聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 バーンズたちHEADから2011年の12月に起きた「ナイトメア現象」について語り聞かされた新世代型たち。
 修司のDNAから作り出されたナイトメアウィルスと、強大なパワーを誇るハイマックスの存在が大きく印象付けられた。
「……! 小田原修司の遺伝子から作られたナイトメアウィルス……俺たちと同じ、修司のDNAから生み出された驚異……!」
 新世代型の真鍋義久は、自分たち新世代型と同様に小田原修司のDNAから生み出された多くの二次元人を危機的状況に追い詰めたナイトメアウィルスの存在に愕然とした。自分たち新世代型も、ナイトメアウィルスと同じく小田原修司のDNAから生み出されたからだ。
 真鍋だけでなく、多くの新世代型二次元人達はナイトメアウィルスを作り出せる危険な遺伝子を持つ小田原修司の存在と、自分達の存在を重ね合わせた。
 そして何よりも、そんな修司を構成する彼の潜在意識に植え付けられた殺戮陽動プログラムによる危険な意思こそが、多くの異常者を生み出してしまう根源なのではないかと聞かされ、新世代型達は不安に駆り立てられる。
「小田原修司の意思が、多くの異常者を生み出してしまうなんて……それじゃ、そんな小田原修司から生まれた私たちは一体……!」
 世界を脅かす異常者を生み出してしまう意思を持つ小田原修司から生まれた自分たち新世代型は何なのかと疑心暗鬼に陥る琴浦春香。
 そんな新世代型たちは、異常者を生み出してしまう危険な意思である殺戮陽動プログラムの除去に乗り出した小田原修司がどうなったのか、バーンズたちHEADに問い掛ける。
 するとバーンズ達は、小田原修司がコールドスリープした後の革命軍士との戦いを語り出した。
 小田原修司は己の中にある殺戮陽動プログラムを除去できたのであろうか。



現政奉還記 創生の章 昔語り【復活! 狂気の鬼神】

[プロローグ]

 

 2011年11月11日に起きた革命軍士が起こしたイレブンズプロジェクト。これにより地球に落下した国際宇宙ステーションにより、地球は焼け野原と化してしまった。

 それに引き続いて起こった「ナイトメア現象」により、荒廃した地球上で活動していた二次元人の大半が失われる事態に陥った現状の中、聖龍HEADは活動を開始した。

 その戦いの最中、行方不明であった小田原修司も帰還した事により、事態は収拾の一途を辿る事と相成った。

 最終的にナイトメアの黒幕、エキスト・ラ・ドリックスが復活させたメカルスを死闘の末に撃破した聖龍HEAD。

 しかし全てが収束したのも束の間、聖龍隊総長小田原修司は自身の中に植え付けられた催眠暗示・殺戮陽動プログラムを取り除くべく、二次元界の技術を集結させて自らを凍結睡眠(コールドスリープ)に入らせる事に踏み込んだ。

 修司は凍結睡眠(コールドスリープ)に入る直前、自らが愛用する武器:聖龍剣を加賀美あつこに託し、己が不在の間、世界を護ってほしいと切願する。

 そして修司はアッコ達が見守る中、凍結睡眠(コールドスリープ)で眠りに誘われたのであった。

 

 時は進み、年が変わって2012年の1月。

 二次元人たちによる懸命な復興作業によって、荒廃した地球は少しずつ以前の姿を取り戻しつつあった。

 しかし復興作業が進む中、異常者(ヒール)による犯罪も再び増加の一途を辿っていた。

 聖龍隊の総長にして、最強戦力でもある小田原修司が不在の聖龍隊は、日夜異常者(ヒール)が起こす犯罪や事件の取り締まりに終われる日々だった。

 修司不在の間、聖龍隊副長バーンズが代わって指揮を務めていた。

 そして加賀美あつこことミラーガールは、修司から託された聖龍剣を手に、今日も異常者(ヒール)討伐に向かうのだった。

 

 そんな新年を迎えたばかりの頃、世間は新年を迎える目出度い祝杯ムードとは裏腹に、一つの噂が流れていた。

 それは革命軍士が、世界を新たに改変するという年が、今年だというのだ。

 革命軍士が如何にして世界を改変するのか謎に包まれている状況で、人々は世界が滅ぼされかねないと懸念を募らせていた。

 

 市民の不安は的中した。

 そんな時代背景の中、ブラッディ・ドラゴン率いる革命軍士は2012年を最後の年として過激な活動に打って出た。

 無論、その活動の中には異常者(ヒール)の暴動を扇動し、世界中を混乱に陥れるという暴挙も含まれていた。

 聖龍隊は世界中の政府から要請を受け、早速異常者(ヒール)の暴動を鎮圧する為に出撃した。

 出撃する聖龍隊士の中には、革命軍士が今まで以上に活動を活発化しているという理由から、聖龍隊最高権力のHEADも広く世界に出撃していた。

 その中には、現在凍結睡眠(コールドスリープ)に入っている小田原修司から世界の平和を託されたミラーガールが聖龍剣を装備して出撃する姿も目撃された。

 

 かくして聖龍隊と革命軍士の熾烈を極めた戦いは、再び開戦したのであった。

 

 聖龍剣を武器に戦うミラーガールは、心の中では戦いへの躊躇いや戸惑いが在るものの、修司からの切願を叶える為に奮闘し続けた。

 多くの異常者(ヒール)たちを聖龍剣で切り裂いて、倒していくミラーガールの闘志に感化される聖龍隊士も多く、誰もがミラーガールと戦える事を誇りに思った。

 過酷な戦況の最中、ミラーガールは戦火で傷付いた人々の救済も忘れてはおらず、懸命に救いを求める人々に手を差し伸べていった。

 

 そんな数多の異常者(ヒール)を撃破していくミラーガールたち聖龍隊だったが、ここである現象に悩まされる。

 それはミラーガールを中心に、あの小田原修司と深い交流を果たしている二次元人たちに突如として起こった現象だった。

 その現象とは。それは彼らの脳裏に鮮明な戦闘の描写が現われ、同時に何かが目覚めさして欲しいと嘆願してくるような強い意識が脳裏に直接送り込まれるという奇妙な現象。

 最初はミラーガールのみで起こった現象だったが、それがバーンズたち他の聖龍HEADに、続いて修司の一番弟子である村田順一率いる皇軍のスター・コマンドー、フロート率いるニュー・スターズにミラールが指揮する新人養成部隊のスター・ルーキーズの面々までと、現象は感染する様に広がっていった。

 

 謎の鮮明な流血シーンである生々しい戦闘の描写に戸惑う面々だったが、ミラーガール達は今起きている暴動を止めるべく苦悩しながらも戦いに集中した。

 各地・各異世界で暴動を扇動する異常者(ヒール)を次々に撃破していくミラーガールの功績は目を見張るものだった。

 と、数多の異常者(ヒール)を撃破していったミラーガールは、此処で遂に謎の現象について、その真相に気付いた。

(……頼む……頼む、から……俺を……目覚めさせて欲しい)

 謎の声に聞き覚えのあるミラーガールは、その声に耳を澄ました。

(みん、なを……みんなを……守らなくては……一人、一人で……眠っている場合じゃ、ないんだ……!)

 その謎の声に、ミラーガールは誰の声かスグに気が付いた。

「……修司……修司なのね!?」

 謎の声の主は、現在凍結睡眠(コールドスリープ)されている筈の小田原修司であった。

 

 ミラーガールが声の主が修司だと気付いた事から、バーンズは一つの仮説を立てた。

 それは凍結睡眠(コールドスリープ)されている修司は、戦闘本能で今世界中で革命軍士による戦いが勃発した事を察して、自分も眠ってばかりはいられないと潜在意識で強く念じ、その念が一種のテレパシーとして修司と周知の間柄である二次元人の脳裏に送られた事から、多くの二次元人は修司が体験した鮮明な戦闘の記憶を垣間見たのだという。

 全ては今現在、起きている戦闘で仲間を守りたいと念じた修司の意識が多くの二次元人の脳裏に届けられた現象だったのだ。

 

 バーンズとミラーガールは、早速凍結睡眠(コールドスリープ)状態の小田原修司を目覚めさせる事にした。

 

 

 

[目覚めた鬼神]

 

 修司が凍結睡眠(コールドスリープ)に入っている一室に入室したバーンズは、早速己のテレパシー能力で実際睡眠中の修司が何を思っているのか調べてみた。

 すると修司は、皆の予想通りの思想を抱いている事が判明した。

「……やはりな。修司は今起きている、革命軍士との戦いで仲間である聖龍隊が傷付くのを酷く恐れている」

 修司の思想を読み取ったバーンズは、修司を眠りに就かせているウッズに伝える。

 するとウッズは。

「そうですか。ですが………………今、修司様を起こすのは果たして得策なのでしょうか? 皆さんもご存知の通り、修司様に植え付けられた殺戮陽動プログラムは完全に除去できておりません。そんな状態の修司様を解き放ってしまえば、どんな事態が引き起こされるか未知数です。何より……時には異常者(ヒール)をも生み出してしまう修司様の破壊衝動の思想の根源である催眠暗示を取り除かないで眠りを覚ましてしまう事を、当の修司様は望んでおられるのかどうか……」

 ウッズは狂気の催眠暗示:殺戮陽動プログラムを除去できてない状態で修司を解放する事が危険であり、同時に修司本人もそれを望んでいないのではないかと説く。

 そんなウッズにミラーガールが言った。

「ウッズさん、確かに修司の中にある催眠暗示はまだ完全に消えてないのかもしれない。けれど、私はそれでも修司を信じたいの! 修司の仲間を大切に思う心が、修司の中の破壊衝動を抑えてくれると信じてあげたいの……!」

「アッコさん……! 解りました。私も修司様の心を信じます。少し早いですが、修司様を解放しましょう」

 ミラーガールの熱意に負けて、ウッズは修司を解放する事を決めた。

 

 そしてウッズの操作の元、修司を深い眠りに就かせている凍結睡眠(コールドスリープ)の装置が次々に解除されていく。

 最後にウッズが操作した事で、修司が眠りに就いているカプセルの密閉されていた蓋が開き、カプセルの中から冷え切った空気が靄となって拡散される。

 そして白い靄の中から、カプセルの中で眠りに就いている修司の姿が浮かび上がった。

「修司……!」

 ミラーガール達が見守る中、修司は一向に瞼を開いて目覚める気配が無い。

「ど、どうなっているんだウッズ?」

「わ、私にも良くは……」

 目覚めない修司を見て、バーンズが問い掛けるがウッズにも真意は分からない。

 と、皆が深い眠りに就いている修司に注目していた、その時。

 突然、修司の瞼が開いて目覚めたのだ。この時の修司の目は、完全に戦意に満ちた禍々しい目だった。

「修司!」

 修司が無事に目覚めた事に喜ぶミラーガールの前で、修司はゆっくりと身体を起こしていく。

 そして上半身を完全に起こした修司は、その戦意に満ちた目のまま真横に居るミラーガールへと顔を向けた。

 次の瞬間。修司はミラーガールの首を両手で締め上げ始めたのだ。

「!!」「修司!!」

 突如、修司に首を締め上げられるミラーガールも、それを目撃したエンディミオン達も騒然とした。

 目覚めたばかりの修司は、戦意と殺意に支配された様子で、ミラーガールを敵だと認識している状態だったのかもしれない。

「し……修司……!」

 首を締め上げられながらも修司の名を言うミラーガール。彼女は一刻も早く修司の目を覚まさせようと必死に声をかける。

 すると彼女の目から一滴の涙が零れ、それが頬を伝って首を締め上げる修司の手へと零れ落ちた。

 その瞬間、修司はハッと気が付いた。

「……アッコ……」

 気が付いた修司は、そっと手の力を緩めてミラーガールを解放した。

「アッコちゃん!」「大丈夫ですか?」

 キューティーハニーにミュウイチゴが駆け寄り、首絞めから解放されたミラーガールに声をかける。

 一方の修司本人は、今し方自分が何をしていたのか軽く混乱しており、ミラーガールの首を締め上げていた手を見詰めるばかり。

 

 それから落ち着きを取り戻した修司は、カプセルに入っている間に冷え切った体を温めるべくシャワーを浴び、体を小まめに拭いた後に正装に着替えた。

 そして眠っている間、自分の強い思念がテレパシーの要領で多くの二次元人の脳裏に送られてしまってた事、凍結睡眠(コールドスリープ)から目覚めた直後にミラーガールの首を絞めてしまった事を仲間達から聞いた。

「……アッコ、すまない。俺自身の意思とは裏腹に、お前を殺めようとして……」

「ううん、そんなのもう良いわ。それよりも修司が無事に目覚めてくれてホントに良かった」

 修司がミラーガールに謝罪を述べると、そんな修司にバーンズが話し掛けた。

「修司、お前がアッコに手を出したのは、おそらくまだお前の中に殺戮陽動プログラムが残っているからだ。お前にも自覚はあるだろ?」

「ああ、バーンズ。俺の中に植え付けられた殺戮陽動プログラムは、まだ除去できてないみたいだ。それなのに、目覚めちまって……」

 修司はいくら非常事態といえど、危険な催眠暗示が消えてない状態で目覚めた事に多少の罪悪感を感じていた。

 だが、そんな自身が目覚めた事に後悔を覚える修司にミラーガールが歩み寄り、目前で修司に話す。

「修司、あなたが目覚めようとしていたのには訳があるのは解ってるわ。今、再び多くの世界が危険に曝されているの。革命軍士は今年こそが人類最後の年だとして、今まさに暴挙に打って出た。多くの人々が巻き込まれているわ。……確かに修司の潜在意識の中にある催眠暗示が驚異的なのは知っているけど、また私たちと一緒に戦ってくれない?」

 このミラーガールの問い掛けに、修司は戸惑いながら答えた。

「アッコ……だが、この俺の中に潜む殺戮陽動プログラムは、俺の破壊衝動を膨張させるだけでなく、その破壊衝動から連なる思想から異常者(ヒール)を生み出すウィルスが派生してしまう可能性があるんだぞ。俺の存在そのものが、多くの危険や災いを招くと承知の上で言っているのか?」

 すると、この修司の疑問にミラーガールは毅然とした態度で返した。

「……修司は、なにも無意味な破壊や危険そして災いばかりじゃないわ。自分を想ってくれる大切な仲間を気遣う思いやりも、そんな仲間を護ろうとする気高い精神も持ち合わせているじゃない。私は、そんな修司の良い所を信じたいの」

「アッコ……!」

 悪しき所だけでなく良い所も全面的に信じてあげたいと告白するミラーガールに感銘を受ける修司本人。

 修司はミラーガールに預けていた聖龍剣を手渡されると、それを掴んで戦いへの意気込みを決する。

 再び戦いへの決意を新たに意気込んだ修司の、戦意に満ちる眼差しを視認して周りにいる聖龍HEADも修司と共に革命軍士との戦いに乗り出す決意を固めた。

「よし! 修司も戦前に復帰した事だし、ここらで本腰を上げて革命軍士を止めるぞ!」

 副長バーンズからの掛け声に仲間である聖龍HEADは革命軍士との総力戦を開始した。

 

 

[暴走する鬼神]

 

 凍結睡眠(コールドスリープ)から目覚めた修司は、聖龍剣を手に再び戦場を跋扈した。

 ミラーガールや仲間達と共に各地や各異世界を占拠している革命軍士を次々と倒していく修司。

 しかし、戦前に復帰した修司には想定外の事態が頻繁に起きてしまわれた。

 それは、一定の敵を倒し続けていくと、修司の怒りのメーターが振り切れてしまい、修司は怒りのままに敵を撲殺または惨殺するというおぞましい事態。

 修司自身は、怒りで暴走している間は自我を保てなくなり、我を忘れて敵を拳で殴り殺していく始末。

 そんな修司をミラーガールが必死に呼びかけたり宥めたりする事で、ようやく修司の怒りの暴走は止まった。しかしその都度、修司は血塗れになり、唖然としてしまうばかり。

 修司本人も、怒りで我を忘れている間は記憶は残るものの自制する事ができないと語る。

 修司が怒りで暴走する度に、困惑してしまう聖龍HEAD。だがミラーガールだけは修司の側に付きっ切りで暴走を食い止める役回りに徹した。

 

 そんな最中、各地の占拠された地点を奪還した聖龍隊の元に映像電波が送信されてきた。

 映像を画面に映し出してみると、そこには意外な存在が映し出された。

「やあ、ご機嫌いかがかな? 聖龍隊の諸君……」

「メカルス!」「まさか……!」

 受信された映像に映し出されたのは革命軍士総司令官であり、修司のコピーでもあるメカルスだった。

 映像のメカルスを見て驚愕するミラーガールに修司達であったが、そんな聖龍隊の面々にメカルスは語り出した。

「此度も我ら革命軍士の勇士たちを大勢、処分の名目で虐殺したな。お陰で此方の手ごまは全て無くなってしまったよ。そこでだ……今回は俺、自らの意思でお前たち聖龍隊を俺が指揮する戦前基地にご招待しようではないか。俺は逃げも隠れもしない、思う存分戦おうではないか、聖龍隊!」

 そう不敵に宣戦布告したメカルスの映像を送っていた電波は途切れ、画面も消滅してしまわれた。

 メカルスからの招待に騒然とする聖龍隊本部。

「修司様! これは罠です! 行けば危険ですよ……」

 通信士でもあるウッズが修司達にメカルスが潜む基地に向かうのは罠だとして危険だと通告すると、修司は険しい面持ちで答えた。

「分かってる。だが、ここで逃げる訳にも行かない……! 俺のコピーであるメカルスを倒すのは、俺の使命なんだ! 罠だろうが、向かうしかない!」

 この修司の熱い台詞を聞いて、ミラーガールも闘志を燃やす。

「修司! 私たちも一緒に行くわ! 何度もしつこく復活するメカルスを今度こそ倒しましょう!」

「アッコ、みんな……一緒に来てくれるか?」

 修司がミラーガールたち仲間のHEADに問い掛けると、皆は揃って首を縦に振って同意してくれた。

 こうして修司とミラーガールの戦意の元、聖龍HEADはメカルスが拠点にしている戦前基地へと出動した。

 

 メカルスが拠点にしている秘密の戦前基地に辿り付いた聖龍HEADは、先に敵の動きを偵察しに向かった聖龍隊士と合流。その隊士達は一般の非能力者であり、指揮隊長にはキューティーハニーの恋人である早見青児が務めていた。

「青児! 敵の様子は?」

「流石は革命軍士が異世界中に戦力を投下している戦前基地なだけあるぜ。警備の数も、バカにならない」

 修司の問い掛けに、青児は戦前基地の守衛が堅い事をHEADに伝えた。

「そうか、やはりな。何処かに抜け道らしいものがあれば、一点突破できるんだが……」

 修司達が頭を悩ませていると、そこに偵察に向かっていた隊士達が隊長である青児の許へと命辛々で帰還してきた。

「お、お前達、大丈夫か!?」

「は、早見隊長……」

「敵が配置されている地点に、一本だけ強行突破できる道筋を発見しました。ですが、我々は敵の攻撃を受けて既に戦闘不能に陥って……不覚です」

 傷だらけの隊士達を気にかける青児に、隊士達は強行突破できる道筋を発見したと報告。これを聞いた青児は隊士達を称賛した。

「いや、でかしたぞ! 後は俺と、HEADで防衛線を突破していくから、お前らは帰還して怪我の治療に専念しろ!」

「ほ、本当にすみません……」

「隊長もHEADの皆さんも、どうかお気をつけて……」

 青児からの気遣いに、隊士達は頭を下げて一足先に帰還していった。

 そして隊士達が持ち帰ってきてくれた情報を基に、聖龍HEADは戦前基地の防衛線を突破しようと駆け出した。

 配置されている武器や敵を悉く薙ぎ払い、斬り捨てていく聖龍HEAD。そんなHEADに負けじと早見青児も小銃で敵兵を狙撃して防衛線を突破する。

 そして聖龍HEADと早見青児は、敵防衛線を一点突破してメカルスが待ち構えている戦前基地へと強行突入した。

 

「うおおおおおおッ!! やああああああッ!!」

「修司! もう敵は死んでいるわ、やめて!」

 基地へと突入した聖龍HEADと早見青児。

 しかし基地の内部構造は複雑で、迷路の様な造りになっており、進攻は難しいものだった。

 しかも基地内でも、修司の感情が激化するという現象が再発しており、修司は斬り捨てて死に絶えた敵兵に何度も斬りかかる。そんな修司を毎度、ミラーガールが必死に宥める始末。

 感情が暴走し、その度にミラーガールに制止される修司は、何とか辿り付いた大型エレベーターの室内で自分の異常さに唖然とするばかりだった。

 この事態を重く見始めた聖龍HEADは、暴走しがちな修司を危険視し始めた。

「どうする? このままじゃ修司はまた、オレ達を襲う可能性だってあるぞ」

 エレベーターで地下へと移動中、メタルバードがジュピターキッドと密談する。

「だけど、此処まで来たら義兄さんだけを、おめおめと帰す訳にもいかないよ。何とかメカルスの所まで持ちこたえてくれれば良いんだけど……」

 ジュピターキッドも、怒りで我を忘れて暴れ出してしまう修司に懸念を募らせていたが、修司が強敵メカルスの所まで辛うじて正気を保ってほしいと切願してた。

 そんな周りのHEADからの厳しい視線を一身に感じて、修司は自分の普通ではない異常性に激しい危機感と自己嫌悪を滾らせるのだった。

「修司……修司はまだ、凍結睡眠(コールドスリープ)から目覚めて日が浅いから……だから催眠暗示ですり込まれた破壊衝動を抑え切れてないだけよ。大丈夫、必ず良くなる筈よ」

 ミラーガールからの優しい気遣いを掛けてもらいながらも、修司は己の中の狂気的な破壊衝動を抑制する自信が無かった。

 こんな修司の突然の戦闘下での気性の変貌と暴走という事態を抱えながら、聖龍HEADそして一般隊士の早見青児は地下のメカルスが待ち受けている最深部へと赴くのだった。

 

 

[破壊機神の登場]

 

 修司の問題を抱えたまま、聖龍HEADは早見青児を引き連れて戦前基地の地下へと到達した。

 そこで聖龍隊を待ち構えていたのは、案の定あのメカルス本人だった。

 メカルスが待ち構えていたのは、筒状の円形を模した広大な広間で、中央には謎の巨大な機械が突出したデジタル空間に近い間取りだった。

 聖龍HEADの前に現われたメカルスは、全身が半透明で光っており、その体格は本物(オリジナル)の修司に近かった。

 全身が半透明で光っているメカルスは、修司達HEADの視線よりやや上方で両手を全開にして浮遊不動しながら語り始めた。

「ハハハ、今回は簡単には倒されんぞ聖龍隊。今の俺は革命軍士が開発したオーバーテクノロジーで作り出された、このサイバーボディを駆使する……いうなればサイバーメカルスだ! お前達の生半可な攻撃は通じんと思え。では行くぞ!」

 そう得意気に語ったサイバーメカルスは同じ空間に居る聖龍HEADに向かって攻撃を開始した。

 目にも止まらない高速移動で空間を自在に駆け抜けるサイバーメカルスは聖龍HEADに急接近して手始めにと軽く足払いを仕掛ける。

「うあっ」「きゃっ!」

 セーラームーンと七海るちあがサイバーメカルスに足払いされて転倒してしまう。すると急接近してきたサイバーメカルスに同行していた早見青児が小銃を向けて銃撃。しかしサイバーメカルスは瞬時に銃弾をかわし、進撃を続行した。

「メカルスッ!」

 仲間に攻撃を仕掛けてきたサイバーメカルスに斬りかかって行く修司。しかしサイバーメカルスは死角から迫ってきた修司の刃を、ひょいと後ろへ身を反らしてかわすと距離を置いてHEADから少しばかし離れた。

 修司の刃を避けたサイバーメカルスは再び上方へと瞬間移動すると、今度は其処にメタルバードとちせが強力なレーザーで奇襲。だが二人が放ったレーザーはサイバーメカルスの体をすり抜けて、効き目が無かった。

「ど、どうなってるんだ!?」

 メタルバードやちせが驚愕していると、サイバーメカルスの様子を調査していたコレクターユイ達が声を上げて皆に伝える。

「あ、アレは……! メカルスのボディは一種のプログラムで作られた擬似骨格。多分、生半可な攻撃じゃ効力も現われないほどすり抜けるだけみたい!」

 特殊なプログラムで作られたボディは実体のない擬似骨格として、並大抵の攻撃では効果が無いと説くコレクターユイの説明に愕然とする一同。

 するとサイバーメカルスは、その実体のないプログラムの体で高速移動すると忽ち何体もの分身が発生して筒状の間取りの中で聖龍HEADを完全包囲してしまう。

「………………!」

 自分達の周りを分身と共に包囲したサイバーメカルスの動きに警戒を張り詰める修司たち。

 と、サイバーメカルスは自身の体に特殊な電撃を纏わり付かせた状態で一斉にHEADへと駆け寄る。

『うわあっ!』『きゃあっ!』

 突進してきた電撃を纏うサイバーメカルスの体に触れて、感電してしまうジュピターキッドや龍咲海たち。

 しかし電撃に多少の抗体を持つセーラージュピターは、単身サイバーメカルスに攻撃しようと殴りかかるが、惜しくもそれは分身であり本物のサイバーメカルスではなかった。

「ウハハハッ、それでお終いか聖龍隊? 俺の攻撃は、まだまだこんなものでは無いぞ!」

 攻撃が効かず、苦戦している聖龍HEADを嘲笑するサイバーメカルスは一度発生させた分身たちを消すと一同の真上で必殺技を発生させた。

「この攻撃は懐かしいと思うぞ……天変地異!」

 すると次の瞬間、修司たちHEADがいる空間に突如として雷や突風、竜巻などが発生して聖龍隊に襲い掛かる。

「こ、この技は昔の……!!」

 驚愕する修司にサイバーメカルスが言う。

「フハハ、そうだ……修司、お前がまだ聖龍使いだった頃に必殺の技として使っていた天変地異だ! 俺がお前のコピーである事は忘れた訳ではあるまい。さあ、昔の己自身が使っていた技で苦しむがいい!」

 そう言うとサイバーメカルスは更に現場に天変地異を起こしていった。

 かつて自分が聖龍使いとして多用してきた技を、今はコピーであるメカルスが科学の力で再現しているとはいえ使われている事に修司は複雑な心境に至った。

 だがサイバーメカルスが天変地異を使えたのも一時だけであり、スグに天変地異が静まるとサイバーメカルスは再び上方へと移動。

 一時的に動きが止まったサイバーメカルスに聖龍隊が再度、総攻撃。しかし攻撃は悉くサイバーメカルスの体をすり抜け、効果は出なかった。

「クソッ、これじゃ一方的じゃないか!」

 メタルバードはサイバーメカルスへの攻撃だけが効かない状況に軽く混乱状態に陥ってしまう。

「コレクターズ! プログラムといえば、お前達の専門だろ! どうにかメカルスに攻撃を当てる策は無いのか!?」

「そ、そんなこと言ったって……!」

「さっきから弱点を見つけようと調べてます。でも……」

「全身をプログラム化しているメカルスに有効な攻撃が見付からないのよ!」

 メタルバードからの問い掛けに、ユイ/ハルナ/アイの三人は焦った様子で言い返す。

 そんな中、サイバーメカルスは地上で必死に抗ってくる一人の隊士に目をつけては標的にした。

 そしてサイバーメカルスは上方へ軽く回転跳躍すると、一気に片足を下方へと向けて滑り込む様に強烈な蹴りを放ち込んだ。

「それッ」

 サイバーメカルスが標的に定めたのは、地上で小銃を武器に抗戦していた一般隊士の早見青児だった。

「うあ……ッ!」「せ、青児さん!」

 上方から滑り込む様に放たれたサイバーメカルスの強烈な蹴りは、青児の顔面に直撃。青児は悶絶し、それを目の当たりにしたキューティーハニーは悲鳴を上げた。

 サイバーメカルスに強烈な蹴りを入れられた青児は床に転倒。キューティーハニーが急いで駆け付けるが、青児の傷は深かった。

「青児さん、しっかり……ハッ。そ、そんな……!」

 早見青児の傷を見て、キューティーハニーは愕然とした。青児の顔面に入ったと思われたサイバーメカルスの蹴りは、青児の左眼球に打ち込まれ、眼球が完全に潰れてしまったのだ。

 片目を失い、痛みに悶絶する青児を見て、キューティーハニーは心を締め付けられる。

「せ、青児……!」

 キューティーハニーと同じく、青児は深く傷付いた姿を目撃した修司は顔を蒼褪めたがスグに頭に血が上り、メカルスへの怒りで内心が満たされた。

 そして修司はプログラム化している体を持つサイバーメカルスにダメージを与えようと、己の中に蓄積された怒りのエネルギーを暴発させた。

「うおおおおおおおおおおおお……っ!!」

 怒りで平常心を失った修司は、怒りで膨張した気を聖龍剣に流し込むと、その刃でサイバーメカルスへと斬りかかる。

 しかし冷静さが欠けた修司の攻撃をサイバーメカルスは余裕でかわしてみせ、それを見た修司は益々怒りが込み上がる。

「うああああああああああああ……っ!!」

 だが修司の興奮は納まる事を知らず、もはや我武者羅にサイバーメカルスに斬りかかって行くばかりだった。

「修司……!(このままじゃ、修司の精神が持たない。どうにかしないと……)」

 余りにも興奮状態で戦う修司の激化した様子から、ミラーガールはこのままでは修司の精神力が底をついてしまうと焦燥した。

 と、その時。何度も何度もサイバーメカルスに攻撃を避けられた修司は激化した感情を爆発させるかの如く、聖龍剣を逆手で握る右手の拳で床を思いっきり殴り付けた。するとその瞬間、抑え込んでいた修司の力が暴発し、部屋全体が一気に破壊された。

「うわっ!」

 修司が床に拳を打ちつけた瞬間に、その衝撃で部屋全体が大破した現状にメタルバード達は困惑する。

 しかし修司の暴走で大破したのは皆がいる部屋だけで、肝心のサイバーメカルスには全くの無傷で終わっていた。

「はぁ、はぁ……」

 拳一発で部屋全体を大破させた修司は、息を荒くしながら頭から血の気が引いて冷静さを取り戻していた。

 すると、そんな修司を見下ろしてサイバーメカルスが嘲笑った。

「フフ、フハハハ! いいぞ修司、それこそ俺と同じ破壊に生きる為だけに存在している戦士だ」

 メカルスの言葉に修司が顔を上げて睨み付けるが、メカルスは臆する事無く修司に語り続けた。

「ハハハ、周りを見てみろ修司。お前が護ろうとしている者たちを……」

 メカルスに言われるがままに辺りを見渡してみる修司。すると彼の目に飛び込んできたのは、今さっき自分が放った破壊衝撃波を受けて満身創痍に至っている仲間達であった。

「ハハハ……見るんだ、お前が護るといいながら、お前自身の力で傷付き倒れている者を……そして護ると決めていながら、結局は深く傷付いてしまった仲間の存在を……!」

 修司の目に飛び込んできたのは、メカルスの言うとおり自身が放った衝撃波で傷付いてしまった仲間達に、護る対象の一人でもあるにも関わらず失った片目から大量の血を流して悶絶している速見青児の姿だった。

 自分が護るべき者、未来に遺したい大切な逸材を護るどころか自らの手で傷付けてしまった現状に絶望する修司。

 護るべき者たちを護るところか傷つけてしまった現実に修司が苦悩していた、その時。そんな修司に声をかける者が。

「諦めちゃダメ……!」

 修司がその声に顔を向けると、其処にいたのは皆と同じく修司の破壊衝撃波で傷付いていたミラーガールだった。

「修司、私たちは……私たちはそんなに柔じゃないわ。修司の攻撃を受けたぐらいで倒れる様な、昔の様なひ弱な存在じゃない」

「………………」

「何度だって立ち上がる……だから修司も、諦めずに戦って!」

 ミラーガールからの声援を受けて、最初は唖然としていた修司も、スグに表情を険しく漲らせると聖龍剣を構えてサイバーメカルスと対峙した。

 そしてミラーガールの勇気と修司の勇士に同調し、他の聖龍隊も満身創痍の状態から立ち上がり、修司と同じくメカルスと向き合った。

「グフフ、最後まで抗う気か聖龍HEADよ……攻撃が全く効かんこの俺様を本気で倒せると思っているのか?」

 不敵な嘲笑を浮かべて告げるサイバーメカルスに、ミラーガールが反論。

「最後まで諦めない……それが絶望に打ち勝つ方法なのよ、メカルス!」

「クハハハ、そうか。ならば、そのちっぽけな希望を抱いたまま死ね! 聖龍隊!!」

 

 聖龍HEADとサイバーメカルスの戦いは始まったばかりである。

 

 

 

[勝機]

 

 攻撃時にしか実体化しないプログラムで作られたボディを駆使して戦うサイバーメカルスに、聖龍HEADは苦戦を強いられていた。

 サイバーメカルスの嘲笑を浴びながらも、どうにかダメージを与えられないか様々な方法で攻撃を試みるHEAD。

 しかし全ての攻撃はプログラムで作られたサイバーメカルスのボディをすり抜けてしまい、全く効力が現れる事は無かった。

 敵の体がプログラムで作られていると知って、同じプログラム製の攻撃手段でサイバーメカルスに攻撃を当てようとするコレクターズ。

 科学で生み出された体を持つサイバーメカルスに、魔法系の攻撃を仕掛けていく魔法騎士の三人とさくらたち。

 だが一向に聖龍HEADはサイバーメカルスに致命的なダメージを与える事は叶わず、戦況的には追い詰められる一方だった。

「く、くそっ」

 修司もサイバーメカルスに斬りかかるが、その刃は空しくもサイバーメカルスの体をすり抜けるだけ。

 その間も、サイバーメカルスは科学で発生させた様々な攻撃で聖龍HEADを苦しめる。そのサイバーメカルスの攻撃を、ミラーガールは懸命にバリアーなどで仲間を死守していく。

 防戦一方のHEADに対して一方的に攻撃を続けるサイバーメカルスの猛攻に、修司もミラーガールも誰もが苦痛に喘ぐ。

(どうにかメカルスにダメージを与える手段は無いの……!)

 ミラーガールはサイバーメカルスを倒す手段は無いのかと、ミラーシールドでバリアーを発生させ仲間を護りながら模索していた。

 そして追い詰められた聖龍HEADにサイバーメカルスがトドメの大技を叩き込もうと身構える。

「終わりだ! 聖龍隊!!」

 サイバーメカルスは聖龍HEADにトドメを刺そうとし、それに修司たちHEADが愕然とした。

 その時だった。

「ぐわっ!」

 突如、円錐状の構造をしている空間の中間の壁が爆破したと思いきや、その壁向こうから謎の光弾が部屋の床中央に設置されている装置に着弾した瞬間、半透明のプログラムで作られたサイバーメカルスの姿がボヤケ、同時に苦しんだのだ。

 突然の事態に困惑する現場の聖龍HEAD。

 すると大破した硝煙上がる壁の向こう側に、いくつもの影が浮かび上がった。

「だ、誰だ!」

 サイバーメカルスが突然自分に不意打ちを浴びせた存在を睨み付けると、舞い上がる白煙の中から現われた者たちが現場のメカルスと聖龍隊に告げた。

「聖龍隊が流星の精鋭……スター・ジェネレーションズだ! メカルス! お前の好き勝手にはさせないぞ!」

「じゅ、ジュン!」

 壁を打ち破って姿を見せたのは、村田順一を筆頭にしたコマンドー/ニュー/ルーキーズの三つの総合部隊だった。

 すると修司達が突然現われた順一達に驚愕していると、そんな名乗りを上げる順一の横からまたも見慣れた顔ぶれが勢揃いして登場した。

「私たちも居るわよ、メカルス!」

「元悪役部隊、マン・ヒールズのご登場だ!」

「せ、聖羅!」

「マン・ヒールズ、あなた達までも……!」

 ミスティーハニーを筆頭にしたマン・ヒールズの登場に、姉のキューティーハニーもミラーガールも歓喜に湧いた。

「ジュン、お前達が何故ここに……?」

「命令違反なら後で罰は受けます! 今はメカルス破壊を最優先にしましょう、総長!」

 修司が順一に問いかけようとするが、順一は現状でのメカルス破壊を最優先事項にするべきだと修司に提言した。

 そして壁を突破して登場した順一率いるスター・ジェネレーションズとミスティーハニー率いるマン・ヒールズは、一気にサイバーメカルスと激しい戦闘を繰り広げている聖龍HEADと合流した。

「総長、アッコさん! あのサイバーメカルスは実体が殆ど無いプログラム……! 直接ダメージを与える事は不可能です!」

「なんだと?」「え!」

 順一からの事実に一驚する修司とミラーガール。

 すると順一は事情を詳しく知らない聖龍HEADに教え伝えた。

「此処まで来る道中で、革命軍士が今回メカルスの為に作り出した装置の詳細な情報を入手したんです。あのサイバーメカルスは、メカルスの本体が投影している影すなわりホログラムに近い擬似映像なんです。一時的に物質化する事はできる以外は如何なるダメージも与えられません。従ってサイバーメカルスへの攻撃は全て無意味。だから……」

 そうHEADに説明した順一は、床に黄金の手甲を装着した拳を打ち付けて、一筋の黄金色の閃光を地面に走らせた。すると順一が放った金色の閃光は部屋の中央に存在する装置に直撃した。

「うげッ……ッ」

 するとどうだろうか。サイバーメカルスの半透明の体が再びボヤケて、メカルス自身も苦しむ様に悶える。

 すると再び順一が語り出す。

「だから、サイバーメカルスのプログラムボディを投影している床の装置を破壊すれば……サイバーメカルスは消滅します!」

「そ、そうか! そうだったのか!」

 順一から情報を聞いて修司は笑みを零した。

 そして修司は床から突起している巨大な装置目掛けて、対陸地用の必殺技「地走り」を聖龍剣から射出。地走りは一直線に装置へと直進して、サイバーメカルスを投影する装置に直撃した。

「グ、グガガガッ……しま、った……装置が……!」

 投影装置を破壊された事で、プログラムのボディを駆使するサイバーメカルスは消滅寸前まで追い込まれる。

 だがサイバーメカルスは消滅する前に、せめて一人だけでもと偶然目に入ったミラーガールに向けて巨大な光弾を発射。しかしミラーガールは鏡の盾で光弾をサイバーメカルスへ撥ね返した。

「グガッ」

 これがトドメとなったのか、サイバーメカルスは光弾を顔面に受けた直後に完全消滅してしまった。

 

 村田順一が教えてくれた勝機をすかさず逃さず狙って攻撃した小田原修司。

 そしてそんな修司の攻撃を受けて消滅寸前のメカルスが放った光弾を撥ね返したミラーガール。

 二人の必殺の技が、サイバーメカルスを消滅させる事に成功したのだ。

 

 

 

[上昇する殺意]

 

 命令を違反してまでも駆け付けてきたスター・ジェネレーションズの加勢によって、聖龍HEADは辛くもサイバーメカルスを消滅させる事に成功した。

「……まだだ。まだメカルスは終わっちゃいない……!」

 修司が眉間にしわを寄せながら険しい面持ちで呟くと、ミラーガールも同じく険しい表情で言った。

「ええ、毎度の事ですもの……メカルスの邪悪な念が残留しているのが感じられるわ!」

 それは修司とミラーガールだけでなく、HEADやスター・ジェネレーションズの面々も同感だった。

 すると突然、辺り一帯が暗転し、暗闇に包み込まれる。それと同時に床が地響きを起こしているのが感じられた。

 次第に辺りの暗闇に目が慣れてきて視界に映るものに目を向ける一同。すると一行の前に衝撃的な光景が飛び込んできた。

 先ほど修司とミラーガールが破壊したサイバーメカルス投影装置がせり上がり、上へ上へと上昇していた。そして床に埋まっていた巨大な機械が床上へと上昇。やがて辺りが明るくなると皆の目の前に現れたのは、床下から出没した巨大な上半身のみの機械仕掛けの体をしたメカルスであった。

 その巨大な全貌を現した上半身のみのメカルスは、聖龍隊を見下ろして嘲笑する。

「フハハハ、どうだ? 俺様の奥の手は? あのヴァルツの爺さんが造った程の高性能の機体じゃないが、お前等を叩き潰せるぐらいはできる! さあ、巨大な意志の前に跪くがいい!!」

 そう主張した巨大メカルスは、右腕を振り上げて一気に地面へと殴り付けた。

『うわあっ!』

 巨大メカルスの拳が振り下ろされ、その凄まじい衝撃で酷く戸惑う聖龍隊。

 そんな戸惑う聖龍隊を見下ろし、巨大メカルスは更に拳を振り下ろし、目からレーザービームを発射して躍起になる。

 これにHEADもスター・ジェネレーションズも応戦を開始した。

「喰らいやがれッ」

 ニュー・スターズの総部隊長フロートとスター・ルーキーズの総部隊長ミラールは、砲撃と銃撃で巨大メカルスを狙撃する。

 巨大メカルスの顔の周りをハイパー・ブロッサム達ガールズ三人が飛行して、巨大メカルスの動きを撹乱する作戦に。

 結界師の良守と時音が結界を張り、その上を日向ひまわり達くノ一が踏み台として使い、巨大メカルスの周囲を飛び交いながら攻撃。

 アレン・ウォーカーとリナリー・リーは協力し合って、強大な巨大メカルスに猛攻撃。

 金剛番長も仲間達に負けじと、同じ番長達と共に懸命に巨大メカルスへ攻撃を仕掛ける。

 上空では高町なのはやフェイトたちがHEADの木之元桜と一緒に巨大メカルスの顔面へと総攻撃。

 超能力を駆使して巨大メカルスに抗う明石薫/野上葵/三宮紫穂/梅枝ナオミ。

「このッ」

 燃える鉄拳で大門大がユウやニナミ、そして白浜兼一と風林寺美羽と共に鋼鉄の塊である巨大メカルスに直接攻撃する。

「ぐははっ、そんなお前等の拳程度でやられる俺様と思うか!」

 巨大メカルスは打撃で攻撃してくる大たちを一掃しようと目からレーザービームを直射して攻撃。だが、それをミラーガールがセーラームーンやナースエンジェルと共に見事に防ぎ切ってみせる。

 そんなミラーガール達の懸命な姿に心打たれながらも、仲間達の攻撃や防御を魔法を駆使して補助するルイズに赤ずきん達。

 その最中にトリコやワイルドタイガー達が強力な打撃を打ち込んで、巨大メカルスを揺らがす。

 更に修司と共に刃で勇敢にも巨大メカルスに斬りかかって行く音無小夜とハンター・スティールにマカ=アルバーンやシャナ達。彼らに続けと六道りんねとシンク・イズミも巨大メカルスに斬りかかる。

 地上・上空と、二つの場景で様々な攻撃を繰り出して巨大メカルスを倒そうと挑み続ける聖龍隊の勇士達。

 しかし、山の様に巨大なメカルスに有効な攻撃は無く、差して余り効力が見当たらなかった。

 そんな主観で見れば、まるで小虫の様に身の回りで動き回る聖龍隊のしつこい攻撃にうんざりしてきた巨大メカルスは、このちっぽけな英雄の攻撃を一掃してやろうとエネルギーを全身から放射した。

「あ、あれ……?」

 エネルギーが放射される寸前、床にいたアラジンやアリババ達がふわりと宙に浮かぶという前兆を合図に、巨大メカルスは強力なエネルギーを上半身から一気に放出した。

「うわあッ!」

 するとエネルギーに弾かれて、その場の聖龍隊士たちが一斉に壁際まで吹き飛ばされてしまった。

「う、動けん……!」

 修司やエンディミオン、蒼の騎士に堂本海斗を始めとする屈強な聖龍隊士ですらも壁に押し付けられたまま全身が動かなくなってしまうほどの強力なエネルギーの波に苦しめられる。

 そんな壁に押し付けられる聖龍隊の隊士達を前に、巨大メカルスは上々と嘲笑した。

「ぐはははははっ、どうだ聖龍隊! このエネルギー波は能力者という能力者に作用し、押し返してしまう程の引力を発生させる代物だ! 能力者である貴様らはもう動く事すら侭ならないぞ!」

「く、くそ……動けない!」

「ッ……メカルス、味な真似を……!」

 巨大メカルスの嘲笑を聞いて、ガイトもミスティーハニーも壁に押し付けられながらも苦悶の表情を浮かべる。

「うははは……では、動けない貴様らを嬲り殺しにしてくれよう……」

 そう巨大メカルスは言うと、目から必殺のレーザービームを射出しようと壁際に押し付けられる聖龍隊士に狙いを定めた。

 万事休すと思われた、その時だった。

「っ……ま、まだ……俺がいる事を忘れるな、メカルス……!」

「!?」

 その声に巨大メカルスも、周囲の壁に押し付けられている面々も顔を向けると、其処にいたのは。

「せ、青児さん……!?」

 声の主はサイバーメカルスに左目を潰され、そこから激しく出血している状態の早見青児だった。

 キューティーハニーが壁に押し付けられながらも深手を負った青児に目を向けていると、巨大メカルスが青児に言った。

「ぐはは、青児よ。そういえば貴様は能力者でなかったから、俺が発するエネルギー波の影響を受けないんだったな」

 巨大メカルスの言うとおり、青児は能力者でない為に巨大メカルスが発する特殊なエネルギー波の影響を受けずに済んでいた。

 単身、巨大メカルスが発するエネルギー波に影響を受けずに済んでいる為に他の皆とは違い壁に押し付けられてない早見青児は、拳銃を構えて潰れてない右目の視力だけで巨大メカルスを狙う。

「ぐふふ、お前に何が出来る? 能力者のようにバケモノ並みの強さも持たず、片目が潰れて今にもくたばりそうな貴様如きが俺様を倒せると本気で思っているのか?」

 普通の二次元人であり、片目が潰れた重傷者である青児を見下す巨大メカルス。

 だが早見青児はそれでも拳銃を両手で構えて巨大メカルスの顔を狙い続ける。

「人間の……人間の底力を……バカにすんじゃねえ!」

 次の瞬間、青児が構えていたマグナムが火を吹いた。そして銃弾は真っ直ぐ、巨大メカルスの顔その額へと一直線に飛び、額の菱形の水晶を弾丸が貫いて破損させた。

「ぐああっ……! ま、マグナムか……!」

 マグナムの弾丸が額の水晶を貫通した勢いで、巨大メカルスは激しく上半身をよろめかせた。するとその瞬間、巨大メカルスが放出していたエネルギー波が止まり、壁に押し付けられていた能力者である聖龍隊士が全員解放された。

「おっ? やった、動けるぞ!」

 メタルバードが声を上げて皆に伝えると、それと同時にキューティーハニーが拳銃を撃った直後に跪く青児に駆け寄る。

「青児さん! 青児さん、しっかり!」

 キューティーハニーが駆け寄り、声を掛けると青児は出血し過ぎた影響からか貧血状態に陥っていた。

 一方、その青児にマグナムで額の水晶を撃ち抜かれた巨大メカルスは苦しがっていた。

「なるほど……メカルスの弱点は、額の水晶か!」

 もがき苦しみ、上半身だけの体を激しく揺さぶる巨大メカルスの様子を見て、弱点が額の水晶だと判断する修司たち聖龍隊。

 すると修司は己のコピーである巨大メカルスを自らの手で葬ろうとしてか、一気に空を蹴って跳躍した。

「月歩!」

 空を蹴って空中を素早く移動する技で、巨大メカルスの顔面まで跳躍していく修司。

 しかし、そんな修司に接近を許さない巨大メカルスは、目からレーザービームを修司目掛けて直射。最初の一発を修司は聖龍剣で弾き返して防御するが、二発目までは防げなかった。

 と、その時。修司にレーザービームが直撃しそうになった瞬間、修司の体を透明な球状のバリアーが包み込む様に修司を守ってくれた。修司がふと下方に目をやると、そこには手を組み祈る様にして修司を守ってくれたミラーガールの姿があった。

 修司はミラーガールに感謝を感じつつも、巨大メカルスの額まで跳躍して一気に聖龍剣を振り上げた。

「そりゃあッ!」

 修司が振り下ろした聖龍剣は巨大メカルスの額の水晶を抉り取り、巨大メカルスに大打撃を与えた。

「ぐおおおっ……!」

 巨大メカルスが雄叫びを上げるが、修司は更にトドメの追撃としてがら空きの左手に闇のオーラを纏わせて巨大メカルスの抉られた傷跡に左手を突っ込んだ。

「喰らえ! 名付けて……暗黒拳!」

 修司の闇の能力が凝縮された拳からの打撃、暗黒拳を打ち込まれて巨大メカルスは大打撃を被った。

「うああああああああああああああああああ……っ!!」

 修司が暗黒拳を打ち込んだ次の瞬間、その壮絶な威力によって巨大メカルスはもちろん、巨大メカルスと連結している周囲の壁や床などの機械が全て破損・爆発していき現場は火の海となり始めた。

「いけない! ここはもうじき爆発するぞ!」

 順一が叫ぶ中、皆は大勢での撤退をどうするか悩む暇も無かった。

 するとその時「大丈夫、ここは私たちに任せて!」と聖龍HEADの獅堂光が皆に言う。

 すると光たち三人の魔法騎士が右手を天へと向けると、その先端から白き光が放たれた。

 そして光たち三人の呼びかけに応じ、地下空間であるにも関わらず光たちの専用機、炎神レイアース/海神セレス/空神ウィンダムの三機が召喚された。

「召喚魔法で呼び寄せたのね!」

 余り見慣れないとはいえ、高名な魔法騎士の機体を目撃してルイズが笑顔を見せる。

 そして光/海/風の三人は、それぞれの機体に搭乗してから皆に呼びかける。

「さあ! 早く機体に乗って! こっから退却するよ!」

 光の呼びかけに、現場の聖龍隊は急いでそれぞれ三機の機体に飛び乗る。

「さあ、青児さん……」「貴方も早く……」

 巨大メカルスに最初に大打撃を与えた早見青児を、キューティーハニーとその妹であるミスティーハニーが肩を貸して運び込む。

 そして修司やミラーガールも最後に飛び乗って、三機が地底を切り裂いて地上に飛び立とうとしたその時。

「ぐううぅうう……! に、逃がさん……お前らも、道連れだ……!」

 と、先ほど修司の能力で大破した筈の巨大メカルスが手を伸ばし、上昇しようとしていた炎神レイアースを捕まえてしまう。

「ぐっ……! は、離しなさいよ、メカルス!」

「一緒に、死ぬんだ……お前ら、ゼンイン……!」

 必死に巨大メカルスの手を振り解こうとする光に反し、巨大メカルスは掴んだ手を離そうとはしない。

 すると、この危機的状況に再び修司が立ち上がった。

「往生際が悪いぞ! メカルス!」

 そう叫んだ修司は単身、巨大メカルスの炎神レイアースを掴む手に飛び掛った。

 これを好機と睨んだ巨大メカルスは、今までよりも強力な極太レーザービームを目から発射して修司を攻撃。だが、その攻撃をミラーガールが鏡のバリアーで撥ね返し、逆に巨大メカルスの視力を奪った。

「ぐおっ!」

 巨大メカルスが怯んだ次の瞬間、修司は聖龍剣を一気に振り下ろして、巨大メカルスの手を斬り落とした。

 これにより自由になった炎神レイアースは、他のセレスとウィンダムの二機と共に巨大メカルスに別れを告げた。

「これでお終いだよメカルス……消えてなくなれ!」

 光の掛け声と共に、レイアース/セレス/ウィンダムの三機は必殺技を同時に放ち、巨大メカルスへと撃ち込んだ。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……っ!」

 断末魔を上げて消滅する巨大メカルスを尻目に、聖龍隊は三機の機体と共に地底を切り裂いて地上へと脱出した。

 だが、脱出中に彼女達に呼びかけるメカルスの声が。

「わ、忘れるな……俺は、この程度では、死なん……また、またいつか、必ず蘇って、お前等を……!」

 そんなメカルスの言葉が胸に突き刺さりながらも、聖龍隊は地上へと抜け出た。

 

 メカルスの修司やミラーガール、そして聖龍隊への上昇する殺意の意中で。

 

 

[終わらぬ戦いと祝福の鬼神]

 

 巨大メカルスとの大乱戦を乗り越え、どうにか全員が命辛々地上に脱出した直後。

 革命軍士の前線基地は爆発して、激しい火の海に包まれた。

 そんな暁の夕焼けと同じく、炎で真っ赤に染まる革命軍士の基地を離れた場所で無事に脱出した修司やミラーガール達は見詰めていた。

 今回も無事に生き残り、戦いに勝った。しかし戦いはまだまだ続き、、終わらぬ戦いは更なる犠牲を生み出し続ける。

 満身創痍ながらも荒廃した戦場を見詰める聖龍隊。メカルスとの戦いで損傷し、片目を失った重傷者の早見青児。そんな青児を看病するキューティーハニー。

 一体、いつになったら革命軍士との戦いは、小田原修司の副産物であるメカルスとの戦いは終わるのだろうか。

 聖龍隊は、そんな心の葛藤を乗り越えつつも、これからも弱き人々の為に戦い続けるのである。そう、永遠に……

 

 

 

 

 革命軍士との戦いから一週間後。

 凍結睡眠(コールドスリープ)から目覚めた修司は、如何なる時にでも出撃できる様にと再び眠りに就く事は無く、聖龍隊の業務に専念してた。

 そんな修司の元に、一本の内線電話が。

「はい、こちら聖龍隊総長……なんだ、アッコか。俺は今、忙しいんだ、後に……え、今すぐ来て欲しいって、そんな…………ああ、分かった分かった。今すぐ向かうよ」

 アッコからの内線電話で、強引に呼び寄せられた修司は受話器を置いた。

「タクッ、どういう気なんだ」

 革命軍士での聖龍隊の被害を纏めた書類に目を通さなければならない現状に、少し苛立ちを覚えている修司はイライラしながらアッコが指定した部屋へと足を運ぶ。

「此処か……やけに暗いな」

 指定された部屋へとやって来た修司。しかし入室すると部屋は暗闇に包まれており、修司は手探りで電灯のスイッチを探し出す。

 そして手探りでなんとか部屋の灯りを修司が点けたその瞬間。

 パンッ パァンッ なんとも爽快な音が鳴り響き、修司には大量の紙吹雪が降りかかった。

「な、なんだ……?」

 唖然とする修司の目の前には、クラッカーを手に持ち、それを修司目掛けて鳴らした大勢の仲間や知人の姿があった。

『ハッピバースディ!』

 皆の言動に困惑する修司の目の前に、彼を呼び寄せたアッコが歩み寄り笑顔で話しかける。

「おめでとう、修司!」

「あ、アッコ……これは、どういう事だ?」

 修司がアッコに質問すると、彼女は笑顔で答えてくれた。

「何って……修司のお誕生日会よ! 本当の誕生日は修司が凍結睡眠(コールドスリープ)してる間にすっかり過ぎちゃったから、今になってようやく始められたのよ」

「お、俺の……?」

 自分が眠っている間に過ぎ去ってしまった誕生日を、今になって祝ってくれるアッコたち仲間の気遣いに茫然とする修司。

 よく見てみれば、自分の誕生会を祝ってくれる仲間には、先の大戦で片目を失った青児や異世界セフィーロの面々までも多種多様に訪れていた。

「修司よ、おめでとうな」

「じ、ジンベエ! お前も来てくれたのか?」

 魚人であるジンベエまでも参加してくれている事に、修司は驚いた。

「ささっ、みんなで用意したケーキ早く食べたいから、ロウソクの火を消してちょうだい」

 楽しげに修司の手を引っ張ってケーキまで誘導するアッコ。

 修司はこの時思った。力に固執した為に、メカルスを始めとする多くの災いを生み出してしまった自分の出生を此処まで祝福してくれる仲間の存在に。修司の渇き切った心は少しばかり揺さぶられた。

 

 聖龍HEADやその知人達が修司の誕生会を祝っていたその頃。

「……あーーあ、今頃みんなで総長の誕生会をやっているっていうのに、俺たちと来たら……」

「文句を言わないの! これも命令無視で勝手に出撃した罰なんだから」

 愚痴る平賀才人にルイズが叱る。

 スター・コマンドー/ニュー・スターズ/スター・ルーキーズそしてマン・ヒールズの面々は、待機命令を違反してまでもメカルス討伐に乗り出した命令違反の罰則として、全員が聖龍隊施設のトイレ掃除を徹底されていた。

「たまには、こんなのもイイね」

 皆が罰則のトイレ掃除に愚痴をこぼす中、従来は日本の天皇家その皇軍として活動しているスター・コマンドーの総部隊長である村田順一は、新人の頃を思い出しながらトイレ掃除に精を出していた。

 そんな順一の近くでは、同じく順一の新人時代を思い出しながら掃除に専念する恋人の深澤マイの姿もあった。

 

 

 

[激動していた時代と国連軍の目論見]

 

 アッコとHEADの仲間達の計らいで、誕生会を開いてもらった修司は何気ない場の和やかな雰囲気に呑まれていた。

 そんな皆が意気揚々と宴を楽しんでいる中、一人険しい顔付きでアッコ達から祝福されている修司に歩み寄る人物がいた。

「……修司」「ん……なんだ、ジンベエ」

 それは元海賊であり、今では赤塚組にセブンズ・ガードの座を譲って半ば隠居暮らししている魚人のジンベエだった。

 ジンベエは祝賀状態の現場とは裏腹に、何とも険しい面持ちで修司に声をかけてきた。

「どうした? やはり世界を滅ぼしかねない催眠暗示を植え付けられた男の誕生日を祝う気分じゃないか?」

「いいや、アッコちゃん達が開いてくれた、この会にはワシも大いに喜んで参加しとるよ。じゃが……この場を借りて、お前さんに伝えなきゃならない事が多々あっての」

「?」

 自虐を呟く修司に険しい表情で伝えねばならない事があると言うジンベエの台詞に、修司は目付きを鋭くさせた。

 そしてジンベエが修司に話さなければならない事があると言った瞬間、周囲の人々も重たい空気に曝された。

「な、なあ、ジンベエ……なんか重たい話題を話すみたいだけど……い、今は修司さんの誕生日を遅かれ祝う日じゃないか。もう少し明るい話題を……」

「いや! 今ここで……特に凍結睡眠(コールドスリープ)から目覚めたばかりの修司には、どうしてもスグに話しておかなきゃならん事がある」

 重たい話題を語ろうとするジンベエに聖龍HEADの堂本海斗が宥めようとするが、ジンベエは今この場で目覚めたばかりの修司に伝えねばならない事があると断言する。

 そして周囲の視線が、修司とジンベエに向けられる中、部屋が静寂に包まれる中ジンベエは修司に語り始めた。

「修司、お前さんが凍結睡眠(コールドスリープ)に入っとる間に、世界情勢は大きく変動した。先のスペースステーション落下で荒廃した地球は、どうにか復興してきたが同時に革命軍士などの反政府組織が活動を過激化してきた。お前さんたち聖龍隊が動かされた先の大戦は、その一角に過ぎん」

「………………」

「その間、お前さんたち聖龍隊とは犬猿の仲である国連軍も劇的に変貌した。切っ掛けは国連軍元帥ゼンギの引退じゃ。ゼンギは自らを老兵として、若い兵士を教育する一線まで退いた……問題はその後じゃ。ゼンギは自分の後任には、あの冷苦を推薦しておった。じゃが、国連軍の他の重役や国連の議員は、上層部の命令には主に忠実な赤犬を推したのじゃ……」

「……なるほどな。ゼンギが推薦した冷苦と、上層部が推薦する赤犬の二派に意見が分裂しちまった訳か」

 ジンベエの話を聞いて、修司は冷苦と赤犬という対照的な二人の軍人が国連軍元帥の後釜に推された経緯に懸念を募らせた。

 修司が懸念を募らせる中、ジンベエは語り続けた。

「冷苦は、最初は元帥なんて堅苦しい地位に納まる気は無かったみたいじゃが、赤犬が国連軍を先導するのだけは嫌っての。遂に冷苦と赤犬は、ある島で国連軍元帥の座を巡る決闘を始めたのじゃよ……!」

「氷系の能力者である冷苦に反して、赤犬は煮え滾る溶岩の能力者……どちらもかなりの実力者だが……」

 冷苦と赤犬、対照的な二人が元帥の座を賭けた闘いに修司は手に顎を乗せながら考え込んでいると、ジンベエがその決闘の結末を明かした。

「二人の決闘は三日三晩続いたという。そして最後に勝ち上がったのは………………赤犬じゃ!」

 なんと決闘の結果は、多少人情味もある冷苦ではなく、修司以上に徹底した正義を貫く赤犬に軍配が上がったという。

「激闘の末、赤犬は冷苦を倒して元帥の座に納まった。じゃが冷苦は、赤犬が指揮する軍で活動するのが癪に障ったのか、結局国連軍を抜けてしまった。今では何処にいるか……」

「………………」

「結局じゃ、国連軍は三大将の一角を失い、戦力の損失をしてしまった結果に陥った。その後、赤犬は前々の大戦でも失ってしまった戦力を補う為に「徴兵制度」なるものを作り、種族や身分を問わず戦力に成り得る人材を兵士として引き入れる形になった。今や国連軍の兵力は、増大する一方じゃ」

「………………」

 ジンベエの話を聞いて、自分以上に過激な正義を推し進める赤犬の政策と今後の動きに目を光らせなければならないと踏む修司。

 決闘の末に国連軍元帥に上り詰めた赤犬と、その赤犬に敗れ去った為に軍を去っていった冷苦。そして徴兵制度で今なお国連軍の兵力は増大する一方だという。

 ジンベエからの話を隅々まで聞いて、修司は今後聖龍隊と国連軍がどうなるのか懸念するばかりだった。

 

 

 その頃、国連軍上層部と国連議員が密かに会談していた。

「小田原修司が目覚めたというのは本当か?」

「はい、予想以上に凍結睡眠(コールドスリープ)が解けてしまったみたいで……」

「これは非常に厄介な問題だな。旧軍事政権が作り出した破滅の化身が、未だに自由に動いているとは忌々しき事態」

「これ以上、小田原修司を自由にさせておいては危険ではないのか?」

「そうだ! そもそも、小田原修司は我ら国連の下で管理されている筈の人間兵器なんだぞ! これ以上、聖龍隊の総長として自由にさせるのは問題……!」

「こうなったら……そろそろ本格的に小田原修司を私たちの下で管理する以外、手立ては無いのでは? 破滅を誘うほどの兵力である小田原修司を……いや、人間兵器の管理を徹底せねば!」

「では、此処にいる皆様が満場一致したという事で……人間兵器:小田原修司は今後、我々国連の下で完全なる徹底管理に置く事に決めるとしましょう」

「だが、小田原修司を失った聖龍隊はどうする?」

「聖龍隊など、総長を失って動けなくなれば、その程度の軍隊という事だ。今まで二次元人の軍隊を小田原修司に監視させていたが、それもこれまで。小田原修司を人間兵器として管理化に置いた後は、聖龍隊も……」

 

 果たして、小田原修司と聖龍隊はどうなってしまうのであろうか。

 

 

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