聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 創生の章【戦えチョウセイ! 正義の為に】

[あらすじ]

 

 中国のとある温泉郷に訪れて疲れをとっていた聖龍隊とアジアの武将たち。

 すると其処に韓国将軍であり、同時にあの小田原修司の義弟であるサイ・チョウセイが駆けつけて来た。

 チョウセイによると、あの黒武士を従える国連総長・足正義輝の軍門に降った彼の姉マリアも温泉地に赴いていると言うのだ。

 姉マリアを韓国の実家に連れ帰そうと躍起になるチョウセイは、彼女と聖龍隊や新世代型の女性達も入浴している温泉にまで踏み込もうとしていた。

 これにバーンズたち男勢は、チョウセイを制止しながらも彼と共に女風呂に突撃しようと企む。

 そしてチョウセイと男達は、アジアの女武将を突破していき、遂にマリア達が入浴している足湯にまで到達した。

 入浴していたのが足湯だと知って落ち込む男達に対し、チョウセイは姉マリアに面と向かって共に帰還するよう言い渡す。

 しかしマリアは、既に自分は故郷である韓国にもチョウセイたち韓国軍にも関心はないと言い、チョウセイにいい加減姉離れして妻である有沙を大事にするよう諭した。

 姉マリアからの言論に、ようやく彼女の真意を悟ったチョウセイは頷き、姉マリアに今までの半生を感謝しつつ礼を述べる。

 そして弟チョウセイに、妻を大事にするよう諭したマリアはアッコたちに意味深な言葉を残して足正義輝の元へと帰っていった。

 

 温泉郷での姉弟騒動が終わり、サイ・チョウセイは温泉地のすぐ近くにある土産物市に立ち寄っていた。

「ふう……何だかんだで随分と有沙を放ってしまったな……何か手土産の一つでも買って帰るか……」

 そう思ったチョウセイは、女性に何を送ればいいか解らなかった為、新世代型の女子達にお願いして土産物を買うのに同行してもらってた。

「チョウセイさん、これはどうですか?」

「あ、これも良いかも!」

「な、なるほど……これも良いのか」

 新世代型の棗鈴や朱鷺戸沙耶(ときどさや)に土産物を勧められ、多くの品を買っては手荷物を抱えるチョウセイは改めて女性の買い物時のパワーに圧倒される。

 だが、そんなチョウセイではあったが、自分の買い物に同行してくれた女子達に素直に礼を述べる。

「あ、ありがとう。私では、女性に何を送れば良いのか全く解らない無知な故に……付き合ってくれて感謝する」

「そんな、いいんですよチョウセイさん」

「私たちでも良ければ、奥さんに何を買ってあげればいいかぐらい品定めしてあげますよ」

 礼を述べるチョウセイに、琴浦春香や森谷ヒヨリが返事すると、チョウセイはまた余計な発言を言ってしまう。

「うむ! 流石は我が義兄・小田原修司のクローンたる鬼の申し子! 兄者と同様、義に生きているのだな! ハハハッ」

「だ、だからそれを言わないでほしいんだけどな……」

 チョウセイの軽はずみな発言に、神北小毬(かみきたこまり)たち女子達は途方に暮れてしまう。

 しかしチョウセイは何を思ったか、新世代型の女子達に珍しくも弱気な愚痴を零し始めた。

「新世代型よ、これは私の愚痴であり、それこそ無駄口かもしれないが……私は、今まで自分の正義を執行する為に妻である有沙を疎かにしていた。これは許されざる行為、すなわち悪だ。私は姉上に気付かされるまで、有沙を蔑ろにしていたのかもしれない……こんな私が、また有沙を幸せに導けるのだろうか……」

「チョウセイさん……」

 実姉マリアに諭されるまで、妻である有沙を疎かにしてきたチョウセイは自らの行為を猛省した上で、有沙を幸せに出来るのかと己の悩みを打ち明ける情景に、琴浦春香たち女子達は悲痛な思いに駆られる。

 そんなチョウセイに、同行してたプロト世代のチョコが励ましの言葉をかける。

「だ、大丈夫ですよ、チョウセイさん」

「………………」

「有沙さんだって、きっと解ってくれますって。チョウセイさんの愛が! チョウセイさんがこれからはもっと奥さんである有沙さんを大事にしていくって解ってくれますよ! だって二人は新婚の夫婦なんでしょ? 夫婦ならきっと解り合える筈ですよ、きっと!」

「あ、ありがとう……そなたからの励み、このサイ・チョウセイの胸に確かに響いた……!」

 チョウセイは、チョコからの激励が胸に響いた事を伝え、感謝した。

 

 と、サイ・チョウセイと新世代型の女子達が晴れやかな笑顔で土産物市を歩いていた、その時。

「ちょ、チョウセイ様ーーッ! か、韓国より火急の知らせが……!」

 其処に一人の韓国兵が慌てた様子で駆け付けてきた。

「取り敢えず落ち着け。理の兵たる者、いつ如何なる時も冷静にだな……」

 慌てる兵士をチョウセイは落ち着かせようと説こうとするが、その前に兵士は血相を変えてチョウセイに申し開いた。

「そ、それどころではございません! 現在、韓国にて成りを潜めていた反日思想のテロリスト共が、ソウル市内を蹂躙しているとのこと!!」

「なッ……敵襲か!? 有沙は……有沙の身に何か有るまいな……?」

「そ、それが……敵方は、韓国軍の上層部の身内を人質に、廃屋に籠城との事……有沙様も例外ではなく、他の人質同様に連れて行かれ……」

「な……何、だと……!?」

 韓国の首都ソウルがテロリスト達暴徒に蹂躙されただけでなく、有沙を含む軍上層部の身内が人質にされている経緯に激しく動揺するチョウセイ。

「な、何たる事だ、悪の軍団め……! いや、全ては私が……私が国を、有沙を疎かにしていたからこそ……全ては私の所為だ……!」

 韓国を、そして何よりも有沙を人質にされた経緯は、全て自分が実姉マリアばかりに気を取られ、国や有沙を疎かにしていたのが原因だと自分を責めるチョウセイ。

 すると其処に、韓国の情勢を聞きつけた聖龍HEADが駆けつけて来た。

「自分を責めている場合じゃないぜ、チョウセイ!」

「ば、バーンズ殿……!」

 バーンズに続き、ジュニアもチョウセイを激昂する。

「今すぐに韓国に出撃して、首都を蹂躙しているテロ組織をどうにかして、有沙さんたち人質を助けないと……!」

「そ、そうであるな、ジュニア殿……刮目すべし! 我が正義の韓国軍よ! 今こそ、悪逆非道の限りを尽くすテロリスト共を殲滅し、有沙を……いいや、人質にされたか弱き人々を救い出すのだ!」

 

 こうしてチョウセイは、アジアの武将達に加えて聖龍隊という戦力を味方につけた状態で韓国ソウルの暴徒を打ち滅ぼしに進軍した。

「総員、進撃!」

 

 

 

[蹂躙されしソウル]

 

 韓国の首都ソウルが反日思想を持つテロリスト達の暴徒に遭い、襲撃を受けていると聞き付けたサイ・チョウセイとアジア武将並びに聖龍隊は急いで韓国に駆け付けた。

 到着した一行の目に飛び込んできたのは、既に暴徒達により荒らされた首都ソウルの現状だった。

 この暴徒を鎮圧すると同時に、敵勢が人質に捕えた小田原有沙ら軍の上層部の身内を救出せねばならない現状に、聖龍隊総長バーンズは指揮を執る。

 だが一方で護るべきソウルが悪によって荒らされた上、妻である有沙をも人質に取られた現状にサイ・チョウセイは酷く困惑していた。

「有沙! 有沙ーーッ! どこに居る……無事でいてくれ……!」

 暴徒によって蹂躙されたソウル市街を、蔓延る敵兵を蹴散らしながら邁進するチョウセイは無意味と解っていても妻有沙の名を叫んでしまう。

 そんな迷走してしまうチョウセイとは裏腹に、聖龍隊側につく台湾将軍シバ・カァチェンは混乱極まる戦場に微かに聞こえる気配を感じていた。

「また聴こえた……まず幽谷響(やまびこ)の類ではない……あの男もまた、この戦場を跋扈しているのか……?」

 カァチェンが感じ取る、その人物とは。

 

 蹂躙されたソウル市内で全ての陣地を奪い、戦場を制圧する事から戦いは始まった。

 チョウセイも早速、目に付いた敵を斬り捨てて戦場の制圧に乗り出すが、同時に彼の目に飛び込んできたのは反日思想の軍勢が掲げる罰印が施された日の丸だった。

「見渡す限り、罰印が施された日の丸……有沙よ、何もなければ良いが……くっ!」

 反日思想のテロリスト達が、日本人である妻・有沙に何か危害を及ばないか、そしてこんな状況で妻を護れない自分の現状に苛立つチョウセイだった。

 サイ・チョウセイや聖龍隊そしてアジアの武将達がソウル市内を制圧していく中、カァチェンも一人の武将の気配を追って戦場を駆け抜けていた。

「今度こそ、貴方方を負かして……私の中の弱きを変えてみせる……!」

 カァチェンは自分の中の弱き己を変える為に、懸命に逆刃薙(さかばなぎ)を振るい続ける。

 そんなカァチェンの前に立ちはだかったのは、かつてカァチェンと仕合したあの哀しき武将。

「おい、アンタ? 前は随分と痛め付けてくれたな……何か、探し物でもしてるのか?」

 テロリスト達に捕えられた人質を探しながら突き進むカァチェンの前に立ちはだかったのは、あの北朝鮮の残党軍の忘れ形見マン・サコン。実は反日思想のテロリスト達と関係を持ち、韓国ソウルに戦火を落としたのは指揮を執っているサコンの差し金だった。

「情熱の赤、サイ・チョウセイ! 無言即殺に敵は無しッ!」

 その頃のチョウセイといえば、己の格言に嘘偽り無く敵兵を斬り捨てながら驀進していた。

「悪、正義、悪、正義……よし、悪だな」

 見渡す限り、味方兵と敵兵が跋扈する戦場でチョウセイは悪と正義に分割して見分けていた。

「聖龍隊、突撃! 韓国軍に加勢しろッ!」

 一方でメタルバードに変身したバーンズは、聖龍隊総長としてチョウセイが従える韓国軍に加勢する形で指揮を執っていた。

 

「多少の犠牲など、戦では致し方ない……無論、この私も含めてだ」

 その一方でサコンと向き合ったカァチェンは、犠牲無しでは勝利は勝ち取れない真意を口にしながらもサコンに立ち向かう覚悟を決めてた。

「カァチェン……あのサコンと何かを感じ取ったのかしら? ……マン・サコン。私たち聖龍隊が生み出してしまった歴史の敗北者……」

 戦場を駆け巡るミラーガールは、サコンと対峙するカァチェンを気配で感じ取りながら、サコンへの罪悪感を募らせる。

 

「者共! ここで力を示すが、真の忠臣ぞ!」

 戦場ではサイ・チョウセイの進軍が味方に多大な士気を上げさせ、韓国軍は一気にテロリスト達を迎撃する。

「こんなモン、落ち目のうちに入らねっつーーの!」

 カァチェンと一騎打ちに乗じたサコンは、戦場であるソウル市内が続々と敵方である韓国軍に取り返されている戦況に苛立ちながらも諦めを見せなかった。

 そんな戦場で、妻・有沙を探し求めるチョウセイの進撃の様子を側で目撃した兵士が零した。

「仮に美姫を手に入れたとして、あれが義弟か……厳しいな」

 兵士はチョウセイが、鬼神の義弟として余り似つかわしくない力量だなと呟いた。

 しかしそんなチョウセイの戦う姿を拝見した韓国兵は、その勇姿に感服している様子だった。

「あの技も身のこなしも、俺には到底真似できないな」

 

 その頃、サコンと一騎打ちに乗じていたカァチェンは、これ以上サコンを苦しませまいと彼の行動を阻んでいた。

「あの方々ならこう言うだろう……予測の範囲であると」

 サコンと闘いながら、カァチェンは今は己の師である聖龍HEADなら予測しているだろうと冷静に分析する。

「カァチェン! 無理しないでほしいんだけど……」

「信じてみようぜ、るちあ。カァチェンも今や立派な武将だ」

 サコンと一騎打ちに乗じるカァチェンを心配する七海るちあに、堂本海斗がカァチェンを信じてみようと声をかける。

 

 一方で戦場は、士気が上がった韓国軍に加え、加勢する聖龍隊に名立たるアジアの武将達の戦力も相まって、テロリスト達は追い詰められていた。

「くっ……事の全てが、あのサコンとかいう若造のせいとは言えまい……サイ・チョウセイの人望と、聖龍隊と言う組織力には所詮、歯が立たないんだ……」

 敵兵は、全ては指揮を総括させているサコンだけの責任ではなく、韓国軍を総括するサイ・チョウセイの人望と聖龍隊という巨大な組織の力には所詮歯が立たない現実なのだと諦めかけていた。

「敵方の陣形が崩れた! 攻めるなら今だ!」

「聖龍隊、気張っていくぞ!」

 参謀総長のジュピターキッドからの指示に、キング・エンディミオンが指揮する部隊が敵方に攻め込んでいく。

 

「んん? 何かあっちが騒がしいな……」

 カァチェンと一騎打ちしているサコンは、そんな兵士達の思惑など知らず、戦場がざわついているのに気付いてた。

「貴方の相手は私です……今は、私だけを見てればいい……!」

 そんなよそ見するサコンに、カァチェンは少し強めの口調で訴え掛ける。

「ほぉ……あのシバ・カァチェンとやら。前までは弱輩者だったのに、今じゃ一端の武人を気取ってやがる」

「某達も、それぞれの戦法でソウル市内を奪還いたしましょうぞ! マァスン殿!」

 シバ・カァチェンの一騎打ちを近くで視認しながら、デイ・マァスンとシン・ユキジもソウル奪還に積極的になる。

 

 その一方で少し敵方に圧倒される韓国兵に、チョウセイは強く説き掛ける。

「弱気になるな! この私の偉容を見習え!」

 そのチョウセイの勇姿に感化された兵士達は、一気に士気が向上した。

 チョウセイの勇姿、そして悪に屈しない不屈の精神は韓国兵の戦意に影響している。

 

 

 

[愛する者を求めて]

 

 韓国側の連合軍と反日思想のテロ軍勢との戦闘は着実に終焉へと向かっていた。

 テロリスト達はサイ・チョウセイや名立たる武将達の追撃に遭い、一人また一人と落命し、陣地も制圧されていく。

 そんな戦況の中、シバ・カァチェンはこのソウル市内を占拠したテロ集団を指揮する北朝鮮の残党マン・サコンと激しく闘い合っていた。

「……マン・サコンとやら、貴方は未だに過去に……過去の敗北に縛られているのだな。やはり貴殿は……過去(かつて)の私と同じだ……」

「黙れ、カァチェン……! テメェに話す義理は無ぇ……!」

「……其処まで、憎悪の瞳を滾らせている以上……所詮、私達は戦わざるを得ないのだな」

 聖龍隊への、そして何よりも世界への憎悪を滾らせているサコンの瞳を見据えて、カァチェンはサコンと闘わざるを得ない状況を呑み込む。

 二人が一騎打ちしている間にも、聖龍隊やアジア武将達は挙ってソウル市内を奪還し、テロリスト達を鎮圧していった。

「ふぅ、これでここもお終いですねっ。悪い奴等はみんなパパッと片付けちゃいました☆」

「ふぅ……鶴姫も何だかんだで敵兵を倒しまくったわね」

 一息入れる鶴姫と聖龍隊のミラールは、互いに敵を倒し尽くした現状を見合っていた。

 

 そんな次第に反日思想のテロリスト達が鎮圧されていく戦場を、妻である有沙を探し求めているサイ・チョウセイは咄嗟に一人の敵兵に尋ねてしまう。

「そこの若者よ! 我が妻・有沙を知らぬか!?」

 すると尋ねられた敵兵は、チョウセイに向かって暴言を吐いた。

「あぁん? 有沙って、あの鬼神・小田原修司の妹で……正義正義とほざいて愛国心を失くしたテメェの女房の事か!?」

「そ、そうだ! 愛国心が無いだと? 私の愛国心は存在している! 正義という世の理でな!」

「ふざけるな! あんたは下らない正義感で、あの国連の赤犬を称賛してる上に……政略結婚という形で鬼神の妹と一緒になって、聖龍隊とグルになりやがった! 韓国の事など、お構いなくな!」

「な! そ、それは日本と韓国の仲違いを修復する為であって……何より、私の愛国心は正義があってこその愛国心……兄者や赤犬元帥を推すのは当然の義であろうが」

「ふん! そうだな、あんたは強大な権力に恐れを成して、その軍門に降ったんだ! そんな奴の女房、いや鬼神の妹で日本人なんか、俺らを指揮している、あのサコンって奴が何をしてるか分かったもんじゃねぇぜ」

「なん……だと? 有沙……有沙ァアアッ!」

 敵兵からの挑発混じりの雑言に激しく己を責め立てるチョウセイ。

「私は……お前を護れなかったのか……? 傍に居ると誓っておきながら……許せ、有沙……ッ!」

「……フン、何を嘆いているかは知らないが……あの小田原修司の妹など、即座に嬲り殺したいばかりだ!」

 絶えずチョウセイに罵声を吐き散らす敵兵を、チョウセイは何の迷いも無く即座に斬り捨てて即殺した。

「有沙よ! 無事でいてくれ!」

 チョウセイは一筋の希望を祈りながら戦場を駆け抜ける。

 

 一方その頃のカァチェンとサコンの一騎打ちはというと。

「怖くねーーの、あんた? その………………お化け的なものとか」

「はて? 急に何を申すのですか……?」

「い、いや……二次元人の中には、その……妖怪とか、お化けとかいるって聞いているけど……あんた、怖くないの?」

 このサコンの怖がる様子を見たカァチェンは、彼が自分とは正反対にお化けや妖怪などの類が苦手なんだなと即座に理解する。

「カァチェンの奴、まだあのサコンとやらと一騎打ちに興じているのか……?」

 同じ頃、メタルバードはカァチェンが何かを感じ取ってサコンと一対一の対決に乗り出してるのだなと理解していた。

「某に勝るとも劣らぬな、はっはっは! ……ははは……」

 敵方を速攻で倒していく聖龍隊は、自慢げに勝ち誇っていた。

「あの後ろ姿に付いて行くだけで、何か安心するよな……」

 一方の韓国兵は、驀進するサイ・チョウセイの後ろ姿を目視しているだけで不思議と自信が湧き上がる感覚に至っていた。

 その反面、敵方は。

「我々が奮い立たねば、最後の場まで失うぞ!」

 このソウル制圧を奪還されれば、自分達の居場所を失ってしまうと無理にでも奮い立とうとする敵陣。

 しかしいくら士気を高めて奮い立とうとしても、所詮は烏合の衆。弱い者同士で徒党を組み合うしか出来ずにいた。

「徒党を組むしか能がないのか? 嘆かわしき者共め……!」

 そんな輩をチョウセイは存在そのものを嘆きながらも容赦なく斬り捨てて行った。

「差別・軋轢・蔑視……まさに悪の極みだな」

 徒党を組む悪党達を平然と斬り捨てていくチョウセイは、彼らの悪態を強く非難しながら再び妻である有沙を探し回った。

 

「私達の如き野草は、踏み躙られる為に在る……」

「おいおい、チョウセイ! 違うだろ。踏まれた野草は前よりも丈夫になる。そんな野草を見捨てたりはしねえよ」

 自分達の如き雑兵は野草の様に踏み躙られるだけだと説くカァチェンに、メタルバードが慌てて訂正を述べ掛ける。

 メタルバード率いる聖龍隊と共にソウルを奪還していく韓国軍兵士は、負傷しながらも立ち上がり懸命に戦い続けた。

「チョウセイ様のご期待だけは、何があっても裏切れぬのだ……」

 己の正義を信じるチョウセイという主の為にも、期待を裏切らない様に奮闘する韓国兵たち。

 そんな韓国兵の戦意のお陰か、ソウル市内は完全奪還まで後一歩までに至っていた。

「このまま反日・反二次元人軍の天下……ってワケにゃいかねーーか」

 カァチェンと激しく刃を生じ合わせるサコンは、このままでは負け戦になる事を察していた。

「ふん、元より期待などしておらなんだが……こうなればいっそ、あのサコンを囮に撤退でも……」

 そんなサコンを置き去りにし、いっそ囮にしている間にでも密かに逃げ出そうと企む敵兵までも現われてきた。

 しかし聖龍隊や韓国軍の連合軍がそれを許す筈も無く、敵兵は一人残らず片付けられてしまう。

 

 そして全てのソウル陣地を奪還した後、敵軍の拠点である廃墟が、カァチェンとサコンが奥で決闘している廃墟へと続く道が開通された。

「おおっ、遂に門扉が開きました! さあ、お急ぎを!」

「うむ!」

 韓国兵に急かされ、チョウセイは他のアジア武将達と同時に開通した道へと雪崩れ込んだ。

 そしてその奥地で妻・有沙の姿を探し求めるチョウセイの前に、混戦状態で一緒に敷地内に入り込んだ独眼竜デイ・マァスンと遭遇した。

「独眼竜よ、有沙を見なかったか!? 一刻を争う事態やも知れないのだ……!」

「Hum? いいや、まだ見てねえぜ……」

「そうか……くっ……!」

 妻である有沙が未だに見付からない現状に、チョウセイは再び自分を責めた。

「全ては姉上の言う通りであった……有沙から目を背けていた私こそ悪だったのだ……!」

「Hum……アンタ、随分と殊勝になったじゃねえか」

「離れたならば取り戻す……傷付いたならば癒してみせる! それが私の決断……真に抱くべき正義だ!」

「サイ・チョウセイ……アンタはもう、誰かの弟じゃねえようだな」

 マァスンは、チョウセイが今や鬼神の義弟という立場でもなければ、傍若無人なマリアの弟という立場からも自分を解放した様子に感服した。

 そんな二人の前に、廃墟内に篭城してた敵方の残党が攻め込んできた。

「ここはオレに任せろ! アンタは女房の捜索を続けてろッ!」

「え! し、しかし……」

 戸惑うチョウセイに、マァスンは怒声を告げた。

「馬鹿野郎! 遅くなったら取り返しがつかねえんだぞ! 早く探しに行け!」

「ど、独眼竜……済まない、恩に着る!」

 そうマァスンに言い残して、チョウセイは有沙探索の為に駆け抜けた。

 チョウセイを送り出して、一人敵方に取り囲まれたマァスンは六爪の刀に手を掛けて言い放った。

「オレの指は誰よりも強え……六爪を貫いた証だ!」

 次の瞬間、マァスンは六爪の刀を抜刀して自分を取り囲む敵方に突っ込んでいった。

 

 

 

[全ては愛の為に]

 

 デイ・マァスンから背中を押してもらい、妻・有沙の元へと急ぐサイ・チョウセイ。

 そしてチョウセイは、一騎討ちに乗じるシバ・カァチェンとマン・サコンの許へと到着する。

「待たれよ! 其処の武人達よ! これ以上、血を流す闘いを続けるのであれば、この正義の守護者サイ・チョウセイが黙ってはいないぞ!」

 その反面、チョウセイの到着にカァチェンとサコンは一旦闘いをやめる。

 チョウセイの到着に面を喰らうカァチェンに、無線でメタルバードが告げる。

「チョウセイとも共闘してみな、カァチェン……きっとまた一歩、お前を未来へと導くはずだ」

 メタルバードはカァチェンの心の成長の為に、敢えてチョウセイと共闘させる事を勧めた。

 しかし当のカァチェンは、幸せな結婚を果たし、地位も名声も得ているチョウセイに軽く嫉妬している様子だった。

「貴方は私を知らない……だが、私は貴方を知っている。我が身とは違い、鬼神の身内と契りを結んだ上に、今の地位を得た者……」

「テメェは……鬼神の義弟! お前さんが来るのを待っていたぜ!」

 カァチェンがチョウセイを妬んでいる最中、サコンは憎むべき小田原修司の義弟であるチョウセイの到着を待ち望んでいた。

 そしてサコンはチョウセイに右手の小刀で指し示した。

「見てみろよ、アレを……あんたの女房……鬼神の妹だ!」

 サコンが小刀で指し示した方には、縄で縛り付けられて地べたに座り込む衰弱し切った小田原有沙の姿が飛び込んできた。

「あ、有沙! おのれ、マン・サコン……! 私の妻に何をした!?」

「へへっ、今は何も……だが、あの鬼神の妹なら恨んでいる輩は多いはずだぜ。俺が指示しなくても、どこぞの誰かが何を仕出かすか……」

「っ……!」サコンの台詞に口元を歪ませるチョウセイ。

 そしてサコンは目で合図を送ると、廃墟内に篭城していた敵兵がそれに応答して衰弱した有沙を屋内に連れて行ってしまう。

「あ、有沙!」

 急いで妻・有沙の許へと駆け寄ろうとするチョウセイの前に、サコンが立ちはだかる。

「おいおい、俺をほったらかしで何処に行こうというんだい?」

「マン・サコン! 退け、道を開けて貰うぞ! 私は一刻も早く有沙に許しを請わねばならないのだ……!」

「そうは問屋が卸さないってんだ! お前ら聖龍隊に……いや、二次元人に味方する連中はミィチェン様の元に全員送り出してやる!」

「むむ! あの凶王ヤン・ミィチェンの側近だった貴様が、その凶王の元に我ら正義の使者を送り出そうとは片腹痛い! 邪魔立てするなら、貴殿も容赦はせんぞ!」

「しゃらくせえ! あの純粋だったミィチェン様に……俺が主、凶王ミィチェン様に歯向かってた輩は、一人残らず駆逐してやるッ!」

「ならば私は義王と名乗ろう! 悪しき者、マン・サコン……貴様の好き勝手にはさせんッ!」

 激しい言い合いで戦闘に突入してしまったチョウセイは、最初にサコンと対決していたカァチェンに声をかけた。

「シバ・カァチェンよ! 貴殿も一端の武人であるならば、正義の名の下、この悪の使者マン・サコンを共に討ち取ろうではないか!」

「はて……? このサコンは現実(いま)に絶望している過去(かつて)の私と同じ者……そんな者を悪と見定めてよいのだろうか……」

「むむむ……ッ! 融通の利かぬ者だな! このサコンは、あの悪名高い北朝鮮の残党! 悪であるに決まっているだろう! さあ! 私と共に悪を討ち取ろうではないか!」

「………………………………」

 カァチェンはチョウセイの判断基準に戸惑いを隠せなかったが、半ば強引にサコン討伐に加えられてしまう。

「さあ! 世の理、正義は勝つという事を悪に示すのだ!」

「は、はぁ…………」

 チョウセイは半ば強引にカァチェンを従えながら、彼と共にサコンと戦闘を開始した。

 

「無・言・即・殺! 悪と無駄口、削除なり!」

 チョウセイのキレの良い剣捌きがサコンを襲うが、サコンは卓越した脚力で軽々とチョウセイの頭上を跳び越えてかわしてしまう。

 そんなサコンにカァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)が襲い掛かる。

「おおっと」

 サコンはカァチェンが振るう逆刃薙(さかばなぎ)を寸前で回避し、二人と五分五分の戦いを繰り広げる。

「貴殿! 話に聞いていたよりも腕が立つな! 国連軍に身を置いていた時は、部下からも蔑められていたと聞いていたが……」

「……今の私は、少しだけですが変われたのです。明日に希望を抱かせてくれる二次元人、彼らの存在が私を大きく変化させてくれたのです……」

「ううむ、やはり兄者が信じた二次元人の力は偉大だな! これこそ明日に希望を照らす、正義の存在だ! ははは……」

「………………………………」

 チョウセイからの問い掛けに、最後は返す言葉が見付からずに無口になってしまうカァチェン。

 そんなカァチェンを間近で見て、サコンがチョウセイに言った。

「おい、あんた。その男、あんたのテンションについていけずに困っているだろうが。自分の価値観、押し付けるなよ」

「な、なんだと! 悪の権化が、正義を愚弄するとは許せん!」

 自分が信じる正義を愚弄されたと思われたチョウセイは、サコンに怒りの刃をぶつける。

 

 最初はチョウセイのテンションについていけずに困惑するばかりであったカァチェンであったが、彼は次第にチョウセイと共闘しつつサコンを追い詰めていった。

「覚悟しろ、有沙……私に果たせぬ誓いは無い! 例え兄者の……鬼神の血を引くお前の在処が、果て無き黄泉路であろうともだ……!」

 サコンを追い詰めつつ、チョウセイは妻・有沙に昔誓った共に在るという誓いを果たす為ならば、黄泉への路であろうと揺るがないと宣言する。

 一方のサコンは、チョウセイと以外に共闘できるカァチェンという、意外な二人組の猛攻を受け続け、苦戦していた。

「やべ……こんなだせーートコ、あの世のミィチェン様にゃ見せらんねっての……」

 そんなサコンを前に、彼をチョウセイと共に追い詰めているカァチェンが言葉を発する。

「私ではない……これも全て、小田原修司という混沌を生み出した者の精強なるが故」

 戦況という現実(いま)を動かしているのは、小田原修司という混沌に満ちた現世を作り出した者の強さゆえだと説くカァチェン。

 そして遂に、チョウセイとカァチェンは共闘してマン・サコンを打ち破った。

「く、くそ……! また二次元人に……奴等と徒党を組む連中に負けるの、か……!」

 打ち倒されたサコンを見て、カァチェンは敗北した彼に慈悲の言葉を掛ける。

「……私から言えるのは……頑張れ、と、私には不似合いな言葉だが……サコンよ、貴方は現実(いま)を生き抜くが良い」

 そしてサコンが膝を着いたのを目視したチョウセイは、カァチェンにこう言い残す。

「カァチェン殿! この場は貴殿に任せる! 廃墟内の敵は私が全て駆逐する故! では」

 そうカァチェンに言い残したチョウセイは、残党兵と人質達がいると思われる廃墟内に一人で突入した。

 

 

 

[再会する夫婦]

 

 それから数分後、現場にソウル市内を取り返した聖龍HEADが到着した。

「カァチェン! 無事か!?」

「バーンズ殿……はい、辛うじて……」

 駆け付けたメタルバード達にカァチェンは無事を伝える。

「カァチェン? あなた、さっきまでこのテロを扇動していたマン・サコンと闘っていたんじゃなかったの? サコンは何処に……」

「月の皇女、セーラームーン……これも私の不徳が故の……いえ、私の独断で申し訳ないのですが……マン・サコンは既に闘えぬ状態であり、不束ながらも逃避するのを黙認した次第であります……」

「逃がしたのか?」

「……はい……」

 セーラームーンとエンディミオンからの問い掛けに、カァチェンは包み隠さずに申し渡した。

 すると、このカァチェンの行為にメタルバードが考え込んだ後、彼に言った。

「そうか………………だが、それもお前があのサコンに何かを感じているからだろ、カァチェン。オレらもあのサコンに思う所はある。しばらく戦えない状態なら、今は放っておいても大丈夫だろう」

「バーンズ殿……申し訳ありません」

 自分達が滅ぼした北の国の残党という事実からサコンに対して余り強く出られないメタルバードたちHEADの許しを得て、カァチェンは平謝りするばかり。

 と、ここでそんなカァチェンにミラーガールが問い掛けてきた。

「カァチェン、チョウセイは今どこ!?」

「聖女殿……はい、チョウセイ殿は今し方、敵が根城にしている目前の廃墟に突入した次第で……」

「よし、僕らも向かおう!」

 ミラーガールからの問い掛けに答えるカァチェンの返事に、ジュピターキッドは聖龍HEADも後を追って進軍しようと提言する。

 そして聖龍HEADが急ぎ廃墟に突入しようと一歩踏み出した、その時。

 突如として廃墟である建物が爆発し、内部から凄まじい爆炎が噴き出した。

「うわっ!」

 突然の爆発にメタルバード達HEADは思わず顔を背けてしまう。

 そして瞬く間に爆発炎上していく廃墟の中から、紅き十文字の鮮烈なる光を切っ先から放ちながら、チョウセイが爆炎の中から飛び出してきた。

 威風堂々としたそのチョウセイの姿を目の当たりにして、聖龍HEADはこの爆発がチョウセイが起こしたものだと直感で悟った。

「信義不倒! サイ・チョウセイ! 正義、ここに極まり!!」

 まるで戦隊モノのアクションシーンの如く背後を爆炎で彩りながら己の信条を熱弁するチョウセイ。

 だが、そんなチョウセイの自信満々で廃墟を爆発で吹き飛ばした絶景に聖龍HEADは全員、口を大きく開けて愕然とするばかりだった。

 そして誇らしげに自分の正義の執行を完了して得意気になっているチョウセイに、メタルバードたちHEADが激しくツッコんだ。

「チョウセイ!! なに敵の根城を爆破させちゃってるんだ!? まだ人質とか中にいるだろうッ!!」

 このメタルバードたちのツッコミを受けたチョウセイは、思い出したかのように顔面蒼白と化す。

「あ…………あ、あああ……!!」

 全てを思い出したチョウセイは、今し方自分が必殺の技で爆破した燃え盛る廃墟に振り返って叫ぶ。

「あ、有沙……有沙ァッ!!」

 激しく妻の名を呼ぶチョウセイ。しかし燃え盛る廃墟から当然の如く人の声は聞こえてこない。

 チョウセイは途方に暮れ、その場に崩れ落ちてしまう。

 

 と、チョウセイや聖龍HEADが愕然としていた時。

「総長……総長!」

 燃え盛る廃墟とは別方向から女の声が聞こえてきた。

 皆がその声の方に一斉に顔を向けると、そこにいたのはスター・コマンドーの諜報員でもあるくノ一チームの日向ひまわり達だった。

「ひまわり! お前ら……!」

 メタルバードたちHEADが彼女達の突然の出現に驚いていると、ひまわりが自分達が保護していた人物達の事を伝えた。

「人質達は全員、私たちが前もって廃墟から救出しています! 無論、小田原有沙も無事ですが……」

「おおっ! 我が妻・有沙も、人質達も皆無事か! 良かった、流石は正義の守護者達だ……!」

「だ、だけど……」

 人質が全員、救出されていた事を知って安堵するチョウセイだが、そんな彼にひまわりは不安な表情を示す。

 早速救出された人質達に駆け寄るチョウセイ。しかし、ひまわり達によって救出された人質達の中に紛れている小田原有沙は疲労し切っていたのか、気を失っていたのだ。

「あ、有沙……有沙ッ!」

 気を失い、深い眠りに就く有沙を抱き寄せるチョウセイは、悲痛な面持ちを浮かべる。

「有沙よ……済まなかった」

 そしてチョウセイは深い後悔の念を抱きながら、皆が観ている目の前で、意識の無い有沙の唇にそっと自分の唇を重ねた。

 突然のキスシーンに驚愕する一同を前に、チョウセイから口付けされた有沙に変化が。

「……チョウ、セイ……?」

 なんと有沙が目を覚ましたのだ。

「有沙……有沙!」「チョウセイ……!」

 意識を取り戻した妻を見て歓喜するチョウセイに、自分を一途に愛してくれる夫チョウセイを前にして静かに喜ぶ有沙。

 二人は思わず大勢の人々に見守られているのを忘れてしまったのか、面前で抱き合った。

「約束、守ってくれてありがとう……いつまでも一緒に居ようね、チョウセイ」

「有沙……!」

 耳元で囁きかけてくれる有沙の言葉を耳に入れ、チョウセイも歓喜の余り感極まった。

 そんな二人の信愛を前にして、男達は笑顔になり、女達は二人の喜びに感化されたのか中には目から涙を零す者まで現われた。

 

 そんな夫婦で抱き合い、今まで以上に絆を高め合うチョウセイと有沙の二人を、遠くから双眼鏡で遠視するチョウセイの姉マリアの姿が在った。

「………………ふふ……一端の男も気取れるじゃない、チョウセイ」

 マリアは弟チョウセイが妻帯者として、妻である女との契りを守り抜いた情景に少しばかり弟を評価した。

 そして弟夫婦の再会を視認したマリアは、側に護衛役として置いている黒武士と共に国連総長・足正義輝の元へと帰還した。

 

 一方でサイ・チョウセイと小田原有沙の信愛という情景を目撃したシバ・カァチェンは我が身を震わせて動揺してた。

「これが……愛というものなのか? これ程までに、胸を……心を揺れ動かす感情……それが、愛?」

 カァチェンも、あの小田原修司と同じく他人からの愛情を感じられない人間。それ故に熱く情愛する二人を前に、動揺してしまってた。

 だが、同時にカァチェンは愛を欲するようにもなった。

 カァチェンはふと、ミラーガールの方に眼差しを向けて彼女を見詰めた。

 そしてカァチェンはミラーガールへの淡い想いをひしひしと感じていた。

 

 

 

[勝鬨の宴と微かな望み]

 

 聖龍隊とアジアの武将達の協力もあって、無事にテロリスト達から韓国ソウルを奪還した上に妻・有沙たち人質も救出できて大満足のサイ・チョウセイ。

 そんなチョウセイから、感謝の意も込めて、聖龍隊とアジアの武将達を招いて勝鬨の宴が開催された。

 誰もが、再び黒武士によって混沌の一途へと辿る暗い時代の中で微かな喜びを感じる様にチョウセイが開いてくれた宴を大いに満喫した。

 ガイア・スコーピオンが泥鰌掬いの音頭を踊って仲間達と楽しく騒いでいる中、宴を開催してくれたチョウセイ夫婦の元に新世代型達が料理を振舞ってくれてた。

「こいつは、俺たちが韓国で仕入れた食材を使って拵えた料理だ。俺たちがアンタ達にしてやれるのは、これぐらいだけど、味わってくれ!」

「おおっ、これはこれは! 見事な料理の数々! うむ、では遠慮なく食させてもらうぞ、新世代型よ!」

 新世代型の幸平創真たちから振舞われた料理に感激したチョウセイは、早速妻・有沙と共に創真たちが拵えた料理に手を伸ばし、食した。

「うむ、これは………………うむ、美味い! 美味いぞ、諸君!」

「おおっ、気に入ってくれた様だな」

 一口食べただけで、大変料理を気に入ってくれたチョウセイに創真たちも感激した。

 

 サイ・チョウセイが妻・有沙と共に幸平創真たちが作った料理を堪能している一方。

 戦いが終わり、変身を解いているアッコは夜の街を一人で歩いていた。

「ふぅ、流石にチョウセイが廃墟を爆破した時は焦ったわ。だけど、ひまわりちゃん達が前もって救出しててくれてホントに良かった」

 アッコは昼間の戦い終盤での出来事を思い返しながら、最悪の事態が免れた事に安堵していた。

 すると、そんな夜道を一人で歩くアッコに暗闇から声をかける者が。

「聖女殿……」

「うわっ! ……って、カァチェン? なんだ、暗闇からいきなり声かけて来るんだもん。吃驚しちゃったわ」

「………………………………」

 暗闇から前触れも無く声をかけてきたカァチェンに驚くアッコ。そんなアッコの反応を見て少し悲痛な面持ちを浮かべるカァチェン。

「それで? なにか私に用事があるの?」

 アッコは唐突に暗闇から話しかけてきたカァチェンに優しく問い返す。

「あ、あの……」

 カァチェンが己の胸の内をアッコに打ち明けようとしていると。

「わあっ……花火だ」

 ちょうどその時にソウル奪還戦の勝鬨を祝った花火が打ち上げられ、夜空に見事な花火が開花した。

「ふふふ、みんなすっかりお祭り気分ね。でも、こういうのも良いかも」

 すっかり祝福気分で花火まで打ち上げて勝利の喜びを表す韓国軍や仲間の聖龍隊に、アッコは思わず笑顔を零す。

「あ、あの……聖女殿」「?」

 そんな激しい花火の音に戸惑いながらも、カァチェンはアッコに自分の話を聞いてもらえるよう声をかける。

 そして夜空に打ち上げられる花火の音にかき消されながらも、カァチェンはしっかりと自分の想いをアッコに告白する。

 カァチェンからの嘘偽りも無い正直な想いを打ち明けられて、一時ばかし茫然としてしまうアッコ。

 そして夜空に打ち上げられる花火がパァッと空の闇に溶ける様に消えていく中、アッコは目を丸くしながら勇気を出して告白してくれたカァチェンに言った。

「カァチェン、あなた……」「………………………………」

 カァチェンが抱いていた自分への率直な想い、その想いを包み隠さず打ち明けた彼の勇気ある告白を受けて、アッコは笑顔で話し出した。

「……ありがとう、カァチェン」

「!?」

「まさかあなたが、此処まで自分の想いを人に打ち明けられる様になっていたなんて驚いたわ。ホント、成長したわねカァチェン」

「………………!」

 最初出会った当初は、自分の想いを人に話し出す事が難しかったカァチェンの成長を心から喜ぶアッコ。

 そしてカァチェンの告白に対して、アッコは返事を返した。

「だけど…………ごめんね、カァチェン。私はまだ……ううん、これからもずっと修司を想い続けていくと想うわ。それが私の選んだ運命だから」

「運命……!?」

 アッコの返答に静かに一驚するカァチェンに、アッコは語り明かす。

「そう、私が選んだ運命……小田原修司という、私たち聖龍隊と共に平和を心から望んでいた修司を……全ての人々が穏やかに平和に過ごせる未来を夢見ていた修司を、私は心の底から愛したの。そんな修司を忘れないって事は、聖龍隊の夢である本当の平和を忘れないって事に繋がるし」

「聖女……」

「いいえ、それ以前に……私自身、修司を忘れたくはないの」

 アッコの修司への想いを知って、カァチェンは衝撃を受ける。

 そして静かに修司への想いを告白したアッコは、穏やかな笑みをカァチェンに向けて話した。

「へへ、ごめんね。せっかく告白してくれたのに、こんな辛気臭い話しちゃって。でも安心して。私は私で、もう平気だから。ありがとね、カァチェン。年上の私に、そんな素敵な想いを告白してくれて」

 アッコはカァチェンの告白を断ったお詫びを言いながらも、同時に彼を励ました。

「でも忘れないでねカァチェン。その想いはあなただけの素敵な自分の気持ちなんだから。その想いを……愛を忘れず、未来を生きる糧として大切にしてちょうだいね」

「アッコ、殿……」

 カァチェンは自然と聖女と呼んでいたのが、アッコと名前で呼ぶ様になっていた。

「あ、それじゃ私は一先ず先に聖龍隊の方に戻っているから、カァチェンも後から戻ってきなさい。さあってと、バーンズたち、私の分のお酒は残してくれているのかしらね」

 そうカァチェンに伝えると、アッコは好物の酒がバーンズら仲間達に飲み尽くされていないか心配しながら駆け出した。

 

 一人、その場に残されたカァチェンには空虚な風が吹く中で思わず立ち尽くしていた。

 すると、そんなカァチェンのアッコへの告白を、たまたま近くを通り過ぎた際に目撃した人物達がそっと歩み寄ってきてはカァチェンの肩を叩いた。

「?」

 自分の肩を軽く叩かれ、カァチェンが振り向くと其処には笑顔の赤塚組の幹部衆が居た。

「見てたぜ、今の」「………………」

 大将に言われ、固まってしまうカァチェン。

「あ、あーーっと……そう言う事ね? 横恋慕? へーー……ちょっと安心したぜ、人間臭いトコもあってよ」

 大将はカァチェンがアッコに抱いていた想いを知って、辛苦臭かったカァチェンが少しばかし人間臭い一面があった事に微かな喜びと同感を抱いた。

 そしてカァチェンの肩を叩いた大将は、半ば強制的にカァチェンの肩に自分の腕を組ませると、そのまま赤塚組はカァチェンを連れて行ってしまった。

 赤塚組は、自分達が陣取った宴の席で失恋したカァチェンを慰めようと彼にお酒を振舞った。

「さささ、グイっと飲みな、グイっと」

「………………………………」

 アツシから持たされた器に注がれた酒を飲み干す様に促されるカァチェンに、大将が語り出す。

「それにしてもカァチェン……お前も俺と同じく玉砕しちまったか。まあ、武人としての強さなら俺やお前よりも断然、修司の方が魅力的だけどな」

 顔を真っ赤にしながらカァチェンを励まし出す大将。

「気にするな。アッコは自分に告白した奴をバカにする様な女じゃねえ。それにアッコ自身も言っていただろ。他人に自分の想いを告白できるまでに成長してるって。アッコはそこんところを評価してくれてるじゃねえか」

「………………………………」

「アッコ自身も、今は生死不明な修司の事を思い続けているのかもしれねえ。黒武士に殺されたかどうか、不明な修司の事をよ。……まあ、またアッコの受け売りだが、お前さんがアッコに打ち明けた愛って奴を未来への生きる糧にするのは良い傾向だと俺たちも思うぜ」

 酔い痴れる大将から激励の言葉を賜ったカァチェンは、静かに自分の今の心境を語り出した。

「所詮、こうなるだろうと思ってはいた……ただ、もう一度だけ……ささやかな夢を見たかったんだ……」

「か、カァチェン……」

 自分の想いが叶わなかった実情に絶望視するカァチェンを前に、夏秋子が悲愴な顔を浮かべるとカァチェンは続けて述べた。

「私はただ……微かな望みを……愛という名の希望を欲していただけ。だが、勇気を出しても未だに聖女の鬼神への思いは消えてはいなかった……私の所業は、ただ己を辱めるだけの結末に終わってしまった……」

 玉砕してしまった告白を、己を辱めるだけの行為と結末だと自分を責めるカァチェンに大将が元気付ける。

「そんな事無いぜ、カァチェン! 俺さまも昔は何度も何度もアッコに自分の想いを、愛を告白した! そして何度も玉砕した! でも俺はめげずにアッコに愛を打ち明けていった、例えアッコが修司を好きだと知っていてもな!」

 大将のそんな昔話を聞かされ、カァチェンは何ゆえ大将が玉砕すると解っている告白を続けたのか訊ねた。

「何ゆえ、そんな自ら絶望に追い込む行為を貴方は行えたのですか……?」

 すると大将はカァチェンに勇ましく返答した。

「何も俺は自分を絶望に追い込む為に告白していたんじゃねえ。例えアッコが他の男を好きだったとしても、俺の嘘偽りの無い想いをアッコにぶつけ続ける! それが俺の、赤塚大作様の生き様ってもんよ」

「生き様……!」「そうよッ!」

 例え己の想いが叶わずとも、嘘偽りのない想いを人に告白するのが自分の生き様だと力説する大将の言葉に、カァチェンは激しく揺さ振られた。

 叶わずとも、自分が抱いた思いを相手に打ち明けるのは、勇気が要る事だろうし恥ずかしい事ではない。そう大将から学ばされたカァチェン。

 

 そして大将たち赤塚組から励まされたカァチェンも、彼らと共に細々と酒を飲み出して宴に参加し始めた時。

 大将は人知れず、己の心中で思いに耽っていた。

(まさか最初は、味方からも欠かれカァチェンとバカにされていた武将がアッコに惚れて愛を告白するまでに成長するとは驚きだぜ。カァチェンも修司同様、他人からの愛情を感じにくい障害者だと言うのによ)

 あの小田原修司と同様、愛情を感じにくいと言われていた障害者のカァチェンが、他人であるアッコに想いを告白するまでに成長した顛末に驚きながらも感心する大将。

 しかし同時に、大将は心に暗雲を曇らせていた。

(だけどアッコは、未だに修司を思い続けているのか……黒武士の所為で生死不明だって言うのによ)

 大将は未だに生死不明である修司の事を思った。

 

(修司……お前は本当に、あの黒武士に殺されたのか?)

 

 

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