聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 創生の章 昔語り【革命軍士との決着 哀しきチェルノブイリの申し子】

[あらすじ]

 

 破滅を誘う兵器に堕ちた小田原修司によって惨殺されていたと思われたガイア・スコーピオン率いるスコーピオン同盟。

 しかし一行はなぜか、0エリアで同じく死亡したと思われた聖龍HEADと同様に生存してた。

 そして0エリアでの悲劇から、およそ半年後の事。スコーピオン同盟はとある南国の島にて一味全員が集結し、再出発しようとしていた。

 偶然か不運か、島には死亡したと思われたスコーピオン同盟に扮した偽スコーピオン同盟の面々が新たな手下を補充しようと呼びかけており、更にその集会を聞き付けて駆け付けた戦桃丸率いる国連軍も登場。

 精巧な着ぐるみを来て、周囲を欺いていた偽ガイア・スコーピオンを一撃の下でねじ伏せた戦桃丸は、現場に本物のガイアも居る事を小田原修司型兵器のデモンドロイドが察知したと告げる。

 そしてデモンドロイドがレーザーを放った先には、茶色い薄汚れた布袋で全身を覆って身を眩ましていた本物のガイア・スコーピオンがその容姿を露にした。

 戦桃丸は早速デモンドロイドに命じてガイアを討伐させようとするが、ガイアは半年の潜伏期間で習得した覇気でデモンドロイドをたったの一撃で破壊してしまう。

 更に其処へちょうど、騒ぎを聞き付け駆け付けてきたスコーピオン同盟の傘下である柊恵一と潤の兄弟が。戦桃丸は二人も倒そうとデモンドロイドに命ずるが、兄弟同時の攻撃を受けてデモンドロイドは大破してしまう。

 三人を国連軍の兵士が取り囲み、逃がさない勢いで完全包囲したその時。首領であるガイアを迎えに来たその他のスコーピオン同盟の面々が駆けつけて来てくれた。

 勢揃いしたスコーピオン同盟は、戦桃丸の命令で出撃したデモンドロイド全機を残らず再起動不能に至るまで破壊して国連軍の追撃から逃れる。

 そしてようやくスコーピオン同盟が全員母船であるスコーピオン・シップに乗り込めて出航できるかと思われた矢先、船上に戦桃丸が殴り込んできて無理やり搭乗してきた。

 母船に飛び乗ってきた戦桃丸を追い出そうと、総力を挙げて奮戦するスコーピオン同盟の面々。

 何とか戦桃丸を船から降ろして、今度こそ出航できると思われたが、海に放り出された戦桃丸は逃すまいと奥の手を繰り出してきた。それは自らの運命を受け入れて、国連に人間兵器として我が身を捧げた小田原修司であった。

 修司は戦桃丸に続いて母船に乗り込んでガイア達と激しい死闘を展開する。

 だが修司の激闘を必死で潜り抜けたスコーピオン同盟の面々は、上手く策を講じて戦桃丸と同じく修司も海へと放り出す事に成功する。

 当の修司は本気でスコーピオン同盟と戦う意欲が無かったものの、国連軍は再集結したスコーピオン同盟に多大な危機感を募らせていた。

 そして戦桃丸は国連軍本部にスコーピオン同盟の完全復活を伝えるのだった。

 

 月日は流れ、スコーピオン同盟が再集結して日々を過ごしていたある日。

 全てを無力化する闇の能力と全てを破壊する自身の能力を持つ黒ひげが、己の能力に陶酔し、能力を与えてくれた革命軍士の命を無視して単独で世界に宣戦布告した。

 修司と同じく全ての能力者の力を無力化する闇の能力を持つだけでなく、全てを破壊できる震動の力を得られた黒ひげは世界の覇者を宣言した。

 これに国連に雇われている形で協力している修司は、自身と同じ能力者でもある黒ひげと決着を着ける為に出撃。そんな修司に加勢しようと聖龍隊も出撃した。

 そして戦場では、黒ひげ一派の軍勢と聖龍隊が衝突。その間に修司と黒ひげは、互いの能力を封じて激しい殴り合いでの決闘に勤しんでいた。

 そんな混沌の戦場にスコーピオン同盟も参入し、聖龍隊に加勢する形で未曽有の戦闘を終わらせようとする。

 しかし兵士達を倒しても、修司と黒ひげの決闘は決着が付かず、長期戦へと突入していた。

 そんな折、過激な正義を掲げる赤犬が戦場に到来して決闘を続ける修司と黒ひげに無情の火山弾砲撃を撃ち込もうとする。それを制止するガイアだが、悪党であるガイアの言い分に聞く耳を持たない赤犬は、ガイアと死闘に発展してしまう。

 修司と黒ひげの決闘だけでも問題なのに、ガイアと赤犬の死闘も勃発してしまった戦況にミラーガールが発案。彼女の指示で木之元桜がカードを使用して激しく闘い合うガイアと赤犬を眠らせる事で無意味な闘いを終わらせられた。

 そして修司と黒ひげの方も、長きに渡る闘いの末、遂に修司が黒ひげに殴り勝った。

 しかし全ての力と闘志を出し切った修司は疲労困憊してしまい、そんな修司をバーンズ達が担いで歩かせていると、背後から気が付いた黒ひげが不意打ちとばかしに所持していた拳銃で修司の胸部を狙撃しようと構えた。

 が、その次の瞬間。修司を狙撃しようとした黒ひげの背後から彼を刺し貫く短剣が。黒ひげを刺したのは、修司の危機に無我夢中で短剣を振るったミラーガールだった。

 歴史的な壮絶な最後を遂げた黒ひげの闇を、一部ばかり浄化しつつ吸収したミラーガール。

 と、皆が黒ひげの死に集まっていたその時。

 裏切り者である黒ひげを討伐すると同時に、戦闘で激しく戦力を消耗している聖龍隊と国連軍を潰そうと馳せ参じた、参謀であるジャンプのマサが引き連れる革命軍士の軍勢が。

 マサはガイア達に革命軍士に降れと言うと同時に、聖龍隊と国連軍を総攻撃しようと命じようとしていた。

 だが、正にその時。

 ミラーガールは黒ひげから吸収した闇の一部から引き継いだ震動の能力でジャンプのマサ率いる革命軍士の軍勢を一気に地中深くへと落とさせた。

 このミラーガールの世界を滅ぼしかねない能力の引継ぎに誰もが驚愕し戸惑う中、何故か生きていたジャンプのマサから「今年中に革命軍士は世界を変える大作戦を実行する」と宣戦布告してきた。

 かくして革命軍士との戦いは、まだ終わらないのであった。

 

 

 バーンズたちHEADからスコーピオン同盟復活の昔話と、自分達の始祖である小田原修司と黒ひげの決着という歴史的戦い「ストロング・ウォー」について聞かされた新世代型達は驚愕するばかり。

「まさか、あのガイア達もオレたち同様に0エリアから生還できてたとは驚きだったぜ」

「未だになんで復活したのかは不明だけどね」

 バーンズとジュニアは談笑しながらスコーピオン同盟復活の謎について語り合った。

「確かに謎だよな……しかも、それぞれが今まで以上に強くなって再集結したとはなぁ……」

「半年の潜伏期間で、あのデモンドロイドを倒せるほど強くなっているなんて驚きだよねぇ」

 新世代型の真鍋義久と琴浦春香はスコーピオン同盟の驚きの成長に目を丸くするばかり。

「デモンドロイドに覇気の使い手である戦桃丸すらも退ける実力。一体どうなってるんだ?」

 同じく新世代型の星原ヒカルも、スコーピオン同盟の圧倒的な戦力に驚きを隠せない。

「それにしても何だかな……私たちの始祖である修司さんが、また国連の管轄化で殺戮を繰り返していたのが残念です」

「国連は修司に少しばかりの自由を与えた上に、二次元界を保護する意味合いも込めて修司を改めて管理下に置いたんだ……そう、人間兵器としてな。修司自身も自らの責務として兵器としての役職に就いた訳だ」

 悲しげに話す彩瀬なるに、バーンズが修司本人も改めて己の運命を受け入れて人間兵器に降ったのだと語った。

「……に、してもですよ。そんな人間兵器の小田原修司を、国連は好き勝手に使い放題みたいに思えるんですが……」

「まあ、修司には修司なりに世界の安定を願った上で人間兵器に降ったんだがな……それによって、イスラムなどのテロ多発地帯やテロ支援国家がいくつも潰されたけどよ」

 新世代型の室戸大智の言い分に、バーンズは世界情勢の安定化を図った為にイスラムなどの国々が人間兵器の修司に滅ぼされた経緯を語る。

「黒ひげも自分の力に陶酔して、世界に宣戦布告するとはトンでもない奴だな」

「そうだな。黒ひげも修司同様、闇とか特殊能力を崇拝している傾向があったからな。そんな闇を扱え、特殊能力を封じられる力に陶酔しちまった訳だ。オマケに其処に全てを滅ぼせる地震の能力が手に入った事で、自信過剰に陥ったんだろう」

 レドの愚痴にもバーンズは率直な意見を述べる。

「黒ひげとの闘いは、まさしく男と男の殴り合いというべき決闘だった訳だが……やはり黒ひげの地震能力を小田原修司の闇の能力が無力化してしまうからこそ、殴り合いの決闘に至ってしまった訳なのか?」

「そうだ。お互いに同じ能力を有している訳だったからこそ、自分達の能力では決着がつかないとして純粋な殴り合いの決闘に至った訳だ」

 新世代型の蟇郡苛(がまごおりいら)の質問に、バーンズは受け答えた。

「あ、アッコさんは黒ひげが奪い取った地震の能力が遺伝しちまって自分に引き継がれたっていうけど、今でもその地震の能力は使えちまうのか?」

「ま、まあね……普段はそれこそ大災害にならない様に、今では何とか制御しながら過ごしているわ。まあ、まだまだ扱いには十分気を付けなくっちゃいけないけど」

 纏流子の興味津々な問い掛けに、アッコは地震の能力に対する気苦労を全面に出しながら返答した。

「世界を滅ぼしかねない破滅の化身メシアたる小田原修司……世界を滅ぼす可能性を持つ地震の能力を引き継いでしまった聖女……なんと、聖龍隊の相愛する二人は、まさしく世界を滅ぼせる二人。と、言う事なのですね……」

 今までの話を聞いて、新世代型たちと同じく傍聴していたシバ・カァチェンは修司とアッコ二人の危険性を再認識する。

 

 そんなスコーピオン同盟の復活と、修司と黒ひげの決闘の顛末を聞いた新世代型達はバーンズに訊ねた。

「そ、それで……その後、革命軍士とはどうなったんだ?」

「おおっ、興味が出てきたな。それでこそ話甲斐があるってもんだ! ……お前らにも前に話した様にその年の12月、そう2012年の事だ。遂に革命軍士の総元帥であるブラッディ・ドラゴンが自分の目的を実行に移そうと本気になった。それがチェルノブイリでの決戦だった」

「チェルノブイリでの決戦……! ドラゴンが世界中を放射能で覆い尽くそうとした革命軍士の顛末ですね」

 真鍋義久の問い掛けに、バーンズは喜々として語り出した。革命軍士総元帥のブラッディ・ドラゴンが自分の目的を果たそうと動き出した事件を。その語り口を聞いて出雲ハルキが歴史で学んだ知識を発する。

 

 そして聖龍隊は新世代型二次元人たちや三次元人であるシバ・カァチェンに当事者として語り明かし始めた。

 ブラッディ・ドラゴンが如何にして世界中を放射能で覆い尽くそうとしたのか。それに至る悲しき過去を。

 

 

 

[始動する計画]

 

 新世紀を迎えようとする2012年12月。

 聖龍隊総長小田原修司に追い詰められた革命軍士総元帥ブラッディ・ドラゴンは、遂に長年蓄積していた思いを爆発させるかの如く計画を実行に移した。

 その計画とは。世界各地に強力な放射能爆弾を設置し、それを爆破。世界中を放射能の海で満たそうという狂気的なものだった。

 このドラゴンの暴走とも言える行動に、聖龍隊と国連軍は速やかに出撃し、ドラゴンが最後の聖戦と自称する戦地に指定したチェルノブイリへと進軍した。

 同じ頃、義兄であるドラゴンの放射能爆弾での行動を聞き付け、兄弟分であるガイア・スコーピオンが兄貴分の暴走を止めるべく飛び出す。が、そんなガイアに付き従い他のスコーピオン同盟の傘下達もチェルノブイリへと進路を取った。

 そして聖戦の場として指定された戦場チェルノブイリで、ドラゴンは今まで明らかにされなかった自らの出生を告白した。

 

 ブラッディ・ドラゴン。彼は、かのチェルノブイリの原発事故を隠蔽しようとした旧ソ連高官の息子であり、同時にチェルノブイリの被爆者でもあった。

 当初は愛国心に満ちていたドラゴンだったが、放射能の灰で埋め尽くされたチェルノブイリを前に愕然とし、さらに事故を隠蔽しようとした実父を始めとする政府高官に落胆し、愛国心を踏み躙られてしまった。

 その後、ドラゴンは死の土地へと変貌してしまったチェルノブイリに絶望を抱えながら身を潜ませていたが、それにより放射能を操れる能力を得る。

 更にその後、ドラゴンは死の土地へと変化したチェルノブイリで、異人の赤子を発見し保護。一人でその赤子を世話しながらフランスの片田舎に流れ着き、そこで悪童ゴブリンと接触し、異人の赤子共々世話になる事に。この時の異人の赤子こそ生まれて間もないガイア・スコーピオンだったという。

 

 ドラゴンは放射能の影響で得た特殊能力で、時おりチェルノブイリに足を運んでは変わり果てた故郷を観察してた。

 するとドラゴンの目には、次第に変化していくチェルノブイリの光景に衝撃を受けた。

 それは全てに絶望視していた彼に衝撃を与える光景。放射能に汚染されながらも、人間がいなくなった環境で次第に数を増やしていく鹿やイノシシなどの野生動物。廃墟と化した建物を覆い尽くす程に蹂躙する青々しい草木。これらの増加する動植物を目撃してドラゴンはその絶景に心を奪われた。

 そしてドラゴンは悟った。

 

「身勝手な人間がいないだけで、ここまで自然は美しくなれるのか」と。

 

 故郷を捨て、己の私利私欲の為に原発事故を隠蔽した父親たち高官の様な身勝手な人間が居なくなっただけで、世界はこんなにも美しく生まれ変わるのだと悟ったドラゴンはいつしか夢を見る。

「人間の居ない世界こそ、真の意味で本当に美しい理想郷なのだ」と。

 ドラゴンは被爆しても尚、生き生きとするチェルノブイリの大自然の美しさを噛み締めながら無人の美を賞賛した。

 そしてドラゴンは、自分と同じくゴブリンに育てられた日系イタリア人のマサと組み、ゴブリンの家系から卒業してスグに革命軍士を結成。世界中の名立たるテロの後ろ盾として暗躍するまでに至った。

 ドラゴンが革命軍士を結成した理由はただ一つ。故郷であるチェルノブイリと同等に、世界を身勝手な人間がいない真なる美を拡散させようとするものだった。

 そして遂にドラゴンは「世界再出発計画」で、世界中に放射能を拡散させて故郷チェルノブイリと同等の環境に変化させようとした。

 世界中を放射能の海に曝す訳にはいかないとして、2012年12月12日からの約20日間、聖龍隊と国連軍は革命軍士の一大計画を阻止する為に連合軍として激突した。

 この戦いにガイア率いるスコーピオン同盟も遅れながら戦場に参戦し、革命軍士と激しく交戦。

 

 長期化する戦いの中で、聖龍隊は革命軍士の総司令官であるメカルスを筆頭とした、大柄な落ち武者の姿をした怨霊の集合体・怨念将軍/故郷アラスカの独立を掲げる三次元人の猛者ガイス/特異稀なる超能力などの特殊能力を持っている為に同じヴァンパイアからも差別される通称:サイキックヴァンパイアを束ねるジェラル。以下の四将が聖龍隊の進攻を阻む。

 そして聖龍隊は長きに渡る四将との戦いを、どうにか怨念将軍を浄化させ、ガイスを打ち負かし、ジェラルを打破した上で最後の強敵メカルスと死闘を展開した。

 メカルスとの戦いはスター・ジェネレーションズとマン・ヒールズに加わり、最終的には聖龍HEADも参入して苦戦の末、メカルスを破壊した。

 ミラーガールやセーラームーンたちの慈愛の精神で魂が浄化され消滅した怨念将軍の甲冑が地面に転がり、アラスカの独立を主張していたガイスは聖龍隊とスコーピオン同盟の共闘で打ち破られ大地に満身創痍で横たわり、サイキックヴァンパイアのリーダーでもあったジェラルは渾身の力を出し切ったのだが僅かに力及ばず敗れてしまった。

 そんな歴戦の革命軍士の幹部達が倒れる中、最後に総力戦で倒されたメカルスは機械としての自我が次第に薄れていく中、聖龍隊に言い残していた。

「ぐふふ、これで本当に革命が……いや、新たなる時代の到来が来ないと本気で思っているのか?」

『………………』

 聖龍隊は皆黙ってメカルスの遺言に耳を傾けた。

「違うぞ……! 始まるのだ、例え俺たちを葬ったとしても人間が生きている限り新たな時代が……そう、お前たち旧時代の産物を超える時代が必ずやって来る! どんなにお前達が否定しようと、お前らを超越した存在が生まれてくる時代が到来し、旧き時代を排除する新たな時代が到来するだろう……!!」

「メカルス……」

 村田順一はメカルスの一言一句を聴き入れる。

「俺も簡単には消えんぞ、聖龍隊……! いづれ世界は……再びオリジナルである小田原修司に成り変わる人間兵器を……絶対戦力を欲して同じ事を繰り返すだろう。そんな混沌とする世界を治めようと、強力な兵力は……戦力は再び生み出される。そしてまた新たな戦いが繰り返されるだけだ。お前達が齎した平和は何度でも意図も容易く壊されてしまうだろう……お前達が信じる人間、いや三次元人にな!」

 メカルスは実に意味深な話を淡々と述べていくと、最後に自分を今まで何度も打ち負かしてきた聖龍隊に告げた。

「俺も……この俺も……例え、核であるソウル・コアを破壊されたとしても、いづれ再びお前達の前に現われる。何度でも己の可能性を……そして俺同様に危険な可能性を秘めている二次元人の隠れた才能、俺以上に危険な可能性を曝け出させてやる! その日まで……首、を、洗って……待って、ろ…………よ………………」

 そう最後に告げると、メカルスの意志は消滅した。

 そして足元に転がってきたメカルスの本体ソウル・コアは長期に渡る戦闘などの負荷がかかった為か突如としてひび割れ、最後には粉々に砕け散ってしまった。

 メカルスのソウル・コアが完全に崩壊したのを見届けた聖龍隊は、これでメカルスとの長きに渡る戦いにようやく終止符が訪れるだろうと思ってた。

 

 そして革命軍士との最終決戦。

 聖龍隊とスコーピオン同盟は共に、ドラゴン打倒を目指して誰よりも逸早くドラゴンの許に馳せ参じた修司の元へと急いで駆け付けた。

 そして聖龍隊とスコーピオン同盟の面々が、修司とドラゴンの決闘の場に駆け付けると、そこには信じられない現状が横たわっていた。

 なんと小田原修司は白目を剥いて完全に意識を失っており、それに反してドラゴンは全くの無傷であったのだ。

 聖龍隊が急いで修司の許に駆け寄る中、ドラゴンの義弟であるガイアは義兄であるドラゴンにこれ以上の戦いをやめるよう呼びかける。

 だがドラゴンは修司を打ち負かした直後だというのに冷静な素振りでガイアに話した。

「ガイア、お前は此処から見える景色をどう思う? 長年、放射能に汚染されていた為に放置されていた遺棄された建物……それらは全て大いなる大自然の中で、静かにそしてゆっくりと崩落するばかり」

「………………」

「そして生物にとっては死しか与えないという放射能に汚染されながらも、人間がいなくなった環境でのびのびと育まれる動物達の盛んな声と生きようとする力……美しいとは思わないか?」

 ドラゴンはガイアに大自然の大いなる力で本来は死しか与えない放射能に曝されながらも存命する多くの動植物と、その環境を作り出してしまった人間の居ない自然界の絶景を称賛する。

 そんな中、ガイアは仲間であるスコーピオン同盟に告げた。

「お前ら!」『!』

 ガイアの指示に傘下の面々は反応する。

「急いで修司にヨード剤を飲ませろ! 急がないと間に合わないぞ」

 このガイアの指示に従い、スコーピオン同盟の面々は急いで修司に準備していた放射能を浴びた際の特効薬ヨード剤を服用させた。

 そして仲間達に指示したガイアは、再びドラゴンと向き合うと彼に語り始めた。

「兄貴……! 兄貴の言いたいこと、やりたい事はこのオレ様でも理解した。自分の故郷だったチェルノブイリに生まれた美しい自然しか信じられなくなった兄貴は、世界中にも同じ様な光景を作り出すために放射能を拡散させて人間を死滅させた上で自然の力を解放しようとしているんだろ?」

「その通りだガイア……このチェルノブイリの地は、私とお前が出会った思い出の場所でもある。生まれ立てのお前が私の前に現われたのも、今思えば運命だったのかもしれない。共に世界を美しくさせよう、汚れた人間のいない完全なる美を生み出そうではないか」

 ガイアに手を差し伸べるドラゴン。だがガイアは意志と信念に満ちた気高い瞳でドラゴンを見詰めて返答した。

「……兄貴! 確かに人間は自分達が築いた世界も壊しちまうし、自然だって平然と壊しちまう連中だ! だが! オレ様はそんな自由奔放な人間が好きだ! 何ものにも縛られずに自分の道を突き進むゴブリンのおやっさん……自分達の信念を決して曲げない聖龍隊……ちょいと融通が利かないが、自分達が掲げる信条を突き進む国連軍……そして何よりも、オレ様を慕って一緒に居てくれるスコーピオン同盟の仲間達! みんなみんな、この世界を彩る大切な奴等だ。そんな彩を、個性を失くす兄貴の思惑は……オレ様が止めてやる!!」

 己の信念を曲げずにドラゴンに立ち向かう意志を示したガイアの言動に、ドラゴン本人は何処か悲しげな表情でガイアに話し返した。

「……そうか、お前は兄でもある私に抗う道を選ぶのか。残念だよガイア。ではお前の望むとおり、旧く腐敗した世界と共に……滅びるがいい」

 すると次の瞬間、ドラゴンの体が緑色に発光し出した。

「な、何ですか、アレは!?」

 修司の介抱に勤しんでいたクリスタルたちスコーピオン同盟の面々が、自分達より高い位置に居るドラゴンの変化に逸早く気付く。

 するとスコーピオン同盟に介抱されている修司が、意識を取り戻してスコーピオン同盟の面々に告げた。

「お、お前たち……早く、此処から避難しろ……! ガイアでも、お前らでもドラゴンには勝てねェ……!」

「なに!? ガイアさんが勝てないだぁ? なに抜かしてやがる修司!!」

 修司の言動に傘下である柊潤が文句を怒鳴る。

 しかしスコーピオン同盟は、すぐに修司の言っている警告が正しいものだと理解する。

 ドラゴンの身体は見る見るうちに肉体が膨張し、彼が着ている喪服の様に黒いスーツは破れ裂け、手足は鋭い爪に、皮膚は鱗がびっしり覆われた漆黒の外見へと変貌していく。

「な、何だアレは……!!」

 傘下の兵部京介たちスコーピオン同盟の面々が驚愕する中、変化していくドラゴンは巨大化も始めていた。

 そんな巨大化も遂げていくドラゴンを目撃して、修司の許に駆け付け様としていた聖龍HEADも愕然とする。

 

 そしてドラゴンはその名が示すとおり、最終的には巨大な二対の翼が生えた漆黒のドラゴンへと変貌を遂げたのだった。

 

 

 

[申し出された共闘戦前]

 

 二対の翼が生えた、巨大な漆黒の竜へと変貌を遂げたブラッディ・ドラゴン。

 彼はチェルノブイリの原発事故で大量の放射能を体内に蓄積した事で変異を遂げた三次元人であった。

 

 ドラゴンは巨大な竜へとその姿を変えると、己の足元に倒れる修司に駆け付けたガイア以外のスコーピオン同盟の面々を見下ろした。

『ひぃッ!』

 巨大な竜に変化したドラゴンに睨まれ、怖気づいてしまうスコーピオン同盟。

 するとドラゴンはその巨大な口から緑色に発光する怪光線を発射して、修司とスコーピオン同盟を攻撃した。

『わあっ!!』

 スコーピオン同盟が絶叫した次の瞬間、兵部京介が超能力で修司を含む自分達を瞬間移動で他所へ移して、怪光線を回避した。

 そして巨大化したドラゴンを見て唖然としている聖龍HEADの前に瞬間移動してきた集団は、ホッと胸を撫で下ろした。

 

 一方で巨大化したドラゴンを前に、ガイアは必死に訴え掛けた。

「兄貴! その姿は……!」

「フゥーー……これは今まで私自身が抑えてきた放射能の力を最大限に使用できる姿だ。故郷を覆い尽くした放射能が肉体に蓄積された事で、変化できる様になったのだ……!」

 鼻息を荒くするドラゴンは次の標的にガイアを捉えて、ガイアに放射能熱線を吹き付けようとする。

 が、その瞬間。ガイアの危険を逸早く察知した兵部京介がまたしても瞬間移動を使用し、ガイアを移動させてドラゴンの放射能熱線から救った。

 

 そして修司/ガイアも含んだ聖龍HEADとスコーピオン同盟の面々が一堂に集結すると、一同は巨大化し自由に大空も滑空できる竜に変化したドラゴンを見上げて圧巻。

「アレがドラゴンの本当の姿か……! なんてこったい」

「まさか、三次元人で竜に……正真正銘のドラゴンに変身できるなんて……! しかも、その力の活力源が放射能なんて……!」

 ドラゴンの変身を目の当たりにして愕然とするメタルバードとジュピターキッド。

「あんなんで、どうやって止めるってんだ?」

「放射能を使われたんじゃ、迂闊に近づく事も侭ならない……!」

 グラスホッパーとシルクァッド・ジュナザードはドラゴンの能力である生物を死に至らしめる放射能に苦戦を感じる。

 すると、最初にドラゴンと死闘を展開した修司が口を開いた。

「や、奴は体内に長年、蓄積してきたチェルノブイリの放射能を自在に扱える能力を有している……! 奴の攻撃、一発だろうと受ければ其処でジ・エンドだ」

 放射能ゆえに一発でもドラゴンの攻撃を受ければ即死すると伝える修司の言葉に、一同は愕然と蒼褪める。

 

 だが、ガイアだけは戦意を失ってはいなかった。

「何がアウトだ! こんなところで尻込みしていられるかって!!」

 と、単身ドラゴンに駆け寄ろうとするガイアをクリスタルが制止する。

「あ、兄者まってください! 今のドラゴンには接近するだけでも危険ですって! いくら兄者でも生物である以上、放射能の驚異には打ち勝てませんっ」

「だから何だって言うんだよ!? ドラゴンの兄貴は、義兄弟のオレ様が絶対に止めてやるんだ!! いや、止めなくちゃならねェんだ!!」

 実弟であるクリスタルの腕を振り払って、皆に告白する。

「兄貴は……ドラゴンの兄貴は、それまで信じていた身内に母国に裏切られて故郷を滅ぼされた。そして今、そんな故郷と同じ環境を世界中に再現しようとしてやがる……」

「あ、兄者……」『………………』

「オレは、オレ様は……兄貴の悲しみを、絶望を何としても止めたい! 生き物が生きるか死ぬか解らない放射能だらけの世界に変えちまう兄貴の暴走を止めるんだ! それが今のオレ様が出した答だ!!」

 ガイアの信条を聞き入れた一同は、そのガイアの熱い闘志と信念を感じ取った。

 

 すると此処で、先ほどドラゴンに一対一で打ち負かされた修司がガイアに問い掛けた。

「ガイア……お前はドラゴンに対して、なにか策があるとでも言うのか」

 するとガイアは自信満々に返答した。

「ない!! でも義弟であるオレ様の炎を何発か直撃させれば、兄貴も目を回して変身ぐらいは解いてくれるかもしんねェ」

「要するに、ドラゴンが竜から人間形態に戻るまで我武者羅に攻め続けるだけかい」

 ガイアの空っぽな自信を聞いて、メタルバードを始めとする一同は呆気に取られてしまう。

 すると、このガイアの自信満々な返答を聞いた修司が様子を一変させた。

「……ふふっ、ははははっ! 今や全身から放射能を絶えず放射しているドラゴンに接近できない状況で攻撃を当てようってのか!? 何処まで調子いいんだよ、お前」

「ウッセェ! やってみなくちゃ分からねェだろ!? 兎に角オレ様は一人でも兄貴を止めてみせる!」

 突然笑い出した修司の問い掛けに、ガイアは変わらない自信でドラゴンに自分の炎を直撃させようと突っ走ろうとする。

 すると「待て」と修司がガイアの肩を掴んで、彼を制止させる。

「なんだよ! 兄貴は義弟のオレ様が止めるって……」

 ガイアが反論しようとすると、修司はガイアに面と向かって言った。

「お前だけじゃ、ドラゴンに接近するのも一苦労だろう。俺達が何とかして、お前をドラゴンに近付けさせる」

 この修司の台詞に聖龍HEAD一同は一驚した。

『ええッ!?』

「ちょっと待て修司! 一体どうしたんだ!? 放射能に頭やられておかしくなっちまったのか!?」

「悪役である筈のガイアに協力しようなんて、いつもの悪役嫌いの義兄さんらしくないよ!」

 メタルバードにジュピターキッドの質問に修司は毅然とした表情で答えた。

「……悔しいが、肉体は普通の人間である俺はもちろん、他の連中でも簡単にはドラゴンに攻撃を当てるだけでなく接近する事も難しい。そんな中、お前だけは義兄弟の杯を交わしただけという理由でドラゴンに向かっていこうとする」

『………………………………』

「俺は今まで、悪党同士の杯とか繋がりだとか……そう、絆なんて偽モンだと思ってた。だが、ガイア。お前は今でもドラゴンの奴を兄貴だと慕い、そんなドラゴンを本気で止めようとしている意志が俺にも伝わってきている……」

「修司……」

 今まで曝す事の無かった自分の本音を曝け出していく修司の発言に、ガイア達は誰もが聴き込んだ。

「何よりも今! 全身から放射能を放ち、その放射能を自在に操るドラゴンに勝つと言っているお前の意気込みに賭けてみたくなった! 聖龍隊はこれより、ドラゴン討伐のため一時的にスコーピオン同盟と共闘戦前を敷く!!」

 修司より共闘戦前を持ちかけられて驚いてしまうスコーピオン同盟の面々。悪党・悪役を忌み嫌ってる修司からの申し出に驚く以外なかった。

 

 誰もが修司の申し出に驚く中、ガイアは修司に問い詰めた。

「兄貴に負けたお前の尻拭いって訳じゃないよな?」

「もちろんだ。数少ない攻撃手段として、ガイアお前の戦力を活用するだけだ」

 ガイアからの質問に、修司は毅然と答えた。

 

 すると修司の申し出を聞いた聖龍HEADにスコーピオン同盟の面々が口を開いた。

「……うん、やってみよう! ガイアのお義兄さんを思う気持ちがどれだけ通用するか、試すのも悪くないかも!」

「お、おい、光……」

 獅堂光の溌剌とした笑顔に、メタルバードは返す言葉を探す。

「い、今SRMの隊士達が駆けつけて来てくれている筈……! ここは大人しく待機していて、ドラゴンに近づけるスーパーロボットの到着を待っていた方が得策なんじゃ……」

「いいや! これは兄貴分と弟分! 兄弟杯を交わした男同士の決着なんだ! 余り余所様の介入はゴメン被る!」

「は、ははは……ガイアの思い切った行動には毎度の事ながら驚かされるけど、でもお義兄さんを思う気持ちに賭けるって意気込みは私も賛成だな」

「せ、セーラームーンまで……」

 スーパーロボットの軍隊SRMの到着を待っていた方が得策だと訴えるセーラーマーキュリーにガイアは真っ向から反対。そんなガイアの意気込みに戦いの行く末を賭けてみたいと賛成するセーラームーンにエンディミオンは戸惑うばかり。

 このマーキュリーの意見を聞いた修司は、皆に自らが考案した策を伝えた。

「確かに此処にいる俺たちだけじゃドラゴンを倒すのは心許ない。よってスーパーロボットの連中がやって来るまで、できるだけドラゴンを負傷させるしかない! 俺たちHEADがガイアを何とかドラゴンに接近させて、火炎弾を狙撃させながら時間でも何でも稼ぐしか手立てはなさそうだ」

「おいおい、ところでどうやってこの蠍をドラゴンに近付けさせる訳?」

 修司の考案にメタルバードが疑問をぶつけると、修司は真顔で言い切った。

「俺たちHEADだからこそできる、あの合体陣形技でガイアを乗せてドラゴンに近付けさせるのよ!」

「? ガイアを乗せる、だと??」

 修司の発言にメタルバードは思わず顔をきょとんとさせてしまった。

 

 

 

[死闘! ドラゴンとの決戦]

 

 肉体に蓄積していた放射能を解き放ち、巨大な竜へと変貌したブラッディ・ドラゴンは戦場で猛威を振るっていた。

 そんなドラゴンに対抗すべく、修司はHEADと共にドラゴン打倒に燃えるガイア・スコーピオンを補佐する役回りに打って出た。

 そして聖龍HEADは修司の指示の元、ガイアをドラゴンに接近させるべく、あの陣形技でガイアを乗せようと行動に出る。

 

「お前達……準備は良いな?」

「本気でやるのか? ガイアって結構重いぞ?」

「文句を言うな! ……まずはガイアに闘わせてから、戦況を窺うんだ。行くぞッ」

 修司の提案に余り乗り気ではないメタルバードに、修司は渇を入れると聖龍HEADの仲間と共に陣形を組む。

 そして先頭の修司と共に速度を合わせて駆け出した聖龍HEADは鳥の形に陣形を整えると、体から蒼い光を発し始めた。

『大聖光 魔鳥!』

 修司を先頭にした聖龍HEADは蒼い光を発しながら、希望の象徴である魔鳥を象った大陣形技「大聖光 魔鳥」を発動させて、大きな蒼い鳥の如く空へと羽ばたいた。

 そんな空に羽ばたくHEADを横目に追いながら、ガイアは大きな蒼い鳥へと陣形を組んだHEADの上に飛び乗って共に滑空しながらドラゴンの許へと飛び立った。

「兄者……」

 大聖光で空に羽ばたいたHEADに乗らせてもらいドラゴンの許へと滑空していくガイアを見届けて、実弟であるクリスタルは兄を思う。

 だがクリスタルはスグに副首領としてスコーピオン同盟に指示を下した。

「さあ、私達は私達がやれる事をやりましょう! まずはメガロ、貴方はジェットエンジンで兄者たちと共にドラゴンに接近して兄者のサポートを……機械である貴方なら放射能にも耐え得る筈です。他の皆さんは私と共に戦場に散り散りになっている聖龍隊の方々に現状の報告と救助、そして遠距離からのドラゴンへの攻撃を中心に活動しましょう! 兄者を信じつつも、最後まで兄者の力になりましょう!」

『おうッ!!』

 クリスタルからの指示に、スコーピオン同盟の士気は急上昇した。

 

 その頃「大聖光 魔鳥」で陣形を組んだ聖龍HEADに乗せてもらい、運んでもらっているガイアはHEADと共にドラゴンの許へと急いだ。

「兄貴……! 兄貴の暴走は、オレ様が止めてやる!」

 決意を新たにし、ガイアはHEADに運んでもらいながらドラゴンへと急ぐ。

「ガイア! ドラゴンに接近する。お前はお前らしく、ドラゴンとケジメを付けろッ!」

 陣形の先頭で蒼い光を発する修司がガイアにドラゴンへの接近を告げる。

 ガイアは巨大な二対の翼を持つ竜に変貌したドラゴンに狙いを付けた。

「ヒートショット!」

 ガイアは右の鋏内側から灼熱の火炎弾を発射して、ドラゴンに火炎弾を直撃させる。

 するとドラゴンはガイアと、そのガイアを搭乗させているHEADの存在に気付いた。

 ドラゴンは荒く鼻息を吹くと、顔をガイアとHEAD達に向けて口から放射能熱線を吐き出そうとする。

「来るぞ!」

 メタルバードが大声を上げると、HEADは大きく全体を反らして方向転換、ドラゴンの放射能熱線を回避する。

「うわっと」

 HEADが大きく全体を反らした為に、危うく滑り落ちそうになるガイアに修司が言った。

「ガイア! お前はドラゴンに攻撃を当てる事と、俺たちから落ちない様にする事だけを考えてろ! ドラゴンからの攻撃をかわすのは、俺達で何とかする!!」

「解ってる! 修司、お前達も兄貴の放射能攻撃に当たらないよう気を付けろッ!」

 互いに激しく言い合う修司とガイアの両名。しかし、そんな両名の真情を察しているHEADは絶えず魔鳥の陣形を組んだまま保ち、ガイアを補佐する。

 その後もガイアはドラゴンに火炎弾を放ち続ける事に集中し、そのガイアを乗せて滑空する聖龍HEADはドラゴンの攻撃をかわす事だけに専念した。

 

 しばらくガイアはHEADに乗って飛行しながらドラゴンに火炎弾を狙撃していると、そこにようやくSRM(聖龍ロボットメンバーズ)の団体が到着した。

「遅れてすまない! 対ドラゴン用の対策として、鉛で作った特製のスーツを着用して機体に搭乗してた……!」

「これより、ブラッディ・ドラゴンへの攻撃を開始する!」

 アスラン・ザラたちSRMのロボット達によるドラゴンへの攻撃が開始された。

 だがドラゴンは如何なる強力な鋼の戦士達の攻撃を受けても、ビクともせず果敢に反撃に転じた。

「うわっ!」

「くっ……放射能レベルが異常に高い! これじゃ長時間、戦場にいるだけでも危険だ……!」

 ドラゴンが吐き散らす放射能が異様に高い数値を表している事から、SRMの面々も長時間の戦場での滞在に危機感を覚える。

 と、そんな苦戦を強いられている巨大ロボ搭乗者達は、それでもドラゴンに様々な攻撃を仕掛けていく。

 だがドラゴンは一瞬怯む程度で、その漆黒の体に傷を負わせる事は叶わなかった。

 しかし、そんな状況でもガイアは諦めずにHEADに搭乗したままドラゴンへと攻撃の手を緩めなかった。

 そんな戦況でロボットであるメガロ・スコーピオンも体内のジェットエンジンで駆け付けてガイアと共にドラゴンへと攻撃を開始する。

 

 すると何度もガイアの攻撃を受け続けてたドラゴンに、ある変化が現われた。

「……おかしい? 私の皮膚は竜化で強固なものへと変わり、あらゆる痛覚をも感じない筈なのに……何故だ? ガイアの火炎弾での熱さだけが異常に感じられる」

 ドラゴンはあらゆる痛覚をも感じない竜の鱗を持っている筈なのに、ガイアの炎の熱さだけは異様なまでに感じていた。

「ガイア! お前の火炎弾は少しばかりだが、確実にドラゴンに効いている! 攻撃の手を緩めるな!」

「解ってるから一々指図するなっての! 誰が攻撃を止めるもんか」

 修司からの指示にガイアは強く突っ返すと再度ドラゴンへの攻撃を再開する。

 

 と、ここでドラゴンに絶えず攻撃を行っていたガイアが修司に問い掛けた。

「なあ、修司。お前の闇の能力じゃ、兄貴の放射能の能力は封じられなかったのか?」

「ああ、残念だがドラゴンの能力に、俺の能力は効力を示さなかった」

 修司はここで、何ゆえあらゆる特殊能力を封じられる自分の闇の能力がドラゴンの放射能の能力を封じられなかったのか自説を説いた。

「体内に蓄積された放射能が人間の限界濃度を超えているからか、俺の闇の能力も効かなくなったのか……または俺と同じで三次元人のドラゴンには闇の能力が通じないのか。はっきり言って俺にも理由はさっぱりだ!」

 しかし修司は此処で皆に言い放った。

「だけど……結局やる事は変わらねェ! ドラゴンを止める! それだけだ!!」

 この修司の発言に、ガイアも修司共々「大聖光 魔鳥」を発動させている聖龍HEADも闘志を高めた。

 

 40の精鋭による「大聖光 魔鳥」の上に乗ってドラゴンに攻撃を狙撃し続けるガイア。

 そんな戦況を見て、メタルバードが口を開いた。

「なんだかシューティングゲームみたいだな」

「あ、オレ様もそう思ってた。なんだか兄貴を狙い続けるシューティングみたいに思えてきた」

 メタルバードとガイアが会話してると修司が間に入ってきた。

「戦いに集中しろ! ゲームと違って、一回ゲームオーバーになれば即アウトなんだぞ」

 修司に言われ、戦いに集中するガイアだったが、彼は再度メタルバードに訊ねた。

「おい、バーンズ。オレ様だけでなく、SRMの連中やメガロだって兄貴に攻撃してるんだ。変身中の今じゃ、完全に機械化しているお前も十分に兄貴に攻撃できるんじゃねェ?」

「それなんだけどよ……お前さんは知らないだろうけど、大聖光の最中じゃ、この聖なる蒼い光を発するのに精神が集中しているから他の事は基本なんにもできないのが現状なんだよ」

「あらま」

 レーザー光線などの完全機械化による攻撃をメガロやSRMの面々と共に行えばとガイアに告げられたメタルバードは、大聖光の最中は集中しているから他の事ができなくなる事実を説明した。

 

 そしてしばらく魔鳥の陣形で滑空する聖龍HEADに乗りながらドラゴンへと砲撃を続けていくガイアの猛攻。

 それが功を奏したのか、ドラゴンは灼熱の火炎弾を浴び続けて次第に苦しみ出した。

「やった! きっとガイアのお義兄さんを思う気持ちが通じたのよ!」

「まだまだ喜んでばかりもいられねェぜ、るちあのお嬢ちゃん! まだ兄貴の竜化は解かれちゃいない」

 如何なる攻撃をも痛感しない筈のドラゴンにダメージを蓄積させられるガイアの火炎弾の効力を前に喜ぶHEADの七海るちあに、ガイアはドラゴンの竜化が解かれていない現状から、まだ戦意が消えてはいないと警告する。

 するとドラゴンはぐったりと項垂れる首を上げて、飛行するガイアと彼を乗せているHEADを睨み付けた。

 そしてドラゴンは次の瞬間、最大火力かつ広範囲の放射能熱線を放射してきた。

『!!』

 ドラゴンの苦し紛れの放射能熱線を前に驚愕するガイア達。

 だがその時、HEADは修司にも告げずに勝手に大聖光を解除し、陣形を崩した。

 すると陣形が崩れた瞬間、メタルバードはガイアの尾っぽを、ジュピターキッドは鞭で修司の足を捕らえると二人は一気にガイアと修司の両名を遠くへ投げ飛ばした。

「わっ!?」「お、お前ら!」

 投げ飛ばされたガイアと修司を放射能熱線から遠ざけると、残された聖龍HEADはミラーガールの聖なるバリアーで全員護られ、放射能熱線から直撃だけは免れる。

 しかし放射能熱線から放たれる高濃度の放射能を浴びてしまったのか、聖龍HEADはミラーガールのバリアーが切れた途端そのまま地上へと落ちていってしまわれた。

「み、みんなっ!」「ちせちゃん!」

 修司やガイアが地上に放射線上に落ちていくのとは反対に、他の聖龍HEADは真っ逆様に地上へと落ちていった。

 すると其処に。ガイアや彼を一任させていたクリスタル率いるスコーピオン同盟が急ぎ馳せ参じ、地上に落下してくるHEADを一人残らず受け止めて、救出した。

「お、お前ら!」

 ガイアは修司と共に地上に着地して、HEADを受け止めたスコーピオン同盟の面々に声をかけると。

「兄者! 彼女達の事は私たちに任せてください! 前もって盗み出したヨード剤はまだ大量にあります! これをすぐに飲用させますので、兄者たちはドラゴン制止に集中してください!」

「クリスタル、みんな……」

 実弟であり右腕であるクリスタルと、仲間のスコーピオン同盟の頼り甲斐のある面構えを見て、ガイアは引き続きドラゴンへの進軍を再開する決意を固める。

「おい修司! お前の仲間は、うちの連中に任せて……オレ達は兄貴を止めに行くぞ!!」

「あ、ああ!」

 修司もガイアに言われて、HEADはこのままスコーピオン同盟に任せても大丈夫だろうと認識した上で、ガイアと共にドラゴンの許へと駆け出した。

 

 一方のドラゴンは、巨大な二対の翼が生えた漆黒の竜へと変化していたのだが、幾度となくガイアの火炎弾を浴びせられた事で力が消耗し、元の人間形態の姿へと戻っていた。

 そんなドラゴンの前に、修司とガイア・スコーピオンが立ちはだかり、二人はドラゴンへ直接対決を仕掛けた。

 ドラゴンはこのまま自分が理想とする「人間無き大自然」の思想を阻まれると思い、修司とガイアに挑みかかった。

 

 

 

[ドラゴンとの決戦]

 

 人間形態へと姿を戻したドラゴンは、その要因である修司とガイアに攻撃の矛先を向けた。

「来るぞ!」

 修司が隣のガイアに告げると、ドラゴンは目を放射能特有の緑色に発光させながら、同色である緑の放射能エネルギーを両手から球状にして投げ付ける様に発射してきた。

「かわせっ!」

 修司の一言に、ガイアも声を発した修司もすかさずドラゴンの攻撃から身を反らして回避する。

 しかしドラゴンは攻撃の手を緩めず、放射能エネルギーの塊である球体を手から生成して二人に直撃させようと投げ続ける。

「あの放射能エネルギーの塊に直撃しただけでも致命傷だ! ……ガイア! 兄弟杯を交わしてるからって、今さら手ェ抜くなんて無粋な真似すんじゃねェぞ」

「分かってらァ! 兄貴の苦しみ、このオレ様がブッ飛ばして消してやらァ!!」

 修司とガイアは長い付き合いの中で、まさかこれ程までにと思うほど共闘の意志が重なり合い、共にドラゴンを倒す勢いを増した。

 すると此処でドラゴンは全身を緑色に発光させると、手からサーベルの様な形状の剣を出現させて急接近してきた。

「あ、あれは……!?」

 修司が緑に発光する剣を生成して使うドラゴンを見て一驚する中、ガイアはドラゴンに向けて再び火炎弾を右手のハサミから発射してけん制しようとする。

 だが、ドラゴンは今まで竜の姿で喰らい続けたガイアの火炎弾を放射能のサーベルで真っ二つに斬り捨てて攻撃を防いだ。

「くっ、切れ味は日本刀と同格って訳か……!」

 火炎弾を切り落とされてしまったのを目撃したガイアは悔しそうに口元を歪ませる。

「こうなりゃ、被爆覚悟で……!」

 修司は常に全身から放射能を発し続けるドラゴンに接近するのがどれほど危険なのかを承知の上で、ドラゴンに接近して聖龍剣で斬り付けた。

 一瞬の内に鞘から刀を抜く抜刀術で、ドラゴンの全身に切傷を負わせる修司。

 だが、ドラゴンの体についた傷は、全てドラゴンの体に蓄積された放射能による極度の新陳代謝で回復し、瞬く間に傷口が塞がってしまう。

「クッ」

 修司が悔しがる中、再度ドラゴンに斬りかかろうとしたその矢先。

「うっ…………ごぼっ」

 なんと修司が突然の嘔吐。ドラゴンを前に、胃袋の中のものを吐き出してしまった。

「し、修司!」

 ガイアがドラゴンに火炎弾を連続発射しながら、間合いを保ちつつも修司に駆け寄ると、修司は苦しそうに胸を押さえていた。

「くそ……っ!」

「修司……兄貴から発せられる放射能を浴びすぎて、放射能病になっちまったんじゃ……」

「だ、大丈夫だ……! 今、ここで奴を……ドラゴンを倒さなければ、いづれ世界は放射能に包まれて死の世界と変貌してしまうだろう……!」

 そうガイアに論ずる修司の言論を聞いて、二人の目前にいるドラゴンは唐突に語り始めた。

「笑止……小田原修司よ、そしてガイア。お前達は放射能が生命にとって危険な代物であると誤解している様だな」

「ご、誤解だと……!!」「……!!」

 ドラゴンの言い分に、修司もガイアも激しく動揺する。

 そしてドラゴンは語り続けた。

「確かに放射能は……生物の命を喰らい、消耗させ……その果てには死を与えるという恐ろしいエネルギーだ。だが、決してそれだけではない。放射能は自然を正しく元に戻し、更には自然をより強大に変化させる事が出来る……普通の人間には使いこなすのが難しい、理想を超えた力なのだよ」

「「………………」」

「事実、私も……原発事故からこの地で放射能を浴び続けているが、今でも存命できている。私の非力な肉体を放射能が強化してくれたのだ。それだけではない……私と同じく、放射能である死の灰を被り被爆したこのチェルノブイリの地に根付く多くの動植物が今なお姿形を変えずに生き生きとしているではないか。弱い人間がいなくなり、代わりに人間よりも強い動植物が、美しい自然が芽吹く放射能は決して危うくない。むしろ、この汚れた地球を浄化できる……弱い人間を排除し、強い生命を活性化させてくれる力、それが放射能なのだよ」

 ドラゴンのこの言動を聞いて、修司もガイアもすかさずドラゴンに反論する。

「た、例え再び大自然だけが生き残り、自然が活気付くとしても……その何世代か後には、動植物の多くに放射能の影響として奇形の命が産まれてくる可能性だってあるんだぞ……!」

「確かに此処の、チェルノブイリの自然は綺麗だってオレ様もこの目で見てハッキリ分かる! ……けれど! 人間が一人残らず居なくなる可能性がある放射能で、地球から人間を消しても虚しさしか残らねェよ!」

 この修司とガイアの反論を聞いたドラゴンは、再度修司達に向けて放射能エネルギーの球体を手から出現させて敢えて足元に投げ付けて敵意を示す。

「父に、祖国に裏切られ……希望を失った私を支えてくれたのは、故郷チェルノブイリの尊い大自然だけだった! その自然を踏み荒らし、世界も故郷と同等に美しい環境に変えてやろうという私の目的を阻むのなら……もうガイア、お前であろうと容赦はせん!!」

 身内に母国と、信じていたもの全てに裏切られたドラゴンは死力を尽くして、故郷チェルノブイリと同じ環境を世界にも再現させようと、修司とガイアに向かっていった。

 

「人間の居ない世界こそ、世界は真に美しく生まれ変わる」

 

 そう根強く信じるドラゴンは、最後の最後まで修司とガイアに抗った。

 修司とガイアの方も、ドラゴンの野望を止めるべく共闘した。

「ドラゴン! お前は本当に、全てを……信じられる全てのものに裏切られたというのか!?」

「そうだ! 最高責任者であった父……ロシア高官……私が信じてきた全てのものは、あっさりと私と故郷のチェルノブイリを見限ったのだ!」

 激しい接線の中で、修司はドラゴンに問い掛けていた。

「本当に……本当に、お前には裏切られた過去しかないというのか!? 思い出せ、きっとお前にも原発事故に出会えた尊い存在が……自分を支えてくれた奴がいたんじゃないのか!?」

「信頼、できるもの……!」

 修司に問われ、ドラゴンは自然と修司と共闘するガイアの方に視線が向いた。

 

 ガイアとの出会い、それは被爆して無人と化したチェルノブイリの片隅に一人でぽつんと蹲っていた幼いガイアとの出会い。ドラゴンは近くのお店の窓ガラスを割り、中から綺麗なシーツを盗み出してはそれを幼いガイアに巻いて体温の低下を防ごうとした思い出が。

 身内に、祖国に裏切られた自分の苦境とは裏腹に、若かりしドラゴンに抱かれるシーツの中のガイアは優しくドラゴンに微笑みかけたという。

 故郷を失い、信頼を失い、全てを奪われたドラゴン。だが、そんな彼の心の支えに自然となってくれたのが、今のガイアだった。

 

 と、ドラゴンが昔の事を思い出していたその時。

 その隙に修司がドラゴンに急接近して下から上へかけて斬り上げて腹部に深い損傷を与えた。

「う……っ!」

 一瞬の隙を衝かれて斬り付けられたドラゴンは傷口を思わず両手で塞ぐ。

 するとそれを見計らった修司が「ガイア! 今だ!!」と大声で叫ぶ。

 ドラゴンがガイアの方を見ると、ガイアは全身から発せられる高熱を全て片腕のハサミに集結させて超高温の打撃を放とうとしていた。

「ヒートぉぉぉ………………ナックルッッッ!!」

 ガイアのラグビーボールより二周りはあるハサミが、超高温を保持しながらドラゴンの腹部に直撃。

 ガイアが放った超高温のハサミいや拳を受けて、ドラゴンは軽々と宙を舞って吹っ飛び、地面へと叩き付けられた。

 

 希望を失った日に、たまたま拾ったガイアから。義兄弟の杯をジャンプのマサと共に交わしたガイアから。最後まで空けておいた革命軍士の重要ポストの席に座しなかったガイア。

 そんなガイアから至高にして最大火力の打撃をお見舞いされて大地に背を着けるドラゴンは、ガイアとの最初の出会いの情景を走馬灯の様に思い返していたという。

 

 

 

[ドラゴンの死]

 

「…………アニ…………アニキ………………ドラゴンの兄貴!」

「!」

 突然自分を何度も呼びかける声に、ドラゴンは意識を取り戻した。

 ドラゴンが気付いてみると、正座するガイアの膝の上で寝かせられていた。

 そんなガイアの周りには、勝敗が決した事で急いで駆け付けてきたスコーピオン同盟の面々が。少し離れた所には修司と聖龍HEADがガイアとドラゴンの様子を窺っていた。

「兄貴………………大丈夫かよ?」

 ガイアは抱き寄せるドラゴンを心配して問い掛けると、ドラゴンは遠くを見詰める様な目と真顔で空を見上げながら答えた。

「ガイア、お前……本当に大きくなったな。あの頃の……この地で拾った時の幼いお前からは想像もできない」

「へへ……そりゃ、なんてったって元とはいえゴブリンファミリーの一員だからな。そう、兄貴と同じでな」

「私も……ファミリーの、一員……!? そうか……そうだったな……」

 ガイアの返答を聞き入れて、ドラゴンは拠所のない自分とガイアを引き取って一緒に暮らしてくれたゴブリンファミリーの思い出が自然と脳裏に浮かんできた。

 ドラゴンはゴブリンの元で育てられている間も故郷チェルノブイリの悲劇で孤立していたが、それでも幼いガイアや若きジャンプのマサとそれは仲良く暮らしていたという。

 そんな昔を思い出しながら、ドラゴンはガイアに話し掛けた。

「ガイア……」「ん? なんだよ、兄貴」

「ガイア、私は……私は、父によって愛国心を持つよう教育を施された。だが、その父はもちろん、母国すらもチェルノブイリの原発事故を隠蔽し、私の愛国心を踏み躙った。私は……許せなかった。生まれ故郷であるチェルノブイリを死の灰で汚し、事故そのものを隠蔽しようとしていた全ての存在に報いを受けさせたかった。そして同時に……そんな身勝手で理不尽な生き物である人間が完全に居なくなった事で美しい自然へと返り咲いたチェルノブイリの美景を地球全体にも広げたかった……ただ、それだけなのだよ……」

 ドラゴンの心願を聞いたガイアは優しい口調で義兄であるドラゴンに話し返した。

「兄貴……確かに兄貴の悔しい想いはバカなオレ様でも分かる。今でも政府はチェルノブイリの事故を一部隠蔽し続けてる……そしてこのチェルノブイリの地には確かに自然が豊富に溌剌と活発している。そんな美しい自然を世界に広めたいっていう兄貴の想いは実に純粋だよ」

 ドラゴンに優しく話すガイアは、更にドラゴンに話し続ける。

「……けれどもよ、人間にはもっと別の表情がたくさんあるんだぜ。兄貴が感じた簡単に裏切る様な無粋な人間も確かに居る……だけど人間はそれだけじゃない。多くの夢や理想を抱き続け、誰かを思いやる優しい心を持ち……中には、自分を犠牲にしてまで誰かの為に多くを背負いながら戦い続ける人間が居るのを、オレ様は知っている」

 ガイアは聖龍隊の面々を思いながらドラゴンに語り掛ける。

「人間ってのは、汚い部分だけじゃない。オレ様は、そう信じたい」

 このガイアの発言に、ドラゴンは遠のく意識の中でガイアに答え返した。

「……そうか。怪人であるお前には、人間の良き一面……その一面から感じられる可能性が信じられるのだな」

 ドラゴンはガイアの心中には、自分と違って人間の良心と可能性を信じられているのだなと感じ取っていた。

 

 するとその時。

 ドラゴンの肉体が突如として崩壊し始めているのにガイア達スコーピオン同盟は逸早く気付いた。

「あ、兄貴!」

 肉体が崩壊していくドラゴンを抱き寄せるガイアに、ドラゴンは説明した。

「っ…………どうやら、私の寿命も此処までのようだな」

「え?」

「私はチェルノブイリの放射能を浴びてから、肉体の成長が……いや、老化の進行が遅れていた。それだけではない……最初の原発事故が発生してから月日が経った時からも、このチェルノブイリに時おり足を運んで体内に大量の放射能を蓄積してきた。それにより私は放射能を操る事が、竜に変身する事が可能となった訳だが……今の戦いで体内に蓄積された放射能が底を着いてしまったようだ。直に私の肉体は放射能の影響で耐え切れず、完全に崩壊してしまうだろう」

「そ、そんな!」

 ドラゴンからの告白を聞いて、ガイアは焦燥してしまう。

「ま、待ってくれよ兄貴! そんな、こんな事になるなんて……」

「いいや、ガイア。全てはお前が選んだ結果で決まった事なんだ……義兄である私を倒し、この世界を護る選択をした時点で私の命運は決まってしまったのだよ。……だが、後悔はしてない。お前を拾い上げ、共にゴブリンの元で育てられてから、それぞれが違う道を選んで己の人生を突き進む選択肢は……今となっては思い出深いものだ」

「兄貴……」

 弱っていくドラゴンを見詰めながら、そんなドラゴンを抱き寄せるガイアの両腕は震え始めていた。

「ガイア、これだけは言わせてくれ……!」

 するとドラゴンはガイアの悲しげな表情を見詰めながら言った。

「お前と出会えて……私は、幸せだった……!」

 そう最後の遺言をガイアに言い残したドラゴンは、そのままガイアの膝の上で瞼を閉じた。

「あ…………あぁ………………」

 幼い自分を拾い上げてくれたドラゴン。ゴブリンの元で共に育まれたドラゴン。悪党と革命家という違った道を選んで突き進んだ兄貴分。

 そんなドラゴンの死を目の当たりにしたガイアは言葉を失った。

 そんなガイアを心配して不安そうに見詰めるスコーピオン同盟の面々と聖龍HEAD。

 するとガイアは最後に穏やかな顔で逝ったドラゴンを見詰めながら唐突に語り始めた。

「へっ、兄貴もこれでようやく休めるんだな」

 仲間のスコーピオン同盟にHEADが見守る中、ガイアは語り続けた。

「復讐とか世直しとか、小難しい事ばかり御託を並べていたっていうのに……最後はホント穏やかな顔で逝っちまいやがったよ」

 そう独り言の様に語るガイアの目からは、自然と涙が頬を沿って流れていた。

 

 こうしてドラゴンは、小田原修司とガイア・スコーピオンの共闘の末に倒され、最後は故郷であるチェルノブイリで静かに息を引き取った。

 

 かくして革命軍士との戦いは幕を下ろした。

 総元帥であるドラゴンの死で、革命軍士は空中分解。アイスフレイムの様に逮捕される者もいれば、そうでない者がいるなど残党は多種多様に散っていった。

 聖龍隊総長、小田原修司は戦死したブラッディ・ドラゴンの死体を引き取り、彼が故郷として慕っていた戦場にもなったチェルノブイリに墓標を設ける事を提案した。

 既に多くの政府高官が、ドラゴンが戦争前に拡散させたチェルノブイリに携わる人間を暴露した事である者は追われ、ある者は国外逃亡して姿を晦ました事もあって、国政が非常に混乱していた為に容易くチェルノブイリにドラゴンの墓標を建てる事が出来た。

 この一件で、世界もチェルノブイリへの見方を一変させて、二次元人の科学技術で放射能を除去した後にチェルノブイリを自然公園に国連は認定した。

 そのチェルノブイリ自然公園の中央区には、信じていた全てに裏切られながらも最後まで美しい自然を愛し続けたブラッディ・ドラゴンの墓標が設けられ、連日多くの旅行客などが訪問したという。

 

 

 

[自由になった鬼神]

 

 ガイアと共闘してドラゴンを倒した小田原修司にも変化があった。

 それは彼が宣言したとおり、2012年の末期に革命軍士との戦いに無事に勝利し生き残った際には、人間兵器としての権限を全て国連に返すという内容だった。

 皮肉にも革命軍士との戦いを皮切りに、小田原修司は戦争抑制兵器として自らを身売りした国際連合に兵器としての権限とそれに並ぶ絶対的地位を返上。国連からは小田原修司自身の人権が返還される事態に発展した。

 だが小田原修司が人間兵器であった頃に行った残虐な行為による罪状は、兵器としての権限を返上した国連に譲渡される形に。これにより小田原修司が残忍に殺害または傷害した罪は国連の罪状となった訳だが、当然ながら誰も世界である国連を訴える事は出来ず仕舞い。

 

 

 しかし、こうして小田原修司は晴れて異常者(ヒール)同様に人権のない人間ではなくなり、人権を取り戻した小田原修司はアニメタウン市長の座を己の秘書であったウッズに、聖龍隊総長の座を腹心の友であるバーンズに譲り渡した。

 そして修司は「己がいなくなった世界は、どの様に変わるのか」を見届ける為に、自らの意志でアニメタウンを出て世界を放浪すると決めた。

 

 

 そんな修司を見送ろうと、空港に駆け付けた聖龍HEAD。

 すると旅立とうとする修司は駆け付けてきてくれたアッコに対して歩み寄り、ポケットから小さな箱を取り出して差し出した。

 その箱の中には、アッコの誕生石でもあるサファイアの指輪が一つ。

 修司はアッコに婚約指輪を差し出したのだ。

 この修司の突然の、しかしHEADの中では誰よりも遅い告白にHEAD一同は口を揃えて言い放った。

「おっっっそ!」

 これには思わず小田原修司も転倒してしまう。

 

 

 そしていざ飛行機に乗り込もうとすると、修司の目の前に多くの聖龍隊士が総動員で登場し、修司にエールを送った。

 戸惑う修司であったが、同時に彼の胸中に熱い激情が迸った。

 

 

 こうして小田原修司はアニメタウンより海外に向けて旅立つ。

 この世で最も自分を理解してくれる加賀美あつこに婚約指輪を贈呈し、今までの感謝と共に己の心情を告白して。

 

 こうして聖龍隊からも小田原修司は退いて、聖龍隊は新しい総長バーンズによって生まれ変わる事となったのである。 

 

 

 

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