聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 バーンズたち聖龍隊は、新世代型二次元人達に語った。
 新世代型の始祖、小田原修司が自らの精神に植え付けられた催眠暗示:殺戮陽動プログラムに苦しんでいた日々を。
 そして、そんな苦境の中で仲間であるHEADと共に再び激戦の中に身を投じた事を。
「……殺戮陽動プログラムを植え付けられてから、修司って人は暴走する感情をコントロールできなかったんだな」
「そうですね。感情が滾るままに戦闘で暴走して、より悲惨な結末に陥ってしまうなんて……」
 聖龍隊から、感情の抑制ができなくなった小田原修司の暴走を聞いて、その修司の血筋である新世代型の真鍋義久と星原ヒカルたちは考え込んだ。
「何度も何度も……メカルスを倒してばかりの日々に、修司さんも疲れてたんだね」
「そうだね。しかも、そのメカルスも結局は修司さん本人から生み出された産物だし、複雑だね」
 話を聞いて、新世代型の琴裏春香と親友であるプロト世代の黒鳥千代子が口を開く。
「そして、世界情勢……いや、国連軍の中も変わりつつあった。あの過激な赤犬元帥が、こんな形で元帥の座に納まったなんて」
「徹底した正義を掲げる赤犬元帥の誕生、か……なんだかスッキリしないな」
 瀬名アラタが赤犬元帥誕生の部分に表情を険しくさせていると、細野サクヤも有耶無耶な心境を語る。
「それで……あの赤犬が元帥に納まった後、小田原修司やあんたたち聖龍隊はどうしたんだ?」
 話の続きが気になってバーンズに問い詰める新世代型の幸平創真に、バーンズは語り出した。
「あの赤犬が国連軍のトップに君臨してから、オレたち聖龍隊と国連軍の溝は決定的になった。以前からオレたち聖龍隊の正義に不満を持っていた赤犬は、聖龍隊そのものを無くそうと過激な活動に乗り出した。それだけじゃない、国連の議員や軍の上層部までもが、聖龍隊を統括する修司の存在に多大な危機感を覚えたんだ」
「聖龍隊を無くす!? それに修司さんへの多大な危機感って……!?」
 新世代型の室戸大智がバーンズの話に問い掛けると、バーンズたち聖龍隊は新世代型たちに国連軍との激突について語った。
 バーンズの腹部にある、巨大な火傷の様な傷跡にHEADは注目して。



現政奉還記 創生の章 昔語り【奪われた小田原修司 戦場と化すアニメタウン】

[プロローグ]

 

 過去に力に渇望しすぎた為に自ら望んで植え付けてもらった催眠暗示:殺戮陽動プログラムを取り除こうとした小田原修司。

 しかし聖龍隊が革命軍士と激戦を展開している間に、仲間への心配が祟って潜在意識が覚醒した事で強制的に目覚めてしまった。

 これにより修司は殺戮陽動プログラムがまだ除去されてない状態で目覚め、再び革命軍士との戦いに参戦していった。

 

 そして目覚めた修司に告げられた話。それは激動する時代の流れで変わっていた国連軍の内部事情。

 修司が凍結睡眠(コールドスリープ)に入っている間、国連軍元帥ゼンギは引退。第一線から退き、若手の育成に専念する事に。

 そしてゼンギが推薦する青雉こと冷苦と、国連議員と軍上層部が推す赤犬の一騎打ち。

 冷苦と赤犬はある島で、互いに元帥の座を賭けての覇権争いとして決闘し合った。

 その結果、軍配が上がり、勝利したのは赤犬だった。決闘に勝利した赤犬が元帥の座に納まったのだが、同時に敗北した冷苦は赤犬の思想について行けずと軍を脱退。結果、国連軍は強力な戦力である三大将の一角を失う羽目に。

 一方、元帥にのし上がった赤犬は冷苦が抜けた穴埋めと同時に、前々からの大戦で失われてた戦力を補う為に「徴兵制度」という制度を発令。これにより如何なる種族や身分であろうと、実力者なら軍人に出世できる時代が到来した。

 

 赤犬が多くの兵力を徴兵し、増大させていた頃。

 国連の議員達は、小田原修司と彼が統率する聖龍隊の存在を危険視し始めていた。

 旧軍事政権が編み出した人間の精神を改造して強化兵を作るという非人道的な実験から生み出された催眠暗示。殺戮陽動プログラムを植え付けられたままの小田原修司を、聖龍隊総長として自由にさせておいて良いのかと疑問が投げ掛けられた。

 そして、そんな修司によって結成され、今では国連軍と同等いやそれ以上の軍事力を誇るまでに至った聖龍隊という軍事的組織を野放しにしていても良いのかと。国連の議員達は懸念していた。

 

 やがて国連議員たちによる討議の結果、国連本部は小田原修司に決定的な処置を取った。

 それは、いつ殺戮陽動プログラムが暴走し、また意味のない破壊と殺戮を繰り返すか分からない修司を国連本部の下で徹底的に管理化に置く事だった。

 アニメタウンにやって来た国連軍兵士によって、小田原修司は強力な特別製の手枷と鎖そして拘束危惧で拘束され、身柄を国連本部に引き渡す事になってしまった。

 最初は、それを阻もうとHEADや多くの聖龍隊士が国連軍兵士と衝突しそうになるが、それを修司が呼び止めた。

「やめろみんな! ……これは仕方の無い事なんだ。解ってくれ」

「修司……!」

 自らに植え付けられた催眠暗示が如何に危険かを理解している修司は、このまま国連軍に連行される決意を固めていた。

 アッコは国連軍に連れて行かれる修司の背を、ただ見届けるしか出来ない現状に深く嘆き悲しみ、何もできない自分のひ弱さを痛感した。

 そして小田原修司が不在の間、聖龍隊を統括するのは代理として就いたバーンズであった。

 

 しかし、国連本部の非情な決定は修司の身柄拘束だけではなかった。

 統治者であり同時に全二次元人を監視する立場である小田原修司不在となったアニメタウンは元より二次元界に、いつ何時異常者(ヒール)が大量発生するか分からない現状を恐れた。

 そして国連は、アニメタウンとその同盟国である二次元の異世界を全て、国連統治下とする事を決定した。

 しかし聖龍隊副長バーンズ率いる聖龍HEADはこれを拒否。修司を奪われただけでなく、二次元人の尊厳を無碍にする国連のやり方に賛同する事は出来なかった。

 これを受けて国連本部は、アニメタウンをテロ支援国家と認定し、赤犬率いる国連軍にアニメタウンへの進攻を命じた。

 この国連の不条理なやり方に反発した聖龍隊は、ミラーガールなど一部の隊士の不安を視認しながらも国連軍と徹底抗戦する構えを見せた。

 後に「アニメタウン頂上大戦」と呼ばれる聖龍隊と国連軍の真っ向対決の火蓋は切って落とされてしまった。

 

 

 

[開戦! アニメタウン頂上大戦]

 

 アニメタウンの陸地は次元の境目があり、隣国・日本と陸続きになっている為に国連軍は陸地からの進攻は境目がある為に難攻すると判断し、陸からの進攻は無かった。

 しかし国連軍は、異次元航行の手段でアニメタウンの近海から本土に上陸し、アニメタウンを制圧しようと仕掛けた。

 だが海には、七海るちあ率いるマーメイドたちの軍勢が控えており、多くの武装した人魚達が国連軍の進攻する軍艦を制止。しかし国連軍は近代兵器である原子力潜水艦や艦隊からの魚雷や爆弾を用いて、海底王国を徹底攻撃。更に海中に毒を流し込むという戦法で人魚達を撤退させ、アニメタウンへの進攻を開始する。

 るちあ達はやむを得ず、アニメタウン陸地まで撤退し、聖龍隊本部でHEADと合流を果たして陸地で国連軍を迎え撃つ体制に入った。

 聖龍隊は、アニメタウン海岸の地中に設置している迎撃装置で国連軍の艦隊を迎え撃ち、上陸を阻止しようと励んだ。しかし国連軍は艦隊からの砲撃で迎撃装置を破壊して上陸を果たしてしまう。

 更に艦隊からの兵器だけに留まらず、国連軍は空域にも多数の戦闘機や爆撃機を向かわせてアニメタウン本土に無数の爆弾を落として攻め込んだ。

 この少し前に、聖龍隊は総力を挙げてアニメタウンの国民を全員、地下深くの防空壕にも使える避難用区域に避難させていた為に国民に被害は無かった。

 だが、理不尽極まる国連軍の攻撃を受けたアニメタウン本土に、遂に国連軍兵士が雪崩れ込み、アニメタウンの制圧と聖龍隊への進撃が開始された。

 兵士達は、前々から目を付けていたアニメタウンの問題あるキャラクター達を異常者(ヒール)として処分しようと進撃し、制圧に乗りかかった。

 そんな兵士達の前に、聖龍隊在籍の戦闘型のキャラクターが反撃に乗り出し、聖龍隊と国連軍の乱戦は幕を開いた。

 既に多くの民家や建物が、海上の艦隊からの砲撃や上空の爆撃機からの攻撃で瓦礫と化した戦場で聖龍隊は国連軍と抗戦した。

 数多の聖龍隊士が国連軍と戦闘に陥っているのを目の当たりにし、聖龍隊本部がある総本山からHEADも出撃し、国連軍と徹底抗戦を開始した。

 両軍とも、最初は数で相手を制圧しようと躍起になっていたが、数多の能力者を率いている聖龍隊の方に多少の有利が働いた。

 しかし断然有利な聖龍隊に、厄介な兵器が戦場と化したアニメタウンに投下された。

「あれは………………! デモンドロイド!!」

 それは今は不在である小田原修司の姿と戦闘力を模した人型兵器デモンドロイドだった。小田原修司の武術と戦闘力、そして内部のレーザービーム兵器を両手と口から発射する事ができるデモンドロイド相手に聖龍隊は苦戦を強いられた。

 国連軍に身柄を預けられた小田原修司に姿が模されているのも攻撃を躊躇う理由だったが、それ以上に強力な光線を発射するという機能で聖龍隊を追い詰めていった。

 HEADは修司紛いの兵器を相手に、デモンドロイドを攻撃。兵士達や彼らを指揮する指揮官は他の聖龍隊士に任せて強敵であるデモンドロイドを片付けていった。

 その間も、海上からは艦隊が、上空からは爆撃機が本土を攻撃。この戦況に、一時は陸地に撤退していたマーメイドプリンセス達も艦隊を大波で転覆させてはその機能を無効化。更に上空の爆撃機はちせが滑空しては次々に撃ち落して空域での戦力を激減させていく。

 聖龍隊は懸命に、自分達の故郷であり守るべき土地であるアニメタウンを死守しようと国連軍に戦いを挑んだ。

 先の戦いで左目を失い、片目になりながらも武器を持ち、国連軍と抗戦する早見青児。彼に続けと多くの隊士が士気を高めた。

 血で血を洗う大戦が開幕してしまい、アニメタウンは完全に戦火に包まれる。

 

 聖龍隊が戦場と化したアニメタウンで国連軍と抗戦していた、その頃。

 国連軍の別働隊が別海域から上陸し、大回りをしてアニメタウンの郊外へと進軍していた。

 進軍する国連軍別働隊の狙いは、アニメタウン郊外にある特化学園区域への進攻。そこには桜蘭高校/アリス学園/CLAMP学園/探偵養成学校DDSなど有名校が健在してた。

 別働隊は聖龍隊とも繋がりが深いこの学園区内を制圧する事で、聖龍隊への間接的な圧力をかけようとしていた。

 しかもその別働隊には、なぜかアニメタウンに進攻する軍隊の総括を指揮している筈の国連軍元帥赤犬の姿があった。

 学園区内に進攻した別働隊は、逸早く有名校へと攻撃を開始。しかし自分達と親睦を深めている小田原修司を拘束し、挙句の果てにはアニメタウン進攻を開始した国連軍に有名校の面々は無論ながら全面抗戦を開始。

 特殊能力を持つアリス学園の生徒達に混ざり、CLMAP学園の探偵三人組も得意の武器を用いて国連軍に抵抗する。

 だが、現場を直接指揮する元帥赤犬は容赦のない進軍を指示する。

「ゆけ! 修司が不在となったアニメタウンは、いつ如何なる時に異常者(ヒール)が発生するか解らん危険区域! そんな地を、わしら国連軍が統治するんじゃけェ!」

 赤犬は小田原修司型兵器デモンドロイドをアニメタウン本土と同じ様に学園区内に投下して、非力な生徒も大勢いる筈の学園区内を攻撃させ続ける。

「行け、デモンドロイド! 抵抗する奴らは構わず叩け!」

 国連軍元帥赤犬の新たな「徴兵制度」で、科学班から正式に国連の兵士それも指揮官に取り立てられた金太郎の様な身なりをしている戦桃丸からの指示で、デモンドロイドは進撃を続行する。

 そんな戦桃丸の指示で戦い続けるデモンドロイドは、攻撃目標を学園区内に残っている生徒達に絞り込んで徹底的に攻撃。

 すると一体のデモンドロイドが逃げようとしている二人の女子生徒に狙いを絞って急接近。間近から口からの強力な光線を発射しようとエネルギーを口内に溜め込む。

 戦前で国連軍別働隊と抗戦している者たちが漠然とする中、砲撃が今まさに放たれようとした。

 が、その時。

 口からレーザー砲撃を放とうとしていたデモンドロイドに何者かが直接打撃の様な強力な攻撃を打ち込んで、デモンドロイドを破壊、吹き飛ばしては爆破させた。

 一体何者がデモンドロイドを破壊したのか、皆が注目していると硝煙の中から姿を現した一人の人物を見て学園関係者達は声を揃えた。

『じゅ…………順一さん!』

 それは今は国連に身柄を拘束された小田原修司の一番弟子、村田順一だった。

 そして硝煙の中から現われた順一に続いて、彼の後ろから続いて白煙の中から現れたのは日本皇軍の御旗を掲げて参上したスター・コマンドーの一団だった。

 戦火のアニメタウン特化学園区内に現われた村田順一率いるスター・コマンドーを前にし、総ての軍の総指揮をする元帥赤犬は順一達に言い迫った。

「スター・コマンドー……! おまはんら、今や聖龍隊の一員ではなく日本皇軍の一団として活動しとるんじゃないのかァ!? そんな皇軍が、わしら国連軍に歯向かったとあれば……天皇家のいい面汚しになるのは明白じゃろうて……!!」

 皇軍の一団であるスター・コマンドーが国連軍に歯向かうという事は、それだけで日本天皇家の面汚しに匹敵する大罪だと吐き捨てる赤犬。

 しかしそんな赤犬に、順一は強気な姿勢で言い返した。

「確かに僕らは、もう天皇家が皇軍の一団だ…………だけど! か弱き人々を守るべくして守る聖龍隊の誇りまでは失ってはいない!」

 更に順一は赤犬を見据えながら言い放った。

「赤犬元帥! 僕たちは何も無許可でアニメタウンの人民を守りに来た訳ではない! 正式に、天皇家よりお許しを得てアニメタウンにまで馳せ参じたまでだ! これ以上、あなたが罪もない一般の二次元人たちにまで手をかけようというのであれば…………聖龍隊の誇りと、天皇家の御旗を背負う僕たちスター・コマンドーは黙ってはいない!!」

「ッ……!」

「日本が天王家と対峙する覚悟……いや、歴史ある一族に歯向かう大罪を背負う覚悟はあるんだろうな?」

 順一から天皇家の様に歴史が厚い一族と対立する大罪を背負う覚悟はあるかと問われた赤犬は、衝撃のあまり言葉を失ってしまう。

 

 と、赤犬が学園区内に突如として現われたスター・コマンドーに気を取られていたその時。

 赤犬に通信が入った。

「なんじゃこげな時に……! ……おう、わしじゃ…………なに? そいつは本当か? ……ああ、分かった。仕方がなかァ、わしもそっちに加勢する」

 そう言って通信を切った赤犬は、再び視線を順一達に向けると苦々しい顔で言い放った。

「運がええのォ……今、本土を攻撃しちょる部隊から報告が入った。HEADは頭である総長を失っても、まだ抵抗する気があるらしいけェ……今からわしも、HEADへの進撃に加勢する……! おまはんらは、また後でシバいたるわい!」

 順一達スター・コマンドーにそう告げると、赤犬は現場で戦っている兵士やデモンドロイドそれに戦桃丸に告げた。

「別働隊! 今よりわしらは、本土での聖龍HEAD討伐に向かうきィ! 進軍再開じゃァ!!」

 赤犬の指示に、兵士も、戦桃丸も、その戦桃丸に指示を与えられるデモンドロイドも一斉に移動し始めた。

「デモンドロイド! 次の戦場はアニメタウン本土だ! 気を抜かず決めていくぞ!」

 戦桃丸の指揮で、デモンドロイドは各自アニメタウン本土に向かって進軍を開始した。

 

 残された順一達スター・コマンドー。

 順一は仲間達に告げた。

「……さあ、僕らは逃げ遅れた学園関係者を避難させるんだ! 皇軍として聖龍隊に加勢する事が出来なくとも、逃げ遅れた人々の避難誘導だけは出来る筈だ! 今、僕たちが出来うる事をしよう!」

 順一の苦渋の命令の重みを感じ取り、スター・コマンドーは聖龍隊に加勢できない歯痒さを感じながらも逃げ遅れた人々の避難を誘導していった。

 スター・コマンドーが学園区内の人々を救済している間、赤犬率いる別働隊はアニメタウン本土を進軍している本隊と合流を果たそうとしていた。

 

 

 

[激戦! 強襲デモンドロイド]

 

 別働隊を率いて行動していた赤犬が、アニメタウン本土を進軍する本隊と合流を果たそうとしていた頃。

 聖龍HEADは果敢にも地上に投下されてきたデモンドロイドと激しい接戦を繰り広げていた。

 アニメタウン上空を飛来する爆撃機から投下されてきた無数のデモンドロイドは、ほぼ全て聖龍HEADによって破壊されていた。

 この戦況に国連軍上官は、遂に対陸地用の最終兵器としてガンダムでお馴染みのザグを戦場に投下して、スパロボ不在の聖龍隊を壊滅しようと目論んだ。

 しかし魔法騎士の三人が操る炎神レイアース/海神セレス/空神ウィンダムがザグを次々に破壊して進攻を止める。

 更に副長であるメタルバードは変身を解いて、自分と離別したチップバードに愛機シルバー・ウィングを操縦させてロボットに変形させた後に、魔法騎士が操る三機と共闘してザグの進軍を阻んだ。

「疾風牙!」

 バーンズは聖龍隊で培った風の戦術で国連軍兵士やデモンドロイドの進攻を阻んでいた。

 だが、そんな矢先、遂に別働隊を率いていた元帥赤犬がアニメタウン本土に到着し、本隊と合流を果たしてしまう。

「聖龍隊!! まだわしらに歯向かう気かァ!?」

「赤犬……! テメェも出撃してたのか……!!」

 赤犬は未だに自分たち国連軍に歯向かう聖龍隊に怒りをぶつけ、それに対してバーンズたちは仲間である修司を連行していった赤犬の出現に腸が煮えくり返った。

 そして国連軍は赤犬が率いてきたデモンドロイドを加勢させて一気に聖龍HEADへと進撃を開始した。

「もう諦めんかい、バーンズッ!」

「誰に言ってやがる…………オレは聖龍隊が副長、風神のバーンズだッ!!」

 進攻してくるデモンドロイドを破壊しながら赤犬と言い合いをするバーンズ。

 そんなバーンズに続いて、士気を上げたHEADも果敢にデモンドロイドや国連軍兵士を迎撃する。

「おんどれェ……何としてもHEADを薙ぎ倒すんじゃァ!」

 赤犬の指示に従い、デモンドロイドを進軍させる戦桃丸も指示を出す。

「前後から挟み撃って、追い込めェ!!」

 戦桃丸は抗戦を続ける聖龍隊を前後から挟み撃ちにして追い込んでいく作戦を展開。

 しかし聖龍隊は即座に前方と後方からの勢力を分断してほぼ同時に撃退。挟み撃ち作戦をなし崩しにしてしまう。

「国連軍の好きにはさせねェぜ!!」

 士気の上がった聖龍隊士の勇敢な進攻に、戦桃丸も交戦するが自慢の防御を打ち砕かれてしまう。

「うお…………わいのガードを…………!」

 戦桃丸は一時、戦前を離脱するまで追い詰められた。

 

 この聖龍隊の意外な状況に、元帥赤犬は苦虫を噛み潰したような面で呟いた。

「こうなりゃ仕方がなかァ……! 奥の手を使うしかあるまい」

 そう言うと元帥赤犬は懐に忍ばせていたスイッチに触れ、押した。

 

 すると遥か彼方の上空から一機の戦闘機が飛来して、人一人が入れる大きさのポッドを排出。

 そのポッドは一直線にアニメタウン本土に落下しては、地上に突き刺さった。

 聖龍HEADが皆揃って注目していると、ポッドの外壁を内側から突き破って何かが出てきた。

 それは小田原修司の様に見えた。

「なによ、またデモンドロイド!?」

「性懲りも無く、また修司君そっくりの兵器を投下したって訳か!」

 セーラーマーズとセーラージュピターが、ポッドから出てきた存在を見て嫌気が差す。

 が、聖龍隊副長のバーンズだけはHEADに告げた。

「気をつけろ! もしかしたら、今までのデモンドロイドと違う……まったく新しいタイプの機種かもしれん!」

 バーンズは、今目の前にいるデモンドロイドが今まで戦場に投下されてきたのとは違う機種かもしれないと警告する。

 すると次の瞬間、ポッドから出てきたデモンドロイドは聖龍HEADに向かってきた。

「離れろッ!」

 エンディミオンが叫んだ瞬間、前線にいたセーラー戦士達は一斉にデモンドロイドと距離を置こうと離れた。しかし、デモンドロイドは国連軍が準備した日本刀で素早く斬りかかり、サターンとネプチューンを刃が掠めた。

「サターン! ネプチューン!」

 ウラヌスが二人に呼びかけた瞬間、デモンドロイドは次はウラヌスに斬りかかって来た。ウラヌスはこの斬撃を自らの短刀で受け止め、防ぐ。しかし力負けしてしまい、弾き飛ばされてしまった。

「あのデモンドロイド、今までとは完全に違う……!?」

「ええ……! 動きが今までのとは全然違うわ」

 デモンドロイドの動きが、今までとは完全に違う点に戸惑うバーンズとミラーガール。

 と、二人が地上で猛威を振るっている、今までとは違う動きのデモンドロイドを前に、聖龍HEADは苦戦を強いられていた。

「そう好き勝手にさせませんっ!」

 コレクターハルナが、そのデモンドロイドに攻撃を仕掛けるが、相手のデモンドロイドは颯爽と攻撃を回避して反撃に転じ、コレクターハルナに攻撃する。

「行きますよ……!」

 するとお次はセーラープルートが攻撃するが、デモンドロイドは所持している日本刀でプルートの攻撃を弾き返した上で急接近して彼女を攻撃。吹き飛ばしてしまう。

 続いて木之元桜がファイト(闘)のカードを自らに使用して、デモンドロイドに近接攻撃を仕掛けるが、さくらの打撃攻撃をデモンドロイドは全て見抜いてかわしすばかり。最後には回し蹴りをさくらの腹部に喰らわして彼女を蹴り飛ばす。

 何とかデモンドロイドの猛攻を制止しようと、マーメイドプリンセス達が大量の水を発生させて巨大な渦潮を作り出すと、その渦潮でデモンドロイドを完全包囲して動きを封じようと計る。

「はァっ!」

 そこに渦潮の頂上、真上からウォーターフェアリーが無数の水の銛を作り出して地上のデモンドロイドに直撃させようとする。

「………………」

 しかしデモンドロイドはウォーターフェアリーが作り出した水の銛を全て刃で弾いて消滅させると、自分を取り囲む渦潮を切り裂いて自力で脱出してしまう。

「きゃあっ!」

 渦潮を切り裂いて脱出したデモンドロイドの斬撃に七海るちあ達マーメイドプリンセスも思わず腕で顔を隠す。

 

 と、其処にこの戦況を傍観してばかりはいられないと、バーンズとミラーガールの両名が参戦。デモンドロイドに攻撃を仕掛ける。

「これ以上……大事な仲間を傷付けさせない!」

 ミラーガールは間髪いれず、デモンドロイドに接近してミラーソードで斬りかかるが、デモンドロイドは軽々と彼女の斬撃をかわしてみせる。

 すると其処にバーンズが翼を羽ばたかせて、聖龍隊で培った風の戦術で攻撃。鎌鼬状の疾風でデモンドロイドを攻撃する。

 しかしデモンドロイドはバーンズが起こした鎌鼬を所持している刀を勢いよく振るって起こした突風でかき消して攻撃を無効化してしまう。

 と、デモンドロイドがバーンズの攻撃をかき消すのに意識が向いている隙に、ミラーガールが再び急接近してデモンドロイドを刃で攻撃する。

 ミラーガールの間近からの斬撃を身を反らしてかわしてばかりのデモンドロイド。と、そこに真紅率いるローゼンメイデンと、東京ミュウミュウの面々も接近してデモンドロイドに大勢で攻め込んだ。

 ミラーガールの刃を刀で受け止めながら、真紅たちやミュウイチゴ達の格闘技を受け止めていくデモンドロイド。

 そして其処に更に他のHEADも駆け付けて、縦横無尽に入り組んでのデモンドロイドへの乱戦を開始した。

 デモンドロイドは聖龍HEADの猛攻を受け止め、防ぎながらも次第に押されて行った。

 

 やがて死に物狂いの乱戦で、HEADは遂にデモンドロイドの体に傷を負わせる事に成功した。

 今まで機械である筈のデモンドロイドとは違った動きを見せた個体にようやく損傷を与える事に成功した聖龍HEAD。

 しかしHEADは此処まで、死闘し合ったデモンドロイドが機械人形だと思い込んでいた。デモンドロイドの損傷を受けた身体から流れる紅い液体を見るまでは。

 

 

 

[悲劇! 運命を受け入れた鬼神]

 

 国連軍元帥赤犬が投下させた最後のデモンドロイドと思われる敵。

 その敵に損傷を与えた時、そのデモンドロイドから流れる紅い血を見て聖龍HEADは愕然とした。

「………………!」

 副長バーンズは、デモンドロイドと思われた敵が流す紅い血を見て言葉を失った。

 それは他の聖龍HEADも同じだった。

「はぁ、はぁ……ど、どういう事? あのデモンドロイド、血が出てる……!?」

「血が出てるって……まさか!?」

 セーラームーンもキング・エンディミオンも余りの事態に蒼然としてしまう。

「出血してるって……まさか、そんな!」「……!」

 想定外の事態にキューティーハニーは血相を変え、ちせは衝撃の余り口を塞いでしまう。

「こんなのって……!」

 七海るちあや堂本海斗たちすら、この状況に言葉を失う。

「ウソでしょ……! こんな事って……」

 真紅たちローゼンメイデンも、ボロボロの状態で愕然とする。

「……ウソ、よね……? ウソだと言ってよ!」

 そして誰よりも、この状況に愕然とするミラーガールは叫んだ。

「修司!!」

 そう、HEADが、そして聖龍隊の誰もが最後に投下された小田原修司型兵器デモンドロイドと思い込んでいた敵は、機械ではなく正真正銘の国連に身柄を預けられた小田原修司本人だったのだ。

 皆がデモンドロイドと思い込んでいた敵の実態が、本物の人間兵器である小田原修司と、聖龍隊総長だと知って愕然とする聖龍HEAD。

 しかし当の小田原修司は腕から流れる血を気にしながらも、国連から託された日本刀を顔の前に構えると再び聖龍HEADに斬りかかってきた。

『うわっ!』

 修司の凄まじい斬撃にHEADの多くが吹き飛ばされてしまい、陣形が崩れてしまう。

 ミラーガールは何ゆえ国連に強制的に身を預けられた修司が、赤犬の統率の下で動き、そして自分たち聖龍隊と戦っているのか理解に苦しんだ。

「修司やめて!」

 ミラーガールは叫ぶが、修司のHEADへの猛攻は止まらなかった。

「ど、どうして……修司が」

 猛威を振るう修司の攻撃を受けて、キング・エンディミオンが項垂れながらも苦悩する。

「赤犬! これはどういう事だ……!!」

 と、激しい戦闘中、バーンズが自分達と修司の戦いを傍観している元帥赤犬を睨み付ける。

 すると赤犬は腕を組んで平然と言った。

「修司は元々、軍によって肉体だけでなく精神をも改造された兵器人間。何よりも、破滅の化身メシアへと成り下がった驚異じゃァ……! そんな修司を、国連のお偉方が管理し、わしら国連軍が人間兵器として使うっちゅうのが、何処が間違いじゃけェのォ……!!」

「て、テメェ……!!」

 国連によって管理下に置かれた絶対的な戦力を誇る人間兵器、破滅の権化メシアである小田原修司を国連軍が兵器として使用する事に間違いはないと告げる赤犬の言葉に、バーンズは怒りに震えた。

 そして一方の修司は、国連軍の下、自分が結成した聖龍隊を束ねるHEADを攻撃し続けた。

「修司君! もうやめて!」

 セーラームーンが修司を呼び止めるが、修司は無粋な顔付きで突っ返した。

「俺は国連軍が所有する人間兵器……小田原修司だ!」

 そう呟く様に言うと、修司はセーラームーンや木之元桜たちを片っ端から斬り付けて攻め込む。

「修司! やめてっ!」

 そんな修司の猛攻を制止しようと、ミラーガールが修司の正面に駆け込み、修司が振り下ろす刃をミラーソードで受け止めた。

「修司……! 大切な仲間を、友達を自分の意思で傷付けるほど貴方は落ちぶれちゃいないわ……!!」

「俺は既に国連軍が納める人間兵器の小田原修司だ……! もう、お前たち聖龍隊の友でも仲間でも無くなった!」

 互いに激しい鍔迫り合いをし、ミラーガールと修司は押し合った後に距離を取り合った。

 そしてそのまま修司とミラーガールは激しい剣戟に持ち込んでしまう。

「修司! 貴方は完全な兵器……そう、破滅の化身であるメシアではない筈よ! それなのに、また私たちと戦う気なの!?」

「俺の運命は……もう、俺自身で決めてしまってる。俺はもう、人間ではなく兵器としての道を選んだ悪鬼なんだ!」

「たとえ貴方が鬼に成り下がろうとも、私たちを……聖龍隊を本気で殺めようとする修司じゃない筈よ! 赤犬に何を言われたのか分からないけど……これ以上、私たちの故郷であるアニメタウンを壊さないで!」

「!! 故郷……!?」

「そうよ……! アニメタウンは、日本に続く貴方の……いいえ、私たちの故郷よ!」

 ミラーガールの言葉に、彼女と激闘する修司は激しく動揺し始めた。

 

 そしてミラーガールの鋭い攻撃と言葉に、修司は動きを止めて立ち止まる。

「はぁ、はぁ……」

 修司もミラーガールも、両者共に息を切らしながら向き合った。

 其処にミラーガールの両隣に整列する形で、聖龍HEADが修司と対面する。

 修司は兵器に成り下がった自分を見詰めるHEADを直視する事ができず、自然と視線を地面へと向けてしまう。

 と、そんな地面を見詰める修司にミラーガールが笑顔で言った。

「修司、大丈夫よ。例え、貴方が何者になろうとも……私たちは仲間であり、家族よ」

 このミラーガールの言葉に、修司は愕然となり戦意を失いかけた。

 だが、この戦況を近くで傍観していた赤犬は良しとしなかった。

「ぐぬぬ……! 修司、いや、メシアよ……! 忘れた訳じゃあるまいな! お前は所詮タダのわしら二次元人を滅ぼす為に改造された兵器メシアじゃ……! そんなお前に、仲間だの友人だのという関係は意味を成さん事を忘れた訳じゃあるまいな。……お前はタダ、わしら国連軍の戦力として投下された戦場で全力を尽くして戦えば、それでえェんじゃ……!!」

 そうHEADと黙って向き合う修司に言い詰める赤犬の台詞に、バーンズたちは睨みを利かせる。

 すると赤犬は此処で懐から赤いボタンが付いたスイッチを取り出して、それを躊躇なく押した。

 すると「うぎゃあああああああああッ!!」と、修司が絶叫を上げた。

 HEADが突然の修司の絶叫に戸惑っていると、赤犬は再度スイッチを押した。

「ああああああああああああああああああああッ!!」

 修司は瓦礫の山と化した地面を転げ周り、異常なまでに苦しんだ。

 そして修司は黒焦げの状態で立ち上がり、よろめきながらも再びHEADと向き合った。

 赤犬は、修司の苦しむ情景を目撃した有態でHEADに言い放った。

「見たか、HEADよ。これが修司が選んだ兵器としての道じゃけェ! 修司は国連に身柄を拘束された時から己の兵器としての運命を受け入れたんじゃッ! 其処をわしら国連軍が実用的に使える様、電撃で渇を入れられる首輪を嵌めさせて、お前ら聖龍隊への最終兵器として使っとるちゅう訳じゃ……! 有り難いじゃろ……やられる前に、兵器に成り下がったとはいえ自分達の総長の姿を見られてのォ……!」

「お、お前……!!」

 修司を完全な兵器として統治下に置く為に、予め電撃を放流する首輪を修司に嵌めさせて自分たち聖龍隊への最終手段として用いた赤犬の戦略にバーンズは怒り猛った。

 そして電撃を流された事で、再度己のメシアとしての運命を再認した修司は、再び聖龍HEADへと攻撃を開始してしまう。

 

 

 

[最強のタッグ! メシアの鬼神と灼熱の赤犬]

 

 国連軍元帥赤犬の指揮下にて、かつて同じ仲間であった筈の聖龍HEADを攻撃する小田原修司。彼は自らが力に渇望してしまった為に破滅の化身メシアへと変わり果ててしまった運命を受け入れ、国連軍の下で戦っていたのだ。

 そんな完全に人間兵器として戦う運命を背負った修司に、HEADと戦うよう指示を告げる赤犬。

 しかし赤犬は、修司が微かに仲間意識を持ってその戦意が揺るがないかを不安に思ったのか、何と自らも修司と共にHEADへと進撃するのであった。

 

「聖龍隊……! お前等のくだらん英雄ごっこは、ここで終いじゃ!」

 赤犬は修司と共にHEADへと攻撃する。

 修司が剣戟でセーラーウラヌスやキューティーハニー達と接戦を繰り広げている傍らで、赤犬は他のHEADに溶岩の腕を膨張させて一気に煮え滾ったマグマを放射していく。

「離れろ!」

 キング・エンディミオンが少しでも触れただけで大火傷以上の深手を負ってしまう赤犬のマグマの猛攻に注意を呼びかける。

 しかし赤犬が放射する灼熱の溶岩は、瞬く間に瓦礫の山と化した戦場に降り注ぎ、辺り一帯を焼き尽くしてしまう。

「はぁ、はぁ……」

 そんな灼熱の戦況で、赤犬と共闘する修司は息を切らし、大量の汗をかき始めた。

 だが修司は己が選んでしまった運命を背負い込み、灼熱の状況下で聖龍HEADと激闘する。

 修司から放たれる鋭い剣戟を、どうにか防ぎながら赤犬の溶岩の猛攻から回避していくセーラーヴィーナスたち。

 コンクリートを溶かしながら凄まじい蒸気を放つ溶岩の狭間で修司は汗を流しながらHEADと交戦する。

「修司さん、やめてください……!」

「俺はもう……! お前達を滅ぼす兵器だ!」

 ミュウレタスからの涙ながらの制止の声に、修司は激しい形相で言い返しながら刀を振るい続けた。

 最早、国連によって完全に人間兵器へと変えられた修司の猛攻を止められないのだろうか。HEADは修司と赤犬の猛攻をかわしながら考えた。

 

 一方、このHEADと修司そして赤犬の激戦を少し離れた所で傍観するしか出来ない者たちがいた。

「………………!」

「……ジュン! このまま黙って見ているだけでいいの!?」

 苦渋の表情で傍観に徹しなければならない立場に苛立つ平賀才人を横目に、ハイパー・ブロッサムが自分達の上官にして日本皇軍の一員である村田順一に訴えた。

 しかし順一は実に悔しそうな苦々しい顔で皆に告げた。

「今の僕らは完全に日本皇軍の一員として、アニメタウン住人の救出に来られたのも奇跡的だ……だからこそ、皇軍の一員として国連軍に手出しする訳にはいかないんだ……!」

「ジュン! だけど、このままじゃ修司さんもHEADの人たちも……!」

 皇軍として、国連軍の進軍を阻む行為は出来ない事実を伝える順一に深澤マイは悲愴な面持ちを浮かべる。

「クソッ、何が皇軍だ! 国連軍の暴挙を黙って見過ごすなんて……!」

「そうですわ! 大切な仲間を守る事すら許されないなんて……!」

 現状を傍観するしか出来ない現状に苛立つ大門大に、大切な仲間である聖龍隊を守れない立場に居続ける自分たち皇軍の立場に悲しむ風林寺美羽。

 しかし順一は、そんなスター・コマンドーの仲間達に言い放った。

「いいか! 所詮は天皇陛下も……いや、天皇家だって人間の集まりなんだ! 国連軍の権力と影響力の前では、如何に歴史が厚い天皇家であっても立ち向かえないのが現実なんだ!」

『!!』

「僕らは聖龍隊の面子を、誇りを背負って皇軍へと歩んだ以上……! 聖龍隊の誇りを守る為にも、聖龍隊に加勢してはいけないんだ! これが現実だ……!!」

 順一からの悲痛なまでの現実を突き付けられて、スター・コマンドーの隊士たちは全員返す言葉が見付からなかったという。

 

 一方で悲しき運命を背負った修司は、修司を縛り付ける電撃式の首輪のスイッチを所持する赤犬と共にHEADへと進撃を続行していた。

 聖龍HEADは、どうにかして赤犬から、いや国連軍から修司を奪還できないか考えながら凄まじい戦場を跋扈していた。

 すると此処でバーンズが、何かを閃いて咄嗟に仲間に駆け寄っては伝えた。

「おい、ジュピター。実は………………できるか?」

「!? ……なんとかやってみる」

 バーンズから作戦を託された仲間は、直ちに他の仲間達と連携を取りながらも修司を追い込んでいく。

 聖龍HEADの連携猛攻に、修司は一時攻撃を躊躇っている為でもあるのか膝をついて休止してしまう。

 そんな修司に渇を入れようと、赤犬は再び非情のスイッチを押して修司に電撃を浴びせた。

「うぎゃああああああああああああ……ッ!!」

 電撃が体に流れて絶叫する修司。

 と、その時。其処に聖龍隊士でも電撃に滅法耐性があるセーラージュピターが駆け付けて、修司に電撃を放流する首輪に手を掛けた。そして自慢の怪力で修司の首輪を強引に引っ張っては破壊して、修司の体に電撃が流れるのを止めた。

「うぅ……」

 首輪が外れた事で、電撃から解放された修司は前のめりに倒れそうになるが、それをセーラージュピターが支えて肩を貸す。

「や、やった! 修司の首輪が外れたわ……!」

「………………!」

 修司を苦しめていた首輪が外れた事に歓喜するミラーガール達に反し、赤犬は苦虫を噛み潰した様な強面で修司を見据える。

 

 そして次の瞬間、聖龍隊副長バーンズが叫んだ。

「聖龍隊! 一旦、退くぞッ!」

 バーンズからの突然の撤退命令に、ざわつく戦場。

 しかし聖龍HEADは、今や捕らわれの身であった修司を無事に奪還できた事から、此処は一時撤退してから対策を練るという流れに同感した。

 そして聖龍HEADは、多くの戦場で国連軍と対峙していた隊士らと共に撤退を開始した。

「修司を必ず連れて行け! そいつはまだまだ、聖龍隊の長として、やってもらわなきゃならない事が山ほどある!!」

 副長バーンズの指示の下、破滅の化身メシアへと成り下がってしまったが為に自らの意思で国連に降ってしまった修司を連れてHEADは急ぎ撤退を開始した。

 しかし、そんな聖龍隊の逃避行に国連軍元帥赤犬は黙って見過ごす訳が無かった。

 

 

 

[焼けつく執念 赤犬非情の追撃]

 

 修司の解放を視認した副長バーンズは、これ以上の犠牲を出さまいと聖龍隊全隊士に退却を命じる。

 一方の修司は、ミラーガールとセーラージュピターに担がれながら運ばれていた。

「修司!! アッコ!! みんな走れ!! オレ達は狙われてる!!」

 バーンズは後方から、国連軍が元帥赤犬の指示の下で追撃してきている現状を叫んで伝える。

「……お、お前ら……」「! 修司!」 

 ミラーガールは抱えて運ぶ修司の悲痛な声に反応する。

「お前ら……俺は、置いていけ……」

「何を言っているのよ修司!」

「俺は……もう、自分の運命からは逃げはしない。逃げたくないんだ……だから…………破滅の化身メシアへと堕落した俺は、大人しく国連の所有物として生きていかなきゃならないんだ……!」

「っ……!」

「……俺は、もう…………聖龍隊には、戻れない…………」

 修司から己の運命からは逃げずに、メシアとしての運命を受け入れて国連の所有物として生きていく決意を聞いたミラーガールは、優しい慈愛に満ちた微笑で修司に言った。

「そうね、逃げたくないのよね修司は。修司は昔からそう……責任感が強くて、誰よりも重いモノを背負ってて……」

「………………」

「それなら、私にも背負わせて。修司が抱えてしまった運命を……悲運な宿命を、一緒に背負わせて! 少しは軽くなると思うわ」

「!」

 ミラーガールからの優しい言葉に、修司は衝撃を受けた。

 すると、通信機越しからか二人のやり取りを聴いていた他の聖龍HEADもミラーガールに賛同した。

「アッコちゃんだけじゃないわよ!」

「私たちも、アッコちゃん同様……修司君の背負ってきたモノを一緒に背負う覚悟はできてるわ!」

「お、お前たち……!」

 セーラーヴィーナスやセーラーマーズたち仲間のHEADの発言にも衝撃を受ける修司。

 自らの意思でアニメタウンだけでなく聖龍隊にも牙を向けた修司だったが、そんな悲運な己の運命や宿命をも共に背負ってくれると言ってくれた仲間の存在に受けた衝撃は大きかった。

「国連軍に邪魔はさせない!!」

 そんな修司を連れて退散する聖龍HEADを支援しようと、多くの聖龍隊士がHEADと彼女達に守られる修司を護衛した。

「行け、みんな! ここは俺達で食い止める!」

「青児さん、無茶だけはしないで!」

 片目だけの隊士になった早見青児に、キューティーハニーが声を投げ返す。

 

 ミラーガールは満身創痍ながらも、自分以上に心身が傷付いている修司を担ぎながら、仲間に急かされ退路を進む。

 だが、それを国連軍元帥赤犬は見逃さなかった。

 しかし赤犬は敢えてHEADの誰よりも先頭を行くミラーガールや彼女に担がれる修司、そして傍らのバーンズに向けて唐突に話し始めた。

「本気で逃げられると思うちょるんか…………めでたいのう」

 赤犬は更に退散していく聖龍HEADに挑発していく。

「修司を連れて即退散とは、とんだ腰抜けの集まりじゃのう聖龍隊。総長が総長なら……それも仕方ねェか…………!! 聖龍隊は所詮、不完全な正義しか掲げられない半端者じゃけェ……!!」

 この赤犬の挑発に、聖龍隊副長バーンズが乗ってしまった。

「ハァ……ハァ……半端者?」

 バーンズは立ち止まり、振り返って赤犬を睨み付ける。そんなバーンズを視認して、同じく駆け抜けていたHEADの面々も立ち止まる。

「取り消せよ……!! 今の言葉……!!」

 バーンズは普段の穏やかで御調子者とは思えない様な、怒りに満ちた形相で赤犬に申し渡した。

 しかし赤犬は自分の発言を訂正せず、続けてバーンズに挑発を仕掛ける。

「何が間違っとるんじゃ? 修司は己の中の未熟で不完全な心を惑わせようと、力に渇望した。その結果、世界を滅ぼしかねない破滅の権化メシアに成り下がった半端者じゃァ……!!」

 更に赤犬は聖龍隊という組織そのものも愚弄し始めた。

「総長、総長とゴロツキ当然の連中に慕われ……友情ごっこに浸り、正義まがいの英雄気取りで世界にのさばり」

「…………やめろ………………!!」

 赤犬の発言にバーンズの怒りは上昇する。

「…………その不完全な心と正義気取りで余計に世界を混沌に陥れ、己の中の弱さに打ち勝てず……!! 終いにゃ、世界の権力者の集まりであるわしら国連にその身を預かる身にまで堕ちた……!! そしてメシアとしてもお前ら聖龍隊を滅ぼす事もできず、そんな半端もんの連中に助けられて無様に逃避行!! 実に愚かで情けない人生じゃあありゃせんか?」

「やめろ……!!」

 遂に赤犬の発言にバーンズの怒りが切れた。

「修司はオレ達に生き場所をくれたんだ!! お前に聖龍隊の何が解る!!」

 赤犬の挑発に乗ったバーンズが咆哮を唸らすと、赤犬は断言した。

「人間は正しくなけりゃあ生きる価値無し!! マン・ヒールズの様に真っ当でないクズな輩までも、下らぬ感情で仲間に引き入れちょる聖龍隊に正義を掲げる資格は無かァ!!」

 元悪役・敵役であるマン・ヒールズを仲間に引き入れている時点で間違っていると告げる赤犬は更に吐いた。

「修司も、聖龍隊も……不完全な正義を掲げた半端もんとして死ぬ!! お前らゴミ山の連中にゃあ誂え向きじゃろうが」

「黙れ!!」

 バーンズは遂に我慢の限界を超えてしまい、単身で赤犬に接近する。

「修司は!! 所詮は己が力に溺れ、誤った道を突き進んだ欠陥だらけの人間じゃ!! そんな奴が組織した聖龍隊は正しく、ゴミ山としてはお似合いじゃけェ!!」

「聖龍隊はこの時代を築いた英雄達だ!! オレを救ってくれた連中をバカにすんじゃねェ!!」

 聖龍隊をゴミ山と称する赤犬の発言に怒り満々のバーンズは、自分を救い続けてくれた聖龍隊を愚弄する赤犬に怒りの矛先を向ける。

「この時代の名が!! 聖龍隊だ!!」

 そしてバーンズは鋼鉄化した自身の右腕で、赤犬の溶岩の腕と真っ向から拳をぶつけ合った。

『バーンズ!!』『副長!!』

 赤犬と真っ向から拳をぶつけ合うバーンズの姿を目撃して、多くの聖龍隊士がバーンズを気にかける。

「うおおおおおおおおおおおお……っ!!」

 溶岩の拳と己の拳をぶつけ合う唸るバーンズに、赤犬は絶えず聖龍隊や修司を愚弄する。

「修司も、修司を総長として慕う貴様らも……結局は不完全な正義を掲げる事しかできん半端モンじゃけェ!!」

 次の瞬間、バーンズの拳とぶつけ合っている赤犬の拳が内部から膨張し、破裂した。

「うおっ……!」

 その瞬間、黒煙の中からバーンズが吹き飛ばされてしまう。

 

「ぎゃあああああああッ!!」

 と、その時。近くで交戦していた聖龍隊士の早見青児が突然もがき苦しんだ。

「せ、青児さん!?」

 突如倒れる青児を見て、キューティーハニーが急いで駆け付ける。

 そして顔を押さえ込んでもがく青児に駆け寄ったキューティーハニーが見てみると、なんと青児は膨張破裂した赤犬の溶岩の破片が運悪く右目に着弾してしまってた。

 完全に眼球の表面を溶岩の小さな破片で焼かれてしまった青児は、既に潰れている左目に続いて此処で残っていた右目をも失ってしまった。

 そんな悲劇に見回れた青児を、キューティーハニーは一旦戦闘から離脱して急ぎ負傷した青児を安全な場所まで避難させる。

 

 

 

[消えぬ信念 焼かれた風神]

 

 その一方で、瓦礫の山と化した大地に弾け飛ばされたバーンズは、ふと己の右腕を見詰めると。

 なんと聖龍隊でも、いや二次元界でも屈指の再生能力を持つバーンズの右腕が完全に焼失してしまってた。

 自身の焼失した右腕を見て愕然と苦痛の表情を浮かべるバーンズに、赤犬が言った。

「完全な再生能力を誇る細胞の持ち主といえど、油断しちょるんじゃなかァ? ……お前は所詮、細胞配列を変えれるだけの生命(いのち)。わしは、その生命(いのち)をも蒸発させる事のできるマグマじゃ! わしが焼けない生物なぞ、この世に存在しないんじゃけェ!」

「バーンズ!」

 赤犬の溶岩の能力で再生可能な片腕をものの見事に焼失させた赤犬からの怒号の中、苦痛に喘ぐバーンズに修司の肩を担いで移送していたミラーガールが叫ぶ。

 そんなバーンズが負傷した現状で、赤犬は更に告げた。

「国連の命に背き、更にはわしら完全な正義を掲げる国連軍が所有する兵器の小田原修司を盗んで逃げ出そうとしただけでも大罪!」

 そして赤犬は睨み付けていたバーンズへの視線を変えて、バーンズに呟いた。

「よう見ちょれ……お前らが掲げる正義が、如何に何も護れないかを」

 次の瞬間、赤犬は咄嗟にミラーガールによって担がれていた修司へ溶岩で煮え滾る右手を掲げて突っ込んだ。

「……おい、待て!! ……修司!! アッコ!!」

 バーンズも赤犬の狙いに気付くが、既に赤犬は満身創痍の修司へと容赦のない追撃を仕掛ける。

 そんな修司を庇おうと、ミラーガールが思わず修司を真正面から抱き締めて、己の身体を盾にしたが赤犬は聖女ごと修司を殺めようとした。メシアとしての修司を危険視しての行為だった。

 と、次の瞬間。その状況を傍観するしか出来なかった皆々の目に、疾風の如き意志が駆け抜けるのが飛び込んだ。

 修司を庇ったミラーガールが恐る恐る目を開いて確認してみると、修司は何か衝撃的な光景を目撃したかのように愕然としていた。そしてミラーガールがふと後ろを振り返ると、そこには赤犬の溶岩の腕での追撃を自らの体を盾にして防いだバーンズの姿が飛び込んできた。

 全てを焼き尽くす溶岩の腕で背部から腹部にかけて攻撃が貫通しているバーンズは、血を吹いた。

「ガフッ!!」

 そして赤犬は溶岩の腕をそっとバーンズから引き抜くと、バーンズは前のめりによろめいた。

「バーンズ!」

 愕然と動く事すら侭成らない修司に代わり、ミラーガールが慌てて重傷のバーンズに駆け寄り支える様に抱き締めた。

「まだ息はありそうじゃのう……」

 しかしバーンズがまだ生きているのを視認した赤犬は、今度こそバーンズを含むミラーガールをも溶岩で焼き尽くそうと腕を振るった。

「次こそお前じゃ、聖女ォ!!」

 赤犬が重傷を負ったバーンズと彼を支えるミラーガールに溶岩の追撃を打ち込もうとしたその矢先だった。

 そんな赤犬の非情とも取れる追撃を、ようやく国連軍が放ったザグを全て撃破した合体魔神レイアースが駆け付けて二人に追撃を仕掛けようとした赤犬を剣での衝撃波で吹き飛ばして未遂に終わらせる。

「ゲホッ…………おんどれェ…………!」

 レイアースからの攻撃を受けて苦痛を受ける赤犬。だが合体魔神レイアースはこれ以上赤犬の猛攻を阻止しようと、はたまた副長バーンズに深手を負わせた赤犬へと容赦のない追撃を加えた。

「聖龍隊!!」

 レイアースの攻撃を受けて、その際に生じた地面の亀裂に落とされてしまう赤犬。

 

 一方で、赤犬の溶岩の拳を受けて腸が焼き尽くされたバーンズはミラーガールの腕の中で苦しみながら謝罪していた。

「………………!! ごめんよォ………………修司、アッコ。お前ら二人を、ちゃんと助けられなくてよ……!!」

「何言ってるのバーンズ! バカな事言わないで!!」

 途切れ途切れの言葉で謝罪するバーンズの言動に、ミラーガールは荒い息遣いでバーンズを呼びかける。

 ミラーガールは慌てて仲間を呼びつける。

「せ、セーラームーン! ナースエンジェル! お願い! 急いでバーンズの手当てを……」

 だが、そんなミラーガールにバーンズは言った。

「無駄だ。いくらなんでも……内臓を焼かれてちゃ、みんなの治癒能力じゃ助からない事ぐらい分かってる……!! ハァ」

 内臓を焼き尽くされてしまい、自慢の再生能力でも治らない今の現状にバーンズは仲間の治癒能力でも治せない事実を伝える。

 そんなバーンズの言葉に、ミラーガールは激しく動揺しながら言い立てた。

「……っ……約束したでしょ!! ……ハァ……またみんなで、生きて帰ろうって……!!」

 ミラーガールは大戦が始まる直前、バーンズが皆に告げた宣言を思い返してた。

 ミラーガールの問い掛けに、バーンズは死に掛けた状態で告白を始めた。

「……そうだな。……修司にお前……みんなみたいに色んな連中の世話になってなきゃ、オレは……生きようという意思が……無かったかもな……」

 バーンズはこの場で、仲間に出会わなければ自分には生きるという意思が無かったかもしれない、と告白。

「心残りは……一つある……オレ達の夢の果てを見れねェ事だ…………だけど、みんななら必ず叶えられる……! なんせ、オレの仲間だもんな……!!」

 心残りである聖龍隊が夢見る理想郷の果てを語るバーンズは、自分を仲間と受け入れてくれた皆なら必ず叶えられると説いた。

「オレが本当に欲しかったものは……どうやら名声や地位なんかじゃ無かったかもしれねェ……」

 そして最後に、バーンズは聖龍隊副長にまで上り詰めた自分が本当に欲しかったものは名声や地位ではなかったと告白した。

「……オレは生きていても良かったのか。欲しかったのは……その答えだった」

 超獣族王家継承者として、人間に王国が強襲された際に現国王であった父によって命を拾ったバーンズは、一族そのものが絶滅寸前に陥っているにも関わらず、何も出来なかった自分が行き続けても良かったのかと、自問自答を繰り返していたのだ。

 

 息も絶え絶えになっていくバーンズは、ミラーガールに抱き締められながら、相棒である修司の愕然とした表情に見詰められながら呟いた。

「もう……オレが伝えられる言葉は……これで、最期らしい…………」

 その言葉は、異系の存在である自分を仲間として受け入れてくれた聖龍隊への嘘偽りの無い感謝の言葉。

「修司……アッコ……みんな……!! こんなオレを……お調子者のオレを……!!」

 バーンズは、大粒の涙を滝の様に零しながら感謝を言い放った。

「愛してくれて…………ありがとう!!」

 そう言い終わると、バーンズの力は無くなり、彼を抱き寄せ支えていたミラーガールの腕の中から身体が零れ落ちた。

 そして多くのHEAD、そして隊士、更には避難させたさせられたのキューティーハニーと早見青児も、レイアースを操縦する光/海/風の三人は地底を溶かして噴出した赤犬と対峙しながら、バーンズの最後を感じ取って目に涙を浮かべた。

 皆の注目を浴びながら、バーンズは静かに瞼を閉ざして地面へと倒れ込んだ。

 焼き尽くされた内臓、そして大きな風穴が開いたバーンズの腹部からは夥しい出血が。

 その出血が手にこびり付き、ミラーガールは意気消沈すると同時に絶叫した。

「バーーンズぅ~~…………っ!!」

『バーンズっ!』『副長!』

 風神バーンズの死は通信を通して全聖龍隊士に届き、皆は愕然とした。

 

 過去に超獣族の国王である父を、そして妃である母を、家族を人間によって殺められた元超獣族王家継承者バーンズ・ウィングダムズ・キングズ。彼は意識が完全に失う直前、こんな身内を亡くした自分が生きていても良かったのか。その事ばかりが頭を過ぎっていた。しかし自分を仲間と受け入れてくれる友、御調子者の自分を慕ってくれる仲間の存在がバーンズに未来を生きようとする意志を与えた。

 だが、その聖龍隊副長にして風神バーンズは死んだ。

 嘆きと悲しみが、アニメタウンに満ちていく。

 しかし、求め続けた生への答えを得たバーンズは静かに、安らかに微笑んでいた。

 

 

 

[聖女の逆鱗]

 

 国連軍元帥赤犬の執拗な追撃から、修司とミラーガールを庇って聖龍隊副長にして風神バーンズが戦死した。

 修司にミラーガール、そして多くのHEADや聖龍隊士たちがバーンズの死に嘆き悲しみ、その想いはアニメタウン中に広がった。

「バーンズ……!」

 ミラーガールは自分たちを庇って死んだバーンズの亡骸を前に泣き崩れていた。その傍らでは、自らが降り受け入れた運命によって腹心の友であるバーンズが死に絶えた現状に嘆く修司の姿が。

「風神はもう手遅れじゃァ!」

 バーンズの命を奪った一撃を放ち、その直後に更なる追撃を仕掛けようとした矢先に合体魔神レイアースによって地表の亀裂に落下した赤犬は、地中を溶岩で溶かして地表に脱出していた。

 そして赤犬は、落胆するミラーガールと修司の前まで歩み寄ると二人に告げた。

「……どうじゃ、修司……そしてミラーガール。お前らが掲げた、偽りの正義でまた犠牲者が出てしもうたなァ」

「「………………」」

「所詮、お前ら聖龍隊が掲げた理想は……不完全な正義と思想から成り立っただけの紛い物。そんな半端モンの思いで絶対的な力が、強さが手に入ると思うちょるんか?」

『………………』

「所詮! お前等の掲げる生温い感情じゃァ何も叶えられん! 何も護れん! それが現実じゃ、聖龍隊!!」

 落胆するミラーガールと修司、そして多くの聖龍隊士に絶望的な現実を告げる赤犬。

 

 すると修司と共に落胆していたミラーガールはスッと立ち上がると、地面に下ろしていた顔を上げて赤犬に面と向かった。

「?」

 顔を上げて直視してくるミラーガールの様子に、赤犬は一瞬きょとんとする。

 一方の顔を上げたミラーガールの表情は、今まで誰にも見せた事がない様な強面であり、赤犬を一直線に睨み付けていた。

「!?」

 そんなミラーガールの今まで見せた事のない強面を目の当たりにし、一瞬ばかし動揺してしまう赤犬。

 するとミラーガールは徐に手にしていた短刀状の武器であるミラー・ソードに力を注ぎ流すと、そのミラー・ソードの形状を変えていった。

 そしてミラー・ソードは三叉の長槍へと姿形を一変させた。

「!!」

 ミラーガールの己を、そしてあらゆる物を変化させる能力を前にして驚愕する赤犬。

 次の瞬間、ミラーガールは三叉の槍に変化させた武器を構えて、赤犬に突撃した。

「ぬおッ!?」

 赤犬の腹部に強烈な三叉の槍での突撃が直撃し、赤犬は悶絶してしまう。

 そして赤犬はそのまま後方へと吹き飛ばされてしまい、地面に激しく全身を減り込ませながら吹っ飛んでいく。

 

 地面に減り込み、吹き飛ばされてしまった赤犬の許には多くの聖龍隊の隊士が駆けつけて来た。

 そんな面子を前に、赤犬は口と頭から流血しながら吼えた。

「……揃いも揃って……あのメシアに堕ちた修司の為に命落としたいんか」

 バーンズ、ミラーガールに続いて他の聖龍隊士も、人間兵器メシアに堕ちた修司を助ける為に自分に歯向かうのかと睨みを利かせる赤犬。

 すると聖龍隊が一員にして死神代行の黒埼一護が赤犬に突っ返した。

「俺たちは全員……小田原修司の持つ底知れない執念と力を目の当たりにしてきた……」

 一護だけでなく、ルキアや他の死神たち。そして更には多くの著名なキャラクター達が赤犬を取り囲むが、赤犬は決して怯まなかった。

「お前らともあろう者が……大層じゃのう! 聖龍隊!!」

 赤犬は自分に、いや自分が掲げる信念という名の正義に歯向かう聖龍隊士に向けて溶岩の腕を膨張させて広範囲に攻撃を仕掛ける。

 だが其処にバーンズを失いながらも戦意を失ってはいないセーラー戦士やローゼンメイデンなどの聖龍HEADが駆け付けては赤犬を取り囲む。

 これを見た赤犬は、多くの聖龍隊士が戦いを仕掛ける中で一人黙々と自暴自棄に陥っている修司を視認して狙いを変えた。

「……! 今はお前ら雑魚に構っとる場合じゃなかァ……完全に束縛が解かれたメシアを潰しとかんと、後にどれだけの被害が出る事か……!」

 赤犬は国連軍の束縛から解放されてしまい、いつ暴走するかも解らない修司を攻撃対象に狙った。

 そして修司に向かって駆け出す赤犬だったが、そんな赤犬を好きにさせまいと聖龍HEADが持てる戦力の全てを使って赤犬を制止する。

「おのれ……! どこまで邪魔すりゃ気が済むんじゃ!!」

 メシアである修司に多大な危険性を感じている赤犬の猛攻を辛うじて受け止めながらHEADは戦った。

「赤犬……! 貴方が今、殺しておきたいと思う修司くんの危険度と……私達が生かしたいと思う、大層な期待値は同じじゃないの!?」

 コレクターユイが灼熱の溶岩が広がっていく戦場の中で訴え掛けるが、赤犬の正義という信念が変わる事は無かった。

「もはや言葉で治るモンじゃ、ありゃせんのう……好きにせい!!」

 赤犬はコレクターユイに急接近して、鋼の拳をユイに叩き込んだ。

 腹部に強烈な拳を打ち込まれたコレクターユイは、激しく吹き飛ばされてしまい戦闘から離脱。

「真の正義は国連軍! それ以外の正義を、わしは認めん!!」

 コレクターユイに過激な一打を放った赤犬は、改めて聖龍隊の正義感は認めず己が率いる国連軍の正義こそ唯一無二の正義だと主張する。

 そして此処で赤犬は、自分を包囲する聖龍隊士達を一掃しようと大技を放った。

「制裁じゃァ!!」

 赤犬は肥大化させた溶岩の両腕を上へと向けると、その両腕から一気に大量の拳状の火山弾を放出。

「悪を許すな!!」

 赤犬が放出した火山弾は、巨大な拳として斜め上へと連続で放射されると地面にその拳の火山弾が降り注いだ。

「覚悟せい!!」

 多くの聖龍隊士が逃げ惑うしかできない赤犬の火山弾による無差別攻撃は、聖龍隊士達に多大な被害を齎した。

 

「ふんっ」

 大勢の隊士たちを火山弾で一掃した赤犬が鼻息を荒くしていると、そこに急接近して赤犬の背後に近付いた影が一人。

「ッ!」

 赤犬が背後の存在に気付いたが、時既に遅く赤犬の背後から武器で背部が突き刺される。

 赤犬の背後に回り、不意打ちを仕掛けたのは他でもない、尋常でないほど様子が一変してしまったミラーガールだった。

 完全にミラーガールの逆鱗に触れてしまった赤犬は、彼女からその後も執拗なまでに追撃を喰らわされ、多大な損傷を受け続ける。

 一方で、そんなミラーガールの逆上した様子を見て愕然と膝立ちして傍観する修司は、口を開けて茫然としていた。

 修司は赤犬と互角以上に闘っているミラーガールの並々ならぬ逆上した姿と覇気に驚愕し、自分の知っている彼女ではないと思う。

 すると其処に、そんな傍観する修司の両肩を互いに担いで運び出そうとする波音とリナの二人が声をかける。

「修司さん、ここは!」

「ここはアッコさんに任せて、あなたは安全な場所まで一緒に……!」

「………………」

 修司は波音とリナの二人の発言の意味を理解してはいたが、それよりも今目の前で激しく闘っているミラーガールの奮闘振りに驚き身動きできなかった。

 波音とリナの二人は修司の肩を互いに左右担いで移動させようとした。が、その時。

「きゃあっ」

 突然、修司を運ぼうとする二人に上空から黄色い閃光が襲ってきた。

 満身創痍で地面に倒れ、そして起き上がろうとする波音とリナの前に一人の長身の男が高速移動で駆け寄り声をかける。

「置いてきなよォ~……小田原修司をさ~~」

「き、黄猿……!」

 波音とリナを襲撃したのは、国連軍大将の一角黄猿だった。

 黄猿は二人に人間兵器であり、国連所有の小田原修司を置いていくようにと警告する。

 しかし二人の危機に、七海るちあたち他のマーメイドプリンセス達が総動員で黄猿の前に立ちはだかり、修司奪還を許さない構えに。

 この現状を前に、修司は多くの仲間たちが自分の為に戦い続けている状況に悲観する。

 

 一方その頃、負傷した隊士を担ぎ込む聖龍隊本部のある総本山麓では。

 既に多くの隊士が傷を負って担ぎ込まれていた。

「くそっ、次から次へと……患者の数は増える一方だぞ!」

 怪我人の治療を施していた宇崎星夜は続々と担ぎ込まれる患者の数の多さに苦悩していた。

 その傍らでは、ナースエンジェルが懸命に治癒能力で怪我人の傷を治していってた。

 だが、ナースエンジェルの能力や現場の人間だけでは担ぎ込まれる患者を全て手当てするのには明らかに人手不足。

 この状況を何とか打開できないものかと、ナースエンジェルは頭を抱えて悩み込んでいた。

 すると其処に、一人の黒衣の男がやって来てナースエンジェルに声をかける。

「ナースエンジェル! 諦めるな、人の命を支える看護師が弱気になっていてはダメだ!」

「あ、あなたは……!」

「此処まで戦火が激しいとは想定外だ。だが、私も少なからず手助けはしようと思う。此処からが正念場だ、気を抜くな!」

 そういうと黒衣の男は大声で周囲の呼びかけた。

「私は医者だ! 一旦、負傷者は私に預けろ!」

 黒衣の医者ブラックジャックの登場に、ナースエンジェルたちは騒然とするが同時に千人力の助け舟に大いに喜んだ。

 

 

 

[悪は許さん! 渇き続ける正義]

 

 その頃、戦場では。

「オーー……誰も逃がさないよォ~……!」

 国連軍大将の黄猿の参戦も相まって、戦闘は更に激化の一途を辿ってた。

「総長を……小田原修司を何としても救い出すぞーーっ!」

 荒ぶる聖龍隊士は、修司を救い出さんと果敢に国連軍と激しく鬩ぎ合っていた。

「何て野郎だ……わいのガードを破るとは……」

 隊士の圧倒的な猛攻に、流石の戦桃丸も防御を突破されて撃退されてしまう。

「総長を……そしてミラーガールを援護するぞ!」

 そして少し前から国連軍元帥の赤犬と激闘を繰り広げているミラーガールに、聖龍隊士は加勢しようと現場に駆けつける。

 その頃のミラーガールは、最初は怒りに身を任して激しく攻撃していたのだが、慣れない戦闘スタイルで息が上がってしまってた。

 そんなミラーガールに何度も激しく叩き付けられ、武器で滅多刺しにされた赤犬も体力を消耗しており、双方ともに息が上がっていた。

 すると其処に遅れて他の聖龍HEADが駆け付けてきてくれた。黄猿と交戦していたマーメイドプリンセス達も、修司が現場から離れたのと、黄猿自身も赤犬に加勢しに入った戦況を視認して急ぎ駆け付けた次第だった。

 遂に戦いは国連軍の最強戦力である赤犬と黄猿、そして聖龍HEADの対決に持ち越されてしまった。

「まぁだわしらに歯向かうっちゅうんか……聖龍隊、あの危険な破滅の権化メシアをお前らが制御しきれると本気で思っとるんちゅうか?」

「ハァ……なにか勘違いしてない? 私達はメシアを制御するんじゃない……小田原修司という一人の人間と共存するだけよ!」

 赤犬の台詞に、ウォーターフェアリーが強く反論を言い渡す。

 更にジュピターキッドも赤犬たち国連軍に向かって叫んだ。

「バーンズが守り、僕たちが認めた男の意志を……僕たちは、新しい時代に伝えなきゃならない!」

 命を投げ捨ててまでも修司を死守したバーンズ。そのバーンズやHEADが認めた修司の意志を未来に伝えなければと訴えるジュピターキッド。

 

 だが、赤犬と黄猿は容赦なく満身創痍の聖龍HEADに突っ込んできた。

「来たぞ!」

 ジュピターキッドが叫んだ瞬間、HEADは戦闘態勢に突入して赤犬と黄猿、灼熱の溶岩と光速の閃光と正面から激突した。

 そしてHEADと赤犬たちの激突は瞬く間に戦場を更に混沌と荒らし尽くした。

 その中でも、未だ逆鱗に触れたかのように逆上するミラーガールは、静観した面持ちで赤犬を攻撃していく。

「ぐふっ!」

 赤犬の脇腹に銛を突き刺して仕留めようとするミラーガールは、同時に赤犬の助太刀にと黄色い光線を放った黄猿の閃光をも鏡魔法のバリアーで撥ね返して完全に防ぎ切ってしまう。

 赤犬もミラーガールに反撃を仕掛けようとするが、ミラーガールは目にも止まらない素早い動作で動き回り、やや鈍足な赤犬に攻撃の機会を与えなかった。

 激しく、そして連続で銛を突いて赤犬に損傷を与えていくミラーガール。彼女の覇気は完全に赤犬を捉えていた。

 一方他の聖龍HEADも黄猿はもちろん赤犬への攻撃を狙ってた。しかし赤犬はミラーガールが単身で激しく攻めていた為に攻撃の機会が窺えず、黄猿に至っては彼の足から繰り出される光速の蹴りで迂闊に接近する事ができずにいた。

 そんな激しい戦闘の中、聖龍HEADの誰もが徐々に傷付いていき、次第に満身創痍へと陥る。

 仲間の多くが自分の存命をも気にせずに戦い続ける戦況を前に、悲観していた修司は急いで駆け寄った。

 その頃、ミラーガールは遂に赤犬を徹底的に痛め付けて追い詰める事に成功する。

 ミラーガールは銛を高く掲げて、赤犬にトドメの一撃を打ち込もうとする。これには赤犬も漠然とした表情で目を見開く。

 だがその時。赤犬へと銛が下ろそうとするミラーガールの足元に何者かがしがみ付いた。この瞬間、赤犬に振り下ろされかけた銛も寸でのところで止まった。

 自分の足にしがみ付く存在にミラーガールが目を向けてみると、自慢の美脚にしがみ付いて赤犬抹殺を寸前で止めさせたのは他でもない修司本人だった。

「修、司……!?」

 動揺するミラーガールに、満身創痍の修司は語り掛けた。

「アッコ……! お前は、お前は……これ以上、俺の為に戦わなくていい……! 俺の為なんかで、手を汚す必要は無ェ……!! いつもの……いつもの加賀美あつこに戻ってくれ!!」

「!!」

 修司からの嘆願を聞いたミラーガールは、愕然と立ち尽くした。

 そして彼女の戦意は瞬く間に消えて、銛だった武器もいつもの短刀の形状に戻った。

 

 更に修司は、大声で戦場に響き渡る声で皆に呼びかけた。

「みんなァ!! もう戦うのはやめてくれェ!!」

 修司の必死の呼びかけに、聖龍隊士も国連軍兵士も、そして何より激しい戦いを繰り広げている黄猿やHEADの面々も手を止めた。

 そんな戦いを一旦やめた戦場の者者に、修司は続けて大声で訴える。

「全部……全部、俺の弱さが招いた結果だ! 力に渇望し、自ら破滅の化身たるメシアへと降り……挙句の果てには国連の所有物に成り下がっちまった。こんな俺を奪い合うのは……救う為にみんなが傷付いて行くのは、もうゴメンだ! みんなの気持ちは嬉しいけど、俺は……俺は、これ以上…………同じ志を持つ二次元人同士で戦い合ってほしくない!!」

『!!』

 修司の宣言を聞いた途端、多くの兵士や隊士たちが蒼然とした。同じ平和を護る者同士で傷付け合い、争い合う事の虚しさに気付いたのだ。

 この修司の宣言を聞いて、黄猿は空中から地上に舞い降り、彼と激戦を繰り広げていたHEADは悲愴の面持ちで修司を見詰める。

 そして最後に修司は、ミラーガールによって危うく殺されかけた赤犬に手を差し伸べた。

「赤犬……お前の言っている事は尤もだ。だけど、もう少し長い目で聖龍隊を……いや、アニメタウンを見てくれないだろうか? 俺が信じられた数少ない二次元人が……あんたと同じ二次元人が統治するこの地を、どうか見守って欲しい」

 修司からの嘆願を聞き入れた赤犬は、そっと修司が差し伸ばした手を掴んで立ち上がろうとした。

 

 聖龍隊副長バーンズが戦死したにも関わらず、聖龍隊と国連軍の戦いは止まなかった。

 奪還された修司を、ミラーガール共々殺そうとする元帥赤犬と、それを阻むHEAD率いる聖龍隊。

 増え続ける犠牲者に構わず、最後の一人まで抗戦しようと、両軍ともに士気を上げる。

 だがその時、そんな混沌とする戦場に一人の乱入者が割り込んできた事で戦況が大きく変わった。

 

 

 

[乱入! もう一人の闇]

 

 激化する戦争に歯止めをかけようと、聖龍隊と国連軍双方に制止の嘆願をする人間兵器の小田原修司。

 修司の掛け声に、戦場で戦っていた誰もが立ち止まり、修司の話に耳を傾けていた。

 その時だった。

 立ち止まる聖龍隊士と国連軍兵士の足元を黒い靄が蠢き、大地を覆っていってた。

 そして次の瞬間「闇穴道(ブラックホール)……!」の声と共に黒い靄は次々と隊士や兵士を呑みこんで行った。

 そして「解放(リベレイション)!!」の声と同時に黒い柱から吸引された多くの隊士や兵士が放出され、その全員が意識を失っていた。

 これに赤犬もHEADも、そして修司も声のする方へ顔を向けてみると、其処にいたのは。

「ゼハハハ! 死に目に会えそうで良かったぜ……ミラーガール! そして赤犬!!」

 元世界最強の悪役である白モジャの配下であり、現在は革命軍士に降ってはその力を世界中で振るっている猛者、黒ひげが不敵に笑っていた。

「黒ひげ……!!」「黒ひげ! なぜ……!?」

 赤犬もジュピターキッドたち聖龍HEADも何ゆえ黒ひげがこの場にいるのか解らず困惑した。

 そんな混乱に陥る状況で黒ひげは高らかに笑い飛ばしながら語った。

「ゼハハハ! よくぞ此処まで潰しあってくれたな! なあ、赤犬……そしてミラーガール」

 黒ひげは互いに激しく戦い合った事で体力を消耗している赤犬とミラーガールを挑発するかのように問い掛けた。

「黒ひげ!! 何故、お前が此処に……!!」

「ぜハハ、赤犬……上手い具合にやられているじゃねェか。でも、まさかミラーガールと殺り合って其処まで消耗しちまうとは流石のおれも予想してなかったぜ!」

 赤犬の質問を上手い具合にかわしながら嘲笑する黒ひげは、次にその赤犬を徹底的に追い詰めたミラーガールに話し掛けた。

「ミラーガール……まさかお前さんに其処までの戦闘力が潜んでいたとは、驚きだぜ。赤犬を後一歩のところまで殺し掛けたんだからな」

「………………」

「ゼハハ、まあ、そんな事はどうでもいい。革命軍士は、小田原修司が完全に国連の軍門に降ってから今に至るまでの経緯を予め予測していたみたいでな。弱り切ったお前等を、一気に叩き潰す為にわざわざおれ様が遠路遥々やって来たんだぜ」

「なにッ!!」

 黒ひげのミラーガールへの会話を聴いて、赤犬は表情を強張らせた。

 革命軍士は、小田原修司が国連へ完全に降った後、その結果国連軍と聖龍隊が大戦を起こしてしまう経緯すらも予測していたというのだ。

 そして今、両軍の戦力が消耗した所に黒ひげが軍勢を率いて乱入してきたという訳だ。

「ゼハハ……さあ、野郎共! 国連軍も聖龍隊も弱りきっている! 今なら殺し放題……さっ、皆殺しにしちまいな!!」

 黒ひげの指示で、革命軍士の軍勢は一気に戦場へ流れ込み、戦況は益々混乱の一途を辿った。

 

 革命軍士に降っている黒ひげの軍勢により、国連軍は激しく乱された。

 既に国連軍も聖龍隊も、先の戦闘で激しく戦力を消耗しており思ったとおりに戦えない現状だった。

「国連軍が混乱している…………今の内に、ミラーガールたちHEADの援護に向かうぞ!」

 そして国連軍が革命軍士の軍勢と交戦している最中、聖龍隊士は急ぎミラーガールたちHEADの許へと駆け付けていく。

 しかし革命軍士は、そんな聖龍隊士にも容赦なく襲い掛かる。

「黒ひげたち革命軍士を追い込めェ! 最後の一人まで叩き潰せェ!!」

 突然の乱入者である革命軍士が相手でも、聖龍隊と同様に徹底的に潰そうと考える国連軍上官の命で戦い続ける兵士達。

 戦場は聖龍隊/国連軍/そして革命軍士の三つ巴の戦いで更に混沌とした。

 

 突然の乱入者である黒ひげは、意気揚々とHEADと赤犬と黄猿そして修司の前に立ちはだかった。

「ゼハハ! 今のおれ様は完全に如何なる能力をも封じられる! まさに能力者キラーだ!!」

 黒ひげはそう言うと、まず手始めにと右手を前に突き出して掌から黒い靄状の闇を放出し、引力を発生させた。

 その引力は黄猿を引き付け、彼の身体を掴むと黄猿が技を出せない状況で強烈な一打をお見舞いする。

 黒ひげの一撃で吹き飛ばされる黄猿は、瓦礫に体が埋もれながらも戦意を喪失させてはいなかった。

「オー―…………手ごわいねェ~…………」

 その黒ひげの戦法を前に、能力者である聖龍HEADは如何にして黒ひげを止めるか考えていた。

 そんなHEADに修司が声を荒げて発した。

「考えている暇があるなら突っ込め! 聖龍隊!!」

 皆が揃って修司の方へ顔を向けると、修司は仲間達に告げた。

「聖龍隊も国連軍も……このまま黙っていて良いのか!?」

 修司の一声に、聖龍HEADも赤犬も力強く頷いた。

 そして修司は傍らで倒れている赤犬に肩を貸し、彼を立ち上がらせると耳元に話し掛けた。

「赤犬、今は国連軍の正義だとか聖龍隊がナンチャラとか言ってる場合じゃない! 黒ひげの進攻を止めない限り、どっちの勢力も革命軍士に消されかねない……!」

「! ………………っ………………ああ、分かった、分かったわい! 今はとりあえず、気に食わんがお前等と共闘してやろうじゃないか。じゃが! くれぐれも足だけは引っ張らんでくれよ……!!」

 修司の嘆願に近い要請を聞き入れ、赤犬は自分たち国連軍は一時的に手を取り合い革命軍士を撃退する姿勢を組んだ。

 この修司の発案に、危機的状況を乗り切る為にも国連軍と共闘しようとHEADも無言で同意した。

「聖龍隊の……希望の象徴たる魔鳥のシンボルを背負っている以上、敗けられない!」

 亡きバーンズに代わり、参謀総長のジュピターキッドがHEADの指揮を執る。

 そしてHEADと赤犬そして黄猿に修司は、黒ひげへと進攻を開始した。

「おれの時代がもうすぐ来るんだ…………邪魔しねェでもらうぜ!!」

 しかし満身創痍ながらも戦意を失っていないHEADや赤犬たちを前にしながらも、黒ひげは一切怖気付く事は無く闇の能力を発動。HEADを次々に襲う。

「闇は引力…………全てを引きずり込んでやる!!」

 黒ひげは此処で改めて自らの能力について見せびらかし始めた。

「おめェらに、おれの力ってモンを見せて置こう…………」

 次の瞬間。

闇穴道(ブラックホール)!!」

 周りの瓦礫や木材を全て吸引し、内部に蓄積してから一気に放出して物なら粉砕、人なら失神する闇の力を見せ付けた黒ひげ。

「これがおれの! 闇の力!! そして……」

 次の瞬間、黒ひげは背後から迫ろうとしていたキング・エンディミオンと堂本海斗の二人に向かって腕を振るい、空中にヒビを入れる程の震動の衝撃を打ち付けた。

 黒ひげが打ち込んだ震動の能力で、大地はひび割れ、同時にエンディミオンと海斗は激しく吹き飛ばされてしまう。

「ゼハハハ! 全てを無に還す闇の引力! 全てを破壊する地震の力! おれこそが最強だ!!」

 以前、白モジャから奪った震動の能力で大地に聳える物を全て破壊してしまう力を得た黒ひげは大いに得意気になる。

「この世界の未来は決まってる! そう…………ここから先は!! おれの時代だァ!!」

 まるで宣言するかのように、黒ひげは天に向かって吠えた。

 

 

 

[大戦の終焉]

 

 突如として大戦に乱入してきた黒ひげの襲来により、戦局は更に混迷を極めた。

 黒ひげは小田原修司に匹敵するほどの強大な闇の能力と、以前白モジャから奪い取った震動の能力の二つを使い分けて戦況を引っ掻き回した。

 この黒ひげの襲来に対抗するべく、修司は聖龍隊と国連軍、両者に呼びかけて共闘戦前を敷かせた。

 聖龍HEADも赤犬も、互いの利害の一致を認識した事で、少なくとも聖龍HEADは国連軍と共闘する姿勢を示した。

 しかし聖龍隊の正義を不完全だとして認めない赤犬は、聖龍HEADとの共闘に思わしくない感情を抱き、時おり一人で先走る情景も見られた。

 そんな赤犬は果敢にも黒ひげへと攻めるものの、黒ひげが有する震動の能力で全身を痛め付けられ、単身では勝ち目が無かった。

 聖龍HEADも能力を無力化する黒ひげの闇の能力と、絶対的な破壊力を有する震動の能力の前では簡単に黒ひげを討ち取る事は難しかった。

「ゼハハハハ! 来いよ、おれの力を見てェんだろ?」

 そんな黒ひげは自身の能力にすっかり陶酔しており、闇の能力でHEADたちの戦力を封じながら震動の破壊力で徹底的に攻撃して負荷をかけさせる。

「ゼハハハハ! いつ見ても痛快な能力だ!!」

 黒ひげは以前に奪い取った震動の力を前に、その絶大な破壊力に陶酔するばかり。

 すると戦場に舞う硝煙の中から、修司が黒ひげに奇襲を仕掛け、背後からしがみ付いた。これにより黒ひげの絶大な破壊力を誇る震動の能力だけは、修司の闇の能力で封じ込めて使用不可に至らしめる。

 修司が黒ひげにしがみ付いたのを視認した赤犬とミラーガールは、駆け足で黒ひげへと急接近してそれぞれの能力そして武器で黒ひげを攻撃した。

「あっ、アチチッ、アッチィ! それにイテェ!!」

 赤犬の溶岩の腕から繰り出される拳に、ミラーガールの刃が黒ひげに傷を負わせる。それと同時に修司は黒ひげから離れて距離を置く。

 しかし黒ひげは常人以上の苦痛を感じるだけで、傷口はスグに塞がってしまう始末。

「ゼーー、ハァーー……さっきまで殺し合いをしていたっていうのに、おれ様を前にした途端共闘するとは、いいご身分だなお前ら」

 黒ひげは共闘してまで自分を打ち負かそうとする聖龍隊と国連軍の共闘振りを嘲笑うかのように呟いた。

「次は本気で行くぜ…………おれを止められるかァ!? ゼハハハ!!」

 黒ひげは此処で再び掌から全てを引き寄せる闇の能力を発動させて全てを呑み込もうとするが、修司も同様の能力と技で黒ひげに対抗して何とか打ち消そうと試みる。

 修司と黒ひげ。両者の闇の能力はどちらも強大で、互いに相手を引き寄せ合うばかり。だが、これを好機とした修司は敢えて黒ひげの引力に引っ張られ、黒ひげに急接近すると同時に相手の首筋に強烈な回し蹴りを打ち込んだ。

「ぐふッ」

 黒ひげは悶絶し、修司は技の反動から黒ひげの近くを転げ回った。

 そしてそのまま、修司と黒ひげは互いの能力が同じで打ち消しあう実情から殴り合いの闘いへと発展。

 修司怒りの鉄拳が黒ひげの顔面を直撃し、黒ひげの拳もまた修司の顔面に収まる。

「誰もおれを止められねェ……全てを壊し! 飲み込んでやる!!」

「そうはさせねェ……! お前は俺が、止める!!」

 黒ひげと修司の殴り合いは更に続き、果てしない決闘が始まってしまう。

 すると、この戦況を目の当たりにした赤犬は上手い具合に修司と黒ひげという危険要因が同所に固まっているのを視認して、二人に目掛けて火山弾を放とうとした。

異常者(ヒール)という悪を許すな!!」

 赤犬は決闘状態の修司と赤犬を同時に潰そうと、火山弾を発射して二人を丸焦げにしようと仕掛ける。

 しかし互いの血走った目を睨み合いながらも決闘に没頭していた修司と黒ひげも馬鹿ではなかった。

 上空から赤犬の流星火山が降り注ぐのを察した両者は、互いに距離を置いて赤犬の火山弾を寸前で回避した。

「赤犬! なんて事を……! それにあなたも体力が消耗している筈よ! これ以上、無理な戦いをするのは危険よ……!」

 ミラーガールが赤犬の容態から、これ以上の無理な戦い方は危険だと唱えるが、赤犬はこれを頑として聞き入れなかった。

「う、うるさい! わしは、わしは自らが制定した正義に乗っ取って戦っているだけじゃ……! 何より、正義という壁が揺らげば、世界中の秩序がどんだけ崩れる事かァ……」

「………………」

「わしは! わしの掲げる正義をモットーに、死力を尽くして戦うのみ! それが出来ん以上、わしが……国連軍の一員として生み出されたわしという二次元人の存在意味が無いんじゃき……!!」

 赤犬の信条を聞いたミラーガールは驚嘆し言葉を失くした。決して相容れない聖龍隊と国連軍の正義。だが赤犬は自らが生み出された意味が無いとして、己が掲げる正義に信念を濯いでいるのをミラーガールは初めて知った。

 

 聖龍隊と国連軍の大戦から一転し、乱入してきた黒ひげ率いる革命軍士の軍勢と交戦する為に一時的に手を組んだ聖龍隊と国連軍。

 そんな三つ巴の混沌の一途を辿る戦況が長引きそうになった、その矢先の事。

 そんな混沌の戦場にとある一団がやって来た。

「お主ら……双方共に傷が深いっちゅうに、まだ喧嘩が足りんのかェ?」

 混沌とする戦場に現われた一団を率いるのは、かってフランスの片田舎でガイア・スコーピオンを大事に育てたという今や裏社会のドンへと変貌した、通称悪童ゴブリンと呼ばれる老体だった。

 ゴブリンは自分の配下を引き連れ、混沌の一途を辿る戦況に降り立って三つの軍勢を率いる頭たる連中に言い渡した。

「赤犬……お前さんの言う、正義は確かに揺るぎない確固たる信念じゃ。それ故に聖龍隊の生易しい正義を認められないのはよォく分かる……じゃが、若い命を、世代を摘み取るお主の正義は、果たして正義なのかェ?」

「!!」

 ゴブリンに説かれて赤犬は悔しさと共に絶句してしまう。

「聖龍隊よ、これで今回の大戦は終わりにせんか? 小田原修司を国連に奪われた悲しみや悔しさは十分解るが、小田原修司の覚悟を汲み取っても良いんじゃなないかのォ。バーンズも、これ以上血が流れるのを望んではいないと思うが」

 小田原修司が国連に人間兵器として降った覚悟を無駄にしない為、そして戦死したバーンズの弔いを思い出されて、聖龍隊は何も言い返せなかった。

「それでも、まだ戦い足りないという輩がいるのなら……ワシらが相手しようじゃないか! なあ、どうじゃ……黒ひげ!」

 周辺の隊士や兵士を威圧しながら、黒ひげに睨みを利かせる悪童ゴブリン。

 睨まれた黒ひげは、悪童ゴブリンの丸い胴体に、頭に被っている黒い帽子、そして帽子と同色の全身スーツ姿を爪先から天辺まで見据えて不敵な笑い声を発する。

「ゼハハハ、やめとこう……! 今はまだ少し早ェ……!!」

 黒ひげは悪童ゴブリンはもちろん、聖龍隊や国連軍そして何よりも小田原修司と決着を付けるのはまだ早いと見越した。

 そして「ゼハハハ! また近い内に会おう! 小田原修司!!」と黒ひげは言い残すと、何処かへと姿を消して去っていってしまった。

 

 小田原修司に引けを取らない黒ひげの闇の能力を前に、聖龍隊と国連軍の戦いは激化しながらも悪童ゴブリンの仲裁で終わりを告げた。

 しかし、この小田原修司を完全に人間兵器へと降らせた国連のやり方は世界中を震撼させ、同時に世界を激動の時代へと導く結果に。

 

 聖龍隊の戦力が対革命軍士には必要だと再認識した国連本部は、赤犬率いる国連軍にアニメタウン及びその同盟国への侵攻を中止させた。

 そして聖龍隊統括に最も必要なのは小田原修司だとして、国連本部は小田原修司を聖龍隊の総長に着任させる事を認定した。

 だが、アニメタウンに帰国を許された小田原修司は静かに、ゆっくりと誰にも気付かれず事無くアニメタウンに帰還した。

 人間兵器としてアニメタウンを強襲しただけでなく、自分の身を庇って腹心の友バーンズが我が身を犠牲にして果てた経緯に、修司は深く傷付き、後悔していたからだ。

 

 

 

[帰ってきたお調子者]

 

 国連の許しを得て、アニメタウンに帰国した小田原修司は自室で一人深く落胆していた。

 ようやく国連が聖龍隊に対して緩和的になった上に、自らも聖龍隊統括の名目で再び聖龍隊総長として帰還する事が出来た。

 しかし、大戦の傷跡は大きく、アニメタウンの各所は今でも復興作業に追われる毎日。

 何よりも修司は、自分とミラーガールを庇って戦死したバーンズの死に深い落胆と絶望に苛まれる日々が続いていた。

 

 そんなある日、副長であるバーンズが死んで聖龍隊全体の士気がタダ下がりしていると聞き付けた海賊が完全武装してアニメタウンに襲撃した。

 多くの隊士が復興作業に追われる中、聖龍HEADは誰よりも真っ先に港へと向かい、海賊迎撃に向かう。その中にはバーンズを死なせ、自らも兵器としてアニメタウンを破壊してしまった修司も罪滅ぼしの志で向かっていた。

 しかし聖龍HEADを待ち受けていた海賊たちは前もって準備していた強力な武器でHEADを攻撃。HEADは未だにバーンズ喪失の心の傷を癒せておらず、海賊達の攻撃を耐え忍ぶしか出来なかった。

「ぎゃはははっ、あの名高い聖龍HEADも、副長が死んだだけでこの様とはな! 笑っちまうぜ」

 海賊団の船長が嘲笑う視界には、精神的にまだ立ち直れてなかったが為に海賊が用意していた強力な武器で痛め付けられたHEADが無残にも地べたに倒れている情景が広がっていた。

「ぐぅ……!」

 海賊達に袋叩きにされて満身創痍の小田原修司は、一矢報いようと必死に起き上がろうとするが。

「きゃっはァ! 相棒を死なせただけで、この様とは……聖龍隊も地に堕ちたもんだぜ」

 と手下が修司の腹部を蹴り上げながら嘲笑する。

 修司以外の聖龍HEADも、同様に海賊たちが持ち込んだ近代兵器で深手を負い、地べたに這い蹲っていた。

 誰もが副長であり誰からも慕われているバーンズを死なせてしまった己の不甲斐なさを痛感し、手を拱いていた。

「さあ! こんなボロボロの聖龍HEADなんか、とっとと殺して街に繰り出すぞ! 金品は全て奪いつくし、抵抗する連中は徹底的に殺しちまえ!!」

 海賊船の船長が部下達を指揮する中、指令を聞いた部下達は早速戦意を喪失している聖龍HEADに刃を振り下ろして命を絶とうとしていた。

 そして海賊が修司たちHEADの首を断頭しようとした、その時だった。

 

「うわあ!」「な、なんだ!? この突風は……?」

 突如として海賊達に謎の突風が襲い掛かり、海賊達はHEADを殺めようとする刃を止めてしまう。

 そして強風が静まり返った時、海賊達や地べたに倒れるHEADに声をかける者が。

「やれやれ、オレ一人が居ないだけでこの様かァ? 呆れてモノも言えないぜ」

 その聞き覚えのある懐かしい声に、地べたに顔を擦り合わせていた修司やHEADそして海賊達は一斉に声のする方へと顔を向ける。

「修司、みんな、もっとしっかりしろよ。オレに言われてたんじゃHEADも終いだぜ、ホント」

 調子のいい口車で溌剌と話し掛けてくる声の主を直視し、修司達は我が目を疑った。

「おい、海賊共! ここはお前らが活動していたソマリア沖とは違う、聖龍隊が守護するアニメタウンなんだぞ! これ以上、聖龍隊の……HEADの面を汚すんじゃねェよ! タクッ」

 調子のいい事ばかり抜かすその声の主の顔を見て、修司たちHEADは口を揃えて叫んだ。

『ば………………バーンズッ!!』

 それは腹部から背部にかけて大きな火傷跡を負った聖龍隊副長バーンズ・ウィングダムズ・キングズ本人だった。

「ははっ、なんだいなんだいお前ら。オレ様がいないだけで、そんなに気弱に成るんじゃ迂闊に死んでもいられねェな。オイ」

 満面の笑顔でそう語ったバーンズは、港倉庫の屋根から真上へと急上昇した直後に海賊共が蔓延っている地上へと素早く着地すると、威勢のいい面構えで海賊達を睨み付ける。

「ニヒッ」『ひっ!!』

 勝気な笑みで海賊達を捉えるバーンズの視野に入った海賊達は、その一睨みで背筋を震わせ、怖気付く。

 そしてバーンズは次の瞬間、HEADを取り押さえる海賊達に向けて突風を舞い起こして強引に吹き飛ばしてみせる。

 それから解放されたHEADは、完全復活を成し遂げたバーンズを前に歓喜した。

「バーンズ!! お前……死んだんじゃなかったのかよォ~~」

 涙目で訴える修司に多くのHEADの仲間達を前に、バーンズは意気揚々と答えた。

「いや~~、今回は流石にオレも死んだかと思ったよ。なんせ内臓を丸ごと焼かれちまったからな。でも、チップバードがあの後、オレを二次元界の医療技術の粋を結集したって言う治療用カプセルに体を入れてくれてな。時間はかかったが、何とか焼かれた内臓も再生して現場復帰に至ったって訳だ」

「バーンズ、ホントに……ホントに……?」

 涙目でバーンズの再来を目の当たりにするミラーガールたち聖龍HEADの女性達にも、バーンズはいつもの調子で話した。

「おいおい、お前ら。美女に涙は似合わないぜ。その涙は今夜、ベッドの中まで取っておきな」

「ぐすん……よく言えたもんね」

「相変わらずだな……っ」

 バーンズの調子のいい口説き文句を前に、目から零れそうになる涙を指で拭うセーラーマーキュリーに、泣きながら愛想笑いを浮かべるセーラージュピター。

 こうしてお互いに相手の生存を確認し合って、和気藹々となる聖龍HEAD。

「これで………………HEAD! 全員揃ったッ!!」

 聖龍HEADが全員勢揃いした現場で、修司は歓喜の声を上げた。

「さあ、感動の再会は後回しにしようぜ! 今は港区に逃げ込んだ海賊の制圧が先決だろ、相棒」

「そ、そうだな……っ。こうなったらHEAD! 全力で逃げていった海賊共を捕えろ!」

 バーンズからの助言に、修司は涙を拭いながらHEADにバーンズ登場と同時に港区へと逃げ去った海賊達の捕縛を命じた。

 

「さあっ、久々に暴れちゃいますか!」

 バーンズは意気揚々と飛び上がると、上空から地上を逃げ惑う海賊達の動きをテレパシーで仲間のHEADに伝えていく。

「ど、どうなってやがるんだ!?」

「HEADがさっきまでと違い、生き生きとしていやがる……!」

「このままじゃ全員捕まっちまう!!」

 最初は戦意喪失の状態でかなり弱体化していたHEADが、バーンズとの合流で生き生きと活発化してきた現状に逃げ惑うしかない海賊達。

 聖龍HEADは失っていた戦意を取り戻し、各自で港区を逃げ惑う海賊たちを追い詰めて次々に捕縛していった。

 そして次々に捕らえていった後に、聖龍HEADが最後に捕えたのは海賊の頭、船長だった。

「ッ~~~~~~!」

「よっし! これで最後だな。年貢の納め時だぜ、船長さんよ」

 HEADに捕えられ、死んだと思われていたバーンズに指摘される船長。

 だったのだが、船長は密かに縛られている後ろ手でズボンの中から何かの球体を取り出した。

 そしてその球体を聖龍HEADの中央に放り投げた次の瞬間、その球体から凄まじい光が発光してHEADの目を撹乱させる。

 そう、船長が隠し持っていたのは相手の視力を一時的に奪う閃光弾だった。

 眩い光で修司達が目を閉じてしまい、そして開いてみたら其処にはもう船長の姿は無かった。

「ど、何処行った!?」

 皆が必死に周りを捜索すると、何メートルも離れた海上に、必死に泳いで逃避行する船長の姿が確認できた。

 これを見たバーンズは、腕を思いっきり後ろへと振ると、その反動で腕をゴムの様に前方へ伸ばしてアッという間に海上を必死に泳ぐ船長を捕まえてしまった。

「逃げられると思うなよ」「は、はい……」

 このバーンズの捕り物に、流石の海賊船長も観念した。

 

 そして海賊達は連行された後、人口海岸のコンクリートの上で修司とバーンズが仰向けで大の字に寝ながら話してた。

「いやぁ、やっと海賊を捕まえられたよ」

「まったく。オレ様がいないだけで戦意を喪失しているなんて、どうかしてるぜ」

「うるさいな。腸を溶岩で焼き尽くされたのに死なないなんて、お前の不死身度は完全にバケモノクラスだぜ」

「国連に最終兵器として投下されて、アニメタウンを襲った人間兵器よりはマシだろ?」

 修司とバーンズはそのまま静かな時を過ごした。

 そして修司は一時ばかし静かな時間を過ごした後、バーンズに声をかけた。

「…………なあ、バーンズ」

「なんだい?」

「………………よく帰ってきた」

「まあな、オレって不死身なんでね」

 固い結束で結ばれた、二人の信頼関係が少しは窺えた会話であった。

 

 

 

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