聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 Mrフェイクはどんな人間でも正気を失う事を証明するために、【しゅごキャラ!】のメインキャラ達を拷問する。そしてヒロインである日奈森亜夢を銃で撃ち生死の境を彷徨うほどの重体に陥れる。ジャッジ・ザ・デーモンがキャラ達を救助してMrフェイクを倒した後、瀕死の重体から回復した亜夢からリハビリを提案される。Mrフェイクは拒否したが、彼は亜夢たちと現実を共有することによって感謝の意を示した。
 この一連の事件を当事者の一人、月詠イクトから聞いた新世代型たちは余りにも衝撃的な内容に震撼した。
 いさかいや争いなどの些細な悪行にも敏感な、手厳しい小田原修司の性分。
 最初は二次元人を純粋に愛していたのに厳しい軍門教育によって精神を歪められたMrフェイクの悲しい過去。
 幼稚なアニメや漫画、そして差別主義の教育がMrフェイクを生み、その実ジャクソン・グレイシスまでもが狂っていたという事実。
 そして日奈森亜夢が撃たれた悲劇。さらに大人へと成長する事は、夢を諦めるのと同意なのかもしれないと説かれた事で、新世代型の心中は複雑だった。

 そして今回、前回に引き続き月詠イクト、それにミスティーハニーやガイトそれにエリルなどのマン・ヒールズの面々が語ってくれるのは、自分たち元悪役で構成された特殊部隊マン・ヒールズに与えられた危険任務についての昔語り。



現政奉還記 創生の章 昔語り マン・ヒールズ

[鬼からの鍛錬]

 

 Mrフェイクの仕掛けた心理戦をきっかけに、己の正体をイクト達【しゅごキャラ!】の面々に明かしたジャッジ・ザ・デーモン。

 それからというもの、ジャッジ・ザ・デーモンはイクト達に本格的なクライム・ファイト(犯罪者専門の格闘術)を指導する様になった。

 この日もジャッジ・ザ・デーモンはイクトと唯世の二人を相手に、格闘技を鍛え込んでいた。

「イクト、唯世! 二人でやれば怖いもん無しだ! やっちまえ!」

 仲間の声援を浴びて、イクトと唯世は二人かがりでジャッジ・ザ・デーモンを倒そうと試みる。

 イクトの鋼鉄の義手から繰り出される拳がジャッジ・ザ・デーモンに飛びかかる。が、ジャッジ・ザ・デーモンはそれをひらりとかわして逆にイクトの右腕を脇で挿む様に掴むと、そのままイクトを投げ飛ばして見せる。

 と、今度は唯世が聖龍隊が彼用に作り上げた王様が持っているようなステッキでジャッジ・ザ・デーモンに攻撃を仕掛けようとする。だが、ジャッジ・ザ・デーモンは避ける事無く唯世が振り回すステッキを受け止めると、彼の胸倉を掴んでこれまたイクトと同様に投げ飛ばしてみせる。

 こうして二人を相手に鍛錬を続けるジャッジ・ザ・デーモン。彼は練習とはいえ、実践同様に手を抜く事は無かった。

 

 そして鍛錬が終わり、イクトと唯世は汗だくになって地べたに這い蹲る。

 そんな二人を見据えて、ジャッジ・ザ・デーモンは一言掛けた。

「まだまだだな」

 そう言うと彼はデーモンスーツの頭部部分のマスクを外して菅を晒す。

 素顔を晒した小田原修司の顔を直視する観戦者たちとイクト達。すると驚愕の事実が。

 なんと小田原修司は目の部分にタオルを巻き付けて、自らの視界を奪っていたのだ。しかも完全に視界を、目に入る光を遮る為にタオルの裏、瞼の部分に五百円玉を2枚押し当てていたのだ。

「視界を遮って戦っていた訳か?」

 イクトが驚きのあまり訊ねると、修司は平然と言った。

「光が差し込む事のない闇の中で戦う事も多い。故に完全な闇の中で戦えなくては意味がない」

 光の無い暗闇での戦闘も自在にこなせなくては意味がないと唱える修司の言葉に、イクトも亜夢たちも唖然とするばかり。

 すると修司は冷然と先ほどまで鍛錬し合ったイクトと唯世に伝えた。

「イクト、唯世。もう少し動きを早くする必要がある。犯罪者を早々に抑制する為にも、そして事件を解決する為にも素早い動作と攻撃力は必要不可欠だ」

 そう二人に告げる修司は、最後にこう言った。

「……まあ、今日はこれで終いにしよう。これで好きなジュースでも飲んで休んどけ」

 そう言うと修司は二人に、目隠し用に使っていた2枚の五百円玉を弾いて投げ渡した。

 2枚の硬貨を投げ渡した修司は、そのまま休みに向かってしまった。

 

 修司から貰った五百円玉2枚、合計千円のお金で各々ドリンクを購入して休むイクト達。

「ふぅ、だけどまさか……あの指名手配にもなっているジャッジ・ザ・デーモンが聖龍隊の総長だったとは、驚きだな」

「ホントだね。オマケにアニメタウンの市長でもある人物……それが連続殺人鬼のジャッジ・ザ・デーモンとは、嘆かわしいよ」

 購入したドリンクを手に、テーブルに座るイクトと唯世の両名。そんな二人の愚痴を聞いて、亜夢が唱える。

「だけど、修司さんは修司さんで自分の夢があるんだよ。犯罪のない、平和で穏やかな世の中を築きたいって想いで、ジャッジ・ザ・デーモンとしても活動してるんだと思うよ」

「亜夢、なんだか修司さん事やけに庇護しているみたいね」

「自分の初恋の人と同じ名前だから、気にしてるのかい?」

 修司の想いを真に受け止める日奈森亜夢に、歌唄と一之宮ひかるが口を出す。

 

 と、【しゅごキャラ!】の面々が和気藹々と談話している頃。

 イクトと唯世と鍛錬を終えたばかりの修司に緊急の要件が伝えられた。

「そうか……やはり例のブツは消えていたか」

「ええ、あなたが合衆国から預かっているあの品が消えていたの。やはりMrフェイクがあの時、盗み出していたようね」

 修司に要件を伝えていたのはキューティーハニーの妹ミスティーハニーだった。

「例のアレがMrフェイクによって持ち出されたのは厄介だ。アレが国外に持ち出されれば……そして公の元に晒されれば、二次元人の保身に関わる」

「そうね。非常にマズイ事になるわ」

 双方ともに険悪な表情を浮かべ、懸念する。

「……聖羅、あの一件は本来HEADである俺やお前の姉達しか知る事のない国家機密だ。それをお前だけに教えているのには……分かっているな」

「ええ、私が改めて指揮する部隊に機密事項を奪還してほしいんでしょ。危険な任務になる事を差し置いて、私達に向かわせる訳ね」

「そうだ。二次元人の未来を護る為に、二次元人で贖罪を行っているお前達の部隊に危険な役を一任したい」

「……仕方のない事だけど、承知したわ。所詮、私達は贖罪の為に構成された部隊。如何なる危険な任務も受け負わなければならない宿命にある」

「頼んだぞ。それともう一つ、お前に頼みたい事が」

「なに?」

 修司はミスティーハニーに一枚の書類を提出して示した。

「彼は……?」

「書類に書かれている通りの人間だ。月詠イクト。彼もお前達の部隊に加入させてほしい。そう、贖罪の為に……」

「分かったわ。罪を犯した二次元人に贖罪をさせる為に、私達の部隊はあるものね」

「ではお前達に任せよう。過去に罪を犯した二次元人の特殊部隊………………マン・ヒールズに」

 

 

 

[集結する元悪役たち]

 

 聖龍隊本部、その中でも一部の隊士しか入れない区間にとある特殊部隊が集合していた。

 その集合する隊士の先導を歩くのは、あのミスティーハニーだった。

 隊士たちは本部の特別区域に集合すると、そこに一人の少年隊士が入室してきた。

「失礼します」

 そう言って入ってきたのは、あの月詠イクトだった。

「ちょうど来た様ね、新人くん」

 入室してきたイクトを出迎えるミスティーハニーたち。彼女達を見て、イクトが呟いた。

「これが元悪役や敵役で構成された特殊部隊……マン・ヒールズか」

 イクトを出迎えたのは、聖龍隊でも異質な元悪役や敵役で構成された特殊部隊マン・ヒールズだった。

 すると、物静かに呟いたイクトにミスティーハニーが声をかける。

「あなたがイクト君ね。話は修司くん……いいえ、総長から聞いているわ。私が最近、マン・ヒールズの総合隊長を任せられたミスティーハニーよ」

「よろしく、ミスティーハニー」

 イクトは声をかけてきたミスティーハニーと握手を交わして親睦を深めた。

 実はミスティーハニーは、つい最近になって隊長の座を先代の加納望から引き継いだばかりなのだ。

 そんな中、イクトは周りにいるマン・ヒールズの隊士を視認していた。

 

 隊士には以下の面子が揃っていた。【ナースエンジェル りりかSOS】のデューイ【飛べ!イサミ】の芹沢ルリ子。

 ブラック・ラヴァーズ部隊の隊長であるHEADの堂本海人の双子の兄ガイトと彼が指揮する部隊の面子。沙羅、イズール、エリル、ユーリ、マリア、姉妹のシェシェとミミ、レディー・バット、蘭花、あららの面々。

【うえきの法則】の森あいとプラス。【ふしぎ遊戯】の本郷唯。【真・女神転生Dチルドレン ライト&ダーク】の穴戸レナ。【レジェンズ-甦る竜王伝説-】のハルカ・ヘップバーン。

 

 聖龍隊結成時から増加の一途を辿ってきた異常者(ヒール)への対抗策として、その異常者(ヒール)同然だったキャラクター達で部隊を構成し、少しでも異常者(ヒール)の脅威を排除しようと試行された特殊部隊それがマン・ヒールズ。

 そんなマン・ヒールズの一員に加わったイクトは、少しばかり複雑な心持だった。

 するとその時、マン・ヒールズとイクトが合流したのを部屋の監視カメラで確認したのか、タイミング良く部屋のモニターに総長である小田原修司の顔が映った。

「やあ、諸君。コンディションは抜群かな?」

 修司の呼び掛けに、その場の皆は顔を向ける。

 すると修司は不敵な面構えでマン・ヒールズの面々に告げた。

「さあ、お前達………………任務開始だ」

 この申し出に、多くのマン・ヒールズ隊士が蒼然と聞き耳を立てる中、ブラック・ラヴァーズのエリルだけは「イヤッホーー」とはしゃぐ有様。彼女は小田原修司に友好的な意識を持っている為、その修司からの指令を心待ちにしていたのだ。

 そんな状況下で、修司はマン・ヒールズに任務の内容を告げていく。

「今回の任務は……アニメタウンの廃棄された区域内の完全洗浄だ。此処の区域は前々から異常者(ヒール)が大量発生し、一般市民の居住が困難になってしまった区域だ。今ではこの区域は、完全に危険地帯として立ち入り禁止となってしまってる。其処でだ、今回お前達にはこの危険区域に突入して、住み着いてしまっている異常者(ヒール)の完全排除を行ってもらいたい」

 修司から異常者(ヒール)達が住み着く危険区域への突入と、そこを拠点にしている異常者(ヒール)の完全排除が任務として請け負わせられる指令に寡黙な表情で聞き入るマン・ヒールズ。

 さらに修司は、マン・ヒールズにもう一つ重要な任務を与えた。

「それともう一つ、お前達には重要な任務を与える…………この異常者(ヒール)が密集している危険区域内で、何者かが正気を失っている異常者(ヒール)共を先導して活動しているという未確認情報が入ってきている。実は、お前達の前に先行部隊を突入させたんだが……残念ながら先行部隊からの連絡が途切れたままだ。この任務を負わせられるのは、聖龍隊では目立って活動していない特殊部隊であるお前達しかいないと俺は踏んでいる。直ちに突入体制を準備し、速やかに任務に向かってくれ、以上だ」

 修司からの指令は終わり、映像もここで終わった。

 そして修司からの指令を聞き入れた隊長ミスティーハニーはマン・ヒールズの隊士達に胸を張って告げた。

「……以上が総長からの指令よ! 今や民間人は立ち入り禁止になっている危険区域に突入して、区域内に住み着いた異常者(ヒール)を残らず殲滅すること! もう一つは、その異常者(ヒール)を先導しているかもしれない人物が居るかもしれない可能性を確認し、その情報が正しければその人物を確保すること! 危険区域に潜伏している異常者(ヒール)は先行部隊を潰すほどの強力な戦力を携えている可能性も示唆される……全員、極力気を付けて行動すること! 以上よ!」

 ミスティーハニーから指示を受けたマン・ヒールズの隊士達は、各自準備を整えて出撃の支度を済ませる。

 

 そして移送用ヘリに搭乗したマン・ヒールズの面々は、そのまま離陸して危険区域へと進攻していった。

 ヘリの中では、マン・ヒールズはヘリの操縦士たちに嫌味を言われてた。

「まったく、異常者(ヒール)退治に元異常者(ヒール)を差し向けるとは……複雑だな」

「ああ、全くだ。後ろに乗り込んでいる連中だって、いつ異常者(ヒール)の状態に戻って俺達を攻撃するか分かったもんじゃない」

 いつ誰か異常者(ヒール)になっても可笑しくない現状に、操縦士たちはマン・ヒールズにも嫌味を垂れていた。

 そんな嫌味を聞きながらも、マン・ヒールズはグッと堪えていた。

「ふぅ、異常者(ヒール)か……気の狂った輩と一緒にされるのは気に障るぜ」

「そう言わないの。私達は所詮、主人公と対立してしまった経緯を持つ元悪役……正気を失った異常者(ヒール)と一緒にされても仕方ないのよ」

 溜息をつきながら愚痴を零すガイトに、ミスティーハニーが説き伏せながら宥める。

 未だに異常者(ヒール)の境界線が曖昧な点から、基準が不確かな現状に苛立つ二次元人が多いのが現実だった。

 そんな会話が続けられている最中も、ヘリは目的地であるアニメタウン危険区域内へと進攻した。

 

 

 

[突然の奇襲]

 

 危険区域内にヘリが侵入すると、移送ヘリは突然無数の砲撃を地上に投下した。

「な、なんだ!?」

 ヘリに搭乗しているマン・ヒールズが突然の爆撃音に一驚し、慌てて窓から地上を見下ろす。

 すると爆撃された地上は、火の海と化し、無数の異常者(ヒール)の死体が散乱してた。

「な、なんて事を……!」「これは、少しばかり酷いな」

 地上の惨状を目撃して、マン・ヒールズは愕然とする。

 しかしマン・ヒールズはこの惨状も、自分達の上役である小田原修司が命じたのだと直感的に察していた。

 全ての異常者(ヒール)を殲滅せよ。これが小田原修司が与えた第一の任務だった。

 そんな二次元人の大量殺戮をマン・ヒールズが見下ろしていたその時。地上から一発の砲撃が放たれた。

「! 後方からRPG弾、確認!」

 なんと移送ヘリの死角から追尾式ロケットランチャーが放たれるのを、マン・ヒールズは視認した。

 移送ヘリは何とかランチャーを回避しようと反転するが、時遅くRPGは着弾、ヘリは凄まじい勢いで横へと回転しながら地上に叩き落されてしまった。

 地上に墜落して、横転し続けるヘリの中で転げ回るマン・ヒールズの面々。

 そしてヘリはビルの外壁に衝突して、回転運動を緩めて停止した。

 

 撃墜されたヘリの中で目を覚ますマン・ヒールズ。彼らは奇跡的に生き延びていた。

 一人一人起き上がるマン・ヒールズの面々は、現場の指揮官である隊長のミスティーハニーから指示を与えられる。

「みんな、大丈夫なようね。これより私たちは徒歩で、第一の目的である異常者(ヒール)の徹底排除、及び第二の目的である異常者(ヒール)扇動者の捜索に当たる!」

 ミスティーハニーからの指示に、マン・ヒールズはヘリの外へと出ていく。

 そしてヘリの操縦者を確認すると、操縦者の方は二名とも墜落の衝撃で死亡していたのが確認された。

 地上の危険地帯に放り出されたマン・ヒールズは、ヘリ周辺の状況をまず確認した。

 街並みは多少荒れていたが、極々普通の街並みに見えた。しかし人の姿が見られず、街は無人と化していた。

「人の姿が確認できないな」

「さっきの爆撃で、みんな逃げ出したのかしら」

 マン・ヒールズのデューイと芹沢ルリ子が周辺の状況を確認して会話する。

 しかし彼らマン・ヒールズを迎え撃とうと、少し離れた場所から彼らを見定める者が。

 次の瞬間、先頭を歩いていたイクトの頭部にレーザーサイトが直射された。

「危ないッ」

 頭にレーザーサイトが直射されるイクトを見て、慌てて穴戸レナがイクトを押し退けた。

 するとイクトの頭を一発の銃弾が掠め通る。

 その一発の銃声が合図となったのか、辺りから大量に異常者(ヒール)と化した二次元人達が餌に群がる蟻の様に群体で襲い掛かって来た。

異常者(ヒール)よ! 攻撃開始!」

 ミスティーハニーの指示の元、マン・ヒールズは異常者(ヒール)の大群に無差別攻撃を仕掛けた。

 政府から異常者(ヒール)と認定された二次元人への直接的な処分は合法的な行為だった。

 マン・ヒールズは異常者(ヒール)を次々に退治していき、群がってくる敵には容赦なく攻撃の雨を浴びせる。

 ヘリに搭載されていた重火器なども多岐に渡って使い込み、続々と異常者(ヒール)の大群を攻撃する。

 そんな中、接近してくる敵の異常者(ヒール)に対してイクトは殴打するなどして抗戦していたが、殴るだけでは数は減ることが無く苦戦を強いられていた。

 すると、イクトは義手である自身の右腕を見て思い出していた。

 以前、この高性能で軽量化された義手を聖龍隊から貰い受けた時、義手との相性を確認する為、修司の前でバイオリンを弾いた事があったイクト。その時、修司もイクトも義手の調子が良い事に満足していたが、そんな修司に今回マン・ヒールズとの任務を請け負う前に渡された日常で使うのとは別の義手に付け替えていたのをイクトは思い出した。

 イクトは右腕の義手を前に向かって突き出すと、その右腕から一筋の紅い閃光が発射された。

 発射された閃光は、異常者(ヒール)の上半身を貫通すると大きな風穴を開けて絶命に至らせた。

 この右腕から発射された光線を見て、イクトは大変戸惑った。

「こ、この義手……! レーザー光線が発射できるのかよ!?」

 戸惑うイクトだったが、その間も異常者(ヒール)は絶えず襲撃してくるのを前に、イクトは戸惑いながらも光線を発射できる義手を用いて向かってくる異常者(ヒール)を討伐していった。

 

 そんなイクトの突然のレーザー攻撃によって、形成は逆転。マン・ヒールズは異常者(ヒール)の大群を全て排除した。

 彼らの目の前に広がるのは、夥しい数の異常者(ヒール)と認定された二次元人達の死体だった。

 その死体の山を築き、その山の中を突き進むマン・ヒールズは、変わらない心境で第二の目標に向かった。

「一応、異常者(ヒール)の群れは大体片付いたわね。それじゃ次は、この異常者(ヒール)達を先導している目標を探すわよ」

「コイツらは正気を失っているのに、体制が取れていた。誰かが裏で手を引いているのは確かな様だ」

 ミスティーハニーの指示を聞いて、デューイが異常者(ヒール)を裏で操っている存在が確かなのを指摘する。

 一行は異常者(ヒール)の死体の山を進みながら、その扇動者の捜索に当たった。

 だが、この時イクトの心中は複雑なものだった。異常者(ヒール)と認定されただけの二次元人を大量に虐殺してしまう聖龍隊の施行に戸惑いと深い罪悪感が脳裏を横切っていたからだ。

「いくら異常者(ヒール)と見做されていても……武力で全てを排除するのは、どうかな」

 すると此処で先輩隊士であるデューイがイクトに言った。

「イクト、余りそのことは考えない方が良いよ。世間は三次元人はもちろん、二次元人すら異常者(ヒール)に対しての恐怖感が半端ないんだ。その異常者(ヒール)に同情してると、過去に悪行を働いた僕らマン・ヒールズも再び異常者(ヒール)認定されて立場が危うくなる可能性だってあるんだから」

「そ、そうですが……それでも、この惨状を見たら普通に戸惑ってしまいますよ。こんな地獄絵図……」

 すると同じく先輩であるガイトがイクトに申し出た。

「考えたって、今は意味がない。なんで異常者(ヒール)が発生するのか、そのメカニズムは今でも不確かなものなんだ。俺達は俺たちで、与えられた任務を敢行していれば問題はないのよ」

「………………」

 ガイトの話に、イクトは黙り込んでしまう。

 自分は確かに亜夢やその家族、そして多くの友を代表して贖罪の道へと踏み進んだ。しかし、最初は普通のバイオリニストを目指していた自分が殺戮にまでも手を染めてしまう現実に、イクトは多大な戸惑いや迷いを生じてしまう。

 

 

 

[Fの片鱗]

 

 迫りくる異常者(ヒール)を確固撃破しながら、前進して扇動者を捜索するマン・ヒールズ。

 しかし扇動者の姿を見つける事はできず、一行はそのまま危険区域で最も巨大な廃墟ビルの前に辿り着いた。

 そのビルの前には、先行していた聖龍隊の部隊が搭乗していたと思われる多くの軍用車が何故か部品の多くを抜き取られて廃車同然になっているのが確認された。

「総長、聞こえますか?」

「ミスティーハニーか、なんだ?」

「只今、私たちは危険エリアの中央に聳えているビルの前まで到達しました」

「そうか、異常者(ヒール)の始末具合は? 扇動者は居たのか?」

「はい、此処まで来るまでに襲ってきた異常者(ヒール)は全て排除しました。彼らの様子から、裏で異常者(ヒール)を操っている扇動者がいるのは確かな様です。それと、もう一つ。先行していた部隊が搭乗していたと思われる軍用車を数台発見しました。どの車も運行不能なまでに部品を抜き取られています」

「なるほど、軍用車か……そうか」

 ビルの前で本部の総長修司に通達するミスティーハニーは、此処までの道のりで視認した異常者(ヒール)の排除と、その異常者(ヒール)の様子から彼らが何者かの指示を受けて動いている事実。そして先行部隊の軍用車を発見した事を報告した。これに修司は何かを思い詰めていた。

 と、その時だった。皆が向かい合っているビルの上方から、不敵な笑い声が聞こえてきた。

「ハーーハッハッハ……」

 この声に聞き覚えのあるマン・ヒールズは全員が騒然とした。

「ウソだろ……!」

 ガイトが思わず声を呟く中、その傍らでイクトは聞き覚えのあるその声の主に怒りすら覚えていた。

 皆がビルの上方に目を向けて見上げてみると、高層ビルの中間そのガラスが割れた箇所からマン・ヒールズを見下ろす輩の存在が確認された。

「ヒャーーハッハ! これはこれは、悪名高いマン・ヒールズの皆様じゃないですか! 君たちが僕の手駒である狂った異常者(ヒール)ちゃんを倒しちゃった訳なの?」

「Mrフェイク……!」

 高層ビルの中間から顔を覗かせて見下ろしてくるのは、あの悪名高いMrフェイクであった。異常かつ天才的な知能を持つMrフェイクの登場に、ミスティーハニーは表情を険しくさせた。

 そしてミスティーハニーだけでなく、他のマン・ヒールズの面々もMrフェイクを睨み付ける。

 だがMrフェイクは侮れない相手である事は確か。今まで数多くの人々が、そして聖龍隊を含む英雄達が煮え湯を飲まされてきた事は間違いない事実。

 するとMrフェイクは地上のマン・ヒールズを挑発するかのように言葉を浴びせる。

「さあさあっ、今宵はこの天才エンターティナーのMrフェイクと、過去に多くの悪行を引き起こした汚らしいマン・ヒールズとの戦いが開幕だ! さあさあ、お立合いお立合い」

 まるで観客を呼び集めるかのごとくマン・ヒールズを招き入れようとするMrフェイク。だが、それが罠だという事は見え見えだった。

 しかし、そんな見え透いた罠に入るのを躊躇っているマン・ヒールズの面々に、Mrフェイクは告げる。

「さあっ、僕を放っておいてどうするのかい? また昔みたいに黙って傍観する側に居るのかい? 友達が傷付けられる様を黙って傍観する悪い子ちゃんに戻ってみるのかい……」

「アイツ……ッ」

 過去の悪行を逆なでする言い方で挑発するMrフェイクの言動に、プラス達マン・ヒールズは怒りを覚えた。

 そしてMrフェイクは気の向くままにマン・ヒールズを挑発すると、満足気にビル屋内へと戻って行く。

 このMrフェイクの挑発を受けて、ガイトが隊長であるミスティーハニーに問い質した。

「ミスティーハニー! さっそく乗り込もうぜ」

「少し待ちなさい。ここはひとまず、確認を取ってから乗り込むわ。焦りは禁物よ」

 そういうとミスティーハニーは本部に通話を試みた。

「総長、総長。応答お願いします」

「ミスティーハニーか、何か進展でも?」

「はい、やはり異常者(ヒール)たちの扇動者はMrフェイクでした。今し方、ビルの中から本人が現れて、自ら宣言しました」

「そうか、やはり居たかMrフェイクは……! それでは、例のブツの回収を最優先に行動せよ」

「了解」

「よし、もしお前達が例のブツを取り返したらA級の異常者(ヒール)ハンターたちを向かわせて、区域内の異常者(ヒール)共を一掃する!」

「……了解」

「よし、すぐさま行動に移せ」

 ミスティーハニーは修司との通信を終えると、部隊にビル内部への進軍を進言しようとした。

 だが、今の通信機から零れた通話を聞いてしまった部隊の隊士達はミスティーハニーを問い詰める。

「やはり……? それってどういう事ですか、ミスティーハニー隊長……!」

「貴女や総長は、前々からMrフェイクがこの一件に関わっている事を周知していたんですか」

「例のブツって、なんなんです?」

 皆から問い詰められ、ミスティーハニーは観念した様に語り明かした。

 

 以前、そう月詠イクトの切断された腕を利用してMrフェイクが聖龍隊本部に潜入した時の事。

 Mrフェイクは聖龍隊本部の、それも総長しか立ち入れない場所に保管されていた機密情報を盗み出していたのだ。

 それも小田原修司が合衆国から預かり受けた最高機密らしい。

 しかし基地内部から逃走を図る途中、Mrフェイクは盗み出した最高機密を聖龍隊の軍用車に隠していたらしいのだ。

 Mrフェイクは今回、アニメタウンの危険区域を異常者(ヒール)達を操って占領し、その対処にやって来た先行部隊を壊滅させた後に彼らが搭乗してきた軍用車を解体して、内部に隠していた機密情報を取り出して私物化しているという。

 この極秘任務をミスティーハニーは修司より密かに任せられており、マン・ヒールズを先導してMrフェイクと彼の配下についている無数の異常者(ヒール)を対処せよと命じられていたのだという。

「……なんなんだ、その極秘の機密事項って」

「それは私達の知る由もないわ。私達は黙って与えられた任務を遂行するまでよ」

 奪還すべき機密事項が何なのか思い詰めるイクトに、ミスティーハニーは自分達の役目を述べる。

 

 一方その頃、Mrフェイクの方は。

「はははは、はーーはっは……彼らが例の秘密を取り返しに来た部隊って奴だね。さて、どんな趣向で出迎えようかな」

 彼はマン・ヒールズを出迎える事しか頭になかった。

 

 

 

[孤立する者たち]

 

 高層ビルに突入したマン・ヒールズは、それぞれ展開して慎重に進軍していた。

「総長、総長。こちらマン・ヒールズ。ただいまビルに突入しました」

「そうか、そのまま慎重に進軍しろ。あのMrフェイクの事だ。どんな罠を仕掛けているか、分かったもんじゃない。十分に気を付けろ」

「了解」

「それと、俺は別件でしばらく席を外す。ミスティーハニー、現場での指揮全権をお前に託す。武運を祈るぞ」

 それを最後に、修司との通信は途切れてしまう。

「ふぅ、現場は現場で任せっきりって訳ね。仕方ないわね」

 ミスティーハニーは修司の言動に渋々ながら反応する。

 

 それからマン・ヒールズはビル内部を突き進んだ。

 目標であるMrフェイクの許に駆け付け、聖龍隊が保持している他国の国家機密を奪い返さなければならない。

 一行はエレベーターに搭乗して、上の階へと進行する。Mrフェイクによってエレベーターを爆破されかねないか注意深く搭乗したが、彼らを出迎えようとするMrフェイクの心意気からエレベーターを爆破される事は無かった。

 しかしエレベーターを使って上へと進行していくと、敵である異常者(ヒール)が武装した状態で待ち受けており、強力な火力の兵器を多用して待ち伏せしていた。

 マン・ヒールズはミスティーハニーの指示に従い、懸命に反撃をお見舞いする。彼らの反撃は異常者(ヒール)の武装を忽ち突破して、返り討ちにしてみせる。

 異常者(ヒール)の攻撃を掻い潜り、マン・ヒールズはビルの最深部へと進攻した。

 だが、そこで彼らが目撃したのは異様な光景だった。

 なんと人型の機械アンドロイドの製作途中の機体が大量に在ったのだ。

 マン・ヒールズが製作途中のアンドロイドの横を通過し、奥へと足を進ませた。

 するとマン・ヒールズは幾つもの人間一人が入れられそうなカプセルが目に付いた。

「なに……このカプセル?」

 マン・ヒールズが一人、沙羅が徐にカプセルに触れようとすると、その様子を隠しカメラで見ていたMrフェイクは遠隔操作でカプセルを起動した。

 するとマン・ヒールズの目の前に設置されたカプセルが突如として開き始めた。

 ゆっくりと開くカプセルの中から、白煙と共に出てきたのは……なんと自分達の総長、小田原修司が裸体で現れた。

「そ、総長!?」

 マン・ヒールズは皆こぞって驚愕し、激しく戸惑った。

 しかし次の瞬間、眼を閉じていた小田原修司は目を開き、紅い瞳で目覚めたのだ。

 そして目覚めた幾つもの小田原修司は起き上がると、なんとマン・ヒールズを襲い始めた。

「うわあッ!」

 突如として襲い掛かってくる小田原修司に皆が驚愕してると、ミスティーハニーは剣で目前の小田原修司を切りつけた。

 すると何と塗装が剥がれて、機械の部分がむき出しになったのだ。そう、起動した小田原修司は全てアンドロイドであったのだ。

 しかもこのアンドロイド、知能などは持たされておらず、植え込まれたプログラム通りに活動するよう作られていた為に、主であるMrフェイク以外の人物を襲うように設定されていた。

「マン・ヒールズ、攻撃よ!」

 ミスティーハニーは攻撃を指示、マン・ヒールズは攻撃を開始した。

 だが、超硬度の金属で作られたアンドロイドは簡単に壊す事は出来ず、外装が剥がれ落ちる程度だった。

「ッ、攻撃が効かない!」

 マン・ヒールズ側の攻撃は全く効かず、その代わり小田原修司に似せる為の塗装が剥がれ落ちる事でよりアンドロイドとしての威圧が増すばかりだった。

「こ、これじゃ……ターミネーターじゃねえか!」

 ガイトが文句を垂れ流しながら、必死に攻撃を維持。しかし小田原修司を模したアンドロイドを完全に停止させる事は困難だった。

 すると破壊を免れたアンドロイドは、部屋の頑丈な内壁を剥がして、其処に保管されていた重火器を取り出して使おうとしていた。

「! まさか、あのロケットランチャーを使うつもり?」

 アンドロイド達の行動を先読みして、ミスティーハニーは愕然と蒼褪めた。

 そして修司型のアンドロイドは文字通り重火器を構えて、それをマン・ヒールズの方へと向けて発射した。

「うわあっ」「きゃあっ」

 ロケットランチャーの爆撃に呑み込まれ、吹き飛んでいくマン・ヒールズの隊士。

 それからも次々に強力な重火器で砲撃を受けて倒れて行くマン・ヒールズ。

 最後に立っていたのは、前線で活躍していたミスティーハニーだけだった。

 ミスティーハニーは目前に立ち続ける小田原修司型のアンドロイドを前にしながらも、まだ戦意を残していた。

 そして剣で立ち向かおうとするが、剣を振り付けた際にアンドロイドに弾かれてしまい、無防備な状態へと至ってしまう。

 それでも彼女は素手でアンドロイドに太刀打ちしようとするが、すぐに捕まってしまいアンドロイドに首を絞められてしまう。

 薄れゆく意識の中、ミスティーハニーはアンドロイドの顔を見て、自分達の上官である小田原修司の事を思い出していた。

 

「忘れるな。お前たちは所詮……元悪役だ」

 小田原修司から、マン・ヒールズを指揮する事になったミスティーハニーに言伝された時の事。

 三次元人が異常者(ヒール)を非常に恐れる様になってからは、三次元政府は二次元政府に圧力をかけ、異常者(ヒール)の疑いがある二次元人を容赦なく処分する事を命じた。これに対処する為、聖龍隊は異常者(ヒール)を処分および端正する為の組織として新たに構築された。その際、元悪役であるキャラクターで構成されたのが今のマン・ヒールズだった。当初は副隊長として就いていたミスティーハニーは、世間からの蔑視を受けながらも元悪役の汚名を着たまま同じ二次元人である異常者(ヒール)を処分して行った。

「悪に慈悲が被られることはない」

 時おり修司が発する冷たい言動にミスティーハニーたちマン・ヒールズは唖然とする中、彼らは日夜戦い続けた。

 

 そんな昔の事を思い出しながら、ミスティーハニーは気を失った。

 聞き覚えのある不敵な笑い声を耳にしながら、彼女達は何処かへと運ばれていった。

 

 

 

[心がない男]

 

 その頃、聖龍隊の本部では。

 一人黙々と自身がコレクションしている銃器で射撃の鍛錬を行う修司の姿があった。

 修司は黙々と設置された標的を狙撃して、銃の腕前を鍛えていく。

 そんな修司の許に、二人の少女がやって来た。

 少女達は射撃場の凄まじい銃声に怯えながら、修司に話し掛ける。

「あ、あの……修司さん」

 その声に修司は目を横に逸らして視認した。

「なんだ、亜夢にるちあか。ちょっと待ってろ。このライフル銃の弾が尽きるまでな」

 修司に歩み寄って来た二人の少女、それは日奈森亜夢と七海るちあであった。二人に修司はライフル銃の弾丸が尽きるまで待つよう言う。二人は黙って修司が射撃の訓練を終えるまで待機した。

 

 そして修司が全ての弾丸を撃ち終え、銃を検品用の棚に置いてから二人に改めて問い返した。

「なんだ? こんな夜更けに……亜夢、お前まだ本部に残っていたのか?」

「亜夢ちゃんは修司さんに訊ねたい事があって、それで残っているのよ。……正直、私も改めて訊きたい事だし」

 無愛想な表情で問い掛ける修司に、るちあが亜夢同様に訊ねたい事があると言うのだ。

「なんだ?」

 修司が訊ねると、亜夢が修司に質問をぶつけた。

「あ、あの………………イクトは、ずっとマン・ヒールズに在籍しているんですか?」

「うーーむ、そうだな……任務によっては、また「しゅごキャラ」の部隊に戻ってもらう事も有るし、マン・ヒールズに与えた任務内容によっちゃイクトも加わってもらって任務遂行に走ってもらうパターンもある。まあ、状況によって多種多様に部隊を編制するから、多忙と言えば多忙だな。それがどうかしたか?」

「い、いえ……イクトは、元々バイオリニストになりたいって夢があるんですけど、新しい右腕にしてもらってから、何だか聖龍隊での異常者(ヒール)退治に専念しているみたいで……」

 不安そうな亜夢の質問を聞いて、修司は無表情な顔で説いた。

「俺もイクトのバイオリンの才能は少しばかり理解している積りだ。実際に右腕の義手を装着してから、色々と微調整を繰り返してバイオリンの弾き語りに適した右腕も既に製作済みだ。だが、イクトはイクトで聖龍隊の……己の職務、いや責務に忠実に従っているんだと思う。過去にイースター社に従い、色々と汚い事や争いごとを招いてしまった贖罪としての活動にも専念している様だ」

「そ、そうですか……」

 暗然と返事する亜夢を見て、彼女に付き添っている七海るちあも修司に言う。

「し、修司さん。亜夢ちゃんはイクトくんが、このままクライム・ファイターを続けて、また危険な事に巻き込まれてしまうのを怖れているのよ。修司さんだって、以前イクトくんや亜夢ちゃんがMrフェイクの事件に巻き込まれて大変な目に遭った時は後悔していたんじゃないの?」

「まあ、確かに最初は亜夢たちガーディアンの面々をクライム・ファイターにしたのを後悔した時もあった。だが、亜夢やイクト達の覚悟を受けて、俺は彼らに人々の夢を護るという使命感を尊重してクライム・ファイターを引き継がせている訳だ。お前が心配するのは解るが……イクトにはイクトの覚悟や贖罪の意があるのを有耶無耶にしてはいけない。かえって尊重させてやんねえと」

 真顔で説明する修司に亜夢やるちあは不安そうな面持ちで訊ねるが、修司は平然とした顔で淡々と説明するばかり。

 すると修司は亜夢に向かって、こう切り出した。

「亜夢、俺は任務に対しては完全遂行を尤うにしている。故に任務に感情を持ち込むことはまずない。危険な内容で在ろうと無かろうと、任務を完遂する為には情も失くすだけだ」

「そ、そんな……!」

「そんなのって……それじゃ、修司さんは自分を慕ってくれる隊士にも……エリルがどうなっても良いって訳!? まるで良心が欠けているみたい……!」

 修司の冷然な話を聞いて悲観する亜夢とるちあに問われ、修司は冷然と二人に告げた。

「俺は良心が欠落しているんじゃない……元から心が無いだけだ」

 修司のこの発言に、亜夢とるちあは愕然とした。

 そして修司は射撃の自己鍛錬を終えるとそのまま何処ぞへと消え失せてしまった。

 

 その後るちあと別れた亜夢は、副長であるバーンズの許を訪れて今度は彼に訊ねようと試みた。

「……バーンズさん、マン・ヒールズってイクトと同じで罪滅ぼしの為に聖龍隊で危険な任務を請け負っているんですよね?」

 亜夢からの質問に、バーンズは素気なくだが率直に答えてくれた。

「まあな。マン・ヒールズ……過去に悪行を働いてしまったキャラクターが在籍する特殊部隊。その任務の多くが危険極まりない、いわゆる汚れ役の任務を請け負わせられる。今では異常者(ヒール)と認定されかけたりしたキャラが端正する為の部隊としても機能している」

「その、マン・ヒールズを修司さんは果たして大切に思ってくれているんでしょうか? 私、不安で……とても失礼だけど、修司さんって感情がないみたいに思ってしまって……」

 亜夢のこの言葉を聞いて、バーンズは亜夢に顔を近づけて言った。

「亜夢、これは此処だけの話だがな………………修司は他人の感情を、特に愛情を感じにくい人間なんだ」

「え?」バーンズの告白に亜夢は愕然とした。

 そしてバーンズは亜夢に語り続けた。

「修司はな、他人からの愛情を感じにくい人間だ。故に任務に対しても、いつも冷然と対応しちまうし、任務完遂の為なら情にも流されない冷酷な人間にも変われる男なんだよ」

「そ、そんな……なんで……」

「これは修司本人と聖龍HEADしか知らない事だが…………修司は発達障害と言うのに患っていて、他人からの愛情なんかを感じない性分なんだ。そんな修司は元悪役を聖龍隊に在籍させて、連中を庇護しようとしていた時、三次元政府から危険だのと色々言われたらしくて……表向きは使い捨ての特殊部隊としてマン・ヒールズを結成させた訳だ。修司は確かにマン・ヒールズを庇護する為に使い捨ての汚い任務を負わせる特殊部隊として構成したが、その裏では連中を他の聖龍隊士と同じで家族の様に大切に思っている訳なんだ。修司は愛と言うものを感じられない悲しい性質……それでも仲間を想う気持ちは変わらないって解ってほしい」

「……………」

 バーンズの話を聞いても、未だに愛情を感じられないという修司に不安感しか残らなかった亜夢は不吉な気持ちでいっぱいだった。

 そしてバーンズも、修司と同様に亜夢に語り終るとそのまま何処ぞへと行ってしまった。

 

 しかしバーンズは、亜夢と別れてから彼女と同じ様に一抹の不安を覚えていた。

 それは聖龍隊の組織を再構築して、再構成しようと試みていた時の事。

 本場アメリカの軍構成を学んできた修司の提案の元、続々と新しい法度に装備が整えられていた時。三次元政府から元悪役や敵役までも聖龍隊に在籍しているのは問題だと指摘を受けた聖龍隊。

 このままでは元悪役達を庇い立てすれば聖龍隊は三次元人から認可されず、活動にも支障を来しかねない現状を迎えたHEADは非常に困惑した。

 改心した、今では友であり身内である元悪役達の居場所を護りたいと強く願うHEADの嘆願を前にした修司は、一つの提案に乗り切った。

「……元悪役、そして敵役達だけの特別部隊を構成しよう」

 元敵であるキャラクター専用の部隊を構成しようと打ち明けた修司の提案に、HEADは衝撃を覚えた。

 そんなHEADを前に修司は平然と険しい表情で語った。

「悪を根絶するには、その悪に精通している連中の力を最大限に使う必要がある。悪によって悪を滅ぼす……同士討ち。いや、毒を以って毒を制すという考えで構成しなければ……同じ悪を根絶やしにする事はできない」

 この修司の考えに異議を申し出るHEADもいた。しかし修司は冷然と考えを改めずにHEADに告白する。

「軍隊、いや組織と言うのは綺麗事ばかりでは済まされないものだ。その汚い部分を、闇の領域を請け負ってもらう特殊な部隊が必要となる」

「組織の汚れ仕事を仲間に請け負わせる気かよ」

 バーンズが修司に問うと、修司は真顔で言い切った。

「だからこそ元悪党による部隊が必要なんだ」

 この修司の提案は、元悪役達の居場所を保持する為にも止む無く遂行される事となり、こうして元悪役や敵役による部隊マン・ヒールズが結成された。

 後に修司は腹心の友であるバーンズにこう述べた。

「最も危険な力と思想を用いた部隊を作りたかった」

 かつて危険な力と思想を持った輩で構成した特殊部隊を結成させ、聖龍隊と言う組織の闇を請け負う任務を与える部署を作った修司。

 

 元悪役達にとっては遅すぎた。

 仲間の為、組織の為に汚い仕事を請け負う順番が回ってきた。

 それは背筋も凍る程の危険で悍ましい仕事。

 身体と心が痛くてたまらない彼らは、日々善と悪の狭間で戦い続けるのだった。

 

 

 

[悪役とは……]

 

 一方その頃のマン・ヒールズは。

 小田原修司に模したアンドロイドの攻撃を受けて全員が傷付き、倒れる中、彼女らは何処かへ運ばれていってた。

 そしてマン・ヒールズの隊長ミスティーハニーが目を覚ましてみると、彼女はストレッチャーに寝かせられていた。

 ミスティーハニーが辺りを見渡してみると、他のマン・ヒールズ隊士も同様にストレッチャーに縛り付けられていた。

「み、みんな!」

 皆の存命を確認しようと呼び付けるミスティーハニー。するとイクトやガイトを始めとする隊士たちは意識を取り戻し、皆目を覚ました。

「こ、これはどうなっているの!?」

「うっ、うぅ……」

 本郷唯や穴戸レナは意識を取り戻してみると、自分達がストレッチャーに乗せられて拘束されているのに気づく。

 すると、そこに一人の人物が可笑しそうに笑いながら、両脇に小田原修司型のアンドロイドを携えて登場した

「ははははっ、おはよう紳士淑女の諸君! このMrフェイクのショーに参加してくれて僕は嬉しいよ」

 愉快そうに登場したMrフェイクに、マン・ヒールズは皆彼を睨み付けて反感を窺わせる。

「いやあ、まさか僕がこの前盗み出した品を取り返す為だけに、君らの様な元悪役の皆様方に御足を運んでもらえるとは……恐縮でありますね」

 喜々とした表情で微笑むMrフェイクの言動に、先ほどミスティーハニーから自分の右腕を利用した際に盗み出した事を知ったイクトが怒りを露わにしながらMrフェイクに問い質した。

「Mrフェイク! 俺の右腕で本部に侵入した際、いったい何を盗み出した!」

「おやおや、君は確か……ああ、あの亜夢ちゃんのお父さんに腕を切られてちゃった哀れなイクトくーーんではないですか。君の右腕を使って僕が何を盗み出したのか知りたいのかーーい?」

 イクトに問い掛けられ、Mrフェイクは陽気な素振りで一つの銀色の筒状のカプセルを取り出して手の上に置いて見せた。

「これだよ、これ。あの修司が世界中から蒐集した内の一つでね。やっと手に入れられて、僕も大満足してる気分さ」

「な、何よ……そのカプセル?」

 ストレッチャーに拘束されながらも、マリアが問い掛けるとMrフェイクは嬉しそうに答えた。

「君らは知っているか、知らないかは解らないけど。これは修司が聖龍隊を……つまりは君たちを守る為に世界中の国家機関から秘密裏に蒐集した国家機密の一つさ。僕も修司同様、世界の秘密ってのを手中に収めながら世界を裏から操ってみたいって思った次第さ」

 小田原修司が握っている世界の秘密を手に入れ、世界を裏から操りたいと豪語するMrフェイク。

 すると、そんな豪語するMrフェイクにミスティーハニーが満身創痍の状態ながらも訴えた。

「そ、その秘密は……このアニメタウンと二次元界、そして多くの二次元人の為に修司が保持しているものよ……!」

 しかし、このミスティーハニーの言い分に対してMrフェイクはさも当たり前の様に説き返した。

「あれれ? 同じ二次元人である異常者(ヒール)を大量に殺戮している君らが、二次元人の為とか話せる義理かい? それに修司が世界中の国家機密を握っているのは、あくまで自分の権力の座を維持したいだけ。二次元人の未来とかは単なる建前だよ」

「そ、そんな事ない! 修司さんはそんな人じゃない!」

 Mrフェイクの言い分にエリルが反論すると、Mrフェイクは笑顔で彼女に返事した。

「おやおや。エリル、君はあの無愛想で人の愛情を感じられない異端な修司に恋しちゃってるのかな? 無駄な事だよ、彼には前々から加賀美あつこが……いや、その前に愛情ってものを感じられない哀れな人間何だからね」

 修司を哀れな人間扱いするMrフェイク。しかしエリルも修司には前々からアッコがいると自覚している。だがアッコは愛情を感じにくい修司の為に、他の女子からの愛情を感じられるようにエリルには修司との交際を認可しているのだ。

 そんな修司の実情を知らないMrフェイクは、マン・ヒールズを徹底的に苦しめようと自分が操っている修司型アンドロイドに多くの機材を持って来させ、ストレッチャーに固定しているマン・ヒールズの頭に装置を被せた。

「ぐふふ、僕が発明したこの修司そっくりのアンドロイド、デモンドロイドは僕の完璧な駒。そして今、君らに装着させたのは……これから君らに体感してもらうエンターテイメントの一環さ」

「あら、修司そっくりのオモチャに続いて、どんな二流のエンターテイメントを披露してくれるのかしら?」

 Mrフェイクの語りに負けずと、ミスティーハニーが言い返す。

 するとMrフェイクは、頭にヘルメットを被らせたマン・ヒールズをまじまじと見詰めて物申した。

「怖がる事はないよ……君らは昔の様に戻るだけさ。そう、身も心も主人公たちに反発した頃の狂った悪役・敵役にね……!」

 Mrフェイクはマン・ヒールズに拷問を仕掛けて、彼らを昔の様な悪役・敵役に戻そうと企んでいた。

 そんなMrフェイクの企みを察したマン・ヒールズの面々は、すかさずMrフェイクに抵抗した。

「わ、私達は昔の様に……友達を否定しない!」

「お前の思い通りに……俺たちが狂うと思うな……!」

「Mrフェイク、以前にもあんたから拷問を受けた事がある俺だが……もう俺はあの頃よりは弱くない。生半可な拷問じゃ屈しないぞ」

 森あい、プラス、そしてイクトからの台詞に、Mrフェイクは装置の電極を持ってマン・ヒールズに言った。

「君らはね……昔の様に、そう狂った様に悪役に染まれば良いんだよ……!」

 そういうと、Mrフェイクは電極を装置に差し込んで強力な電気がマン・ヒールズの頭に嵌められたヘルメットに流れる様にした。

 マン・ヒールズが自分達の頭部から強力な電流が流れ込んでくるのに多少の恐怖と焦りを生じた頃、Mrフェイクは余裕綽々で語り始めた。

「いや、実はね月詠イクトくん。君の切り落とされた右腕を見た途端に、聖龍隊本部に侵入して修司が保有している合衆国の国家機密を盗み出そうと試みた訳さ。だけど基地に潜入したのは良いが、そこに例のデーモンが現れたから僕は仕方なく聖龍隊の軍用車に盗み出した品を隠した訳。……そして今回、アニメタウンの一画を占領している異常者(ヒール)達を先導して、街の一画を支配下に置いた時に先行してきた聖龍隊の部隊が乗って来た大量の軍用車の内の一台から隠しておいた機密情報を取り除いた訳さ。まあ、第一の先行部隊が乗って来た軍用車に目的の品が無かった時は、また別の手を考えていたけどね」

 自分の企みを赤裸々に語り明かすMrフェイクは完全に余裕満々の様子だった。

 そしてMrフェイクは期待に胸を躍らせながら、装置を作動させて最初は軽い電撃をマン・ヒールズに与えた。

『うわあああああああっ!』

 電撃を頭から浴びせられて悶絶するマン・ヒールズ。そんな彼らにMrフェイクは謝罪しながら申し開いた。

「おお、ソーリーソーリー。痺れたかい? いやね、僕は君らを死なせたい訳じゃないんだ……」

 次の瞬間、Mrフェイクは電極を両手に携えながらマン・ヒールズに言い切った。

「ボクは殺したいんじゃない。もっと、もっと……楽しみたいんだよ」

 人を甚振るのを面白がるMrフェイクの言動に、マン・ヒールズは悪寒を覚えた。

 そのMrフェイクは更にマン・ヒールズに電撃を浴びせ、彼らの概念を覆そうと試みる。

「君達は単に、修司から価値観を押し付けられているんじゃないのかい? そう、正義という価値観を」

 総長小田原修司から正義の価値観、固定概念を押し付けられているだけで、本当の自分ではないのではと説くMrフェイクの狂想を頭の中に押し込められていくマン・ヒールズ。

「これが本当の人生なのかい? 幻想の……虚構の世界じゃないの?」

 更にMrフェイクは電撃を浴びせながら、マン・ヒールズに今の人生は偽りで幻想いや虚構の世界なのではないのかと甚振りながら苦痛を浴びせ続ける。

「一歩足を踏み外せば、現実からは逃げられない!」

 一度異常者(ヒール)と見做された人生、いや現実からは逃れられないと説くMrフェイク。

「君は僕に石をぶつけて、僕を侮辱するんだね」

 強力な電撃を浴びせながら、苦痛に表情を歪ませるマン・ヒールズに狂った熱弁を語り掛けるMrフェイク。

「僕を愛しておいて、僕を見殺しにするんだね!」

 二次元人を愛しながらも、そんな自分を見殺しにする気かいと唱えるMrフェイク。

「どうして君たちはこんな事ができるんだい」

 マン・ヒールズに何ゆえ同じ異常者(ヒール)を、二次元人を殺められるのかと問い掛ける。

「こんな世界から逃げ出そうよ、ベイビー」

 遂には歌い出しながらマン・ヒールズに電撃を放電していくMrフェイク。

「もう何もかも、どうでもいい」

 終いには、最後まで抵抗するマン・ヒールズを見放して、電撃で全員の命を奪おうと画策するMrフェイクは、電圧を最大にした。

 

 と、その時だった。

 Mrフェイクが拷問に使用していた電力の供給源であるビルの自家用発電機が突如として停止した。

「ホワッツ!? どうなってるの?」

 突然、拷問に使っている電撃装置が停止したことで異変に気付くMrフェイク。彼は腕に装着している腕時計型の監視装置で自家発電装置のある地下室を視てみた。

 するとMrフェイクの目に飛び込んできたのは、マントヒヒ型の二次元人が自らが操る電気エネルギーで発電機を停止している様子だった。

「何々!? このヒヒの二次元人!?」

 突然現れたマントヒヒ型の二次元人に激しく戸惑い混乱するMrフェイク。

 すると彼とマン・ヒールズが居る高層ビルに爆発の様な衝撃が走った。

「わわわっ、今度は爆発かい?」

 流石のMrフェイクも停電に続く爆発に驚きを隠せなかった。

 と、Mrフェイクが慌てふためいている最中、暗闇の中でイクトが義手である右腕を外して器用にストレッチャーから脱出。続け様にイクトは所持していたナイフで暗闇の中、拘束されているマン・ヒールズの仲間達の拘束器具を切断して皆を解放した。

 解放されたマン・ヒールズは暗闇の中でまずはMrフェイクの護衛を担当しているデモンドロイドを破壊した。

「なにっ!?」

 突然暗闇の中で両脇に立たせていた護衛用のデモンドロイドが壊されて動揺するMrフェイク。

 すると停止していた電気が回復して、灯りが点くとMrフェイクの周りの状況は一変していた。

 マン・ヒールズ全員が解放され、全員がMrフェイクに攻撃の姿勢を向けていた。

 そんな自由になったマン・ヒールズを前に、Mrフェイクは異常者(ヒール)排除への真実と現実を語ってマン・ヒールズの戦意を削ごうとする。

「わ、分かっているだろ、君らはどんなに頑張っても元悪役の汚名は拭えない! 一生、後ろ指を指されたまま生きて行く事になる! それに人工知能を持つロボットが人間を殺めてはいけない様に、君ら二次元人がボクの様な三次元人を殺める事は法律で禁じられている! 三次元人は殺されず、二次元人だけが、それも日の目を見ない君らの様な元悪役がどんなに爪弾き者にされているか理解してるのかい!」

 すると、このMrフェイクの言動にマン・ヒールズは力強い面魂で反論した。

「私達の行いは報われる事がなくても……それでもあんたの様に狂ったりはしないわ!」

「どんなに俺たち二次元人の現実が理不尽であろうとも……俺たちの贖罪が終わる事はない」

 エリルやガイトの台詞に続き、最後にイクトが右腕を突き出した状態でMrフェイクに言い切った。

「どうせ俺たちゃクズ呼ばわりさ」

 どんなに足掻こうが、自分達は過去の行いから忌み嫌われる元異常者(ヒール)の嫌われ者だと自覚するイクトの台詞にMrフェイクは唾を呑み込んだ。

 

 そして形勢逆転したマン・ヒールズはMrフェイクを拘束し、全てのデモンドロイドを停止させて辛くも任務を終えたのだった。

 

 

 

[全てが終わり]

 

「えーー……今回、アニメタウンの一画を占領していた異常者(ヒール)を扇動していたMrフェイクの捕縛には、多くの獣人型の二次元人で構成された対異常者(ヒール)専門の部隊が活躍した次第であります」

「小田原市長! この部隊は過去に反乱を起こしたJフォースと同様に獣人型二次元人をベースに構成されているとの情報がありますが……」

「……その通りです。過去に聖龍隊と熾烈を極めたJフォース、彼らと同類の獣人型二次元人を大元に構成した部隊です。この部隊は、速やかに異常者(ヒール)を処分、摘発する為に結成した次第であります。知っての通り、獣人型の二次元人は人間型の二次元人より数段戦闘力が高い傾向です……」

 記者達の前で力説する修司は、その記者からの質問にも答えていた。

 

 そんな報道会見をテレビで観るマン・ヒールズは、今回の作戦成功のお株を第17精鋭部隊に取られた事を不服としていた。

「俺達の活躍は無かった事にする気かよ!」

 不満を爆発させるガイトの台詞に、その場のマン・ヒールズは全員が曇天とした気分だった。

 そんな各々が不満などの感情を抱える中、ミスティーハニーは皆の心境を穏やかにする様に述べた。

「……今回の作戦は、私達がMrフェイクを引き付けている間に獣人部隊が裏で発電機を破壊して、更に周辺に蔓延る異常者(ヒール)を一掃する為の……いわば囮役を担っていた訳ね」

「作戦成功の為に、私たちマン・ヒールズを囮にして作戦を進行させていたって筋書きだった訳か」

 ミスティーハニーの説明に、ハルカ・ヘップバーンは渋々ながら修司の作戦に同意する。

「作戦を確実に成功させる為に、俺達にMrフェイクの相手をさせられていた訳か」

 危険な役回りを負わされた事実に、イクトは道理がつかない心境ながらも今回の作戦成功の影で自分達の行動が必要不可欠だったのではと思う。

 

 そして報道会見が終わり、修司が聖龍隊本部に戻ってみると、そんな彼をマン・ヒールズが出迎えた。

「……お前達か」

 修司は出迎えたマン・ヒールズの面々を前に、無愛想な面立ちで向き合った。

 するとミスティーハニーが修司に問い質した。

「総長、今回の作戦……私達を囮にしている間に、獣人部隊に作戦を実行させていたのですね。私達がMrフェイクを引き付けている間に、発電装置を破壊して敵の拠点を機能停止にしてデモンドロイドも停止させる様に仕向けた訳なんですよね」

「その通りだ。作戦は、時として危険な役回り……そして囮が必要不可欠な時が必ずある。今回の作戦成功の陰には、お前たちマン・ヒールズの活躍と苦労があった事は評価する。しかし忘れてはならない。お前達は過去の罪状から、余り日の目を見ない悲しい特殊部隊マン・ヒールズだ。少しばかりの犠牲も致し方ないと思え」

 この修司の発言に衝撃を覚えるマン・ヒールズたち。

 そして修司はマン・ヒールズの前から立ち去ろうとするが、その前に彼女達にある事を伝えた。

「そうそう、マン・ヒールズ。今回の作戦でお前達の昇進が確定した」

 修司から昇進の言葉を聞いたマン・ヒールズは耳を傾けた。

「お前達は今後、B級ヒーロー……いや、B級の異常者(ヒール)ハンターとして任務に就いてもらう。扇動者であるMrフェイクを捕えても、相変わらず異常者(ヒール)の暴動や発生は後を絶たない。異常者(ヒール)の処分や摘発を主な任務として行動してほしい。異論はないな」

「は、はい……」

 修司からのハンター業務への異動を命じられたミスティーハニーは、唖然としながらも修司に返答した。

 そして修司はそのまま本部の自室に戻って行った。

 

 聖龍隊本部の自室に戻った修司は、自分のデスク前の椅子に腰を下ろすと机上の電話を取って会話し始めた。

「ああ、俺だ、修司だ。Mrフェイクが奪っていた国家機密は無事に取り返せた。なあに、心配ない。Mrフェイクは機密情報をネットに流した形跡はない、安心しとけ。これからもあんたの所の国家機密は俺が保持して護ってやるからよ」

 すると次の瞬間、修司は驚愕の台詞を発した。

「安心しとけ……JFKを暗殺したのは、オズワルドって事にしといてやるからよ」

 そう言うと修司は受話器を置いて電話を切った。

 そして修司は徐に、一発の弾丸を見詰めるとそれをデスクの中に仕舞った。

 JFK暗殺の証拠は現在、99%が偽物とすり替えられていると言われている。では、残り1%は……。

 

 小田原修司の光と闇の境界線を垣間見たマン・ヒールズは、これからも苦難の道を耐え忍びながら突き進む。

 ヒーローと異常者(ヒール)の狭間で戦い抜くマン・ヒールズ。彼らが行き付く先は……。

 

 

 所はがらりと変わって、とある刑務所。

 此処に一人の政府重役がある犯罪者の許を訪れていた。

「Mrフェイク、いや今はジャクソン・グレイシスかな?」

「ふふふ、さぁて、どっちなのかな? ぐふふ……」

「まあ、いい。それよりも君が作った小田原修司型のアンドロイド、確かデモンドロイドと君は呼んでいたね」

「ああ、僕の最高傑作でしょ? あの修司の戦闘力を機械に置き換えて作り上げた最強のアンドロイド……!」

「そうだ、そのデモンドロイド。それを我々、国連が戦力として利用したいのだが……」

「おやおや、犯罪者の技術を……それも国連軍が私物化しようとは」

「タダとは言わん。デモンドロイドの設計や技術をそっくり国連に提供しれくれれば、君の保釈に少しばかり力を貸してあげよう」

「………………」

「悪い話ではないだろう? 小田原修司の代行に使える兵器を、我々は求めているのだよ」

 数か月後、国連は正式に小田原修司型戦闘アンドロイド、通称デモンドロイドの活用を決定。

 世界が小田原修司に代わる強力な破壊兵器を手に入れた瞬間であった。

 

 

 

[オマケ 修司とエリル]

 

 聖龍隊の激務の最中、この日は二人の隊士が休暇を取って街に出ていた。

 それはあの小田原修司と、ブラック・ラヴァ―ズの一人であるエリルだった。

 修司が無愛想な面構えで歩く中、エリルは強引に修司の腕を取り、腕を組んで歩いていた。

「……なんで俺がデートしなきゃならないんだ」

「そう言わないっ。アッコさんからも許可を取っているんだから。キスまでは許すって」

「おいおい、そんな勝手な……」

 エリルの強引な手引きに、修司は呆れ返ってしまう。

 そんな二人は、一緒に映画を観たり、ゲームセンターでクレーンゲームをしたり、満喫する中、修司だけは気持ちが晴れ晴れとしなかった。

「どうしたの? いっつもそんな顔ばかり……少しは楽しもうよ」

「エリル、俺みたいな男と一緒にいて楽しいか? 男女の仲を、デートを楽しめない、俺みたいなツマラナイ男と戯れて楽しめるか?」

 無愛想な顔を浮かべる修司に問うエリルだが、逆に修司から問われてしまう。

「俺はどうしても楽しめない。いつも単独行動が主流の俺に取っちゃ、誰かと一緒ってのはこう何だか落ち着かなくてよ」

「………………」

「いやな、お前の俺への気持ちは凄く解っている積りだ。だけど俺は………………過去に俺を愛してくれてた二次元人を、敵として斬り捨てた事も有る非情な男だ。お前も話に聞いていると思うが、かつて俺は二次元人だけの軍隊Jフォースに所属していたエリーゼという女を止む無く斬り捨てたんだ。俺自身も、もう繰り返したくない経験だったが今でも後悔している過去なんだ」

「………………」

「そんな俺は、Jフォースが抱えていた可能性を今でも信じ、Jフォース同様に獣人タイプの二次元人を聖龍隊に新たに加えた。身勝手な思想だが、俺は奴らの……今は亡きJフォースを偲んで戦闘力の高い獣人タイプの二次元人を配置させた訳だ」

 修司の話を聞いて、エリルは悲しげな表情を浮かべる。

「……エリル、俺は他人からの愛情を少しも感じない情のない人間なんだよ。お前の、俺への愛情は嬉しい限りだが……それでも、俺は愛と言うモノを微塵も感じない冷酷な男だ。そんな男にうつつを抜かしていたんじゃ、人生損するぜ」

 いつも無愛想な顔を浮かべる修司に楽しもうと声を掛けるエリル。だが修司は他人からの愛情を感じない心境から、心が晴れやかになれなかった。

 そんな無表情で自分の真意を語る修司に、エリルは少しでも励まそうと修司の頬に軽くキスをした。

「!! な、なんだ急に……!」

 突拍子もないキスに困惑してしまう修司を前に、エリルは笑顔になった。

「にゃは、やっと顔を変えてくれた。いつまでも無愛想じゃ顔の筋肉が固くなっちゃう。少しはほぐそうよ」

 笑顔のエリルを見て、修司は少しばかり顔を赤く染める。

 そんな修司の手を引き、エリルはまだ行ってないデートスポットに向かう。

 しかし、そんなエリルの心意気を察しながらも、愛情を感じられない修司は冷淡に自分自身を分析した。

 

(俺には……愛情なんて不要だ)

 他人からの愛情を。仲間達が感じられる愛情を感じられないが故に、自分には愛情は不要だと悟る修司。

 彼には本当に愛情とうものを感じられないままなのであろうか。

 

 

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