聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編 作:セイントドラゴン・レジェンド
凶王ヤン・ミィチェンの執拗な斬滅に叩きのめされたミラール率いるスター・ルーキーズの辛辣な逃避行の路地。
まだ名を明かしていなかった梟雄からの指摘、ロシアの軍神の容赦のない手打ち、そして敗退者として本隊から戦力外通告を言い渡されたミラール達の誓い。
その誓いを立てるまでのルーキーズの歴戦に心躍る新世代型達もいた。
「……ミラールさん達も、経験不足で戦いには未熟だった時期があったんですね」
「ええ、まあね。でも、その現実を受け入れて学ぶ事はできたわ。私達も敗北から、色々と学んで今に繋がってきたからね」
瀬名アラタからの問い掛けに、ルーキーズ総部隊長のミラールは語り返す。
新世代型達は、己の未熟さを受け入れて、考えを改める事で困難を自力で乗り越えられるまでに成長したスター・ルーキーズの武勇伝を聞いて目を丸くした。
そして遂に聖龍隊の口から明かされた凶王ヤン・ミィチェンの最後の情景。それはこの世のあらゆる矛盾を背負い、ヤン・ミィチェンと対峙することを決意した村田順一たちスター・コマンドーの決意が表れた決戦の物語。
順一達と死闘を展開したヤン・ミィチェンは、最後に折れた長刀で自らの腹を割腹して自害した何とも悲しい結末を迎えた事実に、新世代型達は心を痛めた。
聖龍隊の、そして自分達の始祖である小田原修司の周りで起きる数々の残酷で悲劇的な話に胸が締め付けられる新世代型。
しかし、そんな新世代型達に聖龍隊は更に昔語りを聞かせる事で、彼らに己の血の中に含まれる鬼神の生き様を伝えようとする。
そして今回、聖龍隊が新世代型達に語るのは、一転して地球そのものが荒廃してしまったメカルスが起こした大惨事。絶対的絶望の中で立ち上がり続ける聖龍隊の覚悟や信念が煌めいた逸話。
そして新世代型二次元人の始祖・小田原修司が、かつて力を渇望してしまったが為に自らの潜在意識に刷り込ませてしまった悲劇的な催眠暗示による覚醒と、メカルスと聖龍HEADの血戦の物語を語った。
[プロローグ]
2011年 11月
巨大国際宇宙ステーション「希望」
「ええ、仕事終わりましたよ……あっけなくね。ええ、分かってますよ……ステーションはまだ、生きてますよ。いつでも落とせる状態にしてますから……早く、合図してくださいよ。結構、ヒマでね。あとはウィルス撒いて……地球に戻るだけですから」
ステーション内である人物と通信で会話する謎の男がいた。
「フフ、見込んだだけはあるな……やるべき事は、しっかりやっているようだしな」
「ダンナ方を敵に回すだなんて、聖龍隊ぐらい愚かな奴らじゃないと。ま、おれに出来る事なら何でもやりまっせ、ダンナ」
「わかった……今から、地球上で計画を実行に移す! それまで、そこで待機だ」
「しかし、ダンナ自ら手を下さなくても……そんなに凄い奴ら何ですか? 聖龍HEADってのは」
「くくく……ある意味な」
謎の男との通信を終えた、その巨影は大いに笑んだ。
「修司……お前の、俺達の真の目的を教えてやる……そう、真の敵をもな……くくく、ファーッハハハッ!」
2011年 11月
アジア大戦から数ヵ月後、地球は平穏な時間が続いていた。かのJフォース大戦の影響で被害にあった巨大宇宙ステーションの修復もほとんど終わり、残すはステーション内に宇宙飛行士達を着任させるだけとなっていた。
しかし、そんな平和な日を脅かす一大事件が幕を開いてしまった。
それは2011年11月11日11時11分11秒の出来事。
突如、地球上に、そして多くの異世界に
この事件に聖龍隊は直ちに出撃した。
しかし世界各地・各異世界で同時に勃発した強襲に、聖龍隊士は各異世界にも赴いた為に戦力は分散されてしまう。
この事態に一刻も早い事態の収拾をつけるため、アニメタウンを統治する役職にも就いている聖龍隊の頭目、聖龍HEADも出撃した。
そしてメカルスが最初に現われたと思われる事件現場に、ミラーガールを中心とした聖龍HEADが到着した。
「こちら聖龍隊本部! 各異世界の皆さん、聞こえますか? 各地・各異世界に突如現れた
総合通信士のウッズからの指示の元、各地そして異世界に出動した聖龍隊士は挙って、女神像へと向かった。
平等の女神像。
それは聖龍隊総長・小田原修司が発案した、全ての異世界との円満な関係そしてあらゆる種族の繁栄と共存を願って建設されている、全種族の平等な立場を象徴した女神像であった。
ミラーガール達は、ウィルスに侵されて異常化してしまった市民達の暴動を掻い潜り、どうにか女神像まで辿り着く事ができた。
そして建設中の女神像の頭部の目前まで辿り付いたミラーガール達は、そこで誰よりも先に出動していた小田原修司と再会した。
「修司! 大丈夫か?」
ミラーガールと共に同行してきたメタルバードに声を掛けられ、建設現場で倒れていた修司は険しい顔で到着したばかりの仲間達に問い掛けた。
「……俺なら平気だ。それよりメカルスだ! メカルスは何処だ!?」
修司は自身のコピーでもあるメカルスを誰よりも倒したい気持ちで一杯だった。そんな修司に駆け付けたセーラームーンとコレクターユイが答える。
「完全に見失ったわ」
「今ウッズさんに探してもらっているけど、まったくデータ反応が無いの」
今回の事件で最初から姿を現して暴動を引き起こしているメカルスを見失い、現在その行方を探していると修司に伝える面々。
すると修司は厳つい面差しで皆に説いた。
「奴の実体はウィルスだ……目で見たり、データで捉えられるものじゃない……感じるんだ、メカルスの存在を!」
二次元人を狂わせるウィルスが実体のメカルスには、視力やデータで捉えるのではなく、心そのもので存在を感じる必要があると説く修司。
そんな修司の説明を聞いて、ミラーガールが切実に修司に訴える。
「分かったわ……とにかく修司は一旦、聖龍隊本部に戻って。そんな状態じゃ戦うのは無理よ!」
「解っているさ……」
修司は此処までの道中で負傷した身体を押さえながらミラーガールに返事する。
すると修司に言われたとおり、ミラーガールは何かを感じ取っていた。
「感じるわ……メカルスが近くにいるような」
ミラーガール達がメカルスの存在に気配を感じる中、修司もメカルスの気配を感じていた。
「お前達の邪魔にならんように避難するが、もう一度近くを探してみろ。俺には分かる! メカルスは近くにいる! 気を付けろよ、お前ら……」
と、修司がその場から離れようとしたその矢先、彼はふとメカルスに対してある懸念を脳裏に走らせた。
(………………俺達が抗えば抗うほど、メカルスは蘇る……逆に俺達がメカルスを呼び寄せているんじゃないか? ヒーローも
「……? 修司どうしたの? さあ、ここは私たちに任せて、あなたは先に本部に……」
一人黙然と考え込む修司の様子にミラーガールが早々に避難するよう話し掛けてた、その時だった。
突如として建設中の平等の女神、その顔の表面が剥がれ落ちて内部から光が漏れ始めた。その現象は修司達の世界だけでなく、魔法騎士の三人が出動している異世界セフィーロなどのありとあらゆる異世界に建設中の女神像にも同様の現象が起こっていた。
そして崩落する女神像の顔が完全に剥がれ落ち、その内部からはあの鬼の様な形相をしたメカルスの顔が現われたのだ。
メカルスは女神像に憑依して、女神像の頭部を自分の一部に変化させてしまってた。
そして全ての異世界にも建設中の女神像の顔の内部から現われたメカルスは、目前に集っている聖龍隊の面々に告げた。
「クックックック……愚かな聖龍隊よ! 死をもって……真の
頭部だけのメカルス、通称メカルスヘッドは各地・各異世界に同時に出現し、その地に出動している聖龍隊と交戦を開始した。
メカルスヘッドは口から怪光線に無数の弾幕を吐き散らして眼前の聖龍隊に攻撃。しかし聖龍隊は弾幕を回避して何とかメカルスヘッドに反撃を試みる。
口から吐き出される無数の弾幕を回避し、その弾幕が吐かれていく口へと攻撃を当てていく聖龍HEAD。それは他の異世界や各地で戦闘を行っている者たちも同じだった。
そして何処の隊士たちも、現場にいる自分達だけの総力で呆気なくメカルスヘッドを破壊してみせた。
だが、この破壊にメカルスは高らかと警鐘を告げて果てた。
「クククク、俺を倒したな聖龍隊……これが終わりではない、全ての悲劇の始まりなのだ! ファーッハハハッ!」
聖龍隊の総攻撃を受けたメカルスヘッドは、全ての異世界で同じ発言を言い残して爆発した。
するとその瞬間、メカルスヘッドからあるものが大量に拡散され、辺り一帯に広く散ってしまった。それは他でもない
「まずいぞ! ウィルスが」
アニメタウンでの戦闘でメカルスヘッドを聖龍HEADが撃破したのを目の当たりにしていた修司は、ウィルスが拡散していく様子を目撃して驚愕する。
「この勢いだと、もう既に地球上に広がっている筈……全ての二次元人が大変な事になるぞ!」
世界各地の女神像頭部が同時に爆破し、それによってウィルスも既に地球全土に広がっている現状を察知して愕然とするメタルバード。
「メカルスめ、わざと俺達に負けて……ウィルスを拡散しやがったんだ! このままじゃ俺達も危険だ! くそっ!」
メタルバードは、全てがメカルスの策であった事実を悟って途方に暮れてしまう。
すると其処に、ウィルス拡散の影響で通信がやや不安定な状態になってしまったのか、総合通信士のウッズがようやく通信で連絡を入れてきた。
「ガ……こ……こち……聖龍隊……ほん……此方、聖龍隊本部、応答してください! 皆さん、無事なんですか?」
ウッズは更に全ての異世界の現状も報告しつつ、皆に戻るよう伝えた。
「既に地球も、他の異世界もメカルスのウィルスで大パニックです! そこに居ては危険です。一度、戻ってきてください!」
この最悪の事態に、修司は激しく苛立っていた。
「くそっ! メカルスめ! 絶対、赦さないぞ!」
そして別所でメカルスの暴動に対応していたスター・コマンドー総部隊長である村田順一も、この事態に悲観していた。
「やはり、戦うだけでは今までの繰り返しになる……戦っても、何も解決しないんだ……」
順一が悔やむばかりでいる中、聖龍隊全隊士は一度本部に戻る事に。
本部に戻った聖龍隊は、各地・各異世界からの報告を受けて事の深刻さを痛感していた。
「事態は想像より遥かに深刻だ。メカルスの爆発によって、地球上だけでなく各異世界にもウィルスが広がり、二次元人も三次元人も混乱している。更に宇宙ステーション「希望」までもが、地球に向かっているというオマケ付きだ。このままだと、16時間後に地球と衝突して……二次元人も三次元人も、何もかもが滅亡の危機に陥る」
他の異世界までも混乱している状況で、宇宙ステーションの落下という非常事態までも起きてしまっている現状に修司は険しい面持ちを浮かべる。
宇宙ステーションの落下を受けて、ウッズも冷静な判断を皆に伝えた。
「それだけは避ける為にも、宇宙ステーションを破壊するしかありません! ……しかし、今現在聖龍隊が所有する兵器でマトモに稼働できるのは……エニグマと呼ばれる古いレーザー兵器しか残っていません。後はスペースシャトル、オートパイロットはウィルスで機能しませんので……誰かが近づき、ステーションにぶつけるしか作戦はありません」
落下する宇宙ステーションを破壊する為に、まずは旧式のレーザー兵器「エニグマ」を発動させる必要があると聞いて、修司は聖龍隊でも凄腕の技師であるフロートに問い掛けた。
「エニグマの状態はどうだ?」
「どうもこうもねえぜ。エニグマを使うにはパーツの補強が必要不可欠だ。このままじゃ、何も破壊できやしねえ」
無粋な表情のフロートから報告を受けて、修司は険しい表情で口を開いた。
「ウィルスで沢山の聖龍隊士も、
こうして聖龍隊はコントロールを革命軍士に奪われ、地球に軌道を向けてしまった巨大宇宙ステーション「希望」を破壊する為、レーザー兵器「エニグマ」を再起動する為の部品を集めて、宇宙ステーションの地球消滅を食い止める戦いへと乗り出していった。
この非常事態に、各地・各異世界での暴動や混乱を治めるべく、多くの隊士が出動する経緯から、聖龍HEADが直々に部品回収の任務を負う事になった。
「とにかく、まだステーション衝突まで16時間……16時間内にパーツを集めて、エニグマを起動させねえと……」
聖龍隊副長メタルバードは時間内にエニグマの補強部品を集めなければと使命感を燃やしていた。
「今から皆さんに、エニグマ補強パーツの所在地をモニターに映して説明しますね」
そしてウッズは、これからHEADが向かうべきエニグマの補強部品を持っていると見られる所有者達の地点をモニターに映し出した。
「グリズリー、武器のブローカー、オリハルコンを所持」
「マッコイーン、水素を作るための海を占領している」
「クラーケン、元
「ホタルニクス、レーザー工学の権威 レーザー装置を所持」
以上のパーツ所有者をモニター画面に映し出され、修司が付け加える。
「他に四人の異常発生者が出ているが、エニグマに関するパーツを所持しているのは、この四人だ」
更に修司は、今のところ本部に残っている戦闘可能な隊士である自分達HEADに通達した。
「この四人と戦えるのは、残った隊士で活動できる……聖龍HEAD、すなわち俺達だけだ。各自、分散してパーツを集めるんだ!」
『了解!』
HEADは修司からの命を受けて、各々パーツの収拾へと着手していった。
[暴走トラックを追え]
聖龍HEADのうち一組、セーラームーン率いるセーラー戦士達が向かったのはレーザーの攻撃力を格段に上げる為の部品オリハルコンを所持する元軍人クレッセント・グリズリーであった。
グリズリーは現在、隠れ家である洞窟に潜んでいるとの情報を掴んだ聖龍隊は、そのグリズリーの許まで暴走している自動操縦式のトラックを追跡する事に。
「暴走するトラックを追跡、破壊してください! 秘密の倉庫へと向かっている筈です!」
総合通信士ウッズの指示の元、セーラー戦士たちはウィルスの影響で暴走している無人トラックを破壊しながら、前を進む別のトラックへと飛び乗っていく。
トラック先端には、核ともいえるコアが存在しており、そのコアを破壊すればトラックも爆発して停車する仕組みだった。
セーラー戦士たちは急いでコアを破壊していき、次々と暴走トラックを爆破・停車させていく。
すると、セーラー戦士たちの行動が原因か、トラックの群れが次々と爆発し始めた。
「トラックが既に爆発していきます! 急いで先に進んでください!」
ウッズからの助言に、セーラー戦士達は急いでトラックを乗り継いで先へ先へと全速力で駆け抜ける。
そして何ということか、セーラー戦士たちが飛び乗った最後のトラックの前方から別の無人トラックが疾走してきて二台が衝突寸前の危機に。
これにセーラー戦士達は慌てつつも、即座にトラックから降りて洞窟入り口へと辿り付いた。
「その先に巨大な生体反応があります! おそらくグリズリーでしょう、先を急いでください!」
時間に余裕が無い現状からか、先を急がせるウッズ。しかし時間が無い現状をセーラー戦士たちも周知している事から、彼女達は言われるがままに早々に洞窟の最深部へと急いだ。
そして洞窟最深部。
広い坑内の現場で、セーラー戦士たちが辺りを見渡してみると、上方から巨大な影が地面に向かって着地してきた。
それこそ他でもない、クレッセント・グリズリーであった。
「聖龍隊か! お前らを見てると、この右目と左腕の傷が疼くぜ……」
潰れた右目、強力なドリルなどの武器に変形できる義手をチラつかせるグリズリーを見て、セーラームーンが悲しげな面持ちで話し掛ける。
「昔、修司くんが暴走した時に受けた古傷ね。でも、今は……」
その昔、修司が米軍に在籍していた頃に、謎の実験で暴走した際にグリズリーの右目を潰した上に左腕も切り落とされた経緯を前もって知っているセーラームーンは悲観しながら嘆願する。
「早くオリハルコンを渡して……時間が無いのよ……」
セーラームーンと同じく、セーラーマーキュリーも地球存亡の為にオリハルコンを渡して欲しいと嘆願。
しかしグリズリーは不敵な笑みを浮かべると、セーラー戦士たちに告げた。
「いつもの様に力尽くで奪ってみれば良いじゃないか……
「な、何だと……ッ!」
「まもちゃん、堪えて!」
グリズリーの発言に興奮しそうになるキング・エンディミオンをセーラームーンが制止する。
「はっ、聖龍隊も革命軍士も好戦的だな、どいつも一緒だぜ」
「一緒にしないで!」
聖龍隊と革命軍士を一緒にするグリズリーの言動にセーラーマーズが反論する。
そんな一触即発の雰囲気になってしまう双方だが、グリズリーは更にセーラー戦士たちに義手を振るいながら言った。
「……やってる事は一緒だぜ。オレは武器を流すだけ……お前らは邪魔者を全て消す……修司から受けた傷のカリを返すぜ、聖龍隊め!」
「今は地球存亡の危機なのっ、だから戦ってる暇などないわ」
好戦的なグリズリーの発言にセーラーサターンが拒否するが、グリズリーはこれに言い放ち返した。
「全て定められたもの、逃げることは出来ない」
最後にグリズリーは、目前のセーラー戦士たちにこう言い放った。
「オレは既に
過去に修司によって受けた右目と左腕の古傷が、修司と今でも親しくしている聖龍隊を見ていると疼くと説くグリズリーは、セーラー戦士達に容赦なく襲い掛かっていった。
暴走アイアンクローの異名をとるクレッセント・グリズリー。ツキノワグマ型の獣人タイプの二次元人。
現在は戦利品を売買している武器のブローカーであるが、以前は軍人だった。軍人である頃に、暴走した修司と戦った折、右目と左腕を失い、左腕は現在ドリルなどに変形できる義手にしている。
以前は強い相手と戦い武器を勝ち取ることに生き甲斐を感じていたが、最近では商業活動である武器の横流しの方で多忙らしい。
そんな凶暴なアイアンクローを唸らせるグリズリーは、大きな体でゆったりとセーラー戦士たちの方へと跳躍して、回転する三日月形のエネルギーカッターを義手から前三方向に放ってきた。
セーラー戦士達はグリズリーの義手から放たれるエネルギーカッターを避けながら、もうグリズリーとは話し合いは無理だとして戦う覚悟を決めた。
しかしグリズリーは容赦なくセーラー戦士達に必殺のエネルギーカッター「クレッセントショット」を左腕の義手から放ち、押し迫ろうとしていた。
そんなグリズリーにセーラー戦士達は何とか反撃しようと技を放っていくのだが。
なんとセーラー戦士たちの必殺技は悉くグリズリーの身体に弾かれて、効果が無かったのだ。これに驚きを隠せないセーラー戦士たち。
すると此処でグリズリーがセーラー戦士の中でも最も最年少であるセーラーサターンに、鉤爪付きの義手で切り裂こうと襲い掛かる。しかしこれをセーラーウラヌスが短刀で受け止め、グリズリーの攻撃を防いだ。
「ぐふふ、やはりお前らも修司に似て好戦的だな。修司の様に災いしか、争いしか招かない危険な……そう、
「ち、違うわ! 修司は何も、そんな子じゃ……!」
ウラヌスと押し合うグリズリーが、セーラー戦士たち聖龍HEADを修司同様に危険な存在だと嘲ると、セーラームーンがそれに反論しようとする。
が、グリズリーは力でウラヌスを押し返すと高らかに吼えた。
「ガハハッ、だがお前らがオレに勝てる訳がない! 知ってんだぞ、お前達セーラー戦士は星の理を持つ戦士だと……だがオレは、それに対抗できる地の理を持っている二次元人なんだよ!」
なんとグリズリーはセーラー戦士達に対抗できる地の理を持つ二次元人。それ故にセーラー戦士たちの技が効かなかったのだ。
そして自らがセーラー戦士達に対抗できる力を持っていると宣言したグリズリーは、更にセーラー戦士たちを追い詰めていった。
苦戦に追い込まれるセーラー戦士たち。彼女達の誰もがグリズリーに有効な技を、いや力を持ってはいなかった。
と、セーラー戦士たちが苦戦に喘いでいたその時。グリズリーが傷付き倒れるセーラー戦士達にトドメの攻撃として雨の様なクレッセントショットを撃ち放った瞬間、そのクレッセントショットを一瞬で全て弾いた緑の閃光が先走った。
「なにっ? だ、誰だ!?」
自らが放ったクレッセントショットを全て弾いた緑の閃光を目撃して、グリズリーが何者だと問う。すると傷付き倒れていたセーラー戦士たちの前に、一人の緑の衣を纏った青年が現れた。
「……え……じ、ジュニアくん……!?」
セーラームーンが顔を上げると、自分達の目の前に立っていたのは小田原修司の兄弟分で聖龍隊参謀総長のジュニア・J・プラントことジュピターキッドだった。
満身創痍のセーラー戦士達に背を向け、グリズリーと対峙するジュピターキッドは茨の鞭を振るう。
「ど、どうしてジュニア君が此処に……?」
セーラージュピター達が疑問に思っていると、その呟きが耳に入ったのかジュピターキッドが答えた。
「なあに、今さっきグリズリーがみんなが苦手とする地の理を持っていると聞いて、急いで駆け付けた訳さ。同じ地の理を持っている僕なら、多少はグリズリー相手に有利かなって判断されてね」
そうジュピターキッドが説明してると、そこにグリズリーが有無を言わない程の速さでジュピターキッドに襲い掛かってきた。
「ジュピターキッド!」
キング・エンディミオンが叫んだ瞬間、ジュピターキッドは逸早くグリズリーの急襲に気付いて、茨の鞭を大地に振り当てて地面から巨大な茨を自生させ、グリズリーに茨を纏わり付かせる。
「ぐおっ!? こ、こいつは……!」
茨の草木が纏わり付いたグリズリーは慌てふためき、そんなグリズリーにジュピターキッドが言い放つ。
「僕が自生させた植物は簡単には振り解けないよ。さあ、大人しくオリハルコンを渡して降伏するんだ!」
しかしグリズリーは次の瞬間、義手である左腕をドリルに変形させると、そのドリルで自分の身体に纏わり付く茨を悉く粉砕して再びジュピターキッドと対峙する。
「ハッ、なるほどな。流石は過去に、其処でくたばりそうになっているセーラー戦士共を痛め付けたジュピターキッド様なだけの事はあるぜ」
「へえ、今となっては懐かしい話をするじゃないか」
「聞いてるぜ、かつてセーラー戦士たちを圧倒させたジュピターキッドが、直々にオレの相手をしてくれるとは……こりゃ、殺し甲斐があるぜ!」
昔を懐かしむジュピターキッドと一時の会話をしたグリズリーは、大跳躍して坑内の天井に穴を掘って姿を消した。
すると次の瞬間、グリズリーはドリルに変形させた義手でジュピターキッドが立っている低い段差から出現して、ドリルで突くドリルアームで攻撃を仕掛ける。これにジュピターキッドは素早く反応して回避、移動する。
そして移動際にジュピターキッドは茨の鞭でグリズリーの唯一の視界である左目に叩き付けて反撃。
一時ばかし視界を完全に失うグリズリーだが、すぐに復帰して再び坑内の壁の中にドリルで掘り進んで身を隠す。
すると今度は横穴から姿を現して鉤爪で攻撃するクレッセントクローでジュピターキッドを引き裂きに来た。ジュピターキッドはこれを辛うじて回避すると、地面から再び茨の植物を生やしてグリズリーを確保しようと動くが、グリズリーはその巨体からは想像も出来ない速さで坑内を掘り進んで身を潜める。
と、次の瞬間、グリズリーは坑内の天井すなわち真上から出没して地上のジュピターキッドをドリルで貫こうと急降下で落ちてきた。これに驚いたジュピターキッドは慌てて天井から落下するドリルを回避する為に横へと移動し、そして考える。
(厄介だ……! あのドリルに変形できる義手を先に何とかしないと……!)
ジュピターキッドは先にグリズリーが失った左腕に装着している義手をどうにかしないと攻略できないと考え込んでいると、グリズリーは防戦一方のジュピターキッドや先ほどの戦闘で負傷して思う様に動けないでいるセーラー戦士達に向けて最大火力の技を叩き込もうとしてきた。
「これで終いだ……!」
グリズリーは正面に向かって回転する巨大な三日月形エネルギーカッターの「メガクレッセントショット」をジュピターキッドやセーラー戦士たちに向けて放った。
「くそっ」
ジュピターキッドは此処で自分の真正面に分厚い植物の壁を自生させて構成するが、グリズリーのメガクレッセントショットはその植物の壁を貫通して向こう側のジュピターキッド達を襲う。
「ぐっ……!」「きゃあっ」
巨大なエネルギーカッターに切り裂かれ、衣がボロボロになるジュピターキッドやセーラー戦士たち。
しかしジュピターキッドはグリズリーの攻撃を防げなかった時の事を考えて、ある策を一つ同時に講じていた。
それは「な、なんだ? 足に蔦が……!」なんとグリズリーの足元に植物の蔦を生やして、動きを奪う策だった。
「今だ! グリズリーの左腕を……!」
刃を持っていないジュピターキッドが、セーラー戦士達に刃で強力な武器でもある義手を切断するように言い付ける。これにキング・エンディミオンが颯爽と動いて、得物である剣でグリズリーの義手を切断した。
「このっ!」「うおっ!?」
エンディミオンの刃はグリズリーの義手を見事に切断した。
「ううっ……」
そして戦闘力の要である義手を失ったグリズリーは後ろめりに倒れそうに成るが、この時悲劇が起きてしまう。
「あっ、ダメ……!」
後方に倒れそうになるグリズリーをセーラームーンが呼び止める。そして次の瞬間、グリズリーの背後の地面に切断されながらも未だに高速回転するドリルが唸る義手が落下し、そこに倒れ込むグリズリーの背中をドリルが鋭く抉った。
「ぐほぉ……ッ!」
切断された義手が運悪く背後の地面に落下した事で、背中にドリルが貫通してしまったグリズリーは悶絶した。その情景を目の当たりにしたジュピターキッドやセーラー戦士達は余りの光景に絶句してしまう。
そして皮肉にも自らが用いていたドリル変形した義手によって背中に貫通してしまい悶絶してしまうグリズリーは、最後にこう聖龍隊に言い残した。
「だ、だから聖龍隊は……小田原修司に関係ある二次元人は、災いしか呼ばないんだ……。……ま、満足か……? 自分たち聖龍隊に歯向かう連中を消せて……満足、か…………」
そう言い残してグリズリーは果てた。
ジュピターキッドは、そしてセーラー戦士達はこうしてクレッセント・グリズリーとの戦闘を終えた。
何とも後味の悪い顛末で。
それから現場の聖龍隊士に、総合通信士であるウッズから連絡が入った。
「グリズリーが持っていたオリハルコンが見つかりました。これでエニグマの攻撃力が格段に上がる筈です。回収作業は他の隊士の方に任せますから、皆さんは聖龍隊本部に戻ってきてください」
ジュピターキッドとセーラー戦士達はウッズからの指示の下、聖龍隊本部に帰還した。
クレッセント・グリズリーの亡骸を横目に……。
聖龍隊本部に帰還したジュピターキッドとセーラー戦士たち。
しかしその矢先に、聖龍隊本部に謎の通信が入ってきた。
「謎のメッセージを受信します!」
通信士が発信源が謎のメッセージを画面に表示すると、其処にはヘルメットにアーマー姿の長い銀髪の青年が映し出された。
「誰だ、こいつは? 見た事がないぞ……」
修司を始め、一旦聖龍隊本部に帰還した聖龍HEADが画面を凝視していると、映像の青年は軽いノリで聖龍隊に対して宣戦布告とも呼べる話をしてきた。
「聖龍隊の皆さん、ご苦労様です……特に皆さんには恨みはないけど……仕事なんでね……近いうちに聖龍隊本部を攻撃させてもらいますわ……あ、修司さんにその他のHEADの皆さん居ますか? 相手になってくださいよ、ヒマなもんでね……ま、力抜いて戦いましょうや。スポーツみたいな感じでね……ククッ。あ、自分はニトロ、ニトロ・グリセリーノって言います。では、また後ほど……」
ニトロと名乗る謎の青年は、そう一方的に話をすると早々に通信を切って会話を終わらせた。
「こんな時にふざけたヤツだ。くそっ!」
修司は軽い調子で宣戦布告をしてきたニトロ相手に苛立つ始末。
「……あんな奴とも、戦わなきゃいけないのか?」
メタルバードも修司同様、ニトロに対して怒りを覚えてたが、その一方でニトロの言動に呆れ返ってしまう。
[海を取り戻せ!]
聖龍隊本部でニトロ・グリセリーノからの宣戦布告を受けた聖龍HEADは、再び各地に赴いてエニグマ補強部品の収集に懸かった。
そしてアニメタウン近海。聖龍隊本部は、ウィルスの影響で本部の施設が壊滅的な状況から、必要な水素を確保する為、アニメタウン近海から大量の水を調達しなければならなかった。
アニメタウン近海、その海底にはマーメイドプリンセス達の居城が聳えていたが、そんな海底に謎の大型戦艦が潜水して一帯の海を占領していた。
海底王宮から少し離れた海底で占領行為をする戦艦を前に圧倒される七海るちあ達マーメイドプリンセス達とウォーターフェアリー。すると彼女達にウッズから通信が入った。
「いきなり大型戦艦がお出迎えです! 海洋博物館の展示品が暴れ出すなんて、メカルスが放ったウィルスが如何に恐ろしいかが伺えます……仕方ありません、海を奪回する為に……大型戦艦と戦うしかありません。その先の複雑な地形に挟まれないよう注意してください」
海洋博物館から繰り出された戦艦は、ウィルスの影響か海中に出撃している様だ。指示を受けてるちあ達は早速、戦艦の撃沈に取り掛かった。
最初は前方の大砲からエネルギー弾を発射する戦艦に、るちあ達は前方にバリアーを繰り出して防御。するとその間に同行している堂本海斗と水の刃を持つウォーターフェアリーが斬り付けて攻撃。
防御は基本、争いを好まないるちあ達マーメイドプリンセスに任せて、海斗とウォーターフェアリーは果敢に戦艦を強力な刃で斬り付けて攻撃していく。
すると戦艦の真正面前方は爆発して大破。正面からの攻防が不可能になってしまった。
正面の砲撃が不可となってしまった戦艦は、一旦るちあ達から隠れる様に、より深い海底へと身を潜める。それを追う一行だったが、彼女達の前に今度は戦艦が後方の砲撃で迎え撃つ態勢で出現。戦艦後方から夥しい数の弾幕が発射される。
海斗たちは必死に弾幕を防いだり回避したりして、同時に反撃と言わんばかしに凄まじい斬撃を戦艦に打ち込む。
度重なる砲口からの弾幕に苦戦するるちあ達であったが、どうにか後方の砲口も全て破壊して戦艦を戦闘不能に追い込んだ。
しかしそれと同時に複雑な地形に入り込んでしまった一行は、そのまま奥へと押し出されてしまう。
そして気が付いた時には、一行は謎の沈没船の中に入り込んでしまってた。
「そこは……遥か昔の沈没船? 戦艦はその先に逃げ込んだらしいです、急いで追ってください!」
迷走してしまいそうな現状でも冷静に現場の隊士達の地点と活躍を見守るウッズは、現場のるちあ達に的確に指示を出していく。
一行はそのまま沈没船の内部を進んで、外部に出ようと必死に進む。するとようやく沈没船の外に出られた。
しかし安心したのも束の間、外に出た一行の前に再び戦艦が出現。最後に残った戦艦上部の砲口から数多の弾幕を発射して一行に攻撃。
海斗達はこの弾幕を防ぎながら、砲口の破壊と今度こそ戦艦を沈没させようと奮闘する。
そして懸命の応戦の末、一行は遂に大型戦艦を撃沈させる事に成功した。
無事に大型戦艦を撃破した一行は、より深い海中へと潜行していった。
すると彼女達の前に、巨大な影が出現。その影の正体こそ、大型戦艦を裏で操っていた海洋博物館館長兼海上警備隊隊長を務める、七海るちあ達マーメイドプリンセスとも面識のあるマッコウクジラ型の獣人ダイタル・マッコイーンであった。
マッコイーンは何だか調子の悪そうな様子で自分の許に来たるちあ達を出迎えた。
「マーメイドプリンセスたち……久しぶりじゃな」
具合悪そうなマッコイーンに、七海るちあが切願を訴える。
「アニメタウン近海の、この海を……私達みんなの海を使わせてほしいの……」
するとマッコイーンは全てを察している様子で答えた。
「エニグマに大量な水素が……ようは海が必要だと」
「話が早くて助かるわ。ぜひ、協力してほしいです」
理解が早いマッコイーンにリナが協力を求めると、マッコイーンは冴えない顔色で願い出た。
「プリンセス達よ……わしはもうウィルスに侵された……最後の記念に、一度戦ってくれないか? 海の漢としての戦い! 手加減抜きだぞ」
「そ、そんな……!」
突然のマッコイーンからの告白に戸惑うるちあ達。しかし一人だけ男の海斗は、このマッコイーンの嘆願に返答した。
「……分かった、海の漢としての申し出、確かに受け取った。相手してやるぜ、マッコイーン……!」
「え!? か、海斗……」
「るちあ、これも聖龍隊としての使命……後々館長は
海斗はるちあに言伝すると、静かに剣を抜いて大海の守護神の異名をとるマッコイーンと戦闘を開始した。
マッコイーンは自身の能力で、海水を一瞬で凝固して形成した氷塊を、連続で形成して一行に向けて放ってきた。
るちあ達は連続で放たれる氷塊をどうにか避けつつ、マッコイーンに強烈な斬撃をお見舞いする。クジラの獣人であるマッコイーンは、皮膚が非常に弱く切傷は致命的であった。
切り傷を負わせられたマッコイーンは、頭部から高水圧を持つ特殊な体液を噴出して、それで発生した波で一行を襲う。
この大波に、水を自在に操れるウォーターフェアリーが大波を操作して二手に分かれさせて自分と皆を回避させた。
しかしマッコイーンは更に五発の大波を発生させて、るちあ達を波で襲撃する。
流石にウォーターフェアリーでも五発連続で発生する大波を一度に操作するのは難しく、彼女達は大波に呑まれて困惑してしまう。
すると其処にマッコイーンは装備しているサメ型照準ミサイル、通称シャークミサイルを発射して一行を迎撃しようと図る。
るちあ達は何とかシャークミサイルから逃れられたが、マッコイーンはその巨体でるちあ達を弾き飛ばそうと突進してきた。
「わあっ!」
マッコイーンからの突進を回避したるちあ達。その最中、海斗は避け際に剣でマッコイーンの巨体を突いて、そのまま横一直線に切り裂いた。
海斗が付けた巨大な切り傷からは、夥しい量の血が噴き出し、海を真っ赤に染め上げる。
しかしマッコイーンの猛攻は留まる事を知らず、口から氷塊を出すアイスブロックを一度に三個も吐き出して、るちあ達にぶつけようと攻撃。
既にるちあ達の周りの海水は、マッコイーンの血で紅く染め上がり、マッコイーンも出血多量で息が絶え絶えになっていた。
早くマッコイーンを楽にさせようと、海斗はマッコイーンが吐き出す氷塊の波に突っ込んだ。
「か、海斗!」
るちあが叫ぶ中、海斗は氷塊を寸でのところで回避しながらマッコイーンに突っ込んでいった。
そしてマッコイーンに接近した瞬間、海斗は握り締める剣でマッコイーンの額を突き刺した。
「ぐおっ!」
マッコイーンの雄叫びが海中に響く中、海斗は額に突き刺した剣をより深く突き刺すと次にそれを引き抜く際にマッコイーンの額を強烈に切り裂いた。
真っ赤だった海が、より一層マッコイーンの血で紅く染まり、マッコイーンは更に大出血する。
するとマッコイーンは、途切れ途切れの口調でるちあ達に述べた。
「さ、最後に……本気、で……戦ってくれて……あ、ありがと…………」
マッコイーンはそう言い残すと、静かに海の底へと沈んでいった。
「館長ーーーー……ッ!」
海斗は自らの手で葬ったマッコイーンに向かって叫んだ。
そしてその直後、マーメイドプリンセス達は海底に消えていったマッコイーンを偲んで鎮魂歌を合唱したという。
マッコイーンとの戦闘が終わり、聖龍隊本部に帰還する前に一行はウッズから通信を傍受した。
「これで海から大量の水素を作り出せます。聖龍隊本部がマトモに機能していれば、わざわざ海から水をくみ上げる事もないんですけど……皆さん、聖龍隊本部に戻ってきて下さい。まだまだ私達の仕事は残っています」
地球消滅までのカウントダウンは迫っている。今は立ち止まっている場合ではない。そう自分に言い聞かせた一行は本部に帰還するのだった。
しかし、その頃の聖龍隊本部では緊急事態が発生していた。
「緊急事態! ニトロが聖龍隊本部を攻撃中! 直ちに応戦してくれ!」
あのニトロ・グリセリーノが宣言通り聖龍隊本部を攻撃してきたのだ。
この事態に聖龍隊はニトロを迎え撃つ事となる。
[一騎打ち①]
だが此処で大きな問題が。
戦前である現場で活躍する隊士たちが出払っている為、ニトロに対応できる隊士が不在だったのだ。
この事態に総長・小田原修司は、自ら出撃してニトロを迎撃する事になった。
既にレーザー兵器エニグマの完成が着々と進行する中、ニトロは迎え撃って出た一般隊士たちを悉く倒していた。
修司は力尽き、満身創痍になっている隊士達を尻目にニトロへと進攻した。
そして現場に到着した修司の目の前に、そのニトロが姿を現して修司と対峙した。
「初めまして……あんたが、かの有名な……全く懲りない聖龍隊の総長……修司かい?」
「お前には関係ない事、何がしたい?」
「取り敢えず、お宅らの邪魔をするだけかな? あ、でも、邪魔するだけで……殺したりはしないから……お宅らは死ぬまで戦わないと気が済まないんだろ?」
「………………」
「クールだねーー、何言っても無駄かな? だったらお望み通り戦いますか」
寡黙な修司と、陽気でお喋りなニトロとの一騎打ちが始まった。
「喰らいな!」
まず最初の一手にニトロはエネルギーブレードをブーメランの様に投げ付けて、修司へと遠距離攻撃を仕掛ける。が、修司は投げ付けられたブレードを聖龍剣で弾き返すと、そのままニトロへと斬りかかる。
するとニトロは次に、装備していた銃を手に持ち、それを連射して向かってくる修司を迎撃した。
「ッ!」
一瞬動揺する修司だが、素早く反応してニトロが撃った弾丸を刀で弾いて我が身を守る。
そして一気に踏み込むと、修司はニトロに今度こそ斬りかかって行った。しかしニトロは自らの愛用武器Dブレードで修司の剣戟を辛うじて防ぎ切る。
激しい鍔迫り合いの最中、修司はニトロに問い詰めた。
「ッ……お前が、あの宇宙ステーション「希望」を地球に向けた実行犯ってのは事実か……!」
「おやおや、そんな昔の事まで知っちゃってるの? 聖龍隊も、そんなところに力入れるとは……案外ヒマなんですねえ」
自らがメカルスに加担し、宇宙ステーションを占拠した上に軌道を地球に向けた実行犯である事を認めつつも、ニトロは全く悪びれる様子ではなかった。
そんなニトロに修司は怒りの剣戟を激しく振るっていくが、ニトロはこれを余裕で受け流し、そして身を反らして修司と距離を置く。
距離を置いたニトロは所持していた砲弾を修司に向けて発射。修司は一発目を聖龍剣で切断して防ぐが、二発目には剣で直撃を免れたものの当たってしまう。
すると修司は奥の手として、自らの手を地面に着いて驚異的な技を発動させる。
「これで、どうだ!!」
次の瞬間、修司の手から闇の波動が噴き出して辺りに放出。辺り一帯は闇の波動に吹き飛ばされて物が散乱する。
しかしニトロは、この波動を意図も簡単にかわしてしまい、修司をおちょくった。
「へぇ、これがかの有名な
修司は自らが発動させた
それはニトロが自らの腕部を媒介に、そこからエネルギーを放出させて、修司が先ほど見せた技と同様の技を繰り出してきたのだ。
修司は当たるまいと必死に避けるが、微かに攻撃が身体に触れてしまい微傷を受けてしまう。
そんな修司に追い討ちをと、ニトロは自らの掌からエネルギーを発射、それが二手に分かれて修司を追尾する。修司は一発目を回避し、二発目を聖龍剣で叩っ斬る。
修司は再度ニトロに急接近して、ニトロを斬り付けようと聖龍剣を振り上げるが、ニトロに行動パターンを読まれてしまったが為、簡単に受け流されてしまう。
それでも修司は諦めず、ニトロに斬りかかって行く。そして修司とニトロは激しく鬩ぎ合う。
しかし戦況は五分五分、修司とニトロは互いに一歩も引かずに奮闘し合う。
「ふぅ、意外と長引きそうだねえ、あんたとは。だが、オレもそんなに長く遊んでいる暇はないんだよねっ」
そう言うとニトロは修司の頭部に斬りかかってきた。修司はそれを聖龍剣で何とか防ぐ。
するとその時、修司の目付きが変わった。
修司はニトロを睨みつけて一喝すると、ニトロのDブレードを押し返して弾き、ニトロの胴体をがら空きにした。その瞬間「地走り!」と修司が声を上げると、剣から放たれた斬撃が地面を沿ってニトロを追尾。その斬撃はニトロに直撃した。
「うおおっ!?」
大地を駆ける斬撃「地走り」を受けて、ニトロは絶叫した。
意外にも苦戦を強いられたニトロとの闘いに辛くも勝利した修司。すると修司に斬り付けられたニトロは、修司の強さを認めながらも核心を突いた台詞を吐いた。
「やっぱ強いわ……マジだもんな? 今回はこのぐらいで逃げるとするかな。もうちょっとリラックスしないと体もたないよ、あんた。じゃあ、またな! シーユーアゲイン!」
「あ! 待て!」
修司はニトロを捕まえようと駆け寄るが、その前にニトロは姿を消してしまう。
「じゃあな!」
最後にそう言い残し、ニトロは去っていった。
果たして彼は何者なのであろうか。
謎の傭兵、ニトロと一騎打ちを終えた修司は聖龍隊本部のモニタールームに戻り、各異世界の状況を確認する。
「こちら修司、各異世界の状況はどうだ?」
すると各異世界で奮闘している仲間の隊士達から報告が返ってきた。
「こちら平賀才人!
「ガッシュ・ベルなのだ! 我輩の魔界も、まだ混乱が収まってないのだ……!」
「こちらはセフィーロ……こっちでも未だメカルスウィルスの被害が広がる一方だ……!」
この各報告に修司は激しく感情を昂らせてた。
「総長! アニメタウンで、また新しい
「聖龍隊! 至急、此方の世界に応援を……!」
「此方の軍勢では
多くの異世界で発生する
こうなったのは、全て己がまだまだ弱いから。そんな気持ちが修司の心の底から湧き上がっていたのだ。
[電気トラップ! 電子の要塞]
修司が聖龍隊本部で急襲してきたニトロ・グリセリーノと激しい一騎打ちをしていた頃。
とあるエネルギー研究所に四人の聖龍HEADが赴いていた。
それは聖龍隊副長メタルバードを筆頭としたコレクターユイ/コレクターハルナ/コレクターアイの電子機器に精通した四人であった。
四人は防犯上の都合から、数多の電子機器で数多くのトラップを仕掛けているエネルギー研究所に侵入していた。
数多のトラップを、少しずつ解除していきながら慎重かつ迅速に研究所奥へと進行する四人。
此処の研究所にはエニグマを発射する為のエネルギーが保管されている。四人は研究所の安全を確保し、所員を救出しながら最深部へと進む。
最深部には、ここのエネルギー研究所でエネルギー工学の研究職に就いている元ハンターであるイカの獣人ボルト・クラーケンが。彼が所有しているエネルギーカートリッジはエニグマ発射には欠かせない貴重な部品だ。
数多のトラップを掻い潜り、四人はようやくボルト・クラーケンの所まで辿り着いた。
四人が部屋に入ると、其処には静かに四人を待ち受けていたクラーケンの姿が見受けられた。
「ボルト・クラーケン、話があるの……聞いて!」
コレクターユイがクラーケンに急いで話を持ち掛けようとすると、クラーケンは女口調で言い返す。
「久しぶりのご対面だというのに挨拶もお詫びもなく、いきなり頼みだなんて……相変わらず乱暴ね」
ボルト・クラーケンはハンター業務を行う聖龍隊の職務に疑問を持ち、ハンターを引退した現在はエネルギー研究の研究職に就いていた。
「オクトパルドの事は、本当に申し訳なかったと思ってるわ……」
過去にクラーケンと親しかったランチャー・オクトパルドを同じ聖龍隊のマン・ヒールズが倒した経緯についてコレクターハルナが謝罪を述べると、それについてクラーケンは丁寧に話し返した。
「そんな昔の事、根に持って無いわよ……聖龍隊の職務なんですし、
クラーケンはオクトパルドがマン・ヒールズに倒された際は、彼の自業自得と理解していたのだが、心のどこかで彼の死を受け入れられなかった。それもその筈、クラーケンはオクトパルドを愛していたからだ。
「私が愛したオクトパルド……彼は自分の仕事に誇りを持っていたわ。だからその分、メカルスの反乱に加担してしまったんでしょうけど……だけど、まだ正気を保っている二次元人でも碌に説得もせず、あっさり処分命令を下す今の政権のやり口は考え物よ」
「「「「………………」」」」四人は黙ってクラーケンの話に耳を傾けた。
「いつの世も、私の様なゲイとかの同性愛者といった少数派の意見には耳を貸さず、多数派の意見ばかりを聞いて、
偏見を持たれる人々の少数意見に耳を貸さずに、政策を行う世論に愚痴を零すクラーケン。そんな彼にコレクターユイが再度願い出る。
「……お願い、時間が無いの……エネルギーカートリッジを……」
そんなコレクターユイの切願を聞くと、クラーケンは半ば自暴自棄ではあったが提供を承諾した。
「そんなもん、いくらでもくれてやるわ……あなた達もおめでたいわね。そんなの手に入れたところで……もう地球はおしまいよ! 二次元人は誰もがウィルスに侵されて……ヒ、ヒ、ヒー、ル、ルル……」
と、突然クラーケンの様子が一変した。
「……いけない! ウィルスに侵されていたのね!」
既にクラーケンはウィルスに侵されて、正気を失いつつあったのだと理解したコレクターアイ達は激しく動揺。そして正気を失ったクラーケンは聖龍隊である四人に迫ってきた。
「ガッ―ー、セイリュウタイ? ……シマツシテヤルヨ! オクトパルドノヨウニナ!」
超電磁の罠の異名を現役時代にとっていたボルト・クラーケンと聖龍隊四人の戦いは始まってしまった。
クラーケンは三方向に向かって特殊な電撃を発する電磁弾を発射し、四人に電撃を喰らわせようとする。
「避けろッ」
メタルバードが三人に指示を出しつつクラーケンに反撃しようとするが、その前にクラーケンは帯電した身体でコレクターズの三人に接近してきた。
「迂闊に触れるな! 感電するぞ!」
メタルバードの指示で、三人はクラーケンから急いで離れる。
攻撃してくるクラーケンに対抗しようと、メタルバードは三人に指示を出しながら自らも電撃砲で応戦する。
「クラーケンの体は常に電流が纏っている! 水系の技で攻撃すれば、自分の電気でショートして奴自身も感電しちまう!」
メタルバードからの助言を聞いて、コレクターズは早速変身した。
「「「エレメントスーツ アクア!」」」
水属性の技が使えるエレメントスーツに変身した三人は、素早くクラーケンへ水系の技を放った。
「グピッ グギュルルル……!」
自らの電気に感電したクラーケンは目を回して、その場で慌てふためいた。
するとクラーケンは目の色を変えて二本の長い触手から特殊な陣形をした電撃を放つ。
「この電撃はオレに任せろ」
そう三人に言うとメタルバードは前に出て、陣形を成した電撃を一身に受け止める。すると全身を機械化したメタルバードは電撃を全て吸収して己のエネルギーへと変換する。
「わあっ」「流石ね、メタルバード!」
コレクターユイとコレクターアイ達が絶賛する中、メタルバードは吸収した電気エネルギーをクラーケンに放ち返した。
「うおりゃッ!」
しかしクラーケンはメタルバードが放った電撃砲をひらりとかわしてみせる。
クラーケンは次に、皆の頭上から電磁石で形成されているブロックを落下させてきた。
「わわわ、避けろっ」
メタルバード達は慌てて頭上から降り注ぐブロックから遠ざかる。
しかしブロックが落下して来た事で、行動範囲が狭くなってしまった。
「これじゃ動きにくいよ……っ」
「でも、このブロックじゃクラーケンも自在に電撃を当ててくるのは難しいんじゃない?」
コレクターハルナが呟く中、コレクターアイがブロックに手を押し当てながら語っていた、その時。
ブロック向かい側のクラーケンが長い触手を伸ばしてブロックに押し当てると、そこから強力な電撃が放流。ブロック越しに通電してしまう。
「うわあっ!」「愛ちゃん!」「愛!」
ブロックに手を当てていた為に感電してしまうコレクターアイを見て、コレクターユイとメタルバードが叫んだ。
そしてブロックには強力な電気が流れた事で、より行動範囲が狭まれてしまう4人はクラーケンとの戦いを続けた。
するとクラーケンは今まで以上に素早く移動し、次々と電磁弾を発射して四人を追い詰めていく。
「攻撃のチャンスを逃すな、隙を窺え!」
メタルバードからの助言を耳に入れながら、懸命に回避していくコレクターズ。
そんなコレクターズにクラーケンは狙いを絞ったのか、長い触手を最大限に伸ばしてきてコレクターズを捕まえようとしてきた。
そのクラーケンの触手に、コレクターハルナが捕まってしまった。
「きゃあああっ」
クラーケンの強力な電気が直接コレクターハルナの体に流されてしまう。
そんなコレクターハルナの危機を、メタルバードがクラーケンの触手を自らの刃に変形させた腕で断ち切って救い出す。
「ハルナ、大丈夫か!?」「ば、バーンズ……」
満身創痍のコレクターハルナをメタルバードが抱き寄せる。
しかしクラーケンの暴走はやまず、彼はより一層と攻撃心をむき出しにして襲い掛かる。
この事態に長期戦は避けようとするメタルバードは、最後の策を実行に移した。
「おい、結!」
「な、なに?」
「オレがいっちょ、銛に変形するから、お前はそれにアクアスーツのエネルギーを充填してからクラーケンに投げ付けろ! アクアパワーを込めた武器ならクラーケンも大人しくなるだろう」
「わ、分かったわ!」
メタルバードの指示通り、コレクターユイは銛に変形したメタルバードを持つとそれにアクアスーツのエネルギーを充填し始めた。そしてエネルギーが充填し終わると、コレクターユイは全力でクラーケンに向かって銛に変形したメタルバードを投げ付けた。
「グギャッ……!」
すると何ということか。クラーケンに銛が突き刺さり、そのまま彼の身体を貫通してしまった。
そして更にクラーケンの身体を貫通した銛は、そのまま背後の電圧機にも突き刺さり、銛を通して強大な電気がクラーケンの体に流れたのだ。
眩い電気を帯びて、全身が感電するクラーケンの姿を目の当たりにしてコレクターズの三人は絶句してしまう。
そしてクラーケンは感電した事で真っ黒焦げとなり、完全に絶命してしまった。
コレクターズの三人が感電して黒焦げと成り果てたクラーケンを茫然とした面持ちで見据えていると、そのクラーケンの命を奪った銛に変形していたメタルバードが姿を戻した。
「……これでクラーケンの一件は済んだ。早くエネルギーカートリッジを運ばないと、地球が危ない」
そう語るメタルバードの話を聞いても、自分達がクラーケンの命を奪った経緯にコレクターズは複雑な気持ちを抱え込んでた。
そんな三人にメタルバードが言う。
「仕方の無かった事だ。クラーケンは既に
メタルバードからの指摘に、三人は何も言い返す事ができなかった。
そして任務を終えた四人の元にウッズから通信が入った。
「トラップだらけで大変だったでしょう。お陰様で貴重なエネルギーを入手できました。元ハンターだったクラーケンを倒したのは心苦しかったでしょうが、彼の為にも必ず地球を救いましょう!」
こうして辛くもクラーケンを突破した四人は、痛心の中聖龍隊本部に帰還するのだった。
[城塞への潜入]
同じ頃、別の研究所では。
いや、そこは研究所と呼ぶには余りにも変わり果てていた。
まるで城塞の様に様々な防衛システムで固められた研究所に、キューティーハニーとちせ、そしてミラーガールの三人が乗り込んでいた。
「そこの研究所は、レーザー工学の権威ホタルニクス博士の研究所です。博士は自身の研究を守る為にも、研究所を要塞化しているみたいです……かなり偏屈で頑固だと聞いていますが、何とか説得して博士が所持するレーザー装置を貰ってきてほしいです。あ、それと因みに研究所の防衛システムは既にウィルスで暴走しているようです。強行突破の許可が下りましたので、気を付けながら進行して下さい」
ウッズから研究所が研究保護の為に要塞へと造られている事情や、所有者であるホタルニクス博士が一種の変わり者である事を聞いた三人は、要塞と化している研究所へと強行突入した
研究所内部は、思ったとおりレーザーなどの数多のトラップが仕掛けられていた。
三人は協力してトラップを破壊していくと同時に、強力なレーザーに関してはミラーガールの盾で撥ね返しながら先へと進む。
既に防衛システムの殆どがウィルスの影響で異常を来し、完全に暴走していた。
そんな状況の中、ミラーガール達の前に問題を起こしているメカルスウィルスが迫ってきた。
「いけない、メカルスウィルスだわ!」
メカルスの頭部の姿をした、メカルスウィルスは実体のない存在。故に三人は回避する事しかできなかった。
だが、メカルスウィルスは未だ感染してない三人に注目したのか、一斉に三人の周りへと集まり出した。
「! いけない、ウィルスが集まり出したわ!」
キューティーハニーが声を上げるが、ウィルス達は壁をもすり抜けて彼女達に迫ってくる。
そして完全に包囲されてしまうと、ウィルスは最初にちせへと襲い掛かった。
「うわっ」「ちせさん!」
ウィルスに襲われるちせを見て、ミラーガールが声を上げる。すると次はキューティーハニーへとウィルスは飛び掛った。
「ぐっ」
そして最後にミラーガールにまでもウィルスが襲い掛かり、三人はウィルスの被害を受けてしまう。
「み、皆さん! 大丈夫ですか? 返事してくださいっ」
三人の非常事態にウッズが通信で呼びかけると、三人は半ば苦しそうに応答した。
「……だ、大丈夫です……」
「何とか、
「だけど、物凄く肉体にダメージが……」
ちせやキューティーハニーにミラーガールの応答を聞いて、ウッズは取り合えず安心した。
「ほっ、どうやら
そして三人は、数多のレーザートラップを突破してシャイニング・ホタルニクスの許へと到達した。
城塞な外見の研究所最深部で、博士は真っ暗闇の一室から輝きを放ちながら姿を現し、三人と対峙する。
「随分と手荒な訪問じゃな」
蛍の昆虫人シャイニング・ホタルニクスは、強行突破して研究所に潜入してきた三人の行動に難癖をつけた。
「此処の研究所も、だいぶウィルスに侵されていました。手荒な真似で入ってきた事は謝ります」
そんな博士にちせは素直に謝罪を述べるが、ホタルニクスの気持ちは晴れない。
「フン、聖龍隊はいつもそうじゃ……ワシの研究は、聖龍隊の為ではない。君達のやり方には、前々から疑問があった。故に協力できない」
「博士……そんなこと言っている場合では!」
自身の研究を兵器に使用されるのを嫌うホタルニクスの言い分に、キューティーハニーが訴えるものの博士は切実に話し返してきた。
「この体も既に毒牙に……ウィルスに侵されている。自分が間違っているのは重々解っている。責めて、最後だけは……ワシの意志を貫かせてほしい。君たちの……聖龍隊でも謎に満ちているミラーガール、君たちの事を調べさせて欲しい……ワシのこの探究心を満たさせて欲しい!」
「そんな……!」
既にウィルスの侵され、己の中の探究心を抑え切れないでいるホタルニクスは今でも解析し切れないミラーガール達の能力に興味を持っていた。そんな博士の言い分を聞いてミラーガールは悲観する。
そんな三人を前に、ホタルニクスは切実に訴えた。
「さあ、最期だ……ワシを楽にしておくれ!」
こうしてミラーガール達の思いも虚しく、知性の輝きといわれたシャイニング・ホタルニクス博士と戦わざるを得なくなった。
ホタルニクスは既にウィルスに侵されている為か、室内の様々な装置と意識が繋がっているのか、自らの意志で室内の装置を遠隔操作して三人を襲わせる。
「二人とも、私の後ろに!」
ミラーガールはキューティーハニーとちせに自身の後ろに隠れるよう伝える。二人が即座に後ろへと隠れると、ミラーガールはミラー・シールドで部屋中から解き放たれる光線を全て撥ね返して自分達の身を守る。
しかし撥ね返したレーザーで部屋の装置を破壊しても、またすぐ別の装置が稼動してミラーガール達にレーザーの雨が降り注ぐ。
「っ、やむを得ないわ……博士を処分するしか部屋の装置を止める術はないみたい」
そう思ったキューティーハニーは降り注ぐ光線を掻い潜り、ホタルニクスの許へと接近する。
そしてハニーフルーレでホタルニクスに一撃を浴びせよう様とした、その瞬間、ホタルニクスはお尻の光源から強烈な光を発光してキューティーハニーの視界を潰す。
「うっ……!」
余りにも眩い光で目晦ましするホタルニクスの行動に怯んでしまうキューティーハニー。
すると博士は光学迷彩のような原理で姿を消し、瞬間移動の様な移動方法で空中を浮遊する。
ちせがどうにか自らの身体から放つレーザーで反撃するが、レーザーの権威であるホタルニクスは自身に向けられるレーザーの直射を計算し尽くして容易にかわしていく。
そのホタルニクスに何とか接近して斬りかかろうとするキューティーハニーも、博士の瞬間移動に苦戦して思うとおりに事が運ばない。
そんな戦況の中で、ミラーガールが再度博士に訴える。
「博士、正気に戻って! いま私達は争っている場合じゃない、一刻も早く地球を救わないと大変な事に……!」
しかしホタルニクスはミラーガールの切実な願いも既に聞き入れる事はなく、彼女に向かって室内の外装からレーザー発射装置を繰り出して攻撃してきた。
「危ない!」
そこを間一髪、キューティーハニーがミラーガールを押し退けて攻撃から防ぎ、同時にちせが発射装置を破壊して事なきを得た。
「ミラーガール……! 残念だけど、もうホタルニクス博士は正気を失ってる……もう彼を楽にさせるしか私達にできる事はないわ」
「そんな……!」
キューティーハニーから事実を聞いて、愕然とするミラーガール。
しかしホタルニクスの攻撃はやむ事がなく、強力なレーザーを部屋中に仕掛けた機械や装置から発射してくる。
そして遂にレーザーは、ミラーガール達が立っている足元からも発射されてきた。
「ゆ、床から!?」
足元の床からレーザーが発射されてきて、ミラーガール達は追い詰められてしまう。
この戦況に、ミラーガールは遂に覚悟を決めた。そして彼女はキューティーハニーとちせの二人を、自身と共に被い込む様に光の球体で包んだ。すると、その球体は直射してくるレーザーを悉く撥ね返して、部屋全域の発射装置に撥ね返して装置を全滅させて見せた。
「こ、これは……!」
その凄まじいミラーガールの鏡の防御壁を目の当たりにしたホタルニクスも、一瞬だけ正気を取り戻した。
そしてミラーガールが撥ね返したレーザーの幾つかが、ホタルニクスにも直撃して彼をダウンさせた。
ホタルニクスが戦闘不能に陥ると、部屋全域の装置がピタリと停止した。
「は、博士!」
ミラーガールは自身が撥ね返したレーザーに当たってしまい戦闘不能に陥るホタルニクスの許へと駆け寄った。
「博士、しっかりして!」
ミラーガールがホタルニクスの呼びかけるものの、博士は消失していく意識の中でミラーガール達に述べた。
「や、やはりミラーガール……君の、いや、君たちの力はワシの想像以上だ。君たちの、特にミラーガール……君の力は測定不能なもの……その力を暴走させる事なく、どうか地球を…………ウッ」
「は、博士! ……博士ーーッ!」
ミラーガールに言伝をしたホタルニクス博士は、ミラーガール達に看取られながら最期を迎えた。
こうしてミラーガール達も苦心の末にホタルニクス博士を撃破した。
そして彼女達はウッズに報告した。
「外見は、落ち着いた研究所なのに……中に入ってみたら変わり果てていましたね。今では、どこもメカルスウィルスの影響で……パニックに陥っています。この状況を打ち破る為にも……ホタルニクス博士のレーザー装置を、有効利用しないといけませんね」
そうミラーガール達に語るウッズは、装置の回収が別の班によって無事に済んだ事を報告しながら彼女たちに帰還するよう言った。
「レーザー装置の回収が終わりました。ご苦労様です、聖龍隊本部で待っていますね」
ミラーガール達は心が締め付けられる想いで、ホタルニクス博士の研究所を後にした。
[放たれるレーザー兵器]
各地・各異世界で奮戦する聖龍隊士に代わり、各所でレーザー兵器「エニグマ」の補強部品を入手した聖龍HEAD。
彼女達の努力が実り、遂にエニグマが完成した。
「遂にエニグマが完成したぞ!」
「ちょいとオンボロだが、パーツで補強したんだ。さあ、いつでも発射できるぜ!」
エニグマの完成に沸き立つ修司やフロート達。
そして地球存亡をかけて、エニグマは遂に落下する宇宙ステーション「希望」に向けて発射されようとしていた。
「遂にこの時が来たぞ。地球の運命をかけて、エニグマを発射する!」
修司の宣言を合図に、ウッズなどの技術班がエニグマ発射の準備に取り掛かる。
「エネルギー、パワー、発射角度、全てOK!」
「よし……発射!!」
修司の合図に、エニグマは遂に宇宙ステーションに向けられて発射された。
地上から放たれる強力なレーザーは、宇宙ステーションに直射された。ウィルスの影響で、簡単に宇宙ステーションを破壊または移動できるSRMの面々が三次元界に赴く事ができない為、聖龍隊はレーザー兵器を使ってステーションを破壊しなければならなかった。
だが、此処で問題が。エニグマを発射する為のエネルギーが、不足し始めたのだ。
これに装置を動かす隊士達は慌ててエネルギー補給の為の作動を行った。
「もっとエネルギーをエニグマにまわせ!」
「まわします!」
指示通りに隊士がエニグマにエネルギーを補給させようとブレーカーを下げようとする。が、その瞬間、強力な電流がブレーカーに流れていた為、ブレーカーを下げようとした隊士は後方へ吹き飛ばされてしまう。
「うわあっ!」強力な電圧で吹き飛ばされてしまう隊士。
すると其処に特攻決死隊の隊長であるウェルズが駆けつけて、吹き飛ばされた隊士に代わって自らブレーカーを下ろそうとした。だが、そんなウェルズにも容赦なく電圧が襲い掛かる。
「うぎゃあッ!」
感電するウェルズ。しかし彼は決してブレーカーから手を離さず、強靭な意志の元、ブレーカーを自力で下ろしてエネルギーをエニグマに注いだ。
その結果、エニグマはレーザーを発射し続け、遂に全エネルギーを発射し尽くした。
「やったか? 破壊できたか? ウッズ、どうなんだ?」
エニグマで全エネルギーを発射し尽くした結果をウッズに問い掛ける修司。エニグマ発射を見守るHEAD、そしてウェルズなどエニグマ起動に尽力した多くの隊士達がウッズからの結果報告を待ち望む。
そして結果は……。
「ダメです! ステーション破壊率62%! ステーションの落下角度が変わり、衝突までの時間を引き延ばしただけです……」
事もあろうに、全エネルギーを注いだエニグマでもステーションを完全に破壊するまでには至らなかった。
「くそっ!」「エニグマでは無理があったか!?」
多くの隊士たちが絶望視する中、修司は険しい面持ちで呟いた。
「くっ……隕石衝突にも耐えられるよう、頑丈に設計したのが仇となったか……!」
実は巨大国際宇宙ステーションは二次元界の技術を用いて、隕石群にも耐えられるように頑丈に設計されていたのだ。修司はエニグマでステーションを破壊できなかったのは、これが災いしたからだと嘆いた。
こうしてエニグマでの宇宙ステーション破壊は失敗に終わった。
しかしメタルバードと修司はまだ残された最後の作戦に切り替えようと隊士たちに呼びかけた。
「まだ、これからだ! 次の手を考えよう!」
「よし! 今からシャトル作戦に移行する! 希望を捨てるな、地球の未来がかかっている」
聖龍HEADと、聖龍隊の父ともいえるウッズは最後の作戦に全てを懸けた。
「これが最後の作戦……スペースシャトル作戦」
修司がモニターに映し出されるスペースシャトルの図面を見詰めていると、ウッズが作戦の詳細を伝えた。
「シャトルでそのままステーションに近づき、体当たり……パイロットはギリギリで脱出できますが……最悪、爆風に呑まれ……とにかく危険性が高いです」
直接ステーションに体当たりするという危険な任務にウッズは普段は見せない険しい表情で説明を続ける。
「エニグマ同様、今のままでは破壊力が弱すぎます。またパーツを集めて補強しないと……更にウィルスの影響でオートパイロットが使えません」
破壊力が弱い事と、ウィルスの影響で自動操縦が使えない事実を述べたウッズ。
「とにかく、できる限りのパーツを集めないとな……」
キング・エンディミオンも可能な限り部品を調達してシャトルの強化に尽力しないといけないと説く。
「こっちもシャトルのパワーアップには全力を尽くすぜ。今度こそ失敗は許されないからな、今度こそは……」
技師であるフロートも、最後の作戦は失敗の許されない作戦だとして、いつにも増して厳つい表情で作業に取り掛かろうとする。
そんな皆々に、ウッズが激励の言葉をかけた。
「皆さん……辛いと思いますが、ここで大事なのは……私達が最後まで希望を捨てない事です。シャトル作戦を実行に移します!」
こうして地球に落下する巨大国際宇宙ステーション「希望」を破壊する最後の作戦が実行に移された。
「残る希望は、スペースシャトルのみ……此処で落ち込んでいても仕方ありません。パーツを握る4人を紹介します」
ウッズはスペースシャトル完成に必要な部品を所持しているであろう四人の二次元人を詳細に語った。
「ローズレッド。詳細は不明、エンジンを隠し持つ」
「ディノレックス。武器倉庫の番人、ロケットを所有」
「ペガシオン。Jエアフォース。基地にウイングがある」
「ネクロバット。謎の
ウッズは任務に向かうであろう聖龍HEADに、渇を入れるかのように述べた。
「残り時間はわずか……できる限り、パーツを集めましょう!」
[パニック! 暗闇からの刺客]
スペースシャトルを発射する為に、聖龍HEADは再び各地へと赴いた。
その一点、破棄されているプラネタリウムにはミュウイチゴを筆頭とした東京ミュウミュウズの6人が駆け付けていた。
「破棄されている筈のプラネタリウムですが……何者かが勝手に根城にしているらしいです。そこにスペースシャトルの燃料タンクが在る筈ですが、既にメカルスウィルスの毒牙で驚異が点在しています……何より其処を根城にしている謎の生体反応には十分気を付けてください!」
通信士のウッズからの指示で、ミュウイチゴ達は破棄されたプラネタリウム内へと進攻する。
彼女達が進む背景には、数多の星座が光り輝き点滅していたが、辺りが暗闇に変わった瞬間、何処からともなく無数の蝙蝠が飛来してミュウイチゴ達に襲い掛かる。
「わっ! な、なんなの……この蝙蝠は?」
ミュウイチゴ達が突然の蝙蝠の急襲に困惑する中、蒼の騎士とミュウザクロがそれぞれ剣と鞭で来襲する蝙蝠たちを追い払う。
そして全ての蝙蝠を追い払うと、蒼の騎士が皆に言った。
「ここに住み着いていたにしては、何故か攻撃的だった……みんな、十分に気をつけて進もう」
蒼の騎士の言葉を聞き入れ、一行はそれからもメカルスウィルスで驚異と化しているプラネタリウムを突き進む。
進行を続ける一行。だが、そんな彼女達の背後から既に蔓延しているメカルスウィルスが出現し、ミュウイチゴたちに迫ってきた。
「い、いけない! メカルスウィルスが……!」
ミュウミントが背後から迫ってくるメカルスウィルスに気付き、皆に注意を呼びかけるが、彼女達はただ逃げるしかできなかった。何故ならメカルスウィルスは実体がなく、攻撃が効かない驚異だからだ。
必死にメカルスウィルスから逃げ続ける一行。だが逃げていくプラネタリウムの奥からも、闇から別のメカルスウィルスが浮上してミュウイチゴ達に迫る。
「!」
一同は背後から迫るメカルスウィルスと正面から迫るメカルスウィルスに挟まれて逃げ場を失ってしまった。
そんな彼女たちに、メカルスウィルスは襲い掛かった。
「うわぁっ」「きゃあっ」
全身にメカルスウィルスを浴びて、激痛が走る一同。彼女達はその場にしゃがみ込んでしまった。
「うぅ……みんな、大丈夫?」
蒼の騎士が皆に呼び掛けると、ミュウイチゴ達は頭を抱えながら起き上がって答えた。
「な、何とか……」
「全身というか、心が締め付けられるような激しい痛みだったわ……」
ミュウザクロは、メカルスウィルスに襲われた際の痛みが、締め付けられる様な痛心だったと述べる。
だが、幸いな事に彼女達は皆、精神に異常を来した
そして6人はプラネタリウムの最深部に到着。
すると其処の天井から、蝙蝠の群れと共に姿を現す、蝙蝠の獣人が逆さにぶら下がりながらミュウイチゴ達を見下ろす。
「キキキッ、ずっと待ってたぜ!」
「今、どんな状況か解ってるの? こんなところで争っている場合じゃないのよ!」
薄気味悪い笑みを零す蝙蝠の獣人ダーク・ネクロバットにミュウザクロが問い詰めるが、そんな彼女達相手にネクロバットは衝撃的な発言を言い放った。
「キキッ、関係ないんだよ! オレは誰の指図も受けない! だからメカルスもオレには関係ない!」
「! あなた……まさかメカルスと!?」
ミュウレタスが脳裏に浮かんだ疑問をぶつけると、ネクロバットはあっさり明かした。
「メカルスはオレを作った奴だ。オレはこう見えても人造ヴァンパイアなのさ」
ネクロバットは自らが、過去にメカルスが作り出した人造ヴァンパイアだと語り明かした。これを聞いたミュウイチゴはネクロバットに指を差して言い放つ。
「お前の様な
「キキキッ、かかってこいよ!」
好戦的なネクロバット相手に、ミュウイチゴたちも好戦的な姿勢で立ち向かう覚悟を決めた。
すると天井にぶら下がっていたネクロバットは羽を羽ばたかせて、宙を浮遊しながら直線的な移動で地上のミュウイチゴ達に襲い掛かる。
「近付いてみろ! その時は、この剣で真っ二つだ!」
蒼の騎士が威嚇する様に剣を抜くと、ネクロバットは空中で急停止した。
「おおっと、危ない危ない。それじゃ、まずは手下達に襲わせますか」
ネクロバットはそう言うと、折りたたんだ己の羽の中から無数の蝙蝠を出現させてミュウミュウズを襲わせる。
「うわあっ!」「ま、またなんですの!?」
またしても蝙蝠の群れに襲われるミュウミュウズは困惑。
そして再度追い払っている最中、そこにネクロバットが攻撃を仕掛けてきた。
「ダークウェーブ」
ネクロバットは口から巨大超音波を発射して、ミュウイチゴ達を苦しめる。
強力な超音波に苦しめられるミュウイチゴ達は、なんとか凌いだものの、ネクロバットは攻撃の手を休めない。
「キキキッ、まだまだこれからが本番だぜ」
口元を笑ませるネクロバット。だが、そこにミュウミントが必殺の「ミントエコー」を射出。光の矢がネクロバットの羽を居抜く。
「ウギャッ、オレ様の羽が……くそッ」
ネクロバットは自身の羽に風穴が空けられたのを、よほど悔しがったのか目の色を変えてミュウイチゴ達に向かって飛来してきた。
「く、来るよ!」
蒼の騎士が注意を呼びかけるが、ネクロバットはまたしても上空から巨大超音波を発射して地上のミュウイチゴ達を苦しめる。
皆が苦しんでいる最中に、ネクロバットは彼女達の中でも最も小柄なミュウプリンを高速で捕捉した。
「わっ、わっ! なにするのだ!?」
ネクロバットに捕まえられるミュウプリン。するとネクロバットは口の牙を光らせて、ミュウプリンの首筋を噛み付いた。
「わあっ!」「プリン!」
ネクロバットに首筋を噛み付かれたミュウプリンを心配するミュウイチゴたち。すると粗方彼女の血を吸ったネクロバットはミュウプリンを解放して、投げ捨てた。
「ミュウプリン!」「大丈夫なの? しっかりして……」
皆が投げ捨てられたミュウプリンに駆け寄り声を掛けると、ミュウプリンは起き上がって答えた。
「な、なんとか大丈夫なのだ……」
するとそんなミュウプリンの血を吸ったネクロバットが上空で笑ってた。
「キキキッ」
皆が頭上のネクロバットに顔を上げて目を向けてみると、なんと先ほどミュウミントが射抜いて穴を開けたネクロバットの羽が瞬く間に再生して穴が塞がったのだ。
「こ、これって……!」
ミュウイチゴ達が驚いていると、ネクロバットは笑みながら答えた。
「キキキッ、オレ様は普通のヴァンパイアの様に他の奴の血を吸ってヴァンパイアにさせる事はできねえ……だが、相手の生き血を吸収する事で、自分の身体を再生させる事はできるのよ。キキ……」
不敵な笑みを浮かべるネクロバットの発言に、ミュウイチゴ達は表情を険しくさせる。
「……ここで時間を潰している暇はないのよ。一気に片を付ける!」
地球消滅までのカウントダウンに間に合うようにと、ミュウイチゴ達は消費する時間を気にして一気にネクロバットへと飛び掛る。
だが「キキキッ、まだまだ遊ぼうぜ」とネクロバットが体から漆黒の球を解き放って技を発動させる。
「ダークホールド」
するとネクロバットに飛び掛ろうとするミュウイチゴ達の動きが空中で停止してしまい、皆身動きが取れなくなってしまう。
ネクロバットは一定時間、時を止めてミュウイチゴ達の動きを完全に止めたのだ。そして其処にネクロバットは再び手下として操る蝙蝠の群れを仕掛けて、ミュウイチゴ達に襲わせる。
無数の蝙蝠が時間を止められて身動きできないミュウイチゴ達に、噛み付いたり引っかいたりと攻撃してくるが、時を止められている為に抵抗できないでいる。
しかしネクロバットの時を止めるダークホールドの効果が切れ、ミュウイチゴ達はやっと動けるようになった。
が、そこにネクロバットが巨大超音波ダークウェーブを放ってミュウイチゴ達を攻撃。彼女達はまたしても動けなくなるほど苦痛を味わう。
と、ミュウイチゴ達は気付いた。自分達を襲っていた蝙蝠たちもダークウェーブに巻き込まれて苦しみながら地面にボトボトと落ちていたのだ。
この現象にミュウイチゴはネクロバットに問い詰めた。
「……ちょっと! あなたの手下である蝙蝠までも苦しんでいるわよ!」
するとネクロバットは嘲笑しながら言い返した。
「キキッ、そんなの……いくらでも代わりがいるさっ」
「酷い……蝙蝠だって、立派な命ある生き物なのに……!」
ミュウイチゴは最初は戸惑ったり困惑したりした蝙蝠であるにしろ、彼らだって立派な命ある生き物だとして、そんな蝙蝠を使い捨てにするネクロバットのやり口に怒りが込み上がった。そしてミュウイチゴだけでなく、その思いは他の仲間達にも伝染した。
ネクロバットに対して、命を粗末にした敵と認識したミュウイチゴ達は陣形を組んでネクロバットに突っ込んでいった。
『大聖光 魔鳥!』
ミュウイチゴ達を蒼い光が包み込み、激しい光が薄暗い部屋の中を燦々と照らした。
「グギャアッ、お、オレは光がダメなんだ……」
聖なる蒼い光に身を包むミュウイチゴ達の輝きが、ネクロバットの視界を眩ませて宙に浮いていた彼を地面に着地させる。
その好機を逃さず、ミュウイチゴ達は自分達が繰り出す
「ウギャアアアアアアッ」
蒼き聖なる光は、ネクロバットを貫通して彼の身体を瞬く間に消滅させていく。
しかし消滅寸前に、ネクロバットはミュウイチゴ達に告げた。
「ウギャ、お、オレだって命ある生き物だって言うのに……お前ら聖龍隊は、そんな命を
ミュウイチゴたちの合体技を受けて、ネクロバットは消滅した。
しかし戦いに勝ったミュウイチゴ達の思いは複雑だった。
命ある存在を、生命を消してまで護るべき平和とは何なのか。
複雑な心境が胸を巡る中、彼女達は帰還へと赴いた。
そんな帰還しようとするミュウイチゴ達に本部からウッズの通信が入った。
「ネクロバットですけど……メカルスがつくった
今世界を混乱に陥らせている女神像から出現したメカルスヘッドの破壊。あれでメカルスは本当に消えたのか不安に駆られるウッズ。だがウッズはスグに応答した。
「いえ、間違いなく倒したはず! そう思いましょう。こんなに大量のウィルスを出したら……再生するエネルギーも残っていないですし……」
メカルスは倒した。今はそう思って任務を遂行していこうと意気込むウッズは、燃料タンク発見をミュウミュウズに報告する。
「あ、燃料タンクは発見しました。これでシャトルもステーションまでは飛べる様になりました……皆さん、帰りも気を付けてくださいね」
こうしてミュウイチゴ達の燃料タンク入手の任務は終わった。
[時限爆弾を破壊せよ!]
同じ頃、スペースシャトルのオービターウイングを保有しているJフォースの空軍基地には、あの修司と木之元桜の姿があった。
Jフォースは過去の大戦を犯してしまって以降、軍は縮小されて弱体化していた。
修司は、過去に戦友であったJフォースの軍人達を、仕方なかったとはいえ
しかし既に基地には多数のメカルスウィルスで多くの隊員が
「Jエアフォースからはオービターウイングを……ですが、今ではもうJエアフォースまでも、メカルスウィルスに侵されてしまってます……」
「了解した。俺とさくらで進撃する。何かあったら連絡くれ」
修司は通信でウッズと通話すると、同伴する木之元桜と共に基地へと進攻した。
「さくら! カードで俺のサポートをしてくれッ」
「はいっ!」
修司からの指示に、さくらは素直に返答する。
そして二人が進行する中、案の定基地内には既に
正気を失った隊員達は修司とさくらの姿を目視すると一目散に襲い掛かってきた。
さくらが戸惑う中、修司は迷う事無くJフォースの隊員達を斬り捨てて行く。
「さくら! 既に隊員達は正気を失っている……戦わなければ、やられるだけだぞ! それでも戦えない様なら、俺の後ろに下がっていろ」
「は、はい、分かりました……」
修司からの怒声を聞いて、さくらは言われるがままに修司の後ろへと回った。
それからも二人は基地内を進攻して行くが、その矢先ウッズから通信が入った。
「何者かが時限爆弾を仕掛けたみたいです! 小型ですが、威力は侮れません。爆発する前に破壊してください!」
なんと威力抜群の小型時限爆弾が基地内に仕掛けられたという。爆発前に破壊しなければならないと聞いて、修司は目の色を変えた。
「解除ならともかく、破壊ならお手の物だぜ! ……さくら! お前も爆弾ぐらいはキッチリ、カードで破壊しろよ」
「は、はい!」
一刻も早く爆弾を破壊せねばと前進する修司を追う形で、さくらも進行する。
そして二人は
そんな中、二人が爆弾を破壊しようと進入すると、そこにメカルスウィルスが現われてさくらに襲い掛かった。
「きゃっ」「さくら!」
メカルスウィルスに襲われて倒れるさくらに、修司が慌てて駆け付けると其処にはまた別のメカルスウィルスが来襲してきた。
「くっ……囲まれたか」
迫るメカルスウィルスに続いて、混乱したJフォース隊員、そして傷付き倒れるさくらに爆発寸前の爆弾。
この危機的状況に修司が悩んでいると、彼にメカルスウィルスが飛び掛ってきた。
「うおッ……!」
メカルスウィルスに襲われる修司。しかし彼だけは他の聖龍隊士の様に苦痛に襲われる事はなかった。
なんとメカルスウィルスを浴びた修司は、目の色が赤く変わり、何かに取り付かれたかのような仰々しい顔付きへと変貌。すると修司は迫ってくるJフォース隊員を逆手で握った聖龍剣で切り裂き、それと同時に聖龍剣を握り締めている拳を床に叩き付けた。すると拳からは凄まじい衝撃波が繰り出され、辺り一帯のJフォース隊員は吹っ飛び、爆破寸前の爆弾は大破した。
この修司の異常なまでの現象と破壊力を目の当たりにして、木之元桜は愕然とした。
修司は自分の体に起きた現象に唖然とするが、それよりも今はシャトル発射に必要なウイングを入手する為にさくらの手を取り、彼女を立ち上がらせると共に基地の奥へと再び進んだ。
メカルスウィルスを浴びてダメージを負ったさくらに反して、逆に力が上昇した修司。
二人はJエアフォースの基地そこの若き長官であるペガサス型の獣人、エアフォースプリンスの異名をとるスパイラル・ペガシオンと対峙する。
生真面目で正義感に溢れ、その若さゆえに時には情熱余って失敗を犯す事も時にはあるペガシオンは修司とさくらの二人と向き合うと唐突に語り始めた。
「修司! 前から君に会いたかった……仕方ないとは思っているが、カールの事を忘れられないんだ……カール達とは戦わずに、何とか解決できたのではないかと……」
かつて修司達によって倒されたJフォースの指揮官カールを師と仰いでいたペガシオンは、未だに師と仰いでいたカールや仲間の軍人達を忘れてはいなかった。
「君達を恨んでいる訳ではないが、ボクはもうウィルスに侵されている……君の手で処分してもらう事になるだろう。だから、
恨んでないと思慮深さを感じさせるペガシオンは、既に自身がウィルスに侵されて異常化していくのを感じ取っていたのか、
この事態にさくらは悲観するばかりだが、修司は毅然とした態度で言い返した。
「分かった。ただ、俺は……仕事として、聖龍隊の責務として戦わせてもらう。いくぞ!」
こうしてペガシオンは、仲間の後を追うように修司とさくらと対戦する終末を選んだ。
ペガシオンは修司とさくらに向かって体当たりを仕掛けてきた。白い翼を真っ直ぐに伸ばし、全身全霊を懸けて修司達にダッシュタックルしてくる。
修司とさくらは素早くペガシオンの体当たりをかわし、態勢を立て直してペガシオンに応戦し始める。
「ショット!」
さくらがカードを使用してペガシオンを攻撃するが、ペガシオンは俊敏な速さでさくらの攻撃をかわして上空を舞う。
と、今度は其処に修司が聖龍剣を上方へ斬り上げてペガシオンに斬りかかるも、上空のペガシオンは難なく修司の攻撃を避けてみせる。
攻撃が空振りに終わった修司とさくらに、ペガシオンは分身エネルギーをぶつけてくる
しかしペガシオンの猛攻は留まらず、彼は必殺の技を修司達に繰り出す。
「ウィングスパイラル」
ペガシオンは翼から竜巻を繰り出し、その竜巻は次第に大きくなって修司達に襲い掛かってきた。
「きゃあっ」
激しい旋風に戸惑うさくら。しかしペガシオンは必殺技ウィングスパイラルを連続で放ち、修司達を追い詰める。
「ッ……動きが速すぎて攻撃が当たらない。……さくら! お前のタイム(時)のカードでペガシオンの動きを止められないか!?」
ウィングスパイラルを耐えながらさくらに問う修司。するとさくらは困惑した表情で修司に答えた。
「そ、それが……さっき、メカルスウィルスに襲われた時に大きく魔力を削られて……タイム(時)の様な強力なカードが使えるかどうか分からない……」
「少しだけでもいい! ペガシオンの動きを止めないと、此方の攻撃が当たらない一方だ!」
メカルスウィルスの影響で魔力を大きく消耗したさくらが強力なカードを使える自信がないと返すと、修司は少しでも攻撃を当てる機会を得なければと説く。
すると此処で、ペガシオンの様子が少しずつ変わり始めてきた。
「……ジェネシス様ノ……カール指揮官ノ仇……オマエタチ、アノ世ヘ送ッテヤル!!」
「な、なに! 突然……」
突如様子が急変したペガシオンにさくらは動揺した。
「殺シテヤル、殺シテヤル……許サナイッ!!」
「ウィルスの影響で
遂にペガシオンはメカルスウィルスの影響で狂い始め、かつての仲間だったカール達Jフォース軍人を死に追いやった聖龍隊への殺意に取り付かれてしまった。
憎しみの篭った台詞をぶつけてくるペガシオン。しかし、これが彼の本心か、本当は恨んでないのかまでは定かではなかった。
そんな
「ッ……ペガシオン……!」
そんな修司に追い討ちをかけるかの如く、ペガシオンはある人物の名前を連呼し始める。
「……エリー、ゼ……エリーゼ、エリーゼエリーゼエリーゼエリーゼエリーゼ……」
ペガシオンは師と仰ぐカールの婚約者で、かつカール同様に修司が斬り捨てた猫の獣人エリーゼの名前を連呼し出したのだ。
この情景を目撃して、修司は感付いた。
「! ……そうか、ペガシオン……お前も、エリーゼの事が……」
ペガシオンがエリーゼを意識していた事実を知って悲愴に打ちひしがれる修司。
ペガシオンの真意を知って、修司はさくらに言い放った。
「さくら! これ以上……これ以上、ペガシオンを苦しめない為にも協力してくれ! 奴を苦しみから解放してやってくれ!」
修司からの切願を聞き入れたさくらは、力強い面魂で残っている魔力を全て一枚のカードに注ぎ込んだ。
「タイム(時)!」
さくらの必死の魔力が、そして二人の想いが通じたのか少ない魔力でもタイム「時」のカードは発動し、高速移動するペガシオンの動きを完全に止める事が叶った。
そしてその隙に、修司は精魂込めた一刀をペガシオンに叩き込んだ。
「ペガシオン……今、楽にしてやるぞ!!」
修司は再び戦友を手にかける苦しみを噛み締めながら、ペガシオンに強烈な一刀を聖龍剣で浴びせた。
修司からの一刀を受けたペガシオンは、体を切断され絶命する寸前に呟いた。
「……カール……エリーゼ……」
そして次の瞬間、ウィルスに感染して正気を失ってしまったペガシオンは爆発消滅した。
「……カール、エリーゼ……そっちにまた一人、同胞が逝ったぜ……」
下を俯きながら、修司は暗然とした面持ちで静かに呟いた。
「こんなの……こんなのって、あんまりだよ……!」
一方の木之元桜は、ペガシオンの最後と修司の悲痛な思いを目の前に悲しさで胸が一杯だった。
こうしてメカルスウィルスで
「またJフォースと戦う事になるとは……殆どの隊員が
時限爆弾などの被害で基地全体の損傷が激しい故に、早々に帰還する様に言われた修司達は、暗然とした心境で帰還した。
[一騎打ち②]
木之元桜と共に聖龍隊本部に帰還した修司。しかし彼はある懸念に駆られていた。
「メカルスウィルス……今まで、ずっと戦ってきた……あらゆる二次元人を
今まで自分たち聖龍隊と激戦を繰り広げてきた己のコピー、メカルスの実体メカルスウィルス。それは無機物・有機物だろうと感染してしまう最強最悪のウィルス。修司は今回、初めて公の場にも出現するようになったメカルスウィルスに対してある疑問に悩まされていた。
「何故だ……何故、俺だけウィルスでダメージを受けないんだ? 逆にパワーが漲る感覚が体に走る……俺の体は一体どうなっているんだ? まさか……」
他の聖龍隊士、そう主人公達はダメージを受けるといったマイナスな影響が見られるのに対し、自分だけは戦闘力が一瞬だけとはいえ上昇するといった現象が見られる現状に修司は自分自身に危機感を覚えていた。
同じ頃、聖龍隊本部で戦闘などで負傷した隊士や民間人の治療にあたる衛生隊士達は、衛星部門を統括している聖龍HEADのナースエンジェルに報告していた。
「……以上です。小田原修司に関してのレポートは」
衛生隊士は、小田原修司を始めとする現場でメカルスウィルスに感染した戦闘隊士の状態を報告。この報告を受けたナースエンジェルは険しい表情で衛星隊士に伝えた。
「修司さんは……そして、みんなは今までに何度もメカルスと戦ってきたわ……多少のウィルスには何らかの抗体を持っているんでしょう」
だが、このナースエンジェルの考えに衛星隊士は懸念をぶつけた。
「しかし小田原修司は……反応がないなら、まだしも……ダメージを受けるどころか、戦闘力が格段に上昇しているんです……彼の肉体、いや精神構造に関しては……未だに、謎の部分が多すぎます……今後、何が起きるか分かりかねます。ここらで、何か対策を講じた方が良いのでは……」
衛生隊士の考慮を聞いた上で、ナースエンジェルは考えに考えた末に隊士に告げた。
「……この一件は、今は機密にしておきましょう。私もじっくり考えておくわ……」
しかしナースエンジェルの決定を聞いた衛生隊士は、小田原修司への危険性を訴え続けた。
「ウィルスでパワーアップするなんて危険すぎます! せめて……小田原修司だけでも、手を打たないと手遅れになってしまいます!」
現場で働く聖龍隊士の状態で、唯一小田原修司だけがウィルスで戦闘力が上昇するという危険性がナースエンジェルに訴えられてたその頃。再び聖龍隊本部に危機が迫っていた。
「緊急事態! 再びニトロ・グリセリーノが現れた。奴の狙いは一体? とにかく戦うしかない!」
戦闘から帰還したばかりのメタルバードが訴える中、ホタルニクスとの戦い以降まったく戦闘に参加していないミラーガールが名乗りを挙げた。
「私が行くわ!」
「アッコ、お前だけで行くのか? 危険だぞ!」
単身で戦闘に向かおうとするミラーガールに修司が問い質すと、ミラーガールは力強い面魂で答え返した。
「私……聖龍隊の多くの隊士が、二次元人が戦っている間に少しでも、みんなの努力に応えたいの! 戦いを拒んでいる時じゃない、少しでもみんなの努力が積み重なったスペースシャトル計画を成功させる為に……この作戦を妨害するニトロを止めないと!」
「あ、アッコ……!」
そしてミラーガールは修司の制止も聞かずに飛び出してしまった。
そして聖龍隊がNASAと協力して打ち上げようとするスペースシャトル発射区域では。
既にニトロは自分の妨害工作を阻もうと向かってきたマカ=アルバーンや黒崎一護達を返り討ちにした後だった。
と、そこにミラーガールが駆け付けてニトロと対峙する。
「また遊びに来たよ……暇だったでしょ?」
「しつこいわよ! ニトロ! なにが狙いなの?」
相変わらず調子の良さそうな態度のニトロにミラーガールが問い詰めると、ニトロは平然と話し返した。
「だから、邪魔するだけ。それがオレのお仕事。これでも命がけなんだぜ。だって相手がマジなんだから……今度は、ちょっと本気出すよ。覚悟はいいかい?」
そして次の瞬間、ニトロ・グリセリーノはミラーガールと戦闘を開始した。
「喰らいな!」
まずは愛用のDブレードをブーメランの様に投げ付けてミラーガールに攻撃するニトロ。
ミラーガールはニトロが投げ付けたDブレードをかわしつつ、急接近してニトロにミラーソードで斬りかかる。
しかしニトロも軽々と跳躍してミラーガールの一刀をかわすと、急速に接近して頭上からDブレードで斬り付けて来た。
「わっ!」
頭上からの急襲に驚きつつも即座に避けて、直撃だけは免れるミラーガール。
そんな慌てながら攻撃を避けたミラーガールに、ニトロは自慢する様に語った。
「ははっ、これがオレの秘技「つばめ返し」さ。もう一度喰らいな!」
そういうとニトロは大跳躍してミラーガールに急接近して、再び頭上から斬り付けて来た。
ミラーガールはこれを、自身の得物ミラーソードで何とか受け止めるが、余りの威力に後方に弾き押されてしまう。
ニトロは距離が離れたミラーガールに最大級の技をお見舞いさせようと構えた。
「行くぜ!」
ニトロは腕から地面にエネルギーを放流させて凄まじいビームの柱を無数に展開させる。
ミラーガールは何とか、自身を覆うミラーバリアーで強力な柱状のビームを弾き返して我が身を守る。
「ヒュ~、それが如何なるビームや光線をも弾いちまうミラーガール、あんたのバリアーか……さっすが聖龍隊のHEADに加わっているだけはあるね。末恐ろしい~」
まるでミラーガールを馬鹿にする様に発言するニトロ。だがミラーガールはそんなの気にせず、ニトロへと立ち向かっていく。
電光石火の速さでニトロに斬りかかっていくミラーガール。しかしニトロは容易くDブレードでミラーガールの攻撃を受け流してしまう。
(ど、どうしたら……ハッ、そうだわ!)
闘いながら考え抜いたミラーガールは、一つの策を講じた。
そしてミラーガールは再度ニトロへと斬りかかるものの、ニトロはこれも先ほどと同じく受け流して反撃の態勢に入る。
「おいおい、同じ事ばっか繰り返してたって意味ないぜ?」
ニトロがそう調子付くと、ミラーガールの背後に回って彼女を斬り付けようと身構えた。するとミラーガールは即座に反応して背後のニトロにミラーシールドを構えた。
ミラーガールが構えたミラーシールドはニトロが振り付けたDブレードの刃を受け止めるが、同時にミラーシールドに深く突き刺さって抜けなくなってしまった。
すると次の瞬間、ミラーシールドを構えてたミラーガールが突如、ミラーシールドを残して消えてしまった。
「な、なに!?」
突然消えるミラーガールに驚くニトロ。するとミラーガールはニトロの背後に現われ、ミラーソードを構えた。
「何だと!」
ミラーガールは敢えて、ミラーシールドでニトロの武器Dブレードを突き刺して抜けなくした状態で、素早くニトロの背後に回って攻撃を仕掛けるという捨て身の策をとった。これに驚愕したニトロは、ミラーガールの一刀を浴びてしまう。
ミラーガール捨て身の作戦で、背中に傷を負ったニトロは苦笑いしながらミラーガールに言った。
「やっぱり強いわ……こっちもマジで戦ったっていうのに……さてと……あんたらと付き合ってたら、命がいくつあっても足りないよ。そんな訳で帰るよ。ゲームオーバーってところかな」
撤退を宣言するニトロは、更に本気で闘ったミラーガールに忠告した。
「ミラーガール、君ももうちょっと考えてみたら? ……いつか……死ぬぜ、本当に……だから、オレは生きる為に逃げる。ハッ、それがオレの処世術って訳だ。じゃ、また会えたら会おうぜ!」
「……ニトロ……」
ニトロからの忠告を聞いたミラーガールは、難しい表情で悲しみを浮かべた。
そして二トロ・グリセリーノはそのまま撤退、聖龍隊の前から姿を消した。
[灼熱地獄]
ミラーガールが急きょ、聖龍隊本部に設けられたスペースシャトル発射基地でニトロと死闘を展開していた頃。
聖龍HEADのメンバー、魔法騎士の三人はとある火山地域に進攻していた。
「其処のエリアは、マグマの地熱を利用して稼働している危険地帯です。おそらく最深部の隠し倉庫にブースターロケットがある筈。マグマには十分気を付けて進攻してください」
ウッズからの指示を聞き逃さずに危険区域を進攻する光/海/風の三人。
この火山地域の地下、そこでは溶岩の地熱を利用して武器を違法に製造して売買しては暴利を貪っている輩が、己の隠し倉庫の中にスペースシャトル発射には欠かせないブースターロケットを所有していると情報を得た聖龍隊は、地下へと進攻していたのだ。
時には噴出する溶岩の驚異に曝されながらも、果敢に奥へと進攻していく魔法騎士の三人。
そして地下深くの武器製造の現場で、魔法騎士の三人は巨体を揺らしながら邁進してくる二次元人と遭遇する。
それは恐竜人型の二次元人で、かつては蛮勇の名で馳せた元Jフォースの災害対策チームの一員だった、ジュラシック・インフェルノの異名をとる炎系能力者バーン・ディノレックス。
背部の背ビレからは常に炎が噴き出しており、両手に鉤爪を装備しているディノレックスは魔法騎士の三人を前に問い詰めてきた。
「何しに来た! こんなところまで……」
この問い掛けに獅堂光が訴える。
「ディノレックス! あなたが隠し持っているブースターロケットが欲しいの」
光に続いて龍咲海がディノレックスを問い詰める。
「ここが秘密の武器倉庫になっているのは……調べがついているわ!」
最後に鳳凰寺風が願い出た。
「いま地上がどうなっているか、あなたにもお解りの筈。どうかロケットをお渡しください……」
三人からの言葉を聞いて、ディノレックスは答えた。
「あーー、はいはい、渡しますよ。って……そんなお人好しがいないのも分かっているよな? いつもの様に戦って奪い取ってみろよ。どうせ聖龍隊は強奪も仕事の内だろ? クククッ」
聖龍隊の職務を軽蔑するディノレックスの発言に、光が問い返した。
「なんで、二次元人同士で戦わなくちゃいけないんだよ?」
光に続いて海も切に訴える。
「私達は何も、戦う為に来た訳じゃないのよ……!」
そんな平和的に話し合いで解決しようとする魔法騎士の三人に対して、ディノレックスは好戦的な性格で三人を苦悩させる。
「戦ってスッキリしようぜ! そう、いつもの様にな!」
毎度の如く、戦って問題を解決してみろと聖龍隊の三人に言い渡したディノレックスは、その巨体な見た目から想像もできないほどの素早い動作で三人に跳びかかって来た。
「おりゃっ!」
ディノレックスは、常に炎を吹き出している背ビレを向けながら三人に体当たりを仕掛けようとする。三人はこれを急いで回避、やむを得ず戦闘を開始した。
ここで急がなければ、地球に宇宙ステーションが衝突して大惨事を引き起こしてしまうからだ。
体当たりをかわされたディノレックスは、今度は口から火炎放射を吐いて辺りを火の海にする。
辺り一帯が大炎上する中、龍咲海が急いで水魔法で燃え盛る現場を鎮火する。
「喰らえッ」
するとディノレックスは素早い動きで壁に密着すると、そこから連続で炎の弾を吐き出して三人を攻撃。光は同じ炎で炎弾を相打ちにして消し、海は水魔法で、風は風の魔法で炎の弾を打ち消した。
倒さなければブースターロケットも入手できない。そう判断した魔法騎士達は心を鬼にしてディノレックスに反撃に移る。
光の剣による一撃がディノレックスに直撃し、其処から再び炎を吐き出そうとするディノレックスの攻撃を海が水魔法で打ち消し、最後に風が強烈な風の攻撃でディノレックスに痛手を負わせていく。
風の強烈な風に舞い上げられたディノレックスは地面に落下して巨体を叩き付けられると、三人に怒鳴り散らした。
「くそッ! 懸命に働いている二次元人から、財産や所有物を強奪する聖龍隊の好きにはさせねえぞ!」
「何が懸命に働いているのよ! 違法な武器密造とかしてるくせに、偉そうな口叩いてるんじゃないわよ!」
ディノレックスの発言に海が言い返すが、ディノレックスも負けずに言い返す。
「そうやって……同じ二次元人の人生を台無しにするか、奪うかしかやって来なかったくせに……テメェら聖龍隊なんて、人の一生を台無しにする悪魔や死神だぜ」
「っ……!」
ディノレックスから聖龍隊の隊士を悪魔や死神呼ばわりされた光は、聖龍隊の内情からか何も言い返せなかった。
しかし、そんな魔法騎士の三人にディノレックスは容赦なく地面に向かって業火を吐き出し、三人の行動を制限させようと再び辺り一帯を炎上させる。
火の海に囲まれてしまった三人、だが風が風魔法で自分を含む三人を浮遊させると同時にバリアーで炎から自衛すると、今度は海が大水を発生させて火の海を鎮火した。
するとディノレックスが宙に浮いている三人に向かって、業火を身に纏って体当たりする必殺技を仕掛けてきた。
「バーンタックル!」
業火を身に纏う必殺技で宙に浮かぶ三人に体当たりするディノレックス。
三人は素早い動きで突撃してくるディノレックスの体当たりに直撃してしまう。
「きゃあっ」
三人を囲んでたバリアーは消えてしまい、三人はバーンタックルでディノレックスが通った後に残る火柱の中に放り出されてしまう。
「ぎゃははっ、いいぞいいぞ。このまま焼き殺してやる……!」
ディノレックスは炎上する大地に放り出された三人に容赦なく火炎放射を吐き出してトドメを刺そうとする。
一方、燃え盛る炎の中に放り出された三人は諦めておらず、海が最後の力を振りぼって自身を中心に大水を発生させて辺り一帯の大火を鎮火。
海の魔法で何とか炎から逃れた三人は立ち上がり、好戦的なディノレックスを睨み付ける。
「ほほう、それだ……その顔だぜ。悪魔とか、死神とか呼ばれる聖龍隊の殺意に満ちた面だ!」
そう言い放ったディノレックスは三人に向けて今まで以上に強力な業火を吐いた。
すると三人はそれぞれ剣を構えて、同時に吐かれた業火へと剣を振り下ろした。すると三人の剣から斬撃が放たれ、それが一体化して飛来してくる業火を切り裂いて消滅させた。
「なにッ!?」
自身が吐いた強力な業火を剣で切り裂かれて消滅させられたディノレックスは激しく動揺。
そして鳳凰寺風が、ディノレックスに強力な風の攻撃魔法を繰り出して、ディノレックスを高く高く舞い上げた。
「うおおッ!!」
風の魔法が起こした旋風で舞い上げられたディノレックスは、そのまま地下洞窟の天井へと激突。天井に深く減り込んでしまった。
すると天井が崩落し始め、ディノレックスは瓦礫と共に地面に落下してきた。
「うぎゃっ」
地面に瓦礫ごと落下するディノレックスであったが、岩などの瓦礫は益々崩れ落ちてディノレックスに降り注ぎ、彼の巨体を圧迫させる。
「うおおっ……!」
そして岩雪崩れに押し潰され、下敷きとなり埋もれてしまったディノレックスはそのまま絶命してしまった。
激しい戦火の中、魔法騎士の三人は辛くも好戦的なバーン・ディノレックスを撃破した。
その後、駆け付けた他の調査員である聖龍隊士がブースターロケットを発見。魔法騎士の三人に報告された。
「ブースターロケットを見つけました。これでシャトルの破壊力もアップします。まだ他にも役に立ちそうな武器が倉庫に眠っていますが……調べている時間は無いです。また火山が活発化する前に脱出してくださいね」
三人は、そして聖龍隊士は火山が活発化する前に急いで現場から離脱した。
[秘境での戦い]
戦場跡であるジャングル奥地。
此処には真紅を筆頭としたローゼンメイデン達が出動していた。
「かつて順一さん率いるスター・コマンドーと戦ったJフォースが制圧していたジャングル地帯……今では
大戦の最中、聖龍隊がスター・コマンドーと激しい戦いを展開したJフォースが制圧していたジャングル奥地の秘境。その秘境には、かつてJフォースが所有していたオービターエンジンが在る筈だとウッズは説明する。
ウッズからの説明を受けて、真紅たちは生い茂る草木や森林を掻い潜り、秘境の奥へと進攻する。
しかしメカルスウィルスの影響で、植物までも異常化してしまい進攻する真紅達を襲い出す。
真紅たちは、それぞれの戦術で襲撃してくる植物を返り討ちにして、秘境奥へと突き進む。
もう時間がない。一刻も早く部品を収集してシャトルを発射させなければ地球はお終いだと、自分自身に言い聞かせて突き進む真紅たち。
すると彼女達は既に誰もいない廃墟と化した施設へと辿り付いた。
其処こそ、かつてJフォースのゲリラ部隊が制圧地点として建造した建物だった。
真紅たちはその建物に蔓延るウィルスで異常化した植物を排除しながら潜入した。
すると建物を進んで、広々とした空間の中央に一人の人物が突っ立っているのが目に入った。
真紅たちが近付くと、その人物は振り返っては荒々しい口調で真紅たちと話し始めた。
「なんか用かよ!」
「あなたに用は無いわ。私達はただオービターエンジンが必要なだけなの」
「コソ泥かい? んな、簡単に渡すかよ。帰んな……そう、痛め見ないうちにな」
目付きを鋭くさせて忠告するバラの姿の植物人間に圧倒されながらも、真紅は負けずに言い返した。
「いいからエンジンを渡しなさい! 地球が今、大変な事になっているのよ!」
強気な口調でバラ男に問い詰める真紅の勝気な台詞を聞いて、バラ男は怯えた降りをしながら答えた。
「こわー、聖龍隊って怖いなあ。噂通り、殺されそうだ……抵抗したら」
「酷い言われようだね……」
「私達は
蒼星石と彗星石がバラ男に言うと、バラ男は彼女ら聖龍隊の今までの行為を皮肉って物申した。
「その
「そ、それは……」
真紅も、他のローゼンメイデンも困惑してしまう中、バラ男は茨の鞭を地面に叩き付けて言い放った。
「ハッ、分からないんだったら教えてやるよ! 狩られる側の気持ちって奴をなっ!」
こうしてバラ型の植物人間、真紅の幻術の異名をとるスパイク・ローズレッドと戦闘が始まった。
元は盗みの常習犯である子悪党的な二次元人だったが、メカルスウィルスの影響でジャングルの植物と合体し、突然変異的な
そんなローズレッドと戦い始める真紅たちローゼンメイデンに、緊急通信が入った。
「皆さん、大丈夫ですか? そのローズレッドは突然変異で、そのような植物型の二次元人に変異したようです! その経緯から、更なる
「言われなくても……戦わなきゃ、こっちがやられちゃうよ……!」
ウッズから言い渡された処分命令を聞く前から、ローズレッドを倒さなければ此方がやられる展開から既に武器を手に取り戦う蒼星石。
すると戦闘陣形を形成してローズレッドを取り囲む真紅たちを翻弄するかのように、ローズレッドは軽やかな跳躍で真紅たちを跳び越えていく。
そしてローズレッドは地面に一粒バラの種を撒いてみると、その種からローズレッドの分身が生まれて真紅たちを撹乱してきた。
「それそれっ」
ローズレッドは華麗な跳躍力で真紅達の素性を飛び跳ねて彼女達をかく乱。さらに分身も共に跳躍して余計に撹乱してくる始末。
自分達を撹乱させるローズレッドの行動に、真紅は二体の内の一体だけでも撃破しようと、御得意の体術から繰り出す拳をローズレッドに打ち込んだ。
「はあっ!」
真紅の拳はローズレッドに直撃するが、それは惜しくも分身の方で分身体は消滅しただけだった。
「はっはは! 惜しかったな!」
するとローズレッドは腕から茨の鞭を伸ばして、攻撃を仕掛けてきた真紅を鞭で捕えて締め上げた。
「っ!」
ローズレッドの茨の鞭に絞めつけられ、全身に激しいダメージが蓄積されていく真紅。
そんな真紅の危機に、蒼星石が庭師の鋏でローズレッドの茨の鞭を切断して、辛うじて真紅を救出。
「チッ」
ローズレッドは舌打ちすると、今度は真紅たちにエネルギーで投影された茨の塊を放ってきた。
真紅たちは飛び跳ね回る茨の塊を宙を舞ってどうにか回避していくが、ローズレッドは攻撃の手を緩めず自身の頭部から赤い花弁を上方へと飛ばす。
「喰らえッ、ローズカッター!」
舞い降りながら相手を切り裂く花弁の刃ローズカッターを繰り出してきたローズレッドの攻撃に、真紅は茨の塊を避けながら同時に武器であるステッキで花弁を切り裂いて落としていく。
真紅たちが反撃の隙を窺っている最中、ローズレッドは再びバラの種を1つ蒔いて、その種から自身の分身を生み出した。
そして分身と共にローズレッドは左右から挟み込むように茨の鞭を振るってはローゼンメイデンを捕えようと仕掛けてきた。
ローズレッドとその分身の鞭に、翠星石と金糸雀が捕まってしまい、彼女達をローズレッドは締め上げて苦しませる。
「ハッハ! 聖龍隊め、死んで詫びてみろよ」
過去に幾度となく
そんな鞭で絞めつけてくるローズレッドの攻撃を、今度は真紅と蒼星石の二人がそれぞれステッキと庭師の鋏で鞭を切断して絞められていた二人を解放する。
「今度はコッチの番ですぅ」
と、其処にローズレッドが使う茨の鞭とは対照的に、棘のない蔦の植物で二体のローズレッドを絞め付けに入る雛苺。雛苺の絞め付け攻撃に、分身は消滅し、ローズレッドはもがき苦しむ。
「く、くそぉ……!」
全身を拘束されて身動きが取れないローズレッドが悔しがっていると、そこに真紅が近付いて話し掛ける。
「さあ、これであなたの負けよ。さっさとエンジンを渡しなさい」
しかしローズレッドは諦めが悪かった。
「ま、まだ……オレの力はこんなもんじゃねえぞ……!!」
するとローズレッドは雛苺が仕掛けてきた蔦を自力で振り解き、真紅たちを驚かせる。
そして同時に今まで以上に茨の塊を発生させては、それを真紅たちに向けて放ち仕掛けた。
真紅たちが茨の塊に苦戦していると、ローズレッドはまたも真紅たちを翻弄するかのように軽やかな跳躍で飛び跳ねながら攻撃をしてきた。
「絞め付けてやるぜ!」
ローズレッドは再び真紅たちを茨の鞭で捕えて、絞め付けようと仕掛ける。が、真紅たちは射程距離に限界のある茨の鞭から離れて、難を逃れる。
そして真紅が此処で飛び跳ね回る茨の塊を掻い潜って、ローズレッドに必殺のパンチを打ち込んだ。
「ぐほッ」
真紅から強烈な拳を打ち込まれたローズレッドは、密林に置き去りにされたJフォースの機体に激突。すると、その反動からか機体に残っていた僅かな燃料がローズレッドに降り注いだ。
「うおッ!?」
頭上から全身に燃料を浴びてしまったローズレッドは困惑。だが、このローズレッドの状態を真紅たちは見逃さなかった。
「今よ! 植物型の二次元人なら、炎が苦手な筈!」
真紅が指差すと、そこに金糸雀がヴァイオリンを使って強力な音波をローズレッドに繰り出した。
音波はローズレッドが叩き付けられたJフォースが取り残した機体の機材やエンジンに反響して、微かに火花が生じ、その火花が燃料に引火して、機体はもちろん燃料を浴びたローズレッドにも着火して火達磨に。
「うぎゃああああああ……っ!」
全身を炎に覆われて苦しむローズレッドの惨たらしい場面を目の当たりにして、愕然とする真紅たち。
そして植物型二次元人であるスパイク・ローズレッドは跡形もなく焼失してしまった。
跡形もなく焼失したローズレッドを目撃し、真紅たちは心の何処かで燻っている複雑な感情に戸惑った。
そして戦闘終了後、真紅たちは装備している通信機から本部のウッズへと連絡を取った。
「自然をも破壊するメカルスウィルス……実に恐ろしいです。エンジンは見つかりました、今そちらに他の聖龍隊士を向かわせました。これで聖龍HEADの仕事は終わりました。本部に戻って結構ですよ」
こうして無事にスペースシャトル発射に必要な部品は入手できた。
後はシャトルを完成させて、地球に向かってくる宇宙ステーションと激突させるだけ。
聖龍隊は究極の任務を成功できるのだろうか。
[地球存亡を懸けて]
各地で苦戦しながらも集めてきた部品を組み立て、ようやく十分に巨大国際宇宙ステーションを破壊できるほどの威力を備えたスペースシャトルが完成した。
「スペースシャトルが完成したぜ……いつでも、発射できる状態にはした」
ニュー・スターズ総部隊長にして一級の技師の腕前を持つフロートがシャトルの具合を報告。しかしまだ一つだけ問題が残っていた。
「しかしだ……問題は、誰が運転するか? だ。最後の最後で、こんな問題が残っちまうとは……シャトルはいつでも発射できる……パイロットが決まったら教えてくれ」
そう、ステーションに激突するシャトルに搭乗する操縦士がまだ決まってなかった。ウィルスの影響で自動操縦は使えず、操縦者が乗らない限りステーションには衝突させる事は不可能だった。
この危険を伴う操縦者に志願したのは、他でもない聖龍HEADにして聖龍隊でも指折りの操縦士であるメタルバードだった。
「……オレが行こう」
そう言って志願したメタルバード、いやバーンズの一言にHEADの誰もが騒然とした。
「バーンズ、危ないわよ!」
「下手したら、バーンズ……あなた死んじゃうわよ!」
ミラーガールやセーラームーン達がざわめく中、バーンズは冷静に答えた。
「オレ以外に適任者なんているか? SRMの連中とは、ウィルスの影響で異次元を移動できない以上、コッチの世界に来て手助けはできないし……何より、SRMのロボット操縦者たち以上に機械に精通して、かつ一流以上の操縦テクを備えているのはオレ以外にいないだろ? な~に、こんなの軽い軽い」
バーンズは今回の任務は、一流の操縦者である自分なら余裕綽々だと自慢気に熱弁。
しかし実際のところ、この危険な任務を任せられるのはバーンズ以外いないと総長修司も納得した事で、全てをバーンズに委ねる事と相成った。
そしてスペースシャトル発射の目前。
「スペースシャトル発射、スタンバイOK!」
「あとは頼んだぞ、バーンズ……何もできなくて、すまん」
ウッズが画面と向き合いながらシャトルの発射を準備していると、修司が操縦席のバーンズに申し訳無さそうに謝罪。するとバーンズは修司たち聖龍隊の皆に余裕の笑みを零して話し返した。
「気にするな、修司。聖龍隊でも屈指のパイロットはオレを除いて、他にはいない。オレが適任さ」
自ら危険な任務に就いたバーンズの余裕感じさせる言葉を聞く皆々。しかし其処にミラーガールが言い放つ。
「バーンズ! やっぱり、この作戦は危険よ……」
これにバーンズは真剣な顔でミラーガールたち地上に残る聖龍隊に問い返す。
「アッコ、それにHEADのみんな。お前達はなにか問題があった時の為、地球に残ってくれ。もしHEAD全員に何かが遭ったら、誰が弱き者を守る?」
しかし、このバーンズの言い方にコレクターユイが反論する。
「もう戻って来ないような言い方はやめて!」
コレクターユイの涙ながらの言葉に、バーンズは言い返した。
「オレは絶対に戻ってくる! このぐらいで死んでたまるか!」
バーンズの固い決意を聞いて、ミラーガール達は静かに祈る。
「分かったわ、バーンズ……あなたを信じて待つわ」
「必ず、戻ってきて……」
と、バーンズ達が無線で話し合っている所に、ウッズが静かにバーンズに呟く。
「そろそろ時間です……バーンズさん……」
「OK! こっちは準備OKだ」
発射時間を残り僅かとして、バーンズも準備万端とウッズに返答する。
「いくぞ、バーンズ! 最後の望みだ! 発射!!」
聖龍隊総長小田原修司の合図の下、スペースシャトルは発射された。
「バーンズ! 必ず……戻ってきてよ!」
宇宙に飛び立つバーンズに、ミラーガールは必ず帰って来るようにと目を潤わせて言った。
そして宇宙空間に出たバーンズは、通信で地上の面々と連絡を取り合いながら宇宙ステーションに向かっていく。
「ステーションは目の前です……バーンズさん、頑張って!」
「今度こそ大丈夫だ……絶対に!」
「バーンズならやってくれるわ! 生きて帰ってくれる!」
ウッズが、フロートが、そしてミラーガールがバーンズの行く末を見守る中、そのバーンズから通信が入る。
「巨大国際宇宙ステーション「希望」確認! ギリギリまで近づいて脱出する! ……ステーションからの破片が凄まじい……これを避けて近づかねえと……ステーションにぶつかる前にシャトルが破壊されちまう」
「副長! あんたの腕前なら大丈夫だぜ! 自分を信じろ!」
「サンキュー、フロート……そろそろお喋りの時間は終わりの様だ……5秒後に通信オフ。脱出する!」
フロートからの声援を受けて、バーンズは通信機の電源を切り、ギリギリまでステーションに接近していく。
「頑張って、バーンズ!」「頼んだわよ、バーンズ!」
ミラーガールやセーラープルートからも声援を受けて、バーンズが操縦するシャトルはステーションに接近していく。
「ステーションまで、あと7秒……5……4……3……2……ステーション衝突!」
そしてバーンズが操縦するシャトルは、宇宙ステーションに衝突。ウッズがシャトル作戦の顛末を皆に報告する。
「…………………………ステーション破壊率、86%! ……10分後には大気圏に衝突して、更に分解されます! 一応は地球消滅の危機は免れました。作戦成功です!」
ウッズからの報告を聞いて、聖龍隊の誰もが歓喜に湧いた。
そしてバーンズの現状を知ろうと、ウッズが通信でバーンズに呼びかけた。
「……バーンズさん、応答してください!」
「……副長!」
「応答して、バーンズ!」
ウッズにフロート、そしてウォーターフェアリーが呼び掛けている中、ミラーガールが何かを感じ取っていた。
「……生きてる……バーンズは生きてるわ!」
ミラーガールの一言に、皆が通信機に耳を傾けていると、ノイズが聞こえるばかり。
「……ガガガ……」
しかし、ノイズの後に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……こちら、バーンズ……聞こえるか? ……何とか……生きているみたいだ……」
バーンズの声を聞いた事で、普段は大声などあげないウッズが歓声で湧いた。
「バーンズさんを確認しました!」
再び歓喜に湧く現場。そんな中、ミラーガールがバーンズに向けて問い掛ける。
「バーンズ! 大丈夫なの!?」
ミラーガールの問い掛けにバーンズは静かに答えた。
「結構ヘビーな任務だったが……大丈夫みたいだ……」
「バーンズさん、無事だったようですね……今すぐ其方に部隊を派遣しますからね」
返答を聞いてウッズはバーンズに励ましの言葉を掛ける。
聖龍隊本部がバーンズ生還と宇宙ステーションの破壊成功に湧き立っている最中、ミラーガールがとある異変に誰よりも早く気付いた。
「……? あれ? ……修司? 修司がいないわ……」
そう、聖龍隊総長である小田原修司の姿が見えなくなっていた。
その頃の修司は、歓声に湧き立つ本部内を一人淡々と歩いていた。何かに支配されているかのように。
修司は黙々と屋内を歩き、外へと出た。屋外は、今し方バーンズがシャトル激突で破壊した宇宙ステーションの破片が流星群の様に降り注ぐ惨状が広がるばかり。
そんな情景を目の当たりにした修司の脳裏に、彼が時おり夢の中で見る謎の老人からの声が響いてきた。
(……起きろ……目を覚ますのじゃ……忘れたのか? ……何をすべきか? ……早く、倒すのじゃ……お前ならやれる……わしの最高傑作……目を覚ますのじゃ……)
そして修司は声に導かれる様に、瞳を怪しく光らせると聖龍隊本部から忽然と姿を消した。
「ねえ、みんな? 修司は何処に行ったのか、知ってる? さっきから姿が見えないんだけど……」
「そう言えば……姿が見えないですね」
「バーンズが無事に地上に帰還したって言うのに、何処に行ったのかしら?」
ミラーガールの問い掛けに、木之元桜と真紅が首を傾げて考え込む。
するとその時。地上のメカルスウィルスの感染レベルを監視していたウッズが声を上げた。
「ま、待ってください! ……何ですか、この反応は?」
ウッズの慌てる様子に何事かとミラーガールたち近くの聖龍HEADが駆け寄ると、ウッズは画面に表示されている非常事態を説明した。
「……これはまさしく……修司様の遺伝子パターンと同じ……! そう、修司様のイニシャルを取って、Sウィルスとでも呼ぶべきなのでしょうか? 地上のウィルスと、ステーション内部に凝縮されたウィルスが結合して……全く新しいウィルスを、異種というべきウィルスが誕生してしまったんでしょうか? ……一体、これからどうなるのでしょうか……?」
なんと地上に拡散していたメカルスウィルスと、宇宙ステーション内に凝縮された
Sウィルスの誕生にウッズ達が困惑していると、また新たな反応が感知された。
「とてつもないエネルギー反応が……! ……し、修司様!?」
「ウッズさん! どうかしたの!?」
顔色を一変させるウッズを見て、ミラーガールが問い掛けるとウッズは不安そうな面差しで答えた。
「……修司様と思われる反応が……ですが、反応がいつもと違うんです。そう、今までの修司様とは似て反する……!」
そしてウッズは感知された反応をモニターに映した。其処には確かに小田原修司の姿が映し出されたが、その修司は禍々しいオーラを放って、一人佇んでいた。
そんな修司の一変した姿を見て、ミラーガールは険しい表情で言い出した。
「修司よ……私には解る」
ミラーガールは禍々しいオーラを放つ修司を見て、その修司が偽物ではない本物の修司だと説き始めた。
「……私の知らない修司……初めて見る修司……」
自分の知らない、全く初見である修司の姿を捉えて呟くミラーガール。
「……私の知らない修司よ……最早、修司とは思えない感覚が……!」
しかし自分の目に映る修司には、本人とは思えない禍々しさが感じられるのを語るミラーガールは、目付きを鋭くさせて語った。
「……自分でも、よく分からないけど……何故か、受け入れられる……修司、貴方は教えてくれたわよね。……目で捉えたり、データで捉えたり……そういう事ができない事があると」
このウィルス拡散の事態を引き起こしたメカルスヘッドとの戦闘前に修司が自分達に教え説いてくれた事を思い返していくミラーガールは、正に実感していた。
「……感じ取る……感じる事でしか、分からない事も多くあるって。私は今……まさしく、それを感じているわ……」
禍々しいオーラを放つ修司からは、五感だけでなくデータからも捉える事ができない何か普通ではない事態が起きていると。
「……修司! 私は逃げない。貴方を……暴走する貴方を命を懸けて止めるわ!」
そしてミラーガールは、修司を全力で止める決意を固めた。
「新しいウィルス……一難去って、また……取り敢えず、Sウィルスと呼ぶことにしましょう……」
ウッズが新たな脅威としてSウィルスを名称していると、単身出撃しようとするミラーガールに本部待機中のHEADが彼女を制止する。
「待ってアッコちゃん! 一人では危険よ」
「行くしかないんです……! 退いてください」
キューティーハニーの制止も聞かず、出撃しようとするミラーガールに今度はセーラームーンが呼び止めた。
「アッコちゃん! 大好きな修司君が危険な何かに巻き込まれたから、何とかしたいって思っているのは凄くよく分かるよ。……けれど、一人じゃ……!」
「私はもう覚悟を決めたんです。……だから!」
そんな己の意志と信念を貫くミラーガールの勇姿に心打たれ、聖龍HEADは彼女の意志に流された。
「……ふぅ、何があっても行くって聞かないのね。そういう頑固なところも修司君にそっくりになって来たわよ」
コレクターユイが呆れながらミラーガールに話すと、七海るちあもミラーガールに言った。
「似た者カップルって奴ですか……こうなったら、みんなで直接総長に……修司さんの所に出撃しちゃいますか!」
これを聞いたミュウイチゴも賛成の意を示した。
「そうだニャ! みんなで懸かれば、どうにか修司さんを止められる筈! ……かも」
やや不安が残っているミュウイチゴ。しかしそんな彼女達の声を聞いて、ミラーガールは感激した。
「みんな……!」
ミラーガールが感激していると、そこに参謀総長のジュピターキッドが申し開いた。
「だけど、僕らがみんな揃って出撃するのはバーンズが帰ってきたからだよ。あの義兄さんを止めるには、それこそ聖龍HEADの力を出し切らないとコッチが負けちゃうよ」
「ジュニア君……! 分かったわ、バーンズが帰ってきたら早速修司を追うわよ!」
こうして聖龍HEADは本部より消えた小田原修司を追尾する為に出撃の用意を進めた。
そして聖龍隊本部に帰るや否や、小田原修司突然の失踪と巨大な反応を聞き付けたバーンズは、即座にメタルバードに変身してHEADと共に出撃した。
「アメリカ、エリア88の廃棄区域、通称0エリアで巨大な反応あり! Sウィルスの謎が分かるかも知れません……でも、とても危険です……どうすれば? でも、逃げる事はできません……行くしか……行くしかない様です! これで終わりにしましょう!」
小田原修司の反応だけでない、巨大な反応を示している廃棄された0エリアに急ぎ向かう聖龍HEAD。
こうして聖龍隊は、辛くも巨大国際宇宙ステーション「希望」の地球への衝突を間一髪で防いだ。
しかし代償は大きく、宇宙ステーションの破片が地球に降り注ぎ、地球の大部分は焼け野原へと一変してしまわれた。
そしてその直後に忽然と姿を消し、禍々しいエネルギーを纏った小田原修司が向かったと思われるエリア88の廃棄された区域0エリアにて、聖龍HEADは何を見るのだろうか。
[明らかになる真実]
巨大国際宇宙ステーション「希望」の破壊に成功した聖龍隊。
しかし地球消滅は免れたものの、爆発した宇宙ステーションの破片が世界中に降り注いだ被害は大きく、地上は焼け野原へと一変。
だが、革命軍士の本当の狙いは地球消滅ではなかった。
革命軍士総司令官である修司の
そして地上に散布されたメカルスウィルスと、ステーション内に凝縮された
そんなS-ウイルスが地球に散布されると同時に、小田原修司自身の精神に変化が生じた。そして己の変化の兆しに気付いた小田原修司は単身、アメリカのエリア88区域内で廃棄された0エリアへと赴いたのだ。
聖龍HEADは早速修司を追って0エリアに到着するが、既に修司は0エリアの警備兵を惨殺して内部へと進攻していた。
HEADは修司の暴走を止める為と、何ゆえ修司がこの廃棄された0エリアに潜入したのか調査を開始した。
その結果、聖龍HEADは過去の小田原修司に関して衝撃的な事実を知る事となった。
それは小田原修司が軍に在籍していた頃に、
殺戮陽動プラグラムを持つ修司の若かりし頃のコードネームを見て、HEADは更に衝撃した。それは二次元人を滅ぼす為に作り出されたと言われてた「破滅の神メシア」の名だった。
修司自身も、聖龍隊と己の総力をかけて探し出そうとしていた兵器が、まさかの修司本人だったと知って、ミラーガールもその他の聖龍HEADも落胆した。
そして大量のウィルスを浴びた小田原修司は、潜在意識の中に封印されていた筈の殺戮陽動プラグラムが発動した事で現在0エリアを邁進、廃墟と化している0エリアを巡回中の兵士を悉く惨殺して進攻している最中だという。
しかし事実を知っても尚、聖龍HEADは総長である小田原修司の暴走を止めるべく、邁進していく。
その道中、過去にHEADが戦った絶夢鳥の姿に変化するスライム状の兵器を突破しながらも、HEADは修司を追跡した。
と、HEADが進攻していると、彼女達の前に無残にも血の海に沈んでいるスコーピオン同盟の集団と出くわした。
彼らは彼らで、二次元人絶滅兵器「メシア」を探索していただが、この0エリアでその兵器が修司自身である事を知ったのだが、その直後に殺戮陽動プログラムが発動して暴走した修司と遭遇して激しく入り乱れての戦闘に突入したという。
しかし、殺戮陽動プログラムで戦闘力が上昇した小田原修司との戦闘は死線を乗り越えてきたガイア達にすら苦戦であった。そして死闘の末も虚しく、全員が修司に完膚なきまでに痛め付けられてしまったという。
ミラーガールと最終兵器ちせは、全身を激しく負傷しているガイア・スコーピオンに駆け寄り、彼から事情を聞いた。
「み、ミラーガール……それに、ちせちゃん……ハハ、なんだ……HEADの皆様方もやって来た訳か……」
「ガイア! どうしたの? 教えて!」
「ミラーガール……お、オレ達はオレ達で……オレら二次元人を滅ぼす兵器を探していた……この手で、ぶっ壊そうと思ってな。……だが、現実は非情だった……」
息も絶え絶えのガイア・スコーピオンは語った。彼らスコーピオン同盟も独自の調査を重ねて、対二次元人用の究極兵器を見つけ出そうとしていた。そしてこの0エリアこそ、その兵器が生み出された拠点である事、その兵器が通常の人間にも施行された一種の催眠暗示による肉体強化の策だという事、そして対二次元人用に精神を改造された兵士こそコードネーム:メシアの異名を与えられた若かりし小田原修司であった事実を特定したのだという。
しかし催眠暗示で精神を改造された小田原修司は、その暗示が暴走した事で当時まだ使用されていた0エリアの研究所員や軍人達を虐殺して今では廃棄区域へと変えてしまった経緯があるのだという。
そして当時、人体の精神強化によって戦闘力を向上させた学者Drヴァルツの手で修司は己の潜在意識に埋め込まれた殺戮陽動プログラムを記憶と共に封印されたという。
ガイア達スコーピオン同盟は、地球全土がウィルスで侵された混乱に乗じて、0エリアに潜入して独自の調査を進めていたのだが、その最中に殺戮陽動プログラムが発動してしまったと思われる小田原修司が0エリアに突入した事で戦闘に至ってしまったという。
そんな覚醒した小田原修司によって徹底的に痛め付けられたガイアは、ミラーガールやちせ達に申した。
「……ち、ちせちゃん……アイツは、もう……修司は、もう……今までの修司じゃ、無くなっちまっている……。アイツは、もう……二次元人を守る存在じゃなく、逆に……二次元人を滅ぼすために生み出された、破滅の権化だ……! 修司は……修司の奴は、力に執着するあまり……力を渇望するあまり……自分が成りたかった存在以上の、危険な存在へと変わっちまった……。お、オレ達じゃ、修司を……アイツを、止められなかった……危険とは思うが……修司を……破滅の化身へと変わっちまった奴を、止められるのは……ハァ……修司を最も理解し、共に戦ってきたHEADしかいないだろう……」
途切れ途切れの台詞を息が絶え絶えになりながらも訴え掛けるガイア。
最後にガイアは、ミラーガールやちせに訊ねた。
「ハァ、カッコ悪いが……修司を止められなかったオレたちスコーピオン同盟は、アンタ達HEADに全てを委ねるしかできねえ……オレの、オレ様の仲間達は、今どうなっている……?」
ガイアに問われ、ミラーガールが辺りを見渡してみると、周辺には覚醒した修司によって惨殺されたスコーピオン同盟の面々の亡骸が瓦礫や床の上に転がっていた。
ガイアの実弟であるクリスタルは、その美しい水晶の体が罅割れて、その箇所から夥しい透明な血を流して瓦礫の上で息絶えていた。その傍らでは、メガロ・スコーピオンが内部の機械が露見するまで徹底的に大破されており、反応はなかった。柊恵一は顔に鋭い刀傷を斬り付けられて、弟の柊潤と共に血の海に沈んでいた。クロミは少女の姿でバクと共に修司と対峙したらしいが、最後には腹部を鉄パイプで貫かれて瓦礫に固定されているという惨殺された状態に至り、バクはそんなクロミを庇って一刀の元斬り捨てられていた。水銀燈と雪華綺晶は、修司と戦い合ったが最期はバラバラに切断されて無残な状態に至っていた。兵部京介もまた、超能力で修司に張り合ったが最後は修司に顔ごと胴体を斬り付けられて絶命。ランダージョとグラスホップも覚醒した修司には遠く及ばず無残にも切り裂かれていた。魔法が使えるピエール/ワルド/フーケの三人も虚しく血の海に横たわっていた。ホワイト・ヘアーズの集団も、修司に燃え盛るバイクで突進して痛手を負わせようと試みたが、修司に回避された事で鉄パイプがむき出しになっている瓦礫に突っ込んで即死してた。アルケニモンとマミーモンはエテモンと共に戦っていたらしいが、それでも修司に及ばず肉体を切断されて息絶えていた、マミーモンはアルケニモンを庇うかのように寄り添いながら。最後のシルクァッド・ジュナザードも、覚醒した修司の剣術に敗れて呆気なく斬り捨てられて絶命していた。
そんなスコーピオン同盟の最後を視認し、ミラーガールはガイアに首を横に振ってスコーピオン同盟の皆が既に息絶えている事を無言で伝える。
ミラーガールからの反応を受けて、ガイアは悲しそうに涙するとミラーガール達に言い伝えた。
「た、頼む……修司を……破滅の化身メシアへと変わっちまった修司を…………止めてくれ……!」
そう言い残すと、ガイアは静かに涙で濡れた瞳を閉じた。
息絶えたガイア・スコーピオン、そして彼に従ってきた多くのスコーピオン同盟の皆々の死を受け止めて、ミラーガールの決意は更に固まった。
絶対に修司を止めて、元の修司を取り戻すのだと。
[血戦]
ガイア率いるスコーピオン同盟の死を乗り越えて、聖龍HEADは殺戮陽動プログラムが発動し、完全な殺戮マシーンへと変貌した小田原修司を追い続けた。
そしてHEADは遂に小田原修司が潜んでいると思われる区域まで到達した。
しかし其処には無数の兵士の死体が血塗れの状態で転がっていた。おそらく0エリアを巡回していた兵士だったのだろう。
すると、そんな無数の死体が転がる惨状の中、暗闇の中から現れる人影が。
『………………』「来たか――――みんな」
HEADが黙然と立ち尽くす中、暗闇から現れた人影は不気味な口調でHEADに語り掛ける。
「修司……」
HEADが一人、ミラーガールが暗闇から現れた小田原修司の名を呼ぶ。が、修司は怪しい雰囲気を漂わせながら、ただただ刀を向けて邁進するばかり。
そんな修司は何かを悟ったかのような、物静かながらも怪しい眼光を光らせて語り出した。
「アッコ……俺は全てを思い出したんだ。とってもキモチがいい……こんなキモチ、初めてだ」
「………………………………」
「もう、どうでも良くなった。この世界の未来も、
「……修司、本当に貴方は修司なのよね……」
漆黒のオーラを纏う修司の話を聞き入れるHEAD、するとミラーガールが忽然と変わり果てた修司に問うた。すると修司はミラーガールに真っ向から答えた。
「……俺は俺だよ、アッコ。その証拠に
更に修司は衝撃的な言葉をミラーガール達HEADに投げかけた。
「俺がするべき事はただ一つ……お前達を消し去る事だ」
突如として敵意を向けてきた修司に対して、ミラーガール達は平然を装いながらも修司に言った。
「……ええ、そうね。前の修司とデータでは何の変りもない。だけど修司、貴方は言ってくれたわね。目や耳、データでは捉えられないものも世の中には沢山あるって……今の修司からは、とてつもない悪意を感じるわ……! そう、メカルスや他の多くの
悪意を感じられるとミラーガールに説かれた修司は、平然とした物言いでミラーガール達HEADに返した。
「……なら話は早い……俺と戦え! HEADよ、二次元人よ! これは抗う事ができない宿命なんだ! 三次元人である創造主たる俺と、創造されし二次元人……光と影、これは俺たちが出会った時から決まっていた運命かもしれん……!!」
しかし、この力強い修司の言動にHEADは一向に動こうとはしなかった。
「どうした? 何を黙っている、みんな。やはり俺とは戦えないのか?」
しかし次の瞬間、ミラーガールは自身が武装するミラー・シールドから蒼い閃光を発射し、修司に向かって攻撃した。修司はこの閃光を斬撃で防ぎ、再びミラーガール達と対峙する。
(……修司は今まで、私たちの為に頑張ってくれた。だから私たち二次元人を滅ぼす為に作られた殺戮陽動プログラムにも知らず知らず暗示を組み込まれてしまった。全ては、非力な私たち二次元人の為に……)
ミラーガールは此処まで到達する間、0エリアで入手した情報から知り得た殺戮陽動プログラムが、全ては偽りの種族と見られている危険な可能性も秘めている二次元人を根絶する為に作られた一種の催眠暗示である事。そして二次元人を守るべく、力を欲し続けた修司が知らず知らずにその催眠暗示の実験体にされてしまった経緯を思い返していた。
そしてミラーガールはミラー・シールドを構えながら、仲間と共に臨戦態勢に入って力強く言い放つ。
「貴方を倒して……本当の修司を取り戻す!」
このミラーガールの言葉を聞いた修司は、喜々とした表情で叫んだ。
「いいぞ、みんな!! それでこそ俺が認めた二次元人達だ!!」
次の瞬間、怪しく微笑む修司は、躊躇う事無くHEADへと斬撃を放つ。それをHEADは瞬時に回避して反撃に転ずる。
最初に修司に攻撃したのはセーラー戦士たちであった。彼女達は自身が持つ力を総て修司に浴びせて、修司を正気へと戻そうと図る。しかし覚醒した修司には彼女達の想いの力など全く効かず、修司は逆にセーラー戦士達に急接近して、悉く彼女達を斬り捨てていった。
「ハハハハ、俺は邪悪な存在じゃない……故に、お前達の魔力も効果はない!」
己は浄化の力で消滅させられる邪悪な存在ではない故に、セーラー戦士達の力など効力はないと説く修司は己の力に酔い痴れた状態で面白そうにセーラームーン達を斬り捨てていく。
するとお次はキューティーハニーがサーベルで修司と刃同士でぶつかり合う。しかし覚醒した修司の強力な刃に抗う事はできず、鍔迫り合いで彼女は修司に押されて容易く後方の壁へと押し返されてしまう。
キューティーハニーが壁へと押し出されて減り込んだ次の瞬間、ナースエンジェルが負傷したキューティーハニーへと駆け寄り、治療しようとするのだが、修司は黙って見過ごさなかった。
「敵の怪我を治させるほど……俺は甘くない!!」
そう叫ぶと修司は治療しようと駆け付けるナースエンジェルに急接近して、彼女に斬りかかろうと聖龍剣を振り上げた。ナースエンジェルはこの斬撃を防ごうと、エンジェルバトンを上へと構えて修司の斬撃を防いだが、修司の豪腕からの刃は容易にバトンを切断してナースエンジェルを躊躇いなく斬った。
仲間が、友が次々とやられていくのを目の当たりにした木之元桜はソード「剣」のカードとファイト「闘」のカード、そしてパワー「力」のカードを併用して修司に挑む。だが、さくらが強ければ強くなるほど修司の戦闘力も上昇して、さくらは修司の斬撃に弾き飛ばされて後方の壁へと減り込んでしまう。
そんな暴走する修司を何としてでも止めようと、コレクターユイ達は三人とも最強のエレメントスーツに変身して修司を取り囲む。しかし修司はコレクターハルナやコレクターアイの攻撃を真正面から受けても傷一つ負わずに、逆に彼女達へ波動斬を叩き込んで倒してしまう。
其処へ今度は魔法騎士の三人が修司の前に立ちはだかり、修司へ合体魔法を叩き込む。が、修司は光たちの魔法を受けても何ともなく、それどころか薄ら笑いを浮かべながら三人に歩み寄り、次の瞬間には一気に踏み込んで三人を着用している鎧ごと切り裂いた。
「俺は、俺は……もう魔法という力すらも凌駕するほど強くなったんだァ!」
修司は己の力に益々陶酔してか、更に禍々しいオーラを放った。
そんな修司の暴走を止めようと、ちせとメタルバードが上空から修司を爆撃。しかし修司は爆煙の中から飛び出し、背中に闇の翼を生やして飛び上がってはメタルバードとちせの許に急接近。二人は修司の追撃をかわしながら懸命に反撃の爆撃を返して行くが、修司はその爆撃をかわすか聖龍剣で切断して防いでいく。そして急速で飛行する二人に接近した修司はまずメタルバードの顔面を斬り付け、次にちせの背中を踏み付けて彼女を地面に押し付けながら強引に着陸させた。
強引に地面に体を押し付けられた為に傷付いたちせを見下ろして、修司が聖龍剣で彼女の命を奪おうとしたその瞬間、そんな修司を止めるべくミュウイチゴたちHEADに新しく加わった三組が攻撃を仕掛けた。
修司は標的を三組に変えると即座に急接近するが、今度は相手方も同様に急接近して蒼の騎士と堂本海斗が剣で修司の凶刃を食い止める。しかし激しい刃と刃のぶつかり合いは長くは持たず、覚醒した修司は簡単に蒼の騎士と海斗を斬り捨てる。
そんな戦意をむき出しにする修司を宥めようと、マーメイドプリンセス達は癒しの歌を歌って修司を元に戻そうと試みた。しかし修司は心が癒されるプリンセス達の美声に、心が揺れ動く事はなく、るちあ達に歩み寄ると強烈な斬撃を放って合唱を強引に止めた。
「俺は……今の俺は、邪悪な魔物でもなければ……異常な輩でもない。至って正常な、本来の俺に戻っただけだ。歌で弱体化されるほどの弱い俺ではない!」
そう言い放つと、修司はるちあ達に急接近して彼女達の首を斬首しようと仕掛ける。
だが、修司にそうさせまいとミュウイチゴ達が目前に立ちはだかる。修司は彼女達にも覚醒した力を存分に発揮して、情け容赦なく斬り捨てていった。
と、其処に真紅たちローゼンメイデンが駆け付け、5体は一気に修司を取り囲む。
「今よ!」
真紅の合図と共に、ローゼンメイデン達は修司を中央に魔法陣を展開。其処へ更にキューティーハニーも駆け付け、真紅たちと息を合わせる。
「修司君、ごめん!」
キューティーハニーは満身創痍の状態で修司に謝ると、ローゼンメイデン達が発動させた魔力で修司を硬い水晶の中に閉じ込めようとする。それと同時にキューティーハニーも空中元素固定装置を発動させて、真紅達に助勢する。
そして修司は一瞬で水晶の中に閉じ込められて、完全に身動きを封じたと誰もが思った。だがその矢先、水晶に罅が入り、水晶の中から修司が自力で脱出して真紅たちローゼンメイデン達を斬り払う。
「みんな!」
キューティーハニーが斬撃で振り払われる真紅たちを呼びかけるが、この一言で修司に睨まれて彼女もまた修司に再び斬り捨てられてしまう。
多くの聖龍HEADが斬り捨てられて息も絶え絶えの状態に陥っている最中、残ったHEADは修司に挑む。
ジュピターキッドとウォーターフェアリーは連携して修司に挑みかかるが、キッドが振り付けた鞭を修司は聖龍剣で絡み取ると、そのままキッドを力任せに振り回して攻撃に転じようとするウォーターフェアリーへと投げ飛ばしてしまう。
すると先ほど、ちせと共に修司に挑んだメタルバードが此処で戦前復帰して修司を取り押さえようと肉体を軟体化させて絡み付く。しかし修司は自分の体に纏わり付いたメタルバードを闇のオーラで弾き返そうとすると同時に引き剥がして足元に投げ飛ばしてから聖龍剣で突き刺した。
そして最後に残ったミラーガール。彼女は最初は修司と戦うのを意気込んでいたが、いざ覚醒した修司と戦うと思うと躊躇いが生まれてしまい思う様に体が動かなくなってしまってた。
ミラーガールは修司に向けて、ミラーシールドに凝縮した魔力を放ったが、修司はその閃光を聖龍剣で一太刀に切り裂いて防いでしまう。ミラーガールは再度、修司にエネルギー弾を発射しようと構えるが、修司はミラーガールに急接近して彼女が持つ盾を左手で押さえながらニヤリと怪しい笑みを向けた。
「!!」
修司の不敵な、そして禍々しい笑みを向けられて愕然とするミラーガール。すると彼女が武装するミラーシールドに修司は聖龍剣を握り直して突き刺した。
「っ!」
聖龍剣で盾を貫かれて絶句するミラーガール。そんな彼女を修司は掴んでいる盾ごと投げ付けてミラーガールを壁へと弾き飛ばす。
ミラーガールが悶絶していると、そこに今し方修司によって痛め付けられた同胞の聖龍HEADが駆け寄って、ミラーガールと共に再び修司と対峙する。
小田原修司が信じた希望の象徴である聖龍HEADと、今や過去に植え付けられた催眠暗示で覚醒しては全てを滅ぼそうと己の力に酔い痴れる小田原修司。
両者の血戦は続くのだった。
[究極の二次元人]
過去に植え付けられた催眠暗示「殺戮陽動プログラム」が発動して、対二次元人用の殺戮兵器である破滅の化身「メシア」へと変貌した小田原修司。
そんな修司を止めようと、命を懸けて彼と戦うミラーガールたち聖龍HEAD。
しかし彼女たちの反撃は意味をなさず、全ての希望の如き美しき閃光は駆け巡りながらも漆黒の刃で断ち切られてしまう。
接近戦を挑むものの、修司の卓越した格闘術の前、そして暴走した彼の戦意を食い止める事はできなかった。
様々な想いが彩る二次元界。その世界に夢を馳せた少年が、今では全ての存在を滅ぼそうとする殺戮兵器に成り果ててしまった。
HEADと修司の加速は留まる事を知らず、決して止まる事がなかった。
自分達の如何なる能力や技を一切も受けず、全てを受け流し、または一刀にて斬り捨てる修司の技に焦燥し、戸惑うミラーガール。
そんなミラーガールに、修司は彼女が武装するミラー・シールドを一刀両断すると、そのまま怯んだ彼女に回し蹴りを入れて吹き飛ばす。
壁にまで弾き飛ばされたミラーガールは辺りを見回して愕然となった。仲間であるセーラー戦士もキューティーハニーも、そして新たにHEADに加わっているマーメイドメロディーズや東京ミュウミュウズ、ローゼンメイデン達も傷だらけで力尽きていた。
傷付きながらも愛する修司を止めるべく立ち上がろうとするミラーガール。しかし壁への激突で思う様に体が動かない。
その間にも彼女の思考の中では、大切な友であり、秘かに愛し合う修司との思い出が走馬灯のように駆け巡っていた。
「無限の可能性を持つお前たち二次元人と……想像したものを無に還す俺たち三次元人……俺達はもともと誕生の瞬間から、決して相容れることのない――対になる存在なんだよ」
全てのHEADを撃破した小田原修司は、地べたに這いつくばるセーラームーンへと歩み寄ると彼女の頭を踏み付ける。
「うっ……」「う、うさぎ……!」
頭を力いっぱい踏み付けられて悶絶するセーラームーンを前に、同じく地べたに這いつくばるキング・エンディミオンが悲愴な面持ちでセーラームーンを見詰める。
そんな仲間達の悲愴な視線を一身に浴びながらも、修司は更にセーラームーンを踏み付ける足に力を入れる。
「ククク、そうだな、お前達にも解りやすいよう実践してやるのも悪くない……何も守れない非力な存在だからこそ、目の前で大切な仲間が、友が奪われる……その情景を、な!」
修司は更に踏み付ける力を込めて、セーラームーンの頭蓋を踏み砕こうとし始めた。
「や、やめろッ!」
キング・エンディミオンが呼び止めようと叫ぶが、それも虚しくセーラームーンの頭蓋は軋み始めた。
「し、修司君……お願い、正気に戻って……!」
セーラームーンも修司に涙を流しながら切願するものの、修司は不敵な微笑を浮かべて言い返した。
「俺は正気だよ、うさぎ……俺は強くなっただけだ。そう、誰であろうと倒せる……お前達、最強の二次元人をも凌駕した絶対的な力を、俺は手に入れられたんだ……! ハハハ……ッ」
修司は狂った様に微笑を浮かべると、聖龍剣を抜刀して頭上より高く振り翳した。
「安心しろ。スグに楽にさせてやる……他の仲間も、お前同様に楽にさせてやるから安心しろ……!」
そう言うと修司は、振り翳した聖龍剣を振り下ろしてセーラームーンの首を斬首しようとした。
「やめろ! 修司ーーッ!!」
エンディミオンの悲痛な叫び声が響き渡る中、修司は一気に聖龍剣を振り下ろした。
最早、聖龍HEADの誰もが傷付き、どうする事もできないまま仲間の一人であるセーラームーンの、ネオ・クイーン・セレニティの苦しむ様を目視し続けるしかできなかった。
が、その時。
「ッ!」
セーラームーンを踏み付けていた修司の目に、眩いばかりの蒼き光が。その光が目に入り、踏み付けていた修司の動きが止んだ。
その眩い蒼き光は、薄暗い闇に包みこまれていた現状を照らした。と、同時に強烈な旋風が修司を、そして現場に倒れていた皆を呑み込んだ。
そして蒼き光の中から現れた人影。それは漆黒のパワードスーツを着衣したミラーガールの姿だった。
「アッコ……!」
蒼き衣が特徴的なミラーガールの一変した姿に、焦燥の顔色を浮かべる修司。
この時のミラーガールは、倒れ行く仲間たち、そして暴走する修司を止めたい一心から、心より≪力≫を欲したために、この様な変身を遂げたのだ。
そして激しく荒ぶる魂を抱えたミラーガールは、その鋼の如き魂で一新したミラー・シールドから今までよりも強力な砲撃を放ち、修司に攻撃。
「ッ!」
これに修司も敏感に反応して、華麗に回避すると空かさずミラーガールへと反撃とばかしに刃を振り下ろす。
しかし変異したミラーガールの右手に携えられたミラー・ソードは、日本刀の様に巨大化・強化された状態で修司の刃を受け止める。
互いの魂を削りながら双方ともに激しく刃をぶつける修司とミラーガール。
すると修司は一旦ミラーガールと距離を置いて離れると、再び一気に踏み込んで彼女に強烈な斬撃を打ち込む。
しかし全てを強化したミラーガールは、鬼の如き戦力で修司の刃をミラー・ソードで弾き返してしまう。
これを受けて修司の様子が一変し、彼は混乱状態に陥ってしまう。
「わーーーーッ!! 違う……違う違う違う! 俺は弱くない、俺は弱くない、弱くない弱くない弱くない……!!」
自分は決して弱くないのだと己に言い聞かせる修司は、目の色を一変させて再びミラーガールに斬り込んだ。
「俺は弱くない! 弱くなんかないんだッ!!」
咆哮する修司の刃を、ミラーガールは辛うじて受け止める。
だがミラーガールは修司の斬撃を受け止めた瞬間、背中に巨大な蒼き光を放つ羽を生やし、一気に威力を加速させた。
「修司、貴方は弱くないわ……弱くないからこそ、貴方を思ってくれる仲間が……友がいるの! そして私も……そんな修司を止める為に、刃を振るい続ける!!」
刃を受け止めながら修司に訴えるミラーガール。
そして火力が急上昇したミラーガールの斬撃に、修司は堪らず弾き飛ばされ、後方の壁へと激突してしまう。
すると壁に激突した瞬間、修司は正気を取り戻し、同時に仲間達の声が、想いが彼に届いた。
激しい戦闘を展開した聖龍HEADと小田原修司。
互いに本気で戦ったため、双方の消耗も激しいものとなった。
その為、最後まで抗い続けた修司もミラーガールも、他の仲間たち同様に倒れてしまう。
すると皆が倒れて気を失っている処に、暗闇から二つの眼光と大きな閃光が現れ、ミラーガールを仕留めようとする。
「フフフ、HEADと修司……此処までお互いに死ぬ気で戦ってくれて手間が省けた。最後は俺がトドメを刺してやろう……」
暗闇から現われたのは、ウィルスを拡散させる為に敢えて聖龍隊に破壊された際に消滅したと思われた、あのメカルスだった。メカルスは満身創痍で倒れたHEADにトドメを刺そうと、最初にミラーガールを狙ってエネルギー弾を発射しようと暗闇から奇襲を仕掛けてきた。
が、そこに「させるかッ!」と修司がミラーガールと暗闇から現れた自身のコピー・メカルスの間に入って、ミラーガールをメカルスの攻撃から身を挺して守る。
だが、これにより先ほどのミラーガールとの戦闘で負った消耗も付け加えて、修司は満身創痍となってしまった。
「ッ……! 修司! まだ息があったか……!」
「メカルス、お前の……お前の思い通りにはさせん……!」
すると修司はメカルスの攻撃を全身で受け止めた為か、その場に倒れ込んでしまう。
「フハハハ、いいぞ
そう言い残すと、メカルスは闇の中へと姿を消してしまった。
「……修司……修司……!」
ミラーガールとの死闘に敗れながらも、最後は正気を取り戻してメカルスの攻撃を一身に受け止めた小田原修司。
そんな満身創痍の修司に掛け続ける声に、修司は気付き、そっと瞼を開いてみると視界には彼の元に駆け寄ってきたミラーガールやHEADの仲間達の姿が在った。
「お、お前たち……無事、なのか……」
片言で、今まで殺意を向けてしまった仲間達の安否を気にする修司にナースエンジェルが申し開いた。
「大丈夫です。みんな、私やセーラームーンの治癒能力で回復しましたから」
「……そうか、良かった……」
仲間達の安否を気にしていた修司は、ナースエンジェルの言葉を聞いて安堵した。
すると修司は最後まで希望を捨てず、暴走した自分を止めるべく新たな変身を開花させたミラーガールに視線を移して言った。
「まったく、お前は……最後の最後まで、面倒を掛けやがって……俺が庇わなかったら、お前もみんなもメカルスに、やられていたんだぞ……」
「修司! もう喋らないで! 早く治療するから……」
修司の闇の能力によって治癒能力も彼には無力化される現状に、ミラーガールは急いで地上に修司を搬送して怪我の治療に当たらせようとする。
だが、修司は「その必要はない」と突っ返した。
動揺するHEADを前に、修司は壁に寄りかかりながら語り出す。
「俺に構っている暇はないぞ、HEAD……この奥に、メカルスが……!」
修司は0エリアの最深部に潜んでいる自身のコピーであるメカルスの存在に逸早く気付いて、皆にそれを知らせた。
「修司……!」
悲観するミラーガールを前に、修司は唐突に告白し出した。
「アッコ、みんな……俺はこの手で、多くの二次元人達を……お前達と同じ二次元人達を多く葬ってきた。時には、こんな俺を愛してくれた二次元人でさえも斬り捨てた……だけど、俺は泣けなかった……」
「修司! それ以上は……!」
「親友も躊躇いもなく殺し、その恋人すら手にかけた……」
「修司、もういい加減に……」
「だが泣けなかった!!」
「!!」
「最高の力を、武力を、地位を得た俺が……どんな
戦友であったJフォースのカールに、そのカールの婚約者でもあったエリーゼをも斬り捨てた修司は、どんな絶望に打ちひしがれても涙を流すという感情を表に出すことが出来なかったと説く。
そんな修司の意識が遠のく事を恐れるミラーガール達HEADに反し、修司は自らの実情を赤裸々に語り続けた。
「だから俺は……お前達が羨ましかった……」
「……!」
修司の一言に険しい面差しを向けるミラーガール。そんな彼女らに修司は語り続ける。
「例え己が倒した敵であっても……誰かの為を想い、涙を流せるお前達が心底羨ましく、そして妬ましかった……。……そして何よりも……誇りだった……」
「………………」
自分の意識が薄命になろうとしている最中すら、己が実情を語り続ける修司の想いを知って胸が締め付けられるHEADたち。
そんなHEADに、修司は説いた。
「……さあ、早くメカルスの処に行け。俺の事はもう良い……所詮、俺の能力でみんなの治癒能力は使えないのは目に見えている。早く……早く、この戦いを終わらせるんだ……」
修司の切願を聞き入れ、HEADは総員立ち上がった。
ミラーガールも修司の意志を受け止め、信じる仲間と共にメカルスの元へと力強い足取りで向かった。
イレブンズ・プロジェクトという世界中を巻き込ませたテロを起こした革命軍士メカルスの暴動を止めるべく、HEADは再び足を前へと歩ませた。
傷付き、満身創痍で意識を失った小田原修司を置いて。
修司を止めたいが為に究極の二次元人へと変身を遂げたミラーガール。
そんな彼女を最後は正気を取り戻して庇った小田原修司。
しかし最後の強敵メカルスはHEADを待ち受ける。
果たして彼らの運命は。
[0エリアの決戦]
そして0エリアの最深部で待ち受けているであろうメカルスと決着を付けるべく、進撃を再開する聖龍HEAD。
「予想はしていましたが……やはり、メカルスは簡単には消えてくれませんでしたね。全てはメカルスの計画だったんです。……もう私は何も言いません。皆さんの意志で、メカルスと決着をつけてください!」
通信士であるウッズは、進撃を再開するHEADの意志を尊重して敢えて制止する事無く彼らが突き進むのを助勢した。
2011年11月11日のイレブンズ・プロジェクトでウィルスである自身を聖龍隊に敢えて倒させたメカルスは、人間の精神心理にも影響を齎すウィルスを拡散させ、同時に占拠した宇宙ステーションにも同様のウィルスを詰め込んだ事で小田原修司を覚醒させた。
聖龍HEADは正気を取り戻した小田原修司の切願を聞き入れ、最高の精鋭であるHEADがメカルスへと挑んでいった。
そのメカルスが待ち受けていた0エリアの最深部。
そこは何故かドーム状の広間の中央に一つの椅子がポツンと置かれた、何とも異様な光景が広がっていた。
そして待ち受けていたメカルスは強力な戦闘アーマーを装備したボディで出現した。
「……………………クククッ、流石は最強の二次元人ともいえるなぁ、HEADよ……予想以上に来るのが早かったな」
「……なんのために! こんな事をしたの!?」
メカルスの立てた作戦に怒りを露わにするミラーガール達が問い質すと、メカルスは平然とした物持ちでミラーガール達に話した。
「……修司だ……修司の目を覚まさせる為にした事だ……」
「……何ですって!」
「お前達と幾度の戦闘を重ね続けた修司……だが、奴は俺の
「修司の潜在意識に埋め込まれた殺戮陽動プログラムを呼び起こす為にしたっていうの……!? 地球が滅びるかもしれなかったのよ!」
「幸い、聖龍隊という……ヒマな奴らがいて、地球滅亡はなかった……しかし、その聖龍隊も殆どが、
「……そ、そんなっ! あなたのせいで、どれだけの仲間が犠牲になったか…………許さない! 許さないわよっ! メカルス!」
全ては
殺戮陽動プログラムで修司の中に眠っていた破壊衝動を呼び起こしたメカルスに、HEADは立ち向かった。
「決着をつけるぞ!」
メカルスの方も、この場で聖龍HEADを葬る勢いでミラーガール達に戦いを挑む。
羽織っていたマントを脱ぎ捨て、メカルスは人工的な超能力が使えるボディを、通称サイコメカルスを使用してHEADに向けて広範囲の衝撃波を繰り出した。
HEADはこれを回避すると、すぐさまメカルスに反撃を仕掛ける。が、メカルスのボディには傷一つ付かず、メカルスの方も反撃として強力な電撃を手から放出する。
更にメカルスは残像が視認されるほどの高速移動でHEADを撹乱。彼女達の背後に回ると強烈な回し蹴りをお見舞いしてきた。
空手の構えの様に身構えるサイコメカルスは、即座に強力な武術で聖龍HEADを打ちのめす。
「ぐっ!」「きゃっ」
サイコメカルスの武術に悶絶するセーラージュピターにセーラーヴィーナス。
すると再びサイコメカルスは手から電撃の弾を放つ為に両手を突き出して攻撃を放出。電撃の弾はゆらりゆらりと波を描く様に放たれ、真っ直ぐ向かっていく。
放たれた電撃の弾を回避しながら、聖龍HEADはサイコメカルスに痛手を負わせようと果敢に攻撃。しかし殆どの技があまり効力を示さなかった。
サイコメカルスは高速移動でHEADに距離を詰めると近接攻撃に変えて打撃を喰らわす。サイコメカルスの打撃を浴びて吹き飛ばされる蒼星石と翠星石。
猛攻を浴び続けて苦戦を強いられる聖龍HEAD。しかし彼女達は長期戦の最中、サイコメカルスに最も有効なのは電撃なのだと認識する。
そこでセーラージュピターが電撃をお見舞いすると、サイコメカルスは少し苦しそうな反応を見せた。
セーラージュピターに続けと、さくらはサンダー「雷」のカードを、コレクターズはエレキテルスーツで電撃を、そしてメタルバードとちせは電撃の雨をサイコメカルスに放った。
やられっ放しでは分が悪いと、サイコメカルスは最初に放った広範囲の衝撃波を繰り出してHEADに応戦。しかしこの攻撃を、鋼の体を持つメタルバードと絶対防御を誇るミラーガールが全身全霊で防いだ。
「ば、バーンズ! アッコちゃん……!」
二人の捨て身の防御にセーラーマーズが呼びかけると、二人は余裕を見せながら言い切った。
「ヘッ、これぐらい大丈夫だぜ!」
「レイさん、私もなるべくメカルスの攻撃から、みんなを護れるよう戦うから攻撃の方はお願いします」
「ふ、二人とも……」
メタルバードとミラーガールの熱意に応えようと、セーラーマーズたち他のHEADは士気を上げた。
電撃だけでなく炎・水・風など様々な属性の攻撃をサイコメカルスに浴びせていく聖龍HEAD。だがサイコメカルスは高速の動きを一切止めず、動き続けてはHEADに攻撃を仕掛け続ける。
「喰らえッ」
サイコメカルスは電撃を纏った拳を打ち出して、七海るちあの腹部に打ち込む。るちあは拳を打ち込まれて吹き飛ばされるが、それを仲間の波音やリナが受け止める。
更にサイコメカルスは攻撃の手を緩めず、壁伝いに駆け上っては上空から襲撃してくるメタルバードやちせに接近し、二人を殴り付けて床へと叩き付けていく。
そんなサイコメカルスの動きを止めようと、ジュピターキッドが茨の鞭で拘束するが、強靭な力を持つサイコメカルスに容易く投げ返されて壁へと叩き付けられてしまう。
しかしジュピターキッドに気が行っているサイコメカルスに、ミラーガールが渾身のエネルギーチャージで溜め込んだ蒼い光の砲撃を放った。彼女が放つ鏡の光が凝縮されたエネルギー弾はサイコメカルスに大打撃を与えた。
ミラーガールの攻撃で大打撃を受けたサイコメカルス、しかしそのサイコメカルスは自身から生み出すメカルスウィルスを体の周りに纏わせて攻撃を仕掛けてきた。
聖龍HEADにはダメージを与えるメカルスウィルスを纏ったサイコメカルスは、HEADに拳を打ち込もうと急接近。HEADもすかさず反撃に転じようとするが、サイコメカルスが纏うメカルスウィルスを浴びたセーラー戦士やローゼンメイデン達は大ダメージを受けてしまう。その間にサイコメカルスはウィルスを浴びて苦しむ聖龍HEADに打撃を打ち込んで追撃する。
ミラーガール達は無機物・有機物どちらにも感染し、自分達にダメージを負わせるメカルスウィルスを浴びないよう、ウィルスを纏うサイコメカルスから離れて攻撃を開始。しかしサイコメカルスは聖龍HEADに急接近してダメージを負わせていく。
「うわっ」「ああっ」
セーラームーンやキューティーハニーが、メカルスウィルスを浴びてダメージを受ける中、ミラーガールはサイコメカルスに向かってエネルギーを貯蓄させた砲撃をミラーシールドから放って反撃する。
しかしサイコメカルスは、触れただけでHEADにダメージを負わせるメカルスウィルスを纏った状態で近接攻撃してくるので、またもHEADを苦戦に追い込んでいく。
触れただけでダメージを負ってしまうメカルスウィルスを纏うサイコメカルスに苦戦させられる聖龍HEAD。そんなHEADの中心的人物であるミラーガールを倒そうと、サイコメカルスはミラーガールへと距離を縮めた。
「あ、アッコ!」
メカルスウィルスを浴びてダメージを負ったメタルバードが呼びかけるが、サイコメカルスはミラーガールに迫ってダメージを浴びせようと仕掛けた。
が、その時だった。ミラーガールとサイコメカルスの間に、一体の影が割り込んではサイコメカルスの攻撃を受け止めた。
皆がその影に注目してみると、それは先ほどHEADと血戦を繰り広げて満身創痍になった小田原修司だった。修司は全身に深手を負いながらも、仲間であるHEADを気にして駆け付けてきたのだ。
「し、修司!」
突如自分の目の前に現れて、身を呈して庇ってくれた修司にミラーガールは一驚する。
「し、修司……!」「メカルス……!!」
自身の攻撃を聖龍剣で受け切られたサイコメカルスは、修司と睨み合う。
するとサイコメカルスが纏うメカルスウィルスが、サイコメカルスと対峙する修司に襲い掛かり、修司は全身にウィルスを浴びてしまった。だが修司は決してダメージを受ける事無く、逆に全身に力が漲る感覚が走った。
「め、メカルスぅ……!!」
ウィルスを浴びて全身の力が漲る修司は、その上昇した戦闘力でサイコメカルスに強烈な一刀を浴びせて、切断してしまう。
「ッ……フ、フハハハ……! それだ! 修司それこそお前の……俺たちの真の力……全てを滅ぼす力だ!」
修司の強力な斬撃を受けて真っ二つになるサイコメカルスは、ウィルスを浴びて力が漲る修司こそ自分達の真の力であり、全てを滅ぼす力だと主張しながら爆発した。
「し、修司……」「ハァ、ハァ、ハァ……」
目の前でメカルスウィルスを浴びてもダメージを負うどころか戦闘力が急上昇した修司を目撃して愕然とするミラーガールに対し、修司本人は呼吸を荒くしていた。
そしてミラーガールと同様にウィルスを浴びて戦闘力が上昇した修司を目撃して唖然とする聖龍HEADたち。
「やっぱり……メカルスウィルスと修司さんは……!」
以前に隊士から小田原修司とウィルスの関連性と危険を通告されたナースエンジェルは、自分の目の前でその情景を目撃して言葉を失った。
[本当の血戦]
殺戮陽動プログラムで覚醒した小田原修司を止める事に成功した聖龍HEAD。彼女達は次に、全てを目論んだメカルスと決着をつけようと向かった。
そして迎えた革命軍士メカルスとの死闘。HEADは辛うじてメカルスを追い込む事ができたが、寸での処でメカルスはHEADに一矢報いようとミラーガールの油断をついて彼女に最大火力の攻撃を放った。
ミラーガールの危機、そこに駆け付けて来たのは、先ほどHEADとの戦闘に加えてミラーガールを身を挺して庇った為に満身創痍になってしまっていた小田原修司であった。彼は全身ボロボロになりながらも最後の力を振り絞ってメカルス討伐の為に駆け付けたのだ。
「し、修司……!」「はぁ、お前は油断が多すぎる……」
一度ならず二度までも自分を守ってくれた修司の到着に驚くミラーガールに対し、修司は彼女の戦闘での油断の多さを懸念する。
そんな
「ワーーハッハッ! よくぞここまで来たな、修司よ……」
「め、メカルス! 印籠は俺が直接渡してやらぁ!」
高笑いしながら消滅したメカルス相手に、修司は未だメカルスが近くで成りを潜めている現状を察して怒号を叫ぶ。
すると暗闇の中から巨大な影がゆっくりとその全貌を現した。それは巨大な戦闘用ロボットに乗り移ったメカルスだった。
「ここだよ、逃げも隠れもせん……実はな、今回良きパートナーがいてな……色々とサポートしてくれていたのだよ。過去に数えきれないほどの人間の精神を改造し……技術面でも秀でていてな、今から見せる最強のボディも与えてくれたのだ。頼もしいパートナー、いや、同士だった……誰よりも、お前達に対する異常な……執着心……実に頼もしかった……俺自身も懐かしんだものよ……何故なら、俺達に……小田原修司という人間に無限の破壊性を与えてくれた張本人なのだから!」
「な、何ですって……!」
「俺以外にも居たのだよ……お前達を憎む存在が……憎しみを喰らうが良い! 死ね! 聖龍HEAD!」
メカルスの話を聞いてミラーガール達HEADは一人の人物を思い起こした。かつて、この0エリアで多くの兵士の精神を催眠術で改造していた上に、自分たち二次元人に多大な敵意を向けていた一人の心理学者を。
同じく、メカルスの話を聞いた修司は自身の記憶にはないその人物に、封印されて消えかけていた記憶が呼び起されそうになっていた。
「だ、誰なんだ……! その人物って一体、誰なんだ……!?」
「修司、落ち着いて! メカルスの口車に乗せられちゃダメ!」
何度も夢で見る、顔の分からない人物の存在にいつも悩まされていた修司は記憶を辿ろうとするが、ミラーガールが過去の辛い現況を思い起こさない様に修司を宥める。
すると、そんな修司を宥めるミラーガール。二人に巨大ロボに転移したメカルスが話し掛けてきた。
「ふふっ、落ち着け、我が
「……し、知らない! 俺はそんなヤツなど知らない……!」
「修司! ……落ち着いて……!」
「修司よ、お前はよく知っている筈だ。……夢で会うだろ? お前の事を……いいや、俺達の事に深く入れ込んでいたよ。そう、まるで生みの親の様になーーっ!」
メカルスの言葉に、ミラーガールに宥められながらも修司は遂に堪忍袋の緒が切れた。
「うわーー!! 黙れーー!! 最後だ! 許さないぞ、メカルスッ!」
メカルスの挑発に冷静さを失いながらも、修司は仲間である聖龍HEADと共に巨大ロボのメカルスに戦いを挑んだ。
メカルスが乗り移った巨大ロボは、その巨体とは独立した腕から強力な攻撃をHEADに仕掛けていく。
「わははっ、どうだHEADよ! これが俺の切り札、その名もファイナルメカルスVだ!」
「ファイナルメカルス……V?」
メカルスが、自身が乗り移った巨大ロボがファイナルメカルスVだと名乗ると、修司はメカルスが発した名称の最後に付けられているVの言葉に反応した。
「V、V……! 俺は、そのイニシャルを知っている……!?」
「修司、しっかりして! メカルスの言葉に惑わされないでっ」
修司は微かに覚えのある名前を思い出そうと混乱してしまうが、ミラーガールがそんな修司を宥めながら記憶が蘇るのを阻止しようとする。彼女達は、この0エリアで修司たち兵士に催眠暗示を植え付けていた一人の科学者の名を周知していたからだ。その名もDrヴァルツ、修司に殺戮陽動プログラムを植え付けた学者。メカルスは今回、そのヴァルツと結託して修司の中に封印した催眠暗示「殺戮陽動プログラム」を発動させようと計画していたのだ。
そんな精神学にも科学にも精通していたヴァルツが造った巨大ボディ:ファイナルメカルスVに聖龍HEADが攻撃しようとするが、なんと巨大なファイナルメカルスVは聖龍HEADの攻撃をすり抜けてしまった。
「な、なんだこりゃッ!?」
攻撃が効かずにすり抜けてしまう現象にメタルバードが目を丸くすると、そんなファイナルメカルスVの現象を目撃したコレクターユイが声を発した。
「あ、あれは……一時的に体をプログラム化させて、一定時間だけ無敵状態になれるみたい!」
「そ、そんな!」
コレクターユイの説明を聞いて、ジュピターキッドが愕然とする。
「多分あれは、物質転送装置の技術を応用して別空間にシフトさせる事で、あらゆる攻撃での損害を完全無力化させているのよ……!」
「要するに別空間にメカルス本体が移動している間は、全く攻撃が当たらないって訳か!? クソッ」
コレクターアイが付け足した仮説を聞いてメタルバードは非常に悔やんだ。
そんな困惑するHEADを前に、ファイナルメカルスVはプログラム化させた体を元に戻すと目前の聖龍HEADへと目から彼女達を追跡するエネルギー弾を4発放ってきた。
ファイナルメカルスVの目から放たれたエネルギー弾はHEADを追尾するものの、HEADはその華麗な動きでどうにかエネルギー弾を回避する。
と、自分達を追尾するエネルギー弾を目から発射したファイナルメカルスVの一連の動作を見切ったセーラーウラヌスが皆に言い伝えた。
「みんな! メカルスは自分の巨大な体をプログラム化してボクらの攻撃をすり抜けている間は、おそらく攻撃できないんだ! 攻撃を仕掛けてくる隙にメカルスへ反撃だ!」
セーラーウラヌスの助言に続き、メタルバードがレーダー化している自身の眼球でファイナルメカルスVの弱点を調べ上げる。
「メカルスの弱点は……額のクリスタルだ! 額を全面的に狙えッ!」
メタルバードの大声を聞いて、HEADはファイナルメカルスVの額を集中砲火。するとファイナルメカルスVは無表情のまま苦痛に喘いだ。
「ぐぅ……ッ、俺のプログラム化による攻撃不可の弱点と額の水晶に気付いたか……だが、俺にはまだ奥の手がある!」
そういうとファイナルメカルスVは自身の本体とは独立しているブースターが装わった両手の巨大アームを出現させて飛ばしてきた。
「このっ、こんな腕、斬り落としてやる!」
堂本海斗がファイナルメカルスVが攻撃手段の殆どを集約している巨大アームを斬り付けようと迫ると、その掌から紫色のプラズマチャージショットが放たれて海斗を襲う。
「うぎゃあっ」「か、海斗!」
ブースターが備わった両手ブーストフィンガーから放たれたプラズマの攻撃を浴びた海斗は絶叫し、それを見たるちあは悲鳴を上げてしまう。
「ぐはははっ、確かに目からのエネルギー弾は体をプログラム化している間は使えない……だが、俺の本体とは独立して稼動する腕からは、あらゆる攻撃手段が可能なのだ!」
得意気に己の攻撃手段を自慢するファイナルメカルスVの発言にHEADが表情を険しくさせていると、その独立している巨大な腕を修司が強力な斬撃一発で切り裂いて爆破させた。
そしてもう一方の巨大アームを破壊しようと修司が我武者羅に攻め続けると、ファイナルメカルスVは新たに別の予備の腕を呼び寄せてHEADを襲わせる。
「フフフ、悪いな修司……ヴァルツの爺さんに予備のアームを大量に造らせているのだ。幾ら腕を破壊したところで、俺自身を倒さない限り、この悲劇という名の戦いは終わらないぞ!」
「ヴァ、ヴァルツ……!?」
修司はメカルスが口に出したヴァルツという名に動揺し、再び動きが止まってしまった。
「修司!」
そんな修司にファイナルメカルスVは巨大な腕で捻り潰そうと襲い掛かってくるが、間一髪のところでミラーガールによって救われた。
「修司、しっかりして!」「っ!」
ミラーガールから呼びかけられて、修司はハッと気付く。
その間もHEADはHEADでファイナルメカルスVの弱点である額の水晶を狙って総攻撃。しかし加算されるダメージだけではファイナルメカルスVを止めるのは至難の業で、ただただその圧倒的な巨体とパワーに威圧されるばかりだった。
すると、そんなメカルスとは独立している巨大アームから強力な電流が流れ、その手がHEADを捕まえようと迫ってきた。
「捕まるな! 捕まったら感電は免れない!」
メタルバードが仲間達に呼びかけながら共に電流が流れる手から逃れていくが、その最中キング・エンディミオンが捕まってしまった。
「うぎゃああっ!」「ま、まもちゃん!」
電流が迸る巨大な手に捕まり、感電してしまうエンディミオンを見てセーラームーンが悲痛に叫ぶ。
するとエンディミオンを救うべく、修司がエンディミオンを捕まえた巨大アームを斬り付けて彼を助け出す。
「ぐっ……! す、すまない、修司……」
「良いって事だ。さっきのお礼という事にしてくれ」
修司はエンディミオンに先ほど暴走してしまった自分を止めに来てくれた礼だと申し返す。
そして修司とミラーガールは協力してファイナルメカルスVの額を斬撃などで攻撃してダメージを蓄積させていくが、ファイナルメカルスVは再度自身をプログラム化させてHEADからの攻撃を無力化させる。
そして空間に紫色の立方体を連続発生させると、それが現場で戦っているHEADを取り込もうと吸引してきた。HEADは何とか回避しようと駆け出すが、遅れてしまった鳳凰寺風とセーラーサターンが立方体に取り込まれてしまった。
「きゃあっ」「ぐっ……」
風とサターンは深手を負い、殆ど動けなくなってしまう。そんな二人にもファイナルメカルスVは容赦なく追撃を与えてトドメを刺そうとする。
しかし二人の前にミラーガールが駆け付け、ファイナルメカルスVの追撃から二人を防衛して死守する。その間に修司がファイナルメカルスVの額の水晶へと連続で斬り込んで行く。
ファイナルメカルスVは幾度となく自分に歯向かってきた聖龍HEADを血祭りに上げようと、自身の本体とは独立している巨大アームでHEADを叩き潰そうと猛攻を仕掛けた。
聖龍HEADも果敢にファイナルメカルスVへと反撃を仕掛けるが、しかし巨大ロボであるファイナルメカルスVに損傷を与える事は難しく、弱点である巨大な頭部の額に見える水晶を狙って攻撃を続けるのは困難を極めた。
HEADは総力を挙げて水晶に向かって攻撃するが、ファイナルメカルスVも攻撃を許さないとばかりに巨大な腕でHEADに大打撃を与えようと画策。時には手の平から謎の閃光を放ちHEADを痺れさせ、更にはその巨大な拳で握り締めようと向かってくる。それらの攻撃を、時には回避し、時には受けてでもHEADは膝を屈する事はなく勇敢にメカルスへと挑み続ける。
そして遂にメカルスの水晶を総力を挙げて破壊し、未完成でもあったファイナルメカルスVを戦闘不能にまで追い詰めた。
[最後]
狂気の学者Drヴァルツによって造り上げられた巨大な戦闘ボディ、ファイナルメカルスVを爆破寸前まで追い込まれたメカルスは、苦し紛れに言い放った。
「……ぐ、ぐわっ。く、くそ……一人では死なんぞ……お前達も道連れだ……!」
「何だと……!」
「みんな揃って、あの世に逝ければ寂しくなかろう?」
「待て! みんなには手は出させん!」
自身だけでなく敵方であるHEADも道連れにすると宣言するメカルスの言葉に反応し、修司は闇の力でHEADの仲間達を球状のベールで包み込んでメカルスの爆発に持ち堪える様にした。自分以外の友を守るため。
「死ぬのは……終わるのは俺たちだけでいい、メカルス!」
「し、修司っ!!」
自分以外の現場の皆に闇のベールを纏わせて爆発に耐え得る様にする修司の言動に、ミラーガールが叫ぶ。
だがミラーガールの願いも虚しく、修司以外のHEAD全員に闇のベールが覆われた直後、メカルスは自爆した。
「フハハ、共に地獄に落ちようぞ、修司!」
巨大な爆発と共に衝撃波と閃光が現場を包み込み、その衝撃に修司は跡形もなく呑み込まれてしまう。
そして同じく爆発に巻き込まれたHEADは、予め修司が包み込んでくれた闇の力で、大半の爆発の威力を防がれ、辛うじて生存できた。
しかしHEADは生死に別状はなかったものの、全員がメカルスとの戦闘に加えてその自爆による衝撃で満身創痍となってしまってた。
「ッ……み、みんな、無事か……」「な、何とかね……」
メカルス自爆の衝撃で降り注いできた瓦礫の下敷きになりながらも、その瓦礫を退かしてメタルバードがHEADの仲間が無事かどうか確認すると、ジュピターキッドがそれに返答する。
メタルバードとジュピターキッドが見渡してみると、他の聖龍HEADも満身創痍ながら、瓦礫を自力で退かして辛うじて生存できていた。
ウォーターフェアリーはジュピターキッドと共に瓦礫の下から自力で這い出ると、彼女はある重大なことに気付いた。そう、ミラーガールの姿が見えなかった。
皆がミラーガールの姿を目視しようと辺りを見渡していると、コレクターユイが指を差した。彼女が指差す方には、必死に何かを探し出そうとするかの如く、彷徨うミラーガールの姿がぽつんと暗闇の中に見受けられた。
「……し、修司……修司……!」
自分達を護るべく、最後の力を振り絞って闇の能力を発動させて自分達を護ってくれた修司の姿を必死に探し出すミラーガール。
そんな彼女が半ば放心状態で彷徨いながらも修司の姿を探していると、暗闇の中から修司の姿が見つかった。
「し、修司……」
ミラーガールは床に倒れ込む修司の姿を見付けて歩み寄る。だが倒れている修司の元に歩み寄った彼女の眼には信じ難い現状が飛び込んだ。
それは下半身を完全に失い、左腕も消滅してしまっている修司の亡骸だった。それを目の当たりにしたミラーガールは錯乱してしまう。
「………………修司? ……修司! 修司!」
ミラーガールは既に息を失っている修司を抱き寄せて、何度も何度も呼び掛ける。
「修司ッ! 修司ッ! そんな…………修司ィ!」
完全に正気を失ってしまったミラーガールは、壊れた機械の様に何度も何度も修司の名を呼び続けた。
そんな修司の亡骸を抱き寄せて必死に名前を呼び続けるミラーガールを見て、聖龍HEADは心を締め付けられる。
誰もが修司に守られ、修司を救えなかった現状に絶望した。その時、修司の亡骸を抱き寄せるミラーガールの背後その暗闇から閃光が。
「…………シ、シネェーー……」
「め、メカルス!」
「…………? っ? し、しまっ……」
背後に実体のないウィルスとして、機械の一部に乗り移ったメカルスが最後の攻撃を放とうとするのに気付くメタルバードとミラーガール。
だが、メカルス最後の攻撃はHEADが満身創痍である状態での砲撃だった為、止める隙がなく、不覚にもメカルスの砲撃はミラーガールに直撃してしまった。
「……ぐ、ぐはっ…………」
「あ……アッコーーーーッ!」
機械の一部に乗り移り、首だけの状態で砲撃を放ったメカルスの閃光はミラーガールの背部から腹部を貫通し、彼女の胴体に大きな風穴を空けた。それを目の当たりにしてメタルバードたちHEADは愕然とした。
すると此処で奇跡が。なんと上半身だけに成り果てた小田原修司が一時的に息を吹き返し、ミラーガールに砲撃を放ったメカルスに彼女が携帯していた拳銃を取って銃口を向けた。
「……し、しぶとい奴だ……死ね……メカルス……」
小田原修司は渾身の力を込めて引き金を引き、銃弾をメカルスの頭部に直撃させて消滅させることに成功。そして修司とミラーガールの両者は床に転がり、ミラーガールだけは完全に息をしていなかった。
其処にメタルバードたち聖龍HEADの面々が駆け付け、修司とミラーガールの両者に駆け寄った。
「お、おい……修司! 修司!」
一度とはいえ奇跡的に息を吹き返した修司にメタルバードが叫びかけるものの、修司の意識は再び暗黙に包まれようとしていた。
「……み、みんな……聞こえるか? ……どうも、俺は此処までのようだ……」
「修司……!」
「……たくっ、最後の、最後まで……甘さが、出たようだな、アッコ…………お、お前達は……い、き……ろ……」
今まさしく事切れそうになる修司の最後を看取ろうとしたメタルバードの思想に、強烈な思想概念が襲い掛かった。
それは今まさに死にゆく小田原修司の走馬灯であった。
(…………はっ、死ね! メカルス! ……うん? おかしい……メカルスを倒したのに、なんでまたメカルスと……戦っているんだ? ……く、苦しい……そ、そうか。これが噂に聞く走馬灯って奴なんだな……いよいよ俺も、死ぬのか……)
自身の最後を感じ取った修司の思考を強制的に読み取ってしまうメタルバード。すると修司の走馬灯に謎の老人の姿がシルエットで映し出された。
(……誰だ? こいつ……結局、最後まで思い出せなかった。夢でよくうなされた……」
最後まで思い出せなかった謎の老人に対して思い耽る修司だったが、その直後また記憶の断片が切り替わる。
(……今度は俺か……そうか、夢の謎が分かったぞ……)
修司は記憶の断片を思い起こして、今回メカルスと戦った0エリアの最深部で自身が催眠暗示で精神を強化していた事を思い出した。
だが、それは同時に彼にとって絶望的な記憶も呼び起されてしまった。
(……なに? あんた、何を俺に植え付けている……!? ……やめろ! それは殺戮陽動プログラム……! ……ッ! コードネーム、メシア……そういう事だったのか……!)
修司は自分の名札に張り付けてあったコードネームを見て気付いた。メシアとは、対二次元人用の殺戮兵器の総称に使われていた名前だと、修司は既に周知していたからだ。
そして全てを思い出した修司の脳裏に浮かび上がった最後の記憶、それは過去に修司が殺めてしまった尊い者たちの記憶だった。
(え、エリーゼ! カール! ……済まなかった、本当に……」
それは過去に自分が斬り捨ててしまったエリーゼと戦友のカールの記憶だった。
全てを思い出した小田原修司は、自分を抱き寄せるメタルバードに呟くよう言った。
「……悪いな、バーンズ、みんな…………俺が消えないと……ダメみたいだ…………でも、これで全てが終わる…………じゃあな……みんな……アッコ……」
そういうと小田原修司は両目を静かに閉じたのだった。
「し、修司! 修司ーーッ!」
メタルバードは死にゆく修司を呼び止めるかのように名前を叫びかけた。
だが、そんな小田原修司の想いは虚しく、メカルス消滅の影響で0エリアは連鎖反応を起こして次々に爆発が引き起こされ、その爆発にHEADが続々と巻き込まれていってしまう。
セーラー戦士、キューティーハニー、ナースエンジェル、木之元桜、コレクターズ、魔法騎士、ちせ、ミュウミュウズ、マーメイドメロディーズ、ローゼンメイデン。そしてジュピターキッドにウォーターフェアリーまでも爆炎の中に消えて行ってしまう。
「ちくしょう……チクショーーッ!!」
戦いには勝った。だが失ったものは余りにも大きく、更には生き延びた仲間達も続々と死んでいく情景を目の当たりにしてメタルバードは咆哮を上げた。
メタルバードが咆哮を唸らせた次の瞬間、0エリアの基地そのものが爆発し、メタルバードも爆発による光の中に消えて行ってしまった。
この時の爆発は0エリアの廃墟を完全に消し去るほどの規模にまで至り、HEADは絶命した。
[復活する希望]
修司は、聖龍HEADは辛うじてメカルスを倒す事に成功する。
しかしその代償は余りにも高く、小田原修司とミラーガールはメカルスの不意打ちを受けて絶命。更にメカルス消滅によって起こされた連鎖反応で爆発していく0エリアの爆発に聖龍HEADは呑み込まれ、全員が荒野を包み込む大爆発に呑まれて絶命してしまう。
そして0エリア爆発消滅後。荒廃した爆発跡地には、土砂物によって埋まってしまっているミラーガールたち聖龍HEADの亡骸がひっそりと紅く照らす夕焼けに染まっていた。
そんな土砂物に呑み込まれたミラーガール達の亡骸の傍らに、赤いベレー帽を被った黒縁眼鏡をかけた人物が薄らと現われて、息を引き取ったミラーガールたちHEADに申し訳無さそうに語り掛ける。
「……聖龍隊よ、HEADよ……ミラーガール。もう少し……もう少しだけ、踏ん張ってくれないだろうか……この荒廃した世界を立て直せるのは、君たちしかいない……申し訳ないのは重々分かっている……だけど、あともう少しだけ生き抜いてくれないだろうか。……いつも君たちには苦しい思いをさせて、ホントにすまないと思っているよ……」
そうベレー帽の人物が語り掛けると、HEADの亡骸は蒼い光に包まれていった。その亡骸の中に、小田原修司だけは不在だった。
0エリアで聖龍HEADがメカルスと血戦を展開してから、早三日の事。
聖龍隊本部では、未だ多くの聖龍隊士が傷付き、その容態から看病されていた現状で。
ある特別室に寝かせられた人物達の事を気にして、ウッズが病室に顔を覗かせた。
其処には、爆発して跡形もなく消滅した0エリアの跡地で回収されたミラーガールたち聖龍HEADがベッドに横たわっていた。
「アッコさん……バーンズさん……ジュニア……」
ウッズはベッドに横たわるアッコやバーンズ、そして息子のジュニアの様子を遠目で確認すると他のHEADも確認していった。
三日前の0エリア爆発後、聖龍隊は急いで現場に駆け付けてみると、其処には小田原修司以外の聖龍HEADが土砂物の中に埋もれているだけで後は全くの無傷の状態で発見されたのだ。
彼女達は急いで聖龍隊本部に搬送され、精密検査を受けたが肉体に全くの外傷はなく、全員が死んだように眠っているだけだった。
聖龍隊の誰もが眠り続ける聖龍HEADを気にしていた。
と、皆の心配を誰よりも察したのか、HEADの中で加賀美あつこだけが誰よりも早く目覚めた。
「! アッコさん……!」
誰よりも早く目覚めたアッコを見て、ウッズは感激して彼女のベッドへと駆け寄る。
「う、ウッズさん……?」「アッコさん、よく無事で……!」
目覚めたアッコに感激するウッズに見詰められながら、彼女はベッドから起き上がる。
「此処は……?」「此処は聖龍隊本部です」
アッコが問い掛けるとウッズは静かに返答した。
するとアッコは手で頭を押さえて、何故自分が此処に運び込まれたのか記憶を辿ってみた。
そして彼女の記憶は光速の様に巻き戻され、修司が惨たらしく死んでいるまで記憶が逆行した。
「! …………」「あ、アッコさん……」
突然目を見開いて愕然とするアッコの様子に、ウッズが半ば慌てながら声をかける。
「ウッズさん……修司は? 修司は、どうなったの……? ねえ……!」
アッコは激しく動揺しながらも、ウッズの肩を両手で鷲掴みにして問い詰めた。
するとウッズはアッコが激しい感情を必死に押し殺しながら問い詰めてくるのを感じ取りながらも、彼女に真実を伝えようと首を横に振った。
ウッズが首を横に振ったことで、修司が此処にはいない事を察したアッコは、深く深く絶望した。
「あ、あ……あーーーーーー……っ!!」
頭を抱えて慟哭し出すアッコの叫び声が響き渡り、その病室で一緒に寝かされていた他の聖龍HEAD全員が唐突に目を覚まして飛び起きた。
「っ! 此処は……!?」
ベッドから飛び起きたバーンズは、悲しみのあまり大声を上げて顔を両手で塞ぎながら涙を流すアッコを見て、一瞬の内に思い出した。自分達の力が及ばず、修司が絶命してしまった事実を。そしてその事実を受けて、アッコが慟哭を上げている現状を知った。
他の聖龍HEADが目覚めたのも気付かず、アッコはただただ悲しみのあまり大声を上げて大泣きし続けた。
HEADは自分達が非力だった為に修司を救えず、自分達だけが生き延びてしまった実情が肩に重く圧し掛かる中、アッコは延々と泣き続けた。
0エリア爆発から1週間後。
宇宙ステーションの破片が降り注いだ事で、地上は荒廃した世界へと一変してしまった。
そんな現状の中でも人々は必死に生き抜く為の道を探り出していたのだが、そんな現状の中でも
修司不在の聖龍隊で、代わりに指揮を執るバーンズは人々を護る為に必死に戦っていた。バーンズに続き、他の聖龍HEADや隊士たちも奮闘を続ける。
しかしアッコだけは、まるで抜け殻の様な状態でベッドに座り込む毎日だった。修司がいなくなった事で、彼女に圧しかかった苦しみは常人の想像を遥かに超えていたのだろう。
彼女と同じく生き残った聖龍HEADは、そんな放心状態のアッコにかけてやる言葉が見付からず、ただただ彼女を見守る事しかできなかった。
そんなある晩、アッコは一人病室を抜け出し、まるで幽霊の様に屋内を彷徨った。
そして彼女が辿り着いたのは、聖龍HEAD救出の際に現場に残された一本の日本刀、そう修司が使用していた聖龍剣が保管されていた部屋だった。
アッコは聖龍剣が置かれている台まで歩み寄ると、聖龍剣を手にとって鞘から抜いた。
そして波紋に映りこむ、まるで幽霊の様に蒼褪めた自分の表情と死んだ様な瞳を見詰めてアッコは呟いた。
「……修司……いま、いくね……」
アッコは修司が残した聖龍剣で自害して、修司の後を追おうとしていたのだ。
しかし彼女が聖龍剣の波紋に映る自分の顔を見詰めていると、映っている自分の顔が修司の顔へと変わっていく様に見えた。
「っ……修司……?」
幻か錯覚か、アッコは波紋に映る修司の顔を見詰めた。すると波紋に映った修司は、険しい表情でアッコに訴えた。
(アッコ……お前まで死んじまったら、誰が二次元人たちを守るんだ? 誰が弱き者の代わりに戦い、無益な争いを止められるというんだ……! 俺の後は追うな、お前はお前の信じる道を生き続けろ……!)
「修司……!」
波紋の中に映った修司は、アッコを激励するとその顔は消えて元の悲しげな乙女の顔へと戻った。
心の中に生き続ける修司からの励ましを受けて、アッコの中に消えかかっていた希望の灯火が再び点いた。
そしてアッコは何かを決心すると、左手で自分の頭髪を束ねて聖龍剣を添えた。
次の瞬間、乙女は己の暁の様に美しい紅い髪の毛に刃を入れた。
その翌日の事。
朝から
「急げ! 民間人の避難を最優先に……!」
「チックショーー……敵が多すぎて簡単に避難させられねえぜ!」
「ルーキーズ! 戦闘員は迫る
順一/フロート/ミラールの三名は、配下の仲間達に指示を出しながら懸命に作業していた。
するとその時、一体の凶暴化した
「あ! いけない……!」
順一は自分達の防衛線を跳び越えられて市民の許へと立ちはだかる
だが
次の瞬間、市民に手を上げようとしていた
市民が顔を上げて見てみると、其処には短髪の乙女が鋭利な日本刀を携えて立ち尽くしていた。
「あ、あなたは……!!」
その乙女を見た順一達、そしてその情景を順一達が着用しているカメラから視認した聖龍隊本部の皆々は驚愕した。
それは誰であろう、自ら髪を断髪し、聖龍剣を携えたミラーガールの姿だった。
順一達が愕然とする中、ミラーガールは着用している通信機から本部のウッズに確認の通話を入れた。
「ウッズさん、他に
「………………」
「ウッズさん!」
「は、はい! まだその辺りには無数の
「分かったわ。この場は私に任せて、市民の避難誘導はジュン君たちにお願いするわ! ジュン君、後はあなた達にお願いするわね」
「は、はい。分かりました……」
動揺するウッズと通信を終えたミラーガールは、順一達に誘導の方を任せると即座に
そんなミラーガールにミラールが話しかけた。
「あ、アッコおねえちゃん! 一人じゃ危険よ、私たちルーキーズも一緒に行くわ!」
「分かったわ。今まで市民への物資運搬や補給ばかりで、少し鈍っているかもしれないけど……油断だけはしないでちょうだいね」
ミラールの加勢にミラーガールは少し手厳しく言い付けると、彼女達と共に
そんなミラーガールの戦う様を見て、本部のバーンズたちHEADは思った。
「修司がいなくなった事で……アッコの中で何かがハチ切れたんだ。そう、戦いへの躊躇い……それが今のアッコからは消えている」
「義兄さんがいなくなって、死んだ様に意気消沈していたアッコさんが……まさか聖龍剣を手にとって戦うとは。それに、あの髪の毛も自ら断髪するまで……」
バーンズもジュニアも、修司が死んだ心境の変化で躊躇わず戦えるまでに至ったミラーガールの心境の変化に驚かされていた。
一方のミラーガールは、並々ならぬ敵を前に聖龍剣を振るいながら思想に耽っていた。
(この聖龍剣があれば……どんな敵をも倒せる気がする、どんな敵からも大切な人を守れる気がするわ……修司、これからも一緒よ! 一緒にみんなを、この世界を守っていきましょう)
ミラーガールは聖龍剣を手に、如何なる強敵をも打ち倒せる気が漲っていた。
戦死した小田原修司の闘志を受け継いで、彼女はひた走る。