聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編 作:セイントドラゴン・レジェンド
[あらすじ]
バーンズ達から遂に明かされた、2013年の2月に起きた初期の新世代型二次元人の反乱の全貌。
当初はヴーイやメカルスが裏で糸を引いていたと思われていた、その反乱には驚くべき顛末が待っていた。
それは、ヴーイによって誘拐され、そしてメカルスに利用されていたと思われていた、当時の新世代型全てを統率する軌道エレベーター・ヤコブの管理官ルミネの事実。
ルミネはメカルスに利用されていたのではなく、敢えて自らを誘拐させてメカルスに利用させるという形で、自分たち新世代型を覚醒させようと謀っての事だった。
自分たち新世代型二次元人は、創造主である三次元人の意思や力添えなど必要とせずとも、自らの運命を切り拓き、未来を創造できる、より進化した生命だとルミネは聖龍隊に説いた。
そしてルミネは全てを明かしても尚、自らに、いや自分たち新世代型に抗おうとする聖龍隊を前に更なる強化変身を遂げて挑む。
苦戦の末、聖龍隊はルミネを撃破する事に成功する。が、ルミネは自分を倒しても新世代型の進化や歩みは変わる事は無いと聖龍隊に告げて絶命した。
聖龍隊は、自分たち旧世代の二次元人は自然の摂理で滅ぶのが運命なのかと思い悩むが、バーンズは順一たち皆に「例え滅びの運命が来ようとも……自分達はその滅びの運命と永遠に戦い続けなければならない」と力説する。
後に三次元政府は、ルミネの
だが新時代に適応できる二次元人を求める声は後を絶たず、翌月の3月からより厳重なプロテクトや監視体制を布いて新たな新世代型二次元人の生誕を再開した。
それが、いま聖龍隊と共に行動している新世代型二次元人なのである。
バーンズたち聖龍隊から、当時の新世代型二次元人の反乱の全貌を聞いて、蒼然とする新規の新世代型二次元人たちを前にして、バーンズ達の気も重くなる。
そして新世代型たちと共に話を聞いた赤塚組の面々も驚きを隠せなかった。
「まさか……! 全てはメカルスの計画に見せかけた、ルミネ率いる新世代型二次元人の企てだったっていうのか……!?」
「そう、だったのかもしれん……ルミネが死んだ今、その詳細を知っている奴はいないけどよ。ルミネがメカルスを逆に利用していたっていうのは今でも信じられねぇ……」
赤塚大作こと大将からの問い掛けに、バーンズは表情を暗然とさせながら答える。
「全ては修司の……小田原修司のクローンに近い新世代型を、自らの子供として操っていたメカルスの企みではなく……その修司の子供たるルミネたち当時の新世代型二次元人が自らの意思で起こした反乱だったって言うの?」
ミズキからの質問に、ちせたち聖龍HEADは顔を頷けるだけだった。
そして当時の反乱を聞かされても尚、受け入れがたい事実に激しく動揺する新世代型たちがバーンズたち聖龍隊に問うた。
「は、話を整理しようぜ……宇宙移住って言う、人類の夢の一つとも言える大掛かりな計画に、俺達の前に生み出された新世代型たちが活用されたんだな」
「そして、その計画の最中……指名手配を受けていたヴーイが管理官のルミネを誘拐したのが反乱の幕開けだったんですよね?」
「ああ、そうだ」
新世代型の真鍋義久や星原ヒカルの問い掛けに、バーンズは険しい面持ちで頷く。
「ルミネって女性がさらわれた所から……俺らの前に生み出された新世代型が反乱起こしちまった訳だな?」
「いや、ルミネは正確には女性ではない。中性的な立場で生み出された二次元人で、男とも女とも違う種なんだ」
燃堂力の問い掛けに、バーンズはルミネは女性ではなく中性的な生命だったと訂正する。
「私たちマン・ヒールズは、さっき話したけどメカルスにアニメタウン爆撃の際にまんまと奴の謀略にハメられたから気付かなかったけど……ルミネにも一杯食わされたって事よ」
マン・ヒールズのリーダー、ミスティーハニーは当時の心境を思い返しながら経験談を明かす。
「僕たちが望む平和な一時を、メカルスがまた壊そうとしていたのかと思っていたが……その実、本当はメカルスを利用して自分達にとって都合のいい未来を創造しようとしていたルミネ達の思惑だったなんて、悲しいよ」
「じ、順一さんは今でも新世代型を危惧しているんですか……?」
「……いや、僕は君達を疑いたくない。故に信じてみようとは思ってはいる」
自分の真情を語る村田順一に新世代型の琴浦春香が訊いてみると、順一は琴浦たち今の新世代型たちを信じたいと主張してくれた。
「それにしても……まさかウェルズだけでなく、お前さん達も反乱事件の最終局面である月面基地に赴いて戦っていたんだな」
「俺達も未だに信じられない……あのメカルスが利用するんじゃなく、利用されてたとは」
大将からの問い掛けに、当時月面基地まで出撃し、戦前で戦う聖龍隊に混じって交戦していたウェルズ達シュウジや白井渚に浜崎雅弘も俄かには信じ難い現実を話す。
「僕にも多少の変身能力はあるけど……初期の新世代型二次元人には無機物・有機物ともに変身できる高度な能力が組み込まれていたんだな。……それが新世代型の
「なんにでも変身できる……ヒーローにも、
新世代型の斉木楠雄に一ノ瀬はじめも揃って顔を暗くさせてしまう。
「凶悪なロボットのメカルスにも変身して戦えるなんて……無茶苦茶だぜ、俺達の前に生み出された新世代型は……!」
「アラタ……」
瀬名アラタの悲痛な思いに、鹿島ユノは悲痛な思いに駆られる。
「本物のメカルス以上に、強大でかつ多くの能力を駆使できたルミネ……彼の意思が、他の多くの新世代型にも影響していたっていうのかな……」
「なるほど、それならルミネ達の後に生み出された俺達も世間から危険視される訳だぜ」
「ちょ、ちょっと! セイにレイジまで……不吉なこと言わないでよ!」
イオリ・セイとレイジ・アスナの思想に、アイラが口を挟む。
「メカルスを倒せて無事に終わり……とは行かず、遂にルミネがその本性を現して聖龍隊に抗戦したって事か。ハッ、道理で俺たち新世代型が世間から色々と危険視される訳だ」
バーンズ達の話を聞いて、時縞ハルトは自分達の存在そのものに嫌気が差す。
「ま、まあ、新世代型のおめぇらがムシャクシャするのはすっごく分かるが……そ、それにしてもウェルズ達の救援でヴーイの自爆を受けたアッコたちHEADが無事で何よりだったぜ。それにバーンズの「時代にその名を残した名作を人々が完全に忘れる事は無い!」それは俺も共感だぜ!」
大将が今まで以上に感じたことも無いほど暗く重い空気が支配する室内を、少しでも明るくさせようと話題を逸らすが、新世代型達は自分達の存在そのものが多くを破滅させようとする意思の塊ではないのかと疑心暗鬼に陥る。
「新世代型二次元人、特にルミネの能力は正しく人の想像を遥かに凌駕した粋に達していたのかもしれない。オレ達が生き残れたのも、奇跡なのかもしれない」
「お、おいおい、バーンズ……そんな事いうなよ」
バーンズの発言に大将は焦りながらも反論する。
「最後はプルートとさくらちゃんの時を止める能力で戦いを終わらせられたけど……後に残るのはいつも虚しさと苦悩ばかり。修司が理想としていた未来は、遠いものなのかもしれないわ」
「ルミネは言っていた……これは覚醒であり、進化なのだと。でも、それが本当なら、僕たち普通の生命にはその進化の力を抑制する力は備わっていない。故に、またルミネの様に変化した二次元人が現われた時、その時は勝てるのか……正直、自信が無い」
アッコと順一の、ルミネとの戦いを思い返しての話を聞いて、多くの新世代型達は黙然と話を聞き入れる事しかできなかった。
「で、でも……琴浦さん達、今の新世代型の皆さんがルミネみたいになる訳ないですよね?」
「そ、そうそう! 反乱を起こした新世代型みたいに優秀だった訳でもないし、進化してるなんて大それたこと思わないだろうし……」
今までの皆の話を聞いて、プロト世代のチョコとギュービッドが今の新世代型たちがルミネ達みたいに変わる事はないだろうと説いていた。
すると、そんな二人の話を聞いてバーンズが手厳しい言葉を言った。
「……本当に、そんな事が言えるのか?」「え……?」
バーンズの問い掛けに硬直してしまうギュービッド。
そして多くの新世代型二次元人を前にして、バーンズは語り始めた。
「果たして、本当に新世代型二次元人が安全かつオレ達と共存できるのか、その答えは未だに見付かってはいない」
「ちょ、ちょっとバーンズ! それじゃ何かい? アンタは琴浦や真鍋たちもルミネみたいに危険な輩に変化しちまうって言いたいのか!?」
「話を聞け、ギュービッド。オレだって真鍋たち新世代型たちを疑いたくは無い。だが……ルミネの言うとおり、あの修司の遺伝子を受け継いだ新世代型二次元人が何らかの形で進化すなわち変化しないと誰が言える? ルミネも言っていた通り、新世代型には自らの意思で自らの運命を切り拓き創造する力が宿っているという。そんな新世代型がまた反旗を起こさないと誰が決められるだろうか」
「だ、だからって……!」
「オレだって本気で新世代型を信じたい! だが、ルミネ率いる初期の新世代型二次元人の後続機である新たな新世代型の中にも……お前も遭遇した
「!!」
バーンズに指摘されて、ギュービッドは何も反論できなかった。
そしてバーンズの話を聞いた新世代型たちが暗然と俯いていると、バーンズは彼等に言い切った。
「確かにルミネの一件で、お前たち新世代型には未だに完全な信頼が預けられないという事実がある! だが、それでもオレは……いや、オレたち聖龍隊はお前ら新世代型を信じたいんだ! 確かにお前らの同僚や身内には危険な思想を持っていて、ルミネの様に古い世代の生命を淘汰しようとしていた。でも、お前らはお前らだ! 自分の運命を切り拓く力だけでなく、お前達には必ず修司同様に他の種と共存できる力と意思が隠されていると信じたい!」
そんな力説するバーンズの話を聞いて、キャサリン・ルースがバーンズに問うた。
「結局……バーンズさんが、聖龍隊が信じているのは私たちの中に流れてる小田原修司の血だけなんですか」
するとキャサリンに続いて、栗山未来もバーンズに問う。
「私たちは、鬼の子として危険視され、鬼の子として信用されるしかないんですか?」
だが、バーンズは彼女達の疑問に答える事は無く、スッと立ち上がると周囲の皆に言った。
「さてと、昔語りも長くなっちまったな。もう夜も遅い。全員、寝床に移動してとっとと就寝しちまおうぜ」
バーンズのこの発言に、他の聖龍隊は迅速に動き出し、各々が寝床へと移動していく。
新世代型はというと、話をはぶらかされて、答を言ってくれないバーンズたち聖龍隊に微かな憤りを感じずにはいられなかった。
こうして聖龍隊と新世代型たちとの昔語りは幕を下ろした。
新世代型は、自分達と同じく小田原修司のコピーであり、本物を越えた偽物を目指していたメカルスの驚異を知り。
そのメカルスと幾度と無く激しい戦いを繰り広げ、そして乗り越えてきた聖龍隊の死闘の数々。
そして何よりも、そのメカルスをも利用して自分たちを覚醒させた上で進化させて、旧き二次元人を排除して三次元人を淘汰せんとしたルミネの謀略。
数多の激戦、メカルスや革命軍士との戦い、そしてルミネ率いる初期の新世代型二次元人の反乱の全貌を知って釈然としない新世代型二次元人達であった。
[醒めない悪夢と興奮]
バーンズたち聖龍隊から聞かされた、過去の激戦の数々に新世代型達は寝床に入っても興奮が半ば収まらなかった。
しかし数多の激戦での物語よりも、自分達の前に生誕されたルミネ率いる初期の新世代型たちが起こした反乱の数々を疑問視する一同。
新世代型二次元人とは、過去の二次元人よりも遥かに進化した上に覚醒した存在だと主張したルミネ。それは創造主である三次元人すらも淘汰してしまうほどの進化だと説いたという。
そして反乱を起こした初期の新世代型たちが全て処分され、その生誕ロットも全て破棄された後に、新たなプロテクトや生誕ロットで世に生み出されていったのが、自分達だと理解した新世代型たち。
自分たち新世代型二次元人は、果たして旧世代の二次元人を滅ぼし、未来を創造する為に数多の生命の頂点に立たなければならない種なのかと自問自答を頭の中で繰り返していく皆。
ルミネ達と同様に、自分達の体を構成している遺伝子は破滅の化身メシアたる小田原修司をモデルにされている事実を知って、一体ルミネ達と自分たち今の新世代型は何が違うのか思い悩むばかり。
微かな睡魔に襲われる直前も、新世代型達は自らの肉体を流れる鬼の血の宿命を思い起こして瞼を閉じ始める。
他者を護りたいが為に力を渇望した小田原修司が、自ら受け入れたD-ワクチンでの肉体強化と、殺戮陽動プログラムという催眠暗示を受け入れて自らを破滅の化身へと変えてしまった経緯。
その過去の経緯によって、おぞましい存在へと成り得てしまった小田原修司の遺伝子配列を基にされて生み出された自分たち新世代型は、そんな小田原修司の子供またはクローンに近いと言い切れる。
聖龍隊から聞かされた昔語りを知っても尚、小田原修司は果たして正しい存在なのか、それとも破壊衝動に駆られた悪意なのか理解し切れない新世代型達は次第に瞼を閉じる。
考えれば考えるほど、瞼は重くなり、次第に眠気へと誘われていく。
そして気付けば、新世代型二次元人全員が深い深い夢の中へと落ちていった。
すると新世代型二次元人達は不思議な夢を見た。それも全員が同じ夢を。
新世代型二次元人達が夢見たのは、瓦礫の山が散乱する荒地だった。
摩天楼が聳え立っていたと思われる都市は壊滅し、建物は半壊しているものも多く見受けられた。
新世代型が瓦礫の山を道なりに進んでいくと、彼等の目に付いたのは新聞の記事その端っこだった。
【黒武士による破壊 新世代型二次元人の新たなる反乱】
吹き荒ぶ風に飛ばされる新聞記事には、その様な見出しが大きく書かれていた。
と、新世代型が風で飛び上がる新聞に目を奪われていると、何処からとも無く悲鳴が聞こえてきた。
「た、頼む! 命だけは……ぎゃあっ」
急いでその声の許に駆け付けると、そこには刃で体を袈裟斬りにされて真っ赤な血で染め上がる聖龍隊士の浜崎雅弘の惨たらしい姿があった。
皆が雅弘の惨殺死体に目を奪われていると、また新たな悲鳴が。
「がはっ!」
すぐさま駆け付けると、そこで斬られていたのは同じ聖龍隊士の白井渚だった。
そして新世代型は、ここでようやく周りを見渡してみると、周囲には夥しい程の死体が転がっていた。
その死体は全て、新世代型たちが見知っている聖龍隊の隊士やキャラクター、更にはアジアの武将達に聖龍HEADの死体も目に飛び込んできた。
死体の山の中には、プロト世代で自分たち新世代型を慕ってくれるプロト世代のギュービッドやチョコ、海道ジンの死体も飛び込んできた。
思わず目を覆いたくなるような残忍な情景に、自然と足が後ろへと下がり始めていると、そんな退く足を掴む手が。
驚いて視点を足元に移した新世代型が目撃したのは、息も絶え絶えのメタルバードだった。
「お、お前たちを信用したばかりに……!」
メタルバードはそう新世代型に告げると、完全に息を引き取ったのか変身が解けた。
聖龍隊や武将達の死、そしてメタルバードが言い残した不吉な言葉に怯え、新世代型は思わずその場から駆け出した。
するとしばらく走っていると、走り続けていた新世代型二次元人の耳に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「これが……私たちの運命、成すべき役目なんですよ」
目の前に突如として現れた声の主は、昔語りで語られた初期の新世代型二次元人を統率していたルミネであった。
「私たち、新世代型には未来を創造できる可能性が……旧きを破壊する小田原修司の遺伝子と、未来を創造できる三次元人の意思があるのです。さあ、皆さん。恐れる事はありません。あなた達はまだ己の真の力に気付いてないだけ。旧い世代の二次元人を滅ぼし、無益な争いを続ける三次元人を淘汰する事で、未来を導き創造できる真価があなた達には隠されているんです。
『………………………………』
ルミネの問い掛けに激しく戸惑う新世代型達に、ルミネは更に話した。
「躊躇う必要は無いのです。人間とは元来、旧きものを排除して新しきものを創造する……いわば破壊と創造の二つの意思と力を持ち合わせる生き物。私たち新世代型には、元からその様な力が眠っているだけなのです」
『………………………………』
「さあ、今こそ目覚めるのです! 私たち、ヤコブ計画を推進していた初期の新世代型二次元人に代わって、旧き種を……旧き世界と時代を破壊するのです! それだけが、あなた達の成すべき運命……未来なのです!」
しかし自分達が破壊と創造を司り、旧き種や時代を壊すのが真の役目だと説かれても尚、新世代型達は非常に戸惑った。
そしてルミネの力説から逃れる様に走り出した新世代型は、思わず躓いて転んでしまう。
微かな痛感の中で立ち上がろうとする新世代型が前に目を向けてみた。すると彼等の目の前に広がっていたのは信じ難い光景であった。
それは積み上げられた瓦礫や死体の山の上に、血で濡れた長刀を握り締める黒武士が、それも何十人も存在していたのだ。
その光景に衝撃を覚える新世代型だったが、更に彼等を衝撃させる光景が。
それは瓦礫や死体の山の上に立っている黒武士たちが、ふと一斉に自らの顔に被せている黒無垢の仮面に手を掛けて外そうとしたのだ。
黒武士が素顔を曝け出すという今までに無い光景に新世代型たちが目を奪われていると、次の瞬間彼等に強大な絶望が襲い掛かった。
黒無垢の仮面を外した黒武士は、その外した仮面を足元に落としたが、曝された黒武士たちの顔を見て新世代型達は衝撃を受けた。
それは、全ての黒武士の素顔が、全員自分たち新世代型二次元人と寸分違わず同じ顔だったのだ。
老若男女と問わず、全ての黒武士の顔が全ての新世代型二次元人と同じ顔である事実に、新世代型達は衝撃を受けると同時に絶望した。
世界を壊し、多くの人命を奪ってきた黒武士の素顔は、おそらく同じ小田原修司のクローンである自分たち新世代型二次元人と同じ顔なのかと激しく焦燥した。
そしてそんな俄かには信じ難い素顔を曝した黒武士達は、冷たい表情で新世代型たちに告げた。
『これが…………お前達が歩む運命だ』
自分達は多くの人命を奪い、多くの世界を壊すだけの、冷徹な存在へと進化する種なのかと激しく絶望する新世代型たち。
覚醒・進化・破壊・創造
多くを担わされる為に生み出され、多くの驚異から自身を護れる為に与えられた、小田原修司と酷似した肉体と精神。
だが、同時にその真価は覚醒し、進化に繋がり、多くを破壊し多くを創造する意思と力に目覚めるのが自分たち新世代型なのか。
そんな無限に近い苦悩に苛まれながら、新世代型二次元人達は絶望した。
新世代型としての力の覚醒に、破壊や創造といった運命を悪夢に見た新世代型達は、全員が揃って寝床から飛び起きた。
自分たち新世代型と潜在意識が繋がっている共有感知で同じ夢を見て、同じ時に目覚めたのか、新世代型二次元人達は全員寝汗でぐっしょり寝巻きが濡れていたという。
そして飛び起きた新世代型は、聖龍隊が用意してくれた着替えに着替えると、朝食を軽く済まして一旦全員が部屋に集まった。
昨晩聞かされた数々の激戦の昔語り、そしてルミネが起こした反乱の要因である新世代型二次元人の進化と運命。
新世代型は、危険極まりないメカルスを生み出す切っ掛けにもなった小田原修司のクローンたる自分達の事実を噛み締めて、同時に自分達には新時代を導く素質があるという聖龍隊からの期待などを話題にした。
生物として進化し、己の力と意思を覚醒させ、旧きものを破壊し、新しきものを創造する事で、多くを導ける可能性が目覚めると告げられた経緯から新世代型は考え抜いた。
今この乱世たる現政奉還を引き起こした自分達と同じ新世代型の足正義輝は帝、そして彼が引き起こした乱世で王を名乗り人々を先導する名高き武将たち。
帝と王、この人々を導き、次代を切り拓こうとしている武将達は如何にして王としての自覚があるのか。
そして彼ら王を名乗る武人の意志を知る事で、自分達は少しでもルミネや黒武士の様な変化や進化を遂げない方法が見付かるのではないかと。
新世代型達は未来を切り拓ける、そんな存在に自分達が本当になれるのか。その答を求めるべく、奔走した。
[王の素質]
幸いにも、今は対黒武士の対抗策としてアジア中の武将や聖龍隊が同盟として組み、同じ陣地に陣取っていた。
まず聞きに向かったのは、モンゴル軍の若き総大将を任せられる事となった武人シン・ユキジの側近中の側近、忍者 猿飛佐助だった。
「王として相応しい人間? アンタ達らしくない無粋な質問だねえ。まーー難しいけどウチの旦那……今は大将だね、あの人は案外なかなかだよ」
王に相応しい人間を訊かれ、佐助は唖然としながらも自分の所の大将であるシン・ユキジの魅力について語ってくれた。
「王自身の能力が高い必要なんて必ずしもないんだ。要は人望。能力の高い人間がそいつに惹かれ、そいつの力に成りたいと思えばいいのさ」
それは王自身に高い能力が無くとも、人望をかき集められる高いカリスマ性があれば、それで十分だと説く佐助。
「そういう意味ではウチの大将は見事な人たらし。どんな人間にも真摯で近しい人間は更に大切にする」
特にユキジは見事なまでに人望を集め、真摯に接する事で更に人材を大事に扱うという。
「あとは、ただ……そうだな。視野を狭くする事がなければ、一人の
ただ、ユキジは熱血漢過ぎて、一人の好敵手、そうあの蒼竜に縛られる事が無ければ言う事なしの欠点なしだと佐助は付け足した。
次に訊ねたのは、中国漢族郷士の大軍に臣下している武将タク・モンジュロのもと。
「王だと? そんなの……マァスン様に決まっているだろ」
問い掛けられたモンジュロは厳つい強面で返答した。
「王とは何か? 人民に野望を共有する者だ。自らの野望をブレる事無く持ち続けられる人間の事だ」
モンジュロが説く王とは、人民に自らの野望を共有させるものであり、その野望を持ち続けられる人間の事だという。
「人の我なんざ案外知れたもの……見えなくなって、すぐに道に迷う。凡夫は自らが何がしたいのか……何をすれば幸福になれるのかを容易に見失う」
人間とは実際には弱いものであり、何がしたいのか、何をすれば幸福になれるのかを容易に見失ってしまう者。
「その時、共に歩く道を指し示す者こそ王なのだ」
そんな時、共に歩く道を指し示し、運命共同体として共に歩んでくれる者が王だという。
次に、そんな己の野望を人民に共有させて、運命共同体として共に歩もうとする強いリーダーシップとカリスマを持ち合わせるデイ・マァスンの許を訪れた。
「俺は王になれる男だと自負している。All Right? しかし順一……あいつも負けず劣らずだな」
マァスンは今でも自分は竜王になれると強く自負しているが、同時に日本皇軍で聖龍隊にも席を置いている村田順一も見所があると説く。
「自分の幸せと他人の幸せを、ああまで直結できる人間は稀有だろうよ。おまけに矛盾と歪みに打ち勝つ精神力もある。民のdesireを自分のambitionに挿げ替えて国を、いいや世界を
人と自分の幸せを直結するのは稀であり、現実と己の矛盾と歪みに打ち勝つ精神力を兼ね備えている順一は、それこそ世界を安寧へと導ける素質があるとマァスンは説く。
だが、最後にマァスンはこうも付け加えた。
「まァ……決して、ああはなりたくはないがな」
人と自分の幸せを直結するという事は、同時に他人の不幸も全て背負わなければならない。そして己の矛盾と歪みという現実に打ち勝つ精神力は並大抵のものではなく、常人ならば自我が保てない程の境地だとマァスンは説き明かした。
そして最後に、聖龍隊が新人要請部隊でもある総合部隊スター・ルーキーズの総部隊長ミラールの許を訪れた。
「それであなた達の中で何か結論は出たの?」
ミラールに問われながらも、結論がまだ見出せてない現状でミラールに問うた。
「……なに? 私達? 私達には別に王などいらない。皆で決めた事を実現する者がいるだけよ。そういう国の在り方もあるのよ」
ミラールは聖龍隊では特別な王や指揮官リーダーなどは居らず、皆で決めた事を実現しようと躍起になるという、いわゆる民主主義的な場面が目立つと説く。
「……ああ、まあそうね。あなた達の言う通り広義ではそれも王、いわゆるリーダーなのかもしれないわ。しかしそれを言うのなら、どのような共同体・集団にも王という存在は必ず存在する」
だが、それを言えばどの様な共同体・集団そして組織にも王と言う名のリーダーは存在するとミラールは説いた。
「あなた達はなぜ王を知りたがるようになったの? ……新世代」
そしてミラールは、ここで今に至るまで武将達から王の素質リーダーとしての資質を訊ね回ってきた新世代型二次元人たちに訊き返した。
すると新世代型を代表して、真鍋義久がミラールに話した。
「……皆がどんな国を、世界を目指して戦っているのかと。皆の考える王を知れば何か掴めると思ったんだけど…………正直、一般人である俺達にはどの王もどの民も遠いものに感じちゃってよ」
運命を創造し、未来を切り拓ける力があると説かれた新世代型は、高いカリスマ性やリーダーシップを発揮している武人達から話を聞けば、何かを掴めると思っていたのだが、所詮は一般人である自分達にはどの王も民も遠い存在に感じてしまってた。
「人を引っ張っていくほどの野望を持つことも、上手く引っ張られる事も出来ない。何かを盲信する事もできそうにない。何より縛り縛られる事が出来ない」
自分たち新世代型には、人を先導できるほどの野望を持つ事も、人を上手く導く事も、何かを盲信するほどの気高き意志も無い。それ以上にそんな意志や野望に縛り縛られる事が無いと真鍋は語る。
そんな新世代型たちに、ミラールは険しい顔で問い掛けた。
「しかし、どんな小さな集団にも広義の王すなわちリーダーは居るわ。あなた達は何にも属さない気なの?」
すると真鍋たち新世代型は、辛辣な顔をしてこう答えた。
「そうだねえ……互いに王でもなく臣民でもない。今の俺達には、そういう関係を築く事しかできないから」
まだこの世に生まれて間もない、それも多くから未来を切り拓き、運命を創造できる力があると説かれた新世代型達は迷ってた。
果たして自分達には、今までに無い全く新しい未来を創造できる真価が眠っているのか。
そして、そんな真価たる力を発揮してしまえば、同時に多くの命を根絶してしまう驚異に成り得てしまうのではないかと迷い続ける新世代型達であったという。
[新世代型の存在意義]
アジアの名立たる武将達にも訊ねて回った新世代型二次元人たち。
どんな武将も、そしてその側近も確固たる意志と信念を持って人民を導こうとしている姿勢を見せ付けられた。
だが、新世代型達は武将達の思考を知れば知るほど、ますます混乱し分からなくなっていった。
夢や理想そして野望に盲信する事も、ただ一つの目標に我武者羅にでも突き進む熱意も、周りと協力し合って未来を築こうとする意思は、今の新世代型たちには欠けていた。
小田原修司のクローンでありながら、同時に世界を導く可能性を持った自分たち新世代型たちに、自らの運命をそして未来を切り拓く力は果たしてあるのかと自問自答を繰り返すばかり。
新世代型二次元人達が自分達の存在意義について見詰め直し、思い悩んでいる所に一人の武人が声を掛けてきた。
「……皆様……」「……カァチェン」
それは今は一時ばかし聖龍隊に席を置かせてもらっている台湾が国将軍の劣将シバ・カァチェンだった。
カァチェンは思い悩む新世代型たちに歩み寄ると、歩を止めて彼らに問い掛けた。
「皆様……何ゆえ、皆様は
『………………………………』
カァチェンからの問い掛けに何も答えられないでいる新世代型たちに、カァチェンは
「……こう申し上げるのは、実に失礼極まりないと御思いですが……私は、あなた方が羨ましい。多くの者から畏怖され、聖龍隊の方々からも人望が厚く……何より、強い意志を持てた小田原修司の申し子としてこの世に生を受け、鬼神と同じく多くの人々から畏怖されるあなた方に……私は強く、憧れています」
「カァチェン、お前、まだそれ言う?」
カァチェンの変わらぬ態度と思想に呆れてしまう真鍋義久。
そんな真鍋はカァチェンに面と向かってこう切り出した。
「……はぁ、いいか? 俺達は俺達で、俺らの始祖だって言う小田原修司とは違う道を歩みたいって思ってんだ! 世界を何度も救ったり、滅ぼしかけたりした武人が通ってきた荊の道を、俺達までも突き進まない様に今まさに思い悩んでいる所なんだよ!」
「はぁ……何度も世界を救済し、そして滅ぼそうとしてしまった小田原修司とは違う道を……」
真鍋から切り出されてカァチェンはしばし考え込むと、新世代型たちに話し返した。
「ですが……あなた方の始祖である小田原修司も……その小田原修司の複製であるメカルスも……何より、あなた方と同じ新世代型のルミネ氏が遺してきた言動を聞き入れている今……私には、あなた方が既に普通の二次元人として全員が過ごせない様に……生きてはいけぬ様に思えてなりません」
「やめてよ! そんな事いうの!」
自分の思った事を包み隠さず述べてしまうカァチェンの言葉に、新世代型の薙切えりな達は思わず自分の耳を塞いで悲観してしまう。
そんな女子達の悲痛な表情を見て、カァチェンもやっと自分の軽率な発言に気付き、静かに「……申し訳ありません……」と一言謝罪した。
すると、カァチェンの話を聞いて微かな心痛を感じた新世代型二次元人達は、カァチェンに切り出した。
「……確かに俺たち新世代型は、あの小田原修司やメカルスの子供かもしれねえし、古い二次元人や三次元人を根絶やしにしようとしたルミネと同じなのかもしれねえ。けどな……俺たちはそんな、物騒な男のクローンで終わるほど小さな奴じゃない」
「小さな奴ではない、と……?」
新世代型の幸平創真の言葉に、きょとんとするカァチェンに続いて瀬名アラタが申した。
「カァチェンさん、オレ達は決して……自分達以外の生命を根絶する為に生まれてきた訳じゃない! それこそ、本当の意味でオレ達の始祖である小田原修司も願っていた多くの生命との共存や、ヒーローであろうと穏やかに過ごせる平和な世の中を三次元人に導かせる為に、少しでもいいから自分達の運命を自力で切り拓きたいんだよ!」
瀬名アラタの力強い言動に、他の新世代型二次元人たちも力強く頷く。
すると、そんなアラタや創真の意思を聞いたカァチェンは真っ当な意見を真顔で話した。
「自力で未来を切り拓き、創造する……果たして、その方法や考えは本当に平和へと繋がるのでしょうか? 皆様方も忘れた訳ではない筈です……今は亡きセレディ・クライスラーや
「ち、違います! ボクらはあんな奴等とは違うっすよ!」
新世党で暗躍していた多くの新世代型二次元人も同様に、自らの意思と力で未来を得ようとしていた事を指摘するカァチェンの言葉に一ノ瀬はじめは強く否定するものの、多くの新世代型達は信実を衝かれて愕然としてしまう。
だが、そんな中でも真鍋義久は強くカァチェンに言い渡した。
「そ、そうかもしんねえ……結局、琴浦の親父さんや流子や皐月の母ちゃん、あのセレディ達も自力で自分達の未来を掴み取ろうとしていただけかもしんない……け、けれど! 俺たちは違う! 俺たちは、アイツらの様に……ドレフ将校たちの様に他人を支配する未来なんか望まない!」
だが次の瞬間、カァチェンは冷たい眼差しで新世代型たちを問い詰めた。
「そうですか……ですが、あなた方にその様な意思が無くとも、近い未来で平和という名目で旧き二次元人を滅ぼし、我々三次元人を淘汰する顛末に未来が繋がってしまうのではないのですか……?」
「そ、それは……!」
誰にも分からない、誰にも見えない未来の顛末までも問い詰められ、真鍋たち新世代型達は何も反論できなかった。
すると其処に、また別の武人が歩み寄ってはカァチェンに声をかけた。
「もう、そのぐらいにしてやれ、カァチェン」「ば、バーンズ殿……」
それは聖龍隊現総長であるバーンズだった。
バーンズはカァチェンの背後から彼の肩を軽く叩いて微笑みを向けると、新世代型たちの前でカァチェンに話し始めた。
「お前が新世代型を警戒するのは無理もない。宇宙では新世党やドレフの悪巧み、そして昨晩話したルミネの一件を知った今となっては、自分たち三次元人を自然の摂理で淘汰するかもしれない上に、自分たち三次元人を守ってくれる旧い世代の二次元人を滅ぼしかねない新世代型を驚異に感じてしまうのは当然の事だ」
「………………」『………………』
「だが結局はな、カァチェン。新世代型への懸念は、同時に彼らの無限の可能性をも摘み取ってしまいかねないんだぜ。そう、お前さんと同じ、無限の可能性をな」
「私と、同じ……?」
「そうだ。お前だって過去に経験してんだろ? 欠かれカァチェンと周りから蔑まれ、見下されて、誰もお前さんの可能性を見てくれなかった。三次元人だけじゃない、二次元人にも、心を持つどんな種族にも必ず無限の可能性が秘められている。それを引き出すのは、あくまで己自身の力量だが、同時にその可能性を引き出させて正しい方向に導かせる事も周りの人間にだって出来る事なんだよ」
話を聞くカァチェンと新世代型たちの前で、バーンズはカァチェンに話し続けた。
「オレたち二次元人は、あくまで三次元人のそんな可能性を導く事しかできねえ……それは二次元人同士も同じだ。確かに新世代型たちが、あの色々と問題ばかり起こしていた修司のクローンに近い生命体であろうと、個人個人の可能性までも摘み取る権限は誰にもねぇ。オレたち聖龍隊が昨晩、お前達にルミネの一件を含めた過去の話を語ったのも、それは過去や運命を受け入れて、自分の意思と力で未来へと歩んでいってほしいからだ。そう、カァチェン、お前と同じでな」
新世代型にもカァチェンと同様に自力で未来へと歩んでいって欲しいと訴えるバーンズの話を聞いて、カァチェン本人も新世代型たちも茫然とするばかり。
そんな皆々にバーンズは更に語り明かした。
「無論、新世代型達が自分の出生や生い立ちでの葛藤を乗り越えていくのは、本人の意思でしかない。強制は誰にも出来ない。けれど、オレたち聖龍隊は……少なくともHEADは軽く背中を押してやる事しか出来ないかもしれないが、新世代型を信じて共に未来へと歩んでいけるよう精一杯サポートしていくつもりだ。そりゃあ、少し前は新世代型達を軟禁しちまった事もあったけど、今は断固として共生の道を探る覚悟だ! あ、言っておくが、修司のクローンだから助ける訳じゃない。同じ二次元人、いや同じ未来を歩む者同士手を取り合って前進していく所存だ!」
バーンズの力強い主張を聞いて、カァチェンも新世代型達も返す言葉が見付からなかった。
かつては聖龍隊の総長にして国連所有の人間兵器、二次元人を絶滅させる為の破滅の化身メシア、世界のパワーバランスを保つ為に世界中の国家機関の機密を手に入れて一国を自由に裏から操る事も出来た、バチカンやライフル協会と結託して己や聖龍隊の権力を強めさせた。
そんな一見すると危険人物にも思える小田原修司のクローンである自分達には、生きてもよい未来があるのかと疑問視する新世代型二次元人。
果たしてバーンズの言うとおり、彼ら新世代型にも他の種である旧世代の二次元人や三次元人と共生できる未来が待っててくれるのであろうか。
そしてシバ・カァチェンと同様、新世代型にも無限の可能性があるのだろうか。その可能性は果たして危険なものではないのか。
バーンズから指摘を受け、シバ・カァチェンも新世代型二次元人達も深く、深く考えるのであった。