聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 創生の章【盟友の流星と強襲の黒武士】

[あらすじ]

 

 姉マリアより妻・有沙との愛を優先する事こそ大事なのだと気付かされた韓国将軍サイ・チョウセイ。

 チョウセイは戦乱が起きてからというもの、扱いを疎かにしていた妻・有沙に手土産を買おうと新世代型の女子達と買い物していた。

 だが、そこに韓国軍兵士が駆けつけて来て、チョウセイ達に現在韓国の首都ソウルが反日思想のテロリスト達によって制圧され、妻である有沙も軍上層部の身内共々連れて行かれた経緯を知る。

 全ては祖国や妻よりも、姉であるマリアの方に気が向いていた自分の行為が元凶だと自身を責めるチョウセイ。

 だが、そんなチョウセイに聖龍HEADがハッパをかけて、共にソウルを奪還した上で有沙たち人質も救出しようと背中を押す。

 そして聖龍隊、更にはアジアの名立たる武将達の加勢を得て、チョウセイ率いる韓国軍はソウルへと舞い戻る。

 ソウルはすっかり敵方に蹂躙されていたが、そんな最中台湾の国将軍シバ・カァチェンはこの戦場にあの北の国の凶王ヤン・ミィチェンの側近であったマン・サコンの気配を感じる。

 このソウルを蹂躙する反日思想のテロリスト達を裏で扇動していたのは、マン・サコンだったのだ。

 チョウセイ達はソウルを蹂躙する敵を倒しながら、人質が閉じ込められている敵方が拠点に使用している廃墟へと直行した。

 そして廃墟前で、チョウセイはマン・サコンと一騎打ちに乗じているシバ・カァチェンと鉢合わせ。

 チョウセイはカァチェンと共闘してサコンを打ち破り、一人妻・有沙が連れて行かれた廃墟へと進攻する。

 その最中、チョウセイは自身の正義に酔い痴れたのか、はたまた勢い余ってか、己の必殺技で廃墟を爆発で吹き飛ばしてしまう。

 愕然とするチョウセイ達の前に、チョウセイが爆発させる前に聖龍隊の日向ひまわり達によって救出された小田原有沙達が。

 気を失う有沙に、チョウセイは今までの詫びと謝罪の意味で、有沙に口付けする。

 すると有沙は目を覚まし、チョウセイと熱く抱擁し合った。

 そんな固く結ばれた夫婦の情愛を目撃したカァチェンは、己の中に眠ってた愛を、そして何よりも愛を求める衝動に駆られる。

 それからその晩は勝鬨を祝って、宴が披露されたが、夜空に無数の花火が打ち上げられる中、カァチェンは己の想いを包み隠さず聖女ミラーガールであるアッコに届ける。

 カァチェンの想いに、アッコは感謝を述べつつも、自分は黒武士によって生死不明な修司を忘れる事ができないと答えた。

 そんな失恋したカァチェンに、同じく昔幼い頃からアッコに告白しては玉砕し続けた赤塚組の頭領、赤塚大作こと大将に励まされる事に。

 しかし大将はカァチェンを励ましつつも、同時に心中では生死不明になっている修司は本当はどうなっているのか。そればかり考えていた。

 

 そんな勝鬨の宴の晩が過ぎて、翌日の事。

 朝方、太陽が昇りかけた清々しい空に三つの流れ星が落ちてきた。

 そして太陽が皆の頭上に昇った時間帯。聖龍隊の仮拠点基地に三人の訪問者が足を運んでいた。

「おおっ、お前ら……久しぶりだな!」

 聖龍隊総長バーンズは三人を見てかなり舞い上がる。

 一方で三人は、バーンズたち聖龍HEADを前に跪き、頭を下げていた。

「懐かしいね、君達が地球にやって来るなんて……もう十年以上は経ってるよ?」

 参謀総長ジュニアの言葉に、一人の黒髪の者が顔を上げてジュニアに微笑む。

「ふふふ、そうね。あなたが私たちを、あの日こてんぱんに痛め付けてくれてから、確かに月日は過ぎたわね」

「はは、それを言わないでよ……ははは」

 黒髪の者に言われ、ジュニアは苦笑いを浮かべる。

「でも、どうして皆さん揃って地球に……?」

「懐かしいけど、地球や異世界の情勢が悪い時にやって来たって事は、まさか……」

 アプリコットやアッコが疑問に思っていると、今度は茶髪の者が顔を上げて答えた。

「ふっ、流石は修司が不在になってから聖龍隊の副長を任せられる様になって来ただけあるね、ミラーガール……そう、私たちが遠路遥々、地球に飛来してきたのは……国連総長・足正義輝と黒武士による現情勢の混乱、それを止める為にです」

 すると茶髪の者に続き、最後に銀髪の者が顔を上げて聖龍HEADに申し上げた。

「……って、ゆーーか。そろそろこんな堅苦しい挨拶やめにしない? 何だか肩が凝って来ちゃったよ」

「ヒーラーの言うとおりだな。オレ達は昔ながらの顔なじみ。今さら堅苦しい挨拶はお門違いってもんだな」

 銀髪の者の発言に、バーンズは穏やかな笑顔で返事した。

 

 すると其処に。聖龍隊に訪問者ありと聞き付けた流星の精鋭スター・コマンドーが、新世代型達を同行させて挨拶に来た。

「総長、HEAD! 何やら客人の様ですが……?」

「おおっ、ジュン! それに新世代型の連中まで。コッチに来い、会わせたいと思ってたところだ」

 順一たちスター・コマンドーと新世代型達を見て、バーンズが会わせたいとして手招きした。

 三人の来訪者は、新世代型と聞いてスグに彼らの方に振り向いた。鬼神・小田原修司のクローンという事で、多大な関心があったのだろう。

 だが、そんな来訪者である三人の女性の不安げな表情で見詰められた新世代型達は気持ちが同調してしまう。

「! 総長、もしや……この三人の女性たちは……!?」

 その一方で、順一たちスター・コマンドーは客人である三人の女性の容姿を見て顔色を一変させた。

 そんな順一達にバーンズは答えた。

「おお! かつてオレ達と戦いを乗り越えてきた戦友……スターライツの三人だ!」

 バーンズの返答にスター・コマンドー一同が驚愕している最中、紹介に仰せ付かったスターライツの三人は順一達に挨拶した。

「ふふ、始めまして村田順一君。君達の事は私たちの星でもかなり有名よ」

「つい最近まで聖龍隊を離反してまで、自分達が悪政だと思っている排除法を世界から無くそうとした聖龍隊の精鋭たち……」

「私たちスターライツも及ばせながら、対黒武士との決戦に助太刀するわ!」

 そう挨拶するのは、黒髪のスターファイターに茶髪のスターメイカー、そして銀髪のスターヒーラーの三人。

 すると三人から挨拶を述べられたスター・コマンドーは驚愕し切った。

「ええ!? スターライツって……!!」

「かつて絶世を極めたアイドルユニット、スリーライツ……!」

「が、その実体は独特のトランスフォーメーション能力で男に変身していた三人組の女性!」

「その昔、セーラー戦士たちと共闘した事も数知れず……!」

「闇人が仕掛けた大決戦の時も、当時の聖龍隊に助太刀に加わった流星の美少女戦士!」

 スター・コマンドーの誰もが愕然とし、かつて闇人が仕掛けた聖龍隊初の大戦でも活躍した美少女戦士を前に、目と口を大きく開けて慄いた。

 

 

 

[流星の戦士VS心照輝星]

 

「こ、これは凄い! かつて名を轟かせた流星の戦士達が勢揃いするとは……!!」

 小田原修司が執筆した「聖龍伝説」を愛読している順一にとっては、その小説にも登場したスターライツの三人を前に感激して目を輝かせていた。

 すると今自分たちの前にいる三人組が、かつてアイドルとしても聖龍隊と共闘した戦士としても有名なスターライツだと知って、新世代型達も騒然とした。

「す、スターライツ!? 聖龍伝説にも登場した、あの……!」

「表向きは絶世の美男アイドルとして……その裏では宇宙より来訪した美少女戦士として活躍した、あの……!」

「オオッ、こいつはすげェぜ! 歴史にも残った、あのスターライツが目の前にいるとはよォ!」

 彩瀬なるに氷室聖(ひむろひじり)、そして黒川冷の三人が騒いでいると、スターファイターが騒然としている新世代型に言った。

「あなた達ね……修司の遺伝子に似せられて生み出されたという新世代型二次元人は………………あなた達の噂は、私たちの故郷にも響いているわ」

『!』

 スターファイターから手厳しい言葉を投げ掛けられ、衝撃を受ける新世代型たち。

「ふぁ、ファイター、そんなにみんなの事悪く言わないでよ。みんな、あの修司君のクローンって事にショックを受けているんだから……」

「ごめんなさいね、セーラームーン。でも、足正義輝に黒武士にと……新世代型の悪評は宇宙にも広がっているのよ」

 新世代型二次元人も事実には衝撃を受けているとセーラームーンが悲痛な面持ちで話すが、ファイターは謝罪しつつも事実を付き返した。

 

 すると此処でスター・コマンドー一同が、スターライツに歩み寄ると彼女達に声をかけた。

「スターライツの方々!」

「ん? なに、順一くん。いいえ、ここはうさぎ達と同じ様にジュンと呼ばせてもらおうかしら?」

 威勢よく声をかける順一に、ファイターが問い返すと順一たちスター・コマンドーは皆、勇ましい顔立ちで仁王立ちする。

「はい! 僕たちは前総長、小田原修司によってスター、すなわち流星の称号を与えて貰いました! しかし、僕たちが聖龍隊に入隊する以前から、現在のHEADであるセーラー戦士はもちろん、あの聖龍隊初の大戦である闇人との決戦にで参戦した貴女方と同じ流星の称号を……名を自称しているのは実に申し訳なく、恥ずかしい事であります!」

「「「………………」」」

 順一の話を黙然と聞き入れるスターライツの三人。

 すると次の瞬間、順一たちスター・コマンドーは皆、突然白装束へと衣服を変えると正座してスターライツに申し開いた。

「なので、貴女方の流星を名乗ってしまった報いを拭う為、今ここで一同揃って切腹する所存であります」

 そして順一たちスター・コマンドー一同が切腹しようとした矢先、慌ててバーンズたちHEADが止めに入る。

「やーーーーめーーーーろーーーーッ!!」

 慌てて順一達の切羽詰った行動を止めに入る聖龍HEADを目の当たりにし、新世代型達は皆揃って愕然としているとスターファイターに変化が。

「……ふふ……はははははっ。いやぁ、まさか其処まで侍魂を持ってる修司に感化されていたとはね。驚きついでに笑っちゃうよ、はは……」

「笑ってる場合かっ!」

 切腹しようとする順一達を見て、かつての修司を思い出すファイター達スターライツの三人が笑顔になっていると、そんな順一達を制止するバーンズが強く言い返す。

 

 そして聖龍HEADは新世代型やスターライツの見ている前で、なんとか順一たちスター・コマンドーの切腹を宥めて制止させる事に至った。

「はぁ、はぁ……お、同じ流星だからって切腹はやりすぎ!」

 息を切らしながら切腹をやめたスター・コマンドーに注意するアッコ。

 そんなHEADと同じく息を切らすスター・コマンドーを前に、スターファイターが順一に声をかける。

「ジュン君」

「はぁ、はぁ……な、なんでしょうか?」

「もし貴方が大丈夫なら、私たち相手に戦ってみない?」

「え、えぇ!? ど、どうしてまた……」

 順一も、それを傍で聞いていた新世代型達も驚いているとファイターは答えた。

「あなたを……いいえ、あなた達を見ていると思い出しちゃうの。全ての業を背負うほど責任感が強く、周りの人々の為ならば潔く汚れ役も請け負った、あの修司と君が重なって……黒武士と対決する前に、ちょっと確かめて置こうかなって。何より今の君を見ていると、修司みたいに全てを背負い切って潰れてしまう様な気がしてならないのよ」

 ファイターからの切実な訴えを聞いて、順一は表情を一変させて険しい真顔で返事する。

「……そうですか……流石は流星の美少女戦士、全てお見通しという事ですね。良いでしょう」

 すると順一は両拳を前に突き出す様に身構えると、ファイター/メイカー/ヒーラーの三人と戦う姿勢を示した。

「僕は確かに、師である小田原修司の様に全てを背負ってしまっているのかもしれない。けれど! 僕が……いや僕たちが背負わなければいけない業が、罪があるのもまた事実!」

 そして村田順一は、スターライツの三人と仕合を開始した。

「それがし、村田順一! お相手お願い仕る!!」

 

心照輝星(しんしょうきせい) 村田順一 登場

 

 両拳に装着している黄金色の装具を煌びやかせ、順一はスターライツの三人と真っ向からぶつかっていった。

「凄まじい覇気と気迫ね……だてにあの修司から鍛えられただけの事はあるわ」

 順一が放つ凄まじい拳からの衝撃波を受けながらも、踏ん張って態勢を維持するファイター達。

 そんな女性三人を相手にも、順一は失礼の無い様に決して手を抜かず本気で挑んでいった。

 真剣な表情で挑んでくる順一の顔を見て、ファイターは思った事を口にした。

「その顔、どことなく修司に似ているわね……全ての業を、罪を背負っても、他の人々を幸せに導きたいという強い精神力。それだけなら、さぞや立派と言いたい所だけど……全てを背負おうとするその意気込みまでは、感心できないわね」

 順一の険しい顔付きが、どこなく小田原修司に似ている風貌から、ファイターは全てを背負い込む意気込みだった修司と同等の順一の現在に感心できないと酷評する。

 そんな順一が力強く突き出す拳を、ファイターは両手を使い巧みに受け止め防ぎ切り、容易く流れる様にかわしていく。

 ファイターに続いて順一は、メイカーやヒーラーにも拳を打ち込もうと思う存分腕を振るうが、彼女達もファイター同様に流れる様に回避して直撃を免れる。

 しかし順一の体力が尽きる事は無く、彼はファイター達を追い詰めようと真剣な眼差しで迎え撃つ。

 スターライツの攻撃を、全て拳で弾き返していく順一は、空かさず彼女達に殴り掛かるがファイター達はひらりひらりと難なく避ける。

「あなたの瞳を見ていると、修司を自然と思い出す……全ての責任を負いかねない、危なっかしい修司を」

 順一の猛攻を受け止めるファイターは、順一の瞳を見詰めながら哀しそうに述べる。

 そして一時、順一の猛攻をかわしながら彼の瞳を見詰めたファイターは、順一の決意を察する。

「迷いはないみたいね……でもそれが、一番の心配の種でもあるわ」

 迷いを捨て去った順一の決意を知りながらも、それがかつての修司を彷彿とさせる決意である事から心配だと説くファイター。

 そんなファイター達スターライツに、順一は辛い心痛も悲痛も抱えたような面魂で返答した。

「人の罪も、業も……嘆きも悲しみも、僕が背負う!」

 次の瞬間、順一が振るった拳を防御し切れず、ファイターは容易く順一の拳に吹き飛ばされる。

「ファイター!」「!」

 メイカーもヒーラーも吹き飛ばされるファイターを見て一驚するが、そんな彼女達にも順一は追撃の手を緩めずに、果敢に拳で威圧しては吹っ飛ばしていく。

 

「はぁ、はぁ……」

 スターライツとの激しい戦いに息を切らす順一。

 そんな順一と攻防を繰り広げ、泥まみれになりながらも立ち上がるスターライツの三人。

 拳を構えて今なお臨戦態勢を維持する順一を、ファイター達は哀しげな表情で見詰める。

 そして次の瞬間、順一とスターライツは一斉に駆け出して再び激しくぶつかり合おうとした。

 が「其処までだ!」と、バーンズがぶつかり合おうとする四人に待ったを掛ける。

 バーンズの制止で、拳と拳をぶつけ合おうとしていた四名はピタリと動きを止め、そして向かい合った。

「ジュンもファイター達も……どっちも少しはスッキリできたんじゃないのか?」

 バーンズが質問すると、順一とファイターは答えた。

「はい! 少しは、いい腕慣らしにはなりました!」

「私は、未だに少し理解に苦しむところがあるわ……修司と同じ茨の道を突き進もうと決意する、この子が抱える苦心に」

 伝説に名を遺したスターライツと一戦交えて良い気分転換になったと述べる順一に対し、ファイター達はそんな順一が抱え込む闇という名の苦心に理解できずにいた。

 

 

 

[語られる鬼神の夢]

 

 流星の美少女戦士スターライツと一戦交えた村田順一。

 しかし心身ともに激しくぶつかり合い、仕合を終えた四人だが、スターライツは未だに順一の全ての業や人の痛みを背負い込むという、かつての小田原修司に酷似した点に不安を隠せなかった。

「スターライツの皆さん! 僕は貴女達が知り得ている以上に、多くの罪をこの拳の上に積み重ねてきました。この手で葬った無数の命、そして業……それら全ての罪を一身に背負い、次代を担う武人として、わが師・小田原修司以上に多くの人々を安寧へと導きたいんです! その為に、かつては聖龍隊を離反するまでに至ってしまった事もありました。ですが今は、自分達だけでは新たな世代を次世代へ導けないと諭されたからこそ、再び聖龍隊でHEADの皆さん方と共闘する決意に出戻った次第なんです」

 スターライツに、自分達が如何に昔から多くの命を摘み取り、多くの罪を重ねてきたからこそ師である小田原修司以上に業を背負う覚悟なんだと説く順一だが、そんな順一にファイターは言い返した。

「だからこそ君は……この世の多くの人々の心を照らせる明星として、笑顔を絶やさず、常に笑顔で人々と接している訳なの?」

「そうです!」

 ファイターからの質問に順一は答えるのだが、その返答にファイターは呆れて言い切ってしまう。

「あなたは笑顔を絶やさないと言うの? 笑ってばっかじゃ、逆に疲れちゃうだけよ」

 これに対して順一は穏やかな笑みを浮かべて述べ返した。

「それでも良いです。僕たちが笑顔を忘れず、人々の荒んだ心を照らし続ける流星という名の明星である限り、僕たちは決して歩みを止める事はないのです」

 この順一の説明を聞いたファイターは、「ふぅ」と溜息を衝くと順一に話し出した。

「……修司でも背負いきれない人の不幸を、あなたやあなたの仲間であるスター・コマンドーが背負い切れるとでも思ってる訳? 背負い続ければ、いづれ修司の様に心を壊す事にもなるわよ」

 ファイターは修司が心の風邪「鬱」を患った時の事を語った。修司は全ての人々の不幸や苦心を取り除こうと、一人で全てを背負い込んでしまった重責から鬱に発症したのだと言いたかったのだ。

 そんなファイターの問い掛けに順一は険しい表情で返事した。

「確かに……修司さんの様に、全ての人々に平等な安寧を与えようとすれば、いづれは心を壊してしまう可能性もあるかもしれません。しかし! そんな修司さんの思いを……いいや、夢を次の世代である僕たちが受け継ぎ、叶えなければならないんです!」

 すると順一の話を聞いたヒーラーが、新世代型達に目を向けて順一に言った。

「修司の夢ねぇ……その夢を次の世代に引き継がせたいなら、修司のクローンである新世代型にも引き継がせたらどう?」

 このヒーラーの発言に、聖龍HEADと共に順一との仕合を傍観していた新世代型二次元人達は驚愕した。

「おっ、俺たちが小田原修司の夢を引き継ぐ!?」

 燃堂力が驚きの余り叫んでしまうと、自分達の始祖である小田原修司の夢について真鍋義久が挙手して問い掛けてきた。

「小田原修司の夢って……なんなんだよ? 俺たち二次元人の存在を保守する事か?」

 この真鍋の質問に、他の新世代型達も注目していると、メイカーが真鍋の疑問に答え始めた。

「修司の夢は、正直普通の人々が抱こうとも思わない……壮大で、途方も無い夢だったわ」

「ど、どんな夢なの?」

 新世代型の蓮城寺べるが思わず訊ねると、メイカーは続けて語った。

「普通の人々も、英雄も……万民全てが平等に、穏やかに過ごせる世の中。すなわち、究極にして完璧な平和な世界です」

「究極にして、完璧な平和……!?」

 新世代型の誰もが、メイカーが語った言葉の意味をスグには理解できず、困惑していると其処にバーンズがメイカーの話に付け加えた。

「修司はな、オレ達の様な、それこそ正真正銘の正義の味方とか、英雄とか、はたまた人命や人心を大切にする輩が、心の底から穏やかに日々を過ごせる時代と世界を築きたかったんだ」

「心の底から穏やかに、日々を過ごせる……そんな世の中を……?」

 話を聞いた直枝理樹(なおえりき)が呟くと、バーンズは聖龍HEADや村田順一そしてスターライツの面々が神妙な面持ちの中で語り出した。

 

「障害者の修司だったから思い付いたのか、はたまた常日頃から激しい戦闘を繰り返していたオレ達を傍で見ていたから夢見る様になったのかは、当の修司本人も解らなかったが……修司はそれこそ人心や人命を蔑ろにする、差別的な存在がいない平和な世の中を……それこそ誰にでも平等で、市民だろうと英雄だろうと戦士だろうと穏やかに毎日を過ごせる。そんな完璧以上に究極の平和な世の中を夢見る様になったのよ。能力者だろうが障害者だろうが、誰もが平等に共存でき、同じ時と場所の中で共に平和に過ごせる……そんな荒唐無稽に近い夢をな。正直、最強になりたいとか、そんな単純な夢だった方が何倍も楽なんじゃないかとオレや他のHEADが何度思ったことだか」

「荒唐無稽に近いって……」

 

 バーンズの夢語りを聞いて、琴浦春香が問い返すとバーンズは答えた。

「障害者はもちろん、今の時代は能力者や二次元人ってだけで差別や迫害があるのを、お前らも周知しているだろ」

 このバーンズの返答に、新世代型達は口を噤んでしまう。

 すると、この周りの空気が険悪になった状況で聖龍隊副長アッコが皆に呼びかけた。

 

「確かに未だに私たちの様な能力者や二次元人はもちろん、悲しいけど障害者にも差別の目が向けられているのは事実よ。でも、そんな現実を体感してきた修司だからこそ、差別や迫害を心から嫌い、どんな人々も平等に生きていける社会を……ううん、誰もが平和に生きていける世界を夢見てきたの。修司は、そんな世界を実現する為にも聖龍隊という組織を結成し、差別や迫害に晒される能力者を聖龍隊に引き込む形で護ろうともしてきた。そんな聖龍隊を維持する為に、修司は日本の天皇家やライフル協会それにバチカン市国という強大な権力に媚を売ってきたのよ。そして最終的には国連の人間兵器として自分を売り渡した暴挙まで出た。修司の今までの半生は、全て私たち聖龍隊も願っている修司の夢を実現させる為の第一歩だったのよ」

 

 アッコが語った小田原修司の夢に新世代型達は圧倒された。

 障害者ゆえに、迫害や差別を心から嫌った小田原修司は、誰もが平等に穏やかに過ごせる完璧かつ究極の夢を実現させる為に聖龍隊という組織を設立し、更には組織維持の為に強大な権力に媚を売り、最終的には国連に自らを人間兵器として売り渡した暴挙に出たというのだ。

 しかし、そんな壮大かつ大いなる鬼神の夢を知らされて、そんな夢をいくら鬼神のクローンとはいえ自分達が受け継ぎ、引き継ぐ事は叶うのかと新世代型達は思い詰めた。

 と、そんな迷いに迷う新世代型たちを前にしたヒーラーが

「まあ、修司のクローンって言う宿命を未だに背負い切れてない君たちに、そこまで期待してないから安心してよ。私たちはただ、君等が黒武士やあの何百人も虐殺した新世党みたいにならないか見張っているのが本音だから」

「ヒーラー! 言い過ぎですよ」

 新世代型に出すぎた口を言うヒーラーを、メイカーが注意する。

 

 バーンズやアッコ、そしてスターライツの面々が語り終わった後、茫然としている新世代型達に順一が声をかける。

「君達は深く考えなくても良いよ。これは先代の聖龍隊総長・小田原修司の夢であって、君達の夢ではない。修司さんの夢は、既に聖龍HEADの方々や僕たちスター・コマンドーなどの隊士に引き継がれている。君達は君達、僕らは僕らで違う夢を追っていけばいいだけさ」

 そう新世代型に心労を積み重ねないように言い聞かせる順一であったが、新世代型達は各々で思い留まった。

 

 自分達の始祖・小田原修司が夢見ていた、迫害や差別の無い平等で穏やかな完全完璧な平和な世。

 果たして小田原修司のクローンであり申し子である自分たち新世代型は、小田原修司が想い、そして現在も多くの聖龍隊士に受け継がれている修司の夢について、どう行動すべきなのか思い悩んだ。

 差別も迫害も無い、誰もが平等に穏やかに過ごせる平和な世は果たして。

 

 

 

[集結するかつての盟友達]

 

 スターライツが加勢に駆けつけて来てくれてから数日の間。

 聖龍隊駐屯地には彼女たち以外のかつての盟友が、黒武士との決戦を聞き付けて駆け付けてきてくれてた。

 聖龍HEADは、かつてあの闇人との決戦に馳せ参じてくれた当時の盟友達と共に宴を開いた。

「いやあ~~、こうも懐かしい面々と久々に顔を合わせられるとは……もう鬼に金棒、修司に凶器だなこりゃ」

「ははは、バーンズ。聖龍隊の総長になったんだし、少しは総長らしい振る舞いをしたらどうだい?」

 酒をあおり、べらんべらんに酔っ払うバーンズにクイーン・アースのカノンが聖龍隊総長としての振る舞いを注意する。

「しかし、あれですね……当初は死闘を繰り広げるほど戦い合った面子なのに、今ではこうして宴に興じるまでに親睦が深まるとは。ホントに人間の縁って不思議なものだ」

「そうよそうよゼラ! あれから貴方も成長して、少しは人間の愛って言うのを学んだでしょう? ヒック」

 当初は死闘を展開するほど激しく戦い合った敵同士であった間柄が、今では同じ場所で酒を飲み合うまでに親睦が深まった人の縁に不思議を感じるプリンスゼラに、酒豪のアッコが問い掛ける。

「あ、アッコちゃん、いえ、ミラーガールって……今では、こんなにお酒に強い女の子に成長しちゃったんだね」

「作者の赤塚不二夫と同じく、酒豪に成長しちゃったんだと」

「「「うんうん」」」

 そんな顔を赤くして酒を飲み明かすアッコを前に、かつての黒天狗党だった銀天狗が呆然としていると、ゴールデン天狗にからくり天狗が説明し、ジャスミン・タピオカ・ライチのニイハオ姉妹も呆れて頷くばかり。

「もういつ黒武士との戦いが勃発するか分からないけど、今は久々の再会を喜び合おうじゃないか。ささ、三人も飲んで飲んで」

「ジュニア君の言うとおりだよ、みんな! 結構美味しいよ、このお酒」

 ジュニアや獅堂光に勧められ、その場の空気に合わせて酒を飲み始めるクレフ・フェリオ・ランティスの三人。

 

 そんな宴を開いて、各々が美酒に酔い痴れている現場を遠くから新世代型二次元人たちが傍観していていた。

「す、スゲェ……! 全員、聖龍伝説に登場した事のあるキャラばかりだ」

「前日に来たスターライツにクイーン・アースのカノン、パンサークローだったプリンスゼラに新生黒天狗党、そして異世界セフィーロでも活躍しているクレフ、フェリオ、ランティス……! 全員、名高き二次元人たちだ……!!」

 宴にHEADと共に参加する名立たる二次元人たちを遠目に、幸平創真やタクミ・アルディーニ達は騒然としていた。

 と、そんな遠くから自分達の宴を眺めている新世代型に気付いたのか、銀天狗がバーンズたちHEADに問い掛けた。

「ん? バーンズ。あの子達は一体……」

「ああ、あいつらが例の新世代型さ。まだ自分達の宿命を受け入れられず、困惑しているのよ」

「あれが新世代型二次元人……小田原修司の遺伝子をモデルに生み出された、修司のクローンといっても過言ではない……」

 バーンズの説明を聞いて、ゼラはかつて敵だった自分達を幾度と無く追い詰めていたあの小田原修司のクローンに近い新世代型二次元人達の方に視線を向けた。

 すると戸惑っている新世代型二次元人たちに、銀天狗が声をかける。

「おーーい、君たち! そこで固まっていてもしょうがないだろ? こっち来て一緒に話さないかい」

 優しい笑顔で新世代型達を呼び寄せる銀天狗の言動に、宴に近寄り難かった新世代型達はようやく歩み寄っていった。

「いやあ、君たちかい? あの修司のクローンとして生み出されてしまった二次元人というのは? いや、これは失敬失敬。口が過ぎたみたいだね、ははっ」

 明るい笑顔で声を掛けられる新世代型達は、どう銀天狗に返せば良いのか困惑してしまう。

 しかし流石は聖龍隊とは旧知の間柄の面々なのか、修司のクローン近いと言われる新世代型たちとスグに親睦を深め、和気藹々とした雰囲気の中を楽しむ。

 小田原修司という一癖も二癖もある三次元人のクローンとしても生み出された自分達にも気兼ねなく接してくれる聖龍隊の旧友達に、新世代型二次元人達は以前にバーンズ達が語ってくれた小田原修司の夢について問い掛けた。

「あ、あの……」

「ん? なにか」

「あの、私たち、小田原修司がどんな夢や理想を抱いて聖龍隊を築き、そして聖龍隊と共に歩んできたか、まだちょっと理解し切れない事がありまして……」

 新世代型の琴浦春香の問い掛けにクレフが反応する。

 この新世代型達の疑問に、質問を聞いたその場の皆々が挙って回答してくれた。

「小田原修司は、生まれ付き周りの者と比べて自らを異質な存在として理解した事で、真に平等なる世界を夢見る様になったと聞く」

 そう語るランティスに続き、聖龍隊参謀総長のジュニアも語る。

「その為に義兄さん、いや小田原修司は世界にその名を知らしめる程の組織として聖龍隊の基盤を強くしていった。今後、多くの能力者や異能者を受け入れられる様に。そんな異端者達が理不尽な迫害や差別に晒されない為の、彼らを護れる組織として聖龍隊を発展させていった」

 迫害や差別に晒される人々を救済する手段として、そんな人々を庇い立てできる組織として聖龍隊を強くさせたと述べるジュニア。

 そんな修司の思想に感銘を受けた聖龍隊は、そんな修司の夢をいつしか実現させようと、聖龍隊の隊士として奮闘する様にもなったという。

「それから修司君は多少の混乱が生じたとしても、二次元人と三次元人を交流させようとしてたわ。二次元人と交流した事で、生まれ付き孤独だった修司君自身が変われた様に、多くの三次元人達も良い方向に変えていきたかったのよ……現実は、そんなに上手くいかなかったけどね」

 やや苦笑いを浮かべて述べるセーラージュピターに続いて、当事者である修司から直接彼の夢を聞いてもいるアッコが語った。

「修司は何も、決して強くはなかった。逆にとても弱く、精神的にも貧弱だったわ。そんな修司が懸命に生きていられたのは、私たち二次元人の存在が大きかったって修司本人から聞いた事がある。生まれ付き、人の愛情や優しさを感じなかった修司が変われた様に……争いや衝突を繰り返して傷付け合っている多くの三次元人にも平和な未来を歩める様にしたかったのが修司の夢よ」

 アッコの昔語りの後、アプリコットがそれに続く。

「私たち二次元人を、夢や理想なによりも思いやりの象徴と捉えていた修司さんは、そんな二次元人を生み出せる三次元人との共生……いえ、共存共栄が叶った世界や未来を後世に遺したいという途轍もない夢を持ってたわ。……まあ、思いやりの無い、それこそ悪意に満ちた二次元人の場合は存在そのものを認められずに嫌悪してしまってはいたけど」

 生まれ付き愛情や優しさを感じなかった修司が己を変えさせてくれた二次元人こそ、夢や理想の象徴として三次元人と共生させる事で、平等で平和な世界が実現すると信じていたという小田原修司。

 すると、この修司の夢と理想を皆が語っていると、バーンズが複雑そうな赤面で語り出した。

「だが、その為に修司は一人で色んなもんを背負っちまった……人々の憎悪や恨み、反感に欲望……邪悪な思想をどうにか拭い取ろうと修司はありとあらゆる手段で自らを穢し、罪を重ねていった。自分の、いや既にオレたち聖龍HEADの夢でもあった理想とする未来を実現する為に、修司は人々が抱える闇を一身に引き受けてオレたち二次元人の為にその心身を捨ててきた。そんな積み重ねが今の混沌とした時代、そしてお前たち新世代型二次元人の存在にも繋がっちまっているのが実情だ」

 バーンズからの重たい話を聞かされて、新世代型達は改めて小田原修司の複製品として背負わなければならない現実を実感する。

 そんな重たい空気を感じ取って、聖龍HEADの古参のヒロイン達が新世代型達に笑顔で語り掛けてくれた。

「確かに修司君の夢や理想は、実現するには相当難しいものだったけど……同時に私たちの様に異質な力で戦う存在を凄く勇気付けてくれた。迫害や差別の無い、それこそ平等な世界で人々を平和に導ければ、どれだけの人々が救われる事か……」

 そう、どこか寂しげで穏やかな表情で語るキューティーハニーに続いてセーラームーンも語り始めた。

「誰もが平等に生きていける世界って、凄く夢のある事だけど、実際問題これほど難しい夢はなかったわ」

 セーラームーンに続いてマーキュリーが昔を思い返した様な顔で語った。

「本来、夢って言うのは個人が自分だけの……自分の欲望を満たす為だけに叶えるものが多いけど、修司君は違ってた。修司君の夢は、それこそ多くの人が本当の意味で平和に暮らせる……ううん、本当の意味で共存できる輝かしい夢だった。そんな彼の夢、理想に私たちHEADはもちろん多くの聖龍隊の隊士は心を揺れ動かされたわ」

 セーラーマーキュリーが語り終わると、次に木之元桜が語り明かしてくれた。

「魔法とか超能力とか関係なく、皮膚や目の色に拘らず、良心ある人なら誰でも共存して暮らせる世界を未来で実現しようとしていた修司さんの夢が……いつの間にか私たち全員の夢に変わってた」

 ナースエンジェルも穏やかな笑みで語る。

「よく修司さんは私たち二次元人のお陰で自分が変われたって言っていたけど……その実、私たちの方こそ修司さんの夢で自分自身が大きく変わったの。修司さんの夢が、私たちを変えさせて導いてくれたの!」

 かつて最終兵器として改造された過去を持つ、ちせも語ってくれた。

「私の様に人類の驚異となる存在でも……彼は、小田原修司は闇と同等の心でも受け入れてくれた。どんな存在でも、受け入れる大きな器量に私だけでなく他の多くの隊士も魅了されているのよ」

 最後にコレクターユイと獅堂光たちが笑顔を新世代型に向けて話した。

「誰かを救える優しい心を持つ人なら、その存在を受け入れるだけでなく時には仲間にも強引に引き入れようとする修司君の夢と理想が、私たちの原動力なの!」

「どんな人々も差別する事無く平等に生きていける世界……そんな素晴らしい世界を未来に導くのが聖龍隊の信念なんだよ!」

 

 この小田原修司が掲げていた夢と理想を聞いて、新世代型二次元人達はその圧倒的で壮大な信念に愕然とした。

 自分たち新世代型二次元人も、未だに多くの二次元人や三次元人に蔑視を向けられている中、この小田原修司の夢に人知れず感動し、激励された者たちも少なくなかった。

 

 能力者、異端者、障害者、皮膚や目の色で差別する事無く、誰もが平等に平和に生きられる未来を夢見た小田原修司。

 果たして、そんな小田原修司の複製品として生み出された新世代型達はどんな思いで修司の夢と理想を受け取ったのだろうか。

 

 

 

[否定された夢]

 

 聖龍隊にHEADの盟友だけでなく、多くの同士が戦力として馳せ参じ、集結してくる日々。

 そんな日々の中、聖龍隊駐屯基地を突如として圧倒的な戦力で強襲してきた者が襲来してきた。

 砂埃が立ち込める中、基地を襲撃してきた者は、基地の中央である最深部にまで、のそりのそりと歩いては迫って来た。

 基地中央で、これから如何にして足正義輝の軍勢に立ち向かおうかと議論を重ねていた聖龍HEADの前に、強襲してきた者は姿を現した。

「ッ……黒武士……!?」

 その者の姿を見て、突然の敵襲で素早く変身したメタルバードが顔色を一変させた。

 立ち込める砂埃の中から現われたのは見間違う事もない、あの黒武士そのものだった。

 全身を黒に統一された武者鎧に甲冑、前立ては無く、素顔を隠す為の黒地の面を装着した黒武士を前に、聖龍HEADに緊張が走った。

「黒武士が襲ってきたぞ!」「HEADの許に急げ!」

 ウェルズ率いる月野進悟たち聖龍隊士がHEADの許に駆け付け様と急いでいた。

 しかし黒武士は彼ら隊士たちの加勢を未然に阻止する為か、隊士達が駆けつけて来る通路の上方へと長刀を抜刀して放つ斬撃を繰り出し、通路に屋根などの瓦礫を落下させて隊士達の進行を止めた。

 そして隊士達の救援を絶った黒武士は、改めてメタルバードやミラーガールたちHEADと向き合うと、長刀を構えて襲い掛かる。

「クソッ、お前ら! 黒武士の狙いはアッコだ! 全員ミラーガールを防衛するぞ!」

 黒武士の狙いが、多くの二次元人の始祖に当たるミラーガールことアッコの命だと、以前に黒武士本人から聞かされた情報からアッコを死守する様にメタルバードが現場の皆に指示を出す。

 そして聖龍HEADは激しく黒武士との戦いを繰り広げた。

 

「きゃあッ!」

 しかし黒武士の力は圧倒的で、簡単にミュウイチゴたちHEADは黒武士にあしらわれてしまう。

 HEADの全員が黒武士の圧倒的な戦力の前に歯が立たず、徹底的に痛め付けられて満身創痍に至る始末。

 そして黒武士は、激しく自分に抵抗した聖龍HEADを横目に、善戦しながらも同じく痛め付けられて苦痛に悶絶しているミラーガールに歩み寄っていく。

「こ、この……アッコには、指一本触れさせねェぞ……!」

 メタルバードは強気な口調で立ち上がろうとするが、鋼鉄の肉体にも関わらず手酷く痛め付けられた状態で立ち上がることが侭成らなかった。

 のそりのそりと瓦礫を踏み締めてミラーガールに歩み寄る黒武士。

 すると、そんな黒武士に左右からミュウミントとミュウザクロの二人が奇襲を仕掛けて、黒武士を止めようと果敢に飛び掛るものの、黒武士は彼女達を容易く掴んで捕まえては強く殴打してミュウミントもミュウザクロも完膚なきまでに痛め付けて捨て置いた。

 二人の奇襲を潜り抜けた黒武士に、今度は七海るちあたち三人のマーメイドプリンセスが海水を散弾の様に弾き飛ばす魚人柔術で黒武士を倒そうとするが、コンクリの壁をも貫通する海水の散弾は黒武士の漆黒の甲冑に弾かれて傷一つ負わせられなかった。

 黒武士は自分の進行を邪魔してきた七海るちあ達に長刀から斬撃を放って三人同時に地に伏せさせた。

 そしてミラーガールの前まで歩み寄ってきた黒武士は、満身創痍の彼女を見下ろす形で顔を下に向けると、唐突に言葉を発した。

「……哀れだな……」「え?」

 黒武士の突然の発言にミラーガールが顔を上げて、黒武士の顔を見上げると奴は唐突に語り始めた。

「哀れだな。そして実に滑稽だ……かつてお前達を一つに纏めた小田原修司が掲げていた虚夢(きょむ)に縛られている通りだ」

 聖龍HEADを哀れで醜い存在だとして、そんな一同は小田原修司の夢に縛られている現状だと説く黒武士に傍で聞いていたメタルバードが問い詰める。

「滑稽、だと?」

 すると黒武士は更に語った。

「お前達は元々、出会う事も無い存在。それが小田原修司という歪と遭遇した事で……強引に運命を捻じ曲げられ、その結果この世界を小田原修司と共に混沌に導いた。我は、その後始末をするのだ」

「後始末、ですって……!? 何を勝手な事を……!」

 全身傷だらけのセーラーマーズが睨み付けながら何とか立ち上がろうとしてると、彼女に黒武士が返答する。

「勝手なのは、お前らだろう。己の夢や理想を……そう、己の価値観を世界や他人に押し付けるという身勝手極まりない行為をしでかし……その挙句、それに反抗する者は異常者(ヒール)として処分する世界に導いた。これを身勝手といわず何と言う?」

「それは……」

 黒武士の発言にセーラームーンも他の聖龍HEADも返す言葉を見失ってしまう。

 そんな黒武士は更に、満身創痍で壁に寄りかかるミラーガールを前に語り続ける。

「本来、お前達は出会ってはいけない存在、共存してはならない命なのだ。お前達が共存しているからこそ、数多の世界に混乱が生じ、そして混沌が生まれ出てしまった。お前達の存在は、既に我ら破滅の血族と同じく……存在そのものが罪なのだよ」

 黒武士から自分達の存在を完全否定された聖龍HEADは言葉を失くすばかり。

「オレ達と同じだというなら……テメェは、どうだっていうんだ?」

 そんな中、メタルバードが強気な姿勢で黒武士に問い詰めると、黒武士は平然と答えた。

「我ら破滅の血族は、お前達を共存させた大罪の祖・小田原修司と同じよ……その存在が世界に大きく影響を齎し、世界を混沌へと導いてしまった。人類は確かに発展した、しかし人々の軋轢や貧困、何よりも争いは鎮められる事は無く、延々と続いている。お前たちHEADの理想、いや罪を生み出した小田原修司の夢など、現実を変える事は到底できぬ、ただ悪戯に世界に混沌を生み出し続ける因果なのよ」

 自分達や修司の理想が、現実を変えることが出来ない上に、悪戯に混沌を生み出し続けている元凶だと述べる黒武士にHEADは愕然とした。

「考えても見ろ。この世界が混沌に始まったのは、かの9・11の件……その際に小田原修司が貴様等の存在を後ろ盾にして、世界を破壊と混乱に誘った。テロリスト払拭の大義名分を理由にな。それ以降、世界には多くの混乱と闘争が激化した。二次元人と二次元人、二次元人と三次元人の争いだけに留まらず……多くの争いを、そして悲劇を聖龍隊は引き起こした」

 そう語る黒武士は、最後にこう付け加えた。

「我は……その後始末をするだけだ」

 この黒武士の発言にジュピターキッドが問い掛ける。

「キミは……いや、君たち新世代型は、小田原修司が招いてしまった今の世の混沌を失くす為に生きているとでも言うのか……?」

「うむ、流石は聖龍隊参謀総長。話が早い」

 ジュピターキッドの質問に黒武士は同意する。

 と、ここで黒武士は聖龍HEADに問い掛けてきた。

「HEADよ、主らは差別無き世界だの、平等な世界だのと理想を飾り立てているが……そんな理想を持っている主らは、我ら小田原修司の血族である者たち、新世代型二次元人を庇えているのか? 否、所詮は鬼神と畏れられた小田原修司の血縁者である新世代型に注がれる恐れと偏見に満ちた眼差し全てを拭い、そして護り切る事は不可能だと既に知り得ている筈……そんな実現もできない理想を並べ立てられ、弱者である新世代型を完全に護り切れない主らが夢だの希望だのと綺麗事を語る資格など微塵も無い」

 新世代型の様な差別や偏見に苛まれる人々を完全に守護できてない現状の中で、理想や夢そして希望を語る資格がHEADにはないと冷淡に告げる黒武士。

「そもそも小田原修司によって生み出されてしまった主等の繋がり、そして今生の世の混沌と争い……数多の悲劇や争いを生み出した小田原修司が生み出してしまった聖龍隊と言う名の結束、そして新世代型二次元人という歪なる複製という名の命。小田原修司が生み出した思想も結果も、全ては世界を悲劇へと導くだけの歪なる思想に過ぎんのだ」

「ち、違う……! 修司の理想も夢も……何より新世代型のみんなも、世界を悲劇へと導く歪んだ思想じゃないわ!」

 黒武士の語りにミラーガールが強く反発するものの、黒武士は口調を変えず語り続けた。

「その事実を認めない愚かな意志こそ、世界を歪んだ現実に導いた根源なのじゃ。小田原修司は多くの悲劇と争いを生み出し……挙句の果てに、世界はそんな小田原修司の副産物である新世代型二次元人を生み出しおった。お主らが小田原修司から受け継いだ理想と信念は、結局は世界を混沌に導いただけに留まらず……新世代型二次元人という、生命としても歪で醜いそれこそ生命と言えるか分からない種までも生み出してしまった。己の欲望のみで周りを振り回し、醜いいざこざや争いを続ける新世代型を、批難から護り切れてもいないのに迷い事ばかり垂れ流すな」

 黒武士が発した一言一句に表情を歪ませて、非常に悔しがる思いで胸を一杯にする聖龍HEADの面々。

 すると黒武士はジュピターキッドの近くで意識が朦朧とするウォーターフェアリーに問い掛けた。

「プリンセス・アプリコット。この場にいる二次元人、聖龍HEADと出会う事が無ければ、己は生き返る事も無かったが、同時にお前を愛してくれた蛙の獣人フロークが死ぬ事も無かったと思わんか?」

「………………」

 自分が今の仲間である聖龍隊に出逢う事が無ければ、自らが生き返る以前に自分を愛してくれてた者が死ぬ事は無かったかと問い掛けられ、ウォーターフェアリーは黙り込んでしまう。

 そして黒武士は、再び顔を正面で寄りかかるミラーガールに向けると、長刀を構えて摺足で近付き出した。

「お前達は確かに……愛や夢で己自身を変える事が出来る……だが、現実までは変えられない。醜く、不条理な現実までは変える事は出来ない。それが貴様等の限界だ」

『!!』

 黒武士から発せられた、この言葉がミラーガールたちHEADの心に深く突き刺さった。

 そんな黒武士は、ミラーガールに刃を向けると更に語る。

「我々は小田原修司の血族……そんな我らは世界を変えるのではない、破滅と混沌に誘うしか出来んのだ。貴様等は、我ら破滅の血族に何かしらの期待をしている様だが、それは無駄というもの。我らは小田原修司と同等、世界を破滅と混沌に誘うだけの……醜いバケモノなのだよ」

 この黒武士の発言にメタルバードが再び問い詰めた。

「何が……お前を其処まで追い込んだんだ……!」

 メタルバードの質問を聞いて、黒武士は憎悪に滾った瞳を血走らせて言い放った。

「追い込まれたのではない、気付かされたのだ……!」

 その憎悪に駆り立てられながらも、どこか哀愁すらも感じさせる黒武士の瞳を見て、聖龍HEADはある事実に気付いた。

 

 そして黒武士は、眼前のミラーガールに刃を突き刺して命を奪おうとした。

 と、その時。

 激しい爆音と共に、通路を塞いでいた瓦礫が吹き飛ばされ、向こう側で瓦礫を爆薬で吹き飛した聖龍隊士達が現場に駆けつけて来た。

「聖龍隊、突撃!」

 ウェルズを先頭に、聖龍隊士が現場に雪崩れ込み、負傷しているHEADの助太刀にやって来た。

 黒武士は突然の隊士たちの乱入に意識が逸れて、ウェルズ達の方へと顔を向ける。

 するとウェルズを筆頭に、聖頭親族の三人である木之本桃矢/月野進悟/森谷賞たち合計四人が背中に弾倉を担いでガトリング砲を構えて銃弾の嵐を黒武士に一斉射撃する。

「オラオラオラオラオラオラ……!」

 ウェルズを筆頭に黒武士に銃弾を浴びせていく四人だが、黒武士が着衣している漆黒の甲冑は全ての銃弾を弾いてしまう。

 そんな戦況の中、同じくHEADの助太刀に加勢しに来た浜崎雅弘と白井渚は機関銃で黒武士の頭部を狙うが、ガトリング砲の銃弾と同じく黒武士の兜に弾が撥ね返され、効かなかった。

 すると黒武士は、のそりのそりとガトリング砲を豪快に連射する四人に歩み寄っては、彼らの目前まで迫ったところで長刀を抜刀。

「うわッ!」

 黒武士が放った斬撃に思わず威圧され、後ろへと倒れてしまうウェルズ達。すると彼らが武装していたガトリングの砲身が真一文字に切断されて使用不能に陥ってしまう。

「ひっ!」

 強力な銃火器であるガトリング砲を一撃のみで使用不能に陥れてしまう黒武士の剣術に驚き、蒼褪めてしまうウェルズ達。

 すると黒武士は続け様に、今度は機関銃で頭部を狙撃してくる浜崎雅弘と白井渚の二名に向かっても斬撃を放ち、二人が使用していた機関銃も真っ二つにしてしまう。

 現場に駆けつけて来た隊士達の猛攻を全て片付けて、場を完全に鎮圧すると一言。

「興が削がれたな」

 そう言うと黒武士は長刀を鞘に納めた。

 そして黒武士は満身創痍で傷付き、動けなくなっている聖龍HEADに申し渡した。

「お前達にもう一度、言っておく。夢や理想で醜い現実が変えられるというのは、それこそ妄想。人が人である限り、叶うことのない、まやかしなのじゃ」

 自分達の、小田原修司が想い描いた夢や理想は、醜い人間が人間である限り、叶う事のないまやかしなのだと吐き捨てる黒武士。

 そう告げると黒武士は、多くの目が向けられている中で自らを黒い靄に変化させてその場から消失した。

 

 かつて小田原修司が思い描いた夢や理想を完全否定され、自分達の共存までも否定されたHEADはその場で静かに黒武士の強襲で空いた天井から覗く青空に目を向けた。

 澄み切った青空を見上げながらも、黒武士の言動に隠し切れない衝撃を受けて愕然とするHEAD一同。

 彼女達は小田原修司の夢と理想、そして黒武士の言動に何を思うのだろうか。

 

 

 

[謝罪の限りを尽くして]

 

 突然の黒武士の強襲に遭い、徹底的に痛め付けられて満身創痍に至ってしまう聖龍HEADの面々。

 しかし黒武士がミラーガールに手を掛けようとした矢先、駆けつけて来たウェルズ率いる聖龍隊士によって間一髪のところで黒武士を制止する事に成功。

 だが黒武士はHEADが抱く、いや小田原修司から受け継いだ夢や理想そして信念までも完全否定した挙句、聖龍隊が庇護している小田原修司のクローン新世代型二次元人を護る事さえも未来を破滅と混沌に導く行為だとして徹底的に否定する始末。

 そして聖龍HEADに厳しい言葉の数々を吐いた黒武士は、霧の様に姿を消して聖龍隊の前から消失してしまう。

 それからHEADは意識を失い、緊急処置が行われて何とか命に別状は無かった。

 HEADは全員、基地で用意されている治療室の寝床で横たわるが、その心中はどんよりと厚い雲が覆い被さった様に暗くなってしまってた。

 と、そんなHEADの許に、騒ぎを聞き付けた新世代型二次元人達がお見舞いにやって来た。

 だが新世代型達は、オペレータからHEADの通信内容を聞き、黒武士の言動の詳細を知っていたのだった。

 新世代型二次元人達は、治療室に入ると其処には黒武士の攻撃を受けて、超人的な回復能力では完治できないほど痛め付けられ、身体の至る所に包帯などが巻かれている痛々しい姿のHEADが。

 

 恐る恐る一歩ずつ治療室に入っていくと、ベッドには歴戦の聖龍HEADが満身創痍の状態で横たわっていた。

 そして部屋の奥、片隅のベッドには聖龍隊総長のバーンズが静かに上向きで天井を見詰めていた。

「バーンズ……」「バーンズさん……」

 真鍋義久と琴浦春香が声を掛けると、バーンズは静かに新世代型達の方へ顔を向けた。

「大丈夫、ですか……?」

 新世代型のエイミーが声をかけると、バーンズは実に静かな口調で新世代型達に問い掛けた。

「……聞いてねェのか? オレ達HEADを痛め付けた黒武士が吐きやがった台詞……」

『………………』

 問い掛けられて、新世代型達は何も返事が出来なかった。

 黒武士によって徹底的に痛め付けられただけでなく、自分達が理想としている小田原修司の夢までも根底から否定されたのだ。

 その事実に聖龍HEADは底知れない絶望を味わい、深い喪失感に苛まれている事だろうと新世代型達は思った。

 このまま何も言わずに病室から出る事が、今の聖龍HEADにとっては少ないが自身の怪我の回復に専念してくれる事だろうと思った新世代型達は、そのまま黙って部屋から出ようとした。

 が、その時。そんな黙って部屋から立ち去ろうとした新世代型の真鍋義久の手を、ベッドのバーンズが唐突に掴んできた。

 突然のバーンズの行為に戸惑う新世代型一同。

 するとバーンズはいきなり、そして突然新世代型達に言葉を発した。

「……ゴメンよ……! お前達を護り切れなくて……!」

 突然、涙目で謝罪するバーンズの言動に衝撃を受ける新世代型たち。

 そしてバーンズはそのまま新世代型達に謝罪を述べ始めた。

「最初、お前達をタイの研究施設で救出してから、オレたち聖龍隊はお前らを欺き続けた……! お前らが修司のクローンだと知っていて、その事実を隠蔽してきた……アジア各地を巡ってた期間も、修司の武勇伝をお前達に聞かせながら徐々に修司の事を受け入れられる様にするのが精一杯……ジャッジ・ザ・シティや宇宙での戦いでも、お前らを護り切る事が出来ず、お前達を戦いに巻き込んじまった……! その挙句、ドレフから自分達が修司の代用品として生み出された複製だと知らされ、ショックを受けただろうに……! でも、そんな現実に打ちのめされたお前達をオレらは護る事ができず、三次元政府に身柄を拘束されて理不尽に監禁されて辛かっただろうに……それなのに、オレ達は何もできずに、ただ傍観するしかできなかった……!! お前達を世間の偏見や蔑視から護れなくて……ホントにすまん…………!!」

 涙目の涙声で只すら謝罪し続けるバーンズを戸惑いの目で視ていた新世代型の瞳には、バーンズの瞳から大粒の涙がボロボロと零れ始めたのが見て取れた。

「お前達を庇い切れず……護り切れなかったって言うのに……何がヒーローだ。オレ達はただの無力な……生き物だ。黒武士に言われるまで、気付こうともしてなかった。自分達が如何に無力で欠しい存在なのかを……!」

 黒武士からの発言が如何にバーンズ達HEADの心を突き刺し抉ったのか、新世代型は瞬時に察した。

 

「本当に救うべき弱者を救えずに……何がヒーローだ……!!」

 

 いつの間にかバーンズだけでなく、彼の謝罪の言葉を聞いていた同室のHEAD全員も非常に心苦しい心境で涙を呑んでいた。

 そんな謝罪の念で胸中を満たすバーンズ達HEADの心境を悟って、新世代型二次元人は静かに言葉を返した。

「……もう良いですよ、バーンズさん。あなた達がどんな気持ちで私たちを思ってくれているか、よく分かりました。

「こ、琴浦……!?」

 優しい微笑みで言葉を返す琴浦春香にバーンズが号泣しながら返事すると、彼女に続いて他の新世代型もバーンズに話し返してきた。

「そりゃあ……ドレフの告白で、俺たちが小田原修司のクローンだと知った時はショックだったし、その後のジャッジ・ザ・シティで三次元政府に監禁された上に、殺し屋のグービンシーに命を狙われたりしてマジで怖かったぜ」

「でも、そうするしか出来なかったんですよね? 最初から、私たちが小田原修司の代用品として生み出された事実も……三次元政府の言いなりにならなければ、多くの二次元人に危害が及ぶからこそ、私たちの身柄を政府に渡さなければならなかったんですよね」

「真鍋……御舟……!」

 真鍋義久や御舟百合子の言葉に心が救われる想いでいっぱいになるバーンズは感激の余り更に号泣する。

 すると新世代型達と行動を共にしていたチョコもバーンズに訴え掛けた。

「バーンズさん達、聖龍隊の人達が如何に多くの二次元人を思って行動していたか、今の私たちにも理解できます! 時には新世代型を護り切れなかった事もあったけど、これからは違うんでしょ? まあ、私たちプロト世代も三次元人の遺伝子構造を基に生み出されているから人のこと言えた義理じゃないけど……でも、一緒に琴浦さんたち新世代型の人達を助けていきましょうよ!」

「チョコ……!」

 黒鳥千代子の優しい言葉に感涙を流し続けるバーンズ。

 そんな心優しい一般の二次元人たちの言葉を聞いて、バーンズ以外の聖龍HEADも同じく涙を流した。

 そして聖龍HEADは新世代型二次元人達に、心からの謝罪を述べていくと、新世代型達は皆笑顔でHEADに労いと励ましの言葉を贈った。

 

 そうして聖龍HEADへの見舞いを済ませて部屋から出る新世代型たち。

 皆々、心の底から、あそこまで弱気になっている聖龍HEADを目撃して唖然としてしまう。

 そして同時に、聖龍HEADが今までの事について深く後悔の念を抱いていた事と、懺悔の精神で胸中が一杯だったのだなと思い知らされた。

 全員が、HEADの苦しい心中を悟って愕然と黙りこくっていた、その時。

「ひゃはははははっ、はははははっ」

 と、実に耳障りな笑い声が新世代型達の聴覚に伝わってきた。

 全員が目を向けてみると、そこに居たのは今ではすっかり存在を忘れかけていた、あの闇人の姿が。

「ひゃははははっ、あのHEADがまさかあそこまで痛め付けられるとはね、俺さまも驚いちゃったよ。まあ、まだ生きている内は安心できねえな。アイツらの目が届かない所でこそ、俺様がお前ら新世代型の肉体と精神を乗っ取って暴れ回れちゃう隙なんだけどなあ」

 不敵な嘲笑でいつ如何なる時も新世代型二次元人の肉体と精神を支配下におけると言う事実を、その存在を忘れかけてた新世代型達に冷酷にも告げる闇人の精神。

「いくら謝罪されようと、許せる訳ないよなあ? なんせ、ジャッジ・ザ・シティでは身包み剥がされて無理やり人前で着替えさせられた上に飼育ボックス並みの小部屋に押し込まれたんだしな。聖龍隊が許せないなら、俺が力を貸してアイツらを嬲り倒してやっても構わないんだぜ? ひゃはははっ」

 新世代型達の代わりに聖龍隊を嬲り殺してやろうかと告げる闇人の発言に、新世代型達は表情を険しくさせて闇人を睨み返した。

「ひゃはは……まあ、その内……そう、近い内にでもお前らは俺を必要とするだろう。その時には容赦なく力を貸してあげちゃうからね」

 最後に闇人は不敵なゲス顔で新世代型達に告げると、暗闇の中に消えていってしまった。

 

 

 突然の黒武士の強襲に、黒武士がHEADに言い伝えた言葉の数々。

 苦境に追い詰められる聖龍HEADに謝罪されて、彼女たちが心から自分達に詫びていた事を知ってHEADを許す新世代型たち。

 しかし、その中で再び現われた闇人の真意とは?

 そして黒武士の目的は何なんだろうか?

 

 

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