聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 聖龍HEADから語り継がれた2011年11月11日に起こった悲劇「イレブンズプロジェクト」を聞いて、新世代型二次元人達はその余りの絶望的状況に愕然とした。
 メカルスが仕組んだウィルス拡散での地球全土や異世界の汚染、そして地球に向けられた巨大国際宇宙ステーション「希望」の衝突など、如何に二次元人や三次元人が苦境に追い込まれたか理解するには余りにも絶望的な状況に言葉を失った。
 多くの二次元人がウィルスで異常化して、やむを得ず彼らと戦わざるを得なくなったHEADは苦心の中で異常化した二次元人を処分していく。
 そして遂に宇宙ステーション破壊作戦としてスペースシャトルが発射され、搭乗する聖龍隊副長バーンズの操縦にてシャトルは宇宙ステーションへ真っ向からぶつかった。
 その結果、地球消滅は免れたものの、その爆発の被害は大きく、地球は焼け野原へと一変する。
 更に地球全土に拡散されたメカルスウィルスと宇宙ステーション内に凝縮されたウィルスが、地球に降り注いだ瞬間、聖龍隊総長小田原修司の容姿が激変。
 ミラーガールたち聖龍HEADは総力を挙げて修司を追うが、彼が行き着いた先はアメリカエリア88の一画で廃棄された0エリアと呼ばれる場所だった。
 その0エリアでミラーガール達は、かつてこの0エリアでDrヴァルツと呼ばれる学者が軍人達に催眠暗示を植え付けて恐怖を感じない兵力へと変えていた事。そして小田原修司自身も力への渇望からか、ヴァルツの催眠暗示を受け入れ、遂にヴァルツから対二次元人用の催眠暗示「殺戮陽動プログラム」を植え付けられていた事実を発見する。修司が自分たち二次元人を滅ぼす為に作り変えられた兵器「メシア」だと知って愕然とするミラーガールたち。
 同じ頃、独自で「メシア」を調査する為に0エリアに潜入していたガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟の者達は、大量のウィルスを浴びて殺戮陽動プログラムが発動して覚醒した修司と鉢合わせし、彼と死闘を展開するも、敢え無く全滅させられてしまう。
 スコーピオン同盟の死を受け止め、聖龍HEADは遂に覚醒した状態の小田原修司と対峙、血戦を開始。しかし殺戮陽動プログラムで戦闘力が飛躍的に飛びぬけた修司にHEADは歯が立たなかった。そして修司が仲間にトドメを刺そうとした瞬間、そんな修司を誰よりも思うミラーガールが究極の変身を遂げて修司を辛うじて倒す。ミラーガールの攻撃で正気を取り戻した修司は、HEADを急かす様に今回の事件の黒幕であるメカルス討伐に向かうように言う。
 そしてHEADは革命軍士総司令官のメカルスと血戦を迎えた。
 メカルスは今回の作戦の後方支援にあのヴァルツがいる事を仄めかし、彼が造り上げた究極の戦闘マシーンでHEADを叩きのめそうとする。
 結果、現場に駆けつけた小田原修司の助力もあって、HEADは命辛々メカルスを倒す事に成功したが。戦いから生還したHEADの中に小田原修司は不在だった。
 その後、小田原修司亡き後、ミラーガールはその紅い髪を断髪し、短髪の乙女として修司が残した聖龍剣を振るって戦う様になったという。
 この一連の話を聞いて、新世代型達は蒼褪めた。
「お、俺たちの始祖、小田原修司が……二次元人を滅ぼすために作り変えられた最終兵器だったなんて……!」
 真鍋義久は蒼褪めた顔で、頭を抱え込みながら苦悩した。
 そして真鍋以外にも自分たちの始祖小田原修司の真実を知って蒼然とする新世代型二次元人たちが。
「力を欲したあまり……知らず知らずとはいえ、二次元人を……いや、間違えば世界そのものを滅ぼしかねない催眠暗示を受け入れてたなんて……!」
「それ以前に、メカルスウィルスに感染しても攻撃力が一瞬とはいえ上昇するだなんて……確かに危険と思われてもおかしくない」
 蒼褪めた表情で、俯く出雲ハルキや星原ヒカルたちの言葉を聞いて、バーンズが彼らに残酷な憶測を述べる。
「……あの後、詳細な調査で判明したんだが……元々、異常者ウィルスは修司の尋常でない潜在意識すなわち意志から生まれたものではないかと言われている。要するに修司こそウィルスの発生源で、さっきの話にも出たSウィルスも元来は修司が根源なんじゃないかという仮説がある」
「そ、そんな! 私達だって……メカルス同様、修司さんのコピーだって言うのに……私たちは、そんな危険なウィルスから生まれた命だっていうんですか!?」
「いやあっ!」
 バーンズの残酷な仮説を聞いて、鹿嶋ユノやキャサリン・ルースらは更に絶望し、嘆いた。
「そ、それで……最終的にはメカルスとの戦いで生きて帰れたバーンズさん達HEADは、それからどうしたんです?」
 場の緊迫した空気に慣れない雰囲気で質問する燃堂力に、バーンズが答えた。
「俺たちは事件が幕引いた後は、もちろん復興作業などに追われてたよ。だけどアッコだけは……被害を受けたどんなキャラクター以上に激変してな。聖龍剣を持って一人、治安の回復や異常者への制裁を中心に活動していた。……あの日までな」
「あ、あの日と言うと……」
 瀬名アラタが問い掛けると、バーンズたちHEADはイレブンズプロジェクト後の話を語り出した。
 周りから理解されず、孤独に追い詰められた天才科学者が起こした恐怖の悪夢を。


現政奉還記 創生の章 昔語り【悪夢! ナイトメアパニック】

[プロローグ]

 

 それは1ヵ月程前。

 巨大国際宇宙ステーション「希望」は、メカルスの策略により、あっけなく占拠された。

 メカルスの雇った謎の二次元人「ニトロ・グリセリーノ」彼の操作により宇宙ステーションの取った軌道は地球。地球消滅の惨劇が始まった。

 聖龍隊副長「バーンズ」地球の存亡を背負い、1人の二次元人が荒れ狂う宇宙ステーションへ真っ向からぶつかった。

 結果、宇宙ステーションの破壊に成功。地球消滅は免れたものの、爆発の被害は大きく、地球はあらぬ姿へと一変する。

 そして革命軍士総司令官メカルスとの血戦。

 聖龍HEADは命辛々メカルスを倒すのだが、戦いから帰還した無数の希望の象徴HEADの中に、総長小田原修司の姿はなかった。

 彼女達と共に発見されたのは、見覚えのある聖龍剣だけだった。

 そして1か月後の現在、荒れ果てた地上は特殊能力や身体能力が優れた二次元人が辛うじて活動できる程度に汚染が鎮まりつつあった。

 そして……ある男の……

 

 その男に異変が起きたのは、聖龍HEADがメカルスと死闘を展開した直後まで話を遡る。

 その男は気紛れに宇宙ステーションが落下した後に、聖龍HEADが死闘を展開した0エリア跡地を散策していた。

「……一体、なにが起こったんだ? ステーション落下は阻止できたと聞いたが。これでは失敗したのも同じ……」

 男の名はエキスト・ラ・ドリックス。エキストはステーション破壊に成功したものの、その破片が地上に降り注いで大規模な被害が出た状況に嘆いていた。

「滅亡を免れただけ、良かったとでも言うのか? ……それだけじゃない、何かが起ころうとしている。この胸騒ぎは一体?」

 エキストは妙な胸騒ぎを覚えていた。

「……ん? これは……?」

 するとその時、エキストは足下の土砂に埋もれている何かの肉片を発見した。

「何かの……一部の様だな。ここで激しい戦いでもあったのかな? ……一体どれだけの二次元人や三次元人が犠牲になったんだろう?」

 肉片を観察しながらエキストは、どれだけの人々が犠牲になったのかと思い詰める。

 と、肉片を観察してたエキストは此処である事実に気付いた。

「ん? 待てよ……こっ、これは! ……」

 

 聖龍HEADがメカルスと血戦を繰り広げてから1週間後。

「ハーーハハハッ、ついに完成したぞ!!」

 エキストは己の研究室で興奮していた。

「この冷静なボクが、あまりの事に可笑しくなってしまいそうだ! ……いけない、これからなんだ……今までこのボクの研究を理解すら出来なかった奴らを……そう、この世の下等な二次元人たち全てを! ボクの下に服従させるために!」

 既にエキストは何かに憑りつかれたかの様に興奮が冷めなかった。

「出来る、出来るぞ! 二次元人だけの理想の世界……ボクが全てを支配する、素晴らしい世界が!」

 それからもエキストは何かに魅了されたかのように延々と研究を続けた。

 

 

 

 そして宇宙ステーション落下から1か月後。

 2011年12月16日~

 革命軍士の策略による「宇宙ステーション落下事件」そしてその後の革命軍士との戦いから1ヵ月ほど経ったある日。

 宇宙ステーションの破片が降り注ぎ、その以前から地上で猛威を振るった異常者(ヒール)が地球に及ぼした影響は大きく、地球全土は荒れ果てた姿へと変わり果ててた。

 そんな荒れ果てた地上は辛うじて特殊能力を身に着けた二次元人だけが、どうにかして活動できるまでにウィルスや放射能の汚染が鎮まりつつあった。

 聖龍隊総長小田原修司が不在の中、聖龍隊副長バーンズやミラーガールら聖龍隊の大勢の隊士らも、復興作業に努めていた。

 毎日追われる復興作業にてんてこ舞いする聖龍隊。そんな日々を過ごしていく中、聖龍隊士達にも休息の一時は与えられてた。

 日々の復興作業に追われて、心身ともに疲労が蓄積しているミラーガール。彼女は聖龍隊の、どの隊士よりも率先して作業を行っていた。だが当然ながら彼女に積み重なる疲労は増える一方だった。

「あ、アッコ。ご苦労さん……」

 今は亡き修司の後釜として代わりに聖龍隊を指揮するバーンズがミラーガールにハイタッチを進めようとするが、ミラーガールは無表情な無粋な顔で彼の横を通り過ぎていった。

「あ、アッコ……」

 小田原修司が亡き後、誰よりも活動し己を追い詰める様になったミラーガールには今までの愛想は感じられない様子にバーンズたちは唖然としていた。

「アッコさん、変わっちゃったね」

「ホント……修司さんが死んでから、仕事や作業に没頭する様になっちゃった……」

 変わり果てたミラーガールの背中を見詰めてジュニアとアプリコットが呟く。

「やっぱり……修司君が死んじゃったのが、しんどかったのかな……」

「修司が0エリアでの戦いで死んでから早一ヶ月……彼女の心境は未だに無粋なまま、か」

 修司が死んだ事で激変してしまったミラーガールを横目に、セーラームーンもエンディミオンも心配する。

 そう、ミラーガールが変わった事で、聖龍HEADの誰もが彼女を案じていた。

 

 そしてミラーガールは自身の休憩室に入ると、部屋の鍵を閉めるのも忘れて変身を解く。

 そして部屋に置いてある携帯の留守電を入れて、録音内容を耳に入れる。

「あ、アッコ……私、ママだけど……最近、連絡ないからママ心配。聖龍隊での仕事が忙しいのは解るけど、アッコだって休みは必要なんじゃないかな? ま、まぁ、私が言いたいのはね……たまには家に帰って、ママやパパに元気な顔見せてちょうだいってこと、働いてばかりじゃなくって。そんなに気張っていると余計、疲れちゃうわよ。じゃ、何かあったら連絡ちょうだいね。バイバイ」

 留守電に記録されてた実母からの言伝を、ベッドに横たわりながら耳に入れたアッコ。彼女は枕に顔を押し付けながら人知れず思ってた。

(……ママ、ごめん。私、もう……色々と疲れちゃって、家に帰る気力もないの……)

 アッコは内心で母に謝罪すると、修司の死から今に至るまで積み重なった疲労で帰宅という行動に移れるまでの気力すら湧かないと思っていた。

(こんな日ばっか続くなぁ……もう疲れた……気分も憂鬱で、あの日の事を思い出しちゃいそう……)

 アッコは0エリアでメカルスと血戦を繰り広げ、修司を亡くした記憶を思い返しては憂鬱に浸っていた。

 そしてアッコはそのまま深い眠りに就いた。

 だがアッコの夢の中で、彼女に呼びかける今や懐かしい男の声が脳裏に響いてきた。

(……コ…………アッ……コ…………アッコ。目を覚ませ、アッコ。今は……お前しかいないんだ。お前が戦わなければ、誰が戦う? 早く目を覚ますんだ! アッコ!!)

 今となっては懐かしい小田原修司の声、その声が耳に届く中、アッコは眠り続けた。

 が、そんな彼女を叩き起こす声が修司の声を掻き消して聞こえてくる。

「……さん……アッコさん! 起きてください! 巨大なメカニロイドが暴れているんです!」

 アッコを叩き起こしたのは、総通信士のウッズだった。ウッズは目覚めたばかりのアッコを急かした。

「詳しい事は後で。現場に急行してください!」

 実はアッコ自身が、ウッズに何か戦闘に発展する様な非常事態が発生した時に自らを招集してほしいと嘆願しておいたのだ。

 アッコは、いやミラーガールはかつてのメカルスとの血戦で現場に落ちていた修司の忘れ形見である日本刀・聖龍剣を携えて現場に急行する。

 

 荒廃した地上では、復興作業を進める為に作業をするメカニロイドやそれを操縦する二次元人の活躍が見られてた。

 だが、あのメカルスとの血戦後には発生していなかった異常事態、そう異常者(ヒール)は見受けられなかったというのに、またしても精密機器でもある重機が暴走したというのだ。

 現場に急行するミラーガールには、変わってしまった彼女を心配して聖龍HEADが同行して共に現場へと向かう。

「ウッズさん、私のアルティメットアーマーを使えるまでに修復してくれて、ありがとう」

「いえいえ、しかし完全に修復できてないので、一部の機能が使えない状況です。くれぐれも無茶はしないでくださいね」

 ウッズはミラーガールが覚醒した修司を倒すのに身に付けた究極のアーマーをバックアップデータを用いて再生したのだが、完全に修復できてないと伝える。

 ミラーガールがウッズに礼を述べていく中、HEADの前には暴走している精密機器の重機が行く手を阻んだ。

「先を急がなきゃならねえ……! 重機をかわすか破壊するかして突破しろ!」

 メタルバードの指示に従い、HEADは重機を回避するか破壊して進路を確保していく。

 するとミラーガールも意欲的に重機を自身の能力での砲撃と聖龍剣の二刀流で破壊してみせる。

(アッコの奴、随分と聖龍剣の扱いには慣れたもんだな)

 メタルバードは聖龍剣を振り翳し、暴走する重機を一刀両断していくミラーガールの凄さに驚いてた。

 そして暴走するメカニロイドの目前まで迫った所で、彼女達は先に到着していた二名の隊士と合流する。

「あなた達、大丈夫!?」

 ミラーガールが問い掛けると、隊士達は駆け付けたHEADに事情を説明した。

「も、申し訳ありません。電波障害が発生して、いきなり暴れ始めて……」

「不覚にも、やられてしまいました……」

 隊士達が言うには、既に大破して破棄する予定のメカニロイドを移送中、突然の電波障害と共にメカニロイドが突如として活動し、暴れ出したとの事。

 これを聞いたミラーガールは冷然と隊士達に告げた。

「分かったわ。後は私達で処理するわ……あなた達は足手まといだから、邪魔にならない様に撤退しなさい」

「は、はい……分かりました」

「敵は何かに憑りつかれているみたいです……十分、お気を付けください」

 今までのミラーガールから言われた事のない冷徹な言動に戸惑いながらも、隊士達はミラーガールたちHEADに気を付けるよう言い残して撤退した。

 隊士たちだけでなく、ミラーガール以外のHEADも言動が冷ややかになった彼女を懸念していた。

 

 

 

[悪夢の始まり]

 

 現場に到着した聖龍HEAD。すると彼女達の目の前に巨大なメカニロイド重機が落下してきた。

 皆が一驚していると、そのメカニロイドは突如として活動し始め、暴走し始めた。

 暴走するメカニロイドは、右腕は破損しているものの、左腕は巨大ペンチの形状を保っており、そのペンチ型の腕で聖龍HEADを捕まえて挟み込もうとする。

「うわあっ」「し、真紅!」

 メカニロイドのペンチ型の腕に捕まってしまうローゼンメイデンの真紅を見て声を上げるミュウイチゴ。

 すると此処で木之元桜がパワー(力)のカードを真紅に使用して彼女を怪力にさせ、自力で脱出させた。

 真紅を逃したメカニロイドは、大破しているとは思えないほどの火力で暴れ回り、HEADを苦戦させる。

 と、ここで必死にメカニロイドの攻撃を回避し続けるミラーガールが声を上げて呼びかける。

「コレクターズ! このメカニロイドを活動させている動力源……いいえ、弱点となるものを探知して!」

「「「……」」」

「コレクターユイ! それにハルナとアイも! ボーーっとしてないで調べてちょうだい!!」

「っ、う、うん、解った……」

 ミラーガールからの聞き慣れない怒号に、コレクターユイを筆頭とするコレクターズの三人は愕然とするが言われたとおりに即行でメカニロイドの弱点を探知し始める。

 その間、ミラーガールは何とか暴れ回るメカニロイドを停止させようと、破壊行動に専念する。

(ッ、メカルスとの戦い以降……ほとんど発生する事のなかった異常者(ヒール)が再び発生してしまうなんて……悪い夢でも見ているのかしら……!)

 ミラーガールは再び異常化したメカニロイドなどの機械類と戦う現状に困惑しながらも、自前のミラーシールドと修司の忘れ形見である聖龍剣の攻防一体のスタイルで戦い続ける。

 メカニロイドが投げ付けてくる瓦礫をミラーシールドで防ぎつつ、防ぎ切れない瓦礫は聖龍剣で一刀両断して斬り捨ててしまうミラーガールの技量にHEADは皆騒然とした。

 だがメカニロイドの暴走は止まる事無く、容赦なくHEADメンバーを襲撃する。

「うわっ!」

「止まってたら的になるだけよ! 素早く移動しながら反撃するの!」

 メカニロイドの猛攻に苦戦するさくら達に、ミラーガールは厳しい口調で荒々しい言葉を投げ付けるばかり。皆、ミラーガールの心境に余裕がないと察して何も反論しなかった。

「コレクターズ! 敵の……メカニロイドの弱点は判明できたの!?」

 再びミラーガールが強めの口調で問い質すと、コレクターユイが困惑しながら話し返した。

「そ、それが……メカニロイドそのものを調べても、何の異常も見付からなくて……」

「ウソだろ!? 何の異常もないのに、暴れ回るわけ無いだろっ」

 コレクターユイの返答に驚愕するメタルバードに反して、ミラーガールはこれに遺憾を示した。

「ちょっと、ちゃんと調べたの! 弱点はまだしも、異常が見付からないなんて有り得ない! いいわ、後は私がスキャンして調べてみるから」

 そう怒声を放つと、ミラーガールは自身の装備で自分なりにメカニロイドの異常性を見つけて、問題を解決しようと躍起になる。

 周りのHEADが一人で戦意をむき出しにして戦うミラーガールを悲愴な面持ちで見詰める中、ミラーガールは暴走するメカニロイドをスキャンして調べながら攻撃を回避していく。

(メカニロイドそのものには確かに異常は見付からない……だけど、これだけ大きなメカニロイドが暴走するには、何かしらの動力源みたいなモノが存在している筈……何処か、何処かに異常な点は無いかしら……!)

 ミラーガールは必死になってメカニロイドを動かしている異常な点を見つけ出そうと躍起になっていた。

 すると、ミラーガールが異常な点を探すのに夢中でメカニロイドの攻撃に一瞬ばかし遅れを取った。ミラーガールに攻撃が当たる直前、メタルバードが彼女を抱えて安全な所まで退避させてやった。

「だ、大丈夫かアッコ!」

「っ、邪魔しないでバーンズ! あれぐらい私だけでも避けられた。それに早くメカニロイドの異常を見つけ出さないと……!」

 バーンズの問い掛けにも、ミラーガールは礼の一つも返さずに再びメカニロイドへと突っ込んでいった。

 今度はメカニロイドの攻撃を回避しながら、その大破しているボディを念入りに調べるミラーガール。だがメカニロイド本体に異常な点は見られない。

 と、ここでミラーガールはメカニロイドの強烈な斬撃を斬り込み、宙に浮いていたメカニロイドを地面に叩き落とした。

 するとミラーガールのスキャンが何かを察知。見上げてみると、停止したメカニロイドの真上に何らかの球体が浮いているのが目視でき、その球体から謎の電波がメカニロイドに向けて放たれると、メカニロイドが再び活動を再開したのが見て取れた。

「! あれね! メカニロイドを暴走させているのは……!」

 メカニロイドを暴走させているのが、球体状のコアだと認識したミラーガールは高く跳躍すると、その丸いコアを聖龍剣で真っ二つに切断して破壊した。

 するとコアは爆発し、暴走していたメカニロイドは機能停止して動かなくなった。

 

「……それじゃ、停止したメカニロイドの調査に当たりましょう」

 コアからの指令電波で活動を再開して暴走したメカニロイドの一件が済んだ矢先、ミラーガールは更なる調査を行おうと単身メカニロイドに進もうとしたその時、彼女の目の前にメタルバードが立ち塞がった。

「バーンズ、何をするの? 作業の邪魔よ」

 するとメタルバードはミラーガールを睨み付ける様な鋭い眼光で見詰めると、彼女に言った。

「……アッコ、何をそんなに急いでいる? 急いだって……焦ったって、何のいい事もないぞ」

「だ、だけど……」

 と、ミラーガールは此処で周囲の仲間であるHEADからの眼差しに気付いた。

「お前……修司が死んでから、一人で全部を背負い込む勢いで突っ走りやがって……」

「………………」

「確かに修司が死んで、お前の中にあった余裕やら慈愛の精神が成りを潜めちまったのはオレでも重々よく解っている。修司が死んで、お前が代わりに聖龍剣を取って……必死に戦い続けているのも理解している。けどよ、お前だけが辛い訳じゃないんだ……! 修司を護れなかったのは、オレたち聖龍HEAD全員の責任であり、業だ。お前は自分だけの……自分のせいで修司が死んじまったと抱え込んでいるが……その辛い想いを抱えているのはお前だけじゃないんだ」

「………………………………」

 メタルバードから、修司が死んだ悲しみや責任を背負っているのは自分だけでなくHEAD全員にも共通していると説かれたミラーガールは黙り込んでしまった。

 

 と、メタルバードがミラーガールに全てを背負い込む事はないと説いていたその時。まだ調査する必要性があった暴走したメカニロイドの間近に突如として現われる影が。

 その影は他ならぬ小田原修司と寸分違わず瓜二つで、一瞬の内に暴走していたメカニロイドを所持していた日本刀で斬り付けて爆砕すると、またも一瞬の内に忽然と姿を消してしまった。

「し……? 修司……!?」

 目の前に現れた修司と思われる人影の出現に、ミラーガールはもちろん聖龍HEADの誰もが我が目を疑った。

 すると現われた修司が消えたと思われた次の瞬間、今度は上空から3メートル級の大男が現われて聖龍HEADの目前に着地した。

「やはり小田原修司の仕業だったか」

「誰なのっ、あなたは!?」

「ハイマックス……そう呼ばれている。修司ナイトメアを調べに来た」

「何ですって! 修司ナイトメア!?」

「お前らの目的はなんだ? 修司ナイトメアを使って何を企んでいる?」

「こっちが聞きたいくらいよ。あの修司は一体?」

「お前らは危険だ……処分する」

 突如現われたハイマックスと名乗る大男の登場、そして彼からの一方的な戦意にHEADはやむを得ず戦闘に突入した。

「し、仕方が無い。HEAD、戦えッ!」

 メタルバードの指示の下、HEADはハイマックスに攻撃を仕掛ける。

 しかし名立たるHEADの攻撃を受けても、ハイマックスは全くダメージを受けず、爪先立ちの姿勢で宙を舞いながらHEADに攻撃を放っていく。

 緑色の光球を弾幕の如く放射して、セーラー戦士たちを追い詰めていくハイマックス。

 更にHEADの強力な攻撃を受け流しながら、ハイマックスは必殺の「デスボール」を両手から作り出して発射。キューティーハニーやちせをダウンさせていく。

 そして聖龍HEADの攻撃が全く効かないまま、HEAD全員がハイマックスの攻撃に倒れてしまった。

 最後に残ったミラーガールがハイマックスに恐れを感じながらも、ハイマックスに跳びかかって聖龍剣を振り下ろそうとするが。

 ハイマックスは一瞬でミラーガールが握っていた聖龍剣を弾き落として彼女を容易く手で振り払った。

「うっ」

 軽く手であしらわれたミラーガールは、地面に尻餅を着いてしまう。

「聖龍隊……所詮は、こんなものか。修司ナイトメアは我々が処分する。お前らは邪魔だ、手出しするな」

 全ての聖龍HEADを容易く戦闘不能に陥れたハイマックスは、そう言い残すと何処かへと飛び去ってしまった。

「くっ、ダメージを全く与えられなかった……ハイマックスに修司……ナイト、メア……そういえば私もさっき修司の夢を……一体なにが起こっているの?」

 傷を負わせることも適わなかったハイマックスの登場に、修司ナイトメアと呼ばれる謎の小田原修司の出現。度重なる事態にミラーガールは戸惑うばかりだった。

 

 

 

[謎の調査団]

 

 どうにか無事に暴走したメカニロイドを停止できた聖龍HEAD。

 しかしメカニロイドを操っていた謎の球体はミラーガールが粉々に破壊した上に、唯一残っていたメカニロイド本体も謎の「修司ナイトメア」によって爆砕されてしまう。

 更にその直後に登場した「ハイマックス」という強靭な力を持つ二次元人の前に、歴戦の猛者である聖龍HEADはハイマックスにダメージを与える事はできず、全員が返り討ちに遭い傷を負って本部へと帰還していた。

 バーンズたち変身を解いたHEADは、身体に残る傷を包帯で巻くなどの応急処置を行っていた。

 だが一人だけ、ハイマックスと激しく戦わずに済んだアッコだけは、謎のハイマックスという存在と突如目の前に現れた「修司ナイトメア」に対して考え込んでいた。

「……アッコ、そんなに考え込んだら老けちまうぜ。ゆっくり頭の中も休ませろよ……」

 バーンズはいつものおふざけ口調でアッコを宥めようとするが、今や亡き修司のように責任感の塊になってしまったアッコには何を言っても無駄だった。

 しかし修司ナイトメアにハイマックスに対して深く考えていたのはアッコだけではなく、聖龍HEAD全員が考え込んでいた案件だった。

 一体、修司ナイトメアとは何なのか? 突如目の前に現れた自分達を凌駕する力を持つハイマックスとは何者なのか?

 HEADが謎が謎を呼ぶ展開に考え込んでいた、その時だった。

「たたたたたた、大変だ!!」

 突然HEADが休む部屋にウェルズ・J・プラントが慌てながら駆け込んできた。

「お、おい大変だぞ! ニュースを見ろ、ニュースを!」

 HEADは並々ならぬウェルズの様子を察して、急いでテレビに目を向けた。

 するとテレビ画面には、謎の科学者風の老人と、その隣にはあのハイマックスが二人並んで立っている様子がテレビ中継で公開されていた。

「は、ハイマックス!? 一体、なんで……!」

 バーンズが驚愕して大声を上げると、HEADの怪我の様子を診に来ていたウッズが静かにする様にとバーンズに「シッー」と口ずさむ。

 そしてテレビ中継が始まり、公の場に姿を現した老人は自らをゾディアックと名乗り、今世界中で起きている非常事態について演説を始めた。

 

「地球上に残った二次元人諸君! 既に知っておるかと思うが、今各地で不可解な現象が起きている。我々は、その現象を「ナイトメア」と呼ぶ事にした。それは人間で言うところの「夢」……いや「悪夢」に似た幻を二次元人に見せる事によって混乱させ、酷い時には暴走を始めたり、自ら自害行為に出てしまう事もある。先の宇宙ステーション落下事故により、地上に残された二次元人も三次元人も後わずか……もう、これ以上、犠牲を出す事は出来ない! 今度こそ地球存亡の危機にかかわるであろう。そこで事態を重く見た、我々はナイトメア現象の謎を解明すべく、疑いのある8つのエリアに調査員を送り込んだ。なにせ、ナイトメア現象は……あの名を馳せた聖龍隊総長小田原修司……彼の亡霊が原因である、という情報もある」

「何ですって!? 勝手な事を!」

「待ってください、アッコさん。最後まで聞きましょう」

「くっ……」

 ナイトメア現象の根源は、小田原修司の亡霊が原因だと言われて感情的になるアッコをウッズが宥める。

 そして話は再び演説するゾディアックへと注目された。

「さて……ここで勇士を募るとしよう! 我々と志を共にする者達よ、力を貸してもらいたい! この8人の調査員の許に集え!! 我々の目的はナイトメアの撲滅、そして小田原修司の亡霊を消す事である。未来のため、来たれここに!! なお、このハイマックスが調査員のリーダーとして参加しておる。我らの所に来れば、身の安全は保障しよう。聖龍隊もJフォースも今や壊滅状態。未来は我らと共に、自らの力で護ろうではないか! 待っているぞ! 諸君!」

 ゾディアックが公言したハイマックスをリーダーとするナイトメア調査員の許に人々が集う様に誘導する演説を聞いて、アッコは悲観してしまう。

「……ふ、ふざけてるわ! 修司の事をそんな風に……そりゃ、途中は暴走してしまったけど……でも最後は、みんなを救うために修司は命をかけて戦ったのに!」

 そんな悲観するアッコにウッズが悲しい事実を突きつける。

「今は何を言われても仕方ないですよ。事実、修司様の姿をしたナイトメアが私達の目の前にも現れたんですよ」

 事実、あのメカニロイドを破壊したナイトメアは修司の姿をしていた。その事実を突きつけられ、何も言えないアッコ。

「私達も調査する必要があるみたいです。ナイトメアの正体を……今はゾディアックやハイマックスの事は放っておきましょう」

 ウッズは自分たち聖龍隊も調査する必要性があると説くと、そんなウッズにアッコが訊き返す。

「疑いのあるエリアって言ってたけど、一体どんな所なの? 調べられないの、ウッズさん」

「……ダメです。激しい電波障害が起こっていて、ここからでは調べる事が出来ません」

 激しい電波障害で本部からは調査はできないと答えるウッズの返答を聞いて、アッコは真顔で言った。

「なら乗り込むしかないわね。直接ナイトメアに触れる事が出来るかもしれないし、さっきの調査員っていうのも気になるわ」

 そんなアッコとウッズの会話を聞いて、聖龍隊副長として総指揮を代行しているバーンズも思い詰めた表情で言った。

「ナイトメアか……危険が伴う任務になりそうだが、正体を突き止め、被害を最小限に抑えなければならない! ゾディアックが言っていたように、これ以上、二次元人を失う事は許されないからな……」

 するとバーンズはその場の聖龍HEADに告げた。

「みんな、怪我のケアが終わったら早速司令室で作戦を練るぞ! このままゾディアック達の思惑通りに事が運ぶのは、何か不安が過ぎる……」

「解ったわバーンズ、みんな後で司令室で待ち合いましょう」

 

 そして作戦司令室。

 此処でバーンズは、未だに多くの被災者を救済する活動が多忙な為にHEADが取るべき行動を語った。

「オレ達はこれからナイトメアの実体を突き止めるべく、ゾディアックが言っていた8つのエリアに調査として向かう事にした。まだ被災者である市民を救済する役目を、多くの隊士が受け持つ中、この危険な任務を任せられるのは……オレ達HEADしかいないのが現状だ。済まないがアッコ、お前が先導に立って行動してくれないか?」

「任せてバーンズ! 修司の分まで、私頑張るわ!」

 そんな意気込むアッコたちHEADに、通信士のウッズが割り出せた情報を開示した。

「たった今、ナイトメア調査員が派遣されたエリアが割り出せました! ですが、電波障害で詳細な地点までは割り出せていません。赤いエリアがナイトメアが蔓延っているエリアの様ですが……そのエリアの何処かに調査員がいるようです」

 しかし電波障害で詳細な情報は入手できず、調査員の正確な地点も不明のままだという。

 この調査報告を聞いてアッコが言った。

「了解、それじゃそのエリアに向かって調査員がいるかどうか確認してくるわ」

「お願いします。あ、それとゾディアック氏の言葉に乗せられて一般の二次元人の方々が危険区域に踏み入っている可能性もあります。お手数ですが、そんな方々の救助もお願いします」

 こうして聖龍HEADは今は亡き小田原修司の汚名を濯ぐべく、ナイトメアの調査と危険区域に踏み込んだ一般人を救出するべく出撃した。

 

 

 

[不信感募る者]

 

 こうして聖龍HEADは8つのエリアに点在する調査員の許を訪れて、ナイトメアの実態調査に乗り出した。

 そしてミラーガールが最初に踏み込んだのは、熱帯のジャングルが生い茂るアマゾンエリア。

「そこはアマゾンエリア。聖龍隊本部からですと、そちらの状況がつかめません。電波障害もナイトメアの影響なのでしょうか?」

 アマゾンエリアに到着したミラーガールにウッズが現状を報告。電波障害で現場の状況が掴めないらしい。

 ミラーガールは同行するローゼンメイデンたちと共にアマゾンエリアの奥地へと突き進む。

 すると早速、ナイトメアウィルスの影響で凶暴化した動植物が襲い掛かって来た。

「通常の異常者(ヒール)ウィルスと同様に、ナイトメアウィルスに感染した動植物が狂暴化しています。注意して進んでください」

 通信士ウッズからの助言を聞き、ミラーガール達は襲い掛かってくる動植物を倒して先へと急ぐ。

 凶暴化した上に巨大化した蟷螂を聖龍剣で斬り倒し、道を切り開くミラーガールは、同時に道中で動植物に襲われて逃げ場を失っている民間人の救出も行った。ゾディアックの言葉を真に受けて、危険なアマゾンエリアに踏み入ってしまったようだ。

 民間人の救出も同時進行しながら前進するミラーガールたち。すると彼女達の前に、今では見慣れたカプセルが設置されているのが目に入った。それは二次元界の神、手塚治虫が今を生きる二次元人たちへ遺したカプセルだった。

「聖龍隊よ……平和はいつの日に訪れるのか? せめて君たち二次元人だけは戦いの無い平和な世界で過ごしてほしかった……しかし、この悪夢は終わらせなければならない……戦いの道具であるアーマーを与える事しかできない無力な私を許してくれ……地球の為、未来のため……頑張ってほしい」

 手塚治虫氏はミラーガール達に言伝すると、ミラーガールが装備できるアーマーの部品データを送信して彼女達に託した。

 メッセージとアーマーパーツを託されたミラーガール達は、感謝しつつも奥地へと邁進する。

 と、ジャングルを突き進むミラーガール達の前に、何やら不気味な容姿の浮遊する敵が接近してきた。ミラーガールは盾からの砲撃と聖龍剣からの斬撃でその敵を葬った。すると敵は何か異質な物質を残して消滅した。

 ミラーガールがその異物を拾ってデータを採取してみると、異常な反応が感知された。

「ウッズさん! もっと異常なデータ反応が!」

「それもきっとナイトメアです! 気を付けてください!」

 ミラーガール達が倒した異質な敵、それこそナイトメアウィルスであり、倒した彼らが落とした異物はミラーガール達によって回収された。

 更に突き進んでいくと、ミラーガール達の周囲にトンボらしき生物が群がってきた。最初はただのトンボかと思って放置していたが、次の瞬間トンボは群れを成してミラーガール達を襲撃。

「うわあっ!」

 真紅たちが自分達に群がるトンボに軽く混乱していると、ミラーガールも必死に自分に纏わり着くトンボの群れを聖龍剣で振り払う。

 するとトンボ達は真紅たちローゼンメイデンの衣服を、そしてミラーガールの身体に齧り付いて貪り始めたのだ。

「っ! 人喰いトンボ!?」

 ミラーガールは自分の身体を齧り付くトンボを目の当たりに仰天した。そして真紅たちローゼンメイデン達も硬い体ではなく柔らかい衣服に齧り付くトンボには困惑しつつも必死に追い払う。

 ミラーガールも焦って自身の体から聖なる光を放出して群がってくるトンボを全て吹き飛ばした上で、ミラーシールドから放たれる砲撃で一掃する事で事なきを得た。

 そして人喰いトンボに襲われたミラーガール達に通信機からウッズが話し掛ける。

「そのトンボはおそらくナイトメアウィルスでおかしくなったんでしょう、かりに変異した昆虫類をナイトメア・インセクトと補足しましょう。その先にも凶暴化したトンボやカマキリが待ち受けていると思われますので、お気をつけ下さい」

 ウッズからの助言を聞いたミラーガール達は細心の注意を払って前進するのだった。

 

 そしてミラーガール達はようやくナイトメア調査員の一人である昆虫人の許に辿り付いた。

「この先に調査員がいるのね」

「その先にいるのは、昆虫人タイプの二次元人コマンダー・ヤンマークです。複数のトンボ型オプションを操れる方なので、戦闘に突入した際はぐれぐれもお気を付け下さい」

 ミラーガールに返答するウッズの話を聞いて、彼女達はコマンダー・ヤンマークが待ち受けるアマゾンエリア奥地へと足を踏み入れた。

 ミラーガール達が足を踏み入れると、彼女達の目の前に上空から地上に舞い降りるコマンダー・ヤンマークが待ち受けていた。

「あなたがナイトメア調査員のコマンダー・ヤンマークなの?」

「そうだ! アマゾンエリアの調査にあたっている。教えろ! 小田原修司は何を企んでる? 何か知っている筈だ!」

「違うわ! 修司はそんなことしない! 変な言いがかりはよして!」

「信用できない! 聖龍隊も、二次元人研究員も、何を考えているのか……裏切られて消されるのがオチだ! その前に消してやる!」

 ヤンマークは多大な不信感から反旗を翻してミラーガール達に攻撃してきた。

 まずヤンマークは自身の周囲に3機のトンボ型オプションを展開して、そのオプションから弾幕を張ってきた。

「撃て!!」

 ヤンマークが指示を飛ばすと、オプションはミラーガール達に向けて弾幕を連射。

 ミラーガールは盾とバリアーで弾幕を防ぎ、真紅たちローゼンメイデンは宙を飛び交いながら弾幕を避けていく。

 するとこのまま好き勝手に攻撃されて堪るかと、真紅がステッキでヤンマークが操るオプションの一機を叩き壊した。

 しかしヤンマークは即座に破壊されたヤンマーオプションを補充する。

「フィルアップ」

 補充したヤンマークは更にオプションの数を増やして弾幕の量を増やして追撃する。

「待って! 私たちは、あなたと同じでナイトメアを調査に来ただけよ! 戦うつもりなんて無いの!」

「うるさい! お前ら聖龍隊の言う事なんて信じられるか!」

 真紅からの訴えに耳を貸さないヤンマークは、容赦ない追撃で真紅たちに弾幕を撃ち続ける。

 すると其処にミラーガールが痺れを切らしてヤンマークに攻撃。

「言っても解らないようなら、痛い目見せるだけよっ!」

 そう叫ぶとミラーガールは聖龍剣から斬撃を放ってヤンマークを攻撃。

 しかしヤンマークは「フォーメーション・ガード!」の掛け声でオプションを盾にしてミラーガールの斬撃を防いでしまう。

 そしてヤンマークは上空へ飛び上がるとミラーガール達の真上から一斉射撃を放ってきた。

「撃てーー!」

 ヤンマークが操るオプションからの一斉射撃を、ミラーガールは聖龍剣で斬り付けて玉砕しながらヤンマークに接近する。

 そしてミラーガールがヤンマークに接近していくと、それに気付いたヤンマークは目付きを鋭くさせて言い放った。

「フォーメーション・ファイナル!」

 するとヤンマーオプションはヤンマークの背後に連なるように従い、そのままミラーガールや真紅たちを追跡し始めた。

「撃て撃て撃て!」

 ヤンマークの指示で背後に従えられたオプションは、ミラーガール達に弾の雨を浴びせていく。

 無数の弾幕を浴びて満身創痍になるミラーガール達に、ヤンマークはトドメを刺そうとする。

「これで終いだ……ヘビーボンバー!」

 するとヤンマークが従えるオプションが、ミラーガール達に向けて絨毯爆撃を仕掛けてきた。

 地上を焼き尽くすほどの爆撃を仕掛けてくるヤンマーオプションの猛攻に、ミラーガール達は苦しみ出す。

「はははっ、修司ナイトメアも……お前達の様に焼失させてやる! わはははっ」

 と、ヤンマークが不敵に笑い出すと、その次の瞬間、炎の中からミラーガールが火傷を負いながらも飛び出してきてヤンマークに急接近する。

「な、なに!?」

 ヤンマークが驚いていると、ミラーガールは険しい顔で言い放った。

「今ここで……負ける訳には行かないのよッ!」

 そう言い放ったミラーガールは聖龍剣でヤンマークを斬り付けた。

「うわぁーー!!」

 ミラーガールに斬り付けられたヤンマークは倒れ、彼が操作していたヤンマーオプションは全て地面に落下して機能停止した。

 爆撃から命辛々凌いだミラーガールと真紅たちは、斬り付けられたヤンマークに歩み寄り、話を聞いてみた。

「ヤンマーク、なんであなたは私達を倒そうと……」

 するとヤンマークは苦痛に顔を歪ませながら語った。

「じ、自分は元々、森林観測チームの所属していた森林保護プロジェクトに当たっていた。だが、ある日……一瞬のミスで森林を燃やしてしまった事件があった。成績が優秀だった為に罪に問われる事は無かったが……それから後日、何者かが僕の飛行システムを不正改造して事故に見せかけて暗殺したんだ……! 僕や、僕の生みの親を妬んだ政府関係者か研究員が仕組んだんだろう……君ら三次元政府に尻尾を振り撒く聖龍隊も、信じられなかった…………うっ」

 そう言い残してヤンマークは息絶えた。

 するとヤンマークの遺体に不思議な事が起きた。それはヤンマークの亡骸が淡い光と共に影も形も消滅してしまったのだ。

 この不思議な現象を目の当たりにしたミラーガール達は目を丸くしたが、ナイトメアの調査の為に一旦聖龍隊本部へと帰還した。

 

 本部に帰還すると、ウッズがミラーガール達が持ち帰った異物について説明した。

「特定の敵から謎の物質が見つかりました。どちらにせよナイトメアに関係ありそうです。回収していきましょう。この物質をかりにナイトメアソウルと呼びましょう」

 特定の敵ナイトメアウィルスから入手できるナイトメアソウルを回収していく事になった聖龍隊は、更にウッズの話に耳を傾けた。

「コマンダー・ヤンマーク、元はアマゾンエリア調査員。元はジャングルなど自然保護プロジェクト用の二次元人でした。昔コントロールミスで事故を起こしてしまい、森林を燃やしてしまいました。ですが、日ごろの功績から罪を問われる事は無かったです。その代わり……何者かがヤンマークの飛行システムを改造して……再び事故を起こして帰らぬ人に……ヤンマークを生み出したのは……私と同期だった……エキストです」

 この話を聞いた聖龍隊副長メタルバードは、ヤンマークについて思った事を語った。

「おそらく、この一件でヤンマークは人間不信に陥ったんだ……それでオレたち聖龍隊すらも信じられなくなったんだろう」

「………………」

 ミラーガールはメタルバードの話を聞いて一人黙り込んでいた。

 

 

 

[暗躍する者①]

 

 ミラーガールがナイトメア調査員と名乗るコマンダー・ヤンマークを倒した直後、とある研究所で二人の人物が会話していた。

 それはあの公然の面前で熱弁していたゾディアックと、何かの研究に熱心であったエキスト・ラ・ドリックスだった。

 ゾディアックは目上への口調でエキストに報告していた。

「報告します。早くも調査員が一人……」

「解ってる。例の聖龍隊士に倒されたのだろう? 未だに、旧時代に生み出されたオールドタイプの二次元人に勝てないのか……」

 エキストは調査員の一人が倒された事に遺憾であったが、すぐにゾディアックに命じた。

「ゾディアックよ、しばらくあの聖龍隊士を監視してくれ」

「はっ、仰せのままに」

「それより、あの実験はどうだ? 成果は出ているか?」

「全ては順調に、絶大な効果が出ております。99,98%の確率で、二次元人を陥れています。素晴らしい発明ですな。しかし、ハイマックスをもってすれば、今すぐにでも地球上に存在する全ての二次元人を、おさえる事が可能です。現に、あの聖龍隊士ですら敵わなかったのですから」

「ダメだ、もうしばらく実験を行いたい。引き続き、データの収集にあたってくれ」

「かしこまりました」

 何かの研究成果を報告するゾディアックに対し、エキストは収集を続けるよう命じる。これにゾディアックも素直に従う。

 すると話は変わって、エキストはゾディアックの探し物について訊ねた。

「ところでゾディアックよ、お前の探し物は見つかったのか? おそらく、この世には既に存在しないと思うが……」

「いや、そんな筈はありません。私は見たのです……それに奴は、あのぐらいの事で死んでしまうようなランクの低い戦士ではありません……」

「ミラーガールたちHEADといい、確かにしぶとい奴らだからな。生きているかもしれないが……可能性は低いだろう」

「必ずや、見つけ出してまいります」

「フン、ボクにとってはどうでもいい事だ。お前の好きにするがいい、ボクには「小田原修司の本体」など……必要ないからな」

 エキストはゾディアックに命令に反しない限りは、好きなように行動するよう告げる。

 そして最後にエキストはゾディアックに例の聖龍隊士への配慮を命じた。

「とにかく、例の実験とミラーガールの監視だけは、しっかり頼むぞ」

「はっ」

 深々と頭を下げて実験を続けるように返事するゾディアック。

 彼らは一体、何を計画しているのだろうか。

 

 

 その頃、ミラーガールが何とか倒したコマンダー・ヤンマークが調査に当たっていたアマゾンエリアでは。

 ナイトメア反応が薄れた事で聖龍隊の一般隊士達が後続の調査に就いていた。

 しかし其処で突然、非常事態が発生。すぐに聖龍隊本部に通達が入った。

 ミラーガールは自分が戦った後のエリアで起きた異常事態に胸騒ぎを感じ、急ぎ再びアマゾンエリアへと赴いた。

 そしてコマンダー・ヤンマークを撃破した地点まで到達すると、其処で彼女は意外な人物と再会する。

「よっ、どうだい調子は?」

「あなたはニトロ! 生きていたの?」

 それは先の宇宙ステーション落下に伴い、その宇宙ステーションを占拠および地球への墜落工作を行った謎の傭兵ニトロ・グリセリーノであった。ニトロはわざわざ戻ってきたミラーガールに対して相変わらずの軽い口調と態度で話しかけて来た。

「お嬢ちゃんも元気そうで何より。ふっ、やはり死ななかったな。自分の命が大事だからね……前はメカルスのダンナに保護してもらったけど。今回は自力で生き延びようと思ってね、ナイトメアを利用して!」

「ナイトメアを?」

「そう、実はナイトメアに惹かれていてね。集めているんだよね、ナイトメアでパワーアップできるかなって? だからちょうだいよ……お嬢ちゃん達が集めたソウルをさ!」

「ニトロ! お願いだから邪魔しないで。安全な場所に避難するのよ!」

「こんな所まで仕事熱心だね。感心するよ」

「からかわないで! ここから去りなさい!」

「此処まで来るのに苦労したからね。そう簡単に帰れないよ。ナイトメアソウル……命がけで集めているんだぜ? これでもパワーアップしたくてね……戦ってみるかい?」

「ナイトメアには手を出さないで! 危険よ!」

「はいはい、相変わらずあついね。でも……ほしいんだよね、ソウルが。お嬢ちゃんからも頂くぜ!」

 こうしてニトロはナイトメアソウル欲しさに、一方的にミラーガールと交戦を開始した。

「喰らいな!」

 相変わらずDブレードで巧みに攻めてくるニトロ。ミラーガールはそんなニトロの攻撃を聖龍剣とミラーシールドの二つで防ぎながら、ニトロへ鬩ぎ合う。

「ほほう、噂どおり……ミラーガール、あんたあの修司が使っていた聖龍剣を武器にして今は戦っているんだな? いやあ、その迫力……かつての小田原修司にも負けないよ?」

 ニトロからの挑発に若干目付きを鋭くさせて一段と攻撃的になるミラーガールは、激しく聖龍剣を振り翳してニトロを追い詰める。

 しかしニトロの方も、ミラーガールが振り下ろす聖龍剣を防御しようとDブレードを回転させて盾にする。

「ハハッ!」

 容易くミラーガールの攻撃を防いだニトロは、ここで跳び上がって急速に接近して、ミラーガールの頭上から彼女を斬り付けてきた。だがミラーガールは即座にニトロの技を回避して、体勢を立て直す。

 と、ここでニトロは必殺技を仕掛け、地面に強大なエネルギーを放出させて凄まじい勢いでビームの柱を発生させてきた。

「行くぜ!」

 ニトロの癖か、一発目を発動させる前には声をかけて来るためミラーガールは辛うじてビームの柱を回避できた。

「ふっ! はっ! そこだっ!!」

 三連続でビームの柱を発生させて地面からミラーガールに大打撃を与えようとするニトロ。

 そんなニトロの攻撃を全て回避したミラーガールは、凄まじい形相でニトロへと迫った。

「!!」

 普段、穏やかなミラーガールからは想像もできない彼女の必死の形相を目撃し、ニトロは愕然とした。

 そしてミラーガールはその形相のまま、ニトロへと斬りかかり、ニトロは再びDブレードで彼女の剣戟を防ごうとする。

 が、ミラーガールの鋭い太刀筋は、ニトロが使用していたDブレードを容易く弾き飛ばしてしまった。

 ミラーガールにDブレードを弾かれて、首筋に聖龍剣の切っ先を向けられるニトロは固まってしまう。

「お願い……私たちの調査の邪魔はしないで」

 首に聖龍剣を突き立てて警告するミラーガールの言葉に、ニトロは苦笑いを浮かべて返す。

「参ったな……逆にやられたよ。いつもの様に逃げるかな……」

「私たちの邪魔はしないで、ホントに」

「ちっ、いつもマジだよな。ミラーガールは」

「何度でも言うわ! 私たちの邪魔はしないで!」

「おお、怖っ。鬼神と恐れられた修司に代わって、あんたが鬼の様に恐れられるって考えかい? でも、ナイトメアソウルは興味があるんでね。また会うかも知れないよ。それまでは……じゃあな、ミラーガール! あんまり気張らず楽になれよっ」

 それを言うとニトロは颯爽とミラーガールの前から姿を消した。彼女に弾き飛ばされたDブレードと共に。

 こうしてミラーガールは、接戦の末に自分たちと同じくナイトメアソウルを収集しているニトロ・グリセリーノとの闘いを乗り越えた。

 

 だが暗躍する者達は、まだまだ成りを潜めるばかりだった。

 

 

 

[探求する者]

 

 ミラーガールは休む事無く、次なるナイトメアエリアへと出撃した。

 そこは歴史などを観て学べるセントラルミュージアムだった。

「そこはセントラルミュージアム。といっても姿形は変わってしまってます」

「辺りは静まり返ってる……何だかブキミな感じね。どんなナイトメアなのかしら?」

「とにかく進んでみましょう」

 ウッズと通信機を通して会話しながらミラーガールはセントラルミュージアムの奥へと進んでいった。

 と、ミラーガールが様々なトラップや敵に苦戦している、先にミュージアムへと突入していたコレクターズと合流する。

「危ない!」

 ミラーガールは敵に取り囲まれてたコレクターズを救出するべく、聖龍剣を振るって彼女達を助太刀した。

「み、ミラーガール……!」「あ、ありがとう……」

 コレクターユイとコレクターハルナが礼を述べるが、ミラーガールは返事する事無く、自分について来いと言わんばかりに先へと進んでいく。

 そんな無愛想になってしまったミラーガールの内心焦燥する心中を察して、コレクターユイ達はミラーガールの後を追う。

 立ちはだかる敵を容赦なく一刀両断していくミラーガールの剣戟に、コレクターユイ達は愕然としながらも、これが今の彼女の姿なのだろうと悲しみを胸に閉じ込めた。

 そうして前進していく彼女達の前に、例の不気味な容姿のナイトメアウィルスが大量に群がってきた。

「あ! ナイトメアウィルスが多すぎる!」

「堪えましょう! この奥に調査員がいる筈なんだから……!」

 動揺するコレクターユイたちにミラーガールが説き伏せながら、迫るナイトメアウィルスを聖龍剣で片付ける。

 そしてミラーガールが一人ナイトメアウィルスを駆逐していると、複数のナイトメアウィルスがコレクターユイ達に襲い掛かってきた。

「伏せてッ!」

 そんな矢先、ミラーガールはコレクターユイ達に伏せる様に激しく言い渡すと、ユイ達は反射的に頭を下げて体勢を低くすると、そこにミラーガールが聖龍剣を思いっきり振り付けてナイトメアウィルスを真一文字に斬り捨てた。

 これには反応が遅ければ危うく首ごと切断されていた現状に、ユイ達は蒼然とするがミラーガールはそんな事まったく気にせずに進攻を再開する。

 ミラーガールの冷徹になった態度の裏側にある、修司死亡の事情を深く周知しているコレクターユイ達はミラーガールに反論する事は無かった。

 

 そして迷い込んだ民間人を救出しながらミラーガール達はセントラルミュージアムの最深部へと辿り着く。

 すると其処には大岩を転がすスカラベ型の昆虫人が偶然にもいた。

 人によっては、動物の糞を転がすスカラベには嫌悪感を示す女性も多い中、ミラーガール達はそのスカラベの昆虫人を見て驚いた。

「グランド・スカラビッチ! 確か、遺跡荒らしで手配されている……!?」

「何故こんなところに居るの? ナイトメアの事を白状しなさい!」

 自称「トレジャーハンターにして考古学者」を名乗っているグランド・スカラビッチは、世間では遺跡荒らしとして指名手配されていたが、そんな彼を前にしてミラーガールとコレクターアイが問い詰める。

 するとスカラビッチは彼女達を視認してマイペースな性格で言った。

「ありゃりゃりゃ、これはこれは。聖龍隊の皆さんではありませんか? これはついてない、とんだカタブツに見つかってしまったかの?」

「大人しく白状すれば、身の安全は約束するわ」

「では戦うしかありますまい……遺跡研究家としては、前々から一度は拝見したかった。ミラーガール、お主のDNAデータ……拝見させてもらいますぞい!」

 ミラーガールの説得に応じないスカラビッチは、逆に彼女のDNAデータを見たがって戦闘に突入した。

 スカラビッチ本人は至って研究熱心なだけで悪気は無く、その情報や学術の収集量は見事だったという。

 しかし、ミラーガール達と戦闘に突入したスカラビッチは大岩を転がしながら迫ってきた。

「よいしょ、よいしょ」

 せっせと連呼しながら大岩を転がして迫ってくるスカラビッチに、ミラーガールが攻撃を指示した。

「岩を破壊しましょう!」

 そう言うとコレクターユイ達は全力で大岩を破壊してスカラビッチを丸裸にする。

 スカラビッチは逃げ隠れ、再び現われたかと思うと今度は先ほどの岩より一回り大きい岩を転がしてきた。

「わっせ、わっせ」「何度も同じよ!」

 岩を転がしてくるスカラビッチにミラーガールが急接近して聖龍剣で岩を真っ二つに切断すると、スカラビッチはこれに驚愕。

 そしてまたも隠れると、再度現われて再び岩を転がしながら今度は放射線状に跳ねるように岩を蹴り飛ばしてミラーガール達に攻撃してきた。

 だがミラーガールは飛んでくる岩を聖龍剣で容易く切断して攻撃を無効化すると、スカラビッチは即座に代えの岩を召喚して連続で岩を蹴り飛ばしてきた。

 ミラーガールは絶えず聖龍剣で飛んでくる岩を斬り捨てて攻撃を無力化するが、そこにスカラビッチが今度は破壊できない紫色の岩を転がして登場。

 するとミラーガールとコレクターユイ達は、ミラーガールが展開した複数の鏡の反射を利用して、岩向こうにいるスカラビッチに攻撃を直撃させた。

「いたたたたたたっ!!!」

 攻撃を受けたスカラビッチは、またしても隠れ潜んでしまう。

 そして再度現われたスカラビッチは、また岩の大きさを変えて登場。大きな岩を転がして迫った。

「よおおおおおおいしょぉ!! よおおおおおおいしょぉ!!」

 必死に大きな岩を転がしてくるスカラビッチは、この大きな岩をミラーガール達に当てようと蹴り飛ばした。

「どうしたこうしたぁ!」

 この大岩にコレクターユイ達がバトンを使って、三人一組で弾き返した。

「どりゃぁ!」

 しかしスカラビッチも負けずと弾き返された大岩を蹴り返して再び彼女達の方へと飛ばす。

 これに目付きを鋭くさせたミラーガールが前に出て、大岩を細切れにしてみせた。

 思わず拍手を送ってしまうコレクターユイ達の喝采を尻目に、スカラビッチは最後に特大の大岩を転がして四人の前に立ちはだかった。

「うあああああああああああんん!!! うあああああああああああんん!!!」

 必死すぎて目を丸くするコレクターユイ達に反して、ミラーガールは落ち着いた面持ちで聖龍剣の切っ先を前へと突き出した。そして刀の背を左手の甲に添えると、一点を集中して強烈な突きを放った。

 ミラーガールが放った強烈な聖龍剣の突きは、特大の岩をも貫通し、その向こう側で懸命に転がしていたスカラビッチに直撃。スカラビッチの体に風穴が空いた。

「無念~~~~~!!!」

 強烈な刀での突きで風穴を空けられたスカラビッチはそのまま跡形も無く消滅してしまった。

 

「グランド・スカラビッチ、元はトレジャーハンター。彼は単なる遺跡荒らしと違って、古代遺跡などの廃墟で発見されたモノの研究に熱心で、遺跡だけでなく旧時代のオールド世代の二次元人の研究データも豊富に持っていました。かつてエキストは旧時代のデータと引き換えに、指名手配中の彼を保護。それと同時に彼のパワーアップも施した様です。エキストは彼を使って、立ち入り禁止区域の地までも調査するように仕向けました。其処は修司様……そう、あの方が催眠暗示を受け入れた0エリアも含まれていました。私はスカラビッチが禁止区域に乗り込む所を偶然発見して……気の毒でしたが……処分されました。エキストは何の反省の色も示しませんでした……思い出したくない過去です……」

 ウッズは指名手配されてたスカラビッチを保護したエキストが、彼の肉体を強化改造した挙句、立ち入り禁止区域までも踏み入らせて完全に道具扱いして、責任追及されても何の反省の色も無かった事を辛そうに付け加えた。

 

 

 

[最強の不死鳥]

 

 ミラーガールは次に、灼熱の溶岩が煮え滾る地下奥深くのエリアに踏み込んだ。

 しかし其処で彼女を待ち受けていたのは、異様なまでに変色している溶岩だった。

「そこは地下奥深くのマグマエリア。マグマの湧き出るホットスポットを調査する危険なエリアです」

「こんな薄気味悪い色をしたマグマなんて初めて見た。……まさか、これもナイトメアなの!?」

「相変わらずの電波障害で確認できませんが……おそらくナイトメアでしょう。そんなマグマ、異世界でも確認されてません、気を付けて!」

 異世界でも確認されてない異質な色の溶岩を前に、ウッズが警鐘を鳴らす中ミラーガールは邁進する。

 時には、まるで生き物の様に波を打って迫ってくる異色な溶岩を回避しながら突き進むミラーガール。

 その道中で、ミラーガールは仲間である獅堂光と木之元桜と合流を果たす。

「光さん! さくらちゃん!」

「アッコちゃん!」「アッコさんも来てくれたんですね」

 光は魔法装甲の鎧で、さくらはファイアリー「火」のカードを使用した状態で異色の溶岩地帯を突き進んでいた。

「二人とも無事ですか? ここは普通とは違うマグマが噴き出してくる危険地帯……おそらくナイトメア現象だろうけど、気をつけて進まないと」

「そうだね。私も、この鎧でどうにか此処まで来られたけど……結構しんどいよ」

「私も……ファイアリー(火)のカードで溶岩を防ぎながら進んでいるけど、かなりハードです」

 ミラーガールからの問い掛けと警告に、光とさくらは真情を話し返す。

 三人は休む間も無く、そのまま最下層までの進行を再開した。

 時おり、まるで龍の様にホットスポットから噴出する異色の溶岩は、三人に容赦なく襲い掛かる。

 そんな苦境の溶岩エリアにも、例のナイトメアウィルスが蔓延り、進行する三人に集う。

「! ナイトメアウィルスが至る所に……二人とも、注意して!」

 ミラーガールが注意を呼びかけると、それに応える様に光は剣で、さくらはソード「剣」とショット「撃」を併用する事で群がるナイトメアウィルスを撃退していく。

 そしてナイトメアウィルスが落としていくナイトメアソウルを回収して、ミラーガール達は地下奥深くへと進行する。

 地下へ地下へと下りていくと、次第に辺りの温度が上昇し、ミラーガール達は暑さを感じる様に至った。

「進めば進むほど熱くなってくる……ここが最下層。この先は間違いなく調査員ね」

「このエリアの調査員はブレイズ・ヒートニックス。もしもの時を考えて、装備を整えた方が良いかもしれません」

 ウッズから告げられ、ミラーガール達は装備を整えた後に調査員が待ち受ける空間へと足を踏み入れた。

 

 ミラーガール達が足を踏み入れてみると、彼女達の目の前に上空から眼前へと舞い降りてくる不死鳥型の獣人の姿が目に入る。

「へっ、よく此処まで辿り着けたな。今までの奴らと比べたら腕が立つ感じだな? もう地上にはヤワな奴しか残ってないから退屈だったぜ。殺すなって言われてるけど……無理な話だよな? ヘヘへッ」

「ブレイズ・ヒートニックス……あなたで間違いないわね?」

 ミラーガールが確認の問い掛けを投げ掛けると、ヒートニックスは好戦的な態度でミラーガール達に問い掛けた。

「二次元人を洗脳しろって言われても無理な話だよな? メンドーな事はしたくねぇ、戦おうぜ? 最強のオレ様とよ!」

 自らを最強だと自負するヒートニックスは、ミラーガール達の行動範囲を狭めようと能力を発動する。

「マグマストリーム!!」

 するとヒートニックスは、自身の能力を駆使して通常とは異なる溶岩を操作して、ミラーガール達の足元から沸き上がらせた。

「ま、マグマが!」

 これにミラーガール達は非常に焦り、急いで突き出ている岩陰へとよじ登って難を逃れる。

 しかしヒートニックスは更に両手に力を込めて圧縮し、一度でも触れれば死んでしまいそうなマグマエネルギーを一定時間操った。

 するとヒートニックスは岩場の上で戸惑うミラーガール達に火山弾を発射した。

「はぁっ!!」

 掛け声と共に拡散性質の火山弾を放ち、ミラーガール達を追い詰めようとする。

 だが木之元桜がショット「撃」のカードで火山弾を粉々に撃ち抜いて処理すると、ヒートニックスは更なる追撃を放そうとする。

「ゴッドバード!!」

 その掛け声と共に、全身からエネルギーを発生して纏ったヒートニックスは縦横無尽に空中を滑空し、ミラーガール達に体当たりしようと迫った。

 と、これにミラーガールが聖龍剣を構えると横切ったヒートニックスを狙って刃を振った。するとヒートニックスと寸前で直撃しそうになるミラーガールに光とさくらが声をかける。

「アッコちゃん!」「アッコさん」

 膝を着いてしまうミラーガールに声をかける二人。だが、それと同時にヒートニックスの燃え盛る翼に切れ込みが入り、ミラーガールの斬撃が微かに直撃した事が判る。

 しかし流石は不死鳥をモデルにされた二次元獣人、瞬く間に傷口が炎と共に再生して塞がってしまった。

 すると此処でミラーガール達の足元まで迫っていた異色の溶岩は引いていき、ヒートニックスが新たに溶岩を操り出した。

「マグマストリーム!!」

 すると溶岩が今度はミラーガール達の真上から迫ってきて、彼女達は慌てて地面へと降りていく。

「フハハハッ、オレ様はマグマを自在に操る最強の二次元人……ミラーガール! お前達に逃げ場など無い!」

 そう言うとヒートニックスは天井から湧き出て上方を埋め尽くす溶岩へと飛び込むと、その中からミラーガール達目掛けて突進してきた。

「え! マグマの中でも平気なの?」

 光が一驚している最中も、ヒートニックスは溶岩でも耐えられる肉体を駆使して、彼女達に奇襲を仕掛ける。

「マグマウェーブ!!」

 真上に溶岩を発生させたヒートニックスは、溶岩エネルギーを半月型に収束させて、ミラーガール達に放った。

「みんな伏せて!」

 と、ミラーガールの一声で反射的に伏せる光とさくら。ミラーガールは咄嗟にバリアーを展開して、超高熱の溶岩エネルギーから自分達を護る。

 しかし、高熱を放ち続ける溶岩を自在に操り、攻撃に使うヒートニックスの猛攻に、ミラーガール達の体力は奪われていき、危険な状況だった。

「これで終わりにしてやる!」

 ヒートニックスはそう叫びながら真上の溶岩に向かって飛び上がると、技を発動させた。

「ストリームドロップ!!」

 すると天井から湧き上がり、埋め尽くしている溶岩からマグマの雫が落下してきてミラーガール達を追い詰める。

「こ、これじゃ動けない……!」

 マグマの雫で身動きが取れない状況に、ミラーガールが表情を歪ませていると其処に光が言った。

「み、ミラーガール……さっきヒートニックスに攻撃した時、少しだけど怯んで動かなくなっていたよ。聖龍剣で何とか斬り付けて、怯ませれば勝機が掴めるんじゃない?」

 この光の問い掛けに、ミラーガールもそれに賭けるしかないと踏んだ。

 そしてミラーガールは一気に前へと踏み込み、それと同時に地を蹴り飛ばして跳躍するとヒートニックスへ真っ向から聖龍剣を振り上げて斬りかかった。

「ええーーッい!」

 ミラーガールが振り下ろした聖龍剣は、ヒートニックスの肩から斜め下に切り裂いた。

「うおッ!」

 切り裂かれて悲鳴を上げるヒートニックスに対して、ミラーガールは地面へと降下して着地しようとしていた。

 その間にヒートニックスは傷を再生させようとしたのだが、ミラーガールが地面へと降下していくのを見ていた彼の目に飛び込んできたのは。

 それは地面の上で光と共にシールド(盾)のカードでストリームドロップから身を護っていた木之元桜がショット(撃)のカードを発動させようとしていた瞬間だった。

 そしてさくらはヒートニックスに向けて複数の閃光を撃ち放った。

「ショット!」

 さくらが放った閃光はヒートニックスの体を貫き、その内の一発はヒートニックスの額へと着弾し貫通した。

 その瞬間、ヒートニックスは叫んだ。

「ぎぃやーーっ!!!」

 断末魔を上げたヒートニックスは、そのまま消滅。

 こうしてブレイズ・ヒートニックスとの苦戦は幕を下ろした。

 

 聖龍隊本部に帰ったミラーガール達は、そこでウッズからヒートニックスについての情報を聞かされた。

「ブレイズ・ヒートニックス、もとはホットスポット調査員。ヒートニックスの能力は他のメンバーよりもずば抜けていて、誰も行けなかった危険なエリアも調査できました。しかし彼の能力についていけない他のメンバーは全滅。ですが、生みの親であるエキストはヒートニックスの能力を更に上げました。これ以上、犠牲者を出さないよう警告を無視したヒートニックスは、事故に見せかけられて地下深くで処分されました」

 協調性がなく、短気で自己中心的なヒートニックスはチームの仲間達とは仲が良くなく、最後は密かに処分されてしまったという。

 如何に優れていようとも、周りの人々との協調性が無ければ成功しない事を噛み締めるミラーガール達であった。

 

 

 

[冷たき狼]

 

 ミラーガールが次に足を踏み入れたのは、既に聖龍HEADが先に奥地へと進行しているという北極エリア。

 その北極エリアでは、雪原などは無く、全てが摩擦がないまでに地面が凍て付いていた。

「そこは北極エリア。そっちの状況はどうなってますか?」

「何もかもが凍り付いてるわ。足下が滑って、厄介な調査になりそうだわ」

「スリップには十分、気を付ける事ですね」

「以前はこんなに凍ってなかったのに。とにかく先を急ぐわ!」

 ウッズとの通信を終えて、ミラーガールは先へと進んでいく。

 すると進んでいくミラーガールの前に上り坂が。ミラーガールは滑りやすくて足元が不安定な状況の中で懸命に登って行く。

 と、ミラーガールが登っていると、坂道の上の何も無い所から突如として大量の雪が現出し、それが雪崩れと化してミラーガールへと迫ってきた。

 ミラーガールは咄嗟に岩場の影に潜んで、雪崩を回避する。

「どういう事? 何も無い所から大量の雪が……これもナイトメア現象なのかしら」

 ミラーガールは突然の雪崩に、これもナイトメアが引き起こしている現象なのかと、警戒しながら先を急ぐ。

 しかしその後も、坂道を登っていくと案の定、大量の雪が現出して雪崩が発生。その度にミラーガールは物陰へと潜んで雪崩をやり過ごす。

「滑って進みにくそうですね。もし避難できる場所があったら活かした方が宜しいかと」

 足場が滑りやすい上に、突如として雪崩が発生する現状にウッズも避難できる場所を最大限に活かしながら進行する事を勧める。

 それから更に奥地へと進行するミラーガールだったが、彼女の前に地形が崩れたためか大きな穴がいくつも見られた。

「地形が崩れていて、あちこちに穴が開いているみたいですね。落ちないよう、足元からの転倒には気を付けてください」

 ミラーガールから通信で現状を知ったウッズは、彼女に転倒からの落下には十分気を付けるようにと伝える。

 そして幾つもの危険区域や敵を突破したミラーガールは、ここでウッズに訊ねてみた。

「ウッズさん、先に向かったHEADって一体……」

「るちあさんと海斗さんを筆頭にしたマーメイドプリンセスの皆様方です。ですが……先ほどから何度呼びかけても応答が無くて、心配です」

「分かったわ。私が様子を見てみる」

 ミラーガールはウッズと通信を終えると、ナイトメア調査員が待ち受ける北極エリアの奥地へと突き進む。

 そしてナイトメアソウルの反応を持つ調査員の許に到着したミラーガールは、ウッズと通信を再開する。

「強大な反応が! きっと調査員よ!」

「そこのエリアの調査員はブリザード・ヴォルファング。今までの事を考えたら話し合いで済まないかもしれません。アッコさん……実は、私……」

「どうしたの、ウッズさん?」

「い、いいえ、気を付けてください。ヴォルファング……」

「何か知ってるの?」

「い、いえ、何でもありません……」

 何かしら後ろめたい事を隠している様なウッズの口調に違和感を覚えるミラーガールであったが、先に調査員の許に来ている筈のマーメイドプリンセス達を確認する為に足を踏み入れた。

 

 そこでミラーガールが目撃したのは。

 なんと全身氷漬けになっているマーメイドプリンセス達であった。

「そ、そんな……みんな!」

 ミラーガールは急いで皆の許に駆けつけると、自身の持つ治癒能力技で彼女達の氷を溶かした上で体力を回復させた。

「みんな、大丈夫?」「な、なんとか……」

 ミラーガールからの問い掛けに身を震わせながら答える七海るちあ。

「あ、あの狼男……負けた私たちを次々に氷漬けに……」

「ち、違う……あれは狼型の獣人だ。狼男とは違う」

 星羅の発言に、堂本海斗が訂正を入れる。

 と、ミラーガールがマーメイドプリンセス達を回復させていると、暗闇から紅い眼光が現われ、彼女達に声をかけてきた。

「フッ、氷漬けにしながらも、まだ生きていたか……案外しぶといものだな、聖龍HEADは」

 その声にミラーガール達が反応して振り返ると、ミラーガールがその声に質問する。

「あなたがナイトメア調査員、ブリザード・ヴォルファングなの?」

 すると紅い眼光は答えた。

「如何にも……大命を受け、再び生を受けた。以前、私のミスで仲間を失い、エキスト様にも迷惑をかけた。挙句の果ては、聖龍隊の罠で……フッ、昔の話をしても何の前進もありえない……これも使命……済まぬが今度こそ死んでもらうぞ! 聖龍HEAD!」

 すると次の瞬間、辺りが雪や氷などで微かな光が乱反射した為か明るくなり、暗闇の中から狼型の獣人が姿を現した。

 狼型の獣人ブリザード・ヴォルファングは、氷の上を滑るようにミラーガールへ急接近して攻撃してきた。

 ミラーガールは咄嗟に跳び上がり、ヴォルファングへ反撃としてミラーシールドから光の弾を発射するが、何とヴォルファングは周囲の水蒸気を滑る様に駆け出して空中を高速で移動したのだ。

 その動きは実に速く、ヴォルファングが水蒸気を蹴って四速歩行で駆け抜けると紫色の残像が視界に残った。

 すると四速歩行のヴォルファングは一時停止して、口から氷塊を生み出してミラーガールに向けて放射線状に飛ばしてきた。

 飛ばされる氷塊をミラーガールは聖龍剣で切り払って防ぐが、ヴォルファングは彼女達の真上を水蒸気を蹴って駆け抜け、その上から氷塊を直線状に繰り出して攻撃。

 危うくるちあ達にも氷塊が直撃しそうな瞬間に、ミラーガールは自身と彼女達をドーム状のバリアーで氷塊を防いで潜り抜ける。

 するとヴォルファングは地面に突き出ている巨大な氷塊を蹴って方向転換し、ミラーガールへと残像を残しながら駆け抜けては彼女に噛み付いた。

「っ!」「あ、アッコさん!」

 苦痛に歪むミラーガールにるちあが叫ぶ。するとヴォルファングに噛み付かれた箇所から、ミラーガールの身体が凍り始めた。

「い、いけない! 俺たちと同じ様に氷漬けにする気だ!」

 海斗が戸惑う中、ヴォルファングはミラーガールの身体から離れまいと顎に力を入れる。

 しかしミラーガールもこのまま氷漬けにされまいと、残り僅かな体力で聖龍剣を握ってヴォルファングに斬りかかろうとする。

 と、ミラーガールが自身に斬りかかろうとしているのを察したヴォルファングは咄嗟に喰らいついていたのを離れて、ミラーガールと距離を置く。

 そして互いに距離を置いたミラーガールとヴォルファングは向き合うが、ミラーガールの方は喰らい付かれた肩から身体が僅かに凍り付いて体力を奪われていた。

 そんな危機に陥ったミラーガールに、ヴォルファングが語り掛けてきた。

「ミラーガールよ、お主には直接な恨みは無い……だが、再び私に生を与えてくれた主の為にも勝たなければならないのだ! 済まぬが、この極寒の地で果ててくれ……お主の仲間と共にな」

 主君への強い忠誠心に従いミラーガールたち聖龍隊と命を賭けて戦う以外の選択肢が残されていなかったヴォルファングは、ミラーガール達に謝罪しつつも彼女達全員を極寒の地で死滅させようとしていた。

 これを聞いたミラーガールは、仲間達までも死なせてなるものかと体の底から力が漲り、その闘志は凍て付いていた彼女の肩の氷をも蒸発させた。

「こ、これは……!」

 肩に張り付く氷が蒸発するのを目の当たりにして、ヴォルファングもマーメイドプリンセス達も愕然とした。

 そしてミラーガールが聖龍剣を抜刀して構えた瞬間、なんと聖龍剣の刃が燃え上がり、炎の刃となってヴォルファングへと迫った。

 次の瞬間、ヴォルファングはミラーガールが振るう炎の刃で切り裂かれて絶命した。

「がはっ……!!」

 切り裂かれた瞬間、全身が燃え上がり、大火に包まれてその身を消滅していくヴォルファング。

 るちあ達マーメイドプリンセス達は、ミラーガールの剣戟と燃え盛る刃を見て愕然とするばかりだった。

 こうして凶暴そうな外見とは裏腹に、信頼を勝ち得るだけの責任感と冷静さを併せ持つブリザード・ヴォルファングとの死闘は終わった。

 

 命辛々、聖龍隊本部に帰還したミラーガール達は、ウッズからヴォルファングに対して悲しい話を聞かされた。

「ブリザード・ヴォルファング、もと北極エリア調査員のリーダー。ある日、異常者(ヒール)の仕掛けた罠に彼のチームメンバーが襲われました。ヴォルファングは命辛々、異常者(ヒール)を倒したもののメンバーは全滅……ヴォルファングを生み出したエキストを嫌う研究員が、この事件をきっかけにヴォルファングを処分する計画を立てたんです……事故に見せかけられ、ヴォルファングは処分されました。冷たい海の中へ……そして彼を処分執行したのは、この私なんです! まんまと騙された私が、私が……後にBQZによって、この計画を立てた研究員は影で処分されましたが……今でも思い出しくない出来事です……」

 ヴォルファングへの処分を未だに根深くトラウマに持つウッズの話を聞いて、ミラーガール達は悲しみに暮れたという。

 

 

 

[悪夢の来襲]

 

 幾度と無く、かつては自分の職務を純粋に果たしていたであろう二次元人たちを処分していくミラーガール。

 だが、ミラーガールに圧し掛かる心労は極限を極めていた。

 元々は平和的で争いを好まない性分のミラーガールにとって、異常者(ヒール)と認定されてしまった自分と同じ二次元人を再び処分していくのに、かなりの抵抗があった。

 だが修司ナイトメアや、ナイトメア現象の実態を探る為には、今後も各地の調査員として活動している過去に処分された筈の二次元人と接触しなければならない。無論、彼らと交渉して平和的に解決できるかは定かではない。

 度重なる戦闘で精神を消耗してしまうミラーガールは、一人思い悩んでいた。

(……修司……修司は、自分が愛している二次元人を処分するのに抵抗があった筈なのよね……それも一人黙々と戦い続けてたのよね…………でも修司、私には貴方ほど戦い抜くほどの強い意志なんてないのよ……! もう、これ以上……戦い抜くのは……)

 ミラーガールは戦う事に関しての迷いや躊躇いが胸中に蓄積されているのを痛感していた。

 と、そんな彼女に一人の女性が歩み寄って、話し掛けてきた。

「……アッコちゃん……」「! あ、貴女は……!」

 ミラーガールはその女性の顔を見て驚くとスグに顔を背けて視線を逸らしてしまう。

 だが、申し訳無さそうに顔を背けるミラーガールに女性は更に歩み寄ると、ミラーガールの目前まで歩んでは話し掛け続けた。

「アッコちゃん、お疲れ様。修司の分まで、戦っているのね……」

「………………」

 ミラーガールは悲痛な面持ちで顔を背けたままだったが、女性は彼女に話し続けた。

「……ありがとう、修司の分まで。いいえ、多くの人の為に戦ってくれて……けれどね、アッコちゃん。無理に修司の代わりとして戦わなくてもいいのよ。あの子は、修司は……自分が信じられた友達である、あなた達を護る為に激しい戦いの中で死んだ。私は、それを決して責めたりはしないわ……だって、あの子が信じられた数少ない存在が、あなた達なのだから」

「………………」

「あなたは昔の修司みたい……自分の全てを投げ出すように、何もかも一人で背負い込んで……修司も責任感の強い子だったけど、今のアッコちゃんはまるで修司みたいに無理しちゃってる……でもね、そこまで自分を追い込むほど無理しなくてもいいのよ。あなたはあなた、修司は修司なんだから」

「……私が、私たちが弱かったから……修司が……貴女の息子さんは亡くなったんですよ。和江さん……」

 すると女性は首を横に振って、ミラーガールに話し続ける。

「いいえ、アッコちゃん達からあの子は多くを受け取って、強くなってくれた。母親の私から見ても、あなた達は掛け替えのない友達には違いなかった。だから私は……! アッコちゃん、あなた達残された人達にまで修司の様に無茶をしないでほしいの。自分を偽らず、ありのままの姿で生きていて欲しい。特に、修司が愛した……あなたには、そう生きて欲しいの」

「っ……」

 女性からの言葉に、ミラーガールは鏡の様な瞳に涙をいっぱい浮かべて顔を向けた。

「か、和江さん……!」

 女性は再び首を横に振って、笑顔で言う。

「そうじゃないわ。修司が死んで叶わなかったけど、別の名前で呼んで」

「っ……! お…………お義母さん……!」

 ミラーガールは心から安堵を求めるかのように、小田原修司の実母と抱き合った。

 母と女、それぞれ一人の男を別々の形とはいえ愛した二人の女は、互いの悲しみを埋め合うかのように互いを抱擁し合ったという。

 

 と、その時。

 聖龍隊本部の警報が鳴り響き、両者は何事かと驚いた。

「た、大変です! 聖龍隊本部近辺に、あの修司ナイトメアが出現! 多くの聖龍隊士と戦闘を展開しています!」

 ミラーガールの許に駆け付けてきた隊士の呼びかけに、ミラーガールは和江と顔を合わせる。

 和江はミラーガールの顔を力強く見詰めると、ミラーガールも力強い表情で応えた。

 そしてミラーガールは和江に背を向けて、修司ナイトメアが出現した現場へと赴く。

 そんなミラーガールを我が子のように見送る和江は、悲愴な面持ちを浮かべていた。

 

 その頃、修司ナイトメアが出現した現場では。

「うおーーッ!!」

 黒崎一護など強力な戦力である聖龍隊士が現出した修司ナイトメアと激しい戦闘を繰り広げていた。

 しかし、修司ナイトメアは悉く聖龍隊士を叩きのめし、圧倒的な強さで隊士達を返り討ちにしていた。

 すると其処にミラーガールと、修司ナイトメアの来襲を聞き付けて駆け付けてきたHEADの女性陣たちが駆けつけて来た。

「いたね! 修司君の偽物が!」

「私達が来たからには、もう好き勝手はさせないわよっ!」

 獅堂光とセーラームーンが修司ナイトメアを見て戦意をむき出しにする。

 すると此処で修司ナイトメアに先頭のミラーガールが問い掛けてみる。

「あなた! 悪ふざけもいい加減にして!」

 しかし修司ナイトメアは、あくまで自分が本物の小田原修司かのように話し返してきた。

「ふざけてなんかない! ここまで来るのに大変だった。おれのニセモノまで出てきて、どうなっているんだ」

「……。黙りなさい! 許さないわよ、最後まで修司の真似なんかして! あなたは一体、何者なの?」

「アッコ、オレだよ。分からないのか? ナイトメアにやられて色が変わってしまったが……」

「……笑わせないでっ! 誰がそんなウソを信じると思っているの?」

「もう、オレの事さえ分からなくなったのか? 異常者(ヒール)だな……聖龍隊総長として処分してやる!」

 すると修司ナイトメアはミラーガール達に襲い掛かって来た。

「とうとう、本性を表したわね、偽物! あなたの為に、どんだけアッコちゃんが傷付いた事か……!」

「一緒に、異常者(ヒール)を倒そう……昔の様に」

 キューティーハニーに返答する修司ナイトメアに、ローゼンメイデンの真紅も言い放つ。

「そうね……それじゃ……まずは、あなたからよ、ニセモノ!」

 この返答に修司ナイトメアは目付きを鋭くさせて言い返した。

「とうとう、お前達も異常者(ヒール)か。昔から怪しいと思っていたがな。お望み通り処分してやる!」

「って! 処分されるのは、あなたの方よ!」

 修司ナイトメアの言葉に、コレクターユイが反論しながら攻撃を仕掛ける。

 しかし修司ナイトメアは攻撃を瞬間移動さながらの速度で避けつつ、HEADの女性陣達に斬りかかって行く。

 まるで本物の修司さながら、凄まじい接近戦で刃を振るっていく修司ナイトメア。

 と、ここで再びミラーガールが応戦しながら問い質す。

「何者なのっ! 絶対に許さないわよ!」

「オレだ、アッコ。オレの事が分からないのか?」

「……分かるわよ、くだらないニセモノだってね。見苦しいわよ! あなたの狙いは何? 何を考えているの?」

 一瞬、修司ナイトメアの言葉に惑わされそうになるミラーガールだったが、スグに聖龍剣を振るって修司ナイトメアに反撃する。

 すると修司ナイトメアは遂に本性を露にした。

「……分かってくれないのか? ……どっちにしろ、お前らは死ぬんだから、どうでもいいかッ! フフフッ、死ね!」

 一気に殺意をむき出しにして猛攻を仕掛けてくる修司ナイトメアに、ミラーガール達は苦戦を強いられる。

「アッコ、あれから探してたんだ。聖龍隊の仲間を……ずっと、ミナゴロシにする為になっ! 死ね!」

 と、修司ナイトメアはミラーガールの頭上から刃を振り下ろして彼女の頭部から切断しようと迫る。

 しかしミラーガールは、この攻撃を避けて、更に聖龍剣を横にして修司ナイトメアの本体に微かに斬り付けた。

 すると「うぅわあぁッ!!」と、微かな切り傷だというのに、修司ナイトメアは絶叫を上げた。

「ど、どうなっているの?」

「もしかして、刀とか剣とかの武器には弱いのかも?」

 セーラーマーズとセーラージュピターの言葉を鵜呑みにして、セーラーウラヌスと龍咲海が同時に動きが止まっている修司ナイトメアに剣で斬り付けた。

 しかし修司ナイトメアは斬られたにも関わらず、ウラヌスと海を掴んでは豪快に投げ飛ばしてしまう。

「うわ!」「きゃっ!」

 投げ飛ばされた二人は地面に叩き付けられると、そこに修司ナイトメアが本物の修司が得意としている地面を走る斬撃「地走り」を仕掛けて二人を追撃する。

 だがミラーガールは地面に向かってミラーシールドを投げ付けて、地面に盾が突き刺さった事で地走りを未然に防ぐ事に成功する。

 そしてミラーガールは単身、修司ナイトメアに急接近して、激しい鍔迫り合いを展開した。

「あなた……何の悪ふざけなの!」

「シュウジ……ドコニイル?」

「あなたには関係ない! このニセモノ……処分するわ!」

「フフフ……シヌノハ、オマエラダ……」

 急に片言になった修司ナイトメアに戸惑うことも無くミラーガールは聖龍剣で激しく応戦する。

 ミラーガールは一旦、修司ナイトメアと距離を置いてみるが、相手は距離を置く事を許さなかった。

「逃げるなよ?」

 そう言うと修司ナイトメアはミラーガールに急接近して彼女に斬りかかる。だが、それを許さないと上空からちせがレーザーで攻撃。すると修司ナイトメアは地面に刀を突き刺して一言。

「終わりだ」

 すると地面に突き刺した刀から広範囲にエネルギーが拡散されて、地中から無数のエネルギー弾が炸裂する。

 この無数のエネルギー弾に驚き、傷を負ってしまうミラーガール達であったが、修司ナイトメアの猛攻は留まらなかった。

「死ね」

 この掛け声と共に巨大な衝撃波を刀から繰り出してきた修司ナイトメア。ミラーガール達は間一髪でこの衝撃波から逃れられた。

「シュウジハ、ドコダ? ワシノ、シュウジハ、ドコダ?」

「……狂っているの?」

 時おり片言で呟く修司ナイトメアの発言にミラーガールが反応するも、修司ナイトメアはミラーガールを集中的に攻撃し始めた。

「オレハ……シュウジ」

「……まともな話ができないの?」

「アオイ……ヒカリ……コロス、コロスッ!」

「くだらない遊びはもう止して! 冗談にも程があるわ!」

「シュウジハ、ドコダ? ドコニ、カクレテイル? アオイ、オンナ……テキ、コロス!」

 ミラーガールは時おり本物の、そして生前の修司と目の前のナイトメアが生み出した現象である修司ナイトメアを重ね合わせたりもしたが、彼女は本物の修司への想いを断ち切るかの如く、聖龍剣を振るって修司ナイトメアを斬り捨てた。

「ニセモノ……! いい加減にくたばりなさい!!」

 ミラーガールが振るった聖龍剣での一撃が、修司ナイトメアの本体を見事に切断。

「うぅわあぁッ!!」

 修司ナイトメアはそのまま断末魔を上げて、爆発・消滅した。

 

「き、消えたの……?」

「私たち、何とか勝てたんだ……」

 ミュウイチゴと七海るちあが消滅する修司ナイトメアを目前にして呟く様に言う。

「アッコちゃん、よくやったわ。これで少なくとも、驚異の一つは消えた、わ……?」

 と、キューティーハニーがミラーガールに話し掛けようとすると、彼女はミラーガールの異変に気付いた。

 ミラーガールは肩をぶるぶると震わせて、静かに瞳から涙を流していた。

 いくら相手が偽物だったとはいえ、己の手で愛した男を斬り捨てた感覚にミラーガールは嘆きの涙を流していた。

 それを察した多くのHEADの女性陣たちは、勝利の余韻に浸ることも無く、ミラーガールと同じく再び小田原修司の死に対して悲しくそして重い気持ちを膨らませるのであった。

 

 

 

[帰還した鬼]

 

 ミラーガールが苦戦の末、修司ナイトメアを撃破した直後。

 彼女を始めとする聖龍HEADの女性陣が、再び小田原修司を失った喪失感に苛まれていた時。

 そんな彼女達に歩み寄る、ボロ布の端切れ同然の衣服を顔から全身にかけて纏う人物が。

「ちょっといない間に俺もおちたもんだぜ。こんな出来損ないと一緒にされるとは……」

 その懐かしい声にミラーガール達が顔を上げて振り返ってみると。ボロボロの布をまくって自身の顔を曝した男の顔に皆の注目が集まった。何故かというと、その人物は他でもないあの小田原修司だったからだ。

「……修司? 修司、生きていたのね?」

 ミラーガールは歓喜のあまり、修司に駆け寄って問い掛けると、修司は素っ気無い態度で答えた。

「フッ、アッコ達だって生きているじゃないか。大体、メカルスごときにやられてたまるか……そうだろ?」

 修司の返事にミラーガールは悲しそうな声で話す。

「あれからずっと探してたのよ……でも、反応も……遺体の一部も……いくら探しても見つからなくて……何も見つからなかった……だから……」

「心配かけたようだな。ダメージが完全に回復するまで身を隠していたんだ。その間に、あの出来損ないが世間を騒がしたみたいだがな」

 そしてミラーガールと対話をした修司は、彼女と腕を組んで共に人々を脅かすナイトメア現象に対抗しようと意を決する。

「さあ……感動の再会は此処までだ。ナイトメア現象を何とかしないと、本当に取り返しのつかない事になるぞ」

「今、二次元人たちが全滅すれば復興作業が出来なくなるわ。そうなればみんなが……いいえ、地球そのものが危なくなる」

 互いに右腕を組んで、両者の決意の表れを確認し合う修司とミラーガール。

「行くぜアッコ! ナイトメアをぶっ潰してやろうぜ!!」

「ええ、今はみんなが力を合わせないといけない時なのに……私は絶対に許さない! 行きましょう、修司!」

 修司は今まで休んでいた分を取り返すために。そしてミラーガールは地球存亡の事態に追い詰めているナイトメア現象を決して許さない意気込みで戦いに挑んでいく。

 

 そして帰還した小田原修司を出迎えた聖龍隊本部。すると帰還したばかりの修司にバーンズが申し訳無さそうに問い掛けた。

「戻って来たばかりなのに悪いな、修司。早速だが、アッコ達と協力して任務にあたってくれないか?」

「俺は聖龍隊の総長……戦ってなんぼだ。少し休んでいたからな、取り戻してやるぜ、みんなの平和を!」

 修司は再び戦場と化している世界各地に出動する意気込みを発した。

「出撃する!!」

 

 しかし聖龍隊本部に帰還したばかりの修司は、出撃前にある違和感に気付いてミラーガールに話し掛ける。

「……な、なあ、アッコ……」「うん? なあに、修司」

 修司からの問い掛けにミラーガールは素っ気無い表情で振り返ると、修司は彼女に質問した。

「い、いやな……俺がいない間に、その……お前、髪の毛切ったんだな」

「え! え、ええ……ちょっとね。変?」

「い、いや……変って訳じゃないが……あまり見慣れてなくて。お前の、その……ボブカット」

「う、うん、私もちょっと……戦いに専念しようと思って、少しイメージチェンジしてみたの」

「そ、そうか……」

 修司は今まで独特な髪型だったミラーガールが、断髪してその容姿を一変させた現状に驚いていた。

 一方のミラーガールも、自分が髪の毛を切ったのは修司本人が死んだ事への戒めと戦闘への覚悟を決め込んだ故に、断髪したのだという事実を上手く修司に隠しながら話を続けた。

 そんなミラーガールの一変した髪型に戸惑う様子の修司に、ミラーガールは笑顔で言った。

「さあ、それよりも今は次の出撃ポイントを決めましょう。修司との久々の任務……私、張り切っちゃうんだから」

 笑顔でそう修司に語ったミラーガールは、そのまま歩いて去ってしまう。

 一人残された修司は、自分が不在の間に変わりきってしまったミラーガールの心境に唖然とするばかりだったが、そこに相棒でもあるバーンズが近付いて修司に話す。

「おい、修司。お前が死んだと思われた直後から、アッコはすっかり変わっちまってたんだぞ」

「そ、そうなのか……」

 唖然とする修司にバーンズは話し続ける。

「ああ、お前が死んだ直後、アッコはすっかり意気消沈して今にも死にそうな雰囲気だった。……けれど、それからしばらく経ってからアッコはまるで人が変わったかのように自分の意志で戦闘に参戦する様に変わっちまって……オレもジュニア達も一時は心配してたんだ」

「そうなのか……」

「それだけじゃない。お前が戻ってくる以前は、アッコはそれこそお前以上に冷徹な女に成っちまってたんだぜ。戦闘狂に変わっちまったと思うほど、アッコは自分自身を追い詰めてたんだ……それこそお前の様にな}

「俺の、様に……」

「ああ。まあ、お前が戻ってきたくれた事で、アッコの様子や心境に少しばかり変化というか、昔のあいつみたいに戻ってくれたみたいな雰囲気は感じられるが……どっちにしろ今回、いや以前のメカルス戦で生き別れた時の事はアッコに何かしら詫びろよ。アッコが誰よりもショックを背負い込んだのは明白だしな」

 バーンズは修司に言いたい事を包み隠さず話すと、作戦司令室へと戻っていった。

 そしてバーンズより自分が死んだ直後のミラーガールの様子を聞いた修司は、彼女に変化を与えたのは自分なんだと直感した。

 

 

 

[サムライ魂を持つ武人]

 

 それから修司とミラーガールは共闘で任務を負う事にした。

 復帰したばかりの修司と、今回のナイトメア現象で最も戦果を挙げているミラーガールの共闘に聖龍隊の誰もが注目する。

 皆の注目を浴びながら、二人は先の宇宙ステーション落下で荒廃した日本へと赴いた。

「そこは重要文化財が多くある古都、京都ですね」

「宇宙ステーションの衝突で見るも無残な姿に……くっ!」

「アッコさん……今はナイトメアの事だけを考えましょう……」

「そうね……ナイトメアを消す事が先決ね」

 引き続き通信士であるウッズからの指示に、ミラーガールはナイトメア現象を打破する事が先決だと嘆く自分に言い聞かせる。

 修司とミラーガールは至る箇所が崩落している京都の街並みを突き進んでいくと、その道中で二人に何か違和感を感じさせる雨が降ってきた。

「なに? 急に、激しい雨が! しかも……この雨、酸性雨!?」

 何と、その雨は非常に濃度の高い酸性雨だった。ミラーガール達が違和感を感じている中、通信士ウッズが問い掛ける。

「そのエリアは確かに曇ってますが、雨は全く降ってません。おそらくナイトメア現象でしょう。お体の方は大丈夫ですか?」

「微かだけど皮膚がピリピリするわ……だけど、これぐらい大丈夫!」

「そうですか……無茶をなさらず」

 ウッズからの問い掛けに大事無いと伝え返すミラーガールを前に、修司も突然の酸性雨に戸惑いながらも彼女に言った。

「アッコ、酸性雨で身体に負担がかかる前に、早いとこ突っ走ろうぜ」

「ええ、そうね修司!」

 修司からの問い掛けにもミラーガールは強く返答する。

 二人は振り続ける酸性雨の中を突っ切っていく道中、ウッズから再び通信が入る。

「かりに、その酸性雨をナイトメアレインと名称しましょう。お二人とも、ナイトメアレインで身体に異常が発生する前に突っ切ってください!」

 ウッズからの指示に、二人は言われるまでも無く雨の中を疾走するのだった。

 と、二人が降り続けるナイトメアレインの中を駆け抜けていると、二人の前に謎の装置が設置されているのが見付かった。

 ミラーガールは早速その装置を調べてみると、それは小型の気象コントロール装置だった。

「っ? この気象コントロール装置が暴走しているみたい! しかも4つのコアで護られているみたいだわ!」

「ナイトメアレインの影響が大きくなる前に破壊してください!」

 ミラーガールよりナイトメアレインを降らせている小型の装置の存在を聞き付けたウッズは、急きょその装置の破壊を促した。

 修司とミラーガールはお互い協力し合って装置を護るコアを破壊した後、装置そのものを跡形も無く破壊した。

 すると降り続いていた二人の近辺の酸性雨はやんだ。

「雨がやみましたね……でも、おそらくその先もきっと……」

「ええ、多分ナイトメアレインがつきまとうでしょう。はっ、先に行ったみんなが危ない! 行くわよ修司!」

 ウッズとの話で先に行っている筈の聖龍隊の仲間達を気にするミラーガールに急かされ、修司も後を追う。

 道中、二人は日本皇軍に属しているスター・コマンドーの面々を救出しながら、その近辺に酸性雨を降らせている装置を破壊して無益な環境破壊に歯止めをかけた。

 

 そして修司とミラーガールは、酸性雨に負けない信念で辛うじてナイトメア調査員がいるであろう地点まで足を運んだ。

 其処にいたのは、巨大な機械仕掛けの甲羅を背負ったワニガメ型のサイボーグ獣人、レイニー・タートロイドであった。

「レイニー・タートロイド! ナイトメア調査員ね?」

「ミラーガール……噂には聞いている。同じ二次元人として尊敬する。小田原修司も、聖龍隊の総長としてこれまで数え切れない戦歴を残した武人として称賛したい」

 突然、自分達に尊敬の念を向けていると語るタートロイドの発言にミラーガールは戸惑いつつも嘆願した。

「え? あ、ありがとう……尊敬しているだなんて……なら話は早いわ。お願い、ナイトメアを止めて!」

 しかしタートロイドはこう言い返した。

「ナイトメア……じきに二次元人の未来を救えるのはナイトメアだ」

「何を言ってるの! 既に被害者は増えている一方なのよ……」

 ミラーガールの問い掛けにタートロイドは己に課せられた運命を語った。

「私には信じるしかないのだ。主の事を……私のせいで、あの方は世間から罰せられた……なのに、また私に生を与えてくれた。だから……私に与えられた使命を果たすのだ。この命にかえても……」

 しかしミラーガールも負けず劣らず訴え掛ける。

「タートロイド! あなたなら理解できる筈よ! 今、何をすべきかが」

「ミラーガール、君の言っている事は理解できるが……使命なのだ。あのお方の障害を取り除くのも私の使命……ミラーガール! もらってくれ、わが命!」

「イヤよ! 戦いたくないっ!」

 解り合っている筈のタートロイドと戦いたくない想いが強まるミラーガールに、修司が強く唱えた。

「アッコ! そんなワガママ言うんじゃない! ……タートロイドは己の信念の元、俺たちに戦いを挑み、そして命を賭けて全力を尽くすつもりなんだ。それに俺たちが応えないでどうする!? もう俺たちは戦う以外の選択肢はないんだ」

「そんなのってあんまりよ! 今までも、過去に理不尽な理由で処分された二次元人ばかりを倒してきた……もう、戦いで全てを解決するなんて悲劇はたくさんよ」

「アッコ! これが避けられない運命だ……タートロイドの意志を無駄にしない為にも、全力で戦うぞ!」

 すると、これを聞いたタートロイドは自分の運命を受け入れてくれた修司に礼を言いつつも主張した。

「小田原修司! 流石は鬼神と呼ばれるだけの事はある……そうだ、私はあの方の為にもお主らと戦う以外、道はないのだ! さあ、思う存分私に刃をぶつけるがいい!」

 そしてタートロイドはミラーガールの悲願も虚しく、二人と激戦に突入した。

 開幕、タートロイドは二人に向けて甲羅から追撃性能を有する小型ミサイルを無数に連射してきた。

「アッコ、岩場に隠れろ!」

 修司がミラーガールに声掛けすると、二人は即座に近くの岩場に身を潜めて連射される無数のミサイルから我が身を守る。

「どういう事だ!? 甲羅からミサイルだと?」

 岩場に隠れながらミサイル攻撃が過ぎ去るのを堪え凌ぐ修司の言葉に反応し、通信士ウッズがその疑問に答えつつタートロイドの説明をした。

「修司様、レイニー・タートロイドはバックシールドと呼ばれる機械仕掛けの甲羅を背負ったサイボーグ獣人です。酸性雨を物ともしない特殊合金で造られた甲羅シールドを装備していて、おそらく戦闘用に改造された為にミサイルなども有する様になったんでしょう。その甲羅に見える緑色の二つのアジャスト・コアを破壊しない限り、タートロイドにダメージを与える事は不可能です!」

「了解した、ウッズ。俺たちは、どうにかミサイル攻撃が止んだ隙にでもタートロイドに接近してアジャスト・コアの破壊に挑んでみる」

「ご武運を。それとアジャスト・コアは破壊しても、一定時間の経過で自己修復してしまう厄介な弱点なので気をつけて」

 ウッズからの説明を受けて、修司はミサイルが止んだ隙に一気にタートロイドへと急接近してコアに聖龍剣で斬り込んだ。

 すると修司の連撃を喰らって、コアは粉砕されてタートロイドに傷を負わせる状態へこぎ付けた。

 修司は此処ぞとばかりに聖龍剣を斬り付けて、タートロイドを攻撃し続ける。

「アッコ! お前も見てないでタートロイドに攻撃を仕掛けろ!」

「………………」

「アッコ!」

 タートロイドに攻撃している間、修司はミラーガールにも攻撃をするよう言い放つが、彼女はタートロイドへの攻撃を躊躇って動けずにいた。

 すると修司がコアが破壊された甲羅シールドに連続で斬り込んでいると、先ほどのウッズが説明したとおり緑色のコアは自己修復機能で元通りになり、タートロイドへの攻撃が無力化されてしまう。

「覚悟しろ」

 と、今度はタートロイドが反撃に移る。彼は身体を甲羅に収納し、甲羅に刃をつけたまま修司とミラーガールに向かって回転体当たりを仕掛けてきた。

「危ない、離れろ!」

 タートロイドからの無数の刃が施された甲羅での回転体当たりを前に、修司はミラーガールと共に後退するしかなかった。

 縦横無尽に回転しながら体当たりを仕掛けてくるタートロイドの猛攻に、修司とミラーガールは退避していく。

 そして一定時間、回転攻撃を仕掛けたタートロイドは動きを止めて、再びミサイルを連射してきた。

「そんなミサイル……!」

 無数のミサイルに対して、修司は聖龍剣から巨大な斬撃波を繰り出してミサイルを一掃してみせる。

 ミサイル攻撃が効かないと判断したタートロイドは、此処で行動を起こす。

「終わりだ!」

 タートロイドは再び身体を収納して回転攻撃を仕掛けてくると同時に、縦横無尽に体当たりしながら甲羅から特殊水弾を撒き散らして二人に攻撃する。

「っ! この水……高濃度の酸じゃないか!」

 修司は微かに衣服に接触した水弾が、服の布を溶かしたのを目の当たりにしてこれが強力な酸だとスグに判った。

「きゃあっ」

 ミラーガールも修司の言葉で、撒き散らされる水弾が酸だと知って慌てふためきながら回避していく。

 しかし酸の水弾はミラーガールの衣服を微かに溶かし、ミラーガールは困惑する。

 そして再び動きを止めて、ミサイル攻撃を再開しようとするタートロイドに修司が聖龍剣を叩き込んでアジャスト・コアを破壊する。

 だがコアを破壊されまいと、タートロイドは特殊水弾を上空に放って、頭上から強力な酸性の雨を降り注がせて修司達の行動を妨害した。

「アッコ!」「修司、コッチに来て!」

 ミラーガールの呼びかけに修司は即座に彼女の許へと駆け付けると、ミラーガールはドーム状のバリアーを展開して自身と修司の身を酸性雨から護る。

 しかし其処にタートロイドが回転体当たりを仕掛けてきた。二人に危機が迫る。

 すると修司はミラーガールが作ってくれたバリアーから飛び出して、回転体当たりを仕掛けてくるタートロイドの甲羅の上へと飛び乗った。

「し、修司……!」

 タートロイドの甲羅に飛び移った修司を見てミラーガールが愕然とする中、修司はタートロイドの甲羅の上でバランスを取りながらアジャスト・コアへと聖龍剣を突き刺して強引に破壊しようとする。

 するとタートロイドも甲羅の上に飛び移った修司を振り払おうと回転を速める。

 これには修司も耐え切れず、タートロイドの甲羅の上から振り払われてしまった。

 しかしタートロイドは修司を振り払ったのに安心したのか、回転を止めて地面に叩き付けられた修司を見下ろした。

 この時、タートロイドの弱点であるコアは破壊されており、しかもミラーガールへと甲羅が向けられていた。

「小田原修司、覚悟!」

 タートロイドは真正面の地面に横たわっている修司に向かって、巨大な手を振り翳して強烈な拳を叩き込もうとしていた。これを見兼ねたミラーガールは黙っていられず、思わずタートロイドの破壊された甲羅シールドのコアに向かって攻撃を放った。

 ミラーシールドから放たれた閃光がタートロイドのコアに直撃し、その瞬間タートロイドは野太い声を発した。

「ぐぉぉあーーっ!!」

 そしてタートロイドが背負っていた甲羅シールドは爆発し、分裂した。

「ぐあっ……し、しまった……不覚にも、後ろを取られていたか……!」

 ミラーガールに弱点である背後を取られていたのを不覚に感じたタートロイドは、苦しそうに言い放つ。

「ご、ごめんなさい……修司を攻撃されたくなくて、つい……」

 涙目でタートロイドに謝るミラーガールに、タートロイドは口元を緩めて申した。

「い、いいのだ……お主らと戦う以上、こうなる事は覚悟していた……お主らは間違ってなどおらん……己の責務を、忠実に全うしたまで。悔やむ事はない」

「そ、それよりもタートロイド……あなたの怪我はまだ浅いわ。スグに治療してあげるからね」

「そ、その必要は無い、ミラーガール……私は、主の命を全うできなかった……故に、己を待ち受けていた運命に逆らう意思は無い……!」

 するとミラーガールと対話したタートロイドは、破壊された甲羅シールドを脱ぎ捨てて、裸一貫の状態になると所持していた懐刀を取り出してその場に座り込んだ。

「……まさか!」

 その様子を見た修司とミラーガールは悟った。

「や、やめて!」

 ミラーガールが呼び止めるのも聞かず、タートロイドは自身の腹に懐刀を突き刺して割腹自殺を図った。

「我が生涯に……一片の悔い無しッ!!」

 そう叫んだ次の瞬間、タートロイドは自らの腹を割いて自殺した。

「ああ……っ」

 ミラーガールはまたしても、同胞の二次元人の命が失われた現状に深く嘆いた。

 

 そして聖龍隊本部に帰還した二人に、ウッズが改めてタートロイドについて語り明かした。

「レイニー・タートロイド、もとは水質改善チーム。強力な酸性雨にも耐えられる甲羅シールドを装備されたサイボーグ獣人で、汚染レベルAの危険エリアまでも調査可能になりました。しかし、過剰な防御能力はかえって危険視されてしまい、タートロイドの弱体化の声が高まったんです。生みの親であるエキストは反対して、罰せられました。エキストにとても忠実だったタートロイドは……責任を感じてシールドを脱ぎ捨て……自ら割腹自殺しました」

「俺たち以外にもいたんだな……サムライ魂を持つ勇士が……」

 ウッズからの話を聞いて、修司は自分たち現代の新撰組と呼ばれる聖龍隊以外にもサムライ魂を持っていた勇士の存在に感服するのであった。

 

 

 

[暗躍する者②]

 

 修司とミラーガールが共闘してレイニー・タートロイドを撃破した直後の事。

 とある秘密研究所で、またもゾディアックがエキストに報告を伝えていた。

「ご報告します! またしても調査員が倒されました。しかも……」

「解ってる、例の鬼神にやられたんだろう。死にぞこないが……三次元人とは思えない渋とさだな」

「はっ、まことにその通りで。特に、あの小田原修司は……ずば抜けた戦闘力を持っております。今の内に、手を打っておかなければ。このさき必ず、我々の障害になるかと思われます……」

「もう小田原修司に用はない。いずれ、ハイマックスが処分してくれるだろう」

「確かに、ハイマックスの能力をもってすれば、小田原修司の処分も簡単な事ですが……やはり、早めに手を打っておいた方が何かと……」

 小田原修司に対して何かしらの対抗策を案ずるゾディアックの言動を前に、エキストは若干の違和感を覚えていた。

「ゾディアック、前から気になっていたのだが……お前の小田原修司に対する拘りは、少し異常ではないか?」

「いっいえ、そんな事は……」

 ゾディアックは否定するが、そんな彼にエキストは実験の方を優先させる。

「なら放っておけ。今は死にぞこないの鬼神より、例の実験の方が先だ」

「それは分かっております。前にも申し上げましたが……計画は順調、絶大な効果が出ています。もう実験の必要は無いのでは……」

「そうか、ではそろそろ次の段階に移ってもいいな……」

 するとエキストは不敵な笑みを零して余韻に浸った。

「フフフ、これからが楽しみだな……ゾディアックよ」

「はっ」

「あの二人の聖龍隊士、念のため監視しておけ。目を離すな」

「おおせのままに」

 最後にエキストは、小田原修司とミラーガールの両名の監視を怠らないようゾディアックに伝えるのだった。

 

 その頃、修司は。

 既にミラーガールが調査員を倒したエリアにて異常反応が示された事から、そのエリアに出撃していた。

 エリアの奥地に出向いてみると、そこで修司を待ち受けていたのは。

「! ニトロ! お前か!?」

 そこで修司と遭遇したのは、あのニトロ・グリセリーノだった。

「おやおや、こいつは……本物の小田原修司、かな? ナイトメアの方じゃなくて……」

「正真正銘の俺だ! ナイトメアの方は既に倒された」

「へぇ、あんたと寸分違わず殺気立っていた、あのナイトメアの修司を倒しちゃうなんて……聖龍隊って、やっぱりおっかないな」

「そんな事よりニトロ……てめぇ、こんな所で何してる?」

「ミラーガールから聞いてないのかい? おれは今、ナイトメアソウルを集めている最中なんだよ。自分のパワーアップに使おうと思ってね」

「そんな危険な事はやめろ! 下手すりゃ、自分の身が滅ぶぞ」

「おうおう、言っちゃってくれちゃうねえ。過去に殺戮陽動プログラムを植え付けられて、正真正銘の殺戮兵器に身を落とした方の言葉は実に重い」

「………………」

「……まあ、そんな昔のこと言ってもキリがないよな? 折角だし、あんた達が収集してきたソウルも貰っちゃうぜ!」

 そう言うとニトロは有無も言わさず修司と戦闘に突入した。

 最初にニトロが修司へと攻撃を繰り出す。修司はニトロからの攻撃を、ミラーガールから返してもらった聖龍剣で受け止め、防ぐ。

 そして修司は間髪入れずにニトロへと反撃を展開、真っ向から逃げずにニトロへと攻める。ニトロはそんな修司の猛攻を防ぐ事でいっぱいだった。

 修司の剣戟にニトロは苦戦を強いられるが、ここでニトロは修司と距離を離す事に成功。そのまま一定の距離を置いたニトロは地面に向けてエネルギーを放射して、地面から凄まじいエネルギーの柱を噴き出して修司に攻撃を仕掛ける。

「ッ!」

 修司は地面から放射されるエネルギーの柱を掻い潜り、必死に避けていった。

 そんなニトロの必殺技を寸でのところで回避した修司は、一気にニトロに急接近して距離を詰めると同時に聖龍剣を構えた。

「うおおおっ!」

 そして次の瞬間、修司が振るう聖龍剣はニトロに斬り込まれた。

「うあああっ!!」

 聖龍剣が放つ斬撃の光に呑み込まれるニトロは絶叫を上げる。

 そして深手を負ったニトロは自分を追い込んだ修司に話した。

「い、いやあ、死に掛けていたって言うのに、まだそんな人殺しの力を使い放題できちゃうとね……」

「………………」

「まあ、おれの方も此処までかな? もう十分、ナイトメアソウルは集まった事だし……もう聖龍隊と関わるのもゴメンだ。と、言う訳でおれはこのまま逃げさせて貰うぜ。生きる為には逃げ延びる事も大事だかんな。それにしても修司、あんたももう少し生き延びる為の逃げの一手ってのを考えた方がいいぜ。それじゃ、また死んじまうぜ? おれはアンタと違い、生きる為に逃げ続ける……恥だと思われても良いからな。そんじゃ、シーユー!」

 ニトロは自分が生き延びる為の処世術として、再び修司の前から逃げ去るのであった。

 

 

 

[蘇る死者]

 

 ニトロ・グリセリーノを無事に撃破した修司は、一旦聖龍隊本部に帰還した後にミラーガールと共に再度出撃した。

 二人が出撃した先は、今は誰も使用していない筈のバイオ生物研究所だった。

 既にスター・ルーキーズの何名かが、先行突入している筈だが連絡が途切れており、ミラール達の安否を確認する為にも修司とミラーガールは進攻した。

「そこはバイオ生物研究所、主に二次元人の遺伝子を調べる施設です。全ての機能が停止している筈ですが、状況は?」

「それが殆どの機械や装置は稼働しているし、中には防衛システムである設備も動いているわ」

「ナイトメアの仕業ですね。こっちでは何の反応もありません。防衛システムを突破して、先へ進んでください」

 ウッズと通信機で通話するミラーガールは、ナイトメア現象で稼動している研究所の防衛システムを突破するよう指示を受けて修司と共に最深部へと突き進む。

 その道中、二人は施設の内部で戦闘をしているミラールたちルーキーズと遭遇する。

「ッ……敵の数が多すぎる!」

「コイツら一体、なんなんだ?」

 ミラールと葉月いずなが進攻先で群がる緑色の液体に包まれた敵と交戦しているところに、修司たち二人が駆け付ける。

「ミラール、大丈夫?」

「あっ、アッコおねえちゃん! 今のところは大丈夫だけど……敵の数が多すぎて進むのが困難なの」

 声をかけてきたミラーガールにミラールが戦況を話すと、それを聞いた修司が聖龍剣を抜刀して戦闘中の皆々に言い放った。

「それなら斬り進むまでだ! みんな、俺の後に続けッ!」

 修司は前方に群がる敵陣の中に突っ込むと同時に、並居る敵たちを次々に斬り捨てては道を切り開く。

「修司、一人じゃ無謀よ! 私も行くわっ」

 そんな敵陣に突っ込む修司を見て、ミラーガールも続いていった。

 そして二人が敵を倒して道を切り開いていく様を目の当たりにしたミラールたち聖龍隊士は驚いた。

「……アッコおねえちゃん、総長と息ぴったり……」

「……修司、昔はあんなに無垢だったのに……(やっぱり、昔と違って今じゃ大人になっちゃっているんだな)」

 修司とミラーガールの共闘を前にして、ミラールと葉月いずなは呆然とするばかりだった。

 そうして群がる敵を次々に倒していく修司とミラーガールによって道が切り開かれていく現状で、修司とミラーガールはある事に気付いた。

「今までの連中、過去に俺たちが倒してきた異常者(ヒール)と瓜二つだったな……」

「嫌な気分ね。また同じ敵と戦う事になるなんて……」

 修司は生物研究所で斬り捨てて行った敵たちが過去に葬られた異常者(ヒール)と同じ事に釈然としない中、ミラーガールは再び自分達が葬った敵と戦わなければならない状況に複雑だった。

 そして修司たち一行がバイオ生物研究所の最深部に迫っていた所に、金網の通路の真下に広がる特殊な培養液のプールが。

 培養液のプールの真上を通って、この廃棄された研究所の最深部にいるであろうナイトメア調査員の許に向かおうとしていると。

 なんと金網を通って、特殊培養液が膨らんで敵となって出現したのだ。

「コイツら……! そうか! この特殊培養液から生み出された敵だったのか」

 目の前に立ちはだかる培養液で構成された敵を前に、修司は驚きはしたがスグに斬りかかって始末した。

「この培養液を使って、過去に私たち聖龍隊が倒した敵を復活させて戦わせているのね……許せない!」

 ミラーガールも修司に負けず劣らず戦意をむき出しにしていた。

 

 そして修司とミラーガールを先頭にした一行は、遂にバイオ生物研究所の最深部へと辿り付いた。

 すると金網の上に立っている修司達の前に、真下の特殊培養液のプールの中で泳ぐ一体の影が飛び出てきた。

 培養液のプールの中から飛び出てきたのは、シュモクザメの姿を模した獣人タイプの二次元人だった。

「あなた! 何を企んでいるの? ナイトメアを調査してるどころか動かしている……そんな気がするわ! だいたい、なぜナイトメアの影響を受けないの?」

「ひっひっひっ、素晴らしいDNAを持っているじゃねーーか? あんたのDNAデータ、解析したいものだね」

「あなたはバイオシャーク・プレイヤー、そうなんでしょ?」

「そんな事はどうでも良いじゃねぇか? もらうぜ! あんたのDNA!」

 ミラーガールと会話したナイトメア調査員、バイオシャーク・プレイヤーは彼女のDNAを欲しがって攻撃を仕掛けてきた。

 プレイヤーは培養液のプールを泳いでミラーガール達に接近して襲い掛かってくるが、それを見越して修司が戦前に出る。

「落ちろ!」

 プレイヤーはプールから大ジャンプして修司目掛けてハンマーの形状をした頭部を真下に落下して頭突きしてきた。

 プレイヤーの頭突き攻撃を、修司は聖龍隊でも秀でる己の石頭で受け止め抵抗するが、両者は互いの頭の固さに悶絶してしまう。

「シャーーシャッシャ……な、なんて石頭だ」

「それはコッチの台詞だぜ。流石はハンマーヘッドシャークをモデルにされているだけの事はあるぜ。頭の固さもハンマー並だな」

 プレイヤーが修司の意外な頭の固さに驚く中、修司はプレイヤーの金鎚並みに硬い頭を称賛する。

 そんなプレイヤーと石頭勝負を展開した修司にミラーガールが駆け寄る中、プレイヤーは修司に言い放った。

「シャッシャッシャ、小田原修司か……てめぇのDNAデータはもう必要ねえんだよ、用済みなのさ! オレが欲しいのは如何なる二次元人にも変身できるミラーガールのDNAなんだ!」

「誰がお前にDNAのデータを渡してやるもんか! 好き勝手にはさせないぞ!」

「シャッシャッシャ、そう粋がるなよ……オレはこう見えて調査員の中では知性派なんだ。だからお前達が最も苦戦する心理戦を展開してやるぜ!」

 修司と会話したプレイヤーはそう言うと、眼光を鋭くさせて言い放つ。

「いでよ! ストーム・イーグリード!」

「なにっ!?」

 突然のプレイヤーの叫びに、修司は愕然とした。ストーム・イーグリードは過去に仲間であるマン・ヒールズによって倒された筈の異常者(ヒール)だったからだ。

 すると修司達の足元に広がる培養液のプールの中から、培養液で構成されたストーム・イーグリードが飛び出してきて修司達に向けて突風を撃ってきた。

「そんなっ! イーグリードが、なぜ!?」

 吹き荒れる突風の中、ミラーガール達が困惑していると修司が状況を解析した。

「おそらく過去に葬られた二次元人のDNAデータを用いて、培養液の中から死んだ二次元人を召喚できるんだろう……!」

 修司はプレイヤーが過去に死んだ二次元人のDNAデータを用いて、葬られた敵を再生させる形で召喚しているのだろうと推測する。

 その修司の推測は正しく、プレイヤーは続々と過去に死んでいった二次元人を蘇らせる。

「まだまだ行くぜ! ……いでよ! スティング・カメリーオ!」

 すると培養液の中から、これまたマン・ヒールズに倒されたスティング・カメリーオが再生されて、修司達に向けて長い舌を伸ばして攻撃してきた。

「くそっ」

 修司は伸びてきた舌を聖龍剣で切断すると、カメリーオは姿形を崩して培養液に戻った。

 しかしプレイヤーはまだまだ培養液から過去の敵を再生させて攻撃を仕掛けさせる。

「まだ行くぜ、いでよ! フロスト・キバトドス!」

 すると培養液が巨大に膨れ上がり、それがフロスト・キバトドスへと姿を変えて培養液から巨大な塊を発生させて修司達に向けて放り投げられた。

「ッ!」

 修司は投げ付けられた培養液の塊を聖龍剣で一刀両断にして攻撃を防ぐ。

 こんな過去の敵を押し付けられる戦況に、ミラーガールとミラールが文句を言った。

「昔、私たちが倒してしまった敵たちを再生させて戦わせるなんて……」

「ホント、あのバイオシャーク・プレイヤー、ちょっとズルくない?」

 プレイヤーのやり口に二人は呆れながらも怒りを覚えた。

「お前らの事は調査済みだ……過去に自分が葬った敵に殺されろ!」

 すると此処でプレイヤーは彼女達が最も苦心するであろう敵を召喚した。

「いでよ! ブラッド! シャイニング・ホタルニクス!」

 すると培養液の中から、ミラールの師匠でもあり初恋の相手でもあるブラッドと、ミラーガールが苦心の末に倒したシャイニング・ホタルニクスが現われた。

「「!!」」

 ミラーガールとミラールは目の前に現われた二人に驚愕した。

 そしてブラッドは武器であった大鎌を構えて、ホタルニクスは光線を直射して攻撃してきた。

 ミラーガール達は苦心しつつも、武器を構えて応戦する姿勢を向けた。そしてミラーガールはホタルニクスの光線をミラーシールドで跳ね返して反撃し、ミラールは躊躇う事無くブラッドに向けて銃口を向けて撃った。

 二人の反撃を受けて、ブラッドとホタルニクスは培養液へと戻った。

「っ……!」

「……また倒す事になるなんて。バイオシャーク・プレイヤー! これ以上、あなたの卑劣な戦法は許さないわよ!」

 ミラールが落胆する中、ミラーガールは戦いたくない相手と戦わせるプレイヤーの戦法に怒りを感じて言い放つ。

 だがぷプレイヤーは独特な笑い方で返事した。

「シャッシャッシャ、だから言っただろ? オレは知性派だって。意味なく戦うよりも、相手の戦意を揺らがせる戦法の方が性に合っているんだよッ」

 そんな卑劣な戦術を用いるプレイヤーに、修司も微かに怒りを覚えていた。

「みんなが苦しんだ末に倒した敵を利用するとは……だが、それも此処までだ! 行くぞ、バイオシャーク・プレイヤー!」

 そう叫んで修司がプレイヤーに急接近して斬り込もうとすると、危険を察知したプレイヤーが慌てて召喚したのは。

「い、いでよ! ……カール、エリーゼ!」「!!」

 プレイヤーが召喚した過去に葬った敵の名に驚愕する修司。

 そして修司の前に現れたのは、かつて聖龍隊と敵対してしまったJフォースのカールと、その婚約者でもあった猫の獣人エリーゼだった。

「……!」

 いくら緑色の培養液から派生した偽物とはいえ、二人の姿を前にした修司は愕然として身動きできなかった。

「し、修司!」

 身動きできない修司にミラーガールが声をかける。すると次の瞬間、修司は聖龍剣を素早く抜刀して突きの構えに入った。

「はあァッ!」

 そして修司は向かってくるカールとエリーゼの姿を模した培養液に突撃。修司の鋭い突撃は、カールとエリーゼの二体を通過し、刃がプレイヤー本人の胸部を突き刺していた。

「ぐおっ……ああ……」

 修司の突撃で聖龍剣を胸部に突き刺されたプレイヤーは、傷口から血を噴き出して苦しみ出した。

 そして修司はプレイヤーから聖龍剣を抜くと後ろに下がり、プレイヤーと距離を置いた。

 一方のバイオシャーク・プレイヤーは胸部への一撃が急所となり、絶叫を上げた。

「死ぬのか~!!」

 そう叫ぶとプレイヤーは培養液のプールへと落下して、その中で爆発・消滅した。そして今までの如く、ナイトメアソウルが出現し、ミラーガール達によって回収された。

「ど、どうにか勝てたみたいね。やったわね、修司……?」

 ミラーガールが過去に自分達が葬った敵対した二次元人と再戦させられた戦況を突破して、プレイヤーを撃破した事を喜び合おうとするが修司は一人その場で膝を着き、落胆している様子だった。

 聖龍剣で我が身を支えながら悔やみの表情を浮かべる修司の様子を見て、ミラーガールは気付いた。修司が過去に己の手で葬ってしまった戦友であるカールと、その婚約者でもあり同時に修司に淡い恋心を抱いていたエリーゼの二人に再び刃を向けてしまった事に深く落胆している事に。

 ミラーガールはカールとエリーゼに再び刃を向けて倒してしまった修司の苦心を察して、背後から優しく修司を抱き締め、彼の苦心を和らげてあげる事しかできなかった。

 そんなミラーガールと修司の二人を見て、ミラールと葉月いずなはバイオシャーク・プレイヤーが仕掛けた辛い心理戦に苦しめられた二人を見守る事しかできずにいた。

 

 そして辛くもバイオシャーク・プレイヤーとの戦いを乗り越えた修司とミラーガール一行が聖龍隊に戻ると、ウッズが彼女達が倒したバイオシャーク・プレイヤーについて語り明かした。

「バイオシャーク・プレイヤー、もとは遺伝子研究チーム。処分された二次元人の遺伝子を研究し、次世代に引き継げないかを研究してました。そして最も大切なのは、異常者(ヒール)のDNAデータの解析と管理。彼はDNAの解析能力に優れ、遂には不完全な遺伝子情報から死んだ二次元人を復活すなわちクローンできるまで研究が進みました。ですが、皆さんもご存知の通りクローンは国際法で厳しく取り締まられているので、条例違反でまもなく処分されてしまいました。エキストもDNAデータの復活に興味があったみたいで、彼を止めるどころか唆してDNAデータを集めさせたと言われてます……エキストが彼を止めていれば、こんな事にはならなかったのですが……」

 

 

 

[堅牢なる盾]

 

 休む事を知らない修司の行動に、ミラーガールも心変わりする事無く現場についていく。

 今度、二人が向かったのは謎のレーザー研究所だった。

「そこはどうやらレーザー研究所のようです。公式に登録されてないので、詳細なデータがありません」

「ナイトメアに侵されているのは目に見えている。とにかく先へ進む」

 現場に到着した修司は、通信でウッズに先へと進攻を開始すると伝えると即座にミラーガールと共に研究所最深部へと向かう。

 その道中、二人は先に研究所に進攻していたマン・ヒールズの面々と遭遇した。

「あっ、ミスティーハニー! それにマン・ヒールズのみんな、無事だったのね」

「ミラーガール……それに修司まで。あなた達もこのレーザー研究所に潜入したのね」

 ミラーガールの問い掛けにマン・ヒールズ指揮官のミスティーハニーが答えると、二人はそのまま会話に入った。

「どうしたんです? こんなところで立ち往生して……」

「そ、それが……この先に進むには、道を塞いでいる壁をどうにか開かなきゃならないみたいなんだけど、どうしても空かなくて……」

 と、ミスティーハニーが困惑した表情で話していると、それを聞いた修司が聖龍剣を抜刀してマン・ヒールズに言った。

「よし、みんな退いてろ! 俺が防壁を破壊してみせる!!」

 修司は聖龍剣から斬撃を飛ばして防壁を破壊しようと試みるが、修司の破壊力でも防壁を突破するのは不可能だった。

「チッ、ダメか……」

 悔しがる修司だったが、その間ミラーガールは正攻法で壁を開かせる方法を探していた。

 するとミラーガールは、壁のすぐ近くに設置されているレーザー装置と鏡に気付いた。更に壁にはレーザーの光を受け止める反射鏡が設けられている事実にも気付いた。

 レーザー装置と鏡、この二つを用いれば。そう思ったミラーガールはみんなに協力してくれるよう頼み掛けた。

「みんな! このレーザー装置の作動と鏡の角度を変えるの手伝ってくれる?」

 ミラーガールの要望に現場の皆々は素直に指示を受けて、鏡の角度を微調整した。

 そしてレーザー装置を作動させて、レーザーを発射すると直射する光が鏡に曲げられて角度を変えていき、最終的には防壁の反射鏡に直射された。すると防壁は床へと収納されて通路が出現した。

「やったわ!」

 ミスティーハニーたちマン・ヒールズが歓声を上げる中、ミラーガールと修司は先へと急いだ。

「おい、喜んでいる場合か? 先に行くぞ」

 修司がマン・ヒールズに言い残して先へと急ぐのを目撃し、マン・ヒールズも急いで二人の後を追った。

 するとその先にも、先ほどのレーザー装置と鏡の仕掛けが待ち受けており、一行は協力しながら光の反射を計算しながら鏡の角度を微調整していく。

 この時、殆どの面々が鏡とレーザーの反射に頭を悩ませていたので、鏡に詳しいミラーガールに手助けしてもらいながら仕掛けを解いていった。

「鏡の反射角度ぐらい、自分達で考えてほしいわ」

 ミラーガールはレーザー装置と鏡の仕掛けの謎解きに少しは頭を使って欲しいと愚痴を零す始末。

 そんなこんなで一行は、レーザー研究所の最深部へと到達した。

「そのエリアの調査員はシールドナー・シェルダンです」

「シールドナー・シェルダン!? まさか……生き返ったの?」

「本当に生き返っているなら、一言謝らなければならないな」

 通信士のウッズから調査員の名を聞いたミラーガールと修司は、申し訳無さそうな表情を浮かべる。そんな二人と同じく、名を聞いたマン・ヒールズの門脇将人は後悔の念に押し潰されそうな悲痛な表情を浮かべていた。

 

 そして一行が研究所の最深部に突入すると、そこには話にあった二枚貝型の二次元人シールドナー・シェルダンが聖龍隊を待ち受けていた。

「シールドナー・シェルダン! やはりあなたなのね……!」

「……如何にも」

 ミラーガールが問い掛けると、シェルダンは落ち着いた様子で返事した。

「あの事件に関しては、本当に申し訳ないと思っています」

「その通りだ。まさか聖龍隊士が異常者(ヒール)とそうでない二次元人を区別できないとは……本当なら、俺の首が飛んでもおかしくなかった」

 ミラーガールと修司はシェルダンに向かって誠心誠意の本心から謝罪を述べた。するとシェルダンは気落ちする聖龍隊に向かって真顔で申し返した。

「……気にするな、ガードとしての役目を果たせなかっただけだ」

 すると此処でミラーガールは、自分たち聖龍隊が仕出かした過ちについてシェルダンに申し訳無さそうに語った。

「あなたは、博士を御守りした。博士が異常者(ヒール)化したのを前に、あの場で処分するしか無かったんでしょ? それを門脇君が勘違いして、あなたを異常者(ヒール)と見做してしまって。あなたを……自害に追い詰めた……取り返しのつかない事になって……」

 シールドナー・シェルダン。各種研究機関の所長等の警護にて、抜群の働き振りを見せ高い評価を受けていた。 彼自身も護衛としての強い責任感と、それに恥じないだけの冷静さと判断力を持ち合わせた誇り高い人物であった。しかしジム博士という要人の警護にあたっていた際、そのジム博士が異常者(ヒール)化して暴走。シェルダンは冷静に状況を判断して博士をその場で処分という正しい行いをした。だが、そこに運悪く駆け付けた聖龍隊士の門脇将人が目撃して、シャルダンが博士を殺害した異常者(ヒール)だと見做してしまう。結果、責任感の強いシェルダンは異常者(ヒール)と認定された事で自害してしまった。後にシェルダンの無実が発覚したが、時既に遅かった。

 そんな過去を犯してしまった門脇将人は、シェルダンに向かって地べたに頭を擦り付ける様に謝罪し始めた。

「ホントに済まなかった!! 俺が……俺が見誤らなかったら、あんたを自害に追い詰める事はなかった! 全部、俺の責任だ……!」

 己の過ちに心から謝罪する将人は、何度も頭を床に叩き付けながらシェルダンに謝った。

 するとシェルダンは将人に申し付けた。

「……頭を上げてくれ、門脇将人くん」

「……!」

「あれは私の務め不足が引き起こしたミスだ。君は聖龍隊の隊士として、然るべき処置をしたまで。あくまで原因は任務を果たせなかった自分にある。だからそんなに謝らないでくれたまえ」

 あくまで任務を果たせなかった自分に原因があるとして、シェルダンは将人たち聖龍隊を恨んでいない事を皆に告げた。

 だが、彼は本心を曝け出して聖龍隊に戦意を向けた。

「博士の異常者(ヒール)化を防げなかった……結果、博士を護れなかった。それが私のミスだった。しかし今度こそガードとしての使命を全うするつもりだ。あのお方は……再び私にチャンスをくださったのだ……命にかえても、あの方をガードする! 来いっ! 聖龍隊!」

 するとシールドナー・シェルダンは自身の特殊能力である瞬間移動を駆使して、瞬時に姿を消して違う場所から攻撃を仕掛けてきた。

「シールドスロー」

 シェルダンは自分の左右に装備している二枚貝型のシールドを投げ付けて、聖龍隊を攻撃。

「シールドのブーメランなら、私だって得意よ!」

 そう言ってミラーガール自身もミラーシールドを投げ付けてシェルダンに応戦。両者のシールドは空中で激しく火花を散らしてぶつかり合う。

 そして双方のシールドが互いに弾き合い、お互いの手元に戻るとシェルダンは貝型の盾の表面を鏡面の様に光らせて其処から自らの分身を生み出して戦闘を展開する。

 シェルダンとその分身は互いに向き合った状態で堅牢なる貝型の盾を投げ付けてきた。修司はシェルダンが盾をブーメランの様に投げてきたのを見切り、その隙に無防備になったシェルダンへと斬りかかった。

 だがシェルダンは特殊能力の一つでもある瞬間移動で修司からの剣戟を回避し、皆の頭上に浮遊しては其処で返ってきた盾を受け止める。

 接近してもスグに瞬間移動で距離を保つシェルダンの戦法に苦戦する修司と将人。

 するとシェルダンにミラーガールがミラーシールドからエネルギー弾を発射して砲撃。しかしシェルダンは彼女の砲撃を貝型の盾で防いでみせる。

 そんな堅牢なる守りを見せるシェルダンは、修司達を見下ろしながら言った。

「甘いな」

 するとシェルダンの周辺にエネルギーシールドが四つ生み出され、展開された。

 このエネルギーシールドを破壊しようと、修司や将人それにミスティーハニーが刃でシールドに攻撃。しかし攻撃を受けたエネルギーシールドは、反撃としてエネルギー弾を放ってきた。

「逃がさんよ」

 それに四つのエネルギーシールドを展開したまま、シェルダンは地上を駆け巡る修司達に急接近して追い詰める。

 だが修司は凄まじい突きの一撃をシェルダンが張るエネルギーシールドに突き出して、強引にエネルギーシールドを突破。

 その凄まじい聖龍剣での突きに耐え切れず、シェルダンは後方の壁まで弾き飛ばされてしまう。

「ま、まだまだだ……!」

 しかしシェルダンの戦意は失せる事は無く、今度はシェルシールドを部屋全体に展開して、その盾に隠れてしまう。

 するとシェルダンは至る箇所のシェルシールドを転々と移動しながら、地上の修司やミラーガール達に体当たりを仕掛ける。

 シェルダンのこの猛攻に修司達は回避するのが精一杯で、懸命にシェルダンの特攻を避けていった。

 修司はシェルダンの移動手段である貝型のシールドを破壊しようと刃を振るったが、盾に攻撃した途端、機械仕掛けの盾からなる性能なのか反撃を受けてしまった。

 シェルシールドからの反撃を受けて、片膝を着いてしまう修司にミラーガールが駆け寄り肩を貸してあげようとするも、修司は軽く彼女の手を振り払い、自力でシェルダンに攻撃を仕掛けようとする。

 そして修司の凄まじい聖龍剣からの突きをシェルダンはシェルシールドで防御し、その度に修司はカウンターで反撃を受けてしまう。

 満身創痍になりながらも、修司は決して諦めずシェルダンの堅牢の盾に何度も何度も聖龍剣で突いた。

 その激しい修司の猛攻に防御しているシェルダンも、周りで見守っているミラーガールや将人たちも、その凄まじさに言葉を失ってしまってた。

 すると此処でシェルダンのシェルシールドに変化が。なんとシェルシールドの何度も突きを受けた箇所がひび割れ、亀裂が入ってしまったのだ。

「こ、これは……!?」

 驚愕し困惑するシェルダン。そんな彼に修司が言い切った。

「ちりも積もれば山となる……何度も突いた甲斐があったぜ」

 修司は堅牢な盾であるシェルシールドに確実にダメージを蓄積させる為、何度も諦めず同じ箇所だけを狙って突いたのだ。

 そして修司は最後の攻撃と言わんばかりに、全力でシェルダンに聖龍剣で突っ込んだ。

「うおおおーーッ!」

 修司の咆哮と共にシェルダンに聖龍剣が迫る。

 そして次の瞬間、シェルダンが構えるシェルシールドに直撃した聖龍剣は盾を貫通し、シェルダンの本体をも貫いた。

「ぐっ……断じて……!!!」

 だがシェルダンは最後まで警備の任務を果たそうとする彼らしい断末魔でナイトメア調査員とての任務を終えた。

 

 シェルダンのナイトメアソウルを回収し終わった修司とミラーガール一行は、聖龍隊本部でウッズからシェルダンの過去について改めて聞かされた。

「シールドナー・シェルダン、もとはセキュリティーポリス。エネルギー研究所の要人であるジム博士のガードにあたっていました。しかし突然ジム博士が異常者(ヒール)化、彼はやむなくジム博士を処分、常に冷静でした。ですが、その場に駆け付けた門脇将人さんがシェルダンを異常者(ヒール)認定してしまいました。シェルダンは耐えきれず……その場で、自害しました」

 

 聖龍隊は常日頃から異常者(ヒール)を倒さなければならない職務。その職務から、時には起きてしまう誤認逮捕や誤認に寄る異常者(ヒール)認定は決して少なくはない。

 修司達は改めて、同じ人を異常者(ヒール)と判断し、そして処分しなければ成らない己の重責について深く考えたという。

 

 

 

[問題児]

 

 レーザー研究所でのナイトメア調査員を撃破した修司とミラーガールは、次に今では完全に破棄された筈の兵器開発所に赴いていた。

 しかし二人が兵器開発所に到着した途端、二人を巨大な戦闘ロボが待ち受けていた。

「なんだ、あのバカでかいロボットは!?」

「其処の開発所で造られたイルミナと呼ばれている戦闘用ロボットです! ナイトメアの力で暴走しているみたいです、急いで動力炉を破壊して停止に追い込んでください!」

 一目見て、その巨大な暴走するロボットに驚愕する修司達に、ウッズはその開発所で開発された巨大機動兵器「ビッグ・ジ・イルミナ」を破壊する為に動力炉を壊す事を提案される。

 確かに巨大な機動兵器イルミナを直接破壊するのは困難。まずは機能停止させる為に動力炉のコアを破壊しなければならなかった。

 修司とミラーガールは開発所の内部を進行しながら、所々に在る動力炉の破壊に移る。

 しかし動力炉を破壊している間にも、周囲からナイトメアウィルスが出現し、迫ってくるという危険が伴っていた。

 修司が動力炉を破壊している最中、ミラーガールが近付いてくるナイトメアウィルスやイルミナが放ってくる光線をミラーシールドで撥ね返して修司を全力で補佐していった。

 最初の動力炉が無事に破壊されると、修司とミラーガールは即座に次の動力炉へと向かった。

 そんな懸命に動力炉を破壊して暴走するイルミナを停止させようとする二人の許に、キューティーハニーとちせの二人が駆け付けてきてくれた。

 二人と合流した修司とミラーガールは、協力し合って急ぎイルミナに動力を送る動力炉の破壊へと進攻する。

 そして四人は苦戦の末、どうにか全ての動力炉を破壊してビック・ジ・イルミナを停止させる事に成功。

 イルミナが崩壊する騒音が耳に入りながら、四人はナイトメア調査員が待ち受けているであろう開発所の最深部前に到達した。

「その先にいると思われるナイトメア調査員は、元そこの開発所でテストパイロットを勤めていたインフィニティー・ミジニオンです」

 ウッズから調査員について説明されると、四人は最深部へと突入した。

 

 兵器開発所の最深部、そこには先ほど四人が破壊に成功したビック・ジ・イルミナの頭部を始めとする瓦礫の山が築かれていた。

 すると四人の目前、その上空から無数の泡が発生して、その泡が集まったと思ったら中から一体の昆虫人型の二次元人が現われた。

 彼こそナイトメアウィルスの力でビック・ジ・イルミナを暴走させてたミジンコ型の二次元人インフィニティー・ミジニオンであった。

「……なんか来たよーー、メンドーだなーー」

 ミジニオンは子供っぽい癖のある口調で面倒臭そうに此処まできた面々を見下ろしていると、ミラーガールがミジニオンに問い詰めた。

「インフィニティー・ミジニオン、ナイトメア調査員ね?」

「なんか苦手なタイプが来たよ……他の調査員がイケてないから……あ、ああん? もしかして……大事な大事なイルミナちゃん壊しちゃったとか?」

 と、ここでミジニオンは自分が暴走させてたイルミナが破壊されているのに気付いた。そんなミジニオンに修司が平然と言った。

「あのでかいだけのオモチャなら、俺たちでとっくにガラクタにしてやったよ」

 これにミジニオンは癇癪を起こした。

「ちょっとマジ勘弁! あれ、まだテスト中だったのに! もう怒った、こうなったらお前らみんなぶっ殺してエキスト様に褒めてもらおうっと!」

 大事な巨大機動兵器「ビック・ジ・イルミナ」を破壊されたミジニオンは、怒りの矛先を修司とミラーガール達に向けた。

 と、ここで先制攻撃としてキューティーハニーとちせがミジニオンに攻撃。すると攻撃がミジニオンをすり抜けたと思われた矢先、ミジニオンの体が分裂して二体へと増えた。

 ミジニオンはダメージを受けるとインフィニット・スケープと呼ばれる能力でスケープゴートすなわち分身を出現させるのだ。

 攻撃された二体のミジニオンは自身の身体を構成する物質・ルシフェラーゼを展開し、それを複数生み出してミラーガール達に纏わり付かせる。

「くそっ」

 修司が聖龍剣を振り回すも、泡状のルシフェラーゼを斬る事は難しく、そんな状況でもミジニオンは絶えずルシフェラーゼを生み出し続ける。

 そんな困惑する地上の面々を尻目に、空中浮遊するミジニオンは更に追撃する。

「やれぇ!!」

 ミジニオンは発光性の特殊物質を追尾レーザーとして抽出し、発射。その追尾レーザーは一度だけ直角に曲がってキューティーハニーに直撃する。

 更にミジニオンの追撃は終わらない。

「ほっほーーぅ!!」

 今度はレーザーを八方に拡散・放射して地上の面々を攻撃。しかしミラーガールだけは鏡の盾を構えていた為、レーザーを撥ね返してミジニオンに直撃させた。

「あーーはぁーー!!」

 自分の攻撃を跳ね返されて当てられたミジニオンは叫びながら壁へと激突した。

 これを見た修司がミラーガールに言った。

「アッコ! ミジニオンの攻撃は地味だが厄介だ。撥ね返せる攻撃は全て弾き返せ!」

 修司はミジニオンからのレーザー攻撃を出来るだけ撥ね返す様にミラーガールに言いつけた。

「行っけぇーー!!」

 すると其処にミジニオンが再び追尾レーザーを発射して攻撃。だが今度は皆、容易く避けてミジニオンに反撃を展開する。

 しかし反撃を受けるミジニオンは、肉体にダメージが積み重なると同時に分身を生み出して、皆の頭上に大量の分身体を出現させる。

 修司達が分身と見分けがつかないミジニオンの本体を探している中、本物のミジニオンは瞬間移動して皆の頭上その最も高い位置に出現した。

 すると瞬間移動した即座に、ミジニオンは地上へと落下し、落下と同時にレーザーを射出。上空から無数のレーザーを降り注がせる。

 上空からの無数のレーザーに対して、ミラーガールは自分と仲間達を守る為にミラーバリアーを展開。すると彼女が張ったバリアーに弾かれて、レーザーは撥ね返りミジニオンへと喰らってしまう。

「あーーはぁーー!!」

 またもカウンターで大ダメージを受けたミジニオンは壁へと激突。

 しかしミジニオンは負けじと再びルシフェラーゼを展開して修司達の頭上を埋め尽くした。

「やれぇ!!」

 再びミジニオンは直角に曲がるレーザーを射出して、ちせを狙うが彼女は容易くそのレーザーを回避する。

 しかしこの時、頭上を覆い尽くすほどまで増加してしまったミジニオンの分身で、本体が何処なのか識別するのが困難になっていた地上の面々。

 ミラーガールはミジニオンの攻撃を撥ね返すことに専念し、キューティーハニーとちせは頭上を飛び交うミジニオンの分身に惑わされていた。

 だが修司だけは冷静に、息を潜めてミジニオンの気配を探っていた。部屋全体に飛び交う分身体、しかし本物のミジニオンの子供っぽい口調からの言動を修司は聞き逃さず、多くの分身の中に潜むミジニオンの気配を感じ取ろうとしていた。

 そして次の瞬間、修司は多くの分身の中に紛れるミジニオンの存在を察して殺気立ち、抜刀した。

 修司は抜刀した聖龍剣を槍投げの要領で投げ飛ばして、上空に浮遊していたミジニオンの本体へ突き刺した。

 ミジニオンに聖龍剣が突き刺さった瞬間、彼の分身は全て消滅した。

「何すんだよぉーーっ!」

 そう子供っぽく叫びながら、聖龍剣が体を貫通したミジニオンは消滅した。

 そしてミジニオンが消滅すると、ミラーガールの手元にナイトメアソウルが舞うように落ちてきて回収された。

 こうして一同は多くの分身に惑わされながらも、インフィニティー・ミジニオンを撃破したのであった。

 

 聖龍隊本部に帰還した一同は、ウッズからミジニオンが如何に問題視されていたか改めて聞かされた。

「インフィニティー・ミジニオン、もとは大型ウェポンのテストパイロット。高速処理の可能な得意な体を持っていました。その為テストプログラムを無視して自らの勝手なカリキュラムで実験をこなしていきました。確かに優秀な成果を出しました……でも他のスタッフとのトラブルが絶えず、生み出したエキストも頭を痛めていました……ある日、実験の事故を装って処分されてしまいました……」

 

 

 

[悪夢の正体]

 

 最後のナイトメア調査員インフィニティー・ミジニオンから回収されたナイトメアソウルが聖龍隊本部に運び込まれ、ウッズを始めとする調査班がナイトメアについて調べ上げていた。

 そしてウッズ達がナイトメアについて回収されたソウルを念入りに調べた数時間後、ウッズは衝撃的な事実を発見する。

「分かりました……ナイトメアの正体が……!」

 ウッズの一言に、彼の許に集結していく多くの聖龍隊士。誰もが二次元人を狂わせる謎のナイトメアについて知りたかったのだ。

 そして修司やミラーガールたちHEADも集まった所で、ウッズがナイトメアの正体について説き出した。

「ナイトメアは、人工的に作り出されたウィルスです。二次元人にとりつき、遺伝子や思考などの情報を……著しく変えて、狂わせてしまう。場合によっては、その強力な力で外見自体を変えてしまう事もあるようです。まだ完全に解析できた訳ではないので、その辺りは全く分かっていません。ですが、ここまでは異常者(ヒール)化とほぼ変わりありません」

「ええ……ほとんど同じね」

 ウッズの説明から、ナイトメアウィルスが人工的に作り出された代物で二次元人の思想や容姿を著しく変えてしまう異常者(ヒール)化と変わりない事を聞いて、ミラーガールが返事する。そしてウッズは更にナイトメアウィルスについて語り続けた。

「ナイトメアウィルスの本当の恐ろしさは、これからです。とりつかれた事によって暴れ出したように見えるナイトメア現象……ですが、あるコードを入力し、特殊な電波を流せば自由に操る事が出来るんです。つまり、ナイトメアの本当の狙いは……二次元人の滅亡ではなく、二次元人を支配する事だったんです……!」

 なんとナイトメアウィルスは二次元人を滅亡させる為の代物ではなく、実際は支配下に置く為に作り出されたウィルスである事を聞かされ愕然とする一同にウッズが付け足した。

「それともう一つ、とりつかれた二次元人が思考を書き換えられる時……耐えきれず死んでしまう場合があるんです」

 そしてナイトメアウィルスに感染した二次元人の中には自害してしまう症状は、その二次元人の思考を書き換える際に耐え切れず死んでしまうからだと説くウッズ。

「通常のウィルスなら一緒に消滅するはずが、とても強力なエネルギーを持つナイトメアは、二次元人が死んでしまった後でも単体で生き延びる事が可能です。ただ、あまりにもエネルギーが強力すぎて、特別なワクチン無しでも直接ダメージを与える事が出来ます。そう言った意味では、通常の異常者(ヒール)ウィルスやメカルスウィルスよりも、駆除するのは簡単かもしれません……」

 エネルギーが強すぎて、実体を持つようになったナイトメアウィルスは、通常のウィルスよりも駆除が簡単だとウッズが告げると、ミラーガールが不安に満ちた表情で問い掛けた。

「一体だれがこんな事を……」

 この質問に、ウッズは悲愴な面持ちで語り出した。

「こんなものを作り出せるのは……彼しかいません……むかし私の同期で、共に勉学に励んでいた……エキスト……エキスト・ラ・ドリックス……」

 ウッズはここでミラーガール達が倒してきた調査員とエキストの関わりを明かしていった。

「あの調査員達……8人の二次元人は、姿形が全く変わってしまった者もいましたけど……昔エキストが生み出した二次元人……とても強力な二次元人だったので誰かが利用していると思っていたんですけど……ナイトメアの高度な遺伝子情報を考えると、彼以外ありえません」

「そのエキストは、なぜこんな事を?」

 再度ミラーガールが問い掛けると、ウッズは悲愴な面持ちで答えた。

「それは私がエキストと同じ、二次元人研究チームにいた頃の事……」

 ウッズは辛そうな悲痛な顔で昔の出来事を話してくれた。

「彼の生み出す二次元人たちは、全て優秀でした。彼以外では解析できないほどの高度な情報が使われて、その働きは想像を超える成果を収めました……ですが、その能力の高さは危険だと考えられ始めたんです。そんな中、課題を無視して危険な行動をとるような二次元人も出てきて、エキストの評価は下がっていってしまったんです。それでもエキストは自分の実力を認めてもらうため、さらに高度な特殊能力を持つ二次元人を生み出し続けました。もちろん、上司の命令を無視してまで。そしてある日、事故と見せかけて彼の生み出した二次元人達は、処分されてしまいました」

 エキストに生み出された多くの二次元人が事故に見せかけられ、処分されていった経緯を語るウッズは最後にこう付け加えた。

「上司や上層部の命令でした。その時、私も何体か……」

 そう、ウッズ自身も何体か。あのヴォルファングの様に処分してしまった二次元人もいると告白した。

「そんなに危険だったっていうの?」

 ウッズからの昔話を聴いて、そんなにエキストが生み出した二次元人が危険な存在だったのかミラーガールが問うと、ウッズは悲愴な面持ちで答えてくれた。

「いいえ……そんな事はありませんでした。ただ、彼の作り出したプログラムやデータが高等すぎたんです。解析出来ない部分が多くて、使用するのが難しかったんです」

 この話を聞いたミラーガールは驚愕した。

「それだけの事で? ……私達の能力だって、未だに解析出来ない部分が多いのに……」

 事実、聖龍HEADだけでなく多くの聖龍隊士の能力者にも解析できない未知の部分があるというのに、処分された顛末に驚く彼女にウッズは言った。

「時代が、時代だったのもありますが……」

 その昔、謎の多い未知なる能力者は危険視されて排除される時代だったと説く悲しげなウッズは、更にミラーガール達HEADに衝撃の事実を告白した。

「言いにくいんですけど……彼は最強と呼ばれる聖龍HEAD……あなた達を目指していたんです」

 エキストが目指していたのは、最強の戦力である聖龍HEADであったと説くウッズ。

「究極の二次元人が簡単に解析出来るようなものでは、まだニセモノだ、って……」

 そんなHEADに近い存在である二次元人を構成する思想概念は、簡単に解析されるようでは偽物でしかないと思い込んでいたエキスト。

「だから彼が作ったデータは、誰にも解析出来ないほど高度なものになっていきました」

 エキストが拵えたデータや思想概念は、他者が見れば高度な為に理解されにくいものだったとウッズは語った。そしてウッズはエキストの顛末を皆に話した。

「私なんかより、遥かに優秀だったのに……課題をそつなくこなした私の方が評価されて。エキストの実力は、誰にも認められる事はありませんでした。それからエキストは孤立していき、こう言い残して去っていきました。「必ず見返してやる。自分の実力を理解出来ない下等な二次元人を、全て支配してやる!」って」

 そんな野心をウッズに告白したエキストの真の目的、それは。

「彼の認める高度な特殊能力を持った二次元人だけで理想郷を創る。それが彼の野望なんです……」

 エキストが認める高度な特殊能力を持つ二次元人だけの理想郷を築き上げる、その野望を叶えるための代物こそナイトメアウィルス。

「ナイトメアはまさに、彼の実力を理解出来なかった者たちへの復讐! 彼の憎しみの心、そのものなんです!」

 そんなナイトメアは、エキストを理解してやれなかった者たちへの復讐の権化であり、エキストの憎しみの心そのものだとウッズは説いた。

 

 ウッズの説明を聞いて、聖龍隊の多くが口を閉ざしてしまった。

 周りから理解されない故に孤立していったエキストの苦心を、多くの聖龍隊士が理解していたからだ。

 だが、ウッズの説明を聞いてミラーガールだけが力強い面魂で言い放った。

「止めるわ、そんな野望。もうこれ以上、二次元人の犠牲を出す訳にはいかないの!」

 ミラーガールは、今の現状を理解した上で述べた。

「そんな時じゃないのよ。二次元人と三次元人、そして地球の未来がかかった本当に大事な時なの」

 このミラーガールの懸命なる想いを受け止め、ウッズもミラーガールの考えに賛同した。

「ええ、一刻も早くエキストの計画を阻止しましょう! 彼を止めない限り、ナイトメアもなくなりません!」

「分かったわ、エキストを探しましょう!」

 

 ナイトメアを生み出した元凶が、エキスト・ラ・ドリックスである可能性が高まり、ミラーガール達はエキスト捜索に乗り出した。

 この荒廃した世界で、エキストは己の才能を理解しなかった者たちへの復讐として恐るべきナイトメアウィルスを生み出し続けているのであろうか。

 

 

 

[対決 黒い巨人]

 

 こうして聖龍隊はナイトメアの元凶がエキストとして、彼の計画の阻止の為エキストを見つけ出そうとする動きが活発化した。

 そんな中、本部の外では一人、地面に座り込んで考え込む青年の姿があった。

 それは他でもない、あの門脇将人であった。将人は一人で、途方に暮れる感じで地面に座り込んでいた。

 彼は未だに、シールドナー・シェルダンを自害に追い込んだ自分の判断ミスを嘆いていた。

 自分の誤った判断がシェルダンを自害に追い込み、そのシェルダンが今回のナイトメア調査員として復活させられ対峙する結果に誘ってしまった経緯に、将人は深い後悔の念に押し潰されそうだった。

 と、そんな将人の前に一体の巨大な影が地面を浮遊しながら迫ってきた。

「……! お、お前は……!」

 近付いてきた巨大な存在の顔を見て、将人は驚愕する。

「……オマエは、いいやオマエたちは危険だ……罪も無い二次元人を無実の罪で死に追いやる……ワタシがオマエ達に代わって、刑を執行しよう」

 将人に近付いてきたのは、あの聖龍HEADすらも軽く足蹴にしてしまう程の実力を持ったハイマックスだった。

「お前が、なぜ此処に……!?」

「何度も同じことを言わせるな……オマエ達は危険だ、デリートする」

 戸惑う将人にハイマックスは消滅させると返すと、両手を構えて其処から必殺のデスボールを放とうとしてきた。

「!」

 自分に向かって巨大なエネルギーの塊であるデスボールを放とうとするハイマックスを前に、将人は衝撃で動けなかった。

 と、その時。そんな将人とハイマックスの間に何者かが割り込んできて、将人を死守した。

 将人が何者かと、閉じていた目を開いて視認してみると、それはあのミラーガールだった。

「み、ミラーガール……!」

 将人が驚いている最中、ミラーガールは盾で防いだデスボールを撥ね返してハイマックスに直撃させた。

 しかし常人なら戦闘不能に陥るデスボールを顔面に受けても、ハイマックスは微動だにする事無く直立していた。

「またオマエか……前の戦いで学ばなかったか? ワタシと戦っても無駄な事を……」

「聖龍隊本部の前で好き勝手はさせないわ! これ以上、あなた達の思惑通りにはさせない!」

 ハイマックスと言い合うミラーガールは、ミラーシールドを構えながら力強く話す。

「ケイコクする。調査の邪魔をするな」

「くだらない計画を今すぐやめなさい! ゾディアックにも、そう伝えなさい!」

「……話すだけ無駄だ、消えてもらう」

 これ以上ミラーガールと言い合っても時間の無駄だと捉えたハイマックスは、戦闘を開始した。

 

 ハイマックスは浮上すると、ミラーガールに向けて目からレーザーを発射して攻撃。

 そのレーザーをミラーガールはミラーシールドで防御しながら横へと素早く移動し、ハイマックスと交戦する。

 一方の門脇将人は、シェルダンの件で意気消沈していたのか戦意が湧かずに目の前で起こってしまった戦闘に参加せず離脱してしまってた。

 しかし将人が離脱した直後、聖龍隊本部前で起こった戦闘に修司や聖龍HEADが逸早く駆け付ける。

「どうした! ……! アレが、ハイマックスとか言う調査員のリーダーか!」

 現場にHEADと共に駆けつけた修司は、目前でミラーガールと激闘を繰り広げているハイマックスを見て目付きを鋭くさせる。

 するとハイマックスは此処で自分の得意技を連発してきた。

「デスボール……無駄だ」

 放たれたデスボールをミラーガールは盾で弾き返そうとするが、威力が高く容易に弾き返せる代物ではなかった。そして彼女に一発目のデスボールが盾ごと押し出されると、そこに二発目のデスボールが飛んできてミラーガールに襲い掛かる。

 ミラーガールに危機が及びかけたその瞬間、修司が彼女と向かってくるデスボールの間に入り込んで、デスボールを聖龍剣で強引に弾き返してミラーガールを死守する。

「アッコ、無事か?」「し、修司……!」

 修司からの問い掛けにミラーガールは小さく頷いて返答。

 そんな二人の元に他の聖龍HEADも馳せ参じて、HEADが一堂に揃ったのを皮切りに副長メタルバードがハイマックスに物申す。

「ハイマックス! もう、お前さんたち調査員の企みは割れた! ナイトメアを利用して一般の二次元人たちを洗脳し、支配しようとする企みも此処までだ! 何より調査員も既にお前だけとなっている……大人しく、お前さんの仲間、いや黒幕であろうゾディアックやエキストの居場所を吐けッ」

「……何をオカシナ事を言っている? ナイトメアは其処の殺戮陽動プログラムを植え付けられた小田原修司が起こしたもの……我々は、そのナイトメアを排除しようとしているだけだ」

 このハイマックスの発言に、真紅が問い掛ける。

「本当に知らないのか……はたまた惚けているか、ね。ゾディアックは何処なの?」

「……答える必要はない。消えてもらおう」

 ハイマックスは最後まで居場所を答える義理が無い事を表すと、聖龍HEADに向かって総攻撃を仕掛けてきた。

「デスボール、デスボール……」

 ハイマックスはデスボールを連発してHEADに総攻撃。しかしHEADはハイマックスが繰り出すデスボールを避けて反撃の機会を窺う。

 しかしハイマックスに痛手を与える事はできず、HEADは苦戦に追い詰められてしまう。

「無駄な事を……」

 ハイマックスはこれ以上の戦闘を無駄だと捉えて、HEADを確実に仕留める為に今までよりも巨大なデスボールを片手で生み出すと、それを地上のHEAD目掛けて投下してきた。

「あ、あんなのが地上に落ちたら、衝撃で本部までも消え失せちまう!」

 メタルバードが叫ぶとおり、本部までも焼失してしまう巨大なデスボールを前にHEADは激しく動揺した。

 だが、そんな状況でも決して諦めずに立ち向かう修司とミラーガールの姿が燦然と輝いて見えた。

 そして頭上から投下されてきた巨大デスボールを、ミラーガールがミラーシールドで受け止めている間に修司が聖龍剣で斬り続けてハイマックスに押し返そうとする。

 そして遂に修司とミラーガールは協力して巨大デスボールを押し返して、ハイマックスに撥ね返した。

 自身が放った巨大デスボールの衝撃に呑まれ、思わず顔を腕で隠すハイマックス。すると、その衝撃波の中から修司が、押し返したデスボールと共にハイマックスに跳びかかって鋭い一撃を斬り込んだ。

「不覚……!」

 自身が放った巨大デスボールに隠れて接近した修司の一撃を受けて、ハイマックスは敗れた。

 

 修司がミラーガールと共闘して辛くも倒したハイマックスは、非常に戸惑った。

「ば、バカな……ワタシが敗れるなど……! スピード、パワー、テクニック、そしてボディの強度に至るまで……全て、全てワタシの方が凌駕しているというのに、何故……!?」

 ハイマックスは自身が何故、自分よりも劣っている修司やミラーガールに敗北したのか理解できなかった。

 すると其処に、ハイマックスが敗れたのを聞き付けてきた科学者ゾディアックが駆け付けて、ハイマックスが聖龍HEADに敗北したのを見て愕然とする。

「ぐぬぬぬ……っ、ハイマックスでさえも倒してしまうとは……!」

 しかし可笑しな事に、ゾディアックはスグに悔しそうな顔を解けて険しい表情を緩めて笑い出した。

「くく、くくくっ……」「何がおかしい?」

 突然笑い出すゾディアックを前に、修司が問い詰める。

「アーーッハハハッ! 笑わずには、おられんわい! あの聖龍HEADでさえ、歯が立たなかったハイマックスを倒してしまうとはな」

 ゾディアックは笑いながらHEADを前に語った。

「ミラーガールと共闘して勝ち取った勝利とはいえ……流石は過去に殺戮陽動プログラムを植え付けられただけの事はある」

 そしてゾディアックは更に笑い上げる。

「ハハッ、笑いが止まらん!」

 そんなゾディアックの様子を前に、修司は険しい顔で問う。

「……気でも狂ったか? お前の仲間がやられたんだぞ? 何がそんなにおかしい?」

 だが修司はスグに聖龍剣を抜刀して物申した。

「まあいい、残るはお前だけだ……今すぐ倒してやる!!」

 聖龍剣を抜刀した修司が一直線にゾディアックに向かっていく。が、次の瞬間。

「ヌハハハハッ! ……なにか言ったか? 若造!!」

「ぐぅうわぁーーっ!!」

 なんとゾディアックは片手を前に突き出すと、そこから謎の電磁波を発生させて修司の動きを完全に封じ込んでしまった。

「なっ、なんだ!? か、身体が……う、動かんっ、くっ」

 自由が奪われた修司が必死に身体を動かそうともがいていると、ゾディアックが修司に語り掛ける。

「修司よ……貴様の事は、このワシが一番……フン、まあいい。生きている事さえ、分かれば貴様などいつでも捕らえる事が出来る。今はハイマックスを連れて帰るのが先じゃ」

「まっ、待てッ! に、逃げるの……か? くっ、くそっ! か、体が……」

「ふん、今の貴様に何が出来る? 逃げはせん、また会おう。約束する」

 そしてそのままゾディアックは身動きができない修司を前に、戦闘で傷付いたハイマックスと共に聖龍隊本部前から立ち去ってしまった。

 そして現場に残された修司に、戦闘で深手を負っている聖龍HEADが駆け付ける。

「大丈夫か? 修司ッ! すぐにレスキューチームを手配して、その電磁波を解除する! あの状態では、ハイマックスもしばらくは何も出来ないだろう。だから、お前も大人しく本部に戻るんだ!」

 腹心の友でもあるメタルバードからの言葉に、修司も無言で頷くばかり。

「それは、とても強力なプロテクト電磁波の様なものです。完全に回復するには時間がかかりそうです。流石の修司様でも動けないでしょう」

「ああ……情けない事に、何も出来そうにない……」

 解析したウッズも、その電磁波が強力なもので強力の修司でも突破するのは困難だろうと問うと、修司は素直に受け入れる。

 と、ここでウッズが修司に浴びせられた電磁波を分析して、ある事実に気付いた。

「ん? そのプロテクト……どうやら時限式になっているみたいです。放っておいても動けるようになるかもしれません。しかも……おかしいですね? 動きを封じる他に強力なバリア機能まで……一体なんのために?」

 

 敵である筈の修司の身を拘束するためだけでなく、その身を護るバリア機能まで備えられてた電磁波プロテクト。

 一体、ゾディアックの真の目的とは?

 

 

 

[現われた天才]

 

 聖龍隊本部に急ぎ担ぎ込まれた修司。

 彼はウッズが判断した様に、スグに生体プロテクトである電磁波の時間が過ぎた事で自由と成っていた。

 だが、修司が聖龍HEADと共闘した事で倒したハイマックスも、続けて現場に現われたゾディアックも姿を晦ましたままだった。

 聖龍隊は急ぎ、ハイマックスとゾディアックの追跡を行った。彼らがナイトメア現象を利用して全二次元人を洗脳しようとしているエキストと何らかの関係を持っていると判断したからだ。

「……どうだ? ハイマックスとゾディアックの足取りは?」

「……いいえ、それが不思議な事に二人ともレーダーからぱったり反応が消えてしまって、追跡が出来なくなってしまったんです」

 生体プロテクトから解放されたばかりの修司が、ウッズにハイマックスとゾディアックの行方を訊ねるが、両名ともにレーダーから反応が消えてしまったと返されてしまう。

 ウッズの困惑した表情を見て、修司はそれ以上の追求をしなかった。

 すると其処にミラーガールが歩み寄ってきた。

「修司、もう平気なの?」

「ああ、俺はもう大丈夫だ! それよりも今は消えた二人を追わねえと……あの二人がエキストと何らかの繋がりがあるのは明白なんだ」

 生体プロテクトで束縛されてた修司を気遣うミラーガールに、修司本人は一刻も早く消えた二人を追ってエキスト捜索に乗り出す意志を示した。

 

 と、ウッズたち通信士達が総力を挙げてハイマックスとゾディアックの追跡にかかっていた、その時。

 突然、聖龍隊本部の巨大モニターに砂嵐が発生した。

「……? どうした、ウッズ」

「外部から強力な不正アクセスが……モニターに強制受信されます!」

 強力な外部からの接続でモニターに抽出された映像が流された。

 すると映像には、謎の研究施設内と思われる場所から一人の青年が聖龍隊本部に居る修司たちHEADに話し掛けてきた。

「流石だね、HEAD、そして修司! ボクの自信作を倒してしまうとはね……」

「誰なの? あなたは?」

 初めて見る謎の青年にミラーガールが問うと、青年は平然と彼女そして聖龍隊本部に居る多くの隊士達に名乗った。

「ボクはエキスト……二次元人の新たな統率者。二次元人だけの理想郷を目指す者。その為に今、下等な二次元人を消しているところだよ。クククッ」

 本部に強制送信で自身のメッセージを送ってきたのは、エキスト・ラ・ドリックス本人だった。

「あなた!! 自分のしている事が、どういう事なのか解っているの? 今の地球は、二次元人なしじゃ復興できないのよ!」

 突然のエキスト登場に戸惑いと動揺が渦巻く本部内で、ミラーガールは臆する事無くエキストに訴え掛ける。

 するとミラーガールに続いて、エキストと同僚だったウッズが切実に訴えた。

「まだ昔の事を恨んでいるんですか? 今がどんな状況か分かっているんですか? 下手したら、あなた自身も自滅しかねないんですよ?」

 ナイトメアウィルスという危険なモノを利用して己が野望を成就しようとするエキストにウッズは訴えるが、エキストは自信に満ち溢れた表情で返した。

「解っているさ。今が絶好のチャンスなんだよ。ボクの理想、二次元人による新たな時代を創る事が出来る。やっと時代がボクに追いつこうとしているんだ……誰にも邪魔はさせないよ」

 己が夢見る、自分自身が支配する二次元人だけの理想郷を夢見るエキストの野望。彼は荒廃した地球で叶えられると信じている今の機会について語った。

「スペースステーション落下で、地上から下等な二次元人がたくさん消えた。今なら、残った二次元人達を支配するのは容易い……ボクの理想の世界を創る絶好のチャンスだ!」

 過去に多くの成果を認めてもらえず、全てを否定されてきたエキストの憎しみは彼の野望を後押しする形で膨張していた。

「……もう、誰にも何も言わせない! やっと「夢」を実現できるんだ! 誰にも負けない、最強のものをね!」

 己が生み出したナイトメアウィルスを始めとする多くで、曲がった夢を実現しようとするエキストに修司は言い放った。

「お前の狂った妄想につき合っている暇はない。そんなウィルスで作った理想の世界なんて、幻だ! すぐに消えてなくなるぞ!」

 すると、この修司の発言にエキストは聖龍隊の今までを批難する。

「今まで聖龍隊がありながら……平和な時が、一時でもあったのかい? 戦う事で全てを片付けてきた君に……いや、君たち聖龍隊に、そんな事を言われたくないね」

 戦いで全てを解決してきた聖龍隊を軽蔑する眼差しで否定するエキストに、再びウッズが唱えた。

「地球の存亡が、かかった大事な時なんです。妄想はやめてください! エキスト、あなたはそんなに愚かな人じゃない筈です」

 するとこのウッズの発言にエキストは首を後ろへと傾げながら反論した。

「おかしな事を……ある人物が言った。「人が想像できた事は、実現できる」と……。ボクの理想が実現できないと誰が証明できた? 第一、人の妄想や想像で生まれたボクたち二次元人が、その妄想や想像を否定すること事態、おかしいじゃないか!」

 狂った様に強く反論したエキストは、続け様に今まで自分にされてきた仕打ちの数々を思い出しながら主張した。

「……忘れられないんだよ。ボクの研究が理解されるどころか、処分された事がね。優れていたのに……なぜ? そこにいる小田原修司や聖龍HEADだって、未だに謎に満ちた部分が多くて危険かもしれないのに……どうして処分されない?」

 自分の研究が理解されずに、自分の研究と同等に危険な可能性も秘めている聖龍HEADだけが認められている現実に納得がいかない事を主張するエキスト。

 そしてエキストは修司やミラーガールたち聖龍HEADに宣戦布告を突き付けた。

「聖龍HEAD、君達の実力を特別に認めてあげよう。自慢の調査員達を倒してしまったのだからね。ボクの研究所へ招待するよ。フフフ、もう隠れたりしないさ」

 エキストは自信に満ち溢れた嘲笑を浮かべてHEADに問う。

「例え死ぬ事が分かっていても、君達は絶対来てくれるだろう?」

 そして最後は高笑いで話を締め括った。

「待ってるよ、ボクの研究所でね。フフフ、ファーッハハハ!」

 

 エキストからの一方的な通信、いや宣戦布告に動揺の嵐が吹きぬける本部。

 そしてエキストは今まで高精度のレーダーでも発見できなかった己の秘密研究所を、ここでレーダーに映る様にしてHEADを待ち受ける姿勢を示したのだ。

 エキストからの宣戦布告を受けて、修司はウッズに声をかける。

「ウッズ……」

 ウッズは一時、黙り込んでいたがスグに顔を上げて主従関係である修司に言った。

「……修司様、エキストを……彼の野望を止めてください!」

「ウッズ……分かった」

 修司はウッズからの返事を聞いて、即座にその場に居る聖龍HEADに指示した。

「HEAD! 俺らの総力を挙げて、エキストの研究所に殴り込みするぞ!」

『おうっ!!』

 修司の掛け声に反応する様にHEADは応答し、全員がレーダーに反応が現われたエキストの秘密研究所に出撃する意志を示した。

 

 

 そしてレーダーに反応があった地点へと急行した一同。

 HEADは修司とミラーガールの先導で宇宙ステーションの巨大な破片が落下した地点の近くへと到着した。

「こんな所にエキストの研究所があったんですね。もう少し先に進んでください」

 現場に到着した修司達にウッズが通信で指示を出し、皆は先へと進んだ。

 すると皆の目の前に、巨大な穴が地上に空いているのが確認された。

「電波障害でよく見えませんが、何かありませんか?」

 ウッズが確認の為に問い合わせると、修司が返答した。

「穴が空いている……ここから入れって言わんばかりにな。おそらく、この奥にエキストの秘密研究所があるんだろう」

「そうですね。今でさえノイズが激しいです。気を付けてください、皆さん」

 地下深くまで続いている巨大な穴へと進攻する意志を示した修司に、ウッズは注意を呼びかける。

「行ってくるわ。エキストの野望をとめてくる!」

 そして最初に穴へと飛び降りた修司に続いて、ミラーガールも通信でウッズと話しながら仲間の聖龍HEADと共に地底へと身を投下した。

 巨大な穴へと飛び降りた修司たちHEADは、現状を報告しようとしたが。

「まっくらだが、灯りが見える……ウッズ、何か見えるか? ウッズ……ウッズ、ウッズ? もう通じないか。ナイトメアウィルスの電波障害で通信も不能か」

 なんと地底へと降りた途端、聖龍隊本部との通信がウィルスの影響か繋がらなくなってしまった。

 指示を伝えて補助してくれる通信士の助けが無いまま、修司達は地下を進んでいった。

 すると地下空間は、巨大な要塞へと通じており、行く手には様々な罠や敵が配置されていた。

「気をつけろ! エキストが設計した要塞だ、生半可な移動速度や攻撃じゃ、こっちがやられるぞ!」

 隊の先頭に立つ修司が、エキストが設計・配置させた防衛線に細心の警戒で進行するよう仲間達に伝える。

 そして聖龍HEADは、素早い身のこなしと跳躍力で並居る敵と張られた防衛線による罠を掻い潜り、地下空間を、いや第一防衛線を突破していった。

 

 

 

[現出! ナイトメアマザー]

 

 数多くの敵や罠を掻い潜り、地下空間である防衛線を突破していく聖龍HEAD。

 彼らは道筋に沿って、上へ下へと進んでいった為に、今どれくらい地下深くを進んでいるのか解らなくなってしまってた。

「はぁはぁ……そ、それにしたって……何処まで進めば言いわけぇ~?」

 歩き疲れてセーラームーンが泣き言を呟くが、修司がそんな彼女に渇を入れる。

「うさぎ! 立ち止まっている暇は無いんだ。早く先へと進まないと」

「わ、分かってるよぉ……」

 修司からの押しにセーラームーンは疲れながらも返事した。

 

 と、聖龍HEADの面々が更に先へと進攻しようとしていた、その時。

 セーラームーンが手を着いて休んでいた壁に大きな目が突如として現われた。

「きゃっ、何あれ!?」

 波音が悲鳴を上げると、壁から現われた目はそのまま飛び出しては、その全貌を露にした。

 それは機械仕掛けの眼球の様な核であり、ぎょろぎょろと周りの聖龍HEADを視認すると一気にエネルギーを放出。

 そして眼球は自分の周りに、血管の様な触手を立方体の形まで覆わせると一気にHEADへと襲い掛かって来た。

「な、なんなんだ、コイツは!?」

 堂本海斗が慌てふためくが、触手を立方体の形に纏った目玉は強力なエネルギー波を放出しながらHEADへと迫る。近付くだけでも危険だった。

 聖龍HEADは目玉からの追跡を逃れようと走り出すが、目玉は驚異的な速さで追尾してきた。

 と、聖龍HEADが逃げ惑っていると、秘密研究所の主であるエキストが所内の拡声器でHEADたちに嘲笑しながら言った。

「アハハ、遂にナイトメアマザーの住処にまで入り込んでしまったんだね。そいつは生体エネルギーを求めて、何処までも追いかけてくる厄介な奴だよ」

「な、ナイトメアマザー!?」

 エキストの話を聞いてメタルバードが驚愕すると、エキストは自身が生み出したナイトメアマザーについて熱弁し始めた。

「それこそ僕が作り出した、ハイマックスに続く傑作……数多の生体エネルギーを取り込んで己の分身ともいえるウィルスを増殖するナイトメアの母体……そう、ナイトメアマザーさ!」

「!」

 修司がエキストの説明に表情を歪ませていると、エキストはHEAD達に告げる。

「さあ! 急いで逃げないと、養分にされて消滅されちゃうよ! まあ、まず逃げられるとは思えないけどね……その前に君らはどうせ、吸収されてしまうのだから。ハハハハッ……」

 エキストが嘲笑を高らかに上げる中、修司は言い放った。

「此処で逃げて堪るか! ナイトメアウィルスの元凶、ナイトメアマザーなんぞ、ここで返り討ちにしてくれるッ!」

 この修司の言動に、ミラーガールも勇気を後押しされた。

「そうよ……多くの人々を狂わせたナイトメア、その元凶であるマザーを放ってはおけないわ! みんな、逃げずに立ち向かいましょう!」

 修司に続くミラーガールの勇姿に、HEADも勇気付けられ、共にナイトメアマザーを迎え撃つ決意を示した。

 そして修司たちHEADはナイトメアマザーに背を向けず、全員が振り返り迎撃の態勢で迎え撃った。

 

 無数の触手の集合体の様なナイトメアマザーは、その中央に巨大な眼球を持っており、生物から生体エネルギーを吸収して異質な異常者(ヒール)へと変化させてしまう。

 そんなナイトメアマザーは、立方体を形成する触手を腕の様に変えて伸ばしては聖龍HEADを捕らえて生体エネルギーを吸収しようと襲い掛かって来た。

 修司とミラーガールは誰よりも戦前に飛び出しては、向かってくる触手の腕を刃で細切れに切り刻んでナイトメアマザーの攻撃から仲間達を死守する。

 するとナイトメアマザーは中央の眼球を無数の触手の中から突出させては、目玉から無数の光弾を放って弾幕を張った。

 修司達は一旦ナイトメアマザーから遠のいて、弾幕を回避して身を護るのだが、修司は弾幕の間を掻い潜ってナイトメアマザーに接近。立方体の形状をしているナイトメアマザーの眼球に斬りかかった。

「ていやっ」

 眼球に斬り込んだ修司。すると眼球を斬り付けられたナイトメアマザーは怯んだ様に伸ばしていた触手からの腕の動きを止めた。

「やっぱり……でかい眼球が弱点と見た」

 眼球を斬り付けた修司は、予想通りに眼球がナイトメアマザーの弱点なのだと察した。

 そして修司の言動を目の当たりにした聖龍HEADも、修司に続けとばかりにナイトメアマザーの眼球を攻撃し始めた。

「消耗戦は避けるぞ! 速攻でマザーを消滅させるんだ!」

 キング・エンディミオンの指示で動き、攻撃を仕掛ける聖龍HEAD。

 攻撃を集中的に浴びるナイトメアマザーは、今度は何と瞬間移動して皆の頭上に移動した。

「な、なに!?」

 ナイトメアマザーが瞬間移動で自分達の頭上に移った移動方法に驚愕するエンディミオン。

 そして頭上に瞬間移動したナイトメアマザーは急降下してきて、HEADを押し潰そうと図る。

「うわあっ!」

 突然のマザーの落下に慌てふためく聖龍HEAD。しかし彼女達は動揺するものの、すぐに態勢を立て直してナイトメアマザーに挑み続けた。

 すると此処でナイトメアマザーに変化が。なんとマザーは紅く妖しい光を全体から放ったと思うと、その紅い光を纏う触手でHEADが持っている得物を掴み始めた。

 HEADの面々は何事かと戸惑っていると、ナイトメアマザーに捕まった武器が力を失い地面へと落ちたのだ。

「こ、こいつ……!」

「私たちの道具を……聖なる力を秘めている武器の力を無力化できるなんて!」

 自分達が扱っている不思議な力がある武器を無力化できるナイトメアマザーに、堂本海斗や真紅たちは唖然とする。

 そんな中、ナイトメアマザーは修司とミラーガールが振るう武器、聖龍剣とミラーソードをも無力化しようと紅い光を纏った触手を伸ばす。が、修司は素早く反応し、マザーが伸ばしてきた触手を聖龍剣で一刀両断し、彼に続いてミラーガールも武器で触手を薙ぎ払う。

 紅い光を纏った触手に触れられれば、武器が無力化されてしまう現状にも関わらず、修司とミラーガールの武器にはその予兆すら見られなかった。

 そんな戦前で共闘しながらナイトメアマザーに立ち向かう修司とミラーガールを前に、他の聖龍HEADは愕然としていた。

「あ、あの二人の武器にはナイトメアマザーの効力が効かないのか?」

「修司さんの破滅を引き起こすほどの強大な力と……私たち変身ヒロインの始祖であるアッコさんが持つ無限の可能性が、ナイトメアマザーの邪悪な力を寄せ付けないのかも……!」

 戦前で共闘する修司とミラーガールの戦力を前に激しく戸惑うジュピターキッド達に、ナースエンジェルが独自の解釈を述べる。

 そして修司とミラーガールは自分達に襲い掛かる触手の束を次々に薙ぎ払うと、一気にナイトメアマザーと距離を詰めた。

「はぁっ」

 ミラーガールが巨大な眼球を包み隠す触手を一刀の元で切り払い、一時的に眼球を曝け出すと空かさず修司に向かって叫んだ。

「今よ、修司!」

 ミラーガールからの呼びかけに反応し、修司は聖龍剣を振り上げてナイトメアマザーの弱点である眼球に斬りかかった。

「うおりゃあああ!!」

 修司が振り下ろした一刀は、ナイトメアマザーの眼球を真っ二つに切断。

 そして次の瞬間。ナイトメアマザーは爆発・消滅した。

 

 すると修司達の前に、ナイトメアソウルが落ちてきた。

 修司達は最初、マザーが落としたソウルを放置してその場から立ち去ろうとした。と、その時。

「そのナイトメアソウルを叩き壊してください! 放置すれば、マザーが再生してしまいます!」

 と、突然今まで途絶えていた通信からウッズが現場のHEADに叫びかけた。

 皆がウッズに指摘され、先ほどマザーが落としたナイトメアソウルに注目すると、ソウルは次第に小さくなっており、最終的に再生しようとしていた。

 急いで修司がマザーが落としたソウルを聖龍剣で叩き壊したので、ナイトメアマザーが再生することは防げた。

 こうして事なきを得た一行は安堵し、ウッズに通信で礼を言った。

「ふぅ、危なかった……ウッズ、すまない。だがよく分かったな」

「はい、先ほど皆さんが今まで回収してくれたナイトメアソウルの調査で判明した事なんです……それにしても、マザーが再生する前にソウルを破壊できて良かったです」

 修司からの問い掛けにウッズは息を落ち着かせながら答えた。

 

 HEADが回復したばかりの通信で情報を伝えてくれたウッズに感謝してた。その時。

 

 

 

[最悪の事実]

 

 皆が修司とミラーガールの共闘、そして間一髪で情報を伝達してくれたウッズに意識が向いていたその時。

 再びHEADたちの目の前に立体映像でエキストが姿を現し、ナイトメアマザーを倒したばかりの修司たちHEADを称賛した。

「とうとう此処まで来たんだね、流石だよ修司」

「過ちは正す……当然の事だ」

 再び姿を見せるエキストの登場に動じず、修司はエキストに平然と言い伝える。

 するとエキストは、今度は昔の同僚でもあり今さっきHEADを救済する助言を伝えたウッズに通信越しで話を振った。

「ウッズさん……あなたには昔から勝てなかった。あなたが常にトップだった」

 昔から、そう自分の研究が認められなかった頃から成績では勝てなかったウッズに話し掛けるエキスト。しかしウッズはそんなエキストに切実に訴えた。

「いいえ、あなたの方が何もかも上でした。私はただ、課題をこなしていただけ。でもあなたは、課題を守らなかった。たったそれだけの事です」

 ウッズは、自分は与えられた課題を普通にこなしただけで、エキストの方はその課題を守らなかっただけの違いだと訴えた。これを聞いたミラーガールもエキストに問う。

「どんなに高い能力があっても、ただしく使われなかったら意味が無いわ。あなたとウッズさんの差は、其処にあると私は思うわ」

 如何なる才能があっても、それを正しく使わなかったら認められる訳が無いと説くミラーガールは更に語った。

「確かにエキスト……あなたの才能は素晴らしいわ。だけど、それを本当に正しく使わなかったら誰にも認めてもらえないわよ。私も昔は、HEADの仲間達の強大な力を恐れていたし、理解できなかった時期があった。だけど、みんなと少しずつ距離を縮めて、みんなの事も少しずつ理解していく様になったわ……あなたは周りが自分を認めてくれる様に努力を怠っていたんじゃないの?」

 昔のHEADの様に、周りから理解される様に努力しなかったのも孤立していった原因なのではないかと説くミラーガール。彼女の話を聞いて、心の内で納得するHEAD。そしてメタルバードもエキストに問うた。

「大体、二次元人だけの理想郷なんて出来やしない。二次元人も三次元人も、共に不完全な存在。お互い、助け合っていかないとダメなんだ。そんな事はお前自身も一番分かっている筈だ」

 このメタルバードからの問い掛けを聞いて、エキストは聖龍HEADに真意を突いた。

「このボロボロの地球を救えるのは誰だ? 三次元人は避難だとか言って何にもしない……地球上で活動できるのは、高い能力を持った二次元人だけだ……フッ、こんな状態にしてしまったのも二次元人……いや、三次元人かな。……だよね? ミラーガール。クックックッ」

「アッコ、気にするな」

「解ってるわよ、バーンズ」

 エキストからの挑発にメタルバードはミラーガールを気にかけるが、彼女は平然を保つ。

 

 すると此処でエキストは聖龍HEADに、そしてHEADの通信機で会話を聴いている聖龍隊本部のウッズ達に告白し出した。

「二次元人が不完全な事は認める、異常者(ヒール)も発生する。だから、ボクの実力も正しく評価されなかった。しかし……それだけの自信が持てるモノを作り出せたんだ……」

 エキストは自信満々に告白していった。

「そう……一つ、いい事を教えてあげるよ。流石にボクの実力だけでは此処まで来れなかった……」

 不敵な笑みを浮かべながら、エキストは得意気に語り出す。

「これは黙っておきたかったんだ。だけど最後だから教えてあげるよ」

 するとエキストはあるものを右手に掴んでHEADに見せびらかした。

「クックッ……でも、これを拾ったんだ。まさに神の導き、いや恵みだね」

 神の導きであり恵みと捉えるエキストが公示したもの、それは手の平で軽々と持てる小さなカプセルに入った何かの肉の塊だった。

 エキストから小さな肉の塊を見せ付けられて困惑するHEADに、エキストは興奮しながら問い掛ける。

「なんだと思う? 始めはただの肉片かと思ったよ……」

 エキストが公示する肉片を凝視したHEADは、ここで衝撃的な事実に気付いた。

「その肉片……っ、まさか! 僅かだけど、生体反応がある!?」

「ほ、本当だ! 心臓も肺も無いのに、未だ生体反応を示しているその肉片は、一体……!?」

 キューティーハニーにメタルバードが驚愕する中、エキストはHEADと同様に困惑している修司に真実を告げた。

「分からないのか小田原修司! これは君の身体の一部だよ! そう、ボクは史上最強の戦士、小田原修司! 君のDNAを手に入れたんだ!」

「なんだと!? 俺のDNA?」

 なんと10cmにも満たない肉片の正体は、修司本人の身体の一部だというのだ。

 愕然とする修司にHEADの皆々。そんな一同にエキストは半ば興奮した様子で語り明かした。

「聖地に踏み込んだような気分だった。素晴らしいよ、君のDNAは……! こんな、こんな10cmにも満たない肉の塊があったお陰で……ボクは、ボクは簡単に……ハイマックスもナイトメアウィルスも、意図も簡単に作り出す事ができた。正気ではいられなかった……こんなに完璧で最強のものが出来上がってしまうのだから」

 修司の身体の一部からナイトメアもハイマックスも作り出したと興奮混じりで告白するエキスト。しかし彼はスグに冷静さを取り戻して再びHEADに話す。

「しかし……上には上がいるもんだね。君たちHEADが此処まで辿り着くとは……そもそも、完全に解析できた訳じゃないからね」

 このエキストの告白を聞いた修司は、目の色を変えてエキストに警告した。

「なんて事をするんだ!! すぐに俺のデータを破棄しろ! 危険すぎる! それは……自分自身を破滅に追い込むんだぞ!」

 しかしエキストは、突如興奮し出した修司を嘲笑うかのように話し返した。

「クククッ、珍しいね。いつもは冷静な君が取り乱すなんて……大丈夫だよ。下等な二次元人を使って、十分実験を行ったからね。君のDNAに恥じない、最強のウィルスを完成させたよ」

 そしてエキストは修司を嘲笑の目で見詰めながら彼に言った。

「あとは……目障りなオリジナルに消えてもらうだけかな?」

 だが、このエキストの告白を聞いたミラーガールは怒りで身震いしていた。

「あなたには分からないの? 確かに修司のDNAデータは強大な力を持っているかもしれないわ……でも、使い道を間違えた時から、その力は弱まっているのよ!」

 ミラーガールは大切な中までもある修司の遺伝子を悪用したエキストの行為に多大な怒りを覚えた。

「身をもって教えてあげるわ、エキスト! 私たちの大切な友である修司のDNAを利用して、残り少ない二次元人達を苦しめた。あなたの罪を!! 絶対に許さない!!」

 ミラーガールに続き、修司も自身の遺伝子を悪用したエキストの、全ての二次元人を支配しようとする野望を阻止する為に真っ向から宣言した。

「エキスト! お前のその薄汚い野望全てを、俺が根こそぎ滅ぼしてやる!!」

 ミラーガール、修司に続いてHEADもエキストの野望を阻止する為にも表情を険しくさせる。

 これに対してエキストは修司たち同様、自らも逃げはせずにHEADと真っ向から挑む覚悟を示した。

「望むところ! 君たちHEADを倒さない限り、ボクの理想郷実現はあり得ない! 来るがいい……聖龍HEAD!」

 

 こうして聖龍HEADとエキスト・ラ・ドリックス、双方の宣戦布告は切って落とされた。

 

 

 

[ツクラレタ傭兵]

 

 エキストの野望を断固阻止しようと決意した修司たち聖龍HEAD。

 一行は、ナイトメアマザーを倒した現場から、更に地下深くのエリアまで進攻していた。

 並居る敵を次々と倒して突破していく修司たち。

 すると、そんな一行の前に最早顔馴染となっているあの青年が姿を現した。

「よっ、あんた達も此処に来てたのか?」

「お、お前……ニトロ! お前こそ、なんで此処に!?」

 その青年は先の宇宙ステーション落下を占拠し、メカルスの命で地球にステーションを落下させようとした挙句、ナイトメアソウルを収集して自身の強化を図っていたあのニトロ・グリセリーノであった。

 ニトロはエキストの秘密研究所で遭遇した聖龍HEADに毎度の事ながら軽率な態度で話し掛ける。

「お宅らかい? 今さっきまで手元にあった、収集したばかりのナイトメアソウルが消えちゃった理由は……」

 このニトロの質問に修司が険しい表情で返答した。

「ナイトメアソウルの元凶、ナイトメアマザーは今さっき俺たちが倒した! だからソウルも消滅している筈だ」

「おいおい、冗談きついぜ。折角集めたソウルでパワーアップできると思ったのによ」

 すると修司に続いてミラーガールがニトロに言い放つ。

「ニトロ! 今は、あなたなんかに構っている暇はないわ! 大人しく立ち去りなさい!」

 しかしニトロはミラーガールに反論した。

「フッ、嫌だね。折角集めたナイトメアソウルも消滅させられた訳だし……少しは、このムシャクシャする鬱憤をどうにかしてもらわないと」

「君と戦っている場合じゃないんだ! 退いてくれっ」

 退去しようとしないニトロにセーラーウラヌスが訴えるが、ニトロは武器であるDブレードを構えて聖龍HEADの前に立ちはだかった。

「こうなりゃ、此処の住人にあんた等の首を持っていって、少しは稼がないとな!」

「どうしても俺たちと戦う気なんだな、ニトロ……仕方ない。俺たちHEADの総力、見せてやる!」

 好戦的な態度を取るニトロに、修司が聖龍剣を抜刀して構えると他の聖龍HEADも戦意を示して仕方なくニトロと戦う姿勢を見せる。

 そしてニトロと聖龍HEADの戦いが始まってしまった。

 

「あらよっと」

 ニトロはDブレードを握り締めて、常人離れした跳躍力でHEADの頭上を跳び越えて修司達を翻弄する。

 だが、頭上を飛び交いながらDブレードで頭部を攻撃してきたニトロを、セーラームーンが自身のステッキで受け止めて防いだ。

「おやおや、その宝石が鏤められたステッキはタダのお飾りじゃなかったんだね?」

「私だって……アッコちゃんや修司君みたいに戦えるもん!」

 ニトロの攻撃を頭上で受け止めて防いだセーラームーン。すると攻撃を防がれたニトロは地面に着地してHEADを挑発。

「ふふふ、好戦的なのは小田原修司だけでなく、ミラーガールに続いて他のHEADの皆様方も同じみたいだな……怖い怖い、HEADってのは」

「お前が戦いを仕掛けるのがいけないんだ!」

 エンディミオンがニトロに強く反論するが、ニトロは余裕を感じさせる笑みを浮かべて言い返す。

「何おれのせいにしちゃってる訳? お宅らみたいに、強力な力を持った能力者の存在そのものが、戦いを呼び寄せているのが分からないのかい?」

「……!」

 ニトロの言い分に、エンディミオンを始めとするHEAD一同は煮え湯を飲まされた気分に陥った。

 するとHEADの気分を害したニトロは、エネルギーブレードであるDブレードをブーメランの様に投げ飛ばてきた。

「喰らいな!」

 しかしこれに修司が素早く反応して、Dブレードを聖龍剣で弾き返すと同時にニトロに告げる。

「ニトロ! 俺たちはこの秘密研究所の奥にいるナイトメアなどを作ったエキストって奴を追っているんだ! 邪魔立てするな!」

「そうかいそうかい……だからって、お宅らをこのまま野放しにする気も無いんだよ、おれは……悪いが、この場で全員死んでくれやっ」

 今まで見せた事のない程の闘志でHEADに挑んでくるニトロの様子に、修司も他のHEADも違和感を覚えた。

(どうしたんだ? 今まで無意味な戦いは生き延びる為に避けてきた筈なのに、この展開……ニトロの奴は一体何を考えているんだ?)

 修司は心の内で、ニトロが何ゆえ自分たちHEADに戦いを挑んでくるのか不思議に思った。

 と、此処で数多の聖龍HEADと戦闘を続けるニトロは、地面に手を着いて強力なエネルギーを地中から放出する必殺技を仕掛けた。

「行くぜ!」

 ニトロの腕から強力なエネルギーが流出し、それが地中から巨大なエネルギーの柱として放射され、HEADを追い詰める。

「ふっ! はっ! そこだ!」

 三度もエネルギーの柱を地中から放出するニトロの猛攻に、HEADも苦戦に追い詰められる。

 すると此処で修司とミラーガールが何やら耳打ちを。そして二人は一気にニトロへと距離を詰めると、まずは修司が先制攻撃を仕掛けた。

「このッ!」

 しかし修司が振り翳した聖龍剣はニトロのDブレードと激突し、激しく鍔迫り合いになってしまう。

 だが、修司がニトロの攻撃を防ぎ切っていたその時。修司の背後からミラーガールが急接近して、彼女は修司を跳び越えてニトロに直接ミラーソードで攻撃を仕掛ける算段だった。

 ニトロはミラーガールからの剣戟を避け切る為に一旦後方に下がり、二人と距離を置く。しかしミラーガールの剣戟と修司の激しい剣戟の、二重の剣戟に苦戦させられ、一瞬生まれてしまった隙を衝かれて二人の刃に斬り付けられてしまった。

「ッ!」

 傷を負ったニトロ。彼は今まで傷を受ける事は殆ど無かった。

 だが、修司は更なる追撃をニトロに仕掛けようと聖龍剣を構えて接近した。

「ニトロッ!」

 今の今まで、宇宙ステーション落下に至るまで多くの事件を引き起こしてきたニトロに印籠を渡そうと修司は斬りかかった。

 そして一筋の太刀筋がニトロに深い傷を与えた。傷を受けて後方に吹き飛ばされたニトロを見て、HEADの誰もが彼が降伏するとばかし思った。

 だが、傷を受けたニトロが、受けた傷を手で押さえ込んでいると、修司がニトロに声をかける。

「ニトロ、もう其処までだ。大人しく投降してもらおうか」

 修司に言われて、苦痛で表情を歪ませるニトロ。だが次の瞬間、ニトロが押さえていた傷口から手を離した瞬間、その情景を目撃した聖龍HEAD全員は愕然とした。

「! ニトロ! その傷……!」

 ミラーガールがニトロに傷口を指摘すると、ニトロも此処で初めて自分の深い損傷である傷口に目を向けた。すると傷口を見たニトロは衝撃のあまり言葉を失った。

「っ! ……そ、そんな……!」

 ニトロが衝撃を受けた理由、それは愕然とするHEADと同じだった。彼の深い傷口、そのぱっかり開いた切傷からは電子部品が覗いており、小さな電流による火花が散っていたのだ。

 この衝撃の展開に最も衝撃を受けたのは、他でもないニトロ本人だった。

「わ、わあ! なんで、なんで……!? なんで俺の身体が!?」

「ニトロ、お前……まさか、アンドロイドだったのか?」

 激しく動揺するニトロにメタルバードが質問すると、彼は非常に困惑した様子で返事した。

「そ、そんな……ち、違う! おれはロボットなんかじゃない! こんなの……こんなの、どうかしてるぜ!」

 自分がロボットである事を強く否定するニトロ。

 すると混乱する現場に、再び秘密研究所の主であるエキストが立体映像として登場し、混乱する現場の皆々を見下しながら語り出した。

「混乱している様だね、諸君……ボクが昔、作ったアンドロイドとの戦いの数々。満足してくれたかい?」

「なんだって!? アンドロイド……!」

 エキストの発したアンドロイドに修司達が衝撃を受けていると、エキストは語り続けた。

「そう、其処に居る他でもないニトロ・グリセリーノは、ボクが昔気紛れに作ってみたアンドロイド……まあ、と言っても自由気ままに動くよう設計してみた機体でね。メンテナンス以外は殆ど勝手に傭兵として各地を転々としていたみたいだけどね。その間にメカルスの策略に乗っかってみたり、はたまた勝手にナイトメアソウルを回収しちゃったりしていたみたいでね……今度メンテナンスに自動的に戻って来たら少しは改良しようと思っていたけど、その前にHEADに敗れてしまうとは……やはり、小田原修司のDNAを手に入れる前に作った出来損ないにはHEADを倒せるほどの技量は無かったと見える」

「ニトロは……あなたが作ったアンドロイドだった訳!?」

 コレクターユイが説明するエキストに質問を投げ掛けると、エキストは動揺し続けるニトロの前で淡々と語り続けた。

「そうさ。まあ、どういう反応を示すか知りたくて、面白半分に自分は人間だって思いこませていたんだけどね……自動的に定期メンテナンスに研究所に戻ってくるようプログラムした以外はね。でも、その前にナイトメアマザーを倒したキミ達HEADと遭遇しちゃったからね。遠隔操作でキミらと戦わせるよう仕向けた訳さ。マザーに続く防衛線のつもりでね……」

 堂々と定期的に研究所に戻るように仕組んでいたニトロを、防衛線代わりにHEADと戦わせようと遠隔操作で彼の戦意を操っていたと豪語するエキスト。

 すると自分が人間ではなくロボットである事実を聞かされたニトロは、困惑しながらもエキストに訴え掛けようと反論する。

「ち、違う! 俺は……俺は、ニトロ・グリセリーノ! おれは、おれは……」

「そうムキになって思い出そうとしなくても……そもそも、キミに植え付けた記憶媒体の中には、それ以上の情報は入れてないよ。フッ、アンドロイドに余計な情報はいらないからね……に、してもだ。ボクが気紛れに作ったロボットにしては、今までよくメカルスからの依頼を一人でこなした挙句、そこの聖龍HEADとも太刀打ちできる程に成長したね。大したものだよ」

「違う……違う違う! おれは、おれは人間だ……ロボットなんかじゃない、ロボットなんかじゃ……!」

 自身が作り出されたロボットである事を受け入れがたいニトロは、混乱しながらも自らはロボットではないと説き続ける。

 しかし、そんなニトロの混乱振りを嘲笑するかのごとく、エキストはニトロに話し掛けた。

「ニトロ・グリセリーノ……ボクが小田原修司のDNAを手に入れる前に作り出したロボットよ。聖龍HEADに敗れ去った今、キミには何の興味の欠片もない。どこぞへと立ち去るがいい……その壊れかけた身体でね。クハハハ……ッ」

 嘲笑でニトロを使い捨てるエキストの言動に、HEADが愕然とする中ニトロ自身は混乱と腹の底から湧き上がる苛立ちで心中が一杯になった。

 そして次の瞬間、ニトロは堪えていた気持ちを抑えきる事ができず、自身を製作したエキストの立体映像に襲い掛かった。

「うわああああああああッ」

 だがエキストが飛び掛ってきた瞬間、立体映像であるにも関わらずエキストは手元にあった自爆ボタンを押してニトロを爆破させた。

 爆発したニトロを目の当たりにしてミラーガール達HEADが衝撃で顔を隠していると、足元にニトロの残骸である機械の部品が転がってきた。

 一方のニトロを爆破した製造者たるエキストは高らかに嘲笑していた。

 そんな心無くニトロを平然と爆破したエキストに、ミラーガールは怒りの感情をぶつけた。

「エキスト! いくらロボットとはいえ、ニトロを爆破するなんて……!」

「はは、何を言っているんだいミラーガール。ボクは自分で作ったものを自分の手で壊しただけだよ? 何の罪に問われるんだい?」

 いくらロボットとはいえ、自我があり自分がロボットだと知らなかったニトロを自らの手で爆破したエキストは何の罪悪感も持っていなかった。

 そしてニトロを平然と爆破したエキストは、改めてミラーガール達HEADに告げた。

「さあ、早くボクのところまで辿り着いてよ……そして惨めにもボクに倒されるがいい、HEAD! ……まあ、その前にこっちにはまだハイマックスが居るのを忘れないでくれたまえ」

 そう告げるとエキストの立体映像は消えた。

 

 エキストが消えた直後、ミラーガールはニトロの残骸を目視して悲愴に耽る。

 先の宇宙ステーション落下から、ナイトメアソウルの一件までミラーガール達と戦闘を重ねたニトロ・グリセリーノ。

 自分が人間ではなく、作られたロボットであった事実を知り、そして最後には製造者であるエキストに無残にも爆破されたニトロをミラーガール達は想ったのだった。

 

 

 

[人造された存在]

 

 ニトロ・グリセリーノが実はエキストによって作り出されたロボットであった事を知った聖龍HEAD。

 一行は無残にも製造者であるエキストによって爆破されたニトロを哀れみながらも先へと進んだ。

 そして数多の敵や罠を突破した聖龍HEADの前に、あの黒い巨人が立ちはだかった。

「あなたは……ハイマックス!」

「聖龍隊、今度こそキサマらを倒す……!」

 目の前に現れたハイマックスを前に、ミラーガール達は愕然とする。

「ハイマックス……お前も所詮、俺の遺伝子から生み出された存在。邪魔立てするなら容赦なく斬り捨てるのみ!」

「ワタシは……ワタシは、オマエを越える存在……オマエたち旧時代の存在を超えた完璧なる存在。ワレワレは同時に存在してはいけない……小田原修司、オマエを抹殺する!」

 自らのオリジナルに該当する修司に対しても、ハイマックスは修司を抹殺する事に執念を燃やしていた。

 そしてハイマックスは修司を抹殺する為、そして自身の製作者であるエキストの研究所を進攻するHEADを打倒するべく戦闘に突入した。

 

「デスボール……無駄だ」

 開幕早々、ハイマックスは必殺のデスボールを連射して聖龍HEADを軽くあしらう。

 しかしHEADもハイマックスに損傷を与えるべく攻撃の手を緩めない。

 と、ここでセーラームーンとるちあの二人が同時にハイマックスに攻撃せんと急接近。しかしハイマックスは自らの左右に強力な盾を出現させ、二人の攻撃を同時に防ぐ。

 ハイマックスのバリアーに弾かれ、吹き飛んでしまうセーラームーンとるちあ。

 そこに今度は魔法騎士の三人が攻撃を仕掛け、ハイマックスを三つの魔法で倒そうとする。だがハイマックスは強力な魔法攻撃でも怯む事無く三人に反撃し、彼女達を殴り飛ばす。

 しかし聖龍HEADは諦める事無く、ハイマックスに様々な属性攻撃を仕掛けていき、数多の属性を受けたハイマックスに修司が斬りかかる。

 すると此処でようやくハイマックスにダメージを負わせる事が叶った。

「不覚……!」

 損傷を受けて、絶えず浮遊していたハイマックスは思わず地面に落下。そんなハイマックスに修司たちHEADは追撃を仕掛ける。

 だがハイマックスは、魔法に科学といった攻撃を受けながらもHEADに反撃してくる。

「デスボール……無駄だ」

 自分への攻撃は全て無駄に終わると無愛想に告げるハイマックス。

 しかし聖龍HEADはそれでも攻撃を終わらす事は無かった。

「前みたいに油断はしないぞ……! 今度こそ、お前を倒してみせる! 仲間と一緒にな……!!」

 ハイマックスにレーザーで攻撃するメタルバードは、隣で同じく攻撃するちせやコレクターズと共に勢いを増す。

「死ぬんだ」

 と、ハイマックスは腕からレーザービームを射出して戦前のHEADを狙撃しようと図る。だが其処にミラーガールが駆け付け、ミラーシールドでレーザーを弾き返して仲間を守ってみせる。

 聖龍HEADが総力を挙げてハイマックスに攻撃していくと同時に、修司がハイマックスに聖龍剣で斬りかかると、それでハイマックスに損傷を与える事ができた。

「HEADの自然系の攻撃と、俺の剣戟が組み合わさって初めてハイマックスにダメージを与える事ができるのか」

 修司はハイマックスのデスボールをかわしながら、無敵のハイマックスに損傷を与える術が仲間との共闘だと改めて実感する。

「修司! 攻撃の手を緩めないで……みんなは私が護って見せるから、あなたはハイマックスに斬りかかって」

 そんな修司に、ハイマックスへ攻撃するHEADは自らの能力と技量で死守して見せると言うミラーガール。彼女の言葉に、剣戟に集中するよう言われた修司は頷いて再びハイマックスに聖龍剣で斬り付けて行った。

 

 そして多くの聖龍HEADの攻撃と修司の剣戟が連携した事で、ようやくハイマックスに膝を着かせるまでに追い詰めることが出来た。

 HEADは疲労困憊しているハイマックスにトドメを刺そうと、ゆっくり近付こうとした。その時。

「……ワタシは……ワタシは……完璧なる存在…………倒さねばならない……ワタシの根源を……シソというべき、小田原修司を……倒して、みせる……!」

 そう呟いたハイマックスが突如、怪しい光を全身から発した。この光を前に、聖龍HEADは思わず目を背けてしまう。

 すると疲労困憊した巨体のハイマックスが、なんと三体に分裂したのだ。それも分裂した三体は全身が真っ黒な以外、彼のオリジナルとも言える修司と寸分違わず瓜二つだったのだ。

「こ、コイツは……!」

 ハイマックスが自分そっくりに三体に分裂したのを目の当たりにした修司は愕然とした。

 そんな修司に相棒でもあるメタルバードが一つの仮説を述べた。

「は、ハイマックスの奴……オレ達に追い詰められた事で、何かが変化しちまったんだ……!」

 聖龍HEADの連携攻撃の前に追い詰められたハイマックスが何らかの変化を来した事で、修司そっくりの三体の分裂体に変化したのだろうと説くメタルバード。

 そして三体の黒い修司に変化したハイマックスは、三人がかりで聖龍HEADを襲撃した。

 三人がかりで襲ってくるハイマックスの分裂体は、その圧倒的なパワーと格段に上がった速さで聖龍HEADを叩きのめし、圧倒していく。

 HEADも三体の修司に変化したハイマックスに太刀打ちするが、三体の修司に変化したハイマックスに完膚なきまでに痛め付けられてしまった。

 本物である修司自身も当然ながら三体に変化したハイマックスに対抗しようとするが、三体の連携した攻撃の前に思うように戦えなかった。

 そして遂には小田原修司も、他のHEAD同様に三体のハイマックスによって全身を痛め付けられてしまう。

 すると三体に分裂した修司そっくりに変化したハイマックスは、満身創痍のHEADの頭上で一体に戻り、全身が黒い一体の修司の姿に戻ると地上のHEADを見下ろして一同にトドメを喰らわそうとしていた。

「これでお終いだ」

 そう呟く黒い修司の姿のハイマックスは、人差し指を伸ばした右手を真上に突き上げると、その指の先から特大のデスボールを形成する。

「ファイナルデスボール」

 特大の高純度のエネルギーであるファイナルデスボールを地上の聖龍HEADに放とうとするハイマックス。

 そしてハイマックスは、特大のファイナルデスボールを放とうとするハイマックスを見上げるHEADに向けて容赦なくトドメの攻撃を放った。

 黒い修司の姿に変異したハイマックスが放ったファイナルデスボールが自分たち目掛けて落下してくるのを目の当たりにし、HEADは息を呑んだ。

 だが此処で本物の修司が皆の前に出て、聖龍剣を両手で押し出して特大のファイナルデスボールを自力で押し返そうと行動に出る。

「修司!」

 完全に無謀な行動に出た修司を見て声を上げるミラーガール。

 しかし修司は高濃度のエネルギーの塊であるファイナルデスボールを押し返そうと全身で受け止める。

 すると修司の懸命な行動が実を成して、ハイマックスが放ったファイナルデスボールをなんと押し返した。修司によって押し返されたファイナルデスボールはそのまま皆の頭上にいるハイマックスに直撃。自身が放った強力なエネルギーの塊を押し返されて直撃されたハイマックスはこれに堪える事ができず、地面に不時着して爆発した。

 地上に落下したハイマックスは、その黒い修司そっくりの体がドロドロに熔解した状態に至っていた。

「……ワタシは……ワタシは……完璧な、そして……優れた、種…………」

 修司に破れ、半ば熔解状態でドロドロに融けたハイマックスは、そのまま息を引き取った。

 エキストによって、修司のDNAから作り出された黒い巨人は、最後まで自らのオリジナルの小田原修司を抹殺しようと。そして本物の修司の様に無愛想なまま果てたのだった。

 ハイマックスは最後まで修司やミラーガール達の秘められた潜在能力の前には敵わなかったのである。

 

 辛うじてハイマックスを倒した聖龍HEADが、どうにか立ち上がり先へと進もうとしていた。その時。

 暗闇の中から、一人の老人科学者の姿が現われた。

「遂に己のコピーとも言えるハイマックスをも倒してしまうとは……流石じゃの、修司」

「お前は……! ゾディアック!」

 修司達の前に現れたのは、エキストの従者でもある謎の科学者ゾディアックであった。ゾディアックは不敵な面で修司を見据えては、彼に告げた。

「ぐふふふふ……流石、流石じゃよ、修司。ワシの最高傑作……」

「何の話をしている? 俺はあんたなんか知らないぞ」

「くはーはっはっはっ、そうじゃ、それでいいのじゃ」

「?」

「ワシが過去に手を加えて記憶を消した通りじゃ。それでこそ、二次元人を滅ぼすメシアには違いない」

「なに? メシアだと……!?」

 修司だけでなく皆もゾディアックの言葉に困惑していると、ゾディアックは修司の目を見詰めて催眠をかけてきた。

「メシア、メシアよ……今こそ目覚めるのじゃ。そして己に課せられた……そう、その滅びの力を使って真の使命を果たすのじゃ……」

「………………」

 ゾディアックの言葉に次第にのめり込んで行く修司に、ミラーガール達が不安を感じ取った。

「コッチに来い、メシアよ……ワシが作り変えた最強の戦士よ……今こそ使命を果たすのじゃ……」

 ゾディアックの言葉に意識を持っていかれた修司は、自然と足がゾディアックの方へと向かってしまってた。

 だが、修司がゾディアックの催眠によって操られかけた、その時。

「修司!」

 ミラーガールが修司の裾を引っ張って、彼に声を掛けた瞬間、修司の意識は戻り、催眠も解けた。

 催眠が解けた修司は、改めてミラーガールや仲間達の顔を振り向いて確認する。其処には、どんな魅力的な力よりも輝いている、頼りになる仲間達の顔が並んでいた。

 そして修司に催眠をかけて操ろうとしていたゾディアックは、修司達にこう言い残した。

「そうか……その蒼き衣を纏う聖女が、お前の良心……お前が、最も信頼を寄せていられる女なのじゃな。じゃが、お前には既に破滅の化身メシアとしての意思が植え付けられている事を忘れるでないぞ。いつの日か、そういつの日か……お前は愛する者も憎む者も、全てを滅ぼす存在に変わるのじゃ」

 そう言い残したゾディアックは、再び暗闇の中に戻り、姿を晦ました。

 

 ゾディアックが言い残した謎の台詞の数々に困惑する修司。するとそんな彼にミラーガールが優しく話し掛ける。

「修司、今は何も言わないわ。急いでエキストの許に向かいましょう」

「………………」

「修司が何者だろうと関係ない。私たちにとっては大切な仲間には違いないもん。だから一緒に、最後まで戦いましょう」

「アッコ……」

 最後には笑顔で励ましてくれるミラーガールの台詞に、修司は背中を後押しされた気分に至った。

 そして一行は、遂に秘密研究所の最深部であるエキストの許へと向かうのであった。

 

 

 

[HEADVS孤独な天才]

 

 修司のDNAから作り出されたナイトメアウィルス、そして最強を自負したハイマックスを倒した聖龍HEAD一同。

 一行は遂にナイトメアウィルスとハイマックスを作り出したエキストが潜伏しているであろう秘密研究所の最深部に辿り付いた。

 エキストは何処にいるのかと、修司達は辺りを見渡しながら進んでいると。

 一行の前に、白衣姿のエキストが闇の中から現われた。

「流石だね……全て壊されたよ。もう、何も残ってないよ……」

 エキストは、自身が作り出したナイトメアもハイマックスも全て聖龍HEADによって破壊された事態に至っても冷静さを欠けてなかった。

「エキスト! 観念しなさい! そして……今からでも遅くない……あなたの犯した罪の償いをするのよ!」

 そんなエキストにミラーガールが投降を勧めるが、エキストは全てを失っている状況に余裕の笑みを浮かべる。

「まだだ……最後の実験が残ってる。ボク自身が戦うよ……」

「やめろ! 自分がどれだけ愚かな事をしているか、解っている筈だ!」

 未だにHEADへの対抗意識を燃やすエキストに修司が説得しようとするが、エキストは追い込まれた状況からか不敵な笑みを顔に浮かべて言い放った。

「……こうなったら、どうでもいいんだよ……前から憧れていたんだよ……キミ達を解析する事を! 来い、HEAD!」

 すると次の瞬間、エキストは着衣していた白衣を一気に脱ぎ捨てた。そのエキストの容姿を目の当たりにし、HEADは愕然とした。

 なんとエキストは、全身黄金色のアーマーを装着していたのだ。

 黄金のアーマーを着衣したエキストは、空中を浮遊しながらHEADに向かって攻撃を開始した。

「逃がさないよ」

 不敵な笑みでHEADに請えをっけるエキスト。彼の戦意に感化され、HEADもエキストに攻撃を仕掛けた。

「これで全てを終わらせる……! HEAD! エキストに向かって集中砲火だ!」

 副長メタルバードの指示で、セーラー戦士や魔法騎士、コレクターズにカードキャプターそしてミュウミュウズにちせがエキストに総攻撃を放つ。

 しかし聖龍HEADの高威力の必殺技を一身に浴びたエキストは、全くの無傷で宙に浮いていた。

「な、何だと……!」

 自分達の総攻撃を受けても、まったく傷一つ負わないエキストを目の前にメタルバード達は騒然とした。

「ククク……これが噂に名高い聖龍HEADの実力かい? とんだ拍子抜けだね。次は……ボクの番だ!」

 総攻撃を浴びて不敵な笑みを浮かべるエキストは、掌を前に突き出すと其処からボール状のエネルギーを放つ。

 エキストの攻撃に、HEADは各自散り散りに散って攻撃を回避しようとするが。

「逃げられないよ」

 エキストの不敵な一言の通り、放たれた球状のエネルギーは回避しようと離れたHEADを引き寄せては彼女達にダメージを与える。

「うわっ!」「セーラームーン!」

 球状のエネルギーに引き寄せられてダメージを負うセーラームーン達を見て、エンディミオンが声を上げる。

「くそっ」

 すると此処で修司が聖龍剣を構えて、エキストに急接近。直接エキストを倒そうと図る。

「フッ」

 それを見たエキストは不敵に口元を笑ませる。そして修司がエキストに斬りかかろうとした瞬間、エキストが装着している黄金のアーマーから光の壁が発生し、修司の剣戟を防いだ。

 黄金のアーマーに弾かれ、修司は自身の背後へと弾き返されてしまう。

「くっ」「修司!」

 弾かれる修司に駆け寄るミラーガール。

 するとエキストは高らかとHEADを見下しながら語り出した。

「わはははっ、ボクが作り上げたナイトメア・アーマーはどうかな? キミ達の如何なる攻撃を全て無力化してくれる。それだけじゃない、ナイトメアウィルスの力でキミ達をジワジワ嬲り殺せる、最高の完璧な防御力を誇るアーマーだ! ははっ、ボクが過去に憧れた聖龍HEADを直々に倒せる唯一無二の存在になれるんだ……ハハハハーーッ!」

 エキストはHEADの攻撃を一切受け付けない完璧に近い防御力を誇る黄金のナイトメア・アーマーを装着して得意気になっていた。

 そしてエキストはそれからも続けてナイトメアウィルスの力で放つエネルギーを聖龍HEADにぶつけて苦しめ続けた。

「逃げられないよ」「わあっ」「きゃあっ」

 時には吸引力で引き寄せる種類と、動きを鈍くする種類、そして追尾してくる種類のエネルギーボールに次第に追い詰められていく聖龍HEAD。

 しかしエキストに損傷を与える術も無く、HEADはエネルギー弾から逃げ延びながらエキストに対する突破口を探った。

 だが、そんな危機的状況のHEADに微かな勝機が顔を覗かせた。

 それはエキストが放ったエネルギーボールを修司が聖龍剣で滅多切りにして、どうにか打ち消そうとしてた時のこと。修司が切り裂いたエネルギー弾は分裂して4つの球体へと変化。そしてその内の一つが、球を放ったエキスト自身に直撃したのだ。

「ぐっ!」

 エキストは自身が放ったエネルギーで損傷を負ったのを目撃した聖龍HEAD一同は驚いた。

 ナイトメアウィルスのエネルギーで自身を強化・攻撃手段に用いていたエキストには如何なるHEADの攻撃も意味を成さなかったが、同じナイトメアウィルスの力の前には高い防御力を誇る黄金のアーマーの効果は無効だったのだ。

 この事実に気付いた修司たち聖龍HEADは、エキストが放ってくるナイトメアエネルギーを破壊して、その破片をエキストに当てる事で彼を追い詰めようと行動に移る。

 一方のエキストも、まさか全ての攻撃を無効化するナイトメアエネルギーそのものが弱点であるとは初めて知り、激しく動揺していた。

 が、エキストはスグに冷静を取り戻し、疲労困憊の聖龍HEADを更に追い詰めようとナイトメアエネルギーを放ち続ける。

 しかしエキストが使用するナイトメアエネルギーそのものが彼の弱点だと知った聖龍HEADは各々の武器や技で、ナイトメアエネルギーを破壊して周囲に飛び散る破片をエキストに当てようと画策する。

 だがエキストは、空中浮遊で移動しながら自分に飛んでくる破片を容易くかわしていく。

 これに対して修司が皆に言った。

「諦めるな! 相手はたったの一人……一人だけなら、独りじゃできない戦法で立ち向かえばいいだけのこと!」

 そう修司に指摘されたHEADは、独りで戦いを仕掛けるエキストには不可能な協力・連携での戦術で対抗しようと互いに合図を送り合った。

 そしてエキストが放ったナイトメアエネルギーをちせが強力な砲撃で破壊し、その破片をキューティーハニーが剣で弾き返して死角からエキストにエネルギーの破片をぶつける。

 更に東京ミュウミュウズも、マーメイドメロディーズも連携してエキストにエネルギーの破片の弾道を変えて直撃させる。

 同じ方法で魔法騎士の三人もさくらと協力して、エネルギーをエキストに直撃させる。

「ぐっ……! ここまでやるとはね……でも、これで終わりだ!」

 エキストは自身の中に蓄積されたナイトメアエネルギーを暴走させ展開、広範囲を攻撃してきた。

「うわあっ」

 エキストが放った広範囲の攻撃を受けて、ナースエンジェルが立っていた足場が消滅。危うく落下しそうになるが、それをジュピターキッドが寸前で助け出す。

 さらにエキストの広範囲攻撃は続いた。

「失せろ!!」

 エキストは怒りに身を任せて、聖龍HEADを消滅させるほどの攻撃を仕掛けていく。

「トドメ!!」

 もはや完全にHEADを跡形も無く消滅させる勢いで、エキストは攻撃を続けた。

 

 そんなエキストの能力と戦法を拝見して、修司とミラーガールは同じ事を考えていた。

(ナイトメアエネルギーの特性……アレは俺の闇の能力と似ている! やはりナイトメアは俺から生み出された産物に違いないな)

(修司の遺伝子から作り出されたナイトメアが此処まで驚異的だなんて……早くエキストを止めないと)

 ナイトメアが攻撃を無力化する点に至るまで、修司の能力と酷似している点に気付く修司本人とミラーガール。

 二人は一気にナイトメアエネルギーで武装したエキストへと攻撃を仕掛けようと踏み込んで急接近した。

「失せろ!!」

 エキストは汚い言葉を吐いて、周囲に無数のナイトメアエネルギーを放射。HEADを一気に追い詰めようとした。

 が、これがエキストの失敗だった。周囲に展開したナイトメアエネルギーは既に打開策に気付いたHEADによって破壊され、その無数の破片がエキストへと弾かれた。HEADの仲間と同じく修司とミラーガールもエキストが放ったエネルギーを刃で弾き返して本人に直撃させようと軌道を変えた。

「う、ウソだ……! ボクが、このボクが……こんな旧時代の産物どもに負けるというのか……!!」

 周囲を全て弾き返されたナイトメアエネルギーで包囲され、逃げ場すら失ったエキストは深く絶望した。

 そんなエキストを前に、修司が哀愁漂う強面でエキストに呟いた。

「エキスト……天才であるお前にも、一つだけ手に入れられなかったものが敗因になったな。こんな愛情を感じられない俺でも手に入れられたもの、そう……人との繋がりを」

 人と人とを結び付ける繋がり、絆こそ敗因であると呟く修司。修司も過去に一歩間違えれば、エキストと同じ様に孤独に陥ったかもしれないからだ。

 そしてHEADの連携と協力戦の賜物であるナイトメアエネルギーの破片は、包囲する様にエキストに接近して彼に大打撃を与えた。

「嘘だぁぁぁぁっ!!!」

 最後まで己の才能に酔い痴れ、そして理解者を得られなかったエキストの孤独な抗いはこうして幕を下ろした。

 エキストが作り出したナイトメアという二次元人を洗脳する悪夢と共に、彼の野望も潰えたのである。

 

 

 

[蘇った破壊神]

 

 ナイトメアエネルギーを用いて、如何なる攻撃をも無効化する最強の防御力を誇るアーマー。そしてアーマーから放たれるナイトメアエネルギーの攻撃でHEADを追い詰めたエキスト。

 だが、そのナイトメアエネルギーこそが絶対の防御力を誇るエキストのアーマーを打ち破る術であり、HEADは放たれるエネルギーの破片をエキストに喰らわす事で反撃。

 そして遂にエキスト・ラ・ドリックスはHEADの前に敗北した。

「くっ、修司のDNAをもってしても……ゲホッ、勝てなかったか? ハーーハ――……いや、グッ、解析が不完全だったからな……き、旧時代につ、作られた、殺戮陽動プログラムに負けたのか……」

 エキストは、その黄金のアーマーを打ち破られて敗北しても、まだ抵抗の意識だけは潰えていなかった。

「エキスト! もう、やめましょう。今なら、まだあなたにも引き返せる道が残っている筈……一緒に、帰りましょう」

 敗北したエキストに慈愛の精神を向けるミラーガールに続き、修司もエキストに話し掛ける。

「エキスト、お前のした罪は所詮は消えない。だが、罪を背負って生きる事はできる筈。今からでも遅くない、共に……」

 しかしエキストは。

「だ、黙れ……! お前たちに何が分かる? ぐっ……自分の努力が、才能が認められない日々……そ、そんな毎日を送ってきたボクの気持ちなど、ハァ……分かってたまるか!」

 エキストは修司たちHEADを睨みながら語り始めた。

「ぐっ……ごほっ、ま、まだ終わりじゃない。ボクはこのまま、無様に消えていく旧時代の……愚かな悪役とは、ゲホッ……違う。こんな最悪の事態も、ちゃんと考えておいたんだ。ハーー、ハーー」

 満身創痍で息も絶え絶えのエキストは、苦しそうな呼吸でHEADに語り続ける。

「これだけは……使いたくなかった。ボク自身も、消されてしまうかもしれないが……」

 現場の聖龍HEAD、そして現場からの音声と映像を通信機を通して見守る聖龍隊本部のウッズ達が見届ける中、エキストは衝撃の告白をした。

「ハッ、破壊神を復活させたよ……! メカ……ルスをね!」

 これには現場の修司やミラーガールたちHEADに、本部でエキストの告白を聞いてた聖龍隊士一同が愕然とした。

「「「あの野郎、トンでもない事しやがったーーッ!!」」」

 エキストの衝撃の告発に、ウェルズは仲間の隊士と抱き合ったまま飛び上がってしまう。

 そんな皆が愕然としている中、エキストは傷だらけの体で笑い出した。

「く、クハハハ……ボクは、ボクは……ただ二次元人だけの理想郷を、完璧な平和を築こうとしていただけなのに……キミ達は、それを否定したから……否定したからこそ、メカルスなんて怪物が蘇ってしまう結果に繋がってしまうんだ。やっぱりキミ達は欠陥品だよ……ボクの理想郷を破壊し、メカルスが蘇る結末に結果を繋げてしまう疫病神だ! ハハハ……」

 メカルスが蘇ったのは、自身の想い描く理想郷を否定したからこそだと提言するエキスト。

 エキストはメカルスウィルスと、修司のDNAデータが酷似している点に気付き、興味本位でプログラムを組み立てた事で完全に消滅したメカルスが復活し始めたのだ。

 

 誰もが狂った様に笑い出すエキストと、かの強敵メカルスが蘇った事実に愕然としていた。

 その時。

「調子に乗るな、若造!」

 と、修司の声が響いた。

 現場の皆が一斉に修司へと顔を向けるが、修司は喋ってないと首を横に振る。

 すると暗闇から見覚えの在る顔が現われた。それは修司のコピーである復活したメカルスだった。

 メカルスは興味本位で自分を復活させたエキストに怒声を放った。

「あの程度では死なんわっ!!」

 更にメカルスは、一気に顔から血の気が引いていくエキストに言い放った。

「お前の助けなど、必要なかった! 邪魔だ! 消えろ!」

 暗闇から強力な攻撃を放ったメカルスの攻撃がエキストに直撃し、彼は絶叫した。

「ぐぁぁぁぁぁぁあああああああーー!!」

 絶叫したエキストはそのまま白目をむいて卒倒してしまう。

 そしてエキストに攻撃を放ったメカルスは、苦しそうな口振りでHEADに告げた。

「くっ、こっこれで、邪魔者は……おっ、お前達だけだ! 今度こそ、け、決着をつける……っ。この先で、待っているぞ!」

 そんな話すのもやっとな感じが窺えるメカルスの伝言に、ミラーガールと修司はメカルスとの戦いを決意する。

「くっ! またメカルスなの! でも、また完全に復活してないみたいね。急ぎましょう!」

「メカルス、お前が消えたとは思えなかったからな。宿命だな……ここで再会したのも。決着をつけるッ!」

 

 と、皆がその場から急ぎ復活したメカルスの許まで駆けつけ様としていた、その時。通信士のウッズがミラーガールに何故か部屋の片隅で倒れているゾディアックの容態について訊ねてみた。

「……アッコさん、聞こえますか? 気になったんですけど。そこで倒れているゾディアック、一種の脳死状態みたいですが。死んでいるんですか? ……まるで魂が抜けたみたいですが……」

 魂が抜けた脳死状態のゾディアックについてミラーガールに問い掛けるウッズ。

「何の反応も無いわ……一体これは? ……いいえ、今はそれどころじゃない! メカルスを追うわ!」

 しかしスキャンしても何の反応も見られないゾディアックに気を取られている余裕は無く、ミラーガールは仲間と共にメカルスの許へと急ぐ。

 すると、そんな矢先。ミラーガールは一人だけ動こうとしない修司に気付いて、彼に声を掛ける。

「修司、どうしたの? 早くメカルスの許に急がないと……」

 すると修司は険しい面持ちでミラーガールに言った。

「ナイトメアもハイマックスも、所詮はメカルスと同じ、俺が元凶だ。多くの災い、悲劇が全て俺に通じている……俺は、俺は……!」

 ナイトメアもメカルス同様に自身の責任だと踏まえる修司の苦悩を知って、ミラーガールは優しく修司に話し掛ける。

「……修司、今は何も考えず、兎にも角にもメカルスを倒しましょう! 悩むのは、後で私も一緒になって悩んであげるから」

「アッコ……」

 ミラーガールからの気遣いに背中を後押しされた気分の修司は、彼女と共に現場から離れてメカルスを追うことに。

 と、修司がメカルスを追いかけようと走り出したその矢先。何処からか声が。

(……行けっ! ……行くのじゃ、修司! お前こそが最強の戦士じゃ!)

「ん? ……誰か呼んだか?」

「どうしたんですか? 修司様」

 脳死状態のゾディアックから聞こえて来たような声に反応する修司。そんな彼にウッズが何事かと声を掛けるが、修司はスグに意識をメカルスへと集中させた。

「いや、何でもない。メカルスの所に向かうぞ!」

 

 こうして聖龍HEADは、エキストによって復活してしまったメカルスを討伐する為に、メカルスが潜んでいるエリアへと足を運んだ。

 

 

 

[蘇る調査員と死者の如き機神]

 

 苦戦の末、どうにかほぼ無敵状態のエキストを倒した聖龍HEAD。

 しかしエキストは、自身がナイトメアウィルスやハイマックスを作り出す際に利用した小田原修司のDNAを基に、興味本位で革命軍士総司令官メカルスを蘇らせてしまったのだ。

 そして復活したメカルスはエキストに怒りの砲撃を喰らわしてトドメを刺した直後、HEADに改めて宣戦布告する。

 これにHEADは総動員でメカルスが待ち受ける地下空間の最深部に駆け付けるのだった。

 

 そしてHEADが最深部に到達すると、そこで彼女達を待ち受けていたのは衝撃的な輩だった。

「……! お前は……お前達は!」

 目の前に現れた集団を目の当たりにして、メタルバードは驚愕した。

 そしてメタルバード同様に他のHEADの面々も驚愕した。何故なら。

 HEADの前に現れたのは、ミラーガールや修司達が倒した筈のナイトメア調査員の面子だったのだ。

 コマンダー・ヤンマーク/グランド・スカラビッチ/ブレイズ・ヒートニックス/ブリザード・ヴォルファング/レイニー・タートロイド/バイオシャーク・プレイヤー/シールドナー・シェルダン/インフィニティー・ミジニオン。聖龍隊を苦しめた調査員が一堂に集結していたのだ。

「こ、こいつらは……!」

「メカルスの奴め……自分の完全復活の前に、ナイトメア調査員の肉体と能力だけを時間稼ぎの為に蘇らせたんだ!」

 ジュピターキッドが戸惑う中、修司は冷静に状況を分析して、メカルスが自身の完全復活のための時間を稼ぐ為に死んだナイトメア調査員の肉体だけを蘇らせたのだと推測する。

 そして並居る強敵揃いのナイトメア調査員を前に、メカルス完全復活を阻止する為に立ち止まる訳にはいかないと焦燥を顔に浮かべる修司とミラーガール。すると、そんな二人にメタルバードが言った。

「……修司、アッコ。ここはオレ等が食い止める。お前達は一緒にメカルスの許に急げ」

「なっ……!?」

「バーンズ、そんな……それじゃ、みんなは……!」

 突然のメタルバードの提言に動揺する修司とミラーガール。すると、そんな動揺する二人に他のHEADも笑みを向けて話し出した。

「修司! 所詮、メカルスはお前から生み出された危険なロボット……お前自身で倒すのが道理だろ?」

「ま、衛……」

「アッコちゃん、しっかり修司君を見張ってないと、またどっかに一人で勝手な行動取るかもしれないよ」

「そう、だからあなたも修司君と一緒に。ね」

「セーラームーン、マーズ……」

 キング・エンディミオンの言葉に修司は、そしてミラーガールはセーラームーンとセーラーマーズからの言葉を賜って唖然とする。

「修司君、もうメカルスに対抗できる戦力は、あなたが最も適任よ。……アッコちゃん、修司君がまた暴走しないように、しっかり見守るのよ」

「キューティーハニー……」

「二人がどんな怪我を負っても、必ず私が治療してあげるから」

「ナースエンジェル……!」

 キューティーハニーにナースエンジェルの励ましの言葉に背中を押される修司とミラーガール。

「二人なら、きっと大丈夫! 私たち、信じてるよ。二人がメカルスを倒してくれる事を」

「うん、きっと……絶対に大丈夫! 修司さんとアッコさん、二人の絆なら、どんな困難も乗り越えられる筈!」

「光、さくら……」

 獅堂光たち魔法騎士と木之元桜の激励に修司は胸の内が熱く迸った。

「二人なら大丈夫、そんな気がしてならないわ。少なくとも、此処は任せて。私たちで調査員を足止めするわ」

「ちせ……」

 最終兵器だったちせからも後押しされる言葉を掛けられ、戸惑う修司。

「ほらっ、早く行ってニャ!」

「私たちも負けません! だから二人も私たちを信じて、どうか先に……メカルスを倒して!」

 ミュウイチゴに七海るちあが急かす中、修司とミラーガールは自分達だけで進攻するのを躊躇っていた。

「修司さん、アッコさん! もう私たちは弱くないんです! どうか信じて……」

「修司、あなたが人を信じられない障害を持っているのは知ってるわ。だけど今は……今だけでも信じて」

 ウォーター・フェアリーに真紅は人間不信な修司に訴え掛ける。

「義兄さん、行って! 此処は僕達に任せてっ」

「修司、アッコ……オレ達はお前らを信じる。だからお前らもオレ達を信じて、先に行けッ」

 ジュピターキッドにメタルバードも二人に先へ進むように嘆願する。

 皆の信頼と願いを託され、修司とミラーガールはメカルスが潜む最深部へと二人だけで進攻する決意をした。

「……分かった。お前達にこの場は任せる!」

「私たちは必ず勝って再び合流する! それまでみんな、死なないでっ」

 修司とミラーガールは、そう言い残すと仲間達に調査員の相手を任せて一足先にメカルスの許へと向かっていった。

「タクッ、オレ達がお膳立てしてやらないと進めねえのかね?」

「まあ、これでHEADの最強戦力を先に進攻させられる。後は僕たちが総力を挙げて、この蘇った調査員の足止めをしないとね……」

 メタルバードが愚痴を零す中、その隣でジュピターキッドが調査員達の足止めを死ぬ気で行う決意を示す。

 修司とミラーガール。二人ならメカルスを倒して、荒廃した地球に平和を取り戻してくれると信じた聖龍HEADの面々は、鋭い眼光で目の前で対峙するナイトメア調査員と激しい乱戦を開始するのであった。

 

 そして修司とミラーガールは、苦労の末にどうにかメカルスが潜んでいると思われる最深部に到達した。

 そこは赤い絨毯が敷かれている広間だった。

 するとその広間に、空中から物質転送装置で瞬間移動してきた満身創痍のメカルスが現われた。

 メカルスは思いっきり床に背中から落下すると、よろりよろりと立ち上がり、目前の修司とミラーガールと向き合った。

「メカルス! まだ完全に復活してない様ね」

「流石のお前も……完全に復活してないようだな」

 完全に復活してないメカルスを前に言うミラーガールと修司。その二人にメカルスは苦しそうに言い返した。

「ゲホッ……ミ、ミラーガール……修司、か? 邪魔だ……失せろっ!」

 しかし、そんな完全に復活してない状態のメカルスの様子を見て、修司達は戦意を向けた。

「そうはいかない。これはチャンスだ。今度こそ完全に消滅してやる!」

「またとないチャンスね。今度こそ完全に消して見せるわ!」

 だが満身創痍状態のメカルスは、修司とミラーガールに強気で抵抗の意を示す。

「……ほ、ほざく、な……お前らなど、この体で……十分だ。ゴホッ」

「楽にしてやるぜ、メカルス!」

「行くわよ。覚悟しなさい、メカルス!」

 こうして復活が不完全な、ゾンビの様な姿で現われた言動もたどたどしいメカルスだったが、修司やミラーガール達に対する執着心は変わっておらず、二人と戦闘にもつれ合った。

「ゴホッ……ゴホッ……」

 本来は有機物・無機物どちらにも感染するメカルスウィルスが実体のメカルスであるが、再生途中の未処理プログラムなのかゾンビの様な動きで咳をこぼしながら遅く動く。

 するとメカルスは先ほどエキストを葬ったのと同じ、高速で放つウィルス弾を口から発射した。これを修司はかわし、ミラーガールは盾で弾き返してメカルスへと返す。

 ウィルス弾、バグショットを跳ね返されたメカルスは、微塵も動じない状態で、今度は不気味な声と共に巨大なバグエネルギーの衝撃波を前面に展開し、修司とミラーガールを同時に攻撃する。

 だが、放たれた衝撃波に修司とミラーガールはスライディングで回避すると、ボロボロのメカルスへと急接近。ミラーガールは盾にエネルギーを溜めて光弾を発射し、修司はメカルスへ連続で聖龍剣を斬り込み攻撃する。

「うおおおぉぉぉ……!」

 と、修司とミラーガールの攻撃を受け続けてたメカルスは唸り声を発すると、危険予知した修司とミラーガールは急いで距離を離した。

 するとメカルスは、バグエネルギーを無理矢理に攻撃エネルギーに変化させたウェーブ弾を乱れ飛ばして二人を追い詰める。

 このウェーブ弾を回避しながら、修司はメカルスの真上へと跳躍して頭上から一気に頭部目掛けて聖龍剣を突き立てて急降下した。

「てやあッ!」

 そして修司の聖龍剣はメカルスの頭部に突き刺さり、それと同時にメカルスは床へと埋まる様に倒れ込む。

「ぐふっ」

 メカルスが奇声を上げて転倒すると、それと同時にバグエネルギーが飛散し、側に居たミラーガールへと危うく当たる所だった。

 

 こうして不完全な復活を遂げたメカルスは、息も絶え絶えの苦しそうに咳をこぼす痛々しい状態を曝しながらも修司とミラーガールに抗い続ける。

 だが、完全な復活を遂げていない弱々しいメカルスを前に、修司とミラーガールは早々に戦いを終わらせようと一致団結する。

「もういい加減……眠りに就きやがれ! メカルス!!」

「あなたはこれ以上、戦う事はないの!」

 修司とミラーガールは、最後の一撃をメカルスへと叩き込んだ。

 するとメカルスは後ろめりに倒れて不気味な笑い声を発した。

「グフェフェッフェッフェッフェッ……」

 まるで最初から倒される事を想定していたような、不気味な笑い声を残してメカルスは爆発した。

 

 

[最後に笑う者]

 

 ゾンビ状態のメカルスを倒した修司とミラーガール。

 しかし二人は長年の勘と経験から、メカルスはまだ消えてはいないと確信してた。

「……倒したの? いいえ、そんな訳ないわ」

「……何処にいる? とっとと出てこい!」

 ミラーガールと修司が辺りを見渡してメカルスの姿を探していると、其処に二人以外の聖龍HEADが全員駆け付けて来た。

「おーーい、修司! アッコーーっ!」

「バーンズ!」「みんな! 無事だったのね」

 先ほどメカルスが時間稼ぎとして蘇らせた8人の調査員からの追撃を阻む為に残った修司とミラーガール以外の聖龍HEADの仲間達を見て、修司とミラーガールは安堵した。

「ああ、遂さっき、俺たちと激しく戦っていた調査員達が突然、消滅してな。何事かと思って、二人を追ってきたんだ」

「おそらく、完全に復活できてなかったメカルスが急ごしらえで蘇らせた8人だったから、メカルス本人が俺たちに倒されたと同時に調査員達も消滅したんだろう」

 キング・エンディミオンの事情を聞いて、修司が定説を唱える。

「そ、それで! メカルスは倒したの?」

「いいえ、まだメカルスはいます! ……感じます、メカルスの悪を!」

 キューティーハニーからの問い掛けに、ミラーガールは何処か近くに潜んでいるメカルスの悪意を敏感に感じ取っている事を説明した。

 すると急に、辺り一帯が暗闇に閉ざされ、暗闇の中で戸惑う聖龍HEADにメカルスが声を掛けてきたのだが。

「フハハハ、まだだ! ごれがるが、ホンバナだっ。ジネ! ミラーガール! ジュウジ! ジヌンダッ! オマエラゼンイン……」

 支離滅裂な言語を話すメカルスの言動を聞いて、ミラーガールと修司は目を丸くした。

「……な、何を言ってるかも解らない……意識すらハッキリしてない筈なのに、それでも私たちへの執着は……楽にしてあげるわ! メカルス……完全に眠りに就くのよ!」

「相当逝っちまってるな……まともに喋れもしないとは。……折角消えたメカルスウィルスが復活されたらシャレにならねえ……完全に消してやる! 終わりだ! メカルス!」

 己の意識すらも明確でないにも拘らず、敵対している聖龍隊への執着心だけは異様に残っている現状に、ミラーガールは情けの積もりで早々に楽にさせる為に、修司は消えた筈のメカルスウィルスが復活する前に片を付けようと固く決心した。

 そして次の瞬間、辺り一帯が暗闇になると2回の地響きが。そして暗闇が晴れ、辺りが明るくなると、なんと修司達の目の前に床を突き破って出現した巨大なメカルスの上半身が。

 その容姿は、皮を剥がされたゾンビの様な姿で、周囲からは無数のコードが接続されていた。顔だけでも修司達の2倍から3倍は大きく、かなり巨大である事が伺えた。

 両腕は地面に埋まっており、巨大なヘルメカルスは口腔に埋め込まれている発射口から緑色の極太ビームを放った。

「消えろ!!」

 修司達はヘルメカルスの攻撃を、体を伏せて回避する。

 するとヘルメカルスの額のコアから緑色の粘液が染み出し、それが様々な敵として形成されていき、修司たちHEADに襲い掛かる。

「雑魚が群がってきた……総員、メカルスの額から出現した雑魚を一掃しろッ!」

 修司は仲間達に出現した雑魚敵を片付ける様に指示すると、共に群がってくる雑魚敵を切り払って討伐していく。

 聖龍HEADがトゲがあり浮遊している雑魚や口から弾を発射するタイプの雑魚、それに天井や地面に張り付きながら弾を発射しながらゆっくり近付いてくる雑魚を一掃していると、ヘルメカルスが唐突に叫んだ。

「終わりだ!!」

 ヘルメカルスは口を大きく開け、修司達の足元に光淵を発生させると、その足元から緑色のエネルギーの激流を出現させて広範囲を攻撃。自らが生み出した雑魚敵をも一掃する高威力でHEADを一掃しようと目論む。

 しかしHEADは間一髪でヘルメカルスの広範囲攻撃を避け、直撃だけは免れた。

「失せろ!!」

 と、ここでヘルメカルスは再び口を大きく開けて、口腔の発射口からバグエネルギーを射出して、修司達の居る場所に大きなボール状のバグエネルギーを左右に分裂させて展開する。

 ヘルメカルスの猛攻撃を回避し続けながら、修司達はヘルメカルスに反撃を転じようと画策する。

「修司、弱点は……口の中の発射口よ!」

「ああ、分かった」

 ミラーガールからの助言に、修司は素直に返事を返す。

「一気にケリを着ける……! 大聖光 魔鳥を仕掛けるぞ!」

 ヘルメカルスと早々に決着をつける為に、修司は連携合体技である大聖光 魔鳥を仕掛けると仲間に伝える。

 修司から伝言された指令に、仲間の聖龍HEADは寡黙な表情で頷いて、修司と共に大聖光 魔鳥をヘルメカルスに叩き込もうと決意する。

 そして修司を先頭にした聖龍HEADは、陣形を組んで一体の大きな鳥の形を成形した。

 その様子を見たヘルメカルスは、このまま聖龍HEADに必殺技である大聖光を使わせて堪るかと、彼女達の足元から再び緑色のエネルギーの激流を発生させる。

「喰らいな!!」

 足元から真上に向かって激しく放流されるエネルギーの太い柱に、聖龍HEADは一旦散り散りになって回避。そして再び集結して魔鳥の形に陣形を組んだ。

 鳥の形に陣形を組んだ聖龍HEADは、ヘルメカルスの弱点である口腔の発射口に向かって一気に駆け出した。

『大聖光 魔鳥!』

 すると鳥の形に陣形を組んだ聖龍HEADから蒼い聖なる光が放出され、それが彼女達を包み込んで一体の巨大な蒼い鳥となってヘルメカルスの口腔へと突っ込んでいった。

 目前まで迫る聖龍HEADの大技を打ち消そうと、ヘルメカルスは口腔の発射口から極太のビームを放射。

「ぬんっ!!」

 ヘルメカルスの口腔の発射口から放たれた極太の緑色のビームは大聖光を纏ったHEADに直撃。双方の大技は、互いに熾烈を極めながら弾け合い、衝突した。

 修司たち聖龍HEADの大聖光、ヘルメカルスの極太ビーム。どちらとも激しく火花を散らしながら、懸命に戦意を燃やしていた。

「……メカルス……! 所詮はお前も、俺の殺戮陽動プログラムで生まれてしまった、俺という人間兵器の副産物……そんなお前も、結局は軍事政権の被害者なのかもしれないな」

「メカルス……修司から生まれてしまった二次元人の、いいえ全てにとって驚異でしかならない悲しき敵! せめて……せめて、私達があなたの因果を終わらせてあげるわ」

 修司とミラーガールは天敵ともいえるメカルスへ少しばかり同情しながら、メカルスを安らかにさせる為にも絶対に倒そうと決意していた。

 そして次の瞬間、修司とミラーガールの決意が仲間であるHEADにも伝染したのか彼女達の大聖光は一層と輝きを増した。

「な、なぬ……ッ!」

 蒼き輝きを一層と増したHEADの大聖光を目の当たりにして、ヘルメカルスは愕然とした。

 そしてヘルメカルスが愕然とした次の瞬間、ヘルメカルスから放たれる極太のビームを大聖光の蒼き光で弾き飛ばした聖龍HEAD。彼女達はそのままヘルメカルスの口腔の発射口へと突っ込んだ。

 すると聖龍HEADの大聖光 魔鳥はヘルメカルスの口腔の発射口を大破し、そのままヘルメカルスの口腔を貫いた。

「ぐぅぅぅわあああああっ! がぁぁぁぁぁわあああっ!」

 己の口腔を貫かれたヘルメカルスは絶叫した。

 そしてヘルメカルスは爆発していくのだが、この時ヘルメカルスは聖龍隊に力強く言い放った。

「無駄だぞ! 無駄だ! わかるだろ? 聖龍隊。死なんっ! このぐらいで……わかるだろ? 修司、ミラーガールよ……」

 このヘルメカルスの言葉を聞いて、ミラーガールと修司は目付きを鋭くさせて申し返した。

「今は何よりも地球復興が大事……あなたの相手をしている暇はないの……また、私達の目の前に現れたら倒す……それだけよ」

「俺達には他にやるべき事が山ほどある……今は取り敢えず消えてろ、メカルス……」

 二人の発言を耳にし、ヘルメカルスは頭部が爆発して消滅していく中、修司たちHEADに言い残した。

「……フハハハハッ、忘れるなよ! 必ず、また復活してやるっ! 必ずだ! か な ら……ぅぅぅおおおおわわわっっっ!」

 聖龍HEADへの伝言を言い残し、ヘルメカルスの頭部は爆発で消滅。聖龍HEADは力を合わせてヘルメカルスを打倒したのだ。

 

 と、その時。

 ヘルメカルスの頭部が爆発して消滅した影響か、辺り一帯が激しい地響きを起こした。

「メカルスが消えた影響で地下空間が崩落します! 皆さん、急いで脱出を!」

 切羽詰った様子でウッズが通信で聖龍HEADに言伝する。

 修司たちHEADは急いでその場から退却しようと駆け出した。が、その時。

 頭部が爆発したヘルメカルスの近場に転がる球体を修司が発見する。

「あれは…………ソウルコア!」

 その球体は過去に、軍事政権が修司の闇の心(ダーク・ソウル)を複製しようと作り出したソウルコアと呼ばれる核であり、メカルスの本体ともいえる重要な部品であった。

 修司は急いでソウルコアを回収しようと駆け出すが。

「し、修司! そっちは危険よ、早く……!」

「だ、だが……ソウルコアを回収しないと……!」

 崩落する地下空間から急いで退避しようとしているミラーガールに制止される修司。

 すると、その時。地下空間から退避しようとしている聖龍HEADの前に一人の黒スーツに黒のシルクハットを頭に被った色白の青年が現われ、修司が回収しようとしていたソウルコアを拾い上げる。

 目の前に現れてはソウルコアを拾い上げる青年を見て、修司達は愕然とした。

「お、お前は……! ……ドラゴン、ブラッディ・ドラゴン!」

 それはメカルスの唯一の上官でもある、謎多き革命家のブラッディ・ドラゴンであった。ドラゴンは黒い皮手袋を嵌めた右手で、ソウルコアを回収すると目前の聖龍HEADに話し掛けてきた。

「……これはこれは。小田原修司、そして聖龍HEADの諸君、またも我ら革命軍士の一員であるメカルスと死闘を展開したみたいだな。だが、そう易々とメカルスの意志たるソウルコアは渡せない。まだ私達が目指す、「真に美しい理想郷」を実現する為には、メカルスが必要なのだよ」

「ブラッディ・ドラゴン……! 貴様はまだ、メカルスを使って悪巧みしているのか」

 話し掛けてきたドラゴンに、修司が目付きを鋭くさせて問い詰めるとドラゴンは不敵な笑みを零した。

「フッ、もうすぐです……もう、一年も経たない内に我々が想い描く尊く、そして美しい理想郷は実現されるのです! 聖龍隊よ、私達の目指す理想郷をこれからも妨害していくのであれば、私達は容赦なくあなた達を倒す……!」

 ドラゴンの台詞に微動だにしない聖龍HEAD。修司はそんな張り詰めた空気を切り裂く様に、ドラゴンに言い渡した。

「……今はあんたやメカルスに構っている暇は無い。俺たちは俺たちがやるべき最優先の事柄を実行し、それからあんたら革命軍士の野望を叩くまで!」

「フフ、そうですか……では、我々が世界を作り変える時まで、どうか安らかな時を過ごしてくださいね」

 修司の台詞にドラゴンは薄らと嘲笑を浮かべながら話し返した。

 そしてそのまま、ドラゴンは崩落する地下空間の中で何処かへと姿を晦ましてしまった。

 

 何処からともなく出現し、メカルスの本体であるソウルコアを回収しに来た革命軍士総元帥ブラッディ・ドラゴン。

 ドラゴンが姿を消した直後、修司たち聖龍HEADは急いで崩落する地下空間から脱出しようと駆け抜けていた。

 するとその時、地上への帰路の道中、ミラーガールは先ほどメカルスの攻撃で倒されたエキストの亡骸を発見。そして何を思ったのか、彼女はエキストの亡骸を担ぐと地上まで走り出したのだ。

 聖龍HEADは間一髪で地上へと脱出し、全員が無事に帰還できたのだった。

 

 

 

[進むべき道は理想郷へと……]

 

 命辛々、崩落する地下空間から脱出できた修司たち聖龍HEAD。

「とりあえず終わったな」「そうね」

 荒廃した地上に脱出し、修司は共に無事に脱出できたミラーガールに声をかける。

「アッコ……エキストを連れて帰ってどうする? こいつはもう……」

 修司はミラーガールに、彼女が連れて帰ってきたエキストをどうするのか質問。修司や他の皆が見ても、エキストは既に手の施し様が無いほどの惨状だったが。

「解ってるわよ。ただ、ウッズさんの同僚だったと思うと……放っておけなくて。仲間がいなくなる寂しさは分かるから、余計にね」

 ミラーガールは、自分達を補佐してくれるウッズの同僚だったエキストを放っておけないと答えた。彼女はもちろん、聖龍HEADの誰もが大切な仲間を一時とはいえ失っていた寂しさや悲痛を覚えていた。

「……フ、心配かけちまったようだな」

 ミラーガールの返答に、修司が愛想笑いを浮かべながら言うと、そんな彼にメタルバードが後頭部にツッコミを入れる。

「何が心配かけた、だよ! 毎回毎回、オレらを心配させている張本人がそんな他人事みたいにしてんじゃねえよ」

 メタルバードからのツッコミを受けて、修司は思わず苦笑いを零した。

 そんな修司達のやり取りを前に、他のHEADの面々が微笑んでいると修司が何かに気付いた。

「ん? ちょうど迎えが来たようだ」

 修司が視線を向けた先には、聖龍HEADが無事に脱出できたのかと急きょ駆け付けて来たウッズやウェルズ、そして順一にフロートさらにミラール率いるスター・ジェネレーションズの面々が駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか? 皆さん。あ……エキスト、ですか?」

 誰よりも早くHEADの許に駆け付けて来たウッズの目に飛び込んできたエキストの姿に、唖然としていると修司が訳を話した。

「連れて帰ってきたんだ。アッコの優しさって奴だ」

 今回の事件の黒幕でもあったエキストを連れて帰ってきたのは全てミラーガールの慈愛ある優しさからだと説く修司。

「ひっどいな、こりゃ! どうするんだよ?」

 そんなミラーガールが連れ帰ってきたエキストの満身創痍の容態を見て、フロートが呆れているとミラーガールが言った。

「ウッズさんに任せるわ。余計な事、したかな?」

「い、いいえ。ありがとうございます、アッコさん。分かりました、出来るだけの治療は施してみます」

 ミラーガールの優しさ溢れる行為に感激するウッズは、出来る限りの手は尽くすと返答した。

 

 全員が和気藹々としている中、副長でもあるメタルバードが皆に言い渡した。

「これで任務完了だな……いや、これから長い任務が待っている。みんなで地球を再建しないとな!」

 これに技師であるフロートが御自慢の変態ポーズで言い放った。

「アウッ、何でも直してやるぜ! 技師としての腕の見せ所だ!」

 更にフロートに続いて順一も心意気を語った。

「僕たちは……人々が安心して暮らせる世の中を……そう、種族を問わず、良心ある人々が暮らせる世界を、これからも護っていきます!」

 そんな皆の心意気を聞いたミラーガールは、穏やかな笑みで皆に言う。

「みんなで力を合わせて、ゆっくり確実に歩んでいきましょう!」

 すると修司も久しく見せていない穏やかな表情で言った。

「そうだな。長い旅は、始まったばかりだ」

 そして最後にウッズが、聖龍隊の父とも呼ばれるウッズが旧友であったエキストの孤独で悲しい思想を汲み取って、笑顔で言い放った。

 

「此処にいる皆さんで、今度こそ本当の理想郷を目指しましょう! 二次元人と三次元人が、共に平和に暮らせる世界を……!」

 

 

 

[眠りに就く鬼神]

 

 こうして聖龍HEADは無事に聖龍隊本部に帰還。

 本部で多くの隊士達と飲み明かすなど、軽い宴会状態にまで発展した。

 しかし小田原修司だけが宴会の場から姿を消した事に気付いたミラーガールたち。

 果たして修司は何処に行ってしまわれたのだろうか。

 

 その頃、当の小田原修司は聖龍隊本部の最深部に当たる場所でウッズと会話していた。

「……なるほど。これを取り除くには、かなりの時間がかかりそうですね。確かに……最新の技術を用いたとしても、怪しいものです。私達でも完全に取り除く事が出来るかどうか……」

「構わない。この辺りで手を打っておかないと……」

「ですが、今は特に異常は見つかっていない筈? 貴方なら、そのままでも問題はない筈では? 余計な事かもしれませんが、これから先……また大きな事件が起きた時、修司様抜きで対処できるか、不安です……」

「フッ、心配してもらってすまないな。でも大丈夫だ……聖龍隊士には、もっと優秀な奴がいる。そうだろ? ……それよりも、俺自身が平和を乱す存在になる事の方が怖いんだ……」

 修司は自分の潜在意識内に植え付けられた催眠暗示、殺戮陽動プログラムを抹消する為に、ウッズにその間の自分を凍結睡眠(コールドスリープ)してもらうよう頼んでいた。

 もし一度、凍結睡眠(コールドスリープ)には入れば、下手をすれば何百年という気の遠くなりそうな時間の中を独りで過ごさなければならないかもしれない。

 しかし自身の中にある、異常者(ヒール)をも生み出してしまう可能性を持った危険因子を取り除くべく行おうとする、修司の覚悟をウッズは悟った。

「…………承知しました、覚悟は出来ている様ですね」

 と、ウッズが修司に凍結睡眠(コールドスリープ)用のカプセルに歩ませようとした、その時。

「修司!」

 その聞き覚えのある声に、修司は振り返った。修司の視線の先には、悲しげな表情を浮かべるアッコとHEADの乙女達の姿があった。

「お前ら……」

「修司君、本当に私達を……アッコちゃんを置いて一人、永い眠りに就いてしまうの?」

 月野うさぎからの問い掛けに、修司は真剣な面差しで答える。

「ああ、本気だ。お前らも薄々は気付いているだろ……俺の中に植え付けられた殺戮陽動プログラムは、ただ殺戮を……破滅を誘うだけじゃない。多くの二次元人を異常者(ヒール)に変えかねない危険な代物なんだ。ここらで手を打っておかないと……」

「だ、だからって……自分自身をコールドスリープさせるなんて……!」

 戸惑う如月ハニーにも、修司は表情を微塵も変えずに答えた。

「俺は……いつの日か、お前達ヒーローやヒロインにも穏やかで平和な時を過ごせる様にと聖龍隊を結成した。だが、そんな想いとは裏腹に自分自身が平和を脅かす存在には成りたくない」

「修司……」「修司さん……」

 修司の堅牢な考えを聞いて、アッコや七海るちあ達は悲愴にくれるが。修司は顔を緩ませて微笑むと皆に言った。

「……フ、大丈夫さ。アッコ、俺が眠りが浅いのは知っているよな? もしかしたらコールドスリープの途中で目覚めちまう可能性だってある。そうだろ? それに、全ては殺戮陽動プログラムを無事に取り除ければ済む話だ。それまでしばしの別れ、って所だよ」

「修司……」

 だが、それでも下手をすれば一生再会する事も侭ならなくなる可能性にアッコは不安がる。

 すると修司はカプセルに入る前、アッコに所持していた聖龍剣を手渡した。

「え……し、修司?」

 突然、愛用の武器を渡され、戸惑うアッコに修司は言った。

「俺が居ない間、この世界の未来は……アッコ、お前達に託す! この聖龍剣は、その為に活用して欲しい」

「修司……!」

 修司の確固たる意志を感じ取り、アッコは涙目で修司を見詰める。

 

 そして修司はウッズの指示に従いながら、凍結睡眠(コールドスリープ)用のカプセルに入っていった。

「修司様、全ては貴方様の御意志のままに」

 修司の執事でもあるウッズは、主でもある修司を凍結睡眠(コールドスリープ)させる事を躊躇わず、修司の意志のままに言われるがままに準備を整えていく。

「それでは修司様、いよいよ凍結睡眠(コールドスリープ)に入ります」

「ああ……で、目が覚めるのはいつ頃になる?」

 修司がウッズに訊き返すと、ウッズは真剣な面持ちで答えてくれた。

「何事も無ければ……の話になりますが……このまま長期に渡ってコールドスリープに入れば、安全装置が作動します……そうなれば、もう簡単には目覚める事は無いでしょう。そして次に目覚める時は……おそらく約102年後の8月15日前後になる筈です」

「……分かった。成功を祈るとしよう。宜しく頼む」

「分かりました。ゆっくり、お休みください……」

 そして凍結睡眠(コールドスリープ)用のカプセルの蓋がゆっくりゆっくり閉められていき、それと同時に修司の瞼も閉じていった。

 アッコたちは、修司の潜在意識にある殺戮陽動プログラムが早い内に消えてくれる事を祈りながら、修司が凍結睡眠(コールドスリープ)されるのを見届けるのだった。

 

 

 

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