の打撃攻撃と衝撃波攻撃で周囲をけん制して行く。

 

 ライドアーマーから繰り出される打撃に、格闘家である白浜兼一や風林寺美羽ですら受け切る事はできず、更に超能力者であるチルドレンズも苦戦に感じていたその時。

 坑道にいる全ての敵兵を片付けていた為に誰よりも遅く基地に到着した修司が、激しい戦いが展開されているガンガルンに向けて斬撃波を放って挨拶した。

「黒い短髪の強面……そうか、お前が修司だなぁ! 流石にボクを抑えられるのはSクラスの聖龍隊士だけだって判断したんだなーー!」

 そんな修司を視認して、ガンガルンは修司の様な強者と戦える事に喜んだ。

「でも、ボクの方が遥かに強いぞぉ!」

 そんな強がりを見せるガンガルンを前に、修司は呆れながら言った。

「やれやれ……そんなオモチャを乗り回して、ガキ大将気分か?」

「……ガ、ガキだって? 許さないぞぉ!!」

「あ~~あ、これだから子供の相手は苦手なんだよなぁ」

 修司からガキ呼ばわりされた事に立腹するガンガルンを相手に、修司は頭を掻きながら子供相手の戦闘を苦手がる。

 そして立腹したガンガルンは修司に向けて衝撃波を繰り出した。

 すると修司は正面から向かってくる衝撃波を目視して、聖龍剣を縦に振り付けると衝撃波を縦一直線に切り裂いてしまった。

『えーーーーッ!!』「衝撃波を切り裂いた!?」

 本来物理的攻撃が効かない筈の衝撃波を、日本刀で切り裂いた修司の技に驚愕する新人達にミラール。

 そして修司はガンガルンが搭乗するライドアーマーに急接近して、一気に斬り込んだ。

 するとライドアーマーの脚の接合部分が切り裂かれ、ライドアーマーの動きが鈍くなった。

「わっ、わわわ……ボクのライドアーマーがっ」

 専用ライドアーマーを傷付けられ、酷く戸惑うガンガルン。

「今だ! 総攻撃!」

 修司の一声で、現場の聖龍隊はガンガルンが搭乗する専用ライドアーマーに集中攻撃を浴びせた。

 凄まじい爆炎の中で、ガンガルンが操縦する専用ライドアーマーは瞬く間に破壊されて、粉砕された。

 そして凄まじい爆炎と硝煙の中で、操縦者であるガンガルンも一緒に爆死したのかと新人達が安心し切っていた、その時。

「三角キーーック!」

 煙の中からガンガルンが飛び出してきて、偶然にもアラジンに強烈な蹴りを一発お見舞いした。

「へっへへ、ボクのライドアーマーを破壊できたからって調子乗るなよ! ボクだけでも強いのには変わりないんだからな!」

 アラジンを蹴り飛ばしたガンガルンは、得意気に単体だけでも強いのだと主張する。

 そしてそのままガンガルンは白兵戦を開始した。

「喰らえーーっ!」

 小さいながらも強力なパンチを繰り出すガンガルンは、軽々と跳躍しながら聖龍隊に拳を打ち込んでいく。

 更にガンガルンは綺麗な三角形を描いた跳び蹴りまでも仕掛けてきた。

「三角キーーック!」「うっ!」

 ガンガルンからの蹴りを白浜兼一は腕で防ぐものの、その凄まじい威力に圧倒されてしまう。

 すると此処で修司が戦闘に躊躇いを生じているスター・コマンドーたちに言い付ける。

「スター・コマンドー! 相手が子供と言えど、今や危険な異常者(ヒール)には違いない! 迷わず、斬り捨てろ!」

「こ、子供!? まだ子供扱いしたなぁ!」

 スター・コマンドーへの指摘までも、ガンガルンは立腹してしまう。

 しかし修司から指摘を受けながらも、順一達スター・コマンドーはこれ以上の戦闘での犠牲者を増やしたくない一心だった。例えそれが敵であったとしても。

 たった一人、いや一匹で聖龍隊の大所帯と戦闘を続けるガンガルンは、的確に新人達やスター・コマンドーの面々を跳躍蹴りで攻撃。更に自ら衝撃波を繰り出して強力な攻撃を仕掛けていく。

 そんなガンガルンに戦況を引っ掻き回されて困惑する一同と違って、ミラールと修司は跳び回って撹乱してくるガンガルンに狙いを定めていた。

 そしてミラールはガンガルンに銃を連射して、ガンガルンを困惑させると、それで生じた動揺の隙に修司が急接近してガンガルンに一太刀浴びせた。

「うわあああああっ!!」

 ミラールに続いて修司からの一太刀を受けて、ガンガルンは死亡・消滅した。

 

「ふっ、所詮は世間知らずのガキだったって事か」

 ガンガルンを撃破して、修司は戦い足りないといった顔付きで呟いた。

 一方で順一は、子供であったガンガルンは説得すれば何とか戦いを避けられたのではないのかと修司に問うた。

 すると修司は、彼らブラッディ・レンジャーズの面々は既に遺伝子操作されて正気の沙汰では無かった事から、倒すしかなかったのだと返答。これに順一達スター・コマンドーが思い悩んでいるとミラールが口を挟んできた。

「ジュン、仕方ないわよ。みんな、もう普通じゃ無かったから。気に病んでいたら、それこそ私の仲間だったみんなの暴走は止まらなかったわ」

 ミラールからの言葉に、順一達スター・コマンドーは深い喪失感に苛まれた。

 だが、これで本当に戦いが終わった訳では無い。

 まだブラッディ・レンジャーズのリーダー、ブラッドが残っている。

 そしてブラッディ・レンジャーズのバウンティハンター達を遺伝子操作して暴走させた「センセイ」なる人物の影も。

 

 

 

[全ての始まり……]

 

 遂に最後のバウンティハンター、バニシング・ガンガルンを撃破した頃。

 ガンガルンの死亡をセンサーで確認する一人の顔、それは傷を受けた隻眼の男。

 それは他でもないブラッディ・レンジャーズのリーダー、ブラッドだった。

 ブラッドは半年前の出来事を思い返していた。

 それはある日の晩、何者かに呼び付けられたブラッドは、単身とある廃墟に足を踏み入れた。

 其処で彼は、雇われた傭兵を返り討ちにして、全て倒したところに何者かの声が聞こえてきた。

「フフフフフッ……流石だな」

「誰だーー! 出てきやがれ!!」

 ブラッドは自分を呼び付け、更に傭兵を攻め付けた声の主を呼び付ける。

 するとブラッドの目の前に、複数の黒衣を纏った人影たちが現れる。その中でも特に秀でて巨体の影がブラッドに問い掛けた。

「お前達は聖龍隊を邪魔だと思わないか? 奴らの事」

「何を言ってやがる。聖龍隊だと……確かに気に食わないが、関係ない。俺たちは俺たちだ、勝手にやる! 失せろ!! 大体、お前たちは何もんだ!?」

 ブラッドが訊き返すと、黒衣を纏った影はブラッドに返答した。

「俺達か? ……そうだな、お前達の良き理解者とでも思って頂いて結構」

 

 そして時は戻り、現在。

「……あの時から、奴らは俺達を利用する算段だったのか?」

 ブラッドが再び過去を思い返す。

 多くの異常者(ヒール)を倒し、そして捕虜として拘束していた日々。

 そんな事件解決の裏で活躍するミラールや仲間達の活動にブラッドが指揮していると。

「彼女の能力は素晴らしい……!」

「わッ! あ、あんた達か……脅かすなよ」

 突如として目の前に現れた複数の黒衣の者たちに驚くブラッドに、巨体の黒衣が平謝りをする。

「いや、すまんすまん。脅かすつもりは無かったのだが……」

「彼女の能力って、ミラールの変身能力のことか? まったくだ、最初は魔法なんて荒唐無稽なもの半信半疑だったんだが重宝しているぜ。どういう原理かは解らないが、お陰で俺達の仕事がはかどる!」

 最初は信じてなかった魔法に関してそれを扱うミラールに多大な感心を示すブラッド。だが黒衣の者はブラッドに問い質した。

「しかしだ、このままでは宝の持ち腐れではないのか?」

「なんだと? それはどう言う意味だ!!」

「俺達に任せてみないか? きっと気に入ってくれると思うのだが……」

「!?」

 黒衣の者たちの言葉に戸惑いを見せるブラッド。この時の彼らの誘惑が、まさかブラッディ・レンジャーズを破滅に導く結果に誘われようとはブラッドは夢にも思わなかった。

 

 そしてそれから数日後の事。

 謎の黒衣の者たちに、ミラールが収集したDNAデータを渡したブラッド。

 黒衣の者たちは、それでブラッディ・レンジャーズのバウンティハンター達の遺伝子操作を行い、彼らを強化した。

「フフフフッ、分かっただろう。DNAデータはこうやって使うんだ」

「……信じられないな。まさか、あのDNAデータで、こんなに凄いパワーが身に付くなんて!? あんた達凄いんだな!!」

 半信半疑で渡したDNAデータで凄まじいパワーアップを身に付けた実態にブラッドは感激した。そんなブラッドに黒衣の者は言った。

「フフフ、DNAデータは所詮は道具だ。道具というのは正しい使い方をしてこそ100%の力を発揮するものよ。少しは俺達の事を認めてくれる気になったか? しかもこの程度の事で驚いてもらっては困る。俺たちに掛かれば、お前達を更に強化する事もできる」

「何!! まだ強くなれるって言うのか?」

 黒衣の者の話を聞き、俄かには信じられないといった顔付きをするブラッドに黒衣の者は説いた。

「そうだ、その為には逃がしてしまった彼女の存在が必要不可欠だ。そしてもっとデータを集めさせるんだ! そうすればお前達を最強のハンターに、ヒーローにしてやろう!」

 全ては逃亡してしまったミラールに更なるデータを収集させる必要があると説く黒衣の者。しかしそれを聞いてブラッドは唱え返した。

「……それは無理だ。きっと、ミラールの奴は戻ってこない。もう自由にしてやるさ。それにパワーアップも、もう十分だ。感謝しているぜ、あんた達には。もう俺たちに敵う奴なんて居ない」

 逃げ出したミラールの意志を尊重し、彼女を自由にさせると唱えるブラッドの考えに、黒衣の者は言った。

「フン、力はもう必要ないか、お前達にはそれぐらいで十分かも知れない……だが、彼女にはまだ最後の仕事が残っている」

「どう言う意味だ? 最後の仕事?」

 ブラッドが血相を変えて問い返すと、黒衣の者は言い放った。

「肝心のデータがまだ揃っていない。最強の二次元人のデータが……」

 これを聞いてブラッドはようやく黒衣の者たちの思考と狙いが解った。

「あ、あんた達、俺たちを……ミラールを利用してやがったのか!?」

 自分たちブラッディ・レンジャーズを利用してきた企みにようやく気付いたブラッドは、黒衣の者たちに反発した。

「……もうお終いだ! ミラールを探す気はない。それにこれ以上、あんた達の指示通りに動いて、何の罪もない二次元人を巻き込んで傷付けたり襲うのもゴメンだ……!」

 ブラッドは黒衣の者たちとの協力を拒むが、黒衣の者はブラッドに忠告した。

「フゥ、残念だな。協力しないと言うのか……フッ、しかし彼らはどうかな?」

 黒衣の者たちが道をあけ、ブラッドに見せ付けたのは正気を失ってしまったブラッディ・レンジャーズのバウンティハンター達だった。

「おい、どうしたんだお前ら! しっかりしろ!!」

 正気を失い、自我すらも曖昧な仲間達を目の当たりにして、ブラッドは黒衣の者たちに問い詰めた。

「貴様ら! 俺の仲間に何をした!?」

 これに黒衣の者は機械の半面を怪しく輝かせてブラッドに告げた。

「フフフフッ、パワーアップの恩返しをしてもらおうと思ってな。ちょいとこいつらの思想概念を弄って洗脳したのよ」

「!!」

 仲間達を洗脳されたと聞かされ、愕然とするブラッドに黒衣の者は己が真意を告げる。

「さあ、どうする……元の彼らに戻してほしければ、俺たちの言う事を素直に聞くんだ! ミラールを連れ戻し、聖龍HEADのデータを手に入れろ!」

「!!!!」

 黒衣の者たちの真の狙いは、聖龍隊を総指揮するHEADのDNAデータだった真実にブラッドは愕然とした。

 そしてブラッド、いやブラッドたちブラッディ・レンジャーズは黒衣の者たちの指示通りに聖龍隊に反乱を仕掛けたのであった。

 

 

 時は戻り、バニシング・ガンガルンを撃破した直後の聖龍隊本部。

 其処では

「皆さん、お待たせしました。ブラッディ・レンジャーズのアジトが判明しました。でも、これまでレーダーに反応すら無かったのに急に見つかるなんて……まるで私たちを誘っているみたいです」

 通信士であるウッズからの指摘を聞いて、聖龍隊副長バーンズが細心の警戒を促す。

「確かに、何かあるかも知れないな。十分に気を付けてくれ。ジュン、修司、ミラールを頼んだぞ」

 このバーンズの言葉を聞いて順一は頷いた。

「分かっています。さあ、みんな行こう。こんな争いは早く終わらせないと……」

 そんな順一を見て、師でもある修司が順一達スター・コマンドーに言った。

「フッ、お前達らしくなってきたな。ジュン、スター・コマンドー」

 すると順一達は真剣な面差しで明かした。

「僕たちの想いは変わりません。戦いたくは無いんです。急ごう、これ以上犠牲を出さない為にも彼らを止めないと」

 そんな順一達の決意を感じながら、修司は出撃の準備をする。

「分かった、お前達の好きにすると良いさ。出るぞ、ミラール準備はいいか?」

 修司から指摘されたミラールは、心中で自分のリーダーだったブラッドの事を密かに思っていた。

「う、うん(待っててねブラッド。私が止めてあげるから……)」

 

 そしてウッズは超高度の上空に現れた、巨大な居城の地点をモニターに表した。

「突如、上空に現れた巨大な居城。そこがブラッディ・レンジャーズのアジトと思われます! 皆さん、どうかお気を付けて!」

 こうして聖龍隊は最後の戦闘地点である、ブラッディ・レンジャーズの本拠地と思われる居城へと出撃した。

 

 

 

[敵地防衛! モルボーラ]

 

 聖龍隊は同行する修司の提案から、戦前で活躍し続けてきたニュー・スターズの面々も戦力に加えた総戦力でブラッディ・レンジャーズの本拠地へと突入する事になった。

 戦力が増大する事で、更なる戦火が拡散する事を懸念した村田順一達スター・コマンドーは最初は戸惑ったものの、一刻も早い争いの終止符を打つ為にもとニュー・スターズの同行を半ば認めた。

 そして一行はブラッディ・レンジャーズの最終拠点でもある通称ブラッディ・パレスへと突入。

 ブラッディ・パレスまではスター・コマンドーが所有する自機スターウィングに全員が搭乗して向かう事に。

 スターウィングに移送される皆々は、ブラッディ・パレスの真上に差し掛かった所でパラシュートで降下して突入した。

 まず先陣を切ったのが修司であり、その後に続いて戦意満々のミラールがパラシュートで降下する。

 二人に続いて順一達や他の聖龍隊の面々もパラシュートで降下してブラッディ・パレスに着地する。

 一同が着地したのは、ブラッディ・パレスに続く道パレスロードであった。何故かパレスロードは各所が崩落して、まともに使える道路では無かった。

「おかしいわね。なんでこんなに荒れているのかしら?」

 パレスロードの現状を見て、ミラールが首を傾げる。

 すると全員がパレスロードに着地した途端、パレスロードの向かい側から巨大なマシンが稼働し出して突進してきた。

「うわっ! なんなんだアリャ!?」

 ニュー・スターズが総部隊長フロートが一驚していると、そのマシンは正面に備え付けられてるローラー状のカッターを回転させて向かって来た。

 それを見た修司が叫ぶ。

「あ、あれはモルボーラ! トンネル工事用のモグラ型メカニロイドだ!」

 トンネル工事で穴を掘削する作業用のモグラ型メカニロイド、モルボーラが向かってくるのを見て、一同は軽く混乱してしまう。

「い、一旦退くぞ! 工事用だから頑丈で、生半可な攻撃じゃ破壊できないぞ!」

 修司の助言を聞き、一行は一先ずその場から退避する事に。

 本拠地であるブラッディ・パレスを防衛する為に置かれていたと思われるモルボーラに追い回される結果になる一行。

 しかしパレスロードには、トラップとしてか燃料が摘まれたタンクや敵兵が配置されてた。

「燃料タンクは避けろ! 敵兵はあまり構わず、とにかく逃げろ!」

 修司は叫びながら必死で走り続ける。

 そんな道中で、パレスロードの道が抜けて大穴が空いている箇所も多く見受けられた。ここは超高度の上空。落ちれば一溜りもない。

「大穴が空いているぞ! 気合でジャンプだ!」

 そういうと修司は何とか気合で大穴を跳び越えて向こう側に渡る。

「む、無理だぜ、これは!」

 しかし余りにも大きな穴ゆえに、跳び越えるのは無理だと言い始めるナツたち新人達。

 そんな彼らの前で、ミラールだけは余裕で自らのアーマースーツに装備されているホバリングで空中を滞空しながら大穴を越えていってしまう。

「ミラール! ズルいぞ、お前だけ!!」

 ナツたちが自分だけ滞空できる装備を持っている事に不満をぶつけていると、ミラールは素気なく返す。

「そんなこと言っている場合? それよりみんなも早く跳び越えないとモルボーラに潰されちゃうわよ!」

 仕方なく、浮遊できる者以外は何とか気合で大穴を跳び越えてモルボーラからの追撃を回避する。

 

 こうして一行は、モルボーラからの追撃から逃れようと退避し続けていた。のだが、遂にパレスロードの行き止まりに到達してしまう。

「い、行き止まり!?」

 澤田綱吉が動揺している間も、モルボーラは刃を回転させながら向かってきていた。

「くっ、こうなったら……破壊するしかない! 全員、戦闘態勢に入れ!」

 修司の決断から、全員が立ちはだかるモルボーラに攻撃を開始した。

 最初に皆が攻撃したのは、モルボーラの回転するローラーカッター。全員が攻撃すると、ローラーカッターは簡単に破壊できたのだが、ローラーを破壊されたモルボーラはモグラの口に見立てた先端から強力なレーザーを直射しながら回転。周囲に攻撃する。

「回避しろ!」

 修司の直感的な指示から、全員がレーザーを回避すると其処に間髪入れずにミラールが得物であるミラージュ・ガンを大砲に変化させて砲撃。モルボーラを破壊しようとする。

 するとモルボーラは左右を行ったり来たりして突進してきた。修司たちはモルボーラの突進を回避しながら、何とか攻撃を当てようと画策する。

 そして一定時間突進してきたモルボーラは再び停車すると、またしてもレーザー攻撃で周囲を攻撃する。

 しかしモルボーラがレーザーを発射する際に停車する隙を狙って、修司が聖龍剣でモルボーラを斬り付ける。

 すると斬り付けられてたモルボーラが再び爆走して猛威を振るった。

「くそっ、また動き出しやがったか。誰か、モルボーラの動きを止めろ!」

 この修司からの要望を聞いて、氷麗やグレイそして白雪やニナミなどが氷系の技でモルボーラの車輪を凍て付かせ動きを封じる。更にそこへスパイダーライダーズの面々が蜘蛛の糸でモルボーラを完全に抑え込む。

「今の内だ! 叩き込め!」

 動きが完全に封じられた今が好機と、修司がモルボーラに斬りかかる。それに続けと他の聖龍隊もモルボーラに総攻撃。

 結果、モルボーラは完全に破壊、爆発した。

 爆風の中で平然と立ち続ける修司の気迫を目の当たりに、ミラールら新人達は愕然とする。

 

 モルボーラを撃破した一行は、遂にブラッディ・パレスの内部へと突入する。

「この奥に、ブラッドがいるのね……」

「ミラール、油断するんじゃないぞ」

「分かってるって」

 パレスの最深部にブラッドがいるのかと思い込むミラールに修司が呼び付けると彼女は呆気なく返事した。

 そして修司、スター・コマンドー、ニュー・スターズ、そしてミラールを加えた新人達はパレス最深部へと突入した。

 

 

 

[登場 血に染まる兵士]

 

 モルボーラを撃破した一行は、ブラッディ・パレスを進攻する。

 迫りくる敵兵である異常者(ヒール)を片っ端から惨殺して行く修司と同様、異常者(ヒール)を容赦なく射殺するミラールの快進撃で一行はどうにかパレス内部を進攻できた。

 敵や異常者(ヒール)には容赦のない制裁として惨殺して行く修司のやり方に、順一達スター・コマンドーは複雑に思う中、修司は次々と敵を排除して行く。

 そんな修司同様に、迫る異常者(ヒール)の攻撃を回避しながら的確に射撃して撃ち抜いて行くミラールのやり方にも順一は複雑に思うばかり。

 快進撃の中、道中で一旦休止する一同の中で修司は通信機から緊急の連絡が入ったとして、通信に出た。すると

「……おい、ちょっと待て! まだ俺達がいるんだぞ! 聞いているのか……くそっ」

「どうされたんですか?」

 緊急通信に出る修司の歪む険しい様子を見て、順一が問い掛けてみると修司は険しい面持ちで答えた。

「今から3時間後……この居城はレーザー衛星で破壊される!」

 修司から突然告げられた事態に、一同は愕然とする。

「ど、どういう事なの!? 破壊されるって……」

 ニュー・スターズのエレオノールが問い詰めると、修司は不本意ながら答えた。

「ブラッディ・レンジャーズとの戦いを、中継で観ていたアメリカ政府が国連を通じて、自分達が所有するレーザー衛星でこの拠点を破壊して一気にブラッディ・レンジャーズを葬る算段だ。急がないと、俺たちも衛星の砲撃に巻き込まれて一瞬で消滅しちまう!」

 この修司の告白を聞いて、一同は酷く戸惑った。

「何だよ、そりゃ! 俺達がまだ中で戦っている最中だぞ!」

「上の人間は僕たち以上に事態の収拾を強く思っている。だから一気に全ての問題を解決したいんだろう」

 ナツ・ドラニグルが政府の決定事項を強く非難していると、順一がそれに険しい顔で答える。

「な、何だか申し訳ないな……」

「そう言うなって。確かにアメリカは、おれ達の国とはいえ政府のお偉いさんの決定事項とは関係ねえよ」

 自分達の母国がレーザー衛星で砲撃する決定を下した事に罪悪感を感じるジョーイやリナ達に、同じアメリカ出身のフロートが自分達とは関係ないと元気付ける。

「急ぐぞ! レーザー衛星が発射される前に、全てを終わらせて脱出するんだ!」

 修司は皆に、レーザー兵器が発射される前に全ての敵を倒してブラッディ・パレスから脱出する様に宣言した。

 

 そして一行はブラッディ・パレスの最深部に到着した。

 そこは複数の浮き場がある、底抜けの戦場が広がる曇天の上だった。

 その複数の足場の奥の方に、一人の顔に傷を受けた隻眼の男ブラッドが佇んでいた。

「どうした……遅かったな、待ちくたびれたぞ」

 ブラッドは、到着した聖龍隊に声を掛けると、ミラールが足場を渡ってブラッドに話し掛けた。

「久しぶりね、ブラッド。元気そうでなによりよ」

 ミラールと久方振りの再会を果たしたブラッドは、自分の今の状態に呆れながら語り明かした。

「センセイ達のおかげでな。力が漲っているよ。フッ、だけど、この有様だがな……」

「なるほどね。センセイ達、か……今日は一緒じゃないみたいね」

 ブラッドやブラッディ・レンジャーズの皆を遺伝子操作や洗脳で可笑しくさせた謎の存在が複数いるのだと認識したミラールはブラッドに問うと、ブラッドは落ち付いた様子で答えた。

「相変わらず何処にいるのかは解らんな。案外近くで俺たちの事を見ているんじゃないか?」

「そう……じゃあ、気を付けないとね」

 疑問形で答えるブラッドの返答に、ミラールも警戒心を張り詰める。

「さて、長話してる場合じゃなかったな? そろそろ始めるとするか!」

 そしてブラッドは、得物である上下に刃が付いた大鎌状の武器を揮って戦闘を開始した。

 

 足場の悪い浮き場に乗って移動する修司たちはブラッドを包囲しようと試みた。

 するとブラッドは複数の分身を出現させて鎌から斬撃波を繰り出した。

「来るぞ!」

 修司の一声でブラッドを包囲していた一部の面々は、斬撃波から回避する。

 そこに修司が急接近して、ブラッドの本体に斬り込んで行く。

 するとブラッドはその場から一瞬で姿を消して、別の足場へと移動する。

「こっちだ!」

 ブラッドの一声に振り返ってみると、後方からブラッドがまたしても鎌から斬撃波を放って攻撃してきた。

 そんなブラッドに、彼に教育されたミラールと、ニュー・スターズの高町なのはが砲撃。しかし数発の砲撃を受けても、遺伝子改造されたブラッドは倒れず、再び姿を消した。

 ブラッドはまた別の場所に移動すると、分身と共に鎌から斬撃波を繰り出して聖龍隊を攻撃する。

「消し飛べェ!」

 ブラッドの鋭い斬撃は聖龍隊に直撃して、数名の隊士を戦闘不能に陥れる。

 更にブラッドは、自分がいる足場と周囲の複数の足場に竜巻を発生させて聖龍隊が自分に近付けない様に仕掛ける。

「ブラッド……こんな事ができるなんて……!」

 ミラールがブラッドの実力に動揺していると、修司がミラールに言った。

「アイツもセンセイって奴の遺伝子操作で肉体を改造されたんだろう! もう俺達と戦わなきゃならなくなるまで自身を改造されたんだ……」

「そんな……! ブラッドまで……」

 修司の発言に、ミラールは悲愴に打ちひしがれた。自分が収集したDNAデータが原因で、ブラッドが、ブラッディ・レンジャーズが可笑しく異常になってしまった。この事実にミラールは深い罪悪感と後悔の念に苛まれた。

 そんなブラッドは分身からの複数攻撃と、竜巻攻撃を駆使して聖龍隊を圧倒して行く。

 激戦の中、ミラールはブラッドの事を思い返していた。

 ブラッドは元々、傭兵であったが、戦場で受けた傷とトラウマから戦前に立つ事ができない体へと変わり果ててしまった。そんな彼が結成したブラッディ・レンジャーズはブラッドの指揮の下、一般人からも高く評価されるほど支持を得ていた。そんな中、ブラッドは祖国を抜けて人間界へと出てきたミラールを拾い、彼女に様々な銃火器の扱いや射撃の腕を育成した。そしてブラッドとミラールは互いに信頼し合う師弟関係を築いてた。しかしミラールは、ブラッドに対して淡い想いを焦がしていたのだ。

 そんなブラッドが、今では聖龍隊の名立たる隊士や新人達を一挙に斬り付け、襲い、傷付けている。

 既にブラッドはセンセイなる人物達の手により、完全な戦闘マシーンへと変貌していた。

「こいつ……ッ!」

 修司が大鎌を揮って戦うブラッドに斬りかかるが、ブラッドは修司からの斬り込みを鎌で器用に防ぐ。そこに順一も斬りかかるが、ブラッドは二人の斬り込みを同時に防いで反撃として弾いてしまう。

 ブラッドに弾かれた二人は、揃って浮遊する足場から落ちそうになるが、それを聖龍隊の新人達が手を伸ばして救出。落下を未然に防いでくれた。

 だが戦闘狂に変貌しているブラッドは、そんな修司と順一を救出する新人達の背後から奇襲を仕掛けようと迫った。

 その瞬間、ミラールは過去にブラッドから銃の手解きを教えてもらった事を思い返しながら、銃口をブラッドに向けて狙い定めた。

 そしてミラールは、ブラッドに向けて銃を発砲。銃撃はブラッドを貫通し、その一撃でようやくブラッドを戦闘不能に追い詰めた。

「ヤキが回ったぜ……!」

 師でもあるブラッドを撃ち抜いたミラールは、後にブラッドはわざと自分に撃たれる為に戦闘狂になったのではないかと思ったと言う。

 

 ミラールが覚悟の銃撃でブラッドを撃ち抜いた、その時。

 皆がいるブラッディ・パレスが突如として震撼した。

「な、なに!? この揺れ……!」「……!」

 新人である真宮桜やニュー・スターズの金剛番長が愕然としていると、撃ち抜かれたブラッドが自分を撃ったミラールに語り明かした。

「ハハッ……腕を上げたな、ミラール。嬉しいよ……この音が聞こえるだろう。……此処は……長くはもたない……」

 突如として音を立てて崩れていくブラッディ・パレスの崩落音を指して、ブラッドは語り続けた。

「オレに、くっ、はぁ……万が一の事があった時には一緒に消えて、グッ、無くなるように……セットしておいたからな。……此処はじきに瓦礫の山だ……は、早く行け……」

「嫌よ!! ブラッドも一緒に行くのよ!!」

 自分に何かがあった時に同時にパレスが崩落するようセットしておいたと言うブラッドの言葉を聞いて、ミラールは共に脱出するように言い寄る。

 しかしブラッディ・パレスの崩落は始まっており、ブラッドの元に歩み寄るのも既に困難を極めていた。

「早く、まだ間に合う!!」

「落ち着けミラール! 急がないと俺たちも埋まっちまうぞ!」

 急いでブラッドの許に駆け寄ろうとするミラールを、修司が制止する。

 そんな最後まで自分を慕ってくれるミラールを見て、ブラッドは彼女に告げた。

「そいつの言う通りだミラール……先に逝って待ってる……いつでも来な……慌てなくてもいい……」

「ブラッドッ!!」

 そしてブラッドは崩落するブラッディ・パレスの瓦礫の中にその姿を消した。

 ミラールの悲痛な声だけが、崩落する瓦礫の中で響くだけで。

 

 

 

[鬼神の残酷さ]

 

 ブラッドの最後を見届けた一行は、崩落し始める屋内にて一人沈み込むミラールを見て気が沈んでいた。

「ミラール……」

 信頼していたブラッドを、兄貴肌だったリーダーブラッドを最後まで助け出そうとしていたミラールの気落ちする様子を見て修司が呟く。

「ミラール、あなた………………ブラッドの事を……」

 落ち込むミラールの様子を見て、真宮桜がミラールに真意を突いた。そう、ミラールがブラッドに淡い恋心を抱いていた事を。

 するとミラールは涙を堪えて、立ち上がると皆に言った。

「……もう大丈夫。こんなところで立ち止まっている場合じゃないわ!」

 ミラールは力強く唱えると、明るい素振りを振る舞った。

「さっ、早く此処から脱出しよう!」

 みんな無理に強がるミラールの想いを感じて、立ち尽くしていた。

 

 と、その時。

「ふふふ、貴様らが此処から抜け出る事はない」

「! 誰だ!?」

 謎の声に修司が訊き返すと、修司達の目の前に大勢の集団が突如として現れた。

「お、お前は……! 将人! ミヤビ! それに……ハルナワ!」

 目の前の集団の先頭にいる三人を見て、日ノ原革が愕然とする。

「き、君は……ジュダル!? なんで此処に……?」

 目の前の集団に混じっているジュダルを見て、アラジン達は一驚する。

「ど……ドクターミナミ!?」

 ジョーイは集団の中に混ざっているマシンに搭乗した科学者を見て驚いた。それはヒーローマンを一方的にライバル視しているドクターミナミだった。

「ほ、他の奴らは……ウチの組と反発している日本妖怪共じゃねえか……!」」

「それに……ツナの命を狙っているゴロツキ共も大勢いるな」

 奴良リクオとリボーンは、大勢の集団が自分達と敵対している日本妖怪やゴロツキだと認識。

 そんな大勢の異常者(ヒール)を前にした修司が、何ゆえこの場に敵対している連中が勢揃いしているのか問い詰める。

「おいおい、なんでウチの新入り達と敵対している連中が揃ってるんだよ?」

 するとこの疑問にハルナワが返答した。

「ふふ、貴様が小田原修司か……我らの安寧を奪った排除法やらを制定した愚かな人間……此処に居る者は皆、革命軍士によって集められ、貴様らを地獄に叩き落とす為に集った一団なのだよ!」

「か、革命軍士だと!?」

「テメェら! 革命軍士に加わったのか!?」

 革命軍士だと聞いて目の色を変える順一にフロートが問い詰めると、ハルナワが再び答える。

「ふふ、アラタ達が聖龍隊と言う巨大な組織に加わり、その勢力を強めたとなると、我らもそれに対抗すべく新たな勢力を身に付ける必要があった。それ故に革命軍士に……あの機械に降るしかなかったのだ!」

「あの機械…………っ! まさか……!」

 ハルナワが口にした機械と言う単語を聞いて、順一は確信した。

「ま、まさか……! ブラッドを……みんなの遺伝子を改造したセンセイって奴らは……!」

「ハハハっ、いやあ、慣れてない事で大変だった! だが、あの機械の言うとおりにブラッディ・レンジャーズを利用してお前達を追い詰めようとする作戦は実に面白かったわ!」

 ミラールが問い詰めると、ドクターミナミは嘲笑いながら語った。

「あ、アンタ達がブラッドを……みんなを……!」

 ミラールは静かに己の中に怒りの感情を滾らせる。

 しかし相手は大軍勢。簡単には攻め込めない状況だった。

「お、おいどうするんだ!? こんな多勢の連中と一戦やらなきゃならないのか?」

 目の前に広がる大勢の大軍、雑魚妖怪やチンピラだけでも軽く200は超える大軍勢に動揺する岩崎月光。

 すると、そんな悪漢共の大軍勢を前に、修司は静かに彼らに歩み寄る。

「そ、総長……?」

 澤田綱吉が声を掛ける中、修司は大勢の敵の前まで歩いて行く。

 すると「おい、それ以上動くんじゃねえぞ」と、チンピラの一人が修司の頭に銃を突き付けて脅した。

 しかし修司は平然とした様子で、そのチンピラに言った。

「……命かけろよ……」

「ハぁ?」

 小さい声で呟く修司の発言が聞こえず、攻め口調で問い返すチンピラ修司は今度はハッキリとした口調で述べた。

「命賭けろよ……そいつは、脅しの道具じゃねえからよ」

 修司がそう言った次の瞬間、修司は目にも止まらない早業ともいえる抜刀で聖龍剣を抜いて、銃を突き付けていたチンピラの腕を斬り落とした。

「う、うわああぁぁあああ!!」

 自分の腕が斬り落とされたのを前にして、絶叫するチンピラ。

 そして修司の早業を目撃した門脇将人やハルナワ、ジュダルやドクターミナミ、そして聖龍隊の新人達は絶句した。

「な、なんて卑怯な!」

「こっちはまだ脅ししかしていねえってのに……」

「先に攻撃してきやがった!!」

 チンピラや妖怪達が不意打ちとも捉えられる修司の先手に文句を言っていると、修司は平然と物申した。

「卑怯? はて、何の事かね? それとも、お宅らは聖者でも相手にしている積りだったのかな?」

 穏やかな笑みを浮かべながら物申す修司の言葉に、その場の全員が注目していると次の瞬間、修司は表情を刃物の様に鋭利に険しくさせて敵たちに告げた。

「だが、テメェらはトンデもない失敗をしちまった。俺を直接敵視した訳でもない、ましてミラールの昔仲間だったブラッディ・レンジャーズを利用した事でもない………………今までも、そしてさっきも……俺の仲間を悲しませ、心を深く傷つけた! それがテメェらの敗因だ!!」

『!!』

 鬼気迫る修司の迫力に、ハルナワや将人達は愕然と身震いする。

「な、何を強がっているのだ……こちらの方が遥かに優勢なのだ!」

 ハルナワに続き、妖怪達も騒ぎ出した。

「そ、そうだ! こんな人間など、恐れるに足らん!」

「一気に畳み掛けろッ!」

 そして修司達の目の前に集っている妖怪やチンピラ達は自分達の数の多さに自信を持ち、修司に向かって襲い掛かって来た。

「そ、総長!」「大丈夫、これで十分だ」

 修司は順一に大丈夫だと告げ返すと、聖龍剣一本で悪党達と戯れ始めた。

「お前ら相手に……剣を抜く必要もねえよ!」

 その宣言通り、修司は聖龍剣を鞘から抜く事なく、鞘に入った状態で刀を振り回して群がる敵を一掃して行く。

 

 そして修司は、ものの数分で敵たちを返り討ちにした。

 門脇将人は、劍神:「逐力(オロチ)」で修司に太刀打ちしたが相手にはならず、それどころか修司に顔面を中心に殴り続けられ、鼻などの顔面の骨はボロボロになり、修司に足を掴まれて振り回されて武器にされた為に全身を激しく打ちのめされた挙句、修司を短足呼ばわりした為に、修司より床に叩き付けられた所をツイスト踊りと評して、口の中に踵を突っ込まれた状態でグリグリと押し付けられたために前歯と言う前歯を全て折られてしまう。

 そんな将人への横暴を止めようとしたミヤビに対しても、修司は女とはいえ情け容赦なく返り討ちにして彼女を悶絶させて激痛を味あわせる。

 修司はハルナワに対しても、将人と平等に痛め付けて、武器代わりに振り回していた将人を鈍器にハルナワを殴り付けた為に、ハルナワは頭から大量の血を噴き出して倒された。

 ジュダルに対しては、修司はジュダルと互角以上の体術で渡り合い、ジュダルを徹底的に痛め付けて気絶させる。

 そして自作したマシーンを乗りこなして修司に対抗したドクターミナミであったが、修司は鞘に納められたままの聖龍剣でドクターミナミが搭乗するマシーンを突き、その一発でマシーンにひびが入り、マシーンは大破してしまう。

 そして日本妖怪の集団と悪漢共は、鞘に納められた聖龍剣で殴られて全員が叩きのめされ気絶してしまった。

 大勢の敵を、聖龍剣を抜かずに自らの素手と鞘に納めたままの刀で返り討ちにした修司は、その鞘に納めた聖龍剣を地べたに這いずり回る将人やハルナワ達に向けて言い放った。

「手ぬるいぜ、悪党共。俺を本気で殺したけりゃ、核ミサイルの一本でもブチ込むんだな」

 本気を出さずに、大勢の敵を全て返り討ちにした修司の残酷とも呼べる戦いを目撃して、新人達は絶句してしまう。

「す、凄い……!」

 ミラールは、この修司の芸当を前にして唖然とするばかりだった。

 そして修司は、集団を引っ張っていた素振りを見せていたハルナワに歩み寄り、彼の顔を踏み付けると言い付けた。

「さて……このグズ野郎をどうするかね?」

 修司に徹底的に痛め付けられたハルナワは、命乞いをした。

「た、頼む……命だけは……!」

 しかし涙ながらの命乞いも修司には効かなかった。

「どの道、異常者(ヒール)だろ? テメェら」

「!!」

 異常者(ヒール)故に殺されても文句が言えないご時世の中、ハルナワは言葉を失った。

 と、修司がハルナワを踏み付け、そしてどうしようかと考えているのに皆も注目していたその時だった。

 日ノ原革もハルナワの顛末に注目していたのを視認した、傷だらけの門脇将人が手元に転がっていた劍神:「逐力(オロチ)」を手に取り、革に向かって斬りかかって来た。

「! 将人!?」

「アラタ、てめぇを……テメェだけでも降してやる!!」

 将人が革を斬りかかろうとした、その瞬間。将人が振り翳した劍神:「逐力(オロチ)」を一瞬の抜刀で斬り払い、弾いた者が。それは現場の誰よりも平和を重んじていた村田順一だった。

 順一は一瞬の抜刀術で将人が振り翳す劍神:「逐力(オロチ)」を弾き飛ばして、将人を押し返す。

 押し返された将人が茫然とする中、順一は将人に向かって怒声を言い放った。

「人を見下して……そんなに楽しいのか!!」

 他人を降す事しか考えていない将人への怒声に、現場が凍り付いた。

 そして順一から怒声を貰い受けた将人は、衝撃のあまり思わず失禁してしまう。

 腰を抜かし、股から大量の尿を漏らす将人は修司に負けず劣らない順一の気迫に驚かされてしまう。

(だ、ダメだ……! この男にも、勝てない……!!)

 一瞬で自分の得物を弾き払った腕前だけでなく、腰を抜かしてしまう程の気迫を発する順一には到底敵わないと本能的に察する将人。

 そんな将人の背後から、一つの影が迫っていた。

「まったく、ションベン漏らすとは汚えガキだな……!」

 将人が振り返った次の瞬間、その将人の髪の毛を鷲掴みにして振り投げたのは修司だった。

 修司に髪の毛を鷲掴みされて投げ飛ばされる将人は、頭の激痛だけでも悶絶ものなのに床に再度叩き付けられる痛みの、二重の苦痛で喘いでしまう。

 そして修司は、目の前に現れた敵勢を全て返り討ちにし、徹底的に痛め付けた修司は最後に衝撃的な大技を炸裂させた。

「ガハハッ、こんな雑魚共、一掃してやるぜ!」

 そう言うと修司は両腕を大きく振り回し始め、それと同時に上半身も大きく回し始めた。すると修司を中心に黒い靄が発生して、それが強烈な旋風を起こし始めた。

「うわっ」「な、なんなんだ、いきなり……!」

 突如として発生する旋風に動揺するルーシィやナツたち新人。

 すると修司が起こした闇の旋風は、周囲に横たわる多くの敵たちを引き寄せて、舞い上がらせる。

 その敵たちを引き寄せ、舞い上がらせて巻き込まらせる旋風には門脇将人やミヤビ、そしてハルナワやジュダル、ドクターミナミなども吸い上げる様に舞い上がらせると旋風に呑み込まれていった。

「ま、将人様……!」「ミヤビ……!」

 互いに離れ離れにならない様に手を固く結び合う将人とミヤビであったが、修司が起こした旋風に引き離されて両者とも回転する渦の中に消えてしまう。

 そして大勢の敵たちを吸引して発生させた旋風は、巨大な闇の竜巻となって修司の思うがままに操られる。

「闇旋風、大竜巻!」

 修司が叫んだその瞬間、大勢の敵たちの悲鳴が竜巻の中から阿鼻叫喚する。そして修司は竜巻を操って崩落しているブラッディ・パレスの壁に激突させると、竜巻は壁を貫通。そのまま敵たちを呑み込んだ闇の竜巻は外へと飛び出していった。

『………………』

 凄まじい威力を誇る修司の闇の力が発生させた竜巻を目の当たりにして、その場の誰もが唖然としてしまう。

「……ふぅ、やれやれ。悪ガキのお仕置きは疲れるモノだな」

 修司は門脇将人の事を言いながら、順一達の方へと戻ろうとした。

 すると修司の目の前に、竜巻と共に吹き飛ばされた将人が使用していた劍神:「逐力(オロチ)」が落ちているのが確認された。

 修司は劍神:「逐力(オロチ)」を拾い上げると、徐に剣を凝視して言葉を発した。

「これは良い! 戦利品として、俺のコレクションに加えるとしますか!」

 そう言うと修司は平然と劍神:「逐力(オロチ)」を聖龍剣と共に腰に携えた。

 それを見た革は密かに思った。

(じゃ、邪悪な逐力を平然と触れる上に手持ちにしてしまうなんて……!)

 邪悪な力を宿した劍神:「逐力(オロチ)」を平然と触れるだけでなく手持ちにしてしまう修司の心理状態をふと不安に思ってしまう。

 だが、そんな修司を先ほどの戦闘を観戦していたミラールは称賛しまくる。

「凄いわ、総長! あんな大勢の異常者(ヒール)を、聖龍剣を抜かずに一掃しちゃうなんて! 流石だわ!」

 そんな修司を称賛するミラールは、続いて順一にも称賛の言葉を掛ける。

「ジュンも凄いわね。あの将人って奴の不意打ちを、一瞬で弾いちゃうなんて」

 しかしミラールに称賛された順一は平然とした顔で目を背ける。

 すると修司が驚くミラール達に告げた。

「お前たち、ジュンが弱いといつから錯覚していた」

 この修司からの一言に、ミラール達は衝撃を受けた。

 

 そして戦闘で荒れに荒れた現場から、皆が脱出しようとしてたその時。

「ねえ、みんな待ってよ」と、ミラールが言った。

 皆がミラールに目を向けると、彼女は話した。

「……さっきの雑魚達だけじゃ、ブラッド達を言い包められるとは到底思えない。本当のセンセイって奴は……まだ何処かに」

 そうミラールが皆に真実を告げると、彼女は今自分達がいる大広間に向かって呼びかけた。

 

 

 

[現れたセンセイ]

 

「出てきなさいよ、いるのは分かっているのよ。センセイ」

 するとミラールの呼び掛けに応えるかのように、裏で暗躍していた黒幕が姿を現した。

「フハハハハハッ、ご苦労だったな。揃って此処まで来てくれるとは、此方から出向く手間が省けた。役立たず共は全てやられたようだしな」

 ブラッディ・レンジャーズはもちろん、先ほど修司によって手酷くやられた面々の事も役立たず呼ばわりして現れたのは、革命軍士総司令官のメカルスだった。

「やはり、お前だったのか……メカルス!」

 メカルスの登場に順一が声を荒げると、そのメカルスの本物(オリジナル)である修司も眉間にしわを寄せて言い放った。

「懲りないヤツだな! どんなに細かく切り刻んでも、また出てきやがる!」

 この修司達の反応を前にして、メカルスは目を細めて言い返した。

「フンッ、何とでも言え。修司、ジュン、そして聖龍隊の戦士諸君よ。俺はお前達の命を奪う為なら何度でも、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも、何度でも、しつこい様だけどな・ん・ど・で・も! 蘇ってやる!! さぁ、いつもの様に熱い戦いを期待しているぜ、行くぞぉぉぉぉ!!」

 メカルスは今まで自分の実体を隠す為に羽織っていた黒マントを脱ぎ捨てると現場の聖龍隊に攻撃を開始した。

 

 メカルスの右手には長い砲身の銃が装備され、左手には全ての攻撃を弾き返す強力な盾が装備されていた。

 そしてメカルスは右手の銃身から反射する跳弾を発射して修司達を攻撃。

「くっ、この弾……跳ね返るから弾道が読みにくい!」

 壁や障害物にぶつかれば跳ね返る特殊な銃弾を前に、弾道が読みにくいと苦戦させられる修司。

 そんな修司を含んだ多くの隊士が障害物などに身を潜めてメカルスの銃撃を回避していると、一刻も早く戦いを終わらせようと意気込む順一がメカルスに斬りかかる。

 が、メカルスは左腕に装備している盾で順一の剣戟を防いでしまう。そして盾で順一を押し返すと、順一に弾丸を撃ち込もうと狙った。

 しかしその瞬間、順一の恋人であるマイがメカルスに飛び掛って視界を奪った。グールに変身して身体能力が向上しているマイは有りっ丈の力でメカルスにしがみ付く。

 すると今度はマイがメカルスの視界を奪っている間にと、白浜兼一や金剛番長らが接近してメカルスに打撃を与えていく。

 メカルスはマイを引き剥がし、自分に打撃を与えている兼一や金剛番長らを大木の様な腕で振り払って押し退ける。

 と、今度は其処に明石薫らチルドレンズが超能力でメカルスを破壊しようと試みるも、メカルスに内臓されたレーダーで的確に射撃されて超能力を阻害されてしまう。

 猛攻を続けるメカルスに、今度は音無小夜とエルザ・スカーレットが剣戟で畳み掛けようとした、その瞬間。メカルスは姿を消してしまう。

「え!?」「き、消えただと!?」

 小夜とエルザが驚愕すると、二人に修司が叫んだ。

「気を付けろ! どんなメカニズムか知らねえが、奴は瞬間移動が可能なんだ!」

 その矢先、瞬間移動で移動したメカルスは皆の頭上から散弾の雨を撃ち込んできた。

「うわあっ!」「よ、避けろ!」

 逃げ惑う聖龍隊。しかし頭上から降り注ぐ散弾の雨は容赦なく聖龍隊に襲い掛かる。

 頭上から皆に散弾の雨を浴びせたメカルスは、再び皆と同じ足場に移動すると、またしても連射性能の高いライフルで聖龍隊を攻撃。反射する弾丸で物陰に潜む聖龍隊にも射撃を当てて行く。

 そして聖龍隊に弾丸を浴びせ続けたメカルスは、目にも止まらぬ速さで修司達の後ろに回り込み、そこから巨大レーザー砲で現場を一掃しようとして来た。

「終わりだ」

 メカルス特有の決め台詞が告げられた瞬間、レーザー砲から巨大な閃光が放出され、聖龍隊は追い詰められる。

 が「伏せろッ」修司の一声で現場の聖龍隊は全員、身を伏せてレーザー砲を回避した。

「!」

 レーザー砲を直撃させられずに目を睨ませるメカルスは、今度は崩落するブラッディ・パレスの落下する瓦礫を回転蹴りで蹴り飛ばして、その破片を直撃させようと目論む。

 メカルスが蹴り飛ばした瓦礫だったが、その瓦礫をフロートと金剛番長が拳で殴り付け、粉々に粉砕してしてしまう。

 そして聖龍隊も此処で反撃。ルイズ達三姉妹が魔方陣を空中に形成させると、緑色の炎を放射してメカルスを攻撃する。

 メカルスは我が身を襲う緑色の大火を即座に振り払うのだが、そこに平賀才人やセレブナイトが強力な剣戟を仕掛けていく。メカルスは左腕の盾で防ぎながら、大木の様な腕で二人を押し退けようとすると、今度は其処に高町なのは達が魔力をフル充填した砲撃をメカルスに直射。

 しかし強力な攻撃を喰らってもメカルスは倒れず、再び皆の頭上に瞬間移動すると再び散弾の雨を降らせる。

 だが、これを良しとしない修司は耐え忍んでいた精神を研ぎ澄ましてメカルスに向かって跳び上がった。

 メカルスに跳びかかった修司は、先ほどの戦闘で入手した劍神:「逐力(オロチ)」でメカルスの背後を斬り付けた。

「うぐ……っ」

 背中を斬り付けられたメカルスは堪らず、滞空を止めて地上に降り立ったのだが其処を修司が右手に聖龍剣を左手に劍神:「逐力(オロチ)」を持ってメカルスに連続で斬りかかった。

「おらおらおらおらおらおら……ッ」

 凄まじい迫力でメカルスに何度も斬りかかる修司、そんな修司に感化されたのかミラールもメカルスに向かって狙撃した。

 ミラールが撃った弾はメカルスの頭部に直撃するものの、貫通はせずメカルスの装甲に直撃するだけだった。

 一方のメカルスは聖龍隊からの狙撃を盾で防ぎながら、村田順一やマカ=アルバーン達と接近戦を行っていた。

 大勢の聖龍隊と激しい攻防を繰り広げるメカルスは、同じロボットの類に入るヒーローマンと対峙した。

「ぐふふ、お前が噂に名高いヒーローマンか。ジョーイとかいう小僧の命令に忠実なロボット……」

 メカルスがヒーローマンと対峙していると、傍らでヒーローマンを指示しながら見守るジョーイがメカルスに言い放った。

「め、メカルス! 僕達の方が圧倒的に戦力が有利だ! それ以前に狂っているお前に勝ち目はない、降参しろっ」

 しかしメカルスは、このジョーイの言葉をあざ笑うかのように言い返した。

「ハッハッハ、少年ジョーイよ。俺は別に狂っている訳では無い……我が本物(オリジナル)、小田原修司が自らの意志で正しい二次元人を導く様に、俺もまた別の角度から二次元人を導いてやっているのよ」

「そんなの勝手だわ! それだけの理由で、ブラッディ・レンジャーズの二次元人達も利用したの!?」

 メカルスの言い分にリナが反論するが、そんな彼女の言葉すらメカルスは嘲笑う。

「はっはぁ……! 勝手だと、リナお嬢様。この俺を生み出したアメリカ出身のお前らが言えた事か?」

 このメカルスの発言に、リナもジョーイ達も言葉を失う。事実、メカルスを生み出したのは軍事大国アメリカだった。

 しかし、そんな中でもメカルスはヒーローマンと互角の戦いを繰り広げる。

 ヒーローマンのパワーを真正面から受け止めるメカルス。そして至近距離からヒーローマンを撃ち抜こうとライフル銃の銃口をヒーローマンに向けて引き金を引く。

 そして引き金が引かれた瞬間、銃口から火が噴き、ヒーローマンは吹き飛ばされてしまう。

「ヒーローマン!」

 相棒のヒーローマンが吹き飛ばされたのを目の当たりにし、ジョーイは急いで壁まで吹き飛ばされたヒーローマンの許に駆け寄る。

 それと同時にメカルスも反動で腰から体勢が崩れてしまい、膝を就いてしまってた。

 すると其処に順一が凄まじい剣幕でメカルスに斬りかかって来た。

「メカルスーーッ!!」

 順一が振るう純心はメカルスが剣戟を防ごうと構えた盾を見事に一刀両断して、メカルス本体に斬り込もうとした。

 が、メカルスは今まで戦いを避けていた順一の神経を逆なでするかのように唱えた。

「ふふふ、順一よ……今まで戦いに対して迷いばかり生じていたお前は、今この時ばかりは迷いを捨てて戦っているな!」

「僕だって……僕達だって本当は戦いたくはない! だけど戦わないと……お前を倒さないと、戦いは終わらないんだ!」

「ふふふ、順一よ、いやスター・コマンドー……それはお前らが心の中で自分に言い聞かせている幻想だ。例え俺が……俺達のどちらかが倒れて完全に消えたとしても、人々の戦い合う闘争本能までは消えやせん……人が人である限り、戦いは終わらないのだよ!!」

 そういうとメカルスは順一を砲身の長いライフル銃で殴り付けて、順一を押し返す。

 しかし順一が隙を作ってくれたお蔭で、修司はその隙にメカルスに斬りかかり、彼が装備しているライフル銃を切断、使用不能にしてしまう。

「ッ!」

 ライフル銃を切断されて困惑するメカルス。

 其処に再び高町なのは達が強力な砲撃をメカルスに直撃させる。メカルスは大打撃を受けた。

 すると大打撃を受けたメカルスに今度はスパイダーライダーズのハンター達が蜘蛛の巣を張り巡らせて拘束、メカルスの動きを封じる。

 ハンター達が動きを封じた隙に、修司や順一、音無小夜に奴良リクオたち接近戦を得意とする者たちがメカルスに接近して大打撃を与えて行く。

「ぐっ……ぐはっ」

 武器も動きも封じられたメカルスは、次第に自分の体を形成する装甲が剥ぎ取られていく。

 そしてメカルスの装甲が剥がれ落ちたのを視認した修司は、左手に持つ劍神:「逐力(オロチ)」をメカルスに突き刺した。

「これで……終いだ!」

 渾身の力でメカルスに逐力を突き刺す修司。

 するとメカルスはよろめいてしまうが、其処に「それでお終いじゃないわよ!」と、最後にミラールがミラージュ・ガンを砲身に変化させて聖龍隊の仲間達と共にメカルスに砲撃を浴びせた。

「ぐああああああああああ……っ!」

 爆発するメカルスは断末魔を挙げながら爆炎に包み込まれた。

 そして爆発の衝撃で修司が使用していた劍神:「逐力(オロチ)」が床に黒焦げの状態で転げ落ちると、修司はそれを拾い上げて言い放った。

 

「これが俺たちの……聖龍隊の無敵の力だ!」

 修司は聖龍剣と劍神:「逐力(オロチ)」を巧みに納めると、勝利宣言を言うように告げた。

 

 

[変身と容赦のないトドメ]

 

「うわあっ」

 メカルスを無事に倒す事に成功した聖龍隊であったが、ブラッディ・パレスは崩落する一途だった。

 金剛番長が己の肉体を駆使して、仲間達を落下してくる瓦礫から守っていると、そこにミラールが叫んできた。

「こっち行けそうよ、早く!」

 ミラールが見つけた脱出できるかもしれない廊下に、修司達もミラールに続いて脱出しようと駆け出そうとした。

「みんな、早く行くぞ……、!」

 が、修司達がミラールと共に脱出に向かって駆け出そうとした、その矢先、修司達の動きが止まった。

「あ、あれ? みんな、どうしたの……」

 突然止まった皆にミラールが問い返すと、ミラールは後ろに聳え立つ巨大な影に気付いて振り返った。

「! わ、わわわ……!」

 異様な影に驚いたミラールは、その影に何発も銃撃するが全く効かず、それどころかその影に軽く腕で振り払われてしまう。

「フハハハハハ……ッ」

「うわあっ!」「ミラール!」

 不敵な笑い声を発しながらミラールを殴り付ける影を目撃し、順一がミラールの名を叫ぶ。

 そして異質な巨体な影は、修司や順一達の前に立ちはだかるとおぼろげな口ぶりで言い放った。

「……俺は……甦る……姿を変え、己を変えて……何度でも!!」

 その巨体な影の正体、それは先ほど聖龍隊に機械の体を半壊させられた、まるでゾンビの様な姿のメカルスであった。

 半壊状態のメカルスに最後のトドメを刺そうと、修司と順一達が攻撃態勢に入ろうとした次の瞬間。

 数発の銃撃の様な閃光が修司たちを襲った。

 皆は閃光が飛んできた方へ目を向けて見上げてみると、そこには先ほど死んだと思われたブラッドの姿が。

「見つけたぞ……修司、順一!」

 ブラッドは修司と順一達を見据えると、有無も言わせない勢いで襲い掛かってきた。

「ブラッド、お前……!」

 修司が声を掛けようとするが、その前にブラッドは上下に刃が付いた大鎌で修司や順一達を軽く振り払い、半壊状態のメカルスの目前へと移動する。

「おおっ、ブラッド生きてたか、偉いぞ」

 メカルスは体内のケーブルを伸ばして、ブラッドに言う。

「よし、お前の肉体をよこせ。コイツらに復讐だ!」

 と、メカルスはブラッドの肉体を支配して修司たち聖龍隊に再戦しようと目論んだ。

 その時だった。

「コイツなら………………どうかしら?」

 と、ブラッドが突如として手にミラージュ・ガンを出現させて、銃口をメカルスの顎に押し付けた。そして引き金を引いてメカルスを撃破。メカルスは吹き飛び、その反動でブラッドも吹き飛んでしまう。

「うっそーーーーーー……っ!!!!」

 銃を突き付けられて撃たれたメカルスはブラッディ・パレスの屋外まで弾かれて、絶叫しながら落下していった。

「………………」

 その情景を目の当たりにして、愕然とする順一達が壁に吹き飛んだブラッドに視線を向けると、ブラッドがミラールの姿に戻っていた。

 全てはミラールの計略だった。順一や修司がミラールに駆け寄って気絶する彼女を何度も呼び掛ける。

「ミラール、ミラール……!」「大丈夫かい?」

 修司と順一の呼びかけに反応し、気が付いたミラールは満身創痍ながらも順一に返事した。

「へへへ、上手くいったでしょ、ジュン。少しは私のこと認めてくれた?」

 しかし順一達スター・コマンドーの反応は冷たく、ミラールの無事を確認すると順一達は早々に現場から立ち去ろうとする。

「さあ、脱出だ」

 皆にパレスからの脱出を呼びかけつつ、一足先に立ち去っていく順一達スター・コマンドーの反応に落ち込むミラール。

 そんなミラールに、修司だけは労いの意味も込めて彼女の肩を軽く叩いた。

 まだまだ順一達に認めてはもらえない現実を受け入れつつ、ミラールは脱出に向けて先に移動していく皆を追う。

「あ、みんな待ってよ!」

 

 そして修司たち聖龍隊はブラッディ・パレスの屋外に出ると、スター・コマンドーが所有するスター・シップに全員が搭乗して離陸。ブラッディ・パレスから脱出した。

 全員がブラッディ・パレスから脱出した直後、上空から一筋の巨大な閃光がブラッディ・パレスを直射。それは国連が起動させたレーザー衛星による攻撃だった。

「また……無意味な破壊が行われる訳か」

 順一がまたしても繰り返される争いと言う名の破壊に否定的発言を述べると、修司がそれに返した。

「ジュン、無意味な破壊では無い。敢えて言うなら……容赦のない破壊だ」

 そう修司が告げた次の瞬間、レーザー衛星から直射された光線は太くなり、一気にブラッディ・パレスを貫いて一瞬で破壊した。

 多くの瓦礫が真下の海上に向かって落下して行く惨状を前にし、順一達スター・コマンドーは居た堪れない心境だった。

 また争いで人々は破壊行為を繰り返してしまった。一体いつになれば人々は同じ過ちを繰り返さなくなるのか。そんな想いばかりが心の中で過ぎるばかりのスター・コマンドーだった。

 

 一方、ブラッディ・パレスが頭上にある海上では。

 修司が発生した闇の竜巻で吹き飛ばされた多くの敵たちが、海上に竜巻ごと叩き付けられていた。

「うぅ……ち、ちくしょーー……」

 全身を襲う激痛に悶える門脇将人。

 彼が、いや多くの敵達が塩水で傷が沁みて苦痛に表情を歪ませていたその時。

 頭上からブラッディ・パレスを貫通して海上に直射されるレーザー衛星の強力な光線が降り注いだ。

「うわあッ!!」

 門脇将人が頭上から降るレーザーに気付き、そしてレーザーが直撃した海上に巨大な渦潮が発生してその渦に巻き込まれてしまう。

 そして将人を始めとする多くの敵たちは、レーザー直撃によって発生してしまった渦潮に呑み込まれて姿を消してしまった。

 

 

 

[交わされていた約束]

 

 ブラッディ・パレスを強力なレーザーが直射して、跡形もなく消え去ったその現場で。

 ブラッディ・パレスの瓦礫が落下した真下の海上にスター・シップは着陸していた。

「本当にこれで良かったのか?」

 海上に着陸して、皆と共に瓦礫の山が海上から覗いていた現場を見て順一がミラールに声を掛ける。

 仲間だったブラッディ・レンジャーズを自らの手で倒したミラールに問い掛ける順一。彼の問い掛けにミラールは静かに答えた。

「…………仕方ないわ…………」

 ミラールは続けて順一に話し返した。

「皆異常者(ヒール)になってしまったもの。だから処分した。それだけの事よ、ジュン」

 このミラールの返答を聞いて、順一は目の色を変えてミラールを問い詰めた。

「それだけだと!? 君のかつての仲間たちだったんだろ!? その中でもブラッドは君を教育した二次元人! そんな彼も君は死に追いやったんだぞ!!」

 順一は、自分の仲間だった存在を、そして教育してくれただけでなく淡い恋心を抱いていたブラッドまでも死に追いやったミラールの発言を受け入れられなかった。

「なのに……何故なんだ……何故きみは今そう落ち着いていられるんだ……? 教えてくれ、ミラール……」

 過去に大勢の異常者(ヒール)を、その中には友であった存在も数多くいた順一はミラールの両肩を掴んだまま彼女に問い詰める。

 そしてミラールは静かに語り始めた。

「……私、昔ブラッドがかつての仲間を殺した所を目の前で見た事があるの」

 このミラールの発言に、順一も、そしてその場の誰もが愕然とした。

 

 ミラールが語るには。

「ブラッド!?」

 ある日、ブラッドは一人の二次元人を異常者(ヒール)としてミラールの目の前で処分した。

「その二次元人……ブラッドの昔の仲間じゃなかったの……?」

異常者(ヒール)化が進行していた。正義感の強い真面目な奴でな……自分がいつ異常者(ヒール)化して世界を脅かす存在になってしまうかをいつも恐れていた」

「だから……そうなる前に、ブラッドの手で殺したの?」

 問い掛けるミラールの質問に、ブラッドは訊ね返した。

「……ミラール、あいつが息絶える直前の顔を見たか?」

 これにミラールは率直な答えを返した。

「……うん、笑ってた……あんな安心した表情で死んでいく異常者(ヒール)なんて初めて見たわ」

 ミラールの返答を聞いて、ブラッドは答える。

「その表情を見せたのは異常者(ヒール)化する前のあいつ自身だ」

「?」

「本来の自分のままで逝けたんだ。忌み嫌う姿のままで生き続け、彷徨うよりもずっと良い」

 穏やかな表情を浮かべて死ねたのは、本来の自分のままで逝けたが故だと唱えるブラッド。

 するとブラッドはミラールに再度訊き返した。

「ミラール。俺たちが異常者(ヒール)化した時、お前は止めてくれるか?」

 自分たちブラッディ・レンジャーズが異常者(ヒール)になった時、殺してでも止めてくれるかと訊ねるブラッドからの質問にミラールは激しく動揺した。

「ぶっ……ブラッド達が異常者(ヒール)!? そんな事って……!?」

「ハハハ、もしもの時だ。で? どうなんだ?」

「……ブラッド達が異常者(ヒール)化しちゃうのは嫌よ……それに私の力でブラッド達を止めるんて無理があるわ……」

「がははっ、そりゃそうだ! お前はまだ未熟なお子様だからな!」

 このブラッドの発言に、ミラールは「っ……!」と苛立った。

 そんなミラールにブラッドは笑顔で言い聞かせた。

「いいかミラール。異常者(ヒール)化した俺達をお前が倒す時、それはお前が俺達を越える時だ」

 ブラッドはミラールに面と向き合って唱えた。

「俺達がお前の試練になってやる。だから目を背けるな、立ち向かって乗り越えて見せろ」

 このブラッドの言葉に、ミラールは笑みを浮かべて答えた。

「…………分かった!」

「その代わり、お前が異常者(ヒール)化したら俺達が処分してやるよ!」

「わっ、私が異常者(ヒール)になる訳ないでしょ!」

 

 そんな過去にブラッドと交わした約束を、ミラールは順一達に語り明かした。

「……その約束を、私達はお互いに守った……」

 過去にブラッドとの約束を語り明かしたミラールは、平然と順一達スター・コマンドーや新人達に語り明かした。

「私はブラッド達を越えて、ブラッド達は異常者(ヒール)化から解放された。だからこれは立派な異常者(ヒール)ハンターの第一歩な訳!」

 皆に語り明かしたミラールは、話を聞いてくれている順一に問い掛ける。

「……ジュンは誰かに処分を頼まれたり、頼んだ事はあるの?」

「…………僕は……」

 順一は過去に、そうJフォース大戦終結後に聖龍HEADと交わした約束を思い返した。

 

「副長、もし僕たちが異常者(ヒール)化したら……お手数ですが、伝説の英雄である、あなた達に処分をお願いしたいです……」

 

 順一は昔、HEADに嘆願した約束を思い出してた。

「………………」

 そんな順一の思想を横目に、ミラールは一息入れて語った。

「はーーぁ! ともかくこれで、私もいよいよ独り立ちね!」

 しかしミラールは自分の口から出た「独り」の単語に思慮にふけた。

「……独り……か……」

 ブラッディ・レンジャーズを全員倒し、自分の今までの居場所を失った孤独感に浸るミラール。

 そんなミラールの頭に、順一は優しく手を置いてミラールに言った。

「帰ろう」

 この時の順一は心からミラールを元気付けようとしているのが沁み渡った。。

「ジュン……」

「さあ、本部でみんなが待っている」

 順一は機内の皆に告げると、スター・シップの奥へと歩いていく。

 この順一の優しい気遣いを見て、ミラールは新たに決意を固めた。

(私は異常者(ヒール)ハンター、ミラール。ジュンや総長達と一緒にこの世界を守っていく。それで良いのよね……ブラッド)

 

 

[全てが終わっても……]

 

 全てのブラッディ・レンジャーズのバウンティハンターを撃破し、そしてメカルス率いる革命軍士を倒したミラール達は意気揚々と聖龍隊本部に帰還。

 しかし、帰還したばかりのミラール達を順一達スター・コマンドーは認めてくれなかった。

「そんなっ!! 私達あんなに頑張ったじゃない」

「フゥ、いいかい。ハンターの……聖龍隊の戦士の責務は、目の前にいる敵をただ倒せばいいと言うものじゃないんだ。今の君たちは、まだそれが分かってない。だから認める訳にはいかない」

 ミラールだけでなく聖龍隊の新人達にも厳しく言い付ける順一の言動に、ミラールだけでなく他の新人達も順一に反感を抱いていた。

「私たち、ジュン達を見習って新たにチームを結成したの! 題してスター・ルーキーズ! 聖龍隊の新たな流星よ!」

「名前だけ立派になっても意味がない。君達はまだ物事の本質を見抜いていない」

 自らが指揮する総合部隊を「スター・ルーキーズ」と名乗り上げるミラールに、順一は変わらず厳しい発言を述べる。そんな順一にミラールはすかさず言い返す。

「何がダメなのか全然分からないわ。悪い事をした奴を倒す、当たり前の事じゃない」

「それでは本当の平和は訪れない! 新たな憎しみを増やしてしまうだけなんだ」

「でも、ジュン達だってこれまでやってきた事じゃないの!」

「それが間違いだと気づいたんだ……確かに時間は掛かったけど、僕たちは……」

 と、順一が自分達の犯し続けてきた過ちについて語り出そうとした、その時。

「大変です! 西地区で事件発生です!」

 皆が居る一室に通信士のウッズが飛び込んできて、事件発生を皆に伝える。

 このウッズからの指示を聞いて、ミラール達は即座に行動に移った。

「任せて!! 私たちが行くわ、ジュン! 今度こそ認めてもらうからっ。スター・ルーキーズ、出動!」

「あっ、ちょっと待つんだ! ミラール、ルーキーズ……!」

 順一の静止も聞かず、ミラール達スター・ルーキーズは現場へと出動してしまう。

 そんなミラール達を見て、ウッズが順一に話し掛ける。

「今は彼女達のやりたいようにやらせてあげれば良いじゃないですか。若いってのは、ああいうもんですよ」

 しかし順一は険しい面持ちで答えた。

「それじゃダメなんです、このままじゃ彼女達は僕たちと同じ道を辿る結果になってしまいます……そう、僕たちと同じに……」

「ジュン君……」

 憧れと現実は違う。そんな実態を知らずに先走ってしまうミラール達スター・ルーキーズの活動に懸念を走らせる順一の不安を、ウッズは人知れず感じていた。

 

 

 聖龍隊の新人達に順一が厳しく言い付けていた時、修司は夢の中だった。

「ここは、何処だ。ん? ……あれは?」

 夢の中で、修司は不思議な空間に一人で立っていた。そんな修司の目に飛び込んできたのは、空虚で影が差す表情をしているHEADやスター・コマンドーの姿だった。

「排除……せよ……異常者(ヒール)を排除せよ。異常者(ヒール)を……」

「ジュン!? アッコ!? どうしたんだみんな、しっかりしろ!」

 何度も繰り返す様に呟きながら修司に向けて刃を、得物を向ける順一たち聖龍隊の仲間達に修司は呼びかける。

 そして次の瞬間、修司は目を覚ました。

「っ!」

 目を覚ました修司は、顔から冷や汗が大量に吹き出ているのに気付く。

「夢……だったのか?」

 修司が今し方見た情景は夢だったのかと思い返していると、そこに通信が入って来た。

「……修司様? 修司様、聞こえますか? 至急、司令室に来てほしいのですが……」

「聞こえている、ウッズ。どうやら少し眠っていたようだ。了解、すぐそっちに向かう」

 修司はウッズからの要件に素直に返答すると、聖龍隊本部の司令室に向かう準備に取り掛かる。

 だが修司は本部の仮眠室で休憩していた自分が先ほど見た夢を思い返しながら呟いた。

「しかし……今の夢、本当にただの夢だったんだろうか……」

 二次元人が三次元人を異常者(ヒール)として処分する。そんな夢に修司は一抹の不安を覚えた。

 

 そして所は変わり、聖龍隊司令部。

 ここに修司と順一、そして彼らを呼び付けたウッズが顔を合わせていた。

 ウッズは修司と順一達に、ミラールがブラッディ・レンジャーズに滞在していた頃に解決した事件について述べていた。

「先週エネルギー生成工場で作業していた二次元人の異常者(ヒール)化による暴動事件が発生。そこにミラールが現れ、これを鎮圧。異常者(ヒール)はその場で跡形も無く消されました。次は、3日前に埠頭で発生したメカニロイドを用いたテロ事件での暴走事故。この時には船のハッチを塞いだメカニロイドを破壊し脱出路を確保、ただその破壊の巻き添えで乗員乗客16名が負傷しています……他、大小合わせて14件の異常者(ヒール)による事件、事故の現場に現れています」

 このウッズからの報告を聞いて、修司は考えながらも理解した。

「問題はあるにせよ、ミラールによって、ここ数日の間に随分と事件が解決されている事になるな」

 修司はミラールを含めた新人達の戦前での活躍を快く思わない順一に問い掛けた。

「ジュン、これでもまだ彼女を……ミラールをハンターとして認めてやる訳にはいかないのか?」

「ダメです……分からないんですか? こんなやり方を認める訳にはいきません」

 武力だけで全てを解決しようとするミラールのやり方に疑問を感じ、認められないと強く主張する順一に修司は唱える。

「ジュン……理想だけでは何も始まらない。お前達スター・コマンドーがやらない以上、誰かが代わりに戦わなくてはならない。そんなに言うなら、お前達がミラール達を一人前のハンターになるよう教育してみてはどうだ?」

 この修司の提案に順一は目を丸くして返答した。

「そんな!? 僕たちの様なハンターを、隊士を育てろなんて……無理ですよ……」

 順一は過去に多くの異常者(ヒール)を倒してきた自分達の様な戦士を育成するのに抵抗を感じていた。

 だが、そんな順一に修司は厳しい現実を突き付けた。

「まあ、考えておいてくれ。この先お前達の考えている様な戦わずに済むような状況はますます少なくなるだろう。そして何より……異常者(ヒール)が居なくなる事も無いだろう……」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。