聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 創生の章 昔語り【復活のスコーピオン同盟  決着! 闇対闇】

[あらすじ]

 

 バーンズたちから聞かされた、破滅を誘う兵器メシアへと堕落してしまった小田原修司の不条理な国連の管理下。

 そしてその後、アニメタウン統治者がいなくなった事で如何なる時に異常者(ヒール)が出没するか解らないという理由で、アニメタウンに進攻した新国連軍元帥赤犬率いる国連軍。

 国連軍の総力を持ってアニメタウンに進攻する軍勢に、修司を奪われた聖龍隊も黙っていられず徹底抗戦の構えを見せる。

 そして始まってしまった頂上大戦で、国連軍は様々な近代兵器を使用しながらも聖龍隊へと進撃。しかし聖龍隊も特殊能力を駆使して国連軍に抗う。

 すると国連軍は新たに小田原修司型兵器デモンドロイドを投下して地上の聖龍隊士を壊滅させる作戦に。

 しかしデモンドロイドに対して聖龍HEADは苦戦しながらも、全てのデモンドロイドを撃破した。

 この状況に元帥赤犬は、最後の手として新たなデモンドロイドを投下。しかし、そのデモンドロイドは決して機械ではなかった。

 その正体は国連に身柄を預けられ、自らの意思で殺戮陽動プログラムを受け入れてしまったが為に兵器としての運命を受け入れてしまった小田原修司本人だった。

 修司は赤犬に、力と暴走の制御の為に電圧式の首輪を嵌められており、それ以上に兵器としての運命を受け入れたという事で容赦なく聖龍HEADに襲い掛かった。

 しかしHEADは一瞬の隙に修司を制御する為の首輪を外して、修司の身柄を保護した瞬間に一時的な撤退を開始した。

 だが、この聖龍隊の行動に元帥赤犬は聖龍隊を侮辱する発言を敢えて発して挑発。

 これに乗ってしまったのは、他でもない副長バーンズだった。バーンズは自分を仲間として受け入れ、共に戦ってきた聖龍隊を侮辱する赤犬の言動に激しい怒りを覚えた。

 その結果、バーンズは赤犬と真っ向から激突。しかし赤犬の溶岩の能力の前にバーンズも歯が立たなかった。

 そんなバーンズを尻目に、次に赤犬は制御する為の首輪が外れた修司と、そんな修司を担いでいるミラーガールへと攻撃の狙いを絞った。

 そして赤犬が修司とミラーガールに溶岩の腕で攻撃しようとした瞬間、なんとバーンズが間に入って修司とミラーガールの身代わりになった。

 意識が薄れていく中、バーンズは修司やミラーガールそして多くの聖龍隊の仲間達に感謝の言葉を言い残すと力尽きた。

 これに絶望した修司にミラーガール達であったが、赤犬はそんな彼女達に「自分達が掲げる偽りの正義によってバーンズは死んだ」と冷遇した言葉の刃物で突き刺す。

 この赤犬の言動に、バーンズを殺められて逆鱗に触れたミラーガールが静寂ながらも激怒。赤犬を徹底的に追い詰める程の戦闘力で、赤犬を追い詰める。

 しかしそんな赤犬にトドメを刺そうとするミラーガールを修司が必死に制止。そして聖龍隊と赤犬率いる国連軍に、これ以上兵器に身を落とした自分の為に争い合うのをやめてほしいと嘆願。

 だが修司がミラーガールや赤犬を制止した矢先、戦場に新たな乱入者が。それは今や革命軍士の軍門に降った悪党黒ひげの来襲だった。

 黒ひげは修司にも匹敵する闇の能力と、震動の能力の二つを使いこなし、聖龍HEADや赤犬たちを痛め付ける。

 そんな時、混沌とする戦場に一人の老体が姿を現した。それはあのガイア・スコーピオンを手塩に育てた、今や裏社会のドンと呼ばれる悪童ゴブリンであった。

 ゴブリンは三つ巴の戦いに発展したこの大戦を止める為にわざわざ出向き、説得に入った。

 ゴブリンの説得を聞いた黒ひげは、まだ小田原修司などの戦士と決着をつけるのは早いとして早々に戦場を後にした。

 こうしてアニメタウンを瓦礫の山にしたアニメタウン頂上大戦は終戦を迎えた。

 しかしバーンズが戦死した事で、国連の許しを得てアニメタウンに帰還した修司も、他の聖龍HEADも意気消沈していた。

 そんなある日、意気消沈しているという噂を聞きつけてソマリア沖で悪事を働く海賊達がアニメタウンの港区を急襲。

 立ち向かおうとする修司たちHEADだが、バーンズを死なせたという後ろめたさもあり、呆気なく海賊たち相手に敗北してしまう。

 そんな中、颯爽と現われたのが死んだと思われていたバーンズ本人だった。彼はチップバードが治療用のカプセルに押し込まれた事で完全復活を遂げていたのだ。

 こうして勢揃いした聖龍HEADは、力を合わせて海賊達を撃退し、再び結集したのだった。

 

 そんな昔話を聴かされて、プロト世代のチョコや新世代型の琴裏春香たちは唖然と開いた口が閉まらなかった。

「はははッ、まさかオレもあの状態で生き返れるとは思わなかったぜ!」

「そうだよそうだよ。僕たちHEADがどんだけ君の事を心配していたか解るかい?」

「いや~~、ゴメンゴメン。しっかしあん時は、流石のオレも死んだかと本気で思ったぜ」

 ジュピターキッドと笑いながら談笑するバーンズの素っ気無い態度に、昔話を聴いた面々は愕然としながら問い質した。

「ま、まさか……あの赤犬の攻撃を……溶岩の腕を突っ込まれても死なないとは……」

「バーンズ、あんた何処まで不死身なんだい……?」

 真鍋義久にギュービッドから言われて、バーンズは笑いながら返した。

「いや~~、はっは。オレ様だって生きてるのが不思議なぐらいだ。なんせ内臓の90%を焼かれたんだからよ」

 全員がバーンズの驚異的な生命力に茫然としてしまうばかり。

 そんな漠然としない空気に圧巻されそうな新世代型たちを前に、バーンズは再び話を続けた。

「まあ、オレが生き残れたって事よりも、あの修司が国連の心変わりで一時的とはいえアニメタウンに帰還できた上、聖龍隊の総長に復帰してくれたのがオレ的には奇跡だったよ。なんせ当時の国連は絶対戦力である修司を手放すのを渋っていたからな」

「人間兵器、小田原修司の存在だけで世界情勢が激動していたって訳か」

 バーンズの話を聞いて、新世代型の黒川冷が修司の存在だけで世界情勢が激動していた事実を納得すると、同じくバーンズの話を聞いた新世代型の仁科カヅキが問うた。

「小田原修司をアニメタウンに、聖龍隊に帰したのは良いが……いくら二次元人を監視する修司が居なくなっただけでアニメタウンを進攻してきた国連軍への処罰は、どうなったんだ?」

 これにバーンズが気難しい顔で腕を組んで答えた。

「国連軍への処罰は一切無し! 当然、進攻を指揮してた赤犬への処分も皆無だ。全ては国連の上層部が決定した上での進攻だったからな、二次元界にいつ異常者(ヒール)が発生するか解らない恐怖心でアニメタウンを占領しようとしていただけだからな」

「だ、だからって! 赤犬の……国連軍のアニメタウン進攻は、聞いていて少しやり過ぎだって思うにゃん!」

 国連軍に直接の処罰が下らなかった経緯に、新世代型の森園わかなが鬱憤を吐き散らす。

 そして他の新世代型たちも、同様に国連軍の進撃が如何に不条理で理不尽な、何よりも非情な進撃だったのかを理解していた。それに処罰が下らない、いや下す事がない政権の現状に若干の苛立ちを覚えてた。

 そんな悪辣とする空気の中、新世代型は再度バーンズに訊ねる。

「ところで……話の最後に出てきた悪童ゴブリンって、一体どんな人なの? 国連軍すらも戸惑う程なんて……」

 琴裏春香の質問に、バーンズがまたも返答した。

「悪童ゴブリン、その詳細な情報は未だ国連は愚か世界中の政府機関に捜査機関でもまだ解っちゃいない。けれど、悪童ゴブリンに育てられたヨーロッパ将軍のガッツや、あのガイアの話によると……ゴブリンは自分達のファミリーを悪党だと自負していたが、仁義ある悪党道というのを確立した人情深い人柄だという。ゴブリンのファミリーは革命軍士を設立した、あのブラッディ・ドラゴンやその参謀であるジャンプのマサを外せば、義理人情のある連中ばかりだという。……ふぅ、ガイア・スコーピオンなんかがいい例だ」

「確かに。あのガイアって蠍の怪人も、俺たちには何かと優しくしてくれてたし……極悪人ってイメージじゃないな」

 バーンズの話を聞いて新世代型の真鍋義久はガイアの人柄を再認識する。

 と、その時だった。

「ちょ、ちょっと待って! 今し方、話してくれた小田原修司の0エリアでの暴走事件にガイアたちスコーピオン同盟の傘下が巻き込まれて惨殺されてたじゃない! しかもその後、メカルスの爆発で0エリアは吹き飛んじゃったし、ガイアスコーピオン達は一体どうやって生き残ってたの!?」

 今までの昔語りを聞いて、スコーピオン同盟が2011年の0エリアで暴走した小田原修司に惨殺された経緯を知って、何ゆえ2013年現在の今でもガイア達は存命なのか軽く混乱する新世代型の森谷ヒヨリ。

「そう、其処なんだ。ガイア達はガイア達で対二次元人殲滅兵器を調べていたらしく、そこに催眠暗示が暴走して覚醒した修司が0エリアに強襲した事で、ガイア達スコーピオン同盟は壊滅したと思われていた……だが、あいつらは生きていた。そう、爆発に巻き込まれて死んだ筈のオレたちHEADの様にな」

 バーンズが話すには、ガイア達は彼らなりに0エリアで二次元人を滅ぼす為の殺戮兵器メシアを調べていたが、そこに催眠暗示が暴走して正真正銘のメシアに堕ちた小田原修司が強襲してきた事で現場にいた彼らは全滅していた筈だという。0エリアの爆発に巻き込まれて同等に死んだ筈の自分たちHEADと同じく。

 何ゆえガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟が生き残っているのか謎に思う新世代型たちに、バーンズは話した。

「オレ達の方は、二次元界の神である、あの御方の力添えで蘇る事ができた。だが、ガイア達が何ゆえ生きているのか今でも解らない。神であるあの御方が何らかの理由でオレたち同様に蘇らせたのか、よく解らん」

 少し話を投げ出す素振りのバーンズに、新世代型達は質問攻めしてきた。

「それで……! アニメタウンに帰国して、聖龍隊の総長に復帰した修司さんはその後、どうなったんですか!?」

「黒ひげとの決着は、着いたんでしょうか?」

「スコーピオン同盟は、その後どうやって表舞台に復活したんですか!?」

 新世代型の瀬名アラタ/イオリ・セイ/小野田坂道からの問い掛けに、バーンズは彼らを宥めながら優しく言い返した。

「まあまあ、順を追って話してやっから……あれはそう、確か2012年の七月だったな。修司はあれから国連からの要請で、再度人間兵器としての役職に就いた訳なんだが……」

『えぇっ!?』

 バーンズの話を聞いて新世代型達一同は声を上げた。

「おいおい、ちょっと待ってくれよ! 国連はやっと小田原修司を正式にアニメタウンの統治者として……そして胸糞悪いが俺たち二次元人の監視役として聖龍隊の総長に返り咲いたんじゃないのかよ!?」

 真鍋義久の問い掛けに、バーンズは必死になって新世代型たちに訳を話した。

「そ、そうなんだが……国連、いや世界は修司の戦力を心の底から望み続けて、修司自身も激動する世界のパワーバランスを保つ為に自らの意志で兵器に成り下がったんだよ」

『………………』

「……気持ちは解るが、修司自身も世界平和の為に自ら再び兵器に成り下がる覚悟を決めたんだ。それだけは解ってくれ」

 バーンズの話を聞いても釈然としない新世代型たちのムスッとした顔を見て非常に戸惑うバーンズたち聖龍隊。

 そんな険悪な空気を変えるべく、バーンズは新世代型たちに改めて話を進めた。

「ま、まあ、修司が人間兵器に戻ってまで世界のパワーバランスを保とうとした矢先の事、あのスコーピオン同盟が復活したんだよ。更にその後、世界で猛威を振るう黒ひげとの決闘が始まっちまったんだ……!」

 

 バーンズ達は新世代型たちを宥めながら、懸命に語り続けた。

 スコーピオン同盟の復活、そして闇の驚異黒ひげとの決闘の経緯を。

 

 

 

[復活! スコーピオン同盟]

 

 スコーピオン同盟の情報が確認されたのは、とある極寒の吹雪が荒れる島。

 ここに一体の巨体な灼熱の蠍の怪人が、決意の表れとも言える、あの悪童ゴブリンから譲り受けた七つの彩ともいえる宝石が鏤められたロザリオを首にかけて決断する。

「もうあれから半年以上か………………よし! 行くか!!」

 

 小田原修司が対二次元人殲滅用の人間兵器メシアだと発覚してから半年ほどばかり時を経て、世界の勢力図は大きく変化していた。

 国連軍では長年、軍を率いていたゼンギが職を退き、新たに赤犬が元帥となった。それに先立ち、青キジ冷苦は赤犬と衝突、決闘に敗れて国連軍を去っていた。

 また、その国連軍がアニメタウンを強襲した事で、ブラッディ・ドラゴン率いる革命軍士は新時代で勢力を伸ばしつつあった。

 一方、覚醒した修司によって死んだと思われたスコーピオン同盟は、その後表舞台から身を隠し、沈黙を守り続けてた。

 その間、スコーピオン同盟の面々は、それぞれに大きな成長を遂げていた。

 そして半年の潜伏期間内で、スコーピオン同盟は再会の時を迎えようとしていた。

 

 ところ変わってとある南国の島。先ほどの吹雪の島から少しだけ時間が変動した時間軸から話は進む。

「……それで? 傘下の連中、いや幹部は集まったんですか?」

「ええ、全員揃いました。……兄者以外はね」

「はぁ、またガイアさんだけが出遅れている訳ですか」

「兄者もそうですが、貴方達も早く帰ってきて下さいよ。……国連軍に見つかると、面倒です」

 特別製の蠍方通話機から言伝を聞いて、白銀に近い髪の毛に顔には大きな継ぎ接ぎの刀傷を負っている青年は、側にいた別の赤毛の青年と会話する。

「さあってと、それじゃ早々と帰るとしようか」

「へっ? なにが?」

「お前……今の通話、聞いてなかったのか?」

「盗み聞きしない様に配慮してやっただけじゃん」

「クリスさんからの通話なんだし、お前も聞いておけって!」

「いいじゃんか! 兄貴が聞いてりゃ、同じ事なんだしよ」

「お前なぁ……」

 弟の言動に呆れてしまう兄。

 そんな兄弟が言い合っている、まさにその時。

 遠くの方で爆発音と大きな土煙が上がっているのを兄弟は視認し合う。

「……って、おい。あれ……」「ああ、多分……」

 兄弟は嫌な予感を覚えながら、急ぎ爆発のした現場へと急いだ。

 

 その頃の現場では。

 半年前に死亡したと思われたスコーピオン同盟に扮する偽スコーピオン同盟の集会にデモンドロイドを引き連れた、国連軍の戦桃丸がいた。

 戦桃丸はスグに精巧に作られたガイアの着ぐるみを着衣している偽物を叩きのめしたが、同時にデモンドロイドが本物のガイアをレーダーで察知したと語る。

 そしてデモンドロイドは戦桃丸の指示で、その本物のガイアへと口内のレーザー兵器を射出して攻撃させた。

 すると高みの場所で見物してた、全身を茶色の布袋で覆って周囲を眩ましていたその人物が姿を曝した。

「何すんだ! 折角の飯がビームで黒焦げになるじゃねェか!」

 集会に集まっていたゴロツキが、その人物の顔と、先ほど戦桃丸が叩きのめした偽物が作った着ぐるみ、そして手配書の人相書きを見比べてみると驚愕した。

「て、手配書と………………同じ顔!!」

 なんとデモンドロイドが攻撃した布袋で全身を覆っていた人物こそ他ならぬガイア・スコーピオンだったのである。

『ひィーーっ!!』

「あ、あいつが本物のガイア・スコーピオンだったのか!?」

 偽スコーピオン同盟は本物のガイアがすぐ近くにいた事実に驚愕して絶叫してしまう。

「おい! ガイア!!」

「ん? ああ、お前は確か、国連の科学技術班ってところにいた……」

「そう、戦桃丸だ」

 戦桃丸はガイアに声をかけ、自分の存在を知らしめる。

「去年までは、わいは確かに科学技術班の一員だった。だが今では新元帥の指揮で新しく生まれ変わった国連軍の指揮官にまで上り詰めた! 悪いがガイア、お前達の旅は終わりだ!」

「はっはっはっ、いやいや、まだ終わらねェよ。オレ様達の冒険は、まだまだ続くのよ!」

「そうはいかんぞ…………DX-5!」

 戦桃丸は以前、ガイア達を圧倒した事のあるデモンドロイド5号機を現場に呼び出し、ガイアを再びこの兵器で叩きのめそうと案じていた。

 だが、目の前に現れたデモンドロイドを前にガイアは慌てる事無く、デモンドロイドが発射するレーザーを全て軽々とかわしてみると、お次は右手に炎を纏わせると同時に外殻を鋼鉄の様に硬化させた。

「武装色 硬化」

 そしてガイアは次の瞬間、目にも止まらない素早い瞬発力でデモンドロイドに急接近してその頭部を燃える豪腕で殴り付けた。

 ガイアが殴り付けたデモンドロイドは一撃で地面が陥没するほどの衝撃を受け、それを目撃した人々は愕然とする。

 そして頭部を殴られたデモンドロイドは、口から電気による火花を散らしながら大爆発。

「まさか……デモンドロイドを……!」

『デモンドロイドが、たったの一撃で!?』

 ガイアによって大爆発させられたデモンドロイドを目の当たりにして、戦桃丸は唖然とし、目撃者達は絶叫した。

「ひひひひ……」

 勝ち誇ったかのように微笑するガイア。すると其処に駆け付けてくる兄弟が声を上げてガイアを呼んだ。

「ガイアーーッ! やっぱりか……」

「ガイアさーーん! どうしてあんたはこう問題ばっか起こすんだよ」

 その兄弟の顔を見て、ガイアは心の底から安堵した。

「おおっ、恵一に潤じゃねェか! 久しぶりだなッ!」

 兄弟の名は柊恵一と潤の柊兄弟。ガイアの傘下である。

「す、スコーピオン同盟か……!? ボスのガイア含め、全員が死亡したと聞いていたが……」

「スコーピオン同盟だ! あいつら、生きてたんだ!!」

 現場に駆け付けてくる柊兄弟を見て、兵士達が騒ぎ出す。

「ウサミミ仮面、デビル・ロックンローラー……やはり生きてたか」

 駆け付けてくる柊兄弟を視認し、戦桃丸は抱いていた懸念を確信に変えた。

 

 すると二人を視認した戦桃丸は、兄弟纏めて葬ろうとデモンドロイドに指令を出す。

「DX-6!」

 指示を受けたデモンドロイドは自慢の俊足で柊兄弟の許へと駆け抜ける。

 しかし向かってくるデモンドロイドに柊兄弟は戸惑う事無く、兄の恵一は名刀の様に鋭いバイオリンの弦で、弟の潤はギターに覇気を纏わせて、同時にデモンドロイドへ斬りかかり殴打した。

 兄弟揃っての攻撃を受けたデモンドロイドは瞬く間に機能停止して、その場で爆発してしまう。

「俺が切った」「俺が殴ったんだよ!」

 どちらが先にデモンドロイドを倒したかで揉める兄弟。

『あーー!! 本物だァ!! 手配書と同じ顔!!』

 一方で偽スコーピオン同盟に招集された大勢の小悪党たちは、デモンドロイドを瞬く間に破壊した兄弟を前に愕然とする。

 

 

 

[再集結する一味]

 

 ガイアに加わり、柊兄弟の騒ぎを聞き付け、国連軍はあっと言う間に広場へ集合した。

 そして兵士達は全員、ガイア達に向けて小銃の銃口を向けて制圧しようとしてた。

「おいおい、囲まれちまったぞ」

「にひひひッ、面白くなってきた」

 緊迫した状況に少しばかり焦燥の顔色を浮かべる潤たち兄弟に対して、ガイアは状況を楽しんでいた。

 すると其処に集結してくる兵士達に向かって上空から爆撃が降り注いで、兵士達を立ち止まらせた。

 全員が爆撃が飛んできた方へ顔を向けると、そこには透明なボディの中に精密機械が詰まった蠍怪人型のロボットの姿が。

「アニジャ、ヒイラギ兄弟、発見シマシタ」

「メガロ! お前も来てくれたか!」

 登場したのはガイアが弟クリスタルと作ったロボット、メガロ・スコーピオンであった。

 するとメガロの背後から続々と人影が颯爽と飛び出しては、ガイア達の目前へと並び立つ。

「み………………みんなァ!!」

 ガイアは目を輝かせて興奮した。久々に仲間の元気な姿を目の当たりにしたからだ。

 そして集結したスコーピオン同盟の面々を前に、兵士が上官である戦桃丸に報告する。

「す、スコーピオン同盟の一味と思われる者を発見!」

「とうとう集まって来たか……奴らが必ず、再集結する日が来ると睨んでたぜ」

 戦桃丸は目の前に集結したスコーピオン同盟の面々を視界に捉えて戦闘態勢に入る。

「皆さん! 島の状況が忙しなくなってきました。皆も、もう上陸してます……船に全員集めてください。少々慌しいですが、それぞれが成長を遂げて、いよいよ再出発の時です!」

 戦闘態勢に入った戦桃丸を前に、ガイアの右腕である弟のキラー・ウォーター・クリスタル・スコーピオン、通称クリスタルが現場の皆々に告げる。

「相手は、あのスコーピオン同盟だ! 軍艦を回しとけ! デモンドロイドも全機出撃させろ」

 スコーピオン同盟を決して逃がさない為にも、現場に投下できる全戦力を注ぐように通告する戦桃丸。

 

 一方、スコーピオン同盟の面子が乗り込むスコーピオン・シップには。

「国連軍が動き出したみてェだな……船はおら達に任せて、後のみんなはガイアを迎えに行っててくれェ」

「了解、もう兄者を発見しました。後は一緒に帰還するだけです」

 母船に待機しているグラスホップとランダージョのコンビに、クリスタルが通達する。

「よぉし、野郎共! ……戦闘開始だァ!!」

 そして首領であるガイアの宣言で、国連軍とスコーピオン同盟の戦闘が本格的に勃発してしまった。

 

 戦場と化した島の各所に一旦散らばり、国連軍の戦力を削ぎながら消耗させ、同時に母船へと戻ろうとするスコーピオン同盟の作戦は開始された。

 そんな戦場で、炎を纏うバイクに跨る白髪の集団が国連軍と対峙していた。

「こ、この人でなしの下種野郎! 貴様ら、ホワイト・ヘアーズだな! 死刑囚め、全員この場で処刑してやる!!」

「ふっ、言ってくれるじゃないか。まあ、間違いじゃないけどな」

 国連軍兵士の発した事実に、白髪のリーダー格は訂正しないで聞き入れるが。

「確かに私達は反吐が出るほどの下種野郎……否定はしないわ」

「だが……今ではガイア・スコーピオンと共に自由に生きるならず者!」

『それが! ホワイト・ヘアーズ! 地獄の白髪団だ!!』

 次の瞬間、ホワイト・ヘアーズは自分達が搭乗するバイクを操縦して、灼熱の炎を纏わせて一気に国連軍の軍勢へと突っ込んだ。

「うわあッ!」「ぎゃあっ!」

 ホワイト・ヘアーズの炎を纏ったバイクでの突進攻撃に、固まっていた軍勢は逃げ惑うばかり。

 そんな国連軍を押し返すホワイト・ヘアーズの背後から、一体のデモンドロイドが迫ってきた。

「大罪人 白髪鬼ホワイトへアーズ、確認」

「こいつは、確かあの修司をモデルにしてる……」

 ホワイト・ヘアーズにデモンドロイドが襲い掛かる。

 

「うぎゃあ!!」

 一方こちらでは水銀燈と雪華綺晶が二体同時に周辺の兵士達を纏めて相手にしていた。

 しかしそんな彼女達の許へ、デモンドロイドが迫る。

 

 同じ頃、迫り来る兵士達に超能力を駆使して応戦する兵部京介らP.A.N.D.R.Aの面々。

 驚異の超能力で軽々と兵士達を相手に戦う兵部たちだったが、彼らの許にもデモンドロイドが。

 

 魔法で国連軍兵士を次々に倒して母船へ帰還しようとするピエール/ワルド/フーケの三人にも、デモンドロイドの魔の手が迫る。

 

 特殊能力と武術で国連軍を圧制する毛利玲生と雄大寺挑そしてシルクァッド・ジュナザードの三名。

 しかし彼ら三人を遠くから認識するデモンドロイドが迫ろうとしていた。

 

 ザ・インキとブロッドンのインクコンビは、地面に描いた絵を実体化させるという新たな能力で国連軍を圧倒。

 しかし、そんな異質な二体の許にもデモンドロイドが。

 

 一方、母船では。

 グラスホップとランダージョのコンビが様々な銃火器を巧みに使いこなして国連軍が船に近付くのを阻止していた。

 

 そしてホワイト・ヘアーズ/ローゼンメイデン/P.A.N.D.R.A/魔法使い組/毛利と雄大寺とジュナザード組/インクコンビへと進軍したデモンドロイドはどうなったかというと。

「デ、デモンドロイド再起動できませんっ! 連中は昨年よりも数段強くなっている模様!」

 既にデモンドロイドの多くがスコーピオン同盟の面々によって再起動不能に至るまで破壊されていた。

 

 そんな中、逸早く母船に帰還する寸前のデジモントリオ、アルケニモンとマミーモンとエテモン達に国連軍の追撃が。

 国連軍は所持するバズーカなどの重火器でデジモントリオを砲撃する。

 そんな国連軍の砲撃は、アルケニモンに浴びせられた。

「アルケニモンの危機! ここは俺様が助太刀する以外ない!!」

 愛するアルケニモンの為にマミーモンが動き出し、砲撃する国連軍を迎撃して退かせた。

「まあ、ありがとう。だけど、私一人でも何とかなったけどね」

 助けてくれたマミーモンに、アルケニモンは愛想笑いを浮かべながら礼を言った。

 

 そして母船には大勢のスコーピオン同盟のメンバーが勢揃いした。

「久しぶりだな、グラスホップ! お前、そんな筋肉質な身体になっちまって」

「ふはーはっはっ! オラはもう昔の弱虫じゃないんだっぺ!」

 柊潤たちと久々の再会を果たしたグラスホップは、堂々と胸を張って仲間達に宣言した。

「そうだ! もうオラとランダージョの戦いを見たか!? 何もオラたち、この半年間ぼんやり潜伏してた訳じゃねェっぺ! もうオラたちの事を誰も、弱小コンビとは呼ばせねェぞ、コリャ!」

 巧みに重火器を扱える逞しい体を手に入れたグラスホップは言い放った。

「何が起きても、もう動じねェ! そんな戦士に、オラはなったっぺ!」

 

 

 

[対決! 戦桃丸]

 

 母船に集結しつつあるスコーピオン同盟の傘下たち。

 

「なあ、まだ此処に来ていない仲間は居ないか?」

 兵部京介が皆に確認すると。

「まだガイアさんたちスコーピオンブラザーズと、インクコンビが戻ってきていないニャ」

 と、ランダージョが周りを見渡して不在の面々を伝える。

 その頃、ガイア率いるスコーピオンブラザーズとインクコンビは、国連軍に追われて島の対岸である北側へと移動していた。

「待ってたって、いつ来るか分からない。こっちから迎えに行くしかないようだな」

 この現状を察して、ホワイト・ヘアーズの北川が皆に言った。

 

 こうしてスコーピオンシップは島の対岸へと移動を開始した。

 だが。

「奴ら、対岸に船を移動させる気か。急いで対岸の守りを固めろ!」

 現場を指揮する戦桃丸は、一味の移動を阻害しようと部下達に指示する。

「軍艦には砲撃の準備を始めるように伝えとけ!」

 更に母船を攻撃できるように、軍艦にも指令を伝えるよう続けて指示する戦桃丸。

 

 一方、ガイア達スコーピオンブラザーズと共に逃走するインクコンビに新たな追っ手が。

「大芸術家、インキ大先生! 今さら引退なんて困りますっ!」

 実はインクコンビは、潜伏期間の間に絵の才能を開花させて今や超売れっ子のイラストレーター兼芸術家へと変貌していた。追っているのは、そのマネージャー達であった。

 マネージャー達は更にインクコンビに絵を描かせてボロ儲けさせようと企てていたが、インクコンビはスコーピオン同盟の仲間達と再会する手筈のこの島に辿り着いた時点で引退すると宣言していた。

 だが、マネージャー達はこれを不服。共倒れを狙って、前もって国連軍にインクコンビの情報を流していた。

「ザ・インキ! そして怪物ブロッドン! 一緒にくたばろうじゃないか」

 強面のマネージャーは、ザ・インキとブロッドンに、社会から共に抹殺されようと執拗に追い続ける。

 しかしこれにザ・インキは、既に社会的地位も信頼も失った三人の二次元人の成れの果てとしてマネージャー達に突っ返した。

「マネージャー、たった半年だったが世話になった。そして、ありがとう」

 このザ・インキからの心からの礼を聞いて、マネージャー達は唖然として追走する足を止めた。

 

 その頃、母船に搭乗するスコーピオン同盟は軍艦からの砲撃を防ぎながら合流地点である対岸へと辿り着いていた。

「みんなァーーーーっ!!」

 母船に飛び乗るように、兄弟揃って飛び乗るガイアは歓喜の声を上げる。それに続いてインクコンビも母船に搭乗する。

 全員が合流地点に到着。スコーピオン同盟、再集結。

「これで全員揃ったな! よし、船を出せ!」

 全員が揃ったのを確認したガイアは、すぐに出航する様に命じるが。

「いいや、出航する必要はねェ」

 次の瞬間、戦桃丸がスコーピオン・シップに乗り込んできた。

「あ、お前! 勝手にオレ様たちの船に乗るなよ!」

 そんなガイアの怒声に怯む事無く、戦桃丸はスコーピオン同盟の面々に囲まれながら言い切った。

「昨年とは違い、わいは正式に国連軍兵士になったんだ! お前らをここで捕える!」

「変わったのは、こっちだって同じだ!」

 戦桃丸の宣戦布告にガイアも戦意満々で言い返す。

 そして戦桃丸の母船への乱入で、スコーピオン・シップは島上空を飛び回りながら乗り込んできた戦桃丸の追い出しに懸かった。

 

「覇気を纏った攻撃の強さ、おめェらの身に教えてやる!」

 戦桃丸は覇気を纏わせた素手で、スコーピオン同盟の面々と互角以上の戦いを繰り広げる。

 しかし一方のスコーピオン同盟の面々も、潜伏期間の間に習得した新たな戦力で戦桃丸を追い詰めていく。

「ぐああッ! くっ、まだまだだ……!」

 覇気を纏って硬度が増したガイアの打撃を受けて、悶絶してしまう戦桃丸。

 更にそこへ追い打ちと言わんばかしに他のスコーピオン同盟も戦桃丸へ集中砲火。傘下の総攻撃を受けて、戦桃丸は目が回る。

 しかし戦桃丸は意識を奮い立たせてスコーピオン同盟と乱闘を開始する。が、スコーピオン同盟は俄然と戦桃丸へ反撃に転ずる。

 大乱闘の最中、何とか戦桃丸を船からつまみ出そうと知略を絞ったクリスタル・スコーピオンの策略で、母船は大きく横へと反れて、その反動で戦桃丸は母船から転げ落ちてしまった。

「うわっ!」

 進路を大きく右折した母船から転げ落ちた戦桃丸は、そのまま島上空を低空する母船から海へと落下した。

「ぷはっ……くっ、逃がさねェぞ!!」

 海面から顔を出してスコーピオン同盟に怒号を放つ戦桃丸に対して、ガイアは飄々と戦桃丸に声をかける。

「じゃあな! お前とはまたどっかで会いそうな気がするぜ」

 笑顔で戦桃丸に言うと、ガイアは仲間と共に今度こそ島から出航しようとした。

 

 だが、戦桃丸はスコーピオン同盟の逃亡をまだ許してはいなかった。

 

 

 

[再会]

 

「逃がしゃしねェ……こうなりゃ奥の手だ!」

 海面に浮かぶ戦桃丸は、懐から普段使用しているのとは違う小型の通信機を取り出して呼び出した。

「こちら戦桃丸! スコーピオン同盟に逃げられる。あんたの出番だぜ……鬼神!」

 

 一方その頃、スコーピオン・シップ船上では。

「よっしゃァ! このままオレ様達の新たな出航だァ!」

 ガイア・スコーピオンが嬉々と仲間達に船出の到来を宣言しようとしてた、その矢先。

 ガイア達の目の前に、船上へと激しく降り立った何者かが行く手を阻んだ。

「逃がさないぞ」「あ、あなたは……!!」

 スコーピオン・シップの船上へと降り立ったその存在は、空中を月歩で激しく移動しながら母船へと襲来。その存在を見て、クリスタル・スコーピオンは愕然とする。

 その人物とは他でもない、現在国連に人間兵器として駆り出されている鬼神・小田原修司であった。

「修司! まさか……お前までも!?」

 戦桃丸率いる国連軍に続き、修司までも襲来してきた事実に驚きを隠せないホワイト・ヘアーズ。

 しかし修司はスコーピオン同盟に何も言い返さないまま彼らへ強襲してきた。

「うわあっ!」「ぐはっ!」

 戦闘の腕を上げたスコーピオン同盟の傘下を次々に打倒していく修司の強襲に、ガイアは目を丸くしながら反撃に転じ始めた。

「修司! お前また国連の道具に成り下がったのか!?」

「お前たちには関係ない……! 全員この場で叩き伏せる!!」

 ガイアの呼びかけにも、修司はスコーピオン同盟の面々を容赦なく攻撃しようとする。

 だがガイアはそんな修司の思う様にさせまいと、修司に反撃していく。

 灼熱の炎を纏ったガイアの尻尾を、修司は素手で掴むとそのまま振り回してガイアを船内の内壁へ叩き付けた。

「ぐはっ」

 悶絶するガイアに修司は容赦のない追撃を仕掛けようと接近するが、ガイアはその攻撃を回避して修司に反撃を仕掛ける。

「せっかくHEADが……ちせちゃんが頑張って、お前を国連から助け出したのに……それを無駄骨にする気か!?」

「俺には俺の生き方ってもんがある。世情を狂わし、秩序を乱す、お前ら悪党共には何も言われたくない」

「何だよソレ! オレ様達だって少しは心配してたんだぞ」

「余計なお世話だ」

 そう言うと修司は、ガイアに接近して腹部へと強烈な一打を打ち放った。ガイアは思わず悶絶し、後方へと吹き飛ばされるが何とか踏み止まった。

 修司は破滅の化身メシアへと覚醒した経緯から、常人では計り知れない速度と攻撃力を身に付けて、スコーピオン同盟に立ち向かう。

「本音を言おう。お前等を殺すのは忍びない……だが、お前等の罪を許した訳ではない」

「へっ、そうですかっ!」

 修司の本音を聞き入れながらも、ガイアは仲間の支援を助力に修司と激しく闘い合う。

 クリスタルの氷の槍をかわし、メガロが放つレーザーを掻い潜る修司はガイアを標的に捉え続ける。

 修司は首領であるガイアを倒せばスコーピオン同盟の統率は低下し、士気も下がると考えたからだ。

「そりゃッ!」

 修司はガイアが打ち込むラグビーボール程の大きさのハサミを受け止めると、そのまま御得意のハンマー投げに転じてガイアを船内の床に叩き付ける。

 更に修司は闇の能力で関節剣を作り出し、それを鞭の様に振るってスコーピオン同盟の接近を許さない。

「お前、未だに国連の命令で戦っているみたいじゃないか! 知ってるぞ、イスラム国で大勢の人間を虐殺したってよ!」

「それも……俺がメシアとしての運命を、人間兵器としての運命を受け入れたからこそ! お前たちには関係ない!」

 激しい戦闘の最中も、ガイアは修司を気にかけるが、修司の方は我武者羅にスコーピオン同盟を蹴散らすばかり。

 

 と、修司が闇の能力をも用いて乱闘している最中、修司の足元にランダージョが足拭きマットを密かに敷いた。

 そして修司がマットを踏んだ瞬間、ランダージョはマットを引っ張って修司を転倒させた。すると同時に母船は上下が真逆になり、スコーピオン同盟の者達はそれぞれ何かに捕まってるか誰かに掴まれて落下を免れる。

 しかし修司だけは真っ逆様に真下へと落下してしまい、そのまま海中へと落下してしまう。

「よっしゃ! 今のうちにトンズラするぜ、野郎共!」

『アイアイサーー!』

 ガイアの呼びかけにスコーピオン同盟の面々は元気よく応答し、母船はそのまま飛び立っていってしまう。

 長期戦に突入寸前の修司とスコーピオン同盟の戦闘が、まさかの修司の海面落下で辛くも終わりを迎えて安堵するスコーピオン同盟の面々。

「ぷはっ……うっぷ」

 修司は海中から海面へと立ち泳ぎで顔を上げて呼吸するが、既にスコーピオン同盟を乗せた母船は遠方へと飛び立った後だった。

「……ふぅ」

 遠くへと向かっていくガイア達が乗った母船を見詰めて修司は何処か安堵した様な表情で一息入れる。

 そんなスコーピオン同盟が出航したのを視認していた国連軍の兵士や上官である戦桃丸の面々は慌てふためいていた。

「クリスタルスコーピオン……メガロ・スコーピオン……! やはり同盟傘下の一味全員、この島にいました!」

「もはや我々には手に負えません……!」

「仕方ねェ…………司令部に電話をつないでくれ」

 部下である兵士達の戸惑う様子を前にし、戦桃丸は国連軍本部の司令部に電話を繋いで連絡できる様にと部下の兵士に伝えた。

 そして電話が繋がり、戦桃丸は国連軍本部司令部に通達した。

「……こちら戦桃丸、状況を報告する。スコーピオン同盟によって、デモンドロイド全てを深く損傷。勿論、強さはオリジナルに引けを取らない程の戦闘力のまま。変わったのは、あいつらだ。この半年の潜伏期間でめまぐるしい成長を遂げている! 新・国連軍本部に、よーーく伝えとけ! スコーピオン同盟は、完全に復活したとな……!」

 戦桃丸は、スコーピオン同盟が戦力を著しく増強するまで一味が成長し、そして完全復活を遂げた事を本部に通達するのであった。

 

 一方その頃。

 まさかの小田原修司の強襲からも何とか突破できたスコーピオン同盟一味の面々は、首領であるガイアからの言伝を聴いていた。

「野郎共!!」

 ガイアの呼びかけに、スコーピオン同盟の傘下は全員注目する。

「この半年間、よくぞ生きていてくれた! オレ様はもう嬉しいぞ!」

 すると傘下の面々はガイアに口々に言った。

「ガイアこそ、よくあの惨劇から生き延びてくれたよ。この僕達だって、一度は死んだって言うのに」

「へっへへ、でも……こうしてみんな揃ってまた旅ができるのが何より元気な証拠だぜ!」

 兵部京介が0エリアでの惨劇から皆揃って生き返った事実を言うと、それに続いて柊潤が言う。

「あたしら、まだまだ元気一杯さ!」

「ガイアも生きてくれてて、ありがとう」

 クロミにエテモンの言葉を受けて、ガイアは弟のクリスタルに訊ねる。

「それじゃ、船出を告げても良いかな?」

「ええ、どうぞ兄者。いや、我らが首領……リーダー!」

 クリスタルの了解を得て、ガイアは力強く仲間達に言い放った。

「野郎共!!」

『おうっ!』

「出航だァ~~!!」

 

 スコーピオン同盟は、これにて再び結集した上で再出発を成し得たのだった。

 

 

 

[激震! 闇VS闇]

 

 無事に出航できたガイア達スコーピオン同盟は、再び世界をアッと言わせる騒動を巻き起こそうと躍起になった。

 そんな最中、それからわずか1ヶ月後に事件が起こった。

 革命軍士に属している黒ひげが、自らの力に酔いしれて勝手に世界へと宣戦布告。世界中を巻き込む大震災を引き起こそうと企む。

 黒ひげの暴走に革命軍士も動き出すが、特殊能力を封じる闇の力と、世界を破壊できる震動の力を併せ持つ黒ひげを止めるのは困難に等しかった。

 これに対し、小田原修司は国連の命を受けて出撃。自身と同じ闇の能力を所有する黒ひげとの長きに渡る決着をつけようと決意する。

 この世界を揺れ動かす決闘に、スコーピオン同盟も関心を持つ。特にガイアは、かつて悪童ゴブリンの元で兄弟の盃を交わした今や革命軍士の総元帥ブラッディ・ドラゴンの暴走をともいえる革命活動を止める為にも、そのドラゴンの指揮に今まで従ってきた黒ひげを何とかしようと思い立った。

 ガイア率いるスコーピオン同盟は、修司と黒ひげの決闘、そして戦場に集結する革命軍士と対決する聖龍隊の乱戦を一刻も早く終わらせる為に急ぐのだった。

 

 草木一本も生えてない茶色い大地が広がる荒野。ここで聖龍隊と革命軍士、いや修司と黒ひげの決闘は開戦された。

「ゼハハハ、野郎共! 今日から世界の頂点に立つのは、このおれ……黒ひげだァ!」

「黒ひげの一派め。ドラゴンの命に反して世界に君臨する気か……! 聖龍隊! 黒ひげの一派を叩けェ!!」

 修司と対峙しながらも部下達を指揮する黒ひげの言動に、修司に代わって聖龍隊を指揮するメタルバードは負けずに指示を告げる。

 修司と黒ひげの決闘が始まるのと同時に、聖龍隊と黒ひげ一派の大軍隊との戦闘も開始された。

 この先の見えない戦いに、ガイアを筆頭としたスコーピオン同盟の面々が乱入してきた。

「お前ら! 何とか、この不毛な争いを止めるんだ……とにかく黒ひげの一派を集中的に叩け!」

「了解です、兄者! 皆さんも行きますよ……!」

 兄ガイアからの命令に、弟であり参謀であるクリスタル・スコーピオンが傘下の面々を引き連れて戦闘に参入する。

 ガイアは戦場に乱入すると同時に、素早く黒ひげについた革命軍士の兵士を、黒ひげ一派を叩き潰していく。

「ガイア……! それにスコーピオン同盟も? ……何しに来た!? お前ら悪党の出る幕じゃねェだろ!! さっさと消えろッ!」

「そんな堅苦しいこと言いっこ無しだぜ、バーンズ。オレ様はオレ様はで、ちせちゃんやその出がらしであるお前等を心配して駆け付けてきた訳なんだからよ」

「出がらしってなんだ!! ……ま、まあ、それはともかく……お前らがこの戦いに参戦する意味合いは無い筈だ! 国連軍が来たらややこしくなるから、とっとと消えてくれ」

「そうはいかねェ!! オレ様の義兄弟、ドラゴンの兄貴が力を与えちまった黒ひげがこうも暴れ回っているなら止めるのが筋ってもんだ。なんと言おうと、この戦いからは逃げねェ!!」

 ガイア・スコーピオンからの激情溢れる言動に、メタルバードたちHEADは何も言い返せなかった。

 そして聖龍隊は最終的にスコーピオン同盟の参戦を自然と受け入れて、共に黒ひげ一派を打倒する流れに至ったのである。

「ゼハハハ! ガイア、お前さんもこのおれ様に挑もうってのかい? それならいい、修司の後はお前を叩こう……!」

「そんな簡単にオレ様を倒せると思うなよ、黒ひげ!!」

「黒ひげ! 今お前と闘っているのは、この俺なんだ! ガイアの事は無視して、この俺との闘いだけ集中してろ!」

 ガイア達スコーピオン同盟の参戦に怪しい雰囲気を漂わせる黒ひげに対し、ガイアは簡単には倒せないと宣戦布告。そんな二人の会話を聞いて黒ひげと対峙している修司は決闘に集中する様に黒ひげに告げる。

 修司と黒ひげの一対一の決闘が行われている最中、ガイア達スコーピオン同盟は次々に黒ひげ一派を打ち倒していった。

「ちょっと聞いたけどよ。修司の奴、国連の命令でイスラム国で大量虐殺したらしいじゃねェか」

「ああ……オレ達も最近知った。国連の諜報機関から追われている渡部陽一が納めた写真に、大地を覆うほどの大量の死体と流血が写されていてな。渡部カメラマンも、その現場を捉えた為に国連から追われてたみたいだ」

「まったく……世界情勢を安定させる為に、相反するテロ国家を襲撃して全滅させちまうとは。何の為に仲間であるお前らが国連から奪還したのか解らねェぜ」

「そう言うな。修司も国連も、世界情勢を安定させる為に行っている事だし……それに、渡部カメラマンも日本政府に保護されて標的からは外されたし、今となってはもう過ぎた事だ」

「過ぎた事ねぇ……」

 革命軍士と乱戦する最中、ガイアに修司のイスラム国での行為とその描写を撮影してしまった戦場カメラマンの渡部陽一の顛末を伝えるメタルバード。だがガイアはそれを過ぎた事として仕方なく思うメタルバードたち聖龍隊の考えに納得がいかなかった。

 

 一方、修司と黒ひげは激しい攻防戦を繰り広げていた。

 両者の闇の能力は、互いの能力を相反して消し合うか増強するかの不安定な情勢に。かくも黒ひげが有する震動の能力は修司やその周囲の環境を破壊しかねない程の攻撃力を秘めていたが、この能力だけは修司の闇の能力で無力化できる為に戦いに決着はつかない現状だった。

 そんな現状で両者は、互いの能力では勝負がつかないとして闘いの原点で攻め合った。それは原始的な殴り合いであった。

「ぐっ!」「ぐへっ」

 修司も黒ひげも、互いに相手を殴り付けると言った原始的かつ破天荒な闘い振りを展開してた。

「ぐっ………………ふぅ」

「うぐ………………はぁ」

 修司も黒ひげも、互いに相手を殴り続けていた為に顔面が著しく変形していた。

 と、そんな戦況で黒ひげは隠し持っていた拳銃を修司に向けて至近距離で発砲。だが修司は見聞色の覇気で察知して素早く弾丸を回避する。

「チッ……!」

 修司に銃弾を回避されて悔しがる黒ひげに対し、修司本人はいきなり不意打ちで撃ってきた黒ひげに怒りを覚えて顔面に強烈な拳を打ち込んだ。

「ぐへっ」

 顔面に拳を打ち込まれた黒ひげは悶絶し、手酷く痛感する。

 そして再び両者は凄まじいほどの殴り合いへと発展し、延々と殴り続けていった。

 

 黒ひげ一派の軍勢を蹴散らして、退散させた聖龍隊とスコーピオン同盟の面々が決闘の現場に駆け付けると、修司と黒ひげは猛烈な殴り合いを続けていた。

 両者とも同じ能力者故に、相手の戦法や能力の使い方を熟知していた為に猛烈な殴り合いが続いていた。

 互いに能力を使わず、己の腕力だけで殴り合いの決闘を続ける修司と黒ひげ。

 後にこの二人の決闘は、能力を使わず己の強さのみで闘い合ったストロング・ウォー(強さだけの闘い)として歴史に綴られたという。

 

 

 

[灼熱の闘い、勃発]

 

 修司と黒ひげの純粋な殴り合いだけでの決闘ストロング・ウォーが始まって、もう何時間も経過しようとしていた時の事。

 聖龍隊もスコーピオン同盟の面々も、激しく凄まじい両者の決闘を目の当たりにして愕然とし、制止する隙も見当たらず立ち尽くすばかり。

 その両者が激しく決闘し合ってる戦場に、黒ひげ討伐を掲げて参じた赤犬率いる国連軍が到着した。

「これは……! どういう事じゃけェ!?」

 現場に到着した赤犬が、双方共に能力を使わずただただ懸命に殴り合っているだけの修司と黒ひげの決闘を目撃して愕然とする。

「聖龍隊! これはどういう事じゃけェ?」

「赤犬か……見て解るだろ。修司と黒ひげ、双方とも能力を使わないで……いや、使えない状況だから殴り合って決闘しているんだよ」

 問い詰める赤犬に、メタルバードが訳を話す。

 メタルバードから、修司と黒ひげの能力は互いに相手の力を無力化させる為に、仕方なく殴り合いに発展してしまってると聞いた赤犬は怒号を放った。

「そんなら、尚の事なんで両者の決闘の隙に黒ひげを倒さんのじゃァ。遠方からの狙撃とかで、あいつの頭を撃ち抜く事も可能じゃろが!」

「黒ひげに、そんな戦法は効かねェよ。あいつはああ見えて如何なる状況をも先読みして行動できる悪党なんだ。……何より、修司との決闘の邪魔をしちゃ、後で修司に何か言われるだろうからな」

 これを聞いた赤犬は激しく怒った。

「何を抜かしよるんじゃッ!! 修司も、お前ら傍観に徹する聖龍隊も、黒ひげとスポーツしちょる生温い感覚で戦いをしとるっちゅうんか!? ふざけるな!!」

 すると赤犬は前に数歩進んでは、両腕を上方向に向けると技を仕掛けようとする。

「流星火山……!」

 と、赤犬が巨大な火山弾を決闘している修司と黒ひげに向けて発射しようとしていると、其処にガイアが駆け付けて赤犬を制止する。

「ちょっと待った待った! おい赤犬、修司と黒ひげの決闘の邪魔するなんて無粋な真似はすんじゃねェよ。修司は本気で黒ひげを倒そうと躍起になっているんだぞ!」

「が、ガイア……! お前、なんで悪党である貴様らスコーピオン同盟が此処におるんじゃ! 貴様ら悪党に説教される由縁はねェ……! 黒ひげの前にまず貴様らを葬っちゃるわい!」

 赤犬はガイアの制止で逆上して、その激情をガイアにぶつけ出した。

「ヤンのかコラァ! 上等じゃねェか」

 ガイアの方も赤犬と一戦交える覚悟を決めていた様だ。

 そして修司と黒ひげが決闘する手前、ガイアと赤犬も闘い始めてしまった。

「忘れた訳じゃあるめェな。お前さんの溶岩の能力はオレ様には全く効果が無いってよ! 逆に習得した覇気で殴り倒してやらァ!」

「ふんっ! わしの溶岩にも耐え得る貴様の外殻には、確かに手を焼いているわい。じゃが! わしも同じく覇気を身に付けている身の上、タダじゃ済まさんぞ……!」

 そのままガイアと赤犬の決闘も始まってしまった。

 

「火山爆発!」

 赤犬は片腕を膨張させて溶岩の破片を辺り一帯に散らす技を炸裂。だがガイアは飛び掛る溶岩の破片に怯む事無く赤犬に覇気を纏った攻撃を喰らわせる。

 負けじと赤犬は、更に巨大な火山弾をガイア目掛けて飛ばすが、ガイアはその火山弾を両腕でしっかりと受け止めると力任せに赤犬へ投げ返した。

「ぬおおッ!」

 ガイアが投げ返した火山弾を、赤犬は同じく灼熱の豪腕で殴り付けて粉々に粉砕してガイアの攻撃を無効化させる。

 赤犬との決着の見えない闘いにガイアは少し冷静になって考えてみようと思い立つが、その前に悪は決して許さない不屈の精神を持つ赤犬の容赦ない攻撃を浴びて頭に血が上り、冷静さを欠けて向かっていってしまう。

「このヤロッ」「このおおォ!」

 ガイアと赤犬、両者は修司と黒ひげに巻けず劣らない死闘を繰り広げるまでに至ってしまう。

 そんなガイアと赤犬の始まってしまった闘いを目の当たりにして、聖龍隊もガイア以外のスコーピオン同盟も唖然としてしまう。

「ガイアの奴、すっかり頭に血が上ってるな……これじゃ、冷静に闘いを分析して対処している修司の決闘の方が遥かにマシに見えてくるぜ」

「ホントにそうですね……兄者も赤犬も、相手が気を失うまで延々と闘う気満々ですよ。あれは」

 メタルバードとクリスタル・スコーピオンは闘い合うガイアと赤犬を前に呆れ果ててしまってた。

 そんな両者の闘いを傍観して、今は争い合っている場合ではないと判断したミラーガールが焦り出す。

「もうっ、修司が命懸けの闘いをしているって時に二人とも……! っ、そうだわ!」

 と、ガイアと赤犬の闘いを観戦していたミラーガールが何かを閃いた。

「さくらちゃん! ちょっと……」

 そしてミラーガールは同じHEADの木之元桜に耳打ちして何かを伝えた。

 すると木之元桜は。

「……わ、分かった。やってみますね」

 さくらはミラーガールの提案を受け入れ、闘い始めてしまったガイアと赤犬の両者を前にしてカードを使用した。

 そのカードはスリープ「眠」。対象者を眠らせる効果を持つカードだった。

 さくらはスリープ「眠」のカードを使って、闘い合うガイアと赤犬の頭上から煌く花粉を撒かせて、ガイアと赤犬を眠らせる作戦に出た。

「な、なんじゃ……急に睡魔が……」

「ぐぅ~~、すぅ~~……」

 突然襲い掛かる睡魔に、赤犬は動揺し、ガイアは一瞬で眠りに陥ってしまった。

 そして両者共に完全に睡魔に襲われて、ぐっすり眠ってしまうのだった。

「やったわ! これでガイアと赤犬の喧嘩は止められたわ」

 考案した作戦が功を奏し、さくらのカードで眠らせる作戦が上手くいった経緯にミラーガールは笑顔で安堵した。

「お、おい。あのカードで修司と黒ひげの決闘も、強引に終わらせる事ができるんじゃねェのか?」

「潤、よく考えてみろ。修司や黒ひげの能力は、魔力を含む特殊能力を全て無力化させる厄介な力だ。魔力を秘めたカードも、闇の能力を持つ二人には全く無意味だ」

 スリープ「眠」のカードで修司と黒ひげの決闘も止められるのではないかと説く柊潤に、兄の恵一はカードは魔力を秘めている為に特殊能力を封じる闇の能力を持つ修司と黒ひげには効果を表さないと説き返した。

 

 ミラーガールの提案で、何とかガイアと赤犬の闘いは止められた。

 だが修司と黒ひげ、能力を使えずに己の拳のみで闘い合う二人の凄まじい決闘は終わる節が見えないまま。

 修司と黒ひげの、先の見えない決闘に終わりは来るのだろうか。

 

 

 

[決着 闇を討ち取った光]

 

 その頃の修司と黒ひげはというと。

 両者は互いに激しい殴り合いを続けていたが、ある時を境に修司が黒ひげに申した。

「はぁ………………ちょっくら休まないか?」

 これに対し黒ひげは。

「ゼェ………………ああ、そうだな。少し疲れちまったぜ」

 と、修司に返答すると、二人はその場で向かい合いながら地面に腰を下ろして休憩し始めた。

 そんな突然休み出す二人を前に、決闘を見届けようとする聖龍隊の面々は息を呑んだ。

 その一方で修司と黒ひげは、互いに相手を見据えて肩から呼吸しながら黙然と向かい合っていた。

 この時、修司も黒ひげも同じ事を考えていた。

 再び決闘が始まれば、相手は何を仕掛けてくるのだろうか。いつ闘いを再開させるのか。最初の一手、次の一手は如何なる手段なのか。修司も黒ひげも、息が上がる中で相手をジッと見据えたまま熟考していた。

 修司も黒ひげも、決闘の再開や次の攻撃の一手を深く熟考する中、黒ひげは隠し持っている拳銃に手を伸ばし、修司を狙撃しようと企んでいた。

 が、そんな黒ひげに修司が言った。

「おい、黒ひげ」

「!!」

「……もうやめようぜ。どうせ、俺たちの闘いには誰も介入してこない。それ以上に生半可な武器でお互いの首が取れると思うか?」

 修司からのこの言葉を受けて、黒ひげは拳銃に手を伸ばしていた腕を引っ込めて修司に言い返した。

「ゼ、ゼハハハ……それもそうだな、鬼神よ。慌てる事はねェ、じっくりお前を甚振って、それから殺せば良いだけの事……!」

 黒ひげは自身の能力に陶酔していながらも、同じ能力者である修司の言い分を理解した上で殺意を潜ませた。

 

 修司と黒ひげ。

 両者、共に戦意・殺意・闘志・覇気・呼吸に至るまで全てを静寂に至らせ、現場を異様な静けさが広がる。

 双方共に、相手の能力と自分の能力とでは互いに効力をもみ消しあってしまう為に仕方なく殴り合いからの不気味な静寂が包み込む今に至っていた。

 鬼神と黒ひげ、闇と闇、能力者を守る側に能力者を狩る側。同じ様でその生き方は丸っきり正反対な両者は、皮肉にも自分と同じ能力者という事で長時間による闘いへと発展してしまっているのである。

 

 そして互いに30分ほど休憩した後、修司はのっそりと立ち上がると黒ひげに申し渡した。

「はぁ……それじゃ、またやり合うか」

「ゼハ……そうだな」

 次の瞬間、修司と黒ひげは目にも止まらない瞬発力で、殴り合ったり蹴り付けたりと激しい攻防を繰り返した。

 双方とも、今度こそ相手を本気で倒す覚悟で闘いに挑んでいた。

 そんな決闘の再開を目撃した周辺の一同は、ただただ愕然と見届けるしかできなかったという。

 修司と黒ひげの決闘が始まって、10時間ほど。二人はぶっ通しで闘い続けていた。

 しかし遂に長きに渡り、ようやく決闘に決着が付いた。

 修司は果てしない執念と黒ひげからの震動の破壊力を耐え忍んだ結果、黒ひげが修司の前に倒れた。

 力なく前のめりで倒れた黒ひげを目前に、修司は物静かに倒れた黒ひげを傍観する。

 そんな遂に勝利を掴んだ修司の許に、仲間である聖龍HEADが駆けつけて来た。

「修司ーーっ!」「やったな、修司!」

 エンディミオンやメタルバードからの声かけに薄らと反応した修司だが、長時間の決闘での体力消耗で危うく倒れそうになってしまう。

「修司!」

 ミラーガールが声を上げる中、龍咲海が慌てて倒れこむ修司の身体を支える。そこにナースエンジェルが修司の容態を看る。

「……ふっ、別に何ともないわ。ただ疲労で倒れただけみたい」

「まったく、心配かけさせるな、タクッ」

 ナースエンジェルからの診断にメタルバードは呆れながらも長き決闘に打ち勝った修司の健闘を称えて肩を貸してやった。

「ほら、やっと帰れるな……オレ達の故郷に」

「……そうだな。やっと帰って、ゆっくり眠れるぜ……」

 メタルバードからの問い掛けに修司が答える中、メタルバードたちHEADの半数は修司を治療しようと移送しようとしていた。

「バーンズ、みんな……赤犬たち国連軍には私達から決闘の結果を伝えておくから、修司をお願いね」

「ああ、分かったぜ。これで一先ず終わったな……厄介な能力者狩りの闇使いは」

 今まで多くの能力者たちを狩ってきた黒ひげの横暴の終わりに、ミラーガールもメタルバードも安堵の表情を浮かべる。

 そしてメタルバード達は満身創痍の修司を移送し、ミラーガール達は先ほど眠らせた赤犬を起こして決闘の顛末を伝える為に。それぞれが動き出した。

 

 だが、修司を担いで運び出そうとする面子とミラーガールたち赤犬に報告する面子が地面に倒れる黒ひげに背を向けた途端、気絶している黒ひげの手がピクリと動いた。

 そして誰にも気付かれず起き上がった黒ひげは、不敵な笑みを浮かべては懐の拳銃を構えて担ぎ運ばれる修司に銃口を向けた。

 それにミラーガールが逸早く気付くが、黒ひげは修司への殺意に集中していた為に止まる事はなかった。

 そして黒ひげが構える銃口から、一発の銃声が咆哮した。

 銃声が鳴り響いた瞬間、メタルバード達は愕然としながら背後の黒ひげの方へと顔を向けた。

 修司も、自分の顔を掠めた銃弾を放った黒ひげへと振り返る。

 そして多くのHEAD女性達が驚愕した様子で黒ひげへと目を向けていた。

 皆の視線の先には、ミラーガールによって短刀で背後から突き刺された為に銃での狙いが逸れてしまった黒ひげの姿が目視された。

 ミラーガールは修司を狙撃する黒ひげを止めたいが一心で、黒ひげに短刀を突き刺した。そしてミラーガールに背後から胸部を貫かれた黒ひげは、薄れ行く意識の中で彼女に言った。

「でかしたな、ミラーガール……」

 その台詞は黒ひげ自身が崇拝している本物の黒ひげ、エドワード・ニューゲートが最後に若い海兵に切り倒された際に言い残した台詞と酷似していた。

 黒ひげは、自分が崇拝してる三次元人の黒ひげと同じ状況で死に、そして力尽きた。

 

 誰よりも悪に、誰よりも闇を崇拝していた悪党黒ひげ。彼の死に際は、まさしく歴史に残る伝説の終わりそのものだった。

 

 

 

[追撃の革命軍士 世界を滅ぼす力を得た聖女]

 

 修司に銃弾を一発お見舞いしてやろうかと踏んだ黒ひげに、トドメの一撃を貫いたミラーガールによって、今度こそ本当に長きに渡る決闘に終止符が打たれた。

 悪名高い黒ひげを背後から刺し殺したミラーガールは、茫然とその場に座り込んで力が抜けていた。

 するとどうだろうか。死に絶えた黒ひげの体から瞬く間に黒い靄が現われては、ミラーガールに吸収される様に彼女の体へと取り込まれていった。

 皆はミラーガールの身に起こった異変を目撃し、急いで彼女の許へと駆け付けるのだった。

「アッコ!」「大丈夫? アッコちゃん」

 メタルバードにセーラームーンが駆け付けて声をかけると、ミラーガールは茫然としながらも答えた。

「え、ええ……なんとか……」

「アッコ、お前いま……黒ひげの闇を……」

「???」

 修司がミラーガールに問い掛けるが、当の本人は自分の身に何が起こっているのか全く解らないと言った心境だった。

 

 と、修司たち聖龍HEADがミラーガールの許に駆け付けていた、その時。

「動くな」

 修司達の背後から、革命軍士№2のジャンプのマサが睨み付けていた。彼の周りには、完全武装した革命軍士の兵士が戦車まで駆り出して包囲していた。

「! ジャンプのマサ……!」

 メタルバードが突如として現われたマサの登場に吃驚していると、マサは黒ひげの死体とミラーガールを取り囲む聖龍隊に告げた。

「いや、ご苦労だったなお前等。まさか俺たち革命軍士を裏切った黒ひげを、其処のミラーガールが殺ってくれるとは夢にも思わなかったが……まあ、結果オーライという事だな。だが、このまま全員生きて帰れると思うなよ」

 マサはこの場で自分たち革命軍士を裏切った黒ひげを倒した聖龍隊を始末しようと考えていた。

 すると、そこにようやく深い眠りから覚めたガイアと赤犬が、配下の者たちや国連軍兵士を携えて集結してきた。

「マサぁぁぁ!! 貴様……のこのことわしの前に姿を現すとは、いい度胸じゃわい!」

「マサの兄貴! なんで此処に来たんだよ!?」

 マサを敵視する赤犬に対して、ガイアは自分の兄貴分であるマサの登場に驚きながらも問い掛けた。

 するとマサは部下達に射撃体勢を取らせたままガイアに話した。

「ガイア、お前ホントにいい加減、おれやドラゴンの手を煩わせるな。新たな時代を築くには、古い思想は排除しなきゃならないんだ……聖龍隊に国連軍、今や世界のパワーバランスを保つこいつ等をのさばらす訳にはいかない。お前もいい加減、ドラゴンの言うとおりに革命軍士に納まりやがれ」

 しかしガイアは真っ向からマサに反論する。

「やなこった! 悪党ってのは、時代や政権に流される事なく自由に生きるのが常道だって、ゴブリンのおやっさんだって言ってたじゃないか! マサの兄貴、もういい加減にドラゴンの兄貴にも言ってくれ! 世界を滅ぼすだけの革命なんてやめようってよ」

「ふぅ、まだ言うのかガイア……まあ、今はお前らスコーピオン同盟に決議を下す訳じゃない。今この場にいる弱り切った聖龍隊と国連軍を同時に潰す絶好のチャンスなんだ……! ガイア、如何にお前達であろうとも、この大軍を前に大人しくしていてもらおうか。今から聖龍隊と国連軍……修司や赤犬をぶっ潰さなきゃならない」

 不敵な笑みを口元に浮かべるマサは、部下である軍隊の兵士に射撃命令を下そうと右手を前に突き出す。

 黒ひげ一派との戦いで消耗し切った聖龍隊と国連軍に、もはや革命軍士と抗戦する戦力は残っていない。無論、黒ひげと決闘した修司、ガイアと衝突した赤犬にも戦うだけの力は消耗してしまってた。

 戦闘で戦力を消耗した面々は、ジャンプのマサが率いる軍隊に抵抗する事すら困難であった。

 

 すると何を思ったか、ミラーガールが突如一歩前へと踏み出してジャンプのマサと向き合った。

「ん?」「あ、アッコ……!」

 突然のミラーガールの行動に不思議がるマサに反して動揺する修司たち。

 すると前に踏み出たミラーガールは両手を前へと突き出すと、左右の手を押し開く様に動かした。

 と、次の瞬間。マサが立っていた地面が真っ二つに裂け、その裂け目の上に立っていたマサは激しく動揺した。

「うおッ!?」『!?』

 マサと同様、大地が裂ける瞬間を目撃した修司たち一同は驚愕する。

 そして更にミラーガールは両手を左右に力強く押し出す動作を取ると、マサたち革命軍士の軍隊が配列している大地だけが裂け目に向かって斜めにせり下がっていく。

「うわああああああああああっ!!」

 革命軍士の戦車や兵士が傾斜する大地から裂け目に向かって滑り落ちていく中、ジャンプのマサも同様に裂け目へと落下していった。

 そしてマサを含む全ての革命軍士の戦力が裂け目に滑り込む様に落下した直後、ミラーガールは広げていた両手を縮めて大地を元の状態へと戻した。

『………………………………!!』

 ミラーガールが大地を揺るがせ、大地を裂いてその中に革命軍士を滑り落とさせた情景を見て、修司や赤犬を含むその場の全員が口を大きく開けて呆然としてしまう。

 そして無意識の内にそんな大技をやってのけたミラーガールも、今し方自分が取った行動にきょとんとしながら何があったのか軽く混乱する次第。

 

 その後、ミラーガールに彼女が行った大技について説いてやると、彼女は自分の行動に唖然としたという。

 ミラーガールは黒ひげの闇を吸収し、自身の能力に組み込んだ事で黒ひげが使えていた地震の能力を得てしまったのだ。

 

 

 

[終わらぬ革命軍士との戦い]

 

 ミラーガールが黒ひげにトドメを刺した事で、彼女は黒ひげが持つ闇の一部を吸収、それによって黒ひげが使えていた地震の能力を手に入れてしまった。

 黒ひげ一派との戦闘を終えた聖龍隊は、取り敢えず聖龍隊本部に帰還する事となった。

 聖龍隊総本山の内部で、修司は次の様な事を語り始めた。

「……アッコが黒ひげにトドメを刺した事で、何らかの原因で黒ひげが抱える闇の一部を吸収したんだろう。そしてその際、黒ひげが使えていた地震の能力をも手に入れてしまったんだ」

 この事態を受けて、ミラーガールを除く聖龍HEADは大変混乱した。世界を滅ぼしかねない地震の能力を手に入れたミラーガールの存在に焦燥感を覚えていたからだ。

 すると其処に、国連軍本部から今は一線を退いて若い戦力の育成に力を入れている元元帥にして現在は大目付であるゼンギが聖龍隊本部に乗り込んできた。

「おい、修司!」

「ああ、なんだ。ゼンギか」

「なんだではないわ! あのミラーガール……加賀美あつこに、かつての白モジャ……そして先の大戦で戦死した黒ひげが使えていた地震の能力が遺伝したというのは本当か!?」

「ああ、本当だ。アッコは黒ひげの闇の一部を吸収したことで、黒ひげが使えていた闇ではない力、そう地震の能力を使える様になっちまったんだ」

 修司から事の顛末を聞いたゼンギは頭を抱えた。

「なんという事じゃ……黒ひげは死に、ようやく世界を滅ぼしかねない地震の能力者が消えたと思った矢先に、今度はあのミラーガールに能力が遺伝してしまったとは……。いや、そもそもなんでミラーガールは黒ひげの闇を吸収した事で地震の能力を使える様になったんじゃ?」

「それは俺達だって知りたいさ。なにせ、こんなこと聖龍隊を結成してから初めてなんだからよ。まあ、黒ひげと同じ闇の能力者である俺の見解からすると……アッコが黒ひげを倒した際に生じた微かな黒ひげの闇が、アッコが持つ浄化の光に感化されて闇の力だけが消滅したけど地震の能力だけは消えずにそのまま吸収されて自分の一部になったんじゃないかって思う」

 自分なりの見解を立てて説明する修司の話を聞いて、ゼンギは途方に暮れた。

「しかしなんじゃぞ……あの世界を滅ぼしかねん地震の能力をミラーガールが吸収したとあっては、国連だけでなく世界からどれほど批難があろう事か」

 しかしこのゼンギの話を聞いた聖龍HEADは、明るくゼンギに話し返した。

「大丈夫だって、ゼンギのおじいちゃん!」

「アッコちゃんはそんな世界を滅ぼす力を乱用する様な子じゃないわ」

「これからアッコさんは、その力をきっと正しい方向で使ってくれます! きっと」

「………………」

 獅堂光/セーラームーン/木之元桜の訴えを聞いて、ゼンギは黙り込んでしまう。

 

 するとその時、激しい揺れが総本山を襲った。

「わっ、わっ! な、なんなんだ!?」

 バーンズが戸惑う中、激しい揺れが直撃した事で高所に設置している小型モニターが外れて落下し、それが修司の頭に直撃した。

「し、修司くん……?」

 頭がすっぽり小型テレビに減り込んでしまった修司にセーラーヴィーナスが恐る恐る話し掛ける。

 すると修司はテレビの主電源をつけて、頭に刺さったテレビの画面に自分の顔を反映させて言った。

「またアッコだな」

 無愛想な修司の言うとおり、この地震はミラーガールが新たに得てしまった地震の能力の影響であった。

「うわ~~~~ん! またやっちゃった~~……」

 ミラーガールは転んだ拍子に、地震の能力が誤発動してしまった事で地震を引き起こしてしまった事で大泣きしてしまう。

 そんな泣きじゃくるミラーガールを、屋外のカメラで視認して彼女の失敗であると確認する修司たち。

「やれやれ……ミラーガールには、もっと能力の制御が必要不可欠になろうぞ」

「そうだな。ちょっとした事で地震を引き起こされちゃ敵わないぜ」

 ゼンギの台詞に修司も賛同の意見を申す。

 

 と、その時。

 震撼する聖龍隊本部に謎の通信が傍受された。

「発信源が謎の通信をキャッチしました! ……っ、こ、この通信は!?」

「どうした?」

 バーンズが通信士に問い詰めると、通信士は傍受した電波映像をモニターに抽出した。

 するとモニターには画面いっぱいに革命軍士の象徴である血塗れの竜が映し出された。

「か、革命軍士か!?」

 修司が叫ぶ中、そこに急いで屋外から内部へと戻ってきたミラーガールも到着して画面に目を向ける。

 そして修司たち聖龍HEADとゼンギは画面に注目した。すると。

「ヤッホーー、お元気かな、聖龍隊の諸君」

「じゃ、ジャンプのマサ……!」

「どうして生きているの!?」

 なんと映像にはミラーガールが裂いた大地に消えたジャンプのマサの姿が。彼の姿を見て驚愕する修司と質問する龍咲海に対して、マサは答えようとした。

「ははは! なんでおれ様が生きているかって? そりゃもちろん…………あ、あ~~あ……なんでだろう」

 マサは自分の傍らにいる部下を見詰めて、代わりに説明を求めるのだが。

「すいません、絵で詳しく説明しようとしたんですけど…………やっぱ分かりません」

 部下ですら、マサが何ゆえ大地の裂け目に消えたというのに存命しているのか説明できなかった。

 そんな映像の中も、映像を視聴している現場も混乱する一方でマサはメッセージを伝えた。

「と、取り敢えずだな! 聖龍隊、そして国連軍! 今回はおれらの裏切り者である黒ひげを倒してくれて感謝してるぜ。だけどな、我ら革命軍士が築き上げる新世界の到来はもうすぐ先だ! 今年中には革命軍士が世界を一新させてやるから覚悟しとけ! 要件はそれだけだ、それじゃ切るぜ!」

 そう言い終るとマサは返事も聞かずに通信を切ってしまった。

「ふう、なんにせよ……まだまだ革命軍士との戦いは終わらんらしいのじゃな」

「そういう事になるな。だが……革命軍士、いやドラゴンが起こそうとしている計画は今年中に発動されるみたいだ。この2012年が勝負の分かれ目……気合入れていかないとな」

 ゼンギも修司も、そして聖龍HEADもブラッディ・ドラゴン率いる革命軍士との戦いがまだ続き、そして今年中に終わる事を理解していた。

 

 

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