聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 聖龍隊から語られた、異常者討伐に対する聖龍隊の歴史。それは余りにも過激で、余りにも激烈な戦いの日々だった。
 そして同じく世界史にも記載されている記録として、聖龍隊が関わってきた異世界会合やオリンピックなどの事例も挙げられた。
 メカルスの意味深な発言に、グレイガー博士の真意、そして多くの二次元人を異常化させる精神浸透ウィルスの存在を知って、新世代型二次元人は改めて愕然とした。そして何ゆえ自分たち新世代型がウィルスに対抗できる肉体を持たせられたかを再認識した。
 二次元人と三次元人の親睦を深めるオリンピック開催にも、多くの人々が熱狂したと同時に革命軍士からの挑戦状に四苦八苦する修司の格闘の数々に奮い立つ新世代型たち。
 異世界会合では強敵の数々に国連軍の企みも絡まる中、マーメイドメロディーズや東京ミュウミュウズなどもHEADに昇格した経緯も知る事となる新世代型。
 そして2011年の震災では、祖国日本を思うあまりに力に渇望した修司が、容易く織田信長に憑依されてしまう展開も知って、ついにリベンジャーズであった六人が黒衣衆へと変貌した経緯が語られた。
 それは自業自得とはいえ、多くの民衆から非難と軽蔑で無暗な暴力を振るわれ、さらに聖龍隊の追撃で窮地に追い詰められた際に失った人間へ戻れる欲求が絶たれた事から、狂気の集団「黒衣衆」へと変貌したのだと初めて知った新世代型たちは、自分達の始祖小田原修司の暴虐に深い罪悪感を刻んだ。

 そして今回は、ミラールが再び語る自分達スター・ルーキーズの昔語り。
 それはまだミラール達が経験浅く、戦争という大舞台で初めて大敗を決した若輩者だった頃の物語。
 如何にしてミラール率いるスター・ルーキーズが一流の戦闘部隊へと成長したのか、当時の話が語られる。




現政奉還記 創生の章 昔語り スター・ルーキーズ:仲間への誓い

[幽けし信念]

 

 時は2011年、所は戦渦の中国大陸。

 何処とも知れぬ山奥の古道に、その者達の姿はあった。

 聖龍隊が新参者、ミラールが率いる敗走のスター・ルーキーズである。

 戦火を巻き起こした世への反逆者達を倒さんと、揚々と合戦に挑むものの、北朝鮮の残党軍を従える凶王ヤン・ミィチェンの俊敏で苛烈な斬撃は余りにも速く、中国・北朝鮮の国境にてあえなく玉砕。

 肩を寄せ合い必死に落ち延びる様は、皮肉な事に、この起こり得た戦争の中で如何に北朝鮮の残党軍が強いのかを表した普遍的な情景でしかなかった。

「先は風下……人も獣も通らない荒れ道……身を隠すには、もってこいね」

 敗走のルーキーズを指揮するミラールは、先の戦闘で負傷して意識低迷に陥った仲間達の項垂れる様子を見て悔やんだ。

「みんな……! ……もうちょっとだけ忍んで頂戴、この峠を抜けるまで……」

 

 古道を突き進むルーキーズの軍勢は、如何に消耗したか目に取るように解るほど疲労し切っていた。

 最初は過去に聖龍隊が打ち負かした北朝鮮の残党軍が相手と、高を括ったルーキーズだったが、ヤン・ミィチェンの凄まじい鬼気と剣術に翻弄され、手痛く大敗してしまった。

 古道を進むルーキーズの先頭を行くのは、舐めてヤン・ミィチェンに戦いを挑んだスター・ルーキーズ総部隊長のミラールだった。

 ミラールは敗走する皆を、配下の隊士達を引き連れて古道を歩むが、彼女の背後には先のヤン・ミィチェンとの戦闘で敗北し、負傷して意識を失った重傷の主力隊士が馬に乗せられて運ばれるのを時おり見据える。

「「「………………」」」

 ヤン・ミィチェンに身体を斬り付けられ、歩くのがやっとのアラジン/アリババ/モルジアナの三名。

「ツナ、目を覚まして……ツナ……」

 凶刃に敗れて意識を失い、馬に乗せられて運ばれる澤田綱吉を看病しつつ声を掛ける山本武たち。

「若、あなたはこんな所で逝く御方では無いはずですよ……どうか、どうか目を開けて……!」

 深い眠りに就く重傷の奴良リクオに、氷麗(つらら)たち従者や友が寄り添う。

「トリコさん、ココさん……サニーさん、ゼブラさん……」

 その屈強な肉体までも、ヤン・ミィチェンの凶刃によって深手を負わされたトリコ達グルメ四天王の四名の、傷付き意識を失う様を前に小松は嘆いた。

「虎徹さん、僕らを庇って刃に倒れるなんて……」

 仲間や娘を庇った為に、自分達よりも深く斬り付けられたワイルドタイガーの容態にバーナビーたちNEXT達は悲愴にくれるばかり。

「ナツ、エルザ、グレイ……一刻も早く、治療してあげるから辛抱して……」

 怪我を治療しようにも、機材や薬剤がない現状に励ましの声しか掛けられない現状にルーシィ・ハートフィリアやハッピーは意識の無い仲間達を気遣う事しかできなかった。

「くそ、ヤン・ミィチェンめ……今度会った時は必ず……! ……ッ」

「そう興奮しないで月光。傷口が開くわ……」

「月光様、どうか無理をなさらないで……」

 下腹部に受けた傷口を押さえながら逃避行する岩崎月光の肩を担ぎながら共に古道を進むエンゲキブとハチガヅキ。

「ヒーローマン、無事に帰れたらスグに修理してあげるからね……」

 ヤン・ミィチェンの凶刃は、強靭なボディを誇るロボット・ヒーローマンにも深く切り裂いた。これにより戦闘不能に陥ったヒーローマンをジョーイは抱えていた。

「革様……」「将人様……」

 凶王ヤン・ミィチェンに勇ましくも立ち向かってみたものの、その凶刃に返り討ちに遭い深手を負わされて意識不明の状態に陥った日ノ原革と門脇将人の両名を馬で移送する従者のコトハとミヤビ。

「六道君、しっかり……」「うっ……」「りんね様……」

 凶刃にかかり、深手を負った六道りんねと共に古道を歩む真宮桜と六文。

 一行の後ろで初めての戦争にすっかり怯えきってしまっている工藤タイキら【デジモンクロスウォーズ】の面々の姿も確認された。

 そして先頭を行くミラールの両脇には、軽傷ながらもヤン・ミィチェンに痛め付けられた葉月いずなと鹿嶋リンの姿が。

 全てが自分の決断と指示が招いた惨事。この事実にミラールは己の、何よりも自分達の力量を計り間違えた経緯に落胆していた。

 そんなミラールと負傷した仲間を気にして寄り添う軽傷の仲間たちの後ろからは、大敗して自信も戦意もほとんど失ってしまった聖龍隊士の姿もあった。

 隊士達は身も心も、すっかり痛め付けられて喪失状態で先頭を行くルーキーズに着いていくので精いっぱいだった。

 そんな一行を迎えるように、突如林の中から無数のカラスが飛び立った。

 消耗し切った隊士達は、飛び立つカラスの群れにすら怯えてしまう。そんな隊士達の意気消沈した姿を見て、ミラールは己の不甲斐無さを改めて痛感する。

 

 ミラールは再び、負傷し意識を失っている仲間達を見据えた。

「みんな……!」

 仲間をこんな無様な姿にしたのは、全て己の不甲斐無さ、失態が招いた事。ミラールは己の重責に苦悩する。

「微かに気配を感じるわ……嫌な山道ね」

 そんなミラール達が突き進む古道の山道は、微かに何かの気配があった。

「……いえ、澱んでいるのは私の心……なのかもしれないわ」

 ミラール率いるスター・ルーキーズは山道を抜ける事にした。

 いつ何処から敵対する戦力が襲撃してくるか分からない状況で、ミラール達は息を殺した。

 するとミラール達の目の前に、見た事のない軍勢が現れ、襲い掛かってきた。

「ああぁ、来た! 北の連中が来たぁーー!」

「北朝鮮……かつてアジアを震撼させた程の軍勢が、未だに根強く残っているとは」

 謎の軍勢に襲われるルーキーズ軍勢は北朝鮮の兵士が襲撃してきたのかと混乱する。その中でミラールはヤン・ミィチェンを育んだ北朝鮮の勢力が未だに残っている事実を再認識した。

「アニメタウンに戻りてぇ……俺、怖えんだよぉ……」

「ルーキーズだって辛いんだ……足は引けねえ!」

 そしてルーキーズに付き従い、同じく凶王の凶刃によって痛め付けられた隊士たちは己の中に犇く恐怖心に立ち向かいながら戦った。

「敵の力を読み損ねた……全ては必然だっていうの」

 霧の中での乱戦の最中、ミラールはヤン・ミィチェンの実力を読み損ねた失態を悔やむばかり。

「起きて命令して下せえ、頼んますよ若ァ……」

 青田坊は傷付き、意識を失っているリクオに涙ながらに呼びかけるものの、リクオの目が開く事はなかった。

「時が許すなら、薬の一つぐらい補給できるのに……」

 ミラールは負傷した仲間達につけられる傷薬の一つも調達できない現状に落胆する。

「みんな、どうか堪えて頂戴……今だけは……」

 今はどうにか現状をを堪えて、乗り越えるしか出来ない現実にミラールは奥歯を噛み締めた。

 すると今度は大軍勢が霧の中から現われ、ミラール達を急襲する。

「ひいーーッ、ききききき北朝鮮ッ!?」

「バカヤロ! ただの物取り……物取りだあぁ!」

 隊士達は急襲してくる謎の兵力に怯えて、すっかり戦意を失っていた。

「落ち着くのよ! 冷静に対処して、今は無闇に戦わず突破するのよッ!」

 ミラールは戦力が激しく消耗している現状で無闇に戦わずに、極力戦闘を避けて突破するよう皆に指示を飛ばす。

「ヤン・ミィチェン……このミラージュ・ガンが狙うべき首の一つは、どうやら貴方で最初らしいわ。待ってなさい、みんなの介抱が終わった暁には、その時こそ……」

 アジア大戦で最初に自分達を負かしたヤン・ミィチェンこそ、自分が狙う敵の一人だと認識するミラール。

「怒りを堪えるのよミラール……そうでなきゃ、みんなが死ぬわよ」

 ミラールは自分に言い聞かせた。敵に大敗した怒りを曝す前に、今は一刻も早く負傷した仲間達に介抱が先決だと自分に言い聞かせる。

 そうしてミラールたち敗退のルーキーズが霧の中を進行していると、深い霧の中から三人組の男たちが縦に組み合いながら出現した。

「我らに名前は無い……」

「我らに懺悔は無い……」

「故に……お前達にも何もない……そうか」

「……違うか」

「……殺れば分かる」

 その三人は、互いに神妙な台詞を呟くと一気に跳躍して、六人の前に立ちはだかった。

「時はあるのだ。陽は既に落ちている」

 

必殺非業 三好三人衆 登場

 

「! 貴方達は、一体……!?」

 突然深い霧の中から現れた三好三人衆を初めて見るミラールは一驚した。

 するとお互い初見である境遇に、三人組が物申した。

「……初めて見た顔だな」

「……縁があると見える」

「……互いに好ましくはないだろうが」

 ミラールたち戦闘可能なルーキーズは、この三人組と戦闘を始めた。

「貴方達を撃ち抜いて、みんなの無難を得る……正答はそれだけよ。惑わされないわ」

 視界の悪い霧の中で自分が執るべき行為を迷わないと説くミラールに、三人組は言い返した。

「本当にそうか?」

「それが正解か?」

「……まあ、我らにはどうでもいい」

 何処か真意を突いてくる三人組の言動に、ミラール達は若干動揺しながらも懸命に抗戦した。

「私達が立ち続ける理由……所詮は貴方達には解らないでしょうね。だって……貴方達には、それが欠けているのが目に見えるもん!」

 傷付いた仲間を護る為に戦う意志を示すミラールの発言にも、三人組は動じず冷徹に言付けする。

「健在か? ……ならば傷付け」

「傷付いたか? ……ならば死ね」

「死んだか? ……ならば、来世に蘇れ」

 不穏な言葉を吐き続ける三人組に、ミラール達は心中を乱される気持ちで一杯になる。

 

 謎の三人組との激戦を、辛くも突破したミラール達は謎の軍勢を打破して、何やら火薬の匂いが漂う山道の奥へと進む事に。

 そんなミラールたち、戦闘可能なルーキーズに三人組はこう言い残して消えた。

「一度負ければ、奪われる……」

「二度負ければ、潰される……」

「三度負ければ嘲笑え……それが戦だ」

『…………………………………………』

 本当の戦の真理を唱える三人組の言葉に、ミラール達は言葉を失うほど真理を突かれて愕然とした。

 そんな真理を説かれて愕然とするミラールは、苦渋と後悔の念が積もる。

「解ってる……私の責だと解っている。過ちは二度と繰り返さない……!」

 ミラールは、己の未熟を痛烈に感じ入った。

 

 そんなミラール達は、ようやく霧の中から抜け出した。

 するとミラール達の視線の先に、一人の男が立っているのが目視された。

 その男は、顔に梟の仮面を着けて、一人黙々と己が手にする宝剣を眺めていた。

 この男から感じられる只ならぬ危険を、ミラールは瞬時に感じ取り、銃を向けた。

「あなたは誰?」

 仮面の男に銃口を向けて何者かを訊ねるミラール。

 すると男は宝剣を眺めるのをやめて、ミラール達の方に視線を向けると彼女達に話し掛け始めた。

「君らは……ああ、聖龍隊の新参者だね。それも北朝鮮の残党に大敗したと見える、ね……」

「て、テメェ!」

 梟の仮面の男の発言にルーキーズ隊士が睨みを利かせると、男は話し出した。

「まあ、私が差し向けた部隊の襲撃に遭いながらも、こうして命辛々落ち延びた所を拝見すると……まだまだ戦えるだけの戦力は残っていると見えた」

「え! それじゃ……さっき私たちを襲撃した軍勢は、あなたの……!?」

 男の発言に鹿島リンが一驚する。

「私達への追い打ちのつもり!? それともタダの追いはぎ? どちらにしても、今は貴方の様な輩と関わっている暇は無いわ!」

 ミラールは男に銃を向けたまま問い詰めるが、男は梟の様に研ぎ澄まされた瞳でミラール達を見据えながら述べた。

「君達とは初めて顔を合わせるが……正直、驚いたよ。聖龍隊の新参者である君らが、その様な()で私の前に姿を現すとは……」

「何ですって!?」

 男の発言にミラールが反応すると、男は己が発する言葉の真意を説く。

「そう、慄き不安に揺れる未熟者という()だ」

「! ……あなた!」

 自分達が未熟者だという事実を指摘されて騒然とするミラール。

 男は更にミラール達の事実を突きつける形で述べ続ける。

「人の根元に眠るものもまた、抉り出されていくのだろう……まあ、そんな気がするだけだ。まずは目の前のモノを改めるべきだろうな」

 男は手にしている宝剣を突き向けて、ミラール達の背後で馬に乗せられて移送される重傷した仲間達を指し示した。

「なあ……英雄の武具よ」

 男の言動に、ミラールは男が真に狙っているのは自分達が使用・所持している貴重な武具などのアイテムである事を察し、男と対峙した。

 

「君らの在処は、眠りし戦士の元ではないはずだ……」

 スター・ルーキーズが所持する武具やアイテムは、敗れ去り意識を失った者の許ではないと説く男の言動にミラールが言い返す。

「その問答、ルーキーズが総部隊長として答えるわ……あなたの邪気に染まる武具など、聖龍隊にはないわ!」

 しかし男は、このミラールの返答を聞いて唖然とした態度で問うた。

「何故、武具を差し出して命乞いをしない? 仲間の身の為ならば、ソレらは棄てるべきモノだ」

 傷付き、まともに戦う事もできない仲間の為なら、武具などは棄てて命欲しさに命乞いするべきだと説く男の言動の数々を聞いて、ミラールは表情を険しくさせながら銃を撃つ。

「不思議だわ。あなたと語る度に、私の中から大切な何かが消える……」

 銃撃を宝剣で弾きながら、優雅に右へ左へと回避していく梟の仮面の男は、そんなミラール達の攻撃を嘲笑った。

「頭を垂れず、逃げも隠れも出来ぬまま、か……初めて知ったよ、君らが罪を重ねるのが趣向とは!」

「!! ……あんたという奴はッ……!」

「テメェ……テメェという男はッ……!」

 抗戦するミラール達の言動を嘲笑する男に、ミラール達は腹の底から怒りが湧き上がる。

 しかし男は、特にミラールに向けて嘲笑の言動を吐きかける。

「諸君らが斬り捨てたいのは己自身だ……そうだろう」

「…………………………」

 未熟な自分達の中身の無い自信、それごと己を斬り捨てたいと切実に想っていたミラールたち現存している隊士の心情を突き動かす男の言動に何も言い返せないミラール達。

「諸君らは勝負が何なのかを知っている……しかし真の戦には無知だったらしい」

 過去に多くの戦闘を経験してきたミラール達。だが本当の戦争に対しては無知であり、その無知で多くの仲間達を傷付けた現実を突き付ける梟の仮面の男。

「……あなたの戯言に理を感じるなんてね……!」

 ミラール自身も、己の未熟さゆえに多くの仲間達に重傷を負わせた経緯に対して後悔していた。

 そんなミラールに男は告げた。

「統率の過ちにより、主喪いし名具の数々……? 君ら配下の命を用いるにしては少々つまらないな」

 統率者であるミラールの経験不足と未熟さ故に起きた過ちで、主を失った名具の数々は配下の命だけでは軽々しいと告げる男。

『…………………………』

 そんな男の言動に、ミラール達は何も言い返せず、ひたすらに抗戦を続ける一方。

「いや、先だっても一つ取り損ねたばかりでね」

 スター・ルーキーズの名具を欲する男の不敵な笑みと言動に、ミラール達の神経は逆撫でされる一方。

 するとミラール達と交戦を続けていた男は、彼女達を軽視しながら告げるのだった。

「……今は、敗者に落ちぶれた輩の武具を賜る気分ではないな。その武具の数々には違う逸話を期待しておくよ」

 そう言い残すと、梟の仮面の男は霧の中にその姿を消して去っていった。

 

 最後は己の未熟と経験不足から落ちぶれた敗者として嘲られたミラールは、己自身に深く絶望した。

 そんなミラールと同様に、強力な戦力である仲間達を意識不明までに陥れた己の未熟さを痛感していくルーキーズ隊士たち。

 

 ミラール達スター・ルーキーズの面々が自分自身に落胆しているその時、梟の仮面の男は森の奥で自分が指揮する部隊に語らっていた。

「……なぁに、彼女等にはもっと別の逸話を期待している。そう、このアジアの乱世を掻い潜り、一皮も二皮も剥けて成長した……その暁に、な」

 そう言って男は自分の顔に装着していた素顔を隠す為の梟の仮面を外した。

 梟の仮面を外した男、梟雄永皇輪(エイ コウリン)は無様に逃げ延び続けるルーキーズをほくそ笑んで。

 

 

 

[北の末路]

 

 梟の仮面の男の嘲りを胸に、屈辱の退却行を続けるスター・ルーキーズ。

 そんな一行の耳に、思いもかけぬ一報が届く。

「ヤン・ミィチェン率いる北朝鮮の残党軍、スター・コマンドー率いる聖龍隊の軍勢に一時退却――」

 敵の追撃はもはや無いと確信させるだけの吉報に、胸を撫で下ろす一行だったが、この安堵による気の緩みが災いした。

 この時、ミラールは気が付いていなかった。己が内に宿す、積み重ねてきた鋭敏なる直感と理が、相次ぐ苦境と疲弊の末に麻痺しきっている事に……。

「ごさんの霧が散った今、わたくしを阻むものはない。いざ、モンゴルへ! 横たわりしもの、全て凍て付かせよ!」

「ロシアの軍神……モンゴルの虎を求めて降りてきたのね……!」

 ミラール達スター・ルーキーズの軍勢は、いつの間にかロシア領土へと足を踏み入れてしまった。

 乱世で混沌渦巻く現状の中、ミラール達を見逃すほど軍神は甘くなかった。

 

 そして晴れ晴れとした天気の中、スター・ルーキーズはロシアの領土である凍土でロシア軍と交戦する以外、選択肢はなかった。

 後にこれをロシア凍土戦と呼ばれる事に。

「虎よ、あなた様の武運を祈ります。真なる戦の地にて、巡り会いましょう」

 ロシアの軍神と呼ばれるロシア将軍ケンノフスキーは、己が好敵手であるモンゴルの虎モウ・コダイと対戦すべく降ろうとしている真っ最中であった。

 しかし、その前に聖龍隊スター・ルーキーズが領土内を侵攻してしまったが故に戦闘が始まってしまった。

 ルーキーズは、どうにかロシア軍の猛攻を掻い潜り、ロシア凍土を突破する様に心がけた。

 雪が犇く大地を踏み締めて、ミラール達は凍土を乗り越えようと抗戦を始めた。

「無敵の俺が立つ限り、ロシア軍は絶対安泰!」

 何処からか男の叫び声が聞こえる中、ミラール達はそれを気にする余裕すらなく進撃を続ける。

「いざや、細りし流星に引導を!」

「弱った敵が相手なら、俺は無敵!」

 ケンノフスキーがルーキーズに引導を渡すよう兵士達に告げると、男が叫び声を挙げる。

「おい……これまでの小競り合いは遊びかよ!?」

「きっとナメられてたのさ……畜生ッ!」

 そんなロシア軍との戦闘の最中、すっかり自信喪失してしまった聖龍隊士は悔し涙を流していた。

 迫り来るロシア兵を突破して、何とか退路を確保しようとするミラール達の目の前に、他のロシア兵とは一線を敷く謎のロシア兵が出現した。

「俺は無敵の主人公! 一年かけて名を挙げた!」

 そう叫んで刀を抜刀しようにも、抜いた瞬間に力余って刀を投げ飛ばしてしまうロシア兵。彼こそ

 

絶対無敵 ナオエフ・カネノフ 登場

 

「何はともかく、俺は無敵!」

 絶対無敵と言い張るカネノフは、颯爽とミラールたち戦場で活躍するルーキーズ隊士に挑みかかった。

 無茶苦茶に刃を振り回すカネノフの猛攻に、困惑しながらもミラール達はこれを一瞬で撃破した。

「うわあああ! 主人公なのにやられたああ!」

 攻撃を受けて、ナオエフ・カネノフは吹っ飛んでしまった。

 しかしロシア軍の武将ナオエフ・カネノフを倒したのを切っ掛けに、ロシア軍は本格的に進攻を開始した。

「この凍土はわたくしの心、頑なに人を拒む。さあ……お前もかえりなさい」

 ロシア将軍ケンノフスキーが長刀を居抜いて道を指し示すと突如猛吹雪が吹き荒れ、川は凍て付き、その上をロシア兵が出撃する。

 ロシア軍が本格出撃してくるのに、ミラールが軍神に問い詰めた。

「軍神! こんな吹雪の中で私達と戦って何の意味があるの!?」

 更にミラールはケンノフスキーに険しい面持ちで訴える。

「マトモに戦えない輩をいたぶる……それがロシア軍のやり口なの!?」

 このミラールの訴えを聞いて、ケンノフスキーの側役であるくノ一は感情を昂らせる。

「あいつら……ケンノフスキー様のお心も知らず……!」

 するとそんなくノ一にケンノフスキーが優しく言葉を掛ける。

「よいのです、あれもまたしかり……ともを守れなかった痛手には変わりありません」

 ケンノフスキーは、友である仲間を守れず、傷つけてしまった経緯から、心にゆとりが無い故に相手を罵る事しか出来ないのだとルーキーズの現状を説く。

 一方のミラール達は、懸命に吹雪の中でロシア軍と抗戦を続けていた。

「暴れ回ってる訳じゃねえ……あの動きは……」

 一刻も早くロシア軍との戦闘を終わらせようと銃を連射していくミラールを見て、隊士はその動きに無駄が無い事を悟る。

「怪我人に毛布を! 体が冷えたら終わりよ!」

「へいっ、俺達気合い入れて暖めます!」

 だが戦闘だけでなく、ミラールは馬に乗せて運んでいる重傷の仲間達への気遣いも忘れず、隊士に怪我人の体が冷えない様にと気を配る。

 しかしケンノフスキーによって起こされた吹雪は容赦なくルーキーズの体温を奪う。

「氷の判断ね……この地もあなたも立派な冬将軍よ」

 氷の如く冷たく、そして的確な判断を下すケンノフスキーの指示の数々に、ミラールは軍神の判断力を内心認めざる得なかった。

 すると此処で軍神の懐刀である側近のくノ一も、兵士に指示を告げる。

「あの方の剣を焦がしてなるものか! 総員、ルーキーズを取り囲めっ」

 くノ一からの指示を受けて、ロシア兵はミラール達を包囲する。が、ミラール達は吹雪の中の乱闘でどうにか突破して先へと進めた。

「なんという高みに上り詰めているのだ……」

 ロシア兵は、消耗しマトモな戦力が整っていない筈のルーキーズの反撃に驚かされた。

「寒くて動けねえ……俺を置いてってくれ……」

「立つんだ! 眠れば帰れる国にも、帰れなくなる……ッ!」

 しかし吹雪によって体力が消耗した隊士は身動きできなくなり、その場へと蹲ってしまう。そんな隊士をルーキーズは必死に呼びかけ、吹雪の中で眠らない様にする。

「つ、氷麗(つらら)さん……今まで、ありがとう……」

「だめ! 寝ちゃいけないわ……しっかりしてよ……!」

 しかし隊士の多くが倒れ、力尽きていく現状に雪女氷麗(つらら)も悲観してしまう。

 続々と隊士たちが吹雪の中で倒れていく現状で、ミラールは足を止めずに善戦して一刻も早い戦闘からの離脱を図る。

「怯えるな、単にがむしゃらなだけだ」

 そんなミラール達の善戦を、くノ一は我武者羅に突き進んでいるだけだと兵士に告げる。

 くノ一の指示ばかりでなく、ケンノフスキーも兵士達の士気を上げるかの如く指示を出す。

「目を見張る四季のように、あでやかにゆけ!」

 ロシア兵はケンノフスキーの言葉を賜り、士気を上げてルーキーズに襲い掛かる。

 乱世であるアジアの状況下では、何処の誰が、何処の国がいつ敵に回るか解らない現状。その前に危険な因子は全て絶やそうという軍神の考えだった。

 そんな冷徹な考えの下、軍を指揮するケンノフスキーの気苦労を少しでも取り除こうと側近のくノ一がスター・ルーキーズの前に出撃した。

「貴様達には負けない、勝って戻るんだ……!」

 吹雪の中、ケンノフスキーに絶対な忠誠心を持つくノ一がくないを携えて出撃する。

「あのお方の日々を壊す者め……!」

 くノ一はスター・ルーキーズを、穏やかな日々を過ごしていたケンノフスキーの安寧を壊した者として険しい目付きで威圧してきた

「出ていけ! ケンノフスキー様が愛する雪景色に、これ以上踏み入るな!」

 その美しき可憐な絶世の肉体美を誇るくノ一は、過去にケンノフスキー暗殺から一転し、ケンノフスキーに心酔した忍かすがだった。

 

月下為忍 かすが 参上

 

 そしてかすがが戦場に現われたと同時に、彼女が統率するロシア忍部隊も姿を現し、ルーキーズに襲撃する。

 だが、かすがは戦闘を仕掛けるなりミラールに厳つい口調で訴えてきた。

「なぜ怪我人を連れて迷い込んだんだ! 迂回なり街で治療なり、手はあっただろう!」

 かすがからの言葉に、ミラールは彼女が投げ付けてくるくないを銃で弾きながら悔やんだ。かすがの言う事が尤もだったからだ。

 更にかすがはミラールに冷徹ながらに告げる。

「戦場での功績だけが忠義だと思ったのか?」

「……以前の私は、そう思っていたのでしょう」

 ミラールはかすがからの指摘に項垂れるばかり。

 すると今度はミラールの方からかすがに問答が繰り出された。

「貴女は歓迎するの、冷たき軍神の出陣を」

「全てはあの方のお幸せの為だ……! 私個人の意見など関係ない!」

 しかしかすがの方も、あくまで配下の忍として忠誠を尽くしているだけで自分個人の意見や考えは関係ないと説き返す。

 ミラールの銃撃、かすがのくないという吹雪の中で激しく火花が散る戦況の中、両者は互いに一歩も退かない。

「もう言い合いはやめましょう、仲間の傷に響くわ……」

「ああ……争うのは達者な人間だけでいい」

 と、此処でミラールとかすがは互いに言い争いをやめて、お互いの戦闘に集中する事に同意した。

 ミラールの銃撃や砲撃が吹雪の中で火を吹く中、彼女はかすがに言い放つ。

「仲間は護る……例え貴女を人質にしてもね!」

「誰が捕まってなどやるものか!」

 人質にされて堪るかと、かすがが言い返す。

「眼を閉じろ……その足掻きを終わらせてやる!」

 かすがは足掻き消耗しつつあるミラール達ルーキーズを楽に逝かせようとトドメを刺そうとした。

 が、其処に葉月いずなと鹿嶋リンがミラールに加勢して、何とかかすがの攻撃を防ぎ切れた。

 すると其処に、一人のロシア兵が急ぐ様子で駆け付けては、かすがに報告しに来た。

「かすが様、ロシア首相より火急の密書が……」

「何!? ……解った、確認する!」

 かすがは報告しに来た兵士の連絡を確認する為、一時戦場から離脱した。

 この機会を逃しては、戦場であるロシア凍土を突破するのは不可能と察したミラールは、仲間達に戦場からの離脱を急がせる。

 そして駆け足で凍土を駆け抜ける一行を見て、敗れ去ったロシア兵が呟いた。

「愚かな……お前達は禁足地に踏み入ったのだ」

 そんなロシア兵の言葉を聞いてか聞かずか、ミラール達は進攻を続ける。

 するとミラール達の目の前に、巨大な氷の階段がその全貌を現した。

 見上げてみると、階段の上には雪の様に白い羽織と、水色の防寒着を着衣した軍神の姿が。

 軍神は氷の階段を、一歩一歩と踏み締め降りて前進しようとするスター・ルーキーズの前に立ちはだかる。

「魔の者は消え、再び鬼の道が続くと思いきや……その覇道を阻みし新たなる芽吹きが咲き誇り、わたくし達の時は満ちた」

 日本で復活した織田信長の脅威が消え、鬼神・小田原修司の覇道が続くと思われた矢先、その覇道を阻む新たな若い芽吹きがアジアという大陸に咲き誇った事で、自分と好敵手の決戦の時が訪れたと告げる軍神。

「しるべ無し道をゆき……いざ、しるべたるあなた様の許へ」

 導のない道を進み、導であり目標でもある好敵手モウ・コダイの許へと進軍すべきロシア軍。

「勝どきの橋を渡るのは、ただ一人……」

 勝利を得られるのは、ただ一人という現実。

「それは、わたくしのみ……!」

 そう語る軍神からは、更に凍て付かせる吹雪が吹き荒ぶ。

 凍土戦場にケンノフスキーが登場した事により、ミラール達は軍神と戦わざるを得なくなった。

「戦えぬ者を見放さない……ルーキーズ残党、それがお前達の限界です」

 軍神は戦えなくなった仲間や隊士を見放せないルーキーズに、その実力の限界を冷徹に告げる。

「とらよ、そちらの地にてしばしお待ちを」

 軍神は得物である長刀を抜刀すると、凍て付く斬撃をミラール達に向けて放つ。

 凍て付く思いで斬撃を受け止めたミラール達は、ケンノフスキーと抗戦し出した。

「一つ訊ねるわ……弱りきった相手に情けをかける心意気は、あなたには無いのかしら」

「それが戦のために捧ぐべきものなれば」

 ミラールの問い掛けに、軍神は冷たく返答する。

 素早い抜刀術で長刀を居抜く軍神の猛攻に抵抗しようと、ミラール達は果敢にケンノフスキーに攻める。

 が、軍神はそのずば抜けた抜刀術で長刀を居抜いて一瞬の内に自分に群がるルーキーズの面々を切り払う。

「うわっ」

 軍神の抜刀術に目も追いつかない一同は、瞬く間に軍神に追い詰められてしまう。

「軍神の掌は、血の通ったものと思っていたのだけど……」

「ゆえに、傷ついた敵に手出しはせぬと? そのような楽観は戦にふさわしくない」

 軍神の剣術に敗れて雪の上に倒れるミラールの疑問に、軍神は楽観的感情は戦場に相応しくないと真意をつく。

 そして朗らかに歩みながら、軍神は更に説き明かす。

「兵のため、望みのために最善をうつ。それが出来ぬならば率いる資格はありません」

「結局、一番の半端者は私自身か……」

「このわたくしを討ち、覆せばよいこと」

 自分に付き従う兵士の為ならば最善の策を立てる、それが出来ないならば軍を率いる資格はないと告げる軍神の言葉にミラールが打ちひしがれると、軍神は自分を倒し覆せば良いと告げた。

 疲弊し切った肉体、極度に冷やされて落ちた体力、何よりも未熟な半端者である自分達には本当の戦争はまだまだ早かったのかと打ちひしがれるミラール達ルーキーズ一同。

 そんなルーキーズに対峙する軍神が、最後は楽に逝かせてやるのが戦場での本当の温情だとしてルーキーズの面々にトドメを刺そうとした、その時。

「ま、待ってください!!」

 一人の少年が、軍神ケンノフスキーの前に突如として飛び出して、軍神を制止する。

「こ……小松……」

 その少年を見てミラールは呟いた。少年はスター・ルーキーズに同行する非戦闘員の小松であった。

 小松はケンノフスキーの前に飛び出して、両腕を大きく広げて軍神の刃に倒れた仲間達を身を呈して庇った。

「……少年よ、これは真剣勝負を超えた戦。邪魔立てすると、如何にそなたが非戦闘員であろうと容赦なく斬り捨てますよ」

「わ、解ってます! これは戦争だって……あなたの言うように、感情的に動いてたら斬られるのは解ってます! ……で、でも……」

 冷徹な眼差しを向けてくる軍神に、小松は涙ながらに訴えかける。

「ぼ、僕たちは……命を賭けて、この地に……戦渦のアジアにやってきたんです! 多くの人を、自分なりに救う為に……!」

「………………」

 小松の話に、軍神は黙って耳を傾ける。

「みんな……みんな、遊び半分で戦っている訳じゃない! 誰もが自分の命を賭けて、戦場であるこの地に赴いたんだ! それは調理人で非戦闘員の僕でも同じだ! みんなが命を賭けてトリコさんを……傷付いた多くの仲間を助けようと必死になって戦っている!」

 真剣な小松の熱弁を、周辺で倒れ込んでいるスター・ルーキーズの面々も聞き及んだ。

「僕だって……僕だって、トリコさんだけじゃない! たくさんの友達を、仲間を助けたいんだ! 僕だって命を賭けて此処にいるんだ! みんなは……仲間は死なせません! いや、死なせない!!」

「小松……!」

 小松が発した力強い言動を間近で聞いて、ミラール達は衝撃を受けた。

 だが、この小松の力説を軍神ケンノフスキーは冷徹に受け流した。

「……だから、なんなのです? 未熟なる者、戦で敗れ去った者が戦地で命を落とすのは自然な事……傷付き、倒れた戦力である同胞を護り切れなかった積も、全てはあなた達自身にあるのです」

「!」

 涙ながらに熱弁した小松の力説を聞いても尚、ケンノフスキーの氷の如き心は溶ける事は無かった。

 そしてケンノフスキーは冷たき感情の下、目の前に立ち塞がった小松に斬りかかった。

「さらば!」「!!」

 ケンノフスキーの抜刀する構えを目前にして、小松は声も出せなかった。

「小松!!」

 ミラールが小松の名を叫び、手を伸ばす一方で刃は確実に小松へと振り払われた。

 誰もが小松が斬られるという最悪の現状を目の当たりにすると思った、次の瞬間だった。

「ケンノフスキー様! お待ちをっ」

「ケンノフスキー、待つんだ!」

 ケンノフスキーを制止する声が二つ。ケンノフスキーはあと数センチで刃を小松の首に斬り込もうとしていたのを寸前のところで止めて声のする方へ視線を向けた。

 視線の先に居たのは、ケンノフスキーの側近であるくノ一かずがと、ロシア政府の高官だった。

 二人はケンノフスキーの許まで駆け寄ると、かすがが跪いてケンノフスキーに報告した。

「どうしたのです?」

「聖龍隊と、ロシアの間に協定が……」

「? 協定……?」

 かすがからの報告に、ケンノフスキーが見据えていると同伴してきた高官も訳を話し始めた。

「け、ケンノフスキーよ……ロシアは正式に、聖龍隊と同盟を結んだ。彼らと、彼女達と戦う必要性はないんだ……」

 かすがとロシア高官からの報告を受けて、ケンノフスキーは長刀を鞘に納めると小松やミラール達に告げた。

「……運がよかったですね、新星たちよ」

 そう告げると、軍神は自らの威圧で起こした吹雪の中を歩き出し、かすがとロシア高官と共に吹雪の中にその姿を消した。

 軍神の撤退により、自分達ルーキーズは救われたと一気に全身の力が抜けてしまうミラール。

 あと一歩遅ければ、小松も他のルーキーズも冷徹に斬り捨てられていただろうとミラールだけでなくその場の誰もが思った。

「軍神……」

 吹雪の中を立ち去っていく軍神の背を、ミラールは険しい面持ちで見据えた。

 と、その時。軍神に寸前の所まで斬り込まれそうになっていた小松が、白目を向けて後ろめりに倒れ込んでしまった。

「こ、小松!」「小松!?」

 仲間の誰もが慌てて小松に駆け寄るが、幸いな事に小松はただ気を失っていただけだった。

 こうして辛うじてロシア軍との交戦を掻い潜ったミラール率いるスター・ルーキーズは、聖龍隊が制圧して得た安息地へと赴く事ができた。

 だが結局の所、自分達を救ったのは技量でも何でもない。軍神の仰るとおりタダの運である。この事態にミラールは益々、自分達の未熟さを痛感せざるを得なかった。

 あのヤン・ミィチェンに挑んだ折も、当初は完全にミィチェンを大した驚異ではないと捉えて半端な覚悟で挑んだのが元の始まりであった事実にミラールは己の不甲斐なさを改めて痛感した。

 

 

 

[昇る明星]

 

 敗退・屈辱・未熟、そして軍神からの憐みに失意の底に叩き付けられたルーキーズの影が安息地をも包んだのか……館に辿り着いても五日・十日と過ぎてもなお、ルーキーズの主力隊士が目覚める兆しは無かった。

 そんな日々を一変させたのは、ある日ルーキーズの元に届いた聖龍隊本隊からの命令書だった。

 書状の内容は、北朝鮮の残党軍ヤン・ミィチェン率いる軍隊に深い痛手を負わせられたルーキーズに対する「戦力外通告」だった。これによりルーキーズは本国であるアニメタウンに帰還せよとの命令が下ったのだ。

 この命令に従えば、自分達は敗北を期したまま撤退するという汚名を背負わなければならない。

 しかし、この命令に対して今のルーキーズには打てる手立てなど何一つなかった。

 そんな現状の中で、ルーキーズの現状を視るために村田順一率いるスター・コマンドーの軍勢が視察に訪れるという。

 この最悪の窮状を前に、ミラールたち残されたルーキーズの面々は己が心に問うた。

 今、自分達に出来得る事は何なのか――と。

 

「一度敗北した部隊は切り捨てるつもりなの、本隊は!? ……いえ、落ち着くのよ……あの軍神のように氷の様な……そう、冷静な判断を下さないと」

 ミラールは考えに考えた。己が、何よりも自分達が取るべき行いは如何に為すべきかを。

「私達が為すべき事は、黙って命令に従う事? いえ、違うわ……!」

 考えに考えたミラールは決断した。己が、そして自分達が何をすべきかを。

 その決意を未だ床に臥す仲間たちに伝令しようと、彼らが眠る寝室へと足を運んだ。

「みんな……みんなには、また謝らなきゃならないわ」

 ミラールは、布団の中で未だに目を覚まさない仲間達に心中を滾る悔しさを噛み締めて伝えた。

「私は……まだ、まだ本当の意味で……真の戦とは、戦争とは何なのかを知らなかった! いつも異常者(ヒール)を倒す事ばかり考えて、味方を生かす戦い方を学ぼうとはしなかった! 勝利を得る為の戦いを怠った……」

 更にミラールは、ヤン・ミィチェンに敗北する前まで抱いていた心境を語った。

「私の目は……いつの間にか、絵空事の理想しか捉えていなかった」

 そしてミラールは、未だ目覚めない仲間達に問うた。

「みんなが未だに目覚めないのは……私が負わせた戦いの重みに耐え兼ねなかったから?」

 未熟者の自分が負わせてしまった戦の重責に耐え切れないが為に、未だ目を覚まさず深い眠りに就いているのかと自問自答するミラール。

「だからこそ……みんなには其処で見届けてほしい。このルーキーズが見せる、明星の戦って奴を!」

 ミラールたち戦闘可能なルーキーズは外に飛び出して、既に安息所を包囲する勢いで訪れている村田順一の軍勢を見回そうとする。

 しかし、その前に彼女達の前に飛び込んできたのは、ここまでの厳しい道中で倒れ、息を引き取った多くの聖龍隊士達の遺品であり墓標の代わりに地面に突き刺さっている無数の日本刀であった。

 目の前に広がる、大地に突き刺さる日本刀を前にミラールは口元を歪ませて悔しがる。

「ッ………………!」

 自分の未熟が、経験不足が仲間である隊士の多くを死に至らしめた現実を直視するミラール達。

 と、ここでミラールは、アジア出撃前に総長から予め決める様に言い付けられていた、自分達を識別する為の意志と信念を表した四字熟語を見る。

煙新照星(えんしんしょうせい)……前を曇らせる煙の中でも輝き続ける新星であれ……このアジア大戦の前に皆で決めた決意よね」

 視界を曇らせる煙の中でも輝き続ける新星で在り続ける事を、決意した四字熟語を皆で見据えて、ミラール達は今自分達に迫る窮地と真正面から立ち向かう決意を固めた。 

「その為に……私達は信念という名の刃を……銃を……戦意を揮う!!」

 そう叫んだ次の瞬間、ミラールたち戦闘可能なルーキーズは、床に臥せている仲間の分まで本気で戦う決意を固めて出撃。

 そこに大軍を率いて視察に来た村田順一率いるスター・コマンドーが呼びかけた。

「こちら聖龍隊スター・コマンドーが総部隊長、村田順一だッ! ルーキーズ、如何にして今を過ごしているか君らを視察に参った次第!」

 腕を組み、今や武力を捨てて己の拳のみで戦う決意をした順一の呼びかけに、ミラール達は強く言い返した。

「私達を国に帰したければ、力尽くで帰してみなさい!」

「ミラール、みんな……一体どうしたんだ?」

 仲間でありながら、激しい敵意を向けて大軍勢相手に挑んでくるルーキーズを視認し、困惑する順一。

 この時のスター・ルーキーズは、まだ本国に帰還される必要も無いほど、自分達はまだまだ戦えるという意志を村田順一に見せ付ける為に出撃したのだ。

 誰よりも戦前に向かうミラールは、自分達の様子を探りに来た村田順一の真意を探る為にも行動に移したのだ。

 ルーキーズの並々ならぬ戦意と若さゆえの熱気を受けて、村田順一は彼女達の覚悟を受け入れた。

「流石は聖龍隊の新たなる勇士、どんな時でも牙は抜かないか。解った! 君らの意地と信念、心行くまで視させてもらおう!」

 すると村田順一はルーキーズが寝床に使ってる安息所を包囲する軍勢に反撃命令を下して、夜中の演習戦を開幕させた。

 この順一の開幕の合図を切っ掛けに、上空で待機していた平賀才人が操縦する零戦型巨大移送空挺スター・シップが底部に備え付けていた兵舎を地上に投下した。

 投下された兵舎からは無数のスター・コマンドーに属する隊士が飛び出てきた。

 スター・シップが上空より兵舎を投下して、戦場の兵力を増大させようと仕掛けた策に、ミラール達は動揺する事もなく的確に相手の隊士を気絶させる程度で済ませて倒していく。

「いい、みんな! 悔いの無いよう自分に問い質すの! 自分だけの戦い、果たすべき何かの正体を……」

「そんなのハナから決まってますよ、ミラール総部隊長!」

「俺たち、最初っからミラール率いるスター・ルーキーズに命賭けるって決めているんス!」

「演習とはいえ、この戦い……負けられないぜ!」

 ミラールからの呼びかけに、共に戦うルーキーズ側の隊士達は挙ってミラール達と戦い抜くと宣言してくれた。

 味方隊士の返答にミラール達は密かに喜び、腕を揮ってコマンドー側の隊士たちを迎撃していく。

 と、そこにスター・シップが再来し、戦場に兵舎を投下して戦力を増大させる。

「凄まじい輸送力! 大空を自由自在に!」

 人員が大勢乗り込んだ兵舎を容易く移送して飛行できるスター・シップの凄さに感銘を受けるコマンドー側の隊士。

 一方のミラール達は銃撃など、自分が得意とする戦術で思うがままに戦場を跋扈していた。

「今の私たちに出来るのは……我武者羅でも良いから戦場を駆け抜けること!」

 そんな一心不乱に戦場を駆け巡るミラール達の勇姿を遠くから窺って、順一は改めて彼女達とヤン・ミィチェンの戦いについて考えさせられた。

「ミィチェンとルーキーズ……激しい戦闘だったんだろうな」

「………………………」

 順一が初見で会ったばかりのヤン・ミィチェン相手に深い繋がりを感じ取って、そのミィチェンとスター・ルーキーズの戦いが如何に激戦だったのか思い耽るのを目の当たりにして、ハイパー・ブロッサムや音無小夜たちスター・コマンドーの仲間は黙然と順一を見据える。

 その一方で順一は、戦場で活躍する自分達に付き従ってくれている隊士達を見て表情を溌剌とさせる。

「我が師・小田原修司の背に見出した、力強さと温もり……そう、これが僕が受け継いだものの姿なんだ!」

 ミラール達ルーキーズが激戦の末、多くの隊士たちと共に戦況を突破していく中、順一は彼女達を温かく見守っていた。

「目を逸らしはしない……それは赦されざる罪だ」

 仲間が戦い、仲間が傷付く、そんな現状から目を逸らしてはならないと力説する順一。

 次第にルーキーズは戦前を次々と突破して順一達が待ち受けているであろう地へと進軍していた。

 そんな着々と進軍していくルーキーズを見て、順一は仲間達に力強く告げた。

「ここ一番は僕に任せてほしい……そうしてくれ」

「ああ、分かった。ジュン、お前の好きなように戦えばいいさ」

 順一の決断に反対せず、好きなように進めればいいと唱えるユウ。

 一方でルーキーズに属する隊士は、ここまでの大軍の指揮を執れる順一の人望の厚さに驚愕していた。

「比喩ではない、あの掌は十万をも超える!」

 そんな数で攻めるスター・コマンドーに対して、ミラール率いるスター・ルーキーズは順一に訴え出た。

「私達は確かに北朝鮮の残党軍に大敗した……それは否定しないわ。だけど……もう一度再戦のチャンスを……!」

「解った。君たちの信念が如何にこのアジアの大戦を乗り切れるか、見定めようじゃないか」

 順一はミラール達がまだ戦えるか、そして彼女達が乱世極めしアジア大戦を乗り切れる実力があるか見定める為に、更に隊士をルーキーズに嗾ける。

「補給は大事だ……大軍を背負うのなら尚更に」

 戦場で激しくミラール達と戦う隊士達に、力が揮えるように補給をしっかり採るよう伝える順一。

 演習とはいえ激戦を展開する隊士と隊士達に、ミラールが言伝する。

「あなた達は下がって、ここは私達が引き受ける」

「承知……!」

 ミラールからの指示を受け、隊士は一旦退きミラールが銃で相手を撃退させていく。

「順一殿こそ、明日に光をもたらすお方!」

 しかしスター・コマンドー側の隊士も簡単には退かない猛者も在籍していた。

 と、其処に更に増援が。勇気の証としてスター・シップが更に兵舎を投下。戦場にスター・コマンドー側の隊士が雪崩れ込む。

「嬉しいな、みんな。この戦いの後には、ルーキーズの更に強くなった絆が見られる」

 戦場を見据えて、順一はミラール達スター・ルーキーズの更に強固になった繋がりを楽しみにしていた。

 そんな順一にミラールは問うた。

「北朝鮮の残党軍を蹴散らしたばかりのジュンが欲するのは……それは聖龍隊の地盤と勢力、背後の保証だけなんでしょ」

「いや、その点は総長に全て委ねているよ」

 順一がミラールの問い掛けにあっさり返答している間も、ミラール率いるスター・ルーキーズの残り勢力はスター・コマンドー側の隊士を蹴散らしていく。

 そんなルーキーズが快進撃を続けているのを制止するかのように新たな増援が。今度は希望の証として三度目の兵舎投下がなされた。

 戦場に雪崩れ込むコマンドー隊士を視認して、ミラール達は挙って戦場に投下された兵力を薙ぎ倒していく。

「見えたかしら、これが私達が進む修羅よ」

 新たに投下された兵力を薙ぎ倒したミラールは、両脇に葉月いずなと鹿島リンを従えて、誰よりも戦前で活躍する。

「数で攻めるのがジュンの戦法なのね……確かに戦の真理、非難はしないわ」

「ボンゴレファミリーと日本妖怪総大将の戦力を迎える為に用意した兵力だけど、まだまだ少なかったかな? 無礼と取られなきゃいいんだけど……」

 大軍勢で攻め入る順一の戦法に真理を見据えるミラールであったが、順一の方は単純にボンゴレファミリーの首領である澤田綱吉と日本妖怪総大将三代目の奴良リクオを出迎える為に用意した戦力なのであった。当のツナとリクオは戦場に不在ではあったが。

 そんな大軍勢で合戦するコマンドー側の体制を前に、スター・ルーキーズの隊士が叫んだ。

「この数の差は、人望の差なんかじゃねえッ! 隊長達こそ唯一無二のお人らよぉッ!」

 スター・コマンドーよりも、自分達の隊長である今は床に臥せているキャラクター達の方に人望を感じ入る隊士。

 コマンドーの大軍勢相手にロックバイソンが今は床に臥せっている幼馴染のワイルドタイガーの分まで体を張って戦っていた。

「これまでよりは余程真剣なつもりだぜ」

 ロックバイソンだけではなかった。他のルーキーズ隊士も、今は床に臥せる仲間や主の分まで懸命に戦い続けてた。そんな隊士たちを見て、ミラールは険しい顔で呟いた。

「錯綜して交わらぬもの……それが忠義」

 いくら錯綜して幾重にも重なろうと、決して交わらない感情。それこそが忠義だと再認識するミラールは、銃を連射して向かってくる隊士を蹴散らしていく。

 葉月いずなのくだ狐による猛攻、リンとアリスから繰り出される二重のヨーヨーでの攻撃、ブルーローズの氷にドラゴンキッドの電撃、ファイヤーエンブレムの灼熱の炎がコマンドー隊士を襲う中、隊士達は抗い続ける。

「ずっと一緒に歩むんだ……順一さんと……!」

「あなた方と順一殿、望む世は同じはず……!」

 コマンドー隊士の呟きを聞き入れながらも、スター・ルーキーズは僅かな戦力だけで前進するしかなかった。

「今の私に、体を休ませる資格なんてない……!」

 未熟で戦には無知であった己の不甲斐なさを恥じながら、ミラールは前へ前へと二丁拳銃を撃ち続けて

「安心しろ、テメェらを侮る事だけはしねえ……」

 リクオの配下、首無はコマンドー側の隊士を倒しながら、もう二度と相手を侮る真似は行わないと自分のしくじりにケジメをつけていた。

「並べ、進めィ! 誇り高き武士(もののふ)達よ!」

「了解ッス!」

「そうさ、俺達だって石垣の一つだ!」

 しかし弱体化しているスター・ルーキーズは、簡単にコマンドー側の大軍勢を全て撃退させる事は容易ではなく、相手側の隊士達の士気は村田順一率いるスター・コマンドーの存在だけで士気が上がる一方。

「あなたを倒せば、大分こちらにも傾くかしら……?」

 陣大将に目を着けて、一斉に攻撃を仕掛けていくミラール達の猛攻は実に激しかった。

「拙き策など、ただこの刃で枯らすのみ!」

 鴆は周囲の隊士を自身が発生させる毒で弱らせて、相手側の戦力を削ろうと画策する。

「私達の信念を消せるとは思わないでよ」

 一方のミラールも、激しい感情を募らせながらも必死に理性と冷静さで滾る感情を抑えながら戦う。

「何千何万やり直そうと、結果は変わらねえ!」

 そんなミラール達スター・ルーキーズの戦意に感化されてか、ルーキーズ側の隊士達の士気も上昇する。

「スター・ルーキーズ……奴らもまた、順一殿たちと同じ明星に違いないのか……!」

 完全完璧な戦術や戦い方とは言えないが、ミラール達の懸命な戦いを目視してスター・コマンドー側の隊士はルーキーズの気迫に圧巻された。

 ミラール達の戦意と熱意、そして何よりも固い信念を前に順一はミラールの成長を感じる。

「冷徹なる判断力、そして立ち会えば火の如く攻める……ミラール達の戦術も、また皮肉ながらこのアジア大戦で成長したらしいな」

 本来は起きて欲しくなかったアジア大戦。しかし、その大戦の中で大敗を経験し、そして自問自答しながら成長したミラール達を見知って順一は少し寂しさが混じった喜びを感じた。

「白旗きれいに洗濯しといて良かったぁ~」

「順一殿が手を伸ばすなら、我らは脚となろう!」

 そしてミラール達は、遂に最後の陣を奪取して全ての陣地を制圧した。

「どの道、俺達が崩れないうちはケリには遠い」

 雲雀恭弥が睨みを利かせて、逃げ惑うコマンドー側の隊士を見据えていると。

 上空から巨大な木製の、おそらくニュー・スターズ総部隊長であり凄腕の技師であるフロートが拵えたと思われる桟橋をスター・シップが移送して、とある地点でそれを落とした。

 桟橋はルーキーズが制圧した陣地とは崖で隔てられている土地とに架かり、順一達が待ち受ける地点への道行きができた。

 ミラール達は、いざ順一達と面会しようと駆け抜けようとするが、その時、彼女達の傷口が微かに開いてしまった。

「ぐっ……くぅっ! 傷口が、開いたようね……」

「ミラールさん、皆さん! トリコさん達の所で休んで下さいよ!」

「バカ言わないで……私達の役目はまだ終わってないわ……!」

 安息所でトリコ達の介抱をしている小松に言われるが、ミラール達の意志は固かった。

「ミラール達のあの様子……さては、もっと前から?」

 そんなミラール達の様子を見て、順一はミラール達が以前より自分の戦傷を堪えていた事実を察する。

 更に其処に、ミラールが安息所で休んでいる仲間達を介抱する真宮桜たちに問い掛けた。

「あなた達! 休息している仲間達は変わりないでしょうね?」

「はいっ」

 桜たち六文/ハッピー/エンゲキブ/コトハ/ミヤビはミラール達に強く返事した。

 この会話を通信機から聞いた順一は顔色を一変させて驚愕した。

「まさか……主力隊士の姿が見えないと思ってたけど、まだ傷が癒えてなかったのか? だからこそ、ミラール達はあそこまで無茶を……」

 順一が驚愕する中、ミラールは夢現で床に臥す仲間達、澤田綱吉/奴良リクオ/鏑木・T・虎徹/トリコ/ココ/サニー/ゼブラ/ナツ・ドラニグル/グレイ・フルバスター/エルザ・スカーレット/岩崎月光/ジョーイ/日ノ原革/門脇将人/六道りんね達を思いながら順一の許へと駆け出す。

「みんな、夢の中でも見ていてちょうだい……このルーキーズ総部隊長ミラールが示した、新たな覚悟って奴を……!」

 弱い己を認め、前へと着実に進み続ける己の揺るぎない信念と新たな覚悟を胸中に秘め、ミラール達は前進する。

 

 

 

[明星の対決]

 

 駆け足で馳せ参じたミラール達の前には、村田順一たちスター・コマンドーの面々が出迎えていた。

「ミラール、それにみんな……古傷を負っているんだろう? 隠さなくてもいい、動きを見てれば分かる」

 歩み寄る順一の呼びかけに、ミラールは銃を持つ手を強く握り締める。

「……ミィチェンの時の傷だね」

 順一は全てを見通した上で、ミラール達に己が手を差し伸べた。

「すぐに手当てをしよう。幸い、腕のいい薬師もいる……」

「お断りよ!」

 だが手を差し伸べた順一に、ミラールは強く反論した。

「施しなら、ごめんよ!」

 救済の意思を拒まれて、順一は深く動揺しつつもスグにミラール達の意志を悟った。

「何故なんだい? 仲間である僕らが信用ならないとでも? ……今も尚、主力隊士である仲間が苦しんでいるからか? 自分達だけが楽にはなれないと……」

 ミラール達の覚悟と意志、そして揺るぎない信念を察して順一は険しい顔で考える。

 そして順一は、表情を朗らかに緩めると再びミラール達と向き合った。

「そうか、解った」

 すると順一はミラール達に右拳を突き出して、己が戦意を突き付けた。全てはミラール達の覚悟を、信念を己が拳で受け止め、見定める為に。

 そして順一から戦意を突き付けられたミラール達も覚悟が決まっていた。

「新星は情けに甘んじない……新星の信念は踏み躙らせない……! 鬼神の一番弟子である貴方でもね!!」

 ミラールたち葉月いずな/鹿島リン/アラジン/アリババ/モルジアナ/獄寺隼人/山本武/雲雀恭弥/クローム髑髏/氷麗/首無/青田坊/鴆/バーナビー・ブルックスJr/ブルーローズ/ロックバイソン/ドラゴンキッド/折紙サイクロン/スカイハイ/ファイヤーエンブレム/ルーシィ・ハートフィリア/そして【デジモンクロスウォーズ】の面々は順一たちスター・コマンドーと真っ向から戦う闘志を示した。

 順一は、このアジア大戦で凶王ヤン・ミィチェンと向かい合った時から、武力では戦わない事を決め、武器を捨て拳のみで戦う決意を表していた。それ故に順一は手甲を装着した拳のみでスター・ルーキーズと戦い始めた。

「その信念、命取りとなるかも知れないぞ」

「それが私達の仲間に対する、仲間の為の戦よ……二言はないわ!」

 戦傷を負って、未だ完全に復帰し切れてない現状での戦闘は身に負担を掛けると警告する順一に、ミラール達は自分達の落ち度で傷付かせてしまった仲間の為の戦と評して順一と激しく戦い合う。

 順一はミラールからの銃撃、そして彼女と共に戦うルーキーズ隊士の攻撃を拳で受け流しながら懸命に応戦する。

「ジュン、貴方の戦ぶりは天にも通じる広さなんですってね……私達の戦は、今はまだ未熟でも良い! 自分の仕出かした失敗も自分で拭えなきゃ、一人前とは言わないわ」

「そこまで……そこまで考えての行動か、ミラール……」

 ミラール達の決断を耳にして、順一は彼女達の切なる信念に感化される。

「為すべき戦か……傷付けず勝つなど不可能だろうな」

 鹿島リンからのヨーヨー攻撃を拳で受け止めながら順一はスター・ルーキーズに戦の真理を説く。

「君のヨーヨー使いは本当に凄いな! やはりスケバン刑事と同じ作者生まれなだけはあるよ……だけどヨーヨーでの攻撃なら、こっちもブロッサムと組手して動きは読みきっている……!」

 順一は何度も鍛錬として組手を重ねる度に、仲間であるハイパー・ブロッサムのヨーヨーの動きを見切っているとリンに告げて、彼女が振るうヨーヨーを拳で弾き返す。

 すると順一はミラール達、現場のスター・ルーキーズ隊士に戦いながら語り始めた。

「ミラール、ルーキーズ……なぜ聖龍隊の新参者がスターと……星の名を与えられた総合部隊に在籍されるか、知っているかい?」

「確か、流星という意味で名を与えられたんだっけ」

 戦いながら順一に返答するミラールの答を聞いて、順一は語り続けた。

「そう、流星……すなわち流れ星だ。流れ星というのは、どんな星よりも輝いているが、その輝きは一瞬だけのものだ」

「……なにが言いたい?」

 戦いながら雲雀恭弥が問い詰めると、順一は真剣な面持ちで応えた。

「流星、それは一瞬の強い輝きを放つ尊い光……そんな流星の様に、僕ら若い世代は長い人生の中で、その若さという一瞬を燃やし尽くしてまで輝き続けなきゃならない。流星の様に、一瞬で消えてしまう輝きを持つ若さ……そんな意味でスター・ジェネレーションズは創立されたんだ」

 拳を揮いながら、順一は更に語る。

「若いというのは流星と同じ、一瞬だけ輝いて消えてしまう儚い力であり、意志なんだ。その若さを有意義に、そして何か意味のある行動に繋げていくのが僕達の真の姿なのかもしれない……」

「若さというのは、一瞬だけ輝いて消えてしまう儚い流星と同じ、ね……何だか、年寄り臭いこというじゃない」

「ああ、全部総長からの受け売りさ」

「やっぱりね……」

 順一からの説教を聞いて、ミラールが年寄り臭いと指摘すると順一は全て小田原修司からの受け売りだと返し、それを聞いて葉月いずながやはりと愛想笑いを浮かべる。

 若さとは流星の如く、一瞬で燃え尽きながらも輝き、そして消滅してしまう儚い力と意志。その力を、意志を正しく何かの為に使わせる為に聖龍隊の新参者はスター・ジェネレーションズに加盟させられるのだ。

「君たちのその顔……退けぬ理由があるんだろうね」

 激しく真剣に取っ組み合いの合戦をする中で、順一はミラール達ルーキーズの真剣な面差しを見て思い詰める。

 と、そこに今度は二丁拳銃を揮うミラールが自分達スター・ルーキーズの新たな決意を言い表す。

「見逃さず、奪わせず、襲わせず、屈さず……全ては、新星という明星が輝ける空の彩を残す為!」

 それは、ヤン・ミィチェンに大敗してから逃亡中に経験し、それから学び見出した決意だった。

 真に恐るべきは己の弱さ、それを見逃さず。己の信念と意志は奪わせず。傷付き消耗した仲間達を襲わせず。そして何よりも敵に決して屈さない不屈の精神を得たミラール達は、その決意を固めたのか順一に激しく攻撃する。

「眼を凝らし、あらゆる戦をも見通してみせる! それが私の新たな信条!」

 見逃さず、目を逸らさず、全ての戦を、真理を見通すと己の信条を掲げるように言い放つミラール。

 そんなミラール達の熱意を受けて、順一は高らかに告げた。

「君達の戦……そして絆、確かに見届けた!」

 そして順一は、一回りも二回りも成長したスター・ルーキーズを前にして、喜々とする。

「ルーキーズ、そしてスター・コマンドの仲間たち……総長、僕らは本当に果報者です! こんなにも強き絆が見守ってくれているのですから」

 成長した仲間、後輩、何よりも頼り甲斐のある友を目の前にし、順一は心の底から喜んだ。

 と、ここで順一はミラール達に問答をぶつけてみた。

「ミラール! 君たちスター・ルーキーズ……いや、僕達は戦場では何なのか、解るか?」

 この順一の問い掛けにミラールは強く返答する。

「私達は……いいえ、スター・ジェネレーションズは戦を照らす明星!」

「そうだ! どんな暗い戦場も……暗く澱んだ人の心を照らす明星、それこそが僕たち聖龍隊の流星部隊なんだ!」

 ミラール達と激しい格闘を展開する順一は、ふと夜空の星を一瞬ばかし見上げて呟いた。

「穏やかな陽も、星もいい……しかし一瞬の輝きを放つ流星の光も、僕は好きだ」

 延々と天に昇る陽も星の光も良いが、一瞬の輝きを放つ流星の光も好ましいと唱える順一。

 そんなもの思う順一に、ミラール達ルーキーズは攻撃の手を緩めない。

「あの世に逝ってしまった隊士の無数の誓い……それら全てを胸に刻み込み、立ち向かえ! 誇り高き、新星という名の流星!」

 長い逃亡の道行きで絶命してしまった数多の隊士の誓いを胸に刻み、誇りを持って立ち向かえと仲間達に説くミラール。

 武器を持たず、拳のみで立ち向かってくる順一を前に、ミラールは冷徹な面差しで言った。

「本気の戦に情なんて要らないわ……それだけでも十分、学んだわ」

「そうかな……こんな諍いばかりの世の中にこそ、温かい人の情が必要なのかもしれないけどな……」

 戦闘には情など不要と説くミラールに対し、順一はそんな世の中だからこそ温もりある人情が必要なのかもしれないと説き返す。

 それからも順一はミラールの銃捌きやルーキーズの猛攻を拳だけで応戦しながら己の心願を唱え続ける。

「犠牲なき世の中……ひたすらにそれが欲しい!」

 順一の光溢れる拳と、ドラゴンキッドの雷の拳が激しくぶつかり合う。

「ただ願おう、曇りを払うぬくもりを……!」

 ブルーローズと氷麗の二重氷攻撃をも、己の拳で打ち砕いていく順一。

「綺麗事と非難されても構わない! この世が綺麗に、朗らかに咲くのであれば!」

 己が唱える心願が綺麗事と否定され、非難されようとも、己の信念は曲げないと頑なに拳を揮う順一。

「この世の為に、消えねばならない命もある。そんな理に縛られない世の中に、僕がするッ!」

 今の世には、消えなければならない命があるのが実情。そんな世の中を変えて見せると豪語する順一。

「人の想いが世を作る……この重さが心地良い」

 一人一人が想い描く世の中こそ、その一つ一つの重さが心地良いと穏やかに主張する順一は、満足げにミラール達ルーキーズと対戦した。

 

 激戦を繰り広げる順一とミラール達。

 しかし順一との激戦の連続で、体力を著しく消耗していくミラール達。

 受けている古傷による体力消耗で、彼女達の息は上がっていた。

 そして向かい合う順一とミラール達は、次の瞬間、ミラールが放った銃声を合図に順一に挑みかかった。

 勝負は一瞬で着いた。ミラール達ルーキーズの得物は、全て順一の拳が一瞬の内に弾いて見せた。

「ふぅ、何とかなったかな」

 激戦を乗り越えて、何とか無傷で済んだ順一は溜息をつくと一安心する。

 すると順一との激戦で、辛うじて立ってられるルーキーズが一人、青田坊は順一に弾き飛ばされた日本刀の許に歩み寄った。

 青田坊が使っていた刃は、このアジア大戦の為に首領であるリクオが作らせた特別な刀。そんな大事な刀が地面に深く突き刺さってしまってた。

 大地に突き刺さる刃を見て、青田坊は刀に手を伸ばして自力で引き抜こうとするが。

「やめるんだ!」

 順一がそんな青田坊を制止する。

「そうなっては最早、普通には引き抜けない! 君が傷付くだけだ!」

 しかし順一の説得を聞いても尚、青田坊は自力で刀を引き抜こうと両腕一杯に力を入れる。

 それでも刀は抜ける兆しが無かった。すると、その情景を目視してミラールも青田坊と共に刀を引っこ抜く手助けをし始めた。

 まるで青田坊の真意を察しているかの如く、ミラールは青田坊に力を貸す。

 と、二人が懸命に刀を引き抜こうとしていたその時だった。

 安息所である館の周りに在る、地面に突き刺さっている無数の墓標たる刀剣。その刀剣が次々と蒼く鮮やかに光り出し、その光が小さな魂となって浮かび上がる。

(ミラール総部隊長! 俺は、あんたのとこに勤められて良かったって思ってるぜ)

 その声は、刀剣と共に眠る隊士達の魂の叫びだった。

(この飯、旨いっすね、トリコさん!)

(小松殿、いつも美味しい食事を振舞ってくれて、ありがとう!)

(虎徹の旦那、たまには気晴らしに酒でも飲みましょうよ)

(ほらほら、ブルーローズのお嬢ちゃん、そんなに眉間にしわ寄せていると老けちまうぜ)

 無数の刀剣に宿りし魂は、今まさに刀を引き抜こうとするミラールと青田坊の元へと参ろうとしていた。

(スター・ルーキーズに続けィ!!)

 無数の魂は、大地に突き刺さる青田坊の刀剣に集まり、刀を引き抜こうとするミラールと青田坊に力添えした。

「なッ! ま、まさか……!?」

 その情景を目の前に、順一は愕然とする。

「永劫に地を貫く刃、それはタダの墓標よ……!」

「この刃、この命……眠らせはしねえ!!」

 次の瞬間、散っていった者たちの魂の想いも相まって、ミラールと青田坊は大地から刃を引き抜いた。

 無数の魂という想いが込められた刀は、蒼く燦々と輝いていた。

「本当に大したものだ。僕らの負けだ、ミラール……いや、スター・ルーキーズ!」

 その刀を引き抜いた様を目撃して、順一は自分達の敗北を認めた。

 

 そして順一は右拳を高々と天に向けて突き出して宣言した。

「心照なる流星、村田順一! 今ここにスター・ルーキーズ精鋭の戦前復帰を祈願し、撤退する!」

「! ……情けのつもり……!?」

 ミラール達が怖い顔で順一を凝視すると、順一は彼女達に必死に伝える。

「とんでもない! 僕は確かに感じたんだ。聖龍隊が誇る新たなる流星、スター・ルーキーズの気高い意志と信念の表れに!」

 順一はミラール達の覚悟をくみ取って、彼女達に告げた。

「総長からは、僕からも伝えておくよ。ルーキーズは敗北を経験して、より一段と逞しく成長したって!」

 そして順一は最後にミラール達に言った。

「それじゃ、他のルーキーズメンバーにも宜しく!」

 そう言うと順一達は颯爽と自分達の自機スター・シップに飛び乗ってその場から撤退した。

 

 順一が去った後、ミラール達ルーキーズは、安息所で眠りに就く仲間達を思いながら流星が落ちる夜空を見上げてた。

「……みんな……私達の進むべき道は、まだ続いているわよ。みんな揃って、天を駆ける流星として燃え尽きるまで……!」

 若さとは所詮、流星の如く激しく燃え尽きて散っていく輝き。そんな輝きでも自分たち流星の聖龍隊は戦場を照らす明星でなければならない。

 ミラールは自分の得物、ミラージュ・ガンを見詰めながら己の新たな決意を心に刻む。

「私は、これからも……戦いの全てを見通していくわ!」

 

 スター・ルーキーズの成長は、まだ始まったばかりである。

 

 

 

[凶王との対立]

 

 村田順一率いるスター・コマンドーがルーキーズの現状を視察に訪れてから数日後。

 小田原修司を筆頭とした聖龍HEADから無事にアジア大戦での活躍を許されたルーキーズ。

 傷もすっかり癒え、完治したスター・ルーキーズの名立たる隊士達は、総部隊長ミラール指揮の下、再びアジア大戦に駆り出そうとしていた。

「ヤン……ミィチェン……」

 そんなルーキーズの隊士たち、そして何よりミラールも頭の中に巡っていたのが自分達を戦闘不能にまで陥れた北朝鮮の残党軍総大将・凶王ヤン・ミィチェンであった。

 スター・ルーキーズはアジア各地を巡り、自分たち聖龍隊と同盟を結んでくれる武将をまず味方に引き入れ、戦力を増強する方向に纏まった。

「ヤン・ミィチェン……かつて、若かりしジュン達スター・コマンドーに軍政を崩壊させられ、居場所を失った北朝鮮の残党……私たちの目指すべき標的は、ますはそいつよ」

 総部隊長ミラールは、仲間達にこのアジア大戦で自分達が挑むべき相手はヤン・ミィチェンだと皆に説く。

 そんなミラールの決断に、いや戦意に他のルーキーズ隊士も同意だった。

 そしてスター・ルーキーズはアジア各地に進攻し、戦力を整える準備を進ませた。

 

 スター・ルーキーズがアジア各地を平定していった道中、このアジア大戦の中心であろうモンゴル軍に同盟を求める輩がいるとの情報を掴み、ルーキーズは一路モンゴルへと向かった。

 モンゴル軍は既に、猛将モウ・コダイによってロシア以外のモンゴル周辺区域を平定していた。そんなモンゴル軍と同盟を結ぼうという輩は、どの国のどの地出身の武人なのか。スター・ルーキーズは確かめに赴いた。

 これはスター・ルーキーズがアジア各地に進攻するモンゴル軍と会合しようかと向かった時の話。

 モンゴル軍基地には、既にルーキーズよりも前にモンゴル軍勢と会合しようと足を赴かせた武人がいた。

 それは他でもない、ルーキーズを窮地に追い込んだ北朝鮮の残党軍総大将ヤン・ミィチェンであった。

「ヤン……ミィチェン……!」

 スター・ルーキーズは目の前に立つヤン・ミィチェンを凝視し、自分達を痛め付けた張本人に怒りの眼差しを向けた。

 するとヤン・ミィチェンも、ルーキーズの視線を感じて振り返った。

「……貴様達は……」

「久しぶりだな、ヤン・ミィチェン……! 俺達はちょうど、あんたを目指していたところだ!」

 誰よりも血気盛んなルーキーズの門脇将人がミィチェンに刃を向けて言い放つ。

「こんな場所で再会なんて……さては、あなたがモンゴル軍と同盟を……?」

 ミラールも銃を構えてヤン・ミィチェンに問う。

「ちょうど良いぜ! ……あの日の借りを、返してやるぜ!」

 ルーキーズの誰もが、かつてヤン・ミィチェンに斬り捨てられた無念を晴らそうと殺気立っていると、ヤン・ミィチェンは突然戸惑い始めた。

「き、貴様らは……誰だ? 私に、なんか恨みでもあるのか」

「な、何ですって……!」

「テメェ、俺達に仕出かした所業を忘れやがったのか……!?」

 鹿嶋リンと青田坊がヤン・ミィチェンに問い詰める。

「何度も言わせるな。貴様らに覚えはない」

「! ……あなた……! 私たちルーキーズの事を……!」

 ミラールが身体を震わせて怒りを込み上げていと、ミィチェンはふとルーキーズの事を思い出した。

「……ルーキーズ……? ……今は亡き、キム様に捧げる為に思う存分力を揮った、聖龍隊への最初の斬り込み……そういや、その時私に歯向かい、敗れ去った者たちが……確か聖龍隊の新参者共がいたな……。だが生憎、斬り捨てた者の顔など覚えていられるか。去れ、目障りだ」

 ミィチェンはルーキーズを斬り捨てた事を些細な記憶として殆ど覚えておらず、復讐心に駆り立てられるルーキーズの戦意など眼中になく、その場から立ち去ろうとする。

 そんなミィチェンに堪えていた怒りが爆発し、背後から将人が斬りかかろうとミィチェンに襲い掛かった。

 だが、その将人の凶刃をモンゴル軍が武将シン・ユキジが二対の槍で防いだ。

「シン・ユキジ……!」

「退かぬぞ。モンゴル軍が基地にて、我が盟友を傷付けようとする其方らの凶行……断じて認められぬ!」

 シン・ユキジの槍に弾かれ、将人は後ろへと押し戻されてしまう。

「シン・ユキジ、ここは貴様に任せるぞ。……過去に斬り捨てた敗者の相手をするなど、時間の無駄だ」

「あ、待て!」

 ルーキーズを相手にするのを時間の無駄だと言い捨てるミィチェンの言動に、怒りを込み上げながら奴良リクオが呼び止めようとするが、そんなルーキーズの前にモンゴル軍が若大将シン・ユキジが阻む。

「そうか……! それじゃ先に、あんたから片付けてやるぜ……!」

 ルーキーズの敵意は、全てシン・ユキジに向けられた。

 

 そして激しい戦いの末、ルーキーズは当時、まだまだ若輩者であったシン・ユキジを圧倒する事に成功。

 そして誰よりも殺気立つ門脇将人が、息を切らすシン・ユキジへとトドメの剣を振り下ろそうとした、その時。

 将人に無用に人を斬らせたくない従者のミヤビが、将人の振り下ろされる腕を掴んで制止する。

「ミヤビ! 邪魔をするな!」

 将人がミヤビに邪魔立てするなと言葉を吐くと、そこに今度はミラールが将人を含む現場のスター・ルーキーズに説いた。

「そこまでよ、将人!」

「……殺らせろ……」

「いけないわ。勝負はついたのよ。私達の勝ちよ」

「……まだだ、この刃はヤン・ミィチェンには届いちゃいない……」

 過去の手痛い敗北を味合わせた凶王に一矢報いたいと思うのは、将人だけではなく他のルーキーズ全員も同じ気持ちだった。

 そんなスター・ルーキーズに、総部隊長のミラールが説く。

「怒りを覚えた時こそ冷静であれ。それを、私達は初めて敗北したあの時に、嫌というほど痛感した筈よ」

『………………』

「ここでモンゴル軍の若大将シン・ユキジを討って、それで後悔はしないと言い切れるの……!」

「俺に指図するんじゃねえ!」

「私は……! あの日の決意と信念に生きている……二度とみんなに後悔をさせないという、あの誓いに……! それが果たせない様なら、私は総部隊長の資格はないわ!」

 ミラールからの必死の説得を聞いて、ルーキーズの誰もが腹中に宿す狂気を消し、将人も振り上げていた刃を静かに下した。

 皆を説得したミラールは、息を切らすシン・ユキジに告げた。

「あなたとの決着は先に延ばすわ。それまで生き抜いてみなさい」

 ミラールから告げられたユキジは、息も絶え絶えの状態でスター・ルーキーズに問うた。

「き、貴殿らは……ミィチェン殿を目指すのか……?」

「ええ、そのつもりよ」

 この返答にユキジは真言を述べた。

「このユキジ、いやモンゴル軍も……乱世に揺らぐアジアを乗り切るため、ミィチェン殿と同盟を結んだ次第。アジアの小国として、お主ら異界の猛者と渡り合う為……某は、あがき続けているのでござる……!」

 ユキジの熱意を聞いて、スター・ルーキーズはユキジに同感した。

「あなたの言うとおりね……シン・ユキジ」

 

 

 

[目覚めし凶王]

 

 モンゴル軍基地を後にしたスター・ルーキーズ一行。

 それから後、スター・ルーキーズは村田順一率いるスター・コマンドーと合流を果たした。ヤン・ミィチェンが加わった新世軍の連合と戦う準備を進める為に。

 そして決戦の日、ルーキーズは打倒ヤン・ミィチェンを目指して戦場に突入した。

 荒れる曇り空、響く怒号、揺らぐ大地を肌身に感じて、ミラール達は進撃した。

 そして遂に彼女達は、ニュー・スターズと共にヤン・ミィチェンの許へと馳せ参じた。

 ヤン・ミィチェンは新世軍総大将・破邪王そして参謀である台湾軍が国将軍モウ・チェイファンに並び立つ武将として戦場に立っていた。

「貴様らは……いつかの……」

 ルーキーズと向き合っても尚、復讐心に駆り立てられたヤン・ミィチェンにはルーキーズの事など些細な記憶でしかなかった。

「そうよ。聖龍隊での斬り込みの際、あなたに敗北した輩……それが私達よ」

 ミラールは向き合うヤン・ミィチェンに言う。

「……ああ、貴様らがそうだったのか……それでどうした? また敗けに来たのか?」

 ミィチェンからの冷徹な言葉に、ミラール達は冷静さを保っていた。

「……いいわ、好きなだけ言いなさい。私達がここに来たのはリベンジでもなきゃ、復讐でもないわ」

「?」

「あなたはタダの通過点、その宣言よ。私達はあなたという通過点を越えて、先へと進むだけ。あなたは、今ここで負けるだけの存在……分かった?」

 このミラールの発言に、ヤン・ミィチェンは動いた。

「貴様らの空言など知った事か。だが殺されたいというのなら……二度とその嘴を、開けぬ様にしてくれる!」

 ミィチェンは右手に握り締める長刀を向けてルーキーズに言い放つ。

 そしてスター・ルーキーズとヤン・ミィチェンの戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 しかしミラール率いるスター・ルーキーズとヤン・ミィチェンの戦いは長くは続かなかった。

 新世軍参謀長に納まっている台湾軍が将軍モウ・チェイファンが聖龍隊との戦を早々に終わらす為に精神の面で脆かったヤン・ミィチェンが率いる軍を見捨て、二次元人への攻撃の巻き添えにしたのだ。

 これに続き、当初は自分達が二次元人であると同時に凶悪な輩だったという事を隠していたとして幽閉されてたヤン・ミィチェンの側近、あの黒衣衆の大闇刑蘭が台湾軍の捨て身の砲撃に曝されたミィチェンを庇って瀕死と相成った。

 裏切りと側近の死という二重のショックから、ミィチェンは深く絶望した。

「刑蘭……刑蘭ッ!! ……何故だ、何故だ! 何故、人は裏切るのだ……何故だぁ!!」

 二重の悲愴と絶望から、ヤン・ミィチェンは目から血の涙を流して向かってくる聖龍隊に斬りかかって行った。

「血の雨よ、降り注げ……血雨となって、あの日の私を射抜いて殺せ! さもなくば……いっそ私を狂わせろ……!!」

 ミィチェンは迫ってくる聖龍隊士を悉く斬り捨て、最後に揮う長刀を鞘に納めながら今は無き主君への許可を求めた。

「キム様……どうかこの私に、我らが祖国を滅ぼしたこの者共を……斬滅する許可を、お与え下さい……!」

 そしてヤン・ミィチェンは、負の感情を抱いたまま周辺のスター・ルーキーズやニュー・スターズの隊士達を続けて斬り捨てて行った。

 俊敏なミィチェンの刃は、鍛え抜かれた聖龍隊の身体を無尽蔵に切り裂き、隊士達を追い込んでいく。

 ミラールも必死で銃で応戦するが、ミィチェンの抜刀には歯が立たなかった。

 スター・ルーキーズはこの時、やはりヤン・ミィチェンと再戦するには自分達はまだ実力不足だったのだと再認識してしまう。

 するとスター・ルーキーズにニュー・スターズが苦戦を強いられている所に、ヤン・ミィチェンが最も欲していた相手、村田順一率いるスター・コマンドーの軍勢が現場に駆け付けた。

「村田、順一……ッ!」

 順一達の姿を認識すると、無作為に周囲の聖龍隊を斬り続けていたミィチェンは刀を揮う手を止め、順一達を凝視する。

「ミィチェン……」

 ミラール達ルーキーズにニュー・スターズが観ている中、順一は重く険しい表情でヤン・ミィチェンを直視していた。

「村田順一、スター・コマンドー……待っていたぞ」

 ヤン・ミィチェンは狂気に駆り立てられそうな己の意思を抑えながら、順一達に告げる。

「さあ、キム様に対して頭を垂れろ……許しを求めて希え……そして! 首を刎ねられろ……!!」

 しかし順一は首を横へと振ってミィチェンに答えた。

「……僕達に、その意志はない……」

 するとこの順一の返答を聞いて、ヤン・ミィチェンは次第に理性を失っていった。

「そうだ、そうだよな……貴様達はそういう輩だからな! 自分達の野望を、夢や理想で飾り立て……キム様を、我々の未来を奪った!!」

 訴えるヤン・、ミィチェンに順一はハッキリと言い放った。

「そうだ! それが僕たち二次元人の決意だ! ミィチェン、君にもあのキム将軍にも……このアジアは任せられなかった!」

 天に向かって拳を高々と突き上げる順一の宣言にも近い言動を前に、ミィチェンは更に禍々しい狂気を放ちながら反論。

「貴様たち偽りの者共はそれで満足だろうな!? だが……キム様を信じていた私は、これから何を信じて生きていけばいい……誰を頼りに生きていけばいい……どうすれば良かったんだ!!」

 ミィチェンは更に禍々しい雰囲気を醸し出しながら、鞘に納めた長刀を握り締め、抜刀の構えで順一に斬りかかろうとする。

「屈するものか……例え私一人になろうとも……死に逝くその一瞬まで……貴様達を許しはしない!!」

 そしてヤン・ミィチェンに斬り付けられたルーキーズとニュー・スターズの目前で、順一達スター・コマンドーとヤン・ミィチェンは死合った。

「さあ笑え! 孤独な私を嘲笑え!」

「僕達は決して笑わない……絶対に!」

 孤独に成り果てた自分を笑えと長刀を揮うミィチェンに順一は拳で応えながら返答する。

「情けのつもりか!? 哀惜のつもりか!? それなら最初からキム様を……私の主君を死なせるなァ!!」

 凶器の刃を振り翳し、ヤン・ミィチェンは自分と互角以上に戦い合う順一達スター・コマンドーと死合う。

「一方では絆を説き、もう一方では絆を奪う! 答えろ順一! この矛盾の行方を!」

 絆を掲げる順一に、彼らが掲げる信条の矛盾を責め立てるミィチェン。

「消滅しろ順一……村田順一ィッ!!」

「お別れだミィチェン……ヤン・ミィチェン!」

 一方は悲しみと憎悪のあまり追い求めてくる凶王、もう一方は時代や住む世界が違っていた為に共に生きて行けなかった友を思う明星。双方の想いは激しくぶつかり合った。

 

 そして順一は、拳のみでヤン・ミィチェンが振るう長刀を折るまで追い込んだ。

 誰もが勝負が着いたかの様に観えた、その時だった。

 ヤン・ミィチェンは折れて地に落ちた刃を素早く拾い上げ、それをスター・コマンドーが一人、愛澤マイに投げ付けた。

「ま、マイちゃん!」『!』

 順一に周囲の面々も突然の事態にミィチェンが投げ付けた刃に目が行った。

 だが、マイに向けられた折れた刃の切っ先は、同じスター・コマンドーで超能力者の明石薫が念力を用いて空中で止めた。

 皆がマイに向かって投げられた刃の切っ先が防がれた事で安堵していると、順一がミィチェンの身に起きた事態に気付く。

「! み、ミィチェン!」

 なんとヤン・ミィチェンは、切っ先が折れた長刀で己の腹部を突き刺して、割腹していたのだ。

 自害に及んだミィチェンに駆け寄り、彼を抱き寄せる順一。そして駆け付けるスター・コマンドーの面々。

 そんなスター・コマンドーの面々にヤン・ミィチェンは薄れ行く意識の中で順一達に話し掛ける。

「……忘れは、しないぞ……」

「! ……」

「忘れはしないぞ、この無念。たとえ何千何万回、生まれ変わろうとも……私は、決して忘れない……!」

「ミィチェン……!」

「国を喪い、主君を喪い……生きる意味の全てを奪った貴様らを、私は死しても忘れない……! 例え、貴様達と死別しようと……私は、お前達を見付け……この手で、必ず……!」

 いつの間にか憎悪の矛先であったスター・コマンドーが、己の生きる目標と変わっていたヤン・ミィチェン。そんなミィチェンの言葉が胸に刻まれ、順一達はミィチェンに言葉を返した。

「……ああ! また来世で……また巡り会おう! その時は、今度こそ君と共に生きていられるよう努めるよ……!」

「フッ、貴様らと共に生きるなど……ありは、しな……」

 こうしてヤン・ミィチェンは息絶えた。

 憎むべき相手だった村田順一たちスター・コマンドーに看取られながら。

 

 

 

[凶王の最後]

 

 ヤン・ミィチェンは聖龍隊スター・コマンドーとの激戦の末、自らの折れた刃で自害して果てた。

 そんなミィチェンの亡骸を見詰めながら、物思いに耽る順一達スター・コマンドー。

 スター・コマンドーの悲痛な姿を直視して、同じく物思いに耽るミラール。

 そのミラールにニュー・スターズ総部隊長フロートが問い掛ける。

「ミラール……お前さん、あのヤン・ミィチェンを赦したか?」

 するとこの問い掛けにミラールは無表情で答えた。

「赦す? ……さあ、私達は其処まで成長したとは思えないわ」

 自分達に刃を向け、傷付けてきたヤン・ミィチェンを赦すにはまだ時間が懸かると説くミラール。

 すると其処に、ヤン・ミィチェンの亡骸を見詰めていた順一が仲間の隊士に声を掛けられる。

「……順一殿?」

 順一は周辺の隊士達に言った。

「……悪いけど、僕達だけにしてくれないかな?」

「し、しかし……」

「頼むよ」

「………………」

 順一達の要望を聞き入れ、隊士達は不安になりながらも順一達スター・コマンドーをその場に残して離れていった。

 そして一般隊士達と同じく、スター・ルーキーズもニュー・スターズも順一達から離れて物陰に身を潜めた。

 ミラール達が少し離れた所から順一達スター・コマンドーを見詰めてみると、順一は塞ぎ込む様にその場に体育座りで座り込み、他の隊士も皆揃って下を俯いて暗い面持ちを隠していた。

 そんな順一達の暗い気持ちを察するかのように、一般隊士の一人がルーキーズに問い掛けてきた。

「み、皆さん……順一殿は、スター・コマンドーの人々は大丈夫なのでしょうか?」

『………………』

「あの方達は何故、自ら辛い道を行くのでしょう……何ゆえ、苦しい道をお選びになるのか……あの方々はいつも苦しい道を選んで進んでいる様な気がしてなりませぬ」

『………………』

「人には自分の為に生きろと説き、自分達は己が為に生きてはいない。私達の為、このアジアの為に……選び、苦しみ、耐え続けている。だが我らは何もして差し上げられぬ……」

 このアジア大戦で常に苦しい選択を選び、自分達は苦境に晒されながらも他の皆には己が為に生きろと説き続ける順一率いるスター・コマンドー。

 そんな順一達の、そして隊士達の想いを聞いて、ミラールは行動に移した。

 

 ミラールはヤン・ミィチェンの亡骸に集うスター・コマンドーの許を訪れて、彼らに声をかける。

「ジュン」『………………』

 しかし順一達の返事はない。ミラールは再度、声をかけた。

「ジュン、もうクヨクヨするのはやめましょう。まだ戦いは終わっちゃいないわ。まだ新世軍の参謀であるモウ・チェイファンと総大将の破邪王が残ってる。私達が聖龍隊の本体に加わらないと、勝てる戦も勝てなくなるわ」

『………………』

「……ジュン達はよくやったわ。戦いを好まない、あなた達が凶王ヤン・ミィチェンを止める為に奮い立ち、自ら戦場に身を投じた。そして狂気に走ったヤン・ミィチェンを止められた……これは、ジュン達の功績よ」

 ミラールに励まされるスター・コマンドーだが、順一達の顔が上がらなかった。

 そんな気落ちする順一達を更に励まそうとミラールが駆け寄ろうとすると、順一がようやく返事を返した。

「もう大丈夫だ、ミラール」

 順一が立ち上がると、他のスター・コマンドーの面々も立ち上がりミラールに元気な顔を向ける。

(無茶しちゃって……)

 ミラールは、その顔が無理に作った表情だとスグに察した。

 だが順一達は、作り顔ながらも大地に横たわる果てたヤン・ミィチェンを見据えて彼に言った。

「ミィチェン、僕たちも君を忘れない。自分達が仕出かした行いを忘れない。いつかまた君に会える時まで答えを探す」

 順一は、彼らスター・コマンドーはヤン・ミィチェンが問い質した矛盾の答えを探し求めると亡きミィチェンに宣言した。

(答えろ順一! この矛盾の行方を!)

 そして順一達はミィチェンとの別れを告げた。

「仲間と、みんなと……共に答えを見つけてみるよ。だから今はお別れだ、ヤン・ミィチェン」

 そうして順一達がヤン・ミィチェンの亡骸から離れようとした、その時。順一が突然声を上げた。

「もう泣くのも悩むのもヤメだ!!」

 突然の順一の宣言に驚くミラール。すると順一は腕を組んで高らかに宣言する。

「受け入れ、背負って、与えて、照らして、前へ前へ進もう!」

 そう宣言した順一は、ミラールと順一の大声を聞き付けて駆け付けてきたルーキーズとニュー・スターズに頼んだ。

「だがもし、僕達の歩みが立ち止まったら、その時はまた宜しく頼む! ニュー・スターズ、スター・ルーキーズ……僕らと同じ明星よ!」

 順一達からの頼みを聞いて、ミラール達もフロート達も力強い笑みを浮かべる。

 すると順一は更に仲間達に宣言した。

「みんな。僕は……いや、僕達は友が笑い合って暮らせる世の中にしてみせたい。人々が穏やかに暮らせる世の中でありたい。人が人でいられる世界でありたい。だから、みんな……これからも共に歩んでほしい。僕達が創る世界を、僕達が照らす世界を」

 順一の理想を、夢を聞いてその場の聖龍隊士の誰もが士気を高めた。

 

 そしてミラールは、新たな戦場に向けて先陣を切った。

「己の信念の基……! 私達の歩みは止まらない!」

 

 

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