聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 ミラールより語られた聖龍隊とブラッディ・レンジャーズとの死闘の数々。
 革命軍士によって遺伝子改造をされたが故に戦わなくてはならなくなったバウンティハンターの物語を聞いて、新世代型達は胸を締め付けられた。
 そして今回、ミラールが語ってくれるのは自分が聖龍隊に配属された以降の物語。
 彼女が新たな聖龍隊を、仲間をスカウトする話。
 そして更に、最後には村田順一が語ってくれた自分たちスター・コマンドーがミラール達スター・ルーキーズを認めつつある昔話を。



現政奉還記 創生の章 昔語り:ミラール小話集

[人形を操る少女]

 

 深夜のアニメタウン。

 其処には屋根伝いにホバリング飛行して飛び交うミラールの姿があった。

 彼女は自由気ままに、街の見回りを散歩がてらに単独で行っていた。

「あ~~、どうしよっかな。ジュンはまだ私や新人達を認めてくれないし……折角みんなと意気投合してルーキーズを結成したのにな」

 ミラールは自らが結成したスター・ルーキーズの新人達を含む、自分を村田順一が未だ認めてくれない現状に悩んでいた。

 と、ミラールが夜空を背景に屋根から屋根へ飛び移っていると、闇夜から何やら激しい物音が聞こえてきた。

「ん? なんだろう、この音……」

 気になったミラールは、物音が聞こえてくる闇夜の方へと向かってみた。

 

 すると辿り着いたのは、とある公園。

 人も寝静まった時間帯に聞こえてくる音の方へ、ミラールは忍び足で近付いていった。

 そして其処でミラールが目撃したのは、衝撃の光景だった。

 其処ではツインテールの少女と一人の男が、各自小さな人に指示を出して闘い合わせている光景だった。

「なっ、何よ、これ……!」

 その様子を目撃したミラールは、闇夜の中でしばらく戦闘を観察してみた。

 すると意外な事実にミラールは気付いた。

「……あれってもしかして……人形!?」

 なんと少女と男が指示を出して闇夜を活発に動き回っている小柄な人は、よく見れば人形だった。

 するとその時、男の指示で動いている人形が少女が指示を出している女の子の人形を弾いた。

「アリス!」

 少女は地面に転がる人形に駆け寄ろうとするが、男の人形にそれを阻害されてしまう。

「クックック、リン悪いな。このアリスも私が頂戴しよう」

 男は地面に転がる人形に手を伸ばそうとした。

 が、その時。一発の閃光が闇夜を走り、男の手元に着弾した。

「だ、誰だ!」「!」

 男と少女が閃光が飛んできた闇夜に目を向けてみると、其処にはミラージュ・ガンを両手に携えるミラールの姿が飛び込んできた。

「か弱い女の子をいじめるなんて……あんた、結構な二枚目だっていうのにえげつないわね」

 眼光を鋭くさせてミラージュ・ガンの銃口を男に向けるミラール。

「チッ、見られたか……それなら悪いが、ここで消えてもらおう!」

 男は先ほどまでの情景を目撃していたミラールへ、自身が指示を出す人形に襲わせようとした。

 だがミラールは男の指示で動く人形の攻撃を巧みにかわし、最後にはミラージュ・ガンで人形を撃ち抜いて見せた。

「に、人形が!」

 人形が壊れたのかと思った男は慌てて駆け寄る。

 するとミラールは男が操る人形を完全に破壊しようと再びミラージュ・ガンで狙いを定めようとした。

 が、その時。「ま、待って! 撃たないで!」と、ツインテールの少女がミラールに嘆願した。

 突然の少女からの嘆願にミラールが戸惑っていると、その間に男は自身が操っている人形を抱き抱えて逃げていってしまった。

「っ、逃げられたか……!」

 ミラールは二丁拳銃をホルダーに納めると、自分を制止してきた少女に歩み寄って声をかける。

「あなた大丈夫? 怪我は無い?」

「え、ええ、大丈夫……」

 少女は多少戸惑いながらもミラールに返事すると、少女が抱える人形もミラールに無言の礼として頭を下げてきた。

「へぇ、よく出来ているじゃない、その人形。まるで生きているみたい」

「えっ、ええ……」

 ミラールから言われた少女は大変戸惑い、ぎこちない動きを見せる。

 するとミラールは此処で、少女が抱える人形の微々たる表情の変化に気付いた。

「まさか、その人形……本当に生きているの!?」

「!」ミラールの観察力に一驚して目を丸くする少女。

 そんな少女の様子を見て、ミラールは少女に訊ねてみた。

「なにか訳ありのようね。良かったら話してくんない? 力になれるかもよ。私、こう見えても聖龍隊の一員なの」

「え! 聖龍隊の……」

 ミラールが発した聖龍隊という言葉に一驚する少女は、自分の名と抱えている人形の名をミラールに名乗った。

「……私はリン、鹿嶋リン。こっちはアリスよ」

「リンとアリスね。私はミラール、宜しくね。早速だけど、さっきの男は一体……それに人形は……?」

 ミラールに名乗った鹿島リンは、事の詳細を語り始めた。

 先ほどリンとアリスと交戦していたのは麻丘雅。

 

 麻丘はリンの実の姉の婚約者だったが、その姉と祖父を惨殺した上にリンの実家に火を放って焼失させた男だという。

 なぜ麻丘が、この様な所業に手を染めたというと、それは鹿嶋家に代々伝わる10体の木偶が発端だった。

 鹿嶋家に伝えられる木偶は、リンが所有するアリスも含まれており、10体全てが揃うと莫大な財宝が手に入ると云われているのだ。

 麻丘はこの10体の木偶を手に入れる為に凶行に走り、リンとも対立しているという。

 

 この話を聞いたミラールは、怒りで感情的になった。

「それじゃ何よ! 人形欲しさに、あの麻丘って男はあなたのお姉さんやお祖父さんといった家族を殺したって訳!? 許せないっ」

「だけど証拠は何も無いわ。人形が犯罪を手助けしただなんて、誰も信じないだろうし……」

 立腹するミラールに、リンは残念そうな顔で真意を説く。

「う~~ん、どうにかなんないかしらね……」

 ミラールは腕を組んで考え込んだ。

 と、その時。ミラールは闇夜の中に潜む何者かの気配を感じ取った。

「誰ッ!」

 ミラールは咄嗟にミラージュ・ガンを気配が感じられる闇へと向けた。

 すると闇から、5人の男女が姿を現した。

「落ち着いてください、ミラール王女……私たちは敵ではありません」

「あなた達……! ……BQZ」

「B、Q、Z?」

 BQZという5人組の登場に、ミラールは表情を険しくさせてリンは唖然としてしまう。

 

 BQZとは。

 日夜暗躍し続ける聖龍隊の諜報機関。

 4人の男と1人の女性による5人組で構成されており、それそれが得意分野を持っている。

 屈強な大柄の男、キャノンは元プロのラグビー選手。その巨体から繰り出される腕力は、正しく大砲そのもの。

 常に仮面を被っている5人の中で最も最年少のガンツキ。彼は自分の素顔にコンプレックスを抱いている事から仮面を装着しており、凶悪で陰湿な悪人の顔を手に装着している特殊な形状の篭手で突きまくり、その顔を徹底的に変形させて誰だか分からなくなるまで痛め付けた後に殺害する事から顔突き(ガンツキ)と名乗っている。

 紅一点の美女バブリシャスは、ハニートラップを専門にしてるが、自身の身体から泡を生成できる特殊体質を用いて激しい戦闘も可能。

 縮れ毛のボサッとした頭髪の、一見中年に見える若者ムイミー。彼は下町の工場生まれで、様々な電子機器を操作・開発して特殊能力者の能力を機械で無力化させられる腕前を持つ。

 最後にリーダーであるロン毛の黒い帽子を被った青年カゲン。彼は常に冷静沈着で、その名の通り影を使った能力で相手を束縛したり、遠隔操作して情報操作を行えるプロフェッショナル。

 彼等は総長小田原修司に集められた、悲しき過去を背負う三次元人達であり、時には修司の命令で、時には己の判断から聖龍隊にとって支障を来す邪魔な存在を、または凶悪で陰湿ながらも正攻法では罰せられない悪人を断罪する為に結成された5人組。

 

 そんなBQZの突然の登場に、ミラールがリーダーカゲンに訊ねる。

「どうしてあなた達が此処に……」

「いえね、私達も、あの麻丘という悪人を前々から断罪しようと機会を窺っていた訳なのです。そして今宵、この場にミラール王女、あなたが駆け付けてしまったという事です」

「王女はやめてって言っているでしょ! 私は聖龍隊の隊士、ミラールよ」

「失礼しました……それよりも、あの麻丘や彼の協力者達を社会的にも抹殺しなければ本当の平和は訪れません。此処は一つ、私達と協力しませんか?」

「は? 協力ですって? 聖龍隊でも指折りの、いわば影の存在とも呼べる諜報員のあなた達と協力ですって?」

「そうです。あの麻丘を始めとする、その鹿嶋リンと敵対する悪役達は一応ながらも社会的に地位も財力もある有力者。まずは彼らの身を護っている権力という壁を剥ぎ取らなければ……」

 カゲンからの提案に、ミラールは考え込んでしまう。

 すると其処にリンが話の輪に飛び込んできた。

「ま、待ってください! これは私の家に代々伝わる10体の人形が齎した顛末……! その渦中に会って間もないあなた達を巻き込む訳にはいかないわ」

 リンは出会って間もないミラールを、自分が抱える問題の渦中に引きずり込みたくなかった。

 だが、このリンの話を聞いてミラールの決意は固まった。

「何よ、それっ。あなた、水臭いわよ。私たち聖龍隊に懸かれば、どんな悪党も忽ち冷たい牢獄の中か、地獄に送ってやれるんだから」

「み、ミラール……」

「ふふ、これで決まりましたね。では、しばらくは私たちBQZに任せてください。あの麻丘を始め、彼の関係者の社会的信頼を消滅させて見せましょう」

 そう言うと、カゲンたちBQZは夜の闇の中に消えていった。

 残されたミラールとリンは、互いに顔を見合わせて話し合った。

「それじゃ、後しばらくの辛抱よ。あのBQZに懸かれば、どんな悪党達も破滅の道を辿るわ」

「う、うん……」

「それじゃ、まだ心配だし途中まで送ってあげるわね」

「あ、ありがとう、ミラール……」

「へへっ、良いって事よ」

 そしてミラールはリンとその相棒アリスを何だかんだ言って最後まで送ってあげるのだった。

 

 それから数日後。

 街中を平然と麻丘雅が歩いていると、BQZと連携を取っている聖龍隊の特殊部隊が麻丘を突然取り囲んだ。

「麻丘雅! 異常者(ヒール)の容疑で逮捕する! 大人しくお縄にかかれっ」

 突然の事態に麻丘は戸惑うが、次の瞬間その麻丘はトンでもない行動に出た。

 なんと近くを偶然に歩いていた親子連れから、子供を強引に引き離してその子を人質に取ったのだ。

「う、動くな! 動くと、この子の命は無いぞ!」

 麻丘は懐からナイフを取り出すと、その切っ先を幼い子供に突き立てる。

「きゃああっ、こ、子供が……!」

 我が子を人質にされた母親が悲鳴を上げるが、それ以上に内心動揺していたのは麻丘の方だった。

(ど、どういう事だ!? なんで私は突然、近くにたまたまいた子供を人質に取ってしまった? それ以前に、なぜ家に置いてきた私のナイフが懐なんかに……)

 そう、幼い子供を人質に取ったのは麻丘の意思ではなかった。

 しかし時既に周囲の一般人たちは、子供を人質にとって盾にする麻丘雅の姿が凶悪な異常者(ヒール)に映っていた。

異常者(ヒール)だ……!」「また異常者(ヒール)が現われたぞ」

 二次元人からも、狂人同然の異常者(ヒール)の存在には恐怖を覚えていた。

 そんな状況に雅は困惑する一方だった。

 しかし、そんな現状を遠方から双眼鏡を用いて眺めている者たちの姿が在った。

「これで麻丘雅の社会的地位や信頼も地に堕ちたわ。後は普通に泳がせておけば、元からの凶悪だった本質が露見するだけ」

 そう意見を述べるのは、BQZの紅一点バブリシャス。彼女の意見を聞いて、双眼鏡で麻丘の様子を窺っていたミラールが口を尖らせて言った。

「確かにこれで麻丘も立派な犯罪者……だけど、一般人の子供を巻き込むなんて無粋な真似は褒められないわよ」

 ミラールは麻丘に人質にされた一般の子供を巻き込んだBQZのやり方に疑問を生じさせた。

 するとBQZではナンバー2の実力者でもあるムイミーがミラールに告げた。

「大丈夫。もう麻丘はカゲンの術中に嵌っている。カゲンが陰ながら麻丘を操っている限り、子供が傷付く事はないから安心しとけ」

 一方の麻丘の方はというと。

 その麻丘の影に身を潜め、影の術で彼の言動を巧みに操作するカゲンの存在があった。

 カゲンは麻丘の言動を、彼の影に身を潜ませながら操作しているのを良い事に、麻丘に大衆の面前で凶行に走らせたのだ。

 すると次の瞬間、聖龍隊の特殊部隊が麻丘に銃口を向けているのに気付いたカゲンは、タイミングを見計らって麻丘の肉体を操る。

 そして特殊部隊が麻丘の右肩に銃弾を撃ち込んだ瞬間、カゲンは麻丘に握らせていた彼のナイフをわざと地面に落とさせた。すると次の瞬間、特殊部隊が一斉に麻丘に飛び掛り、麻丘を確保。それと同時に人質にされていた子供を救出した。

「ま、待ってくれ! 私の意思じゃない……」

 麻丘は必死になって、人質をとったのは自分の意思ではないと訴えるが、誰も彼の言葉には耳を貸さなかった。

 そして麻丘は、そのまま聖龍隊の特殊部隊によって拘束・連行されていった。

 この事態を受けて、離れた場所から遠視していたミラールはBQZに問い掛けた。

「これで麻丘を捕まえられたけど……けれど、彼や彼の協力者の手に渡っている鹿嶋家の人形はどうなる訳?」

 するとこのミラールの疑問にムイミーが答えた。

「それも抜かりない。俺たちの計略じゃ、この後麻丘は木偶を使って自力で留置所から脱獄。そして鹿嶋一族に伝わる人形を持ち揃えて集う寸法だ」

「手の込んだことするわね」

 ミラールはBQZの抜かりない計略に脱帽するばかり。

 

 そしてBQZの狙い通り、麻丘は自力で留置所から脱獄して自分の協力者と共に手元にある鹿嶋一族の木偶を集結させて急ぎリンと最終決着を付けようと急いだ。

 だがこの最終決戦にミラールもリンと同行して、麻丘一派を全員捕縛しようと狙ってた。

 その道中、鹿嶋リンはミラールに不吉な事を語った。

 言い伝えによると、鹿嶋の10体の木偶が揃った時に恐ろしい災いが起こるというのだ。

 だが、このリンからの警鐘にミラールは言い返した。

「どんな恐ろしい事が起きようとも、あなたはあなた自身で運命を切り開けばいいわ」

 このミラールの励ましを受けて、リンは自身の過酷な運命と対峙する決意を新たにする。

 そして状況的に追い詰められた麻丘雅たちと鹿島リン達の決戦が始まった。舞台は伝承される財宝が眠ると云われる洞窟内部。

 激しい戦闘が続けられる中、リンもアリス同様にヨーヨーを用いて死闘を展開するのだが此処で予期せぬ展開が。

 なんと麻丘が操る木偶と戦闘をしていたミラールが、応戦しようとミラージュ・ガンをバズーカに変化させて砲撃。だがその砲撃がなんと洞窟の天井に誤って直撃してしまったが為に洞窟は崩落を始めてしまう。

 命辛々、洞窟から脱出したミラールやリンそして麻丘達。だが洞窟は完全に埋まってしまった。

 すると其処には、既にBQZが派遣した聖龍隊の特殊部隊が勢揃いして麻丘と彼の協力者を逮捕しようと迫っていた。

 怖気づいた麻丘は一人逃走を図ろうとするが、そんな麻丘にミラールが二丁拳銃から4発の弾を発砲した。

「うぎゃあああっ!」

 ミラールが放った弾は麻丘の両膝を撃ち抜いて彼の歩行力を奪い、更に残り2発の銃弾は麻丘の両手に直撃し彼の手を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 麻丘は、撃ち抜かれた両膝の激痛と、粉々に撃ち抜かれた自身の両手から吹き出る出血に悶え苦しんだ。

 麻丘が苦しみ悶える様子を目の当たりにし、愕然とするリンの傍らでその麻丘を撃ち抜いたミラールが高々と宣言した。

「観念なさい、麻丘雅! このスター・ルーキーズ総部隊長のミラールが逃がすとでも思ってる訳!? 尋常にしなさいっ」

 だが、そんなミラールの誇らしげな宣言も、激痛に悶える麻丘には聞く余裕がなかった。

 

 こうして麻丘雅と、その関係者達は次々と聖龍隊によって異常者(ヒール)として逮捕された。

 麻丘は両手を失っていたため、まずは軍事病院に移送される事になった。

 そして全てが終わった後、ミラールは鹿嶋リンと話し合った。

「これで貴女のお姉さんやお祖父さんの仇は取れたわね」

「ええ、まあね……」

 ミラールからの問い掛けに、リンは少し暗鬱な表情だった。

「どうしたの? 悪党どもは、みんな私やBQZの活躍で刑務所にぶち込まれたんだし、結果オーライじゃないの」

「そうだけど……だけど、何だかこうサッパリしなくて……」

「? どうして?」

 ミラールが問い掛けると、リンはミラールに顔を向けて言った。

「だって貴女が、財宝が隠されていたと思われる洞窟を爆撃で破壊して塞いじゃうから、一体どんなお宝が眠っていたか分からず仕舞いじゃないの」

「は、ははは……それは本当にゴメン。まさか洞窟が崩れるなんて思ってもみなかったわ」

 ミラールは苦笑いを浮かべてリンに謝罪すると、リンは続けて話した。

「それに……結局、10体の木偶が揃った事で起こる災いって何だったのか、謎が残るばかりで……」

「………………」

 リンの心に残る謎に対して、ミラールは何も言えなかった。

 だがミラールは、意を決してリンに訊ねた。

「……ところでリン、あなたこれからどうするの?」

「そうね……全てに決着が付いたとは言えないし、けれど麻丘達は刑務所に入った訳だし、どうしよっかな……」

 リンは今後の自分の生き方について悩み抜いていると、ミラールが一つの提案を彼女に申し付けた。

「……そうだわ。リン、どう? 私と一緒に聖龍隊の隊士として活躍する気ない?」

「え? 私が聖龍隊の隊士に……?」

 リンが唖然としていると、ミラールは明るい笑顔でリンに語った。

「私とあなた、そしてアリスが出会ったのも何かの運命。それに、あなたとアリスのコンビなら良い異常者(ヒール)ハンターになれるわよ!」

「………………」

 ミラールからの提案に、リンは少しばかり考え抜いたがミラールの自信に溢れる表情を見て決めた。

「……うん、そうね。折角アリスと出会って、私も少しは戦える様になったんだし、異常者(ヒール)っていう危険な存在を罰する聖龍隊に入るのも悪くないかも」

「そうよそうよ!」

 リンの決意にミラールは子供の様にはしゃぐ。

「ところでミラール、あなた容赦ないわね。いくら悪人だからって、あの麻丘の両膝だけでなく両手も撃ち抜いて木っ端微塵にしちゃうなんて……」

「へへへっ、私の射撃、凄いでしょ?」

「いえ、褒めてるつもりはないんだけど……」

 ミラールの少し残酷にも取れる所業に呆れてしまう鹿島リン。

 すると此処でミラールがリンに手を差し伸べて握手を求めてきた。

「これからも宜しくね、リン!」

 これにリンも溌剌とした顔でミラールと握手を交わした。

「ええ、宜しく、ミラール!」

 二人が握手を交わしたその時、リンの足元でずっと二人の会話を聞いていた木偶アリスがミラールを見詰める。

 アリスからの眼差しに気付いたミラールは、アリスにも手を差し伸ばした。

「あなたも宜しくね、アリス」

 ミラールはリンと共に行動する人形、アリスと握手を交わした。

 ミラールの大きい手とアリスの小さな手は、互いに親睦を深め合う様に優しく相手の手を握り合った。

 

 こうしてミラールは新たに傀儡師リンとそのパートナー・アリスを仲間に引き入れた。

 お互いに歳も近い故に、ミラールとリンは意気投合して共に異常者(ヒール)ハンターを生業に活動するようになった。

 因みに鹿嶋家に大体伝わるアリスを含む10体の木偶は、全て聖龍隊の管理下に置かれる事となった。

 

 

 

[霊媒師少女との遭遇]

 

 ある丑三つ時の深夜。

 今宵もミラールは自由気ままに散歩がてら街のパトロールに打って出ていた。

 すると深夜の暗闇の中から、複数の若者と思える悲鳴が聞こえてきた。

「よっしゃ! 事件の様ね! また私だけで解決してやるわ」

 ミラールは村田順一に認められたい一心で、単身悲鳴が聞こえてきた方へと駆け抜けていった。

 

 現場に到着したミラールが駆け付けてみると、其処では一人の少女が周囲を飛び交う発光体と何か戦っている様子が窺えた。

 そして、その少女の背後には、すっかり怯えて腰を抜かす男子学生と思われる青年達の姿が見て取れた。

「まったく! 心霊スポットに遊び半分でくるから、悪霊共に襲われる羽目になるんだよ!」

「ご、ごめんなさ~~い……」

 発光体と格闘している少女の怒鳴り声に、青年達は涙目で謝るばかり。

 その情景を観察していたミラールは、ここで少女が戦っている発光体が悪霊などの霊的存在だと認識した。

「あ、あれって幽霊とかの類? そんなのと戦えるあの女って……」

 ミラールは実体の無い霊と戦っている少女を見て、愕然とした。

 するとその時、少女の背後から一体の霊魂が少女に襲い掛かってくるのが見えた。

「あ!」

 少女も背後から襲ってくる悪霊に気付いたが、反応が遅かった。

 が、その瞬間。一筋の閃光が闇夜を一直線に直射し、霊魂に直撃。悪霊を消滅させてみせた。

「え!?」

 少女は自分を救った閃光が飛んできた方へ目を向けると、そこにはミラージュ・ガンを携えたミラールの姿が飛び込んできた。

「大丈夫!? 助太刀するわ!」

「あ、あんた一体……?」

 突然加勢してくれるミラールに、少女は困惑した。

「て、てかあんた! そんな銃じゃ戦えないよ! コイツらは悪霊、実弾なんか効きやしない!」

 と、少女はミラールが持つ二丁拳銃ミラージュ・ガンを見て、実弾では実体のない悪霊とは戦えないと唱える。

 するとミラールは少女に得意げな顔をチラつかせると、目の前でミラージュ・ガンを辺り一帯に連射して悪霊を撃退してしまう。

「え!? な、なんで……?」

 実体のない霊にも銃撃が当たる場面を見て少女が驚くと、ミラールは自信満々で疑問に答えた。

「へへっ、私のミラージュ・ガンが撃つ銃弾は、全て魔力で構成された弾丸。だから悪霊相手にも普通に効くのよ」

「え! あ、あんた……魔法使いかなんかなの?」

「まあ、魔法使いや魔女っ子って訳じゃないけど……それよりも早々と、この悪霊たちを片付けちゃいましょ」

「な、何だか分からないけど……ま、悪霊と互角以上に戦えているみたいだし、大丈夫か」

 ミラールの力説を聞いて、少女はミラールと共に本格的に悪霊の群れと共闘するに至った。

 

 そして全ての悪霊を、少女は札やくだ狐を用いて倒し、ミラールは霊にも通じる魔力の弾で銃撃して見事撃退して見せた。

 一方、少女とミラールの後ろで身が縮まっていた青年達は、すっかり悪霊の群れに怯え切り気を失ってしまってた。

「はははっ……いや~~、悪霊が相手とはいえ今回はかなりヤバかったわ」

「まったく……魔法だが何だが知らないけど、その銃でよく悪霊共と戦えたわね、あんた」

 悪霊たちと死闘を展開したミラールの言動に、少女は呆れてしまう。

 そして激しい悪霊達との戦いを乗り越えた二人は、此処でようやく自己紹介した。

「私はミラール、聖龍隊の隊士よ」

「アタシはいずな、葉月いずなよ。こう見えて霊媒師を生業にしているんだ」

「霊媒師……つまりあなたは霊能力者って訳ね」

 自らを霊媒師と名乗る葉月いずなに、余り詳しく霊媒師を知らないミラールは葉月いずなが霊能力者である事だけは理解した。

「それで……一体、何がどうしてさっきみたいな悪霊達との戦いに発展しちゃってた訳?」

 ミラールがいずなに事の発端について尋問すると、いずなは正直に答えた。

「この学生達が、面白半分に此処の心霊スポットに足を踏み入れて、この場所に溜まっている悪霊たちを逆撫でしたんだよ。それで悪霊達に襲われて絶叫していた所を、通りかかったアタシが駆け付けて助けてやった訳」

「そうなの」

 いずなの話を聞いて、ミラールは騒動の発端を知った。

「それで? この男子学生たち、気絶してるけど、どうする?」

「ぐふふ、それはもちろん助けてやったんだから、除霊代をたんまり貰わないとね」

「あなた、意外とガメついわね」

 いずなの金銭への欲求にミラールは呆れてしまう。

 が、ミラールは葉月いずなの霊との戦いの手際良さを見て、こう思った。

(それにしても、一般人にしておくには少し勿体無い腕を持っているわね、このいずなって人。……そうだ!)

 ミラールは此処で一つ閃いた。

「いずな! 良かったら、その腕前を思う存分に揮ってみない?」

「へ?」

 突然のミラールからの申し出にポカンとするいずな。そんな彼女にミラールは言った。

「私、こう見えても聖龍隊の一員なの! そして聖龍隊でも新人達が結集しているスター・ルーキーズって総合部隊を立ち上げた総部隊長な訳! あなたも一緒に聖龍隊に入らない?」

「わ、私が聖龍隊!? い、いやいや、聖龍隊って一応はアニメタウンの軍隊な訳じゃん。そんなお堅い所に入る気は毛頭無いよ。それに実を言うと……あたし、修司とは少しばかり顔馴染みで今さら顔を合わせにくいんだよ」

「へえ、総長と面識あるんだ、あなた。でも、なんであなた総長と顔合わせたくない訳? ひょっとして昔、なにか大悪事をして総長に徹底的に痛め付けられているの?」

「そ、そんな! あたいは異常者(ヒール)なんかじゃないってば!」

「それじゃ、なんで嫌がる訳?」

「そ、それは……」困惑するいずなに、ミラールは問い詰める。

 すると葉月いずなは半ば諦めた様子でミラールに自分の心理を話した。

「あ、あたい……その………………実は、オールドで、修司とは昔馴染みの二次元人なんだ」

「へぇ、あなた意外と新しく見える二次元人なのに、オールドな訳!? ははっ、なんだ、それで恥ずかしがっていた訳? ははは……」

 葉月いずながオールド、すなわち90年代から2005年の間に生み出された初期の方の古いタイプの二次元人だと知って、ミラールは思わず笑い出してしまう。

「そ、そんなに笑う事ないじゃない! これでも、自分が旧型の二次元人だって気にしてはいるんだから」

「はははっ、いえ、ごめんなさい……」

 ミラールは込み上げる笑いを抑えて葉月いずなに謝罪した。

 するとミラールは葉月いずなに話を投げ掛けた。

「でも、聖龍隊ってそんなに堅苦しいものじゃないわよ。王宮を抜け出して、今じゃ聖龍隊に世話になっている私でも普通に過ごせているんだから」

「そうかもしんないけど……あたしは霊媒師として普通に儲けられれば、それでいいの! 最近の聖龍隊って、異常者(ヒール)とかの理由で色々と血生臭い事までするように成っちゃってるし、正直昔の方が良かった気がするのよねぇ」

「あら、あなたまでジュンみたいに争いは嫌いなタイプ?」

「どっちかと言うと、生きた人間とは余り戦いたくないの」

「そう……でも、聖龍隊に入って霊媒師としての腕で活躍すれば、一人で稼ぐよりも何倍も儲かるわよ」

「え! ホント!?」

 ミラールから聖龍隊に加盟すれば今以上に金銭が儲かると云われて、目の色を変える葉月いずな。そんないずなにミラールは交渉を続ける。

「ホントよ! 何なら、私が聖龍隊に代わってお金を払っても良いわよ。私、こう見えて王族だからお金の事は大抵何とかなるわ」

「ま、マジで!! う~~ん……正直、最近は霊媒師としての収入だけじゃ厳しい所があるし、この際聖龍隊に加盟するのも良いかもしれないわ」

「よし、決まり! これから宜しくね、いずな!」

 いずなが聖龍隊に加盟しても良いと言った途端、ミラールは手を差し延ばしていずなに握手を求めた。いずなはミラールからの握手の申し出に同意して手を差し出した。

「ふぅ、昔馴染みの修司とまた顔を合わせるのは気難しいけど……まあ、それでも何とかなるか。よろしく、ミラール」

 ミラールといずなは互いに堅く握手を交わした。

 

 そしてその後、二人は夜の街を共に歩きながら話の種に花を咲かせた。

「それにしても、あなたオールドだったとは。一体、昔はどんな作品に登場してた訳?」

「昔は【地獄先生ぬ~べ~】にたまに出る程度だったけど……」

「へぇ! 意外と名作な物語に出ていたのね! そして案の定、今となっては古い作品ね」

「う、うるさいな。それ気にしている事だから言わないてってば!」

「はいはい、オールドの葉月いずなさん♪」

「だからオールドって呼ぶなってっっっ」

 

 

 

[大食漢の猛者たち]

 

 聖龍隊の職務は、何も異常者(ヒール)ハントやアニメタウンの守護だけではない。

 未だ聖龍隊が未開拓の異世界に出向き、その世界がどの様な世界観か、そしてその異世界で聖龍隊としても活躍できる存在がいないかを把握するのも大事な職務なのだ。

 そしてある日、ミラールは葉月いずなと共に不思議な世界に出向いた。

 そこは通称グルメ界といわれる、食通には堪らない正に食の為の世界といえる世界観だった。

 ミラールといずなは、その世界で危険な生物と抗戦を開始してしまうのだが、そこに一人の屈強な大男が現われてミラール達を助太刀した。

 青い髪に太い眉、そして逞しい筋肉が誇らしげに全身を覆うその大男の戦い振りを見て、ミラールは注目した。

「あ、あなた! 何者なの!?」

 ミラールが戦いながら問い掛けると、大男はミラールに訊き返した。

「それはコッチの台詞だぜ! こんな危険なグルメ獣相手に、女とガキだけでよく戦っていられるもんだ!」

「私はガキじゃない、レディーよ!」

 青髪の男の言い分に反論するミラール。

 すると其処に、更に屈強な男が二名続けて現れた。

「トリコ、大丈夫かい!?」

「おお、ココにサニー、お前らも来てくれたか。よっしゃ、一気にこのグルメ獣をブッ倒してメシにあり付くぞ!」

 二人の男が駆け付けたのを皮切りに、青髪の男は拳を唸らせて巨大な獣へと迫っていった。

「釘パンチ!」

 青髪の大男が強烈な拳を打ち込むと、ターバンを巻いた青年が身体から紫色の毒素を噴き出させてそれを武器に戦い、虹色にも見える美しい髪をした男はその髪の毛から触手を出して応戦する。

 そんな激しい男達と獣の戦いを目の当たりにして、ミラールは目を輝かせて決意した。

「……いずな、私決めたわよ!」

「!?」

 突然のミラールの発言に困惑する葉月いずな。

 そして次の瞬間、ミラールは言い放った。

「あいつら……仲間にしましょう!」

 なんとミラールは男達を聖龍隊に迎え入れようと決意した。

 

 後に判明したが、ミラールたちに助太刀したのはトリコという男に加えて、毒を操り毒に耐性を持つココ、そして独特の美的センスを持つサニーという通称グルメ四天王の三人だった。

 彼等はトリコの相棒で、料理人である小松と共にグルメ界を巡って己だけの夢のレシピを完成させる為に日夜冒険しているというのだ。

 ミラールは、そんなグルメ四天王と料理人小松を新たな仲間として聖龍隊に迎え入れようと決意し、トリコ達を説得するのだった。

「お願い! 聖龍隊に入って、私たちの仲間に加わって! あなた達の戦闘力に惚れ込んだのよっ」

 しかしトリコ達グルメ四天王の三人はいい顔しなかった。

「う~~ん、だけどな……オレ達はオレ達で自分の夢が、野望があるからな。聖龍隊に入って戦ってばかりはいられないんだ」

 自分の信念を、夢を叶える為に多忙な日々を過ごしていると語るトリコ。

 そんなトリコ達に、ミラールは彼等の決断を促す為に用意したある資料を公開した。

「こ、これは……!」

 その資料を見たトリコ達は絶句した。

 ミラールが見せた資料。それは三次元界などの貧困国や貧しい異世界で飢えに苦しむ子供達の写真等だった。

「世界中には、飢えに苦しんでいる子供達が大勢居るの! 私は、聖龍隊の一員として彼等の苦しみも救済したいと思っている。それには、あなた達の能力や小松の腕が必要になるの! お願い、私の……世界中の飢餓を無くすという私の悲願を叶える助けをしてちょうだい!」

 ミラールは頭をテーブルにこすり付ける様に下げて嘆願する。

 このミラールの要望を聞いて、そして自分達の世界だけでなく他の異世界や現実世界でもある三次元界にも飢餓に苦しむ子供達がいる事を知ったトリコたち。

 トリコ達は悩んだ。実を言うと、トリコ達も今や屈強な肉体を持つまでに成長してるが、昔は自分達も飢餓に苦しむ孤児であった。それ故に飢餓に対しての苦しみを誰よりも理解していた。

 ミラールからの要望に、しばし考え抜くトリコたち。

 

 そしてトリコ達は決意した。

「………………分かった、その聖龍隊とやらに入らせてもらおうか」

「え! そ、それじゃ……」

 トリコの発した言葉に反応するミラールに、トリコは言った。

「ああ、オレ達も少なからず聖龍隊に入って、少しでも全ての世界の飢えに苦しむ子供達の力になってやるぜ!」

「わあ、ありがとうトリコ! それにココにサニー、そして小松! これから宜しくね」

 ミラールは交渉が成功した事で感銘を受けて、トリコと握手を交わした。

 トリコの手はとても大きく、ミラールの手を包み込むように双方は握手した。

 

 こうしてトリコ達、ココにサニー、そして料理人小松は聖龍隊に加わったのである。

 因みに後に、グルメ四天王最後の一人ゼブラが聖龍隊に加盟するのは、ジェラール・フェルナンデスと共に保釈金で自由になった後である。

 

 

 

[NEXTとの接触]

 

 ここは大都会シュテルンビルト。

 人々が注目する中、NEXTヒーロー達が二人を追い詰める。

「もう貴方たちの逃げ場はありません! 観念なさい、アルバート・マーベリック、ロトワング!」

「くぅ、此処までか……!」

 金髪で眼鏡を掻けた方のバーナビー・ブルックス・Jrが、今まで自分の半生を利用してきた記憶操作能力を持つアルバート・マーベリックとその片棒を担いでいたマッドサイエンティストのロトワングを、仲間であるワイルドタイガーたちNEXTヒーロー達と追い詰める。

 既に逃げ場を完全に失い、ヒーロー達に追い詰められるアルバートとロトワング。

 現場を生中継されて、完全に逃げ場を失った二人が捕まるのも時間の問題だと、誰もが思ったその時。

 

 アルバートの背後に立っていたロトワングが、突如数歩ばかり後ろへ引いてアルバートと距離を離す。

 そして次の瞬間、バーナビーやワイルドタイガー達が注目する中、ロトワングは何と懐から不思議な形状をした拳銃を取り出して銃口をアルバートに向けた。

 バーナビーたちが一驚する表情を見て、アルバートも此処でようやく背後のロトワングの行動に気付いて後ろを振り向いた。

 が、アルバートが後ろを振り返り、自分に銃口が向けられているのに気付いた次の瞬間、ロトワングは見たこともない拳銃を発砲、2発の銃声が鳴り響いた。

 ロトワングが放った銃撃は、アルバートの両足の膝を貫通して、彼の歩行を奪った。

「うわっ……があぁ……ッ!」

 両脚の膝を撃ち抜かれて悶絶するアルバートはその場に崩れた。

「ふふっ、全然気づかなかったわね、あなた」

 ロトワングは女の子口調でアルバートに言う。

「お、お前……私を、裏切るのか……!?」

「あら、それは違うわ」

 するとロトワングの姿が一変し、彼は、いや彼女は変身を解いてミラールの姿に戻る。

「あいつなら、とっくの昔に処分したわ。まあ、次はあなただけど」

「そ、その能力は……折紙サイクロンと同じ、擬態のNEXT……!?」

「ネクスト? ……ああ、この世界で言う能力者の部類ね。少し違うけど、まあ、そんなのもう関係ないか。だってあなた、今から私が処分しちゃうんだもの」

 ミラールは時既にロトワングを処分し、アルバートの動向を探りながら彼を処分する機会を窺っていたのだ。

 そしてミラールはアルバートにミラージュ・ガンの銃口を向けて、処分しようとした正にその時だった。

「待ってください!」

 突然ミラールに掛けられる制止。ミラールが視線を向けてみると、そこにはバーナビーの姿が。

「なに? あなた自身の手で、この男を処分しようっての? 自分の両親を殺め、挙句の果てには今まで散々記憶改ざんされて自分の半生を思いのままに操られた報いを晴らしたい訳?」

 ミラールが険しい顔で問い掛けると、バーナビーは初めて目にするミラールに動じず彼女と話し始めた。

「キミが何者でマーベリックをどうするのかは分からないけど……彼にはちゃんと報いを取らせるべきだ」

「その通り。あなたの記憶を改ざんして、自分の出世の道具にしたり、挙句にはヒーロー達の記憶を改ざんさせてタイガーを陥れようとしたりしたコイツの悪事は断罪すべきよ。……ちょっと待ってて、コイツの脳みそに一発お見舞いするから」

「だから殺すんじゃない! この男は確かに最低最悪な下種野郎だ! だからこそ、きっちりと法的手段で罰しなければいけないんです!」

 バーナビーはアルバートに告げた。

「さあ、罪を償うんだ! マーベリック!!」

 しかしバーナビーに問い詰められたアルバート・マーベリックは、差別が横行する中でそんなNEXT達にヒーローとしての希望を与えたのは他ならぬ自分自身であり、そんな人生をバーナビーたちNEXTに与えた自分こそ、シュテルンビルトの経済社会を活性化させた張本人だと自己主張した。

 そして最後にアルバートは「ウロボロスは滅びぬ!」と発すると同時に、NEXT特有の光を体から発して己の記憶改ざん能力を使用した。

「え!?」

 アルバートが能力を使用するのを目撃して、ミラールが銃口をアルバートに再度向ける。

 それと同時にバーナビーがアルバートに駆け寄るが、彼が駆け寄った時には既にアルバートは廃人と化していた。

「チッ、証拠隠滅の為に自らの能力で自分の記憶を全て抹消して廃人になったのね……!」

 自らの記憶を全て抹消して廃人と化したアルバート・マーベリックを前にして、ミラールは苛立ちで表情を歪ませた。

 すると其処に突如として大勢の特殊部隊が雪崩れ込んできた。

「な、何なの? 一体……!」

 突然雪崩れ込むように現場に突入してきた特殊部隊を前に、ブルーローズ達は非常に混乱する。

 この突然と所属不明の特殊部隊の突入に、テレビ中継でヒーロー達の活躍を見ていた視聴者達も半ば困惑。

 すると現場に突入した特殊部隊の隊長が、混乱するバーナビー達の前に出て問い掛けてきた。

「バーナビー・ブルックスJr、そしてワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹ですね?」

「あ、ああ、そうだが……」

 隊長の問い掛けに、虎徹が答えると即答で返事が返ってきた。

「我々は聖龍隊! あなた達を歓迎します、勇敢なるNEXTヒーロー達」

『???』

 話の見えない展開に困惑する一途のヒーロー達。

 そんなヒーロー達にミラールが声をかける。

「そんなに心配しなくても……何も、とって食おうって訳じゃないから」

 このミラールの発言で、彼女もまた聖龍隊という組織の関係者だと察するバーナビーたち。

 

 それからバーナビーたちNEXTヒーロー達はミラール同行の許、共に聖龍隊本部まで行く事に。

「こ、これから俺たち何処に行くんだ?」

 道中、虎徹がミラールに問い掛けると、ミラールは平然とした顔で軽々と言った。

「だから聖龍隊本部よ。あなた達が居たシュテルンビルトとは別世界にあるの」

「べ、別世界って……本当なんでしょうか……?」

 ミラールからの返答に、バーナビーたちは半信半疑であったが、実際に彼等を乗せた異次元亜空間移動装置が搭載された移送ヘリは聖龍隊本部に到着した。

 そして本部に到着した一行を待ち受けていたのは、他ならぬ聖龍隊の総長、小田原修司だった。

「やあ、お初にお目にかかる……俺は修司、小田原修司。聖龍隊の総長を務めさせてもらってる」

「な、なんだ。まだ子供じゃないか……」

 虎徹のこの発言に、修司は無愛想な面構えで述べ返す。

「虎徹、といったな。俺はこれでも人生経験は有り余るほど経験している。故に100年は生きているつもりだ。……本題に入ろう。お前達の事は、ミラールからの情報で多くを知り得ている」

 と、修司が語っていると、バーナビーが修司に問い掛けた。

「待ってください、僕達の事を前々から、このミラールって子に調査させていたんですか? いえ、それよりも色んな事が一片に起きて頭の中が軽くパニック状態なんです、コッチはずっと! 一体あなたたち聖龍隊は何者なんですか? そして何故、ミラールはあのロトワングと入れ替わっていたのか? そして僕たちをどうしたいのか……全て答えてもらいたいです!」

 このバーナビーの真剣な質問の数々に、修司は「ふぅ」と鼻息混じりの溜息をついて語り始めた。

「それでは話そうか。お前達には正直言って残酷な……そして変えられない事実とやらを」

 修司はバーナビー達に語り明かした。自分は三次元人であって、バーナビーたちは二次元人という存在という事を。そして、その二次元人と彼等が住む世界は全て三次元人の思想概念から生み出された虚構に近い世界だという事を。そして聖龍隊は、そんな虚構に近い二次元人たちの中でも特殊能力など戦力に相応しい逸材を集めた軍隊であり、修司は前々からワイルドタイガー達NEXTヒーロー達に目を付けていたのだが、アルバート・マーベリックの悪事に気付いて彼の同行を調査する為にアルバートと協力関係を結んでいたロトワングをミラールに処分させた直後、ミラールがロトワングに変身してアルバートの動向を調査すると共に彼を処分する機会を窺わせていたというのだ。

 この修司の話を聞いて、ミラールに同行してきたNEXTヒーロー達は愕然と衝撃を受けた。

「そ、それじゃなんだ……! 俺達がヒーローとして活躍してきた事も、そしてNEXTとして苦しんできた半生も、全ては単なる物語だったっていうのか……!?」

 ロックバイソンが修司に問い詰めると、修司は平然とした面持ちで答えた。

「……ああ、俺の世界では少なくともそうなるな」

 この修司の言葉にNEXT達は絶望した。自分達が今まで送ってきた半生、そして苦しんできた戦いなどは全てフィクション物語であった事実に衝撃を隠せないNEXTたち。

 すると、この事態に虎徹が思い詰めた表情で呟いた。

「……そっか。俺たちの格闘は、全て物語だった訳か……なるほどな」

 そんな自分だけで納得する、受け入れようとする虎徹の言動に幼馴染でもあるロックバイソンが詰め寄る。

「こ、虎徹! お前は何とも思わないのか!? ……俺達の今までの苦しみが、戦いが全て物語だって知って……」

「実は俺……前々から少しは感じていたんだ。特撮ものでよくあるヒーローが実在する世界……そんな世界に生きていて、そして自分自身もヒーローな俺達の世界は、別の世界では単なるおとぎ話なんじゃないのかなって……」

「そ、それじゃ何だってんだ! 友恵が……お前の女房が死んだってのも、単なる物語って事で片付けられて良いっていうのか!?」

 ロックバイソンの発言に、言い寄られる虎徹は娘楓の方へ目を向ける。楓は自然と悲しげな表情を浮かべていた。

「……確かに友恵が病死したって事実も、単なる物語の筋書きと片付けられちゃうのは悲惨だ……だけど、そんな悲劇でも多くの老若男女問わず、俺達の戦いを……物語を観てくれた人たちには確かな感動や希望を与えられたんじゃないだろうか」

「! ……」

「確かに俺達の今までが全て物語だったってのは悲惨に感じる。だけど俺だって子供の頃にはヒーローに憧れた様に、俺たち自身の境遇を見てきて共感し、そして多くを学んでくれた人たちが実際に居てくれた事だ。だから俺達は今こうして此処に居られる……そう思うと、やっぱヒーローやってて良かったなって思えちまって」

 この虎徹の発言に、その場のNEXT達は誰もが愕然とした。

 すると虎徹に続いてバーナビーも落ち着いた様子で語り始めた。

「……そうですか。僕等がいた世界は、全て三次元人という大いなる存在の思想概念が積み重なって出来た世界……そんな世界で僕らは生き、そして激しく戦ってきてた訳か……」

 しばし考え込むバーナビー。

 すると其処に彼らNEXTの話を聞き入れていたミラールが割り込んできた。

「確かに、あなた達の今までは単なる物語でしか無かったのかもしれない。けれど、これからは違うわ。バーナビー、貴方だってあのアルバート・マーベリックに利用されてきた半生ではなく、本当の自分として未来を、運命を切り拓いていけば良いのよ」

「本当の自分……?」

「そう、誰の指金でもなく、誰の道具でもない……自分自身の意思と力で未来を切り開くのよ! 私たち聖龍隊はその為にいるの!」

 ミラールがバーナビーに熱く主張していると、修司も唱え始めた。

「そうだ。これからお前達は自分自身の意思と力で未来を……運命を切り拓いていくんだ! その手助けを務めるのも俺たち聖龍隊の職務なんだ」

 修司から唱えられてNEXT達が唖然とする中、修司は更にこう述べた。

「もはや二次元人は三次元人の良いように動く存在ではない! 自分の意志で、信念で道を切り拓いていける種だと俺は信じて疑わない! どうだ? お前達のCEOだったアルバート・マーベリックはもう居ない。奴の代わりに、俺たち聖龍隊がお前達を財力だけでなく組織力でもサポートしていくゆえに、俺達と一緒にやっていってくれないか?」

 修司から聖龍隊への勧誘を勧められ、皆が唖然とする中で虎徹だけが修司に早足で歩み寄り笑顔で言った。

「それは心強い! これから宜しくな、修司くん!」

 そう言って虎徹が修司と握手を交わそうとした矢先、その虎徹の言動をバーナビーが腕を引き寄せ制止する。

「こ、虎徹さん! いくら何でも、そう簡単に聖龍隊とやらを信用して良いのですか? この子、何を考えているか分からないですし……」

 バーナビーは修司の不愛想な顔を見て不信感を募らせている事実を虎徹に耳打ちすると、虎徹は平然とバーナビー達その場のNEXT達に言った。

「大丈夫だって、バニーちゃん! この修司くんは一見、不愛想だけどいい子だって! 俺には分かる!」

「そ、その自信は何処から……」

「それに、正義のヒーローが人を疑ってちゃ意味がないよ? 何より聖龍隊なんてかっこいいフレーズじゃん! もうアルバートも居なくなっちまったし、この際みんな揃って聖龍隊に鞍替えしても良いんじゃない?」

 虎徹の人を疑わない性分に呆れてしまうバーナビーたち。

 すると聖龍隊加盟に乗り気な虎徹にミラールが歩み寄り、彼らに話し掛ける。

「これで決まりね! ようこそ聖龍隊へ。新しく聖龍隊に入ったのなら、私が指揮しているスター・ルーキーズに入る事になるわ」

「へぇ、君みたいな小さな女の子が指揮するチームがあるのかい?」

 虎徹が問い掛けると、ミラールは自信有り気に話し返す。

「女だからって甘く見ないで。こう見えても射撃の腕はずば抜けているし、変身能力だって使いこなせるんだから」

「変身能力というと、折紙君みたいな擬態能力の事かい?」

 スカイハイが問い掛けると、ミラールは強めに否定した。

「全然違うわ! 私の変身能力は、ただ単に姿形を変えるだけの擬態とは大違いよ」

「(ガァ~~ン)お、大違い……」

 ミラールからの発言に悲愴感を隠せない折紙サイクロン。

「私には限度があるけど、その対象者が有機物・無機物だろうと変身できるし、その相手が何らかの能力者なら大抵コピーもできちゃうのよ」

「へぇ~~、それじゃブルーローズやドラゴンキッドに変身すれば、氷や電撃なんかも使えちゃう訳か」

「そういう事」

 虎徹からの問い掛けにミラールは自慢げに返した。

「私が指揮しているのは、聖龍隊でも特殊な組織構成……複数の部隊を同時に指揮し、協力し合う通称総合部隊、それがスター・ルーキーズな訳! 私は、その総部隊長って訳なの」

「複数の部隊を同時に指揮する、か……その部隊の一つとして、僕らも聖龍隊に吸収される訳なんですね」

「その通りよ、バニーくん」

 ミラールは疑問をぶつけてくるバーナビーにウィンクしながら返事した。

「僕達がこれから入る聖龍隊には、君や僕たちみたいな能力者が多数在籍しているのですか?」

 再度バーナビーがミラールに質問を投げ掛けると、ミラールは悲しい現実を告白した。

「ええ、あなた達の世界もそうだった様に……能力者って差別の対象にされちゃう事が多いし、そんな迫害から護る為にも聖龍隊は結成されているのよ」

「ふぅ、コッチの世界でも能力者への差別ってのがあるのかい……」

 ミラールの話を聞いて虎徹は少し悲しげに語った。

「それじゃそれじゃ! 総長さんにも能力ってあるの?」

「おおっ、それは拙者も訊きたかったでござる!」

 ドラゴンキッドと折紙サイクロンからの問い掛けに、修司は真顔で答えた。

「ああ、俺にも能力はある……そう、お前達を凌駕してしまう能力を、な」

「へえ、それは知りたいですね」

 修司の何処か無粋で怪しい雰囲気に、バーナビーは目付きを鋭くさせて言った。

 すると修司は手の平を皆に突き出して、手の平から黒い波動を噴出させた。

「うわっ!」

 突然放出された微量の黒い靄に驚く虎徹たち。

 すると修司は虎徹達に物申した。

「……これで、お前達はタダの人だ。弱小な、タダの人……」

 修司が申す謎の言葉に唖然とする虎徹たちNEXT。

 すると修司の怪しげな殺気を感じてか、NEXT達は能力を発動させようとした。

 が、しかし。

「あ、あれ……おかしいよ? 電撃が出せない?」

「わ、私の氷の能力も……」

「イヤだぁ、アタイの炎も出ないわっ」

 ドラゴンキッド/ブルーローズ/ファイヤーエンブレム達は、自分達の能力が使用できなくなっている事実に気付く。

 そしてそれは他のNEXT達も同じだった。

「これは……何をしたんですか?」

 バーナビーが戸惑いながらも修司に問い詰めると、修司は平然とした面持ちで答えた。

「お前達の能力を封じただけだ。……俺の能力は闇、全てを引き付け、全ての特殊能力を封じられる禁忌の力だ……!」

「や、闇ですって……!?」

 修司の発言に衝撃を受けるバーナビーに、ミラールが声を掛ける。

「総長の能力は、触れた相手か一定の距離の相手の能力を封じられる闇の能力なのよ。だから総長の前では、如何なる能力者も全て平等な訳」

 ミラールから小田原修司の前では如何なる人物も平等だと唱えられたバーナビーは衝撃を受ける。

 そして己の能力を披露した修司は、目前のNEXTヒーロー達に告げた。

「まあ、今後のお前達の活動方針も色々とあるだろうし……今回は此処で解散、または本部内への通行可能なエリアへの見学でもしとけ。ミラール、後の事はお前に任せる」

「了解よっ、総長」

 修司からNEXTヒーロー達の指導及び案内などを一任されたミラール。

 ミラールは部屋から虎徹達と退室しながらお喋りした。

「さあっ、ヒーロー活動よりも忙しくなるかもよっ? 今日から、あなた達も異常者(ヒール)ハンターとして活躍してもらわなくっちゃ!」

 このミラールの発言に虎徹が問い掛けた。

「マーベリックを追い詰めていた時も言ってたけど、そのヒールってなんだ?」

「そうそう、まずは私達が倒すべき敵、異常者(ヒール)について説明する必要があるわね。そもそも異常者(ヒール)ってのは……」

 ミラールは虎徹たちNEXT達に聖龍隊が倒すべき存在、異常者(ヒール)とは何なのかという議題を語り尽くした。

 

 こうしてミラールによるNEXTヒーロー達への指導が始まるのだが、そんな聖龍隊に入った虎徹達を見て村田順一たちスター・コマンドーは思い悩んでいた。

 聖龍隊の組織力がこうして増加し、ヒーローとしてもハンターとしても活躍する隊士が加入してしまった。

 これにより、更に平和への道が遠ざかっている事態に順一達は一抹の懸念を募らせる一方だった。

 

 

 

[元敵との交流]

 

 聖龍隊総合部隊スター・ルーキーズに続々と新たなメンバーが加入して、総部隊長ミラールも一段と張り切っている頃。

 聖龍隊は遂に革命軍士に加わって、悪行の限りを尽くしていた二人を捕縛した。

 それはブラッディ・レンジャーズの洗脳にも一枚噛んでいた、門脇将人とミヤビの二人だった。

 既に報道で革命軍士に参入した事が大々的に公開された事で、実の家族や身内からも拒絶されてしまった門脇将人は、もはや帰る場所を失っていた。

 そんな将人とミヤビを、修司は聖龍隊に寝返る事を条件に自由放免してやろうと言い出した。

 最初は反発していた将人だったが、このままでは革命軍士に力を貸していたという事で、自分はおろかミヤビまでも処分の対象として抹殺されかねない現状に、将人は渋々ながらも聖龍隊に加盟した。

 そんな二人は当然ながらも新人として、かつては敵対していたスター・ルーキーズに加わる事となった訳だが、そんな二人の加入に対してミラールは複雑な心持だった。

「ミラール……」

 一人、黙然と長椅子に腰掛けるミラールに修司が声を掛ける。

 かつての自分の仲間達を、ブラッドや多くのバウンティハンターを洗脳し、裏で聖龍隊と争い合わせる様に仕組んだメカルスの手先でもあった将人やミヤビの介入に心の何処かで抵抗を感じていたミラール。

 そんなミラールに修司は声をかけ、語り掛ける。

「ミラール、お前の苛立ちや不服も尤もだ。あの将人が仕出かした数々の暴挙や悪事は、当然許されざるものじゃない」

「………………」

「……だがな、あの将人には革を本気で越えたいという……純粋な闘争心があるのも今では分かった。奴は、その純粋な闘争心で少し道を逸れて外れてしまっただけなのかもしれん……俺もそうだが、純粋に力を欲したいが為に道を逸れてしまったのは強ち珍しい事ではない。将人が聖龍隊の同士に加わるのを不本意に感じているのは分かる……だがな、ミラール。人は過ちを犯してしまう生き物だ……ホンの少しでいい、将人とミヤビの二人に償いのチャンスを与えられないか?」

「………………」

 修司の話を聞いても尚、釈然としないミラールに修司は奥の手として彼女に耳打ちした。

「……それになミラール、逆にこう考えれば良いんじゃないか? 元敵である将人やミヤビを利用して、散々こき使ってやろうって」

「……!」

 この修司の囁きに、ミラールの中の小悪魔が目覚めてしまった。

 

 一方、スター・ルーキーズの集まりでは。

 最年長者であるワイルドタイガーの指揮の下、今まで対立し合っていた日ノ原革と門脇将人が向かい合っていた。

 ワイルドタイガーは喧嘩してきた二人の少年を仲直りさせようと、取り計らったのだ。

「さあっ、昔は色々あったけど、これからは互いに協力していく仲間だ! ささっ、握手握手」

 革と将人は虎徹に急かされながら、未だお互いに色々と納得できてない心境ながらも、双方握手を交わした、いや交わされた。

「よし! これで将人君も俺らの仲間だ! 宜しくな、将人君! そして革君も心機一転、これからも共に頑張ろう! わははっ……」

(馴れ馴れしいな、このオッサン)

 しかし革と将人、二人の肩と組み合って意気投合を図ろうとする虎徹のフレンドシップに将人は少しウンザリしていた。

 そんな所にスター・ルーキーズ総合部隊の総部隊長ミラールがやってきた。

「あ……ミラール」

 奴良リクオたちルーキーズメンバーは、ミラールと革命軍士との間に起こったブラッディ・レンジャーズ洗脳事件を周知していた事から、現場の空気は気まずくなった。

 ミラールと門脇将人は一時、お互いに見据え合ったまま現場の空気と同様に硬直した。

 肩に圧し掛かる空気が重くなり、硬直する現場に誰もが息を呑んだ。

 すると皆の注目を浴びるミラールは、見据え合う将人に向かって話し出した。

「……門脇将人。今や凶悪なテロリスト集団、革命軍士に加盟していたという事で、家族はもちろん身内からも見捨てられた哀れな男……」

「………………」

「……ふぅ、確かに私達の過去には色々あったわ。ブラッド達の事も含め、その後の格闘も散々含まれてね。でも、これからは大分状況が違う。今後はお互いに連携を取り合う仲間として……あなたとミヤビは更生した異常者(ヒール)として私の指揮するスター・ルーキーズのメンバーとして活躍してもらうから。タダで済むと思わないでよ、元異常者(ヒール)の門脇将人とミヤビ」

 強ち将人とミヤビの両名を仲間として受け入れている様子のミラールの言動に、ルーキーズの面々は少しばかし安心した。

 しかし此処で、ミラールは門脇将人とミヤビの両名を脅かす言動を唱えた。

「……まあ、また異常者(ヒール)として大罪を犯した時は、その時は私が容赦なくその場で射殺してあげるから覚悟してちょうだい。あんたの頭蓋も、ミヤビの端正な顔立ちも……私の射撃で粉々に撃ち抜いてあげちゃうから」

 このミラールの脅し文句に、将人もミヤビも蒼褪めた。

 するとそのミラールの脅し文句を聞き付けて、その場に修司も現れてミラール同様に将人とミヤビに告げた。

「そうだぜ、将人君にミヤビちゃん……俺たち聖龍隊に散々、刃向って来たその報いをその身に叩き込んでやるから覚悟しておきな……畜生だったお前らを生かしておいてやるだけでも感謝してほしいのに、そんなクズであるお前らを聖龍隊に迎え入れてやったんだから精々ミラールにこき使われな……まあ、俺様もこき使うけどな……」

 ミラールに負けず劣らない脅し文句を淡々と述べる修司の凶悪面を前に、修司に徹底的に痛め付けられてきた門脇将人は背筋が凍り付いた。

 更に……「それに……君はこの前、俺の事をチビ呼ばわりしてくれたよね? 俺はお前や革みたいにハーフの様に背が高い訳でも無い、足が長い訳でも無いが……精々そのチビに死ぬまでこき使われて苦しむ事だな……!」と、修司は過去に将人からチビ呼ばわりされた事を根に持っていた。

 

 因みに日ノ原革は170、門脇将人は172。そして小田原修司は168だという。

 

(可哀想に……あれじゃ、蛇に……二匹の蛇に挟まれたカエルだな)

 そしてスター・ルーキーズの面々は、ミラールと修司の板挟みになっている身が縮み込む震える門脇将人を見て、二匹の蛇に睨まれた蛙の様に見て取れた。

 これから門脇将人に襲い掛かるのは、数々の苦難の道のり。元異常者(ヒール)として多くの受難を浴びて、数多くの非難の眼差しを浴びる事だろう。

 

 それから更に後の話。

 ここは異世界のとある収容施設。

 修司は自らの人脈と権力を用いて、この施設に二人の囚人を呼び集めて面会した。

「よぉ、お二人さん。具合はどうだい?」

 囚人用の衣を纏い、目の前に呼び付けられた二人はしっかりとした意識で修司に目を向けた。

「ヘっ、誰かと思えば……こんなチビがオレ様を呼び付けたのか」

「………………」

 屈強な肉体で裂けた口が特徴的な男が言う中、もう一人の青年は何も言い返そうとはしなかった。

 そんな二人に修司は告げた。

「単刀直入に言おう……お前ら、どうだ? 俺が指揮する組織、聖龍隊に入らないか」

「なに?」「……」

「そう難しい話ではない。お前らが同意してくれれば、俺はスグにでも上の人間に保釈金を出して、お前ら二人を釈放させてやる。悪い話ではないだろう?」

 修司が二人に告げると、口が裂けた男は修司に強面を近づけて言い放った。

「フザケンじゃねえ……! オレは、オレ自身に適応した環境でなきゃ、やっていく気は毛頭ない! このオレと適応しない奴は容赦しねえ……!!」

 この発言を受けて、修司はそれまでとは違い清々しい笑顔で男に言い切った。

「……ニッ、そっか。それじゃ俺はお前に適応してみようじゃないか!」

「!? な、何を言ってやがる……第一、そう簡単にオレと適応できる人間がいるとは到底思えねェ……!」

 男がそういうと、修司は高々と笑い飛ばしながら言って見せる。

「はははっ、そう難しく考えるな……ゼブラ。俺はお前達を仲間として引き入れたいだけだ。お前が俺と適応しない限り、仲間として認められないなら俺はお前に適応するよう努力する。だからお前も俺たちの仲間として活躍できる様に少しだけ努力してくれや」

「………………」

 満面の笑顔で語る修司の話に唖然としてしまう口が裂けた男ゼブラ。

 すると修司はもう一人の青年に向かっても同等に語り掛けた。

「ジェラール・フェルナンデス! お前もゼブラと同じだ。お前らの過去の罪状を俺は知った上で、俺はお前らを仲間として引き入れようと思ってる。既にエルザやトリコは聖龍隊の一員として活躍している日々を過ごしている! お前らも一緒に聖龍隊に加わって、楽しくやっていこうじゃないか」

 笑顔で淡々と語る修司の言葉に、ゼブラと共に修司の前に連れて来られた囚人ジェラール・フェルナンデスは自分の感情が微々と揺れ動くのを感じ取っていた。

 そして修司は最後に二人にこう告げた。

「俺はお前らを受け入れ、そして適応する! だからお前らも俺と俺の仲間達を受け入れるよう適応してほしい! いい条件だろ?」

 修司から告げられて、ゼブラとジェラールは唖然としてしまうばかり。

 すると修司の発言の数々を聞いて、ゼブラが寡黙を切った。

「……ガハハハッ、こいつは面白い! オレ様に適応する為に、オレ様にも適応を求める奴がこの世にいるとは!」

「どうだ? 面白いだろ?」

「ああ、実に面白い! よし、その聖龍隊とやらに入ってやろうじゃないか! トリコやココの驚く顔が楽しみだぜ」

「よし、ゼブラお前は決まったな! ジェラール、お前も話に乗るだろ?」

「………………」

「何も言わないという事はOKって事で良いな! よっし、決まり!」

 修司はゼブラとジェラールの了承を得て、後日政府高官などに多額の釈放金を提示してゼブラとジェラールの両名を釈放させた。

 後に二人は、聖龍隊の一員として迎え入れられた。

「ジェラール……!」「エルザ……」

 ジェラールとエルザは、久々の再会に思わず涙を流した。

「ゼブラ、久しぶりだな! 出獄ご苦労さん」

「ガッハッハ、トリコお前も相変わらずだな」

 トリコ達とゼブラも久々の再会に双方とも笑顔を浮かべる。

 こうしてスター・ルーキーズはますます賑やかとなった。

 

 しかし、そんなスター・ルーキーズと小田原修司の様子をドアの隙間から遠視していた者は深いため息をついた。

 それは他ならぬスター・コマンドーの総部隊長、村田順一であった。

 後に順一はスター・ルーキーズの前で、元敵役である門脇将人とミヤビの目前でありながらこう告げたという。

「君たちにその将人やミヤビを……敵であった彼らを斬る事が、処分する事ができるか? 元異常者(ヒール)だった彼らがまた敵として立ち向かった時、処分を下せるか」

 この村田順一の非情にもとれる台詞に将人は激昂し、他の面々は激しく動揺した。

 心優しい順一が、何故このような台詞を吐いたかと言うと。

 それは過去に彼が、彼らスター・コマンドーが友だと信じていた存在に、トウキと言う存在に裏切れた事から、例え仲間になった存在であっても最後には処分しなければならない結末が待っている可能性を順一は危惧している故に。

 

 

 

[戦う理由]

 

 この日は門脇将人も参入してからの、スター・ルーキーズの鍛錬の日だった。

 スター・ルーキーズの鍛錬の相手をするのは、総隊長である小田原修司。

 修司は相手が新参者であるスター・ルーキーズが相手であろうと手を抜かなかった。

 彼らに真剣を持たせて、修司自身も真剣である聖龍剣を携えて命懸けの特訓をお互いに積もうとしていた。

 そして修司に散々立ち向かい、続々と倒されていくスター・ルーキーズ。

 ミラールが放つ銃弾も、修司は全て弾き返してミラールに峰打ちで剣を振るう。

 相棒アリスと共に武器であるヨーヨーを使いこなして修司に立ち向かう鹿嶋リンに対しても、修司は鋼鉄製のワイヤーを剣で絡め取ると、それを力任せに引き寄せてリンの胸部に掌底を打ち付けて彼女を悶絶させる。

 そして昔馴染の葉月いずなが操るくだ狐を一括して全て怖じ気付かせると、そんな修司を真正面からトリコが釘パンチで狙う。

 が、修司はまるで布きれの様にトリコの強烈な拳、釘パンチを回避すると小さな身長からは想像もつかない程の打撃を剣の峰でトリコの背中に打ち付けて彼の膝を着かせる。

 すると其処にゼブラが口から咆哮する空気砲を炸裂させるが、修司はその空気の砲撃を聖龍剣で一太刀に切断して左右に分かれさせて直撃を回避する。

 と、今度はワイルドタイガー達が修司を包囲して応戦を試みる。

 しかし修司はワイルドタイガーやバーナビーの百倍に上がったパンチを容易く避けて、更にブルーローズやファイヤーエンブレムの氷や炎までも回避して激しい攻撃を続々とかわして聖龍剣で脇腹などを打ち付けて倒していく。

「くぅ~~……俺らのハンドレッドパワーでも勝てないなんて……」

 ワイルドタイガーは自分達の能力を駆使しても容易く打ち負かしてしまう修司の戦闘力に苦渋の感想を述べる。

 そして最後に修司が予め残しておいた門脇将人は、修司に向かって真剣で斬りかかろうとするが、修司は将人が振りまわす剣の動きを全て見切り容易にかわしていく。そして修司は将人に峰打ちで全身を強打していき、将人を徹底的に痛め付けて血塗れにさせてしまう。

「ぐぅ……」

 全身を、顔中を痣だらけの傷だらけにされて原型すら歪められて将人は床に倒れ込んでしまった。

 

 スター・ルーキーズを全て峰打ちで倒し切ってみせた修司の荒業に、ルーキーズの面々は改めて修司の強さを噛み締めた。

 スター・ルーキーズの主立った主力隊士が全て修司に叩きのめされた直後、修司は聖龍剣を鞘に納めると部屋の片隅に置いていたスポーツドリンクに手を伸ばしそれを一気に飲み干した。

「ふぅ、これで終わりか」

 修司はドリンクを飲み干して一言いうとその場に胡坐をかいて座り込んだ。

 そんな修司が寛ぐ様子を横目で視認しながら、息を上げるルーキーズの面々。

 修司はそんなルーキーズの面々が自分に凝視している事に気付くと、下を俯いたままルーキーズに語り掛けた。

「ルーキーズ、お前ら……」

 修司の言葉にルーキーズは耳を傾ける。

「お前らは……何の為に戦っている」

 修司からの突然の問い掛けにルーキーズは戸惑ってしまう。

 そんなルーキーズに修司は再度語り掛ける。

「俺は時々考えてしまう、俺たちは何の為に戦っているのか? 二次元界を護り、二次元人と三次元人の共存の為に剣を振るっているのか……己の中の破壊願望を満たす為に我武者羅に剣を振るっているのか……」

 更に修司は話を聞き入れるルーキーズに語り続けた。

「刀は所詮、人斬り包丁。刀や銃、武器は使う人間を選ぶことができない。それ故に所詮、武器は暴力の象徴にもなってしまう。そんな武器を、剣を振るい続ける俺たちの戦いとは何なのか……」

 修司が考え込んでいると、そんな修司にミラールが話し掛けた。

「珍しいわね。迷う事のない修司が迷うなんて……」

「俺だって、たまには迷ったりする事はあるさ」

 無粋な面持ちで返事する修司に、ミラールが逆に問い掛けた。

「修司は……総長はどう思ってる訳? 自分が剣を、武器を揮う理由……」

 このミラールからの言葉に修司は真剣な目付きで答えた。

「そうだな……俺が振るう剣は、単に人の運命を……罪を断ち切る為の剣だけではない。弱者を、そして守るべき者を守り抜く為の剣でもありたい。多くの聖龍隊士に帯刀させている、鬼神と恐れられている俺が言うのも何だけどな……」

「守る剣、ね……それなら、私の銃も守る為の武器としてこれからも存分に振るっていくわ」

「へっ、まだまだ未熟者のお前らに守るべき者を守れるかっての」

「だからこそ、私は……私達はこれからも強くなっていくわ。守られるだけじゃない、誰かを守る為に……」

 ミラールからの言葉に、修司は目付きを鋭くさせて思慮に耽る。

 そして修司は、再度ルーキーズに問い掛けた。

「お前達は如何なる想いで戦う……如何なる想いで戦意を揮う」

 だがスグにルーキーズは答える事ができなかった。修司の言う通り、まだまだ未熟なゆえに。

 ルーキーズはその答えを見つける為にも、日々鍛錬に精を出している。

 

 しかし、そんなスター・ルーキーズの若気の至りに、村田順一は未だ彼らを認める事が出来なかった。

 平和の為に戦う聖龍隊は、その武力を強める為に武器を輸入して戦力を増強させている現状に。

 そして弱者を護る為に他の命を、異常者(ヒール)の命を処分していく残酷な日々。

 本当の平和とは何なのか。村田順一たちスター・コマンドーの苦悩は続くのだった。

 

 

 

[認める切っ掛け]

 

 ある日の事。

 本部に待機していた村田順一は、事件から帰って来た小田原修司と話していた。

「…………またミラール達ですか?」

「……まだ何も言って無い」

「……状況報告をお願いします」

「……結果的に人命には被害は無かった、被害者も安全な場所に移動させた後だったし異常者(ヒール)も無事現場で逮捕した。……問題はその後。犯人グループの内で数に入って無かった奴がいて、隙を見て逃げている所をミラール達数名のルーキーズが発見し追跡した。そして威嚇射撃として銃を発砲したんだろう……その先がまさか燃料保管後だとも気付かずにな……後は通信士から先に聞いた通り……あたり大炎上だ……」

「………………」

 修司から事件解決後の顛末を聞いて、順一は深くため息をついた

「はァ~~~~~~……ッ」

 そして順一は一時黙り込んだ後に修司に問い掛けた。

「………………総長」

「いや、まてジュン。俺は先に釘を刺しておいた。が、何だ……すまん……」

 この時、順一は心中で気苦労を抱えていた。

(またHEADの皆さんの心労が増える……)

 アニメタウンを統治するHEADの気苦労が増える事を苦悩する順一。

「総長はミラール達に対して心労を抱いてないんですか……?」

「俺は慣れたよ。もう、慣れた……」

 順一からの問い掛けに修司は半ば呆れた様子で返答した。

 そんな順一に、修司は複雑な心境で訴えた。

「こう言っては何だけどな……ミラール達はお前に認められたい一心で行動が空回りしている様に見えるんだ……」

 しかしこの修司の台詞に順一は目付きを鋭くさせて申し返した。

「他人に認められたいが為にするのが聖龍隊の仕事じゃないです。そんな理由で被害を増やされた市民の気持ちを考えてみてください!」

「うっ…………お前の言う事は尤もだ……」

「当り前です」

 順一の台詞が胸に突き刺さり、大変耳が痛いS級隊士の修司。

 修司が順一の一言一句に戸惑っていると、順一は暗い面差しで俯いたまま語り始めた。

「……仮に、認めた所でそれが一体何になると言うんです」

 順一は、過去に戦った異常者(ヒール)達の事を思い返して語り続けた。

「誰がいつ異常者(ヒール)になるかも分からない。何れ……どうにも出来なかった過去ばかりが後悔として残るだけです」

 元同僚だった異常者(ヒール)、聖龍隊と敵対して死んでいったJフォースのカールやエリーゼ、そして順一とは昔馴染みだった仲間と信じていたトウキ。彼らとの戦いで胸中に積もり積もった後悔を暗然とした面持ちで語り明かす順一。

 そんな順一に修司も過去の戦闘を思い出しながらも説き返した。

「……それは、ミラール達が今後決める事であって俺達が独断する事じゃない。それにミラールだって、それはもう経験している。古巣の裏切者になる覚悟で聖龍隊に加わった」

 修司はミラールがブラッディ・レンジャーズを抜け出てまで聖龍隊に加盟した経緯で得た彼女の覚悟について話し始めた。

「俺達にとってブラッディ・レンジャーズは敵であって味方じゃなかった。あいつは自分の仲間の暴走を食い止める為に単身で古巣を出て聖龍隊に入ったんだ」

 そして修司は物思いに耽る暗い面持ちの順一に言った。

「もう十分だろ、ジュン。あいつの覚悟だけでも無駄にしてやるな。ルーキーズの努力だけでも認めてやれないか」

 

 その頃、ミラール達スター・ルーキーズはと言うと。

「ねーーねーー……ジュンに報告しに行った総長が、もう2時間も戻って来ないんだけど……ヤバイ? でもでも……人には被害出なかったんだから其処までヤバく無いわよね……よね……??」

 しかしこのミラールの不安げな台詞を聞いて、先輩でもあるニュー・スターズ総部隊長のフロートが呆れた顔でミラールに言った。

「逆に俺も聞きてぇんだけどよ……何でお前らは自分達だけは大丈夫だと思ってる訳? その自信は何処から来るんだ?」

「どうしてそうやって私たち新人を虐め様とするの!? 優しい言葉の一つぐらい頂戴よ!」

「さよなら……ミーちゃん……」

「フロートのいじわるっ」

 フロートからの問い掛けや台詞に益々不安に駆り立てられるミラール。

 するとミラールは仲間であるワイルドタイガー達にも言い立てる。

「だいだい、タイガー達が言ってくれなかったから私気付かずに燃料保管庫で銃なんか撃っちゃったのよ! それに器物損害ならタイガー達だってやったでしょ!?」

「いやいや、俺達にだってあそこまでの被害は出さないよ。辺り一帯を火の海にしちまうほどの破壊行為、いくら俺が壊し屋ヒーローだからって其処までしねえよ」

 と、ミラールがルーキーズの仲間と言い合っているその時。

「おっ、よぉジュン」と、フロートがその場にやって来た順一に気付く。

「ギャアアッ」ミラールは本気で怯えて思わず悲鳴を上げてしまう。

 そして順一は、ミラールだけでなく連帯責任としてスター・ルーキーズ全員に鋭い目付きで言い付けた。

「総長から被害報告は聞かせて貰った。やってくれたなルーキーズ」

 ミラールは順一に戸惑いながらも、本心で謝罪と反省の意思を伝えた。

「ごめんなさい」

「反省は?」

「シテマス……」

「そうか」

 ミラールから謝罪と反省の意思を聞いた順一は、そっとミラールの頭に手を置いて呆れながらも優しく言葉を掛けた。

「仕方のない子だ。被害は褒められないけど……君たちの日々の努力は認めよう」

 順一は先ほど修司に言われた通り、ミラール達ルーキーズの努力だけでも認めてあげようと決めてた。

「復興作業は僕たちも同行する……根をあげないで頑張れ、異常者(ヒール)ハンター、スター・ルーキーズ」

 この順一からの励ましに、ミラールは少しばかり表情を明るくして応えた。

「……うん……勿論よ。私、最後まで頑張ってみるわ……ジュン」

 そんなミラールの返事を聞いて、順一は彼女達ルーキーズを引き連れて復興作業に向かう。

「ほら、行くよ」「待ってよぉ、ジュン~~ッ」

 順一は、いやスター・コマンドーは少しずつミラールを、スター・ルーキーズを受け入れつつあった。

 

 そして復興作業が一段落した後、聖龍隊本部の休憩室で同席した修司に、ミラールは順一と共に来て修司に文句を言った。

「もうさぁ~~~~総長がジュンの所に報告しに行ったっきり戻って来なかったから私、気が気じゃ無かったわよ!」

「? 俺はその後、定期検診を受けていたんだけど。ウツの具合を調べる為に……?? そんなに長く喋ってないぞ」

「だーーかーーらーーさああ、なんでそうなるのよおおっ。ジュンも一言言ってくんない!?」

 修司のマイペース振りにミラールが順一にも話を振ると、順一は平然とドリンクを飲みながら言った。

「……君らの後学の為に言っておくよミラール、ルーキーズ。総長は昔からこーーゆーー性格なんだ……」

「おい待てジュン、どーーゆーー意味だそれは」

「そのまんまの意味です……」

 

 こうして聖龍隊の活躍は続くのでした。

 

 

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