聖龍伝説:現政奉還記 創生の章:昔語り編   作:セイントドラゴン・レジェンド

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 マン・ヒールズの面々から語り継がれた、かつてメカルスと繰り広げた壮絶な戦いの数々。
 メカルスが抱く思想に惹かれ、自分達を裏切った多くのヒールハンターたちとの熾烈を極める戦いを乗り越え、ウェルズや修司の助けも借りながら遂にメカルスを倒す事に成功したマン・ヒールズの心に安堵感が訪れる事は無かった。
 思想の違い、そんな根本的な食い違いから異常者だと決め付けられ、敵に寝返ったハンターたちとの壮絶な戦いの数々を伝え聞いて、新世代型達は息を呑んだ。
 そんな愕然とする新世代型達に、スター・コマンドーを束ねる村田順一が険しい面持ちで語り始めた。
「……しかし、僕らはヒールの定義に疑問を持った事がある。これは、かつての総長であり僕らの師であり……そして君たち新世代型の始祖である小田原修司も疑念を抱いた二次元界を巻き込んだ内戦、Jフォース大戦に纏わる噺だ。ヒールとは何なのか、この話を聞いて君らにもじっくり考えてほしい」
 村田順一の険しい顔を目の当たりにして、新世代型達は肩に非常に重い空気が圧し掛かる場の空気を察しながら話に耳を傾けた。
 彼が語るには、世界史には二次元界内での内輪もめ、内戦と言う事で記録されてはいないが、二次元界全体を巻き込んだ激しい大戦を経験した当時のスター・コマンドーと小田原修司の悲しい戦いの記憶。
 当時、警察機構として再構成された聖龍隊と、二次元人だけの軍として成立したJフォースの、激しくも悲しい戦渦の物語が今語られる。



現政奉還記 創生の章 昔語り 衝突!Jフォース大戦

[プロローグ]

 

 時は2004年にまで遡る。

 多数の異常者(ヒール)が発生する二次元への対処を迫られた小田原修司は、自らが指揮する聖龍隊が異常者(ヒール)排除の対策を行うと公式に声明した。

 しかしこれにより、聖龍隊の組織力が増強されるのを懸念した三次元政府は、修司率いる聖龍隊とは別に二次元人だけで構成された軍隊Jフォースを確立させる。

 このJフォースには、かつて小田原修司が修業時代に世話になった多くの軍人である二次元人が抜擢され、結果的に聖龍隊とJフォースはお互いを認め合うまでに結束を深めた。

 結果、聖龍隊は警察機構として、Jフォースは軍隊の組織として再出発する事となった。

 

 しかしある晩、Jフォースが最高司令官ジェネシスの屋敷にある人物が訪ねてきたところから悲劇は始まった。

 雷鳴轟く中、その人物とジェネシスはテーブルを挟んで向かい合い、空気は張り詰めていた。

 そんな空気の中、訪れた人物はジェネシスに対して話を切り出した。

異常者(ヒール)ハンター、聖龍隊。三次元人にしっぽを振って同じ二次元人を虐殺する者ども……危険とは思わないか?」

「………………」

 漆黒の黒衣を全身に纏う、その者はジェネシスに対して強めの口調で唱えた。

「ジェネシス、あんたも薄々は分かっている筈だ。奴らは単に三次元人に従わない二次元人を殺めているに他ならない……!」

「……」目前の者から問い詰められ、考え込むジェネシス。

「やられる前にやれ! お前達、Jフォースには聖龍隊を倒せるだけの強大な力がある!」

 目前の者の主張に耳を傾けるジェネシス。しかし彼は目の前の者に毅然とした態度で告げた。

「……お引き取り願おうか」

「!」

「三次元人を裏切る訳にはいかない……それに、お前は所詮、彼の……修司のコピーにすぎん」

 次の瞬間、ジェネシスは強く言い放った。

「立ち去れ! 二度と私の前に姿を現すな!」

 これに黒衣の者は不敵に笑みながら返した。

「クククク、まあいい、そのうち気も変わるだろう」

 黒衣の者は高々と嘲笑を上げながらジェネシスの屋敷から立ち去った。それをジェネシス本人は睨みを利かせていた。

 

 それから数日後のこと。

 聖龍隊本部では、先の北の国開放の功績として総合部隊スター・コマンドーが移動の準備に追われていた。

 彼らは皇軍として職務を行おうと、聖龍隊から正式に移籍しようとしていたのだ。

 だが、そんな彼らの下に出撃命令が下った。

異常者(ヒール)発生! 異常者(ヒール)は、最新の兵器で空中都市スカイラグーンを占拠! この軍隊はJフォースと思われる!」

「了解。ただちに出撃します! (Jフォースが異常者(ヒール)? 何かの間違いじゃないか?)」

 村田順一たちスター・コマンドーは今まで協力し合ってきたJフォースが異常者(ヒール)に成り下がる訳はないと思いつつも現場に急行した。

 

 その頃の小田原修司はというと。

 仮眠室で仮眠をとっている真っ最中だった。

 そんな修司は不思議な夢を見ていた。

 突如として自分を照らす眩い光の中から現れる一人の老人らしき人物が、修司に声をかける。

「……修司、小田原修司よ……」

「誰だ?」

 修司が問い返すと、老人は修司に語り掛け続けた。

「修司よ、ワシの最高傑作……」

「……あんたは誰だ!」

「倒せ奴らを! ワシ等の敵、ワシ等の宿願……ワシらの、生きがい……」

 修司は立ち上がると、さらに老人は言い放った。

「ゆけ! そして滅ぼすのだ、奴らを……!」

 そういうと老人は光の中に消えていった。

「! 待て! あんたは一体……、ッ!」

 光の中に消えていく老人を追おうと、修司は駆け出そうとするが、同時に彼の頭を激痛が襲う。

 余りの激痛にその場に跪く修司の脳内では、数多くの映像が過った。

 謎の老人、謎の施設、謎の図面が書かれている書類の山、惨殺されている多くの死体、血に染まった自分の手。

「……緊急事態発生! 緊急事態発生! 待機中の聖龍隊士はすぐさま集合せよ!」

 だが修司の耳に響く聖龍隊本部のアナウンスが、彼を目覚めさせる。

「また……あの夢か……」

 よく見てしまう夢に悩まされる修司は、仮眠室から飛び起きるとすぐさま司令室に向かった。

 

 そして修司は司令室で空中都市スカイラグーンがJフォースらしき部隊に占拠された事態を聞く。

「Jフォースだと? ……分かった、直ちに現場に急行する」

 修司は順一達に続き、彼らの後を追うようにして現場に向かった。

 

 その頃のスター・コマンドーは。

 巨大竜型ロボによって破壊されていく空中都市スカイラグーンを突き進んでいた。

 スター・コマンドーは協力し合い、まずはスカイラグーンの中枢部ともいえる動力炉へと向かった。

 スカイラグーンを占拠した軍隊が、完全にスカイラグーンを制圧するには動力炉の制圧が不可欠だからと認識したからだ。

 そして向かってくる異常者(ヒール)を撃破しながら、スター・コマンドーは動力炉に辿り着いた。

 すると、動力炉には既に別の聖龍隊士の姿があった。

「きみは14部隊のハンター、サイキック・フレイヤーじゃないか!」

 その隊士の名を順一は叫んだ。スター・コマンドーの目の前に現れたのは、燃え盛るような鬣の様な髪型に顔に特徴的な傷跡がある、炎を操る事ができる超能力者にして最上級の格闘家サイキック・フレイヤーだった。

「マズいぞ! ジュン、スター・コマンドー! さっきの戦闘兵器が動力炉を破壊した」

 フレイヤーは先ほど順一たちも目撃した巨大竜型の戦闘兵器が動力炉すなわち浮遊装置を破壊したと報告。これに順一たちは非常に焦った。

「なんだって! それじゃ、このスカイラグーンは……もうすぐ地上に激突してしまうじゃないか!」

「もう手遅れだ、ジュン。俺は急いで脱出する。お前達も無茶をせず、退避するんだ、いいな!」

 順一達にも早々に退避するよう告げたフレイヤーは一足先にその場から離脱した。

「このままでは、下の街は火の海だ。多くの犠牲者が出てしまう……とにかく脱出して下の街に行くしかない!」

 大勢の被害者が出てしまう惨劇が起こる。しかし自分達だけでは何もできない現状を理解して、順一たちは苦渋の決断としてスカイラグーンから脱出した。

 

 こうしてスカイラグーンがアニメタウン区域の街に落下。多くの犠牲が出てしまった惨劇を、後に「スカイラグーン落下事件」と記された。

「……なんてことだ。街が滅茶苦茶だ。何の罪もない人たちを…………許せない!」

 スカイラグーン落下に伴い、地上の街並みが廃墟と化した現状に順一たちスター・コマンドーは憤りを感じた。

 と、其処に遅れて修司が駆け付けてきた。

「ジュン! スター・コマンドー!」

「総長!」

「ジュン、みんな。酷い惨劇になっちまったな」

「は、はい……」

「そう自分達を追い込むな。こうなったのも、全ては異常者(ヒール)共のせいだ。とにかく今は暴れ回っている巨大マシンを破壊するのが先決だ!」

 修司から告げられ、スター・コマンドーも修司と共に前進する事にした。

 

 崩落するビル、建造物を突破して進撃する修司とスター・コマンドー。

 するとその道中で、修司を先頭とする一行はある少女に出会う。

「エリーゼ! エリーゼじゃないか!」

 瓦礫の山と化した街の中に倒れていた、茶毛猫の獣人の女の子を見て、修司は血相を変えた。それは修司とは顔馴染みであり、Jフォースの指揮官で修司とは昔馴染であるカールの婚約者でもある猫の獣人エリーゼであった。

「大丈夫か!?」

 修司はすぐさま猫の獣人であるエリーゼに駆け寄ると、彼女は傷だらけの姿で返事した。

「……修司。助けに来てくれたの?」

「そうだ。しっかりしろ!」

「巨大なドラゴンの姿をしたロボットが……突然、襲ってきて……」

「ここを動くな、エリーゼ。すぐに始末してくる!」

 修司はすぐさま後続の聖龍隊士が現場に駆け付ける事態を見越して、安全を考慮した状態でエリーゼにはその場に残ってもらうように指示した。

 そして再び前進する修司とスター・コマンドー。だが、前進しながら修司は悩んでいた。

「……巨大ロボットを動かしている部隊は、本当にJフォースなのか? ……くそ、悩んでいるヒマはない! すぐに奴を倒さないと、被害が増えるばかりだ!」

 修司達は急いで巨大竜型の最新兵器の許に急いだ。

 

 巨大な竜型の戦闘兵器の許に駆け付けた修司達。

 案の定、竜型戦闘兵器はスカイラグーン落下で廃墟と化した市街地でも容赦なく猛威を振るっていた。

「急いで破壊するぞ!」

 修司の掛け声の元、一行は暴れ回る竜型戦闘兵器を攻撃した。

 飛び回るドラゴン型の戦闘兵器は無尽蔵に飛行しながら地上の修司達を捉え、口から炎を吐いて攻撃。

 それを結界師の二人が防ぎ、修司と順一を筆頭とした斬り込み隊が戦闘兵器へ反撃する。

 スター・コマンドーの凄まじい攻撃力と、修司の技による威力が相まって瞬く間に戦闘兵器はボロボロに至る。

 そして最後に修司と順一の、二つの刃から発せられる斬撃が一体化した巨大斬撃で戦闘兵器は完全に破壊・爆発した。

 

 巨大ドラゴン型の戦闘マシン破壊に成功した修司とスター・コマンドー。

 すると戦闘マシンを破壊した直後、その場にJフォースの部隊が駆け付けてきた。

「修司! 久しぶりだな!」

 駆け付けてきたJフォース士官カール。屈強な肉体に卓越した剣術を持ち合わせるこの軍人を前に、彼と昔馴染である修司は訊ねた。

「カール。お前……何故ここにいる?」

「婚約者のエリーゼを助けるため、急いで駆け付けたのだ。彼女は無事だろうか?」

 これに修司は、先ほどエリーゼを聖龍隊が保護したとカールに伝えた。

「エリーゼなら大丈夫だ。さっき俺たちが保護した」

「……そうか。すまんな、修司。一つ、カリができた……」

 と、ここで修司はカールに自分達が抱えている疑心を突き付けた。

「……カール。お前に訊きたい事がある。……ここを襲ったのは、お前のとこの部隊なのか?」

「何を言っている? 我々Jフォースも急いで駆け付けたのだ。ここで暴れていた軍隊は、Jフォースではない!」

 カールからの返答を聞いて心の内では安堵する修司だが、カールに変えられない事実を突き付ける。

「それを聞いて安心した……が、お前達に異常者(ヒール)の疑いが、かかっているのは事実……」

「何だと!?」

「ひとまずお互いに武器を置いて、俺と聖龍隊本部にまで来てくれ」

 修司はカール達Jフォースに事情聴取を行うが為に、平和的に事を運ばせようとした。だが

「ふざけるな! 軍人が武器を捨てるだと? いくら昔馴染みのお前の頼みでも、そんな事ができるか!」

 カールは軍人の誇りを優先して、投降を拒否してしまう。

「だが、このままでは俺は……お前達を異常者(ヒール)だと認定せざる得なくなる!」

「なんとでも呼ぶがいい! 我々Jフォースは、軍の誇りを捨てるより、戦いを選ぶ!」

 修司は聖龍隊の指揮官として、また二次元界を安寧させる役目上、異常者(ヒール)認定する立場なのだが、この事実を周知しているカールは聞く耳を持たなかった。

「さらばだ、修司!」

「待て! カールッ! 俺の話を聞け!」

 修司はカールを引き留めようとするが、カールは一瞬で姿を消すほどの速さでその場から離脱してしまった。

 この事態に修司は非常に焦燥していた。

「くそっ! カールの馬鹿野郎が……! このままじゃ、Jフォース全体が危険視されて……本当の異常者(ヒール)と見做されてしまう!」

 

 このスカイラグーン占拠および落下事件を受けて、世間はJフォースに一気に疑いの眼差しを向けた。

 そして異常者(ヒール)疑惑が向けられた事で、強大な軍事力を持つJフォースは行動を発起した。

 遂にあくる日、Jフォースは二次元界の人々に向けてテレビを使った大規模な公開演説を行った。

 演説するのは、Jフォースの総司令官である将軍ジェネシス。

「我がJフォースの勇敢なる兵士諸君。今や、我々Jフォースの全員が異常者(ヒール)だと決めつけられた。だが、我々とてこのまま汚名を着せられておく訳ではない。我々は自らの手で、二次元人だけの国家を建てる! ただし、これは三次元人に対しての敵対ではない。自由と安全、それに正当な権利を求める為の戦いなのだ。共に築こう……何者にも侵されない、理想の国家を! 共に進もう、我々Jフォースの未来に向かって……!」

 このジェネシスの独立宣言を受けて、Jフォースの軍人達の士気は一気に高まった。

 そしてジェネシスに続くJフォースの指揮官カールも、ジェネシスの意見に賛同した。

「私もジェネシス将軍と同じ意見だ。いいか、我々にはこれしか道がない! 恐れず、勇気と誇りを持って戦おう。我々はJフォース! 史上最強の軍隊なのだ!!」

 このカールの宣言にも、Jフォースの軍人達は大いに昂った。

 そして、この公開演説を視聴して高笑いする一人の者がいた。

「ジェネシスの奴め、とうとう動いたな。さあて、聖龍隊の者どもよ、どう出る? 此処から高見の見物をさせてもらおうじゃないか」

 

 

 

[勃発するクーデター]

 

 スカイラグーン落下事件

 地上の市街地に落下したスカイラグーン落下事件は多数の犠牲者を出す大惨事となった。

 聖龍隊本部は「Jフォースがスカイラグーンを占拠」という情報を現場に向かった隊士達同様受けており、修司達はばったり会ったカールに武装解除・任意同行を要請する。

 しかしカールはこれを断りその場を去り、聖龍隊や二次元人達は彼らJフォース全体への疑いを強めた。

 この落下事件がきっかけとなり組織に異常者(ヒール)疑惑が向けられた事を受け、ジェネシスは二次元人だけの国家を造る事を決意。彼自身によってTV生中継による独立宣言が行われた。

 

 この事件の最中、聖龍隊士の手により修司とスター・コマンドーが破壊した戦闘兵器がJフォース仕様の兵器である事。そして現場であるスカイラグーンでJフォースの精鋭である「ノット・ベレー」の姿が目撃された事態で世間はJフォースに益々疑惑の眼差しを向ける。

 軍人としての修業時代に、共に共闘しあったJフォースの面々を異常者(ヒール)と認定するのを躊躇った修司。そんな修司の想いを汲み取って、聖龍HEADもJフォースを異常者(ヒール)だと決め付けるのを躊躇った。

 しかしそんな聖龍HEADの想いとは裏腹に、Jフォースは遂に独立宣言をした直後、各地でクーデターを相次いで勃発。

 大量のライフライン施設を破壊・占拠し多くの犠牲者を出すに及んで、慎重な姿勢を見せていた聖龍隊組織そして修司自身もJフォース組織全体を異常者(ヒール)認定せざるを得なくなる。

 かくして後に「Jフォース大戦」と呼ばれる二次元界内での戦争の導火線に火が着いた。

 

 Jフォースが各地を占拠した背景で、やむを得ず異常者(ヒール)認定した聖龍隊は即座に行動に移した。

 そして司令室に赴いた修司だが、彼の前に意外な人物が司令室にいた。

「エリーゼ! ……なぜ、ここに?」

 それはスカイラグーン事件で負傷し、聖龍隊に保護されたJフォース指揮官カールの婚約者でありJフォースの通信士である猫の獣人のエリーゼだった。

「……カールたちJフォースが、クーデターを起こしたの」

「……分かっている」

 エリーゼからの重く悲痛な言葉に、修司は毅然とした態度で答える。

「お願い、修司。カール達と戦わないで! きっと、何かの間違いなのよ!」

 エリーゼは自分や修司を世話していたカール達Jフォースが今の様な行動を起こしたのは何かの間違いとして、聖龍隊に参戦するのを止めて欲しいと訴えるが。

「Jフォースは、既に各所を占拠している。それに俺が手を下さずとも、他の聖龍隊士が止めに行くだろう」

「修司……」

 修司は既にJフォースが各地を占拠し、それによって多くの人命が奪われている現状を制止する為にも、そして例え自分が出撃しなくとも他の聖龍隊士が出撃するとエリーゼに伝えた。

 エリーゼの悲しい思いを受け止めつつも、修司は聖龍隊に出撃命令を下した。

「聖龍隊! 出撃せよ!」

 

 この修司からの出撃命令を受けて、聖龍隊士は各自、出撃していった。

 そんな中、順一達スター・コマンドーは聖龍隊としては最後の職務を果たそうと意気込んでいた。

 この大戦が終われば、自分たちスター・コマンドーは正式に日本の皇軍として聖龍隊から移籍する。その前に、この争いを一刻も早く終わらせようと決意していた。

 と、そんな順一達の前に、彼らが見慣れている顔が。

「君はトウキ……トウキじゃないか!」

 順一の前に現れたのは、彼やマイの同級生である、やや肥満体で穏やかな顔付きの青年トウキ。彼は嬉しそうに順一達に返事した。

「ジュン! マイ! 俺もようやく聖龍隊の一般隊士に入れたんだ。これから一緒に頑張っていこう!」

 トウキは順一達に嬉々とした様子で話し出した。

「へへっ、つい先日のジュン達の活躍も見ていたんだぜ。ジュンと総隊長の合体技で、見事に破壊された巨大ドラゴン型の兵器……この兵器がJフォース仕様の兵器だって確証が得られたのも、おれがJフォースでしか使われない特殊な部品を破壊された機体の中から発見したからなんだぜ」

「へぇ、入隊早々、さっそく手柄を立てられたんだね」

 順一は友であるトウキの手柄を素直に喜んだ。

 するとトウキは順一達に指令を報告した。

「早速だけど、ジュン達スター・コマンドーにも出撃命令が出た。みんな、気を付けて行ってくれ」

 

 各自出撃指令を受けたスター・コマンドーは、さっそく各自分担して現場で出撃しようとしていた。

「……お前たち」「そ、総長」

 そんなスター・コマンドーの元に、やむを得ずJフォースを異常者(ヒール)認定した上で聖龍隊に出撃命令を下した修司が声を掛けた。

「お前たち、こんな事になってしまってホントに済まない。お前達にとっては最後の聖龍隊の任務だったろうが、それがこんな戦争になっちまうとは……」

「総長、そんなに気にしないでください。貴方とJフォースの軍人達が、過去に同じ軍に在籍していた同僚同士だったのは周知しています。総長にとっては戦いにくい相手でしょうし、ここは僕らに任せて下さい」

「ジュン……ありがとう。お前達の武運を祈る。俺は俺の方で、Jフォースが本当にスカイラグーンを襲撃したのかどうか、慎重に再調査を進める方針だ」

「はい、頑張って下さい! 僕らも各地で勃発しているクーデターの鎮圧に向けて精進します!」

 そして順一達は各自準備を終えて、聖龍隊司令部に足を運んだ。

 

 

 聖龍隊司令部は、各所で起きているJフォースが絡んでいる事件を含む、8つの事件を表示した。

「ゲリラ部隊が待ち受ける、険しいジャングル。建設中のビーム兵器を破壊せよ」

「ネットワークに異質な存在が見つかった。サイバー空間にダイブし、この異質な存在を取り除け」

「Jフォースのバトルシップが飛び立った。直ちに出撃し、バトルシップを迎え撃て」

「14部隊の隊長サイキック・フレイヤーが突然の裏切り行為。彼を探し出し、聖龍隊本部に連れ戻せ」

「Jフォースが建設中のジャッジ・ザ・シティを破壊して撤退した。直ちに彼らを追撃せよ」

「廃棄された筈のラボラトリーが動いている。原因を突き止めたのち、ラボラトリーを処分せよ」

「軍が誇る、巨大なミリタリートレイン。Jフォースの補給作戦を阻止せよ」

「激しい吹雪が吹き荒れる北極エリア。氷の奥に隠された新兵器の完成を防げ」

 こうして各地・各所で勃発する事件を、スター・コマンドーの各隊士達が散らばって鎮圧に向かった。

 

 

 

[開幕を告げる警鐘]

 

 ゲリラ部隊が待ち受けていると報告が入った険しいジャングル地帯を、スター・コマンドーがスパイダーライダーズが前進していた。

 既にジャングルの各所には、Jフォースの軍人が配置されており、ハンター・スティール達を迎撃する。

 しかしスティール達はこの猛攻や、激しいゲリラ戦法を突破してジャングルの奥、最新のビーム兵器の許へと向かう。

 その道中、スパイダーライダーズはある不思議なカプセルを発見、接近してみる。

 するとカプセルの中から、今は亡き二次元界の神、手塚治虫の姿が立体映像として映し出された。

「スター・コマンドーよ、この戦いはあってはならない戦いだ。何故、同じ志を持つ二次元人同士が戦い合う? 平和を守る者同士がなぜ戦わなければならないのか? きっと何かの間違いだ。スター・コマンドー、このカプセルに入ってくれないか。この装備を着けて真相を突き止めてくれ。フットパーツを付ける事で、二度空中でジャンプする事ができ、前後に動ける他しばらく滞空できる。一刻も早く無駄な戦いを止めてほしい、スター・コマンドー」

 二次元界の神、手塚治虫からの伝言を聞いた上で、スパイダーライダーズは脚部にフットパーツを装備して再びジャングルを突き進む。

 

 そしてジャングルの奥地に辿り着いたスパイダーライダーズは、そこで既に発射体勢にまで突入したビーム兵器を目撃する。

「大変! 急がないと、兵器が発射されてしまうわ」

「みんな! 急いで兵器を破壊するぞっ」

 コロナの発言に反応し、ハンター・スティールは早速兵器の破壊に着目しようと先陣を切った。

 が、そんなハンターを上から電気を帯びた蜘蛛の糸が絡み取って痺れさせてしまう。

「な、何だこれ……って、うわあっ!」

「ハンター!」

 電気を帯びた蜘蛛糸に捕えられたハンターを前に、相棒のシャドウが名を叫ぶ。

 すると其処をイグナスが急いで駆け付け、ハンターを捉える蜘蛛の糸を叩き斬って救い出す。

「ハンター、スパイダーライダーズが蜘蛛の糸の捕まっちゃ、お終いだよ」

 助け出されたハンターに、ルメン王子が愛想を告げる。これにハンターは苦笑を浮かべた。

 と、そこに生い茂るジャングルの頭上から一体の二次元人が出現してスパイダーライダーズに声を掛ける。

「まったく……俺のところに派遣された異常者(ヒール)ハンターが、こんな女子供ばかりとは……」

 その二次元人こそ、開発中のビーム兵器を護る任務をJフォースから遣わされている密林のゲリラコマンダー、ウェブ・スパイダスだった。

 蜘蛛の獣人であるスパイダスは、地上のスパイダーライダーズを見下ろして文句を言った。

「我々を異常者(ヒール)と決め付けおって! 修司の奴、昔世話してやった恩を仇で返すつもりか?」

「総長は、今でもお前達の無実を信じて疑いを晴らそうとしてくれているんだ! 大人しく武器を捨てて、投降してくれっ」

 電気系の能力者でもあるスパイダスに投降するよう説得を試みるハンター。だが、スパイダスは自分たちJフォースを異常者(ヒール)と認定した聖龍隊に激しく敵意を向ける。

「黙れ! 此処からは通さん! 命が惜しくば、立ち去れ!」

 しかしいつ発射されるか分からないビーム兵器を放置しておく訳にもいかず、スパイダーライダーズはスパイダスと戦闘するという苦渋の決断をした。

「此処を通すわけにはいかんのだ!」

 遂にスパイダスとの戦闘が開始されてしまった。

 スパイダスはスパイダーライダーズの頭上から電気を帯びた蜘蛛の巣「ライトニングウェブ」を発射。

「それ!」

 飛ばされてきた電撃の蜘蛛の巣を、ハンターたちスパイダーライダーズは回避するが、スパイダスはそれからも木々の間に隠れながらライトニングウェブを飛ばしていく。

「それそれそれ!」

 複数のライトニングウェブを発射してきたスパイダスの猛攻に、アクーネとイグナスそしてスパークル姫が蜘蛛の巣に囚われ、電撃を受けてしまう。

「きゃあっ」

 電撃の蜘蛛の巣ライトニングウェブを受けて体力を消耗すると同時に痺れて動けなくなる三人。

 その三人を救出するべく、ハンター・スティールが剣でライトニングウェブを一瞬の内に切り裂いた。

 ハンターの機転で三人は蜘蛛の巣から助け出されたが、その間にコロナがパートナーのビーナスに乗った状態で跳躍して、頭上のスパイダスに矢を放つ。

 しかしスパイダスは、木々の葉っぱに身を隠してコロナが放った矢を容易く回避してみせる。

 何度も木々の間に身を隠しながら蜘蛛の巣を発射して来るスパイダスのゲリラ戦法をどうにかしようと、ハンターたちは陣形を組んで互いの背を預け合う。

(何とかしないと……でも、どうすれば……!)

 ハンターはどうにかしてスパイダスを木々の間から姿を現す様に仕向けないか思考する。

 すると頭上の葉が揺れて、その間からスパイダスが自らが出す蜘蛛の糸で自身を吊り上げながら出現し、再び地上のハンター達に攻撃しようとした瞬間、ハンターは閃いた。

「! そうだ、そこだ!」

 ハンターはシャドウと共に高く跳び上がり、スパイダスが自身を吊り上げる蜘蛛の糸を剣で断ち切ってしまう。

 するとスパイダスは真っ逆さまに地上に落下し、「ほぎゃぁーー!」と叫んでしまう。

 スパイダスが糸を切られて地上に落下して大打撃を受けたのを見計らい、スパイダーライダーズは一気にスパイダスを包囲する。

 だが、包囲されたスパイダスは地上に巨大なダイヤ型の蜘蛛の巣を展開して、スパイダーライダーズを絡め取ってしまう。

「絡めとってくれるわ!!」

 そしてその蜘蛛の巣に、スパイダスは自らが発する電撃を流してライダーズを痺れさせる。

「うわあっ!」

 巨大ライトニングウェブに捕えられてしまったハンターたちスパイダーライダーズは、強力な電撃で痺れて思うように動けなくなってしまう。

 そんなスパイダーライダーズにスパイダスは不敵に告げた。

「俺たちJフォースを甘く見ているからこうなる……修司から聞かなかったのか? 俺達は昔から卓越した戦闘技術であらゆる任務をこなしてきた凄腕の軍人だと」

 さらにスパイダスは、痺れて動けないスパイダーライダーズに冷徹なまでに告げた。

「さあってと、そんじゃ折角だし、完成したばかりのビーム兵器で近くの街でも破壊してやるか。聖龍隊が俺たちJフォースを攻撃した、その報復としてな!」

 なんとスパイダスは聖龍隊がJフォースの作戦に介入した報復として、手始めに完成したばかりのビーム兵器でジャングル近くの街を破壊すると宣言。これを聞いてハンター達は黙っていなかった。

「そ、そんな事はさせないぞ……! 俺たち聖龍隊が……スパイダーライダーズ、いやスター・コマンドーがさせるとでも思っているのか!」

 すると、そんな決意が力となったのかハンターは一人、自分達を捕えていた巨大ライトニングウェブから離脱し、ビーム兵器に向かおうとするスパイダスに駆け出した。

「小僧め! だが、この攻撃……かわせるか!?」

 しかし向かってくるハンターに、スパイダスは一気に4つのライトニングウェブを射出して彼の行く手を阻もうとする。しかしハンターは自分に向かってくる4つのライトニングウェブを僅かな隙間を掻い潜って回避。一気にスパイダスと距離を縮める。

「!!」

 一気に距離を縮められたスパイダスは、急ぎビーム兵器作動の制御盤に駆け出そうと走り出す。しかし、その背後からハンターが迫り、そして遂にハンターはスパイダスを背後から斬り付けてビーム兵器発射を防いだ。

「俺達は……護るために戦うまでだ!」

 ハンターは自分達の覚悟を決め込んだ上で、スパイダスを斬った。

 だが、背後から斬り付けられたスパイダスは自分を斬ったハンターにこう告げた。

「こ、小僧……これで全てが終わった訳じゃない、いや、始まったにすぎんね……お前たち聖龍隊が、俺らJフォースを攻撃した事は、おれの通信機を通して軍全体に伝わったね……! お前達が俺らを攻撃した事で、開戦の火ぶたが切って落とされた……お前らが、この戦いの戦渦を広げたんだね……もう戦いは終わらない、おれたちJフォースは戦いを止めない……」

 この死にかけのスパイダスの言葉を聞いて、ハンターは酷く落胆した。

 その頃、スパイダスが展開した巨大ライトニングウェブから解放されたコロナたち他のスパイダーライダーズがハンターに駆け寄ると、彼の落胆した様子が窺えた。

「は、ハンター……」

 酷く落胆するハンターの只ならぬ様子を悟り、コロナが声を掛けようとした瞬間、ハンターは絶叫した。

「いつ終わる、いつ終わるんだよ……いつ戦いが終わるんだーーっ!!」

 自分達は平和の為に、そしてか弱き者を護る為に戦っている。しかし、その戦いが新たな戦いを、戦渦を呼び、引き寄せてしまう現実にハンターは激しく慟哭した。

 すると其処に、今にも死に絶えそうなウェブ・スパイダスが落胆するスパイダーライダーズに話し掛けてきた。

「終わら……ん……ね……判らん……か……ね……続……くね……」

 ハンターに続き、自分達の戦いが、努力が新たな戦渦を引き起こしてしまった現実に打ちひしがれるスパイダーライダーズにスパイダスは、最後の力を振り絞って主張した。

「お前達の言う【争い】は決して無くならんね……人間が不完全である限り、人間である三次元人に生み出された俺達も不完全なのは当然だね……その当然の結果を三次元人が異常者(ヒール)として否定し続け……貴様らの様なエセ英雄が生まれる世の中である限り……二次元人による独立は叫ばれ続けるね…………俺たち……二次元人は……現世にいながら……無限地獄をさまよう……思想概念から生み出された……デク人形……さ…………」

 自分達は三次元人同様に不完全な存在故に、争いを止めるどころか新たな戦渦を引き起こしてしまう不完全な偽りの英雄なのではないか。

 

 そんな警鐘をスパイダスから告げられたスパイダーライダーズは、傷心のまま聖龍隊本部に帰還した。

 

 

 

[無邪気な故の残酷さ]

 

 所は変わって此処は今では使われなくなった筈の生物研究所、通称バイオラボラトリー。

 既に廃墟と化したこの生物研究所を【おとぎ銃士赤ずきん】の赤ずきん、白雪、いばらの三人が調査及び施設の破壊に訪れていた。

 確かに施設は人っ子一人いない静寂に包まれているに思われたが、一歩施設に踏み入ると其処は多くの装置や機械が作動して訪れた者を惑わせていた。

 螺旋階段を上っていくと、上の方から敵である生物兵器が落下してきて赤ずきん達に襲い掛かる。

 赤ずきん達は迫ってくるトラップを破壊・回避しながら前進し、この研究所を稼働させた張本人が誰なのか調査する為、前進する。

 実はこの時、施設の防衛システムが稼働していたため、そのプログラムが赤ずきんたち来訪者たちを襲うよう仕掛けられていた。

 施設の防衛システムを稼働させた張本人を探しながら、赤ずきん達は前進する。

 施設を進んでいくと、人工的に作り出された茨の植物が、その桁外れの大きさの棘で生命反応のある赤ずきん達を襲撃した。

 赤ずきん達は各自、己の得意戦術で射出される茨を粉砕して自分と仲間を守り抜く。

 そして激しい戦闘の戦火で施設の一部は崩落。だがまだ健在の施設を突き進み、調査を続行する赤ずきん達。

 再び施設内の螺旋階段を突き進んでいると、上方から茨の棘の塊が転がってきて、赤ずきん達に迫る。赤ずきん達は一瞬驚いたものの、即座に棘の塊を破壊して進行を続けた。

 やがて赤ずきん達は人造植物の猛攻を掻い潜り、生物研究所の最上階に辿り着いた。

 

 すると彼女達の目の前に、キノコの姿をした二次元人が現れた。

 高速回転しながら目の前に現れたのは、ここ生物研究所の管理用キノコ型二次元人、名をスプリット・マシュラーム別名廃墟の小悪魔。

 マシュラームは赤ずきん達の前に立ちはだかると、子供の様に無邪気な素振りで言った。

「君たちが聖龍隊? 聖龍隊が来たら遊んでやれって言われてるんだ!」

「え! 誰の命令でそんな事を……!?」

「おしえないよーーだ!」

 赤ずきんが誰の指図なのかと問い掛けるが、マシュラームは子供の様に拒絶して赤ずきん達に襲い掛かった。

「ヒーローごっこしよう! 君たちが悪者ね!」

 マシュラームはヒーローごっこと称して、赤ずきん達と戦闘を開始した。

 本来はマシュラームは廃墟と化したバイオラボラトリーと共に破棄された筈なのだが、何ゆえ赤ずきん達の前に現れたのだろうか。

 しかしそんな疑問を考える時間すらなく、マシュラームは赤ずきん達に攻撃してきた。

「行けーー!」

 マシュラームは壁際に張り付いたと思いきや、胞子で作り出した虹色の分身を発生させて突撃させていく。

 複数の虹色の胞子から生み出された分身を、赤ずきん達は慌てながらも回避する。

「ははははっ、どんどん行けーー! それ行けーーっ」

 自分の分身を続々と突撃させていくマシュラームは無邪気に喜々とする。

 そんなマシュラームを見て、赤ずきんが叫んだ。

「き、君は悪い子じゃない……! ただ善悪の区別が、良い事と悪い事の区別ができてないだけっ!」

 赤ずきん達は、無邪気ゆえに無意識下の残酷さが垣間見えるマシュラームを、思考が幼いゆえの暴走だと判断。マシュラームに戦闘をやめる様言い渡す。

 しかし自称「ヒーローごっこ」を続けたいマシュラームは攻撃を止めようとはしなかった。

「やだやだ! もっと遊ぶんだい」

 駄々をこねるマシュラームは、空中に跳び上がると其処で回転し、胞子の霧を発生させた。すると先ほどの虹色の分身とは全く違う、本体とはまったく見分けがつかない分身を一体生み出しては同時攻撃を仕掛けて赤ずきん達を撹乱させる。

「それーー、それーー!」

 二体同時で突撃して来るマシュラームに苦戦を強いられる赤ずきん達は、絶えず防戦しながらマシュラームに訴える。

「もうやめて……! 争い合う必要はないですわっ」

 白雪の悲痛な訴え。だがその訴えはマシュラームに届く事なく、マシュラームは二体同時で攻撃し続ける。

 どうにか動きを封じようと、いばらが自身の得物である鞭でマシュラームを捕縛しようと試みるが、彼女が捕まえたのは胞子から生み出された分身の方だった。

 分身を掴まされたいばらに、マシュラームは体当たりしてきた。

「弱い友達は、いらないからね!」 「っ!」

 マシュラームからの体当たりを受けて、悶絶するいばら。

 更にマシュラームは空中を跳び回る中、地面に向かって頭突きを行って紫色の毒の胞子を噴出。これに赤ずきん達は多少ながらも息苦しくなり苦戦される。

 そしてマシュラームは再び壁に張り付いて虹色の分身を突撃させようとしたその時。

 攻撃を止めようとはしないマシュラームに、やむを得ず赤ずきんが攻撃。炎系の魔法でマシュラームを彼が生み出した分身ごと焼き尽くした。

「わ! わ! 熱い、熱いっ!」

 燃えやすい胞子を発生させるマシュラームは忽ち燃えてしまい、全身に火傷を負ってしまう。

「わーーん、酷いや酷いや! せっかく遊んでやろうと思ったのにぃ」

 泣きじゃくるマシュラームは一気に本体と見分けがつかない分身を二体発生させて、三体で赤ずきん達に襲い掛かった。

 だが、この時すでに赤ずきん達は本体と分身の見分けとして、本体からは虹色の輝く胞子が噴き出していると視認していた事で、迷う事無く反撃に転じた。

 白雪といばらは分身の方にすかさず、氷と大地の魔法技を撃ちかまして分身を撃破。

 そして赤ずきんは炎を纏わせた剣でマシュラームが放出する胞子を全て焼き尽すと、剣の切っ先をマシュラームに突き出した

「ひっ!」

 剣の切っ先を向けられ、声にならない悲鳴を上げるマシュラームに赤ずきんは笑顔を浮かべて言った。

「……ふふ、もう大丈夫。もう悪い事しないでね」

「あ、あ、あぁ……」

 赤ずきんの慈愛に満ちた笑顔を目の当たりにし、マシュラームの中で何かがはち切れた。

 

 そして満身創痍なマシュラームは赤ずきん達、三銃士から優しい心を感じ取り、遊戯の如き戦いを終わらせた。

 そして赤ずきん達が行く当てのないマシュラームの身柄を保護しようと、マシュラームを引き連れて聖龍隊本部に帰参しようとした。

 が、その時。

 満身創痍のマシュラームを何かの影が突如として空中にさらった。

「だ、誰!?」

 赤ずきんが何者かと咄嗟に問い詰めると、研究所の天辺に見た事もない大柄な体格の禍々しい顔付きの二次元人男性が気絶したマシュラームを掲げて赤ずきん達を見下ろしていた。

「へへへ、何がもう大丈夫、だよ。そうやって安心し切っていると、隙が生まれるぜ!」

「あ、あなたは一体だれ!?」

 白雪が突然登場した謎の男に問い掛ける。

「へっ、テメェら雑魚に教えてやる義理はねえよ! それよりも、この戦わずして敗北したキノコ野郎を切り刻まねえと!」

 白雪の問いかけにも答えず、謎の男は捕らえたマシュラームに右手から伸びる刃を突き付ける。

「待って! その子には、もう戦う意思はない……放してちょうだい」

 謎の男の言動に、いばらが訴えるものの男は凶悪な顔で彼女達に言った。

「ひゃははっ、戦う意思がないだと……? 笑わせるな! お前ら聖龍隊と戦えなくなった奴など、必要ねえんだよ!」

 すると男は持ち上げていたマシュラームを放り上げると、一気に両腕の伸びている刃を振り付けて、マシュラームを細切れにしてしまう。

「「「!!」」」

 目の前で、先ほど和解できたマシュラームを細切れにされたのを目撃した赤ずきん達三人は愕然としてしまう。

「俺たち二次元人は戦う為に……そう、殺し合う為に生み出された存在なのよ!!」

 放心状態に至る赤ずきん達に、男は容赦なく痛め付けては面白がった。

 

 そして徹底的に赤ずきん達を痛め付けた男は、最後に残忍な面構えで台詞を吐いた。

「へへへ、これで分かっただろ? 弱い奴は嬲られるのが道理なんだよ!」

 そう吐き捨てると、男はどこかへ去って行ってしまった。

 男が立ち去った直後、満身創痍の赤ずきん達は未だ放心状態が続いていた。

 しかし、彼女達は体の痛みよりも心の方が激しく痛んでいた。

 そんな中、赤ずきんは目の前に打ち捨てられたマシュラームの亡骸を前にして、虚ろな目で呟いた。

「……ごめんね、助けられなくて……」

 赤ずきんは謎の男に細切れにされたマシュラームの亡骸を見据えて、空虚な想いに駆られた。

 

 自分たち二次元人は、本当に戦う為だけに生み出された存在なのか。

 謎の男からの言葉に赤ずきん達は考えさせられるのだった。

 

 

 

[電脳の守護者]

 

 処は変わって、ここはサイバー空間。

 このサイバー空間にダイブした大門大率いる【デジモンセイバーズ】の面々は、複雑に入り組んだコンピュータープログラムの中を突き進んでいた。

 自分たちの意識をデータ化した上で、サイバー空間に意識をダイブさせる事で調査および戦闘が可能となる大たちだったが、案の定コンピューター内には多くの異質で自分達に敵意を向けるプログラムが多く確認された。

 行く手を阻むプログラムに対し、大たちは長年培ってきた経験とチームワークで快進撃をしていった。

 そして何重にも仕掛けられたファイヤーウォールをクリアして、大たちは慎重にサイバー空間を突き進む。

 するとサイバー空間を突き進んでいくと、大たちの前にあの手塚治虫からのカプセルが在るのを視認した。

「スター・コマンドーよ、ここではヘルメットパーツを授けよう。ヘルメットパーツは君たちの特殊能力、すなわち潜在能力の質を改善する。己の能力を最大限に生かして、この争いを止めてくれ」

 手塚治虫からのメッセージを受けて、大たちは躊躇う事なくカプセルの中に入った。そして装着したヘルメットにより、能力の使用を格段に上昇させられた。

 

 それから大たちは一心不乱にサイバー空間を突き進み、ついにプログラムの最深部にまで到達した。

 この辺りから異質なプログラムが完治された筈だと、大たちは辺りを見渡して異質なプログラムを探し回る。

 すると大たちの目の前、その頭上から一体の獣人型のプログラムが出現した。

「ふ~~ん、あなた達……中々の戦闘力じゃない。惚れ惚れしちゃうわ」

「へっ、テメェ、何を企んでやがる!」

 大がオネエ口調のクジャク型プログラムに問い質すと、プログラムは素っ気ない様子で返答した。

「別に。ある人に頼まれたのよ、あなたたち聖龍隊を調べてくれって」

「なんだと!?」

 自分たち聖龍隊を調べるように命令されたと告げられて、トーマ・H・ノルシュタインが表情を険しくさせる。

「まあ、私の見立てによると……あなた達スター・コマンドーの実力なんてたかが知れているわ。それよりも潜在能力が未知数な小田原修司の方がよっぽど調査のし甲斐があるわ」

 この発言を受けて、大は比較された事に腹を立てて怒号を吠えた。

「言ってくれるじゃねえか……! 調査する必要はねえ、俺達自身がテメェの体に教え込んでやるよ!」

「ふふふ、私の相手をするなんて、10年早いわ! 行くわよ!」

 大の怒号を聞いて、クジャク型プログラムのサイバー・クジャッカーは戦闘を開始した。

「それじゃ、いくわよッ!」

 戦闘を始めるクジャク型プログラムサイバークジャッカーは、元々はハッカーからネットワークを守るガードプログラムであったのだが、何者かの手によって高慢な無差別攻撃プログラムへと変化してしまったらしい。

 プライドが非常に高いクジャッカーは、サイバー空間を自在に移動できる術で瞬間移動が可能なプログラム。

 その瞬間移動を巧みに使い、大たちデジモンセイバーズを翻弄しつつ攻撃。

「これでどう?」

 羽を伸ばして攻撃してくるクジャッカーは攻撃後、瞬間移動で姿を消した。

 そして更に追い打ちをかけるかのようにジャンプ攻撃も仕掛けてくる。

「どこ見てるの?」

 死角から不意打ちを仕掛けてくるクジャッカーの戦術に苦戦に追い込まれるセイバーズ。

「逃がさないわよ」

 更にクジャッカーは大たちにカーソルで標準を合せると、追尾性の羽を飛ばして攻撃してきた。

「わあっ!」

 無数の羽を浴びて、思わず声を上げてしまう藤枝淑乃たち。

「醜いものは滅びておしまい! 行くわよ!」

 そんな藤枝たちを醜いものと評するクジャッカーは、更に追撃せんと瞬間移動してからの羽攻撃を仕掛けていく。

 だが、どんな悪戦苦戦を感じても、その闘志を決して失わない大は、瞬間移動するクジャッカーの動きを見切ってから灼熱の拳を叩き込んだ。

「酷いわッ!」

 大の拳を受けて絶叫するオネエ口調のクジャッカーは、怒り心頭で大たちセイバーズにトドメの攻撃を射出した。

「お仕置きの時間よ! 行くわよ!」

 次の瞬間、クジャッカーは先ほどよりも大量に追尾性の羽を飛ばして来た。

「避けられないわよ」「へっ、避ける必要はねぇ!」

 不敵に微笑するクジャッカーに対し、大は放たれた大量の羽を真正面から全て受け止めてから己の拳を前方のクジャッカーに向けて突き出した。

 そして攻撃を全て受け切った大は、魂のこもった拳をクジャッカーに向けて打ち込んだ。

「ぐふっ」

 大の拳を真正面それも顔面に打ち付けられたクジャッカーは悶絶しながら口にした。

「お、小田原修司だけじゃなかった……聖龍隊、そしてスター・コマンドーもまた、その潜在能力は……未知、数……!!」

 大の強烈な一撃を受けたことで、聖龍隊やスター・コマンドーもまた警戒しなければならなかった危険な存在だと認識するクジャッカー。

 だが時すでに遅く、サイバー・クジャッカーは大の大打撃を受けた事で爆発・消滅した。

 

 クジャッカーに渾身の拳を叩き込んだ大は、床に着地した途端、全身で攻撃を受け止めた反動で少しよろめいてしまう。

「あ、アニキ!」「大! また無茶して……」

 パートナーのアグモンと仲間のトーマに支えられながら、大は勝ち誇る。

「へ、へへ……俺たち聖龍隊を、スター・コマンドーをなめすぎだぜ……」

 自分たち一般隊士であると同時に、最強と呼び声高い小田原修司の弟子達の実力をなめていたクジャッカーを打倒して、大は実に満足気だった。

 

 

 

[正義はどちらに]

 

 先んじてジャングルのゲリラ部隊、それを先導していたスパイダスが攻撃された事で、聖龍隊とJフォースの戦火は切って落とされてしまう。

 そんな戦況の中、スター・コマンドーが隊士である【ゼロの使い魔】の面々と【結界師】の二人が、出撃するJフォースの空中艦隊の迎撃に向かっていた。

 しかしJフォースの中でも、反乱派と反対派の二つに分かれており、実際に戦闘に参戦している空軍の数は通常より少なかった。

 そんな空中艦隊を確固撃破していくスター・コマンドーの母船スター・シップは、平賀才人が操縦する零戦を聖龍隊が総合部隊全員が搭乗できる様に大型に改造された戦闘機であった。

 このスター・シップを操縦する才人は、群がってくるJフォースの空軍機体を次々と撃墜させ、戦果を上げていく。

 無論、Jフォース側も黙っている訳はなく、スター・シップに向けて反撃を展開。だが、この反撃を同乗する結界師の墨村良守と雪村時音がお得意の結界術で防御して一方的に戦況を突破していく。

 だが、実はこのバトルシップや空中艦隊の出撃は全て敵を陽動させる為に作戦であり、艦隊はスター・シップを迎撃する体制が既に準備し終わっていた。

 そんな敵の作戦を知らずに、スター・シップは敵機母艦へと着陸する。

 着陸した機体から平賀才人や墨村良守が出撃し、母艦内へと進撃。艦内で待ち受ける敵を次々に撃破して突破。

 すると進撃する一行の前に、あのカプセルが目に付いて、近づくと手塚治虫がメッセージを伝えてくれた。アームパーツを受け取り、戦力を強化したスター・コマンドーの一員として才人や良守たちは奮戦した。

 そして早速、強化された装備を試す時が。それは母艦を稼働させている動力炉、その動力炉は侵入者対策として反撃するようプログラムされていたのだが、反撃を受けて才人や良守たちは果敢に反撃。見事動力炉破壊に成功した。

 動力炉を破壊した一行は、母艦の外部へと急ぎ脱出して帰還しようとしていた。

 が、そんな一行を母艦外部で待ち受けているJフォースの軍人が。

 その軍人はフクロウの姿をした獣人で、礼儀としてか、上空から地面を揺らすほどの竜巻と共に現れると着地した瞬間に目の前の一行に向けて敬礼した。

「よくも、よくも、私の部隊を滅茶苦茶にしてくれたな! このお礼は、きっちりとさせてもらうぞ!」

「待ってくれ! うち等の総長は、あんた達の無実を信じて今でも調査を行っているんだぞ!」

 才人が自分達の総長、修司が未だにJフォースの身の潔白を信じていると告げるが、目の前のフクロウの鳥人は厳しく言い放った。

「我々を、異常者(ヒール)扱いした修司の言論など、今更信じられん!」

「落ち着けって! 今からでもクーデターを取りやめて、冷静に話し合おう……!」

 墨村良守も才人に続き、フクロウの鳥人を説得しよとするが、相手は聞く耳を持ってくれなかった。

「正義は我らJフォースにあり! 行くぞッ!」

 そしてフクロウの鳥人、大空の参謀長の異名を誇る頭脳派の将校ストーム・フクロウルとの戦いが始まった。

 

「目標補足! 5分以内に撃破する!」

 聖龍隊に激しい敵意を向けるフクロウルは自身の特殊能力である風の力を使い、風の弾を発射。それは真空の刃の塊であり、触れれば忽ち切り刻まれてしまう。

「結界!」

 と、この風の弾を良守や時音が結界術を用いて防御。しかしフクロウルの攻撃は留まらず、彼は優雅に空中を飛行しながら次の手を繰り出す。

 フクロウルは自身の羽に取りつけた武器から小型のレーザーを3方向に向けて連射。才人や良守たちは上空からのこの攻撃を部隊ごとに散って回避する。

 すると二つの部隊が散り散りになったのを視認したフクロウルは、上空から個々に別れた墨村良守を狙って鷲掴みしてきた。

「うわ、うわっ」

 鋭い爪が生えた足で掴まれて上空に持ち上げられる良守は軽く困惑。するとフクロウルは良守を掴んだまま、甲板に叩き付けた。

「ぐはっ」

 甲板に叩き付けられ、悶絶する良守。

 しかしフクロウルが良守を甲板に叩き付けて降下したのを皮切りに、才人がフクロウルに斬りかかる。

「ほぉぉぉっ!!」

 才人からの攻撃を受けて思わず叫ぶフクロウルは、そのまま墜落してしまう。

 だが、フクロウルはまだ戦意を失くしておらず、一度再上昇してから攻撃に移った。

「我々を敵に回した報いを受けよ!」

 フクロウルは風の弾を一度に4つ投げ付けると、その弾は一定時間空中で停止してから一気に標的であるルイズやタバサ達に向かってきた。

「きゃあっ」

 真空の刃の塊である風の弾がルイズ達に直撃し、ルイズやタバサそしてキュルケの衣服が破け散る。

「おっほう♡」

 衣服が破れて肌蹴る様を見て、才人が色目を使う。

「こら才人! 色目使っている場合じゃないだろうがッ! 戦いに集中しろ!」

 思わず見惚れてしまってる才人に、良守が戦闘に集中するよう言いつける。

 すると同じく見惚れて突っ立っている才人を視認して、フクロウルが上空から体当たり攻撃。

 後頭部に強く体当たりされた才人は軽く目を回してしまい、千鳥足になってしまう。

 そんな才人にフクロウルは再度レーザー武器で攻撃を仕掛けようとしたが、その才人を護ろうとルイズが魔方陣による防御魔法で才人をレーザーから護る。

「女に護られるとは……軍人の恥さらしだな!」

 ルイズに護られた才人を見て、フクロウルは才人を見下した。

 するとフクロウルは、一気に6人を攻撃しようと、6人の足元から凄まじい三本の竜巻を発生させて空中へと舞い上がらせる。

「うわっ!」

 空中に高々と舞い上げられた才人たち6人は、そのまま甲板へと叩き落とされ、全身を痛めてしまう。

「い、イテテテ……こうなったら……おい良守、ちょっと手かしてくれ」

 体を痛めながら、才人は良守に耳打ちした。

 そして良守と才人は行動に移した。

「結界!」

 良守は空中に複数の小さな結界の立方体を作り出し、その箱の様な立方体の上に才人が飛び乗り、空中を飛行するフクロウルに接近する算段だった。

「ふん、ヒヨッコめが! 地面にへばりついていればいいものを・・・!」

 フクロウルは結界術を利用して空中を移動する才人に目を付けて、彼に風の弾を発射する。

 だが向かってくる風の弾を才人は右に左にと避けながら上へと駆け出し、フクロウルに飛び掛かっては斬り付けた。

「ほぉぉぉっ!!」

 再び斬り付けられたフクロウルはまたも墜落してしまう。

 すると追い詰められたフクロウルは奥の手を繰り出した。

「奥の手だ!」

 そうフクロウルは叫ぶと、風の弾を4方向へ断続的に放った。そしてそのまま時計の針の如く回転して、甲板上の才人や良守達を狙う。

「みんな後ろへ下がれ! 結界!」

 良守は時音と協力して、強力な結界を拵えてフクロウルの奥の手を防ごうとする。

 しかしフクロウルの奥の手の威力は凄まじく、結界は真空の刃が断続的に当たる事で、まるで強力なチェーンソーで切られ続けているかのように結界にひびが生じた。

「こ、このままじゃ私たち細切れよ!」

 追い詰められる戦況に、キュルケが焦燥の顔色を浮かべる。

 すると此処で才人が、良守と時音が展開する結界の上に飛び乗ると一気に跳躍してフクロウルに飛び掛かった。

「さ、才人!」「何するんだ! 無茶だぞ!」

 フクロウルの周囲に展開する風の弾に突っ込む才人を見て、ルイズと良守が呼び止める。

 しかし才人は怯む事無く、フクロウルに直進する。

「バカめ! 細切れになるが良いわッ!」

 自身が発生させている風の弾に突撃して来る才人を見て、フクロウルは容赦なく彼を風の弾で構成した壁で切り刻もうとする。

 そしてフクロウルの目論見通り、才人は風の弾が集まった壁に突っ込み、切り傷だらけとなる。

「あぁ……!」

 ルイズは切り傷だらけになる才人を見て悲観した。

 だが才人はその身が切り傷だらけになろうが、突撃が緩まる事はなく、フクロウルにトドメの一撃をお見舞いした。

「ほぉぉぉっ!!」

 フクロウルは叫んで墜落。立ち上がる事もできなかった。

 

 そしてフクロウルを斬り捨てた才人は、甲板に着地すると一気に疲れが出たのか思わずよろめいてしまう。

「才人!」「才人、こいつ無茶しやがって……」

 ルイズと良守達が駆け付ける中、才人は勝ち誇った笑みを皆に向ける。

 すると才人に斬り捨てられたフクロウルが瀕死の状態で訴え掛けた。

「ッ……こ、殺せ……」

 軍人として負け恥を背負う事を極端に嫌うフクロウルは介錯するよう才人たちに訴えた。

 しかし才人たち一行はフクロウルに歩み寄ると、話し返した。

「俺達は別に、アンタ達を殺す気は毛頭ない。一緒に聖龍隊本部に来て、話し合おう」

「ふっ、何を言うかと思えば……敵に情けを掛けるなど、恥以外の何物でもない……!」

 すると才人に続き、良守もフクロウルに話し掛ける。

「恥でもなんでも良い。とにかく生きろ。生きてりゃ、お互いに生き伸びられる道が見つかる筈だ」

「ふ、ふざけるな……! 恥をこいて生き抜くのなら、敵を道連れに死ぬのが軍人としての誇り……!」

 と、フクロウルは懐から強力な爆弾を取り出して、スイッチを押そうとした。

「や、やめるんだ!」

 良守が制止を呼びかけるものの、フクロウルは隠し持っていた爆弾を爆破させて自爆。才人や良守達も巻き添えにした。

 そして硝煙上がる甲板の上で、爆発に巻き込まれた才人たちが満身創痍で起き上がると、目の前には爆発で吹き飛んだフクロウルの残骸が転がっていた。

「なんで……なんで結局、最後は……こうなっちまうんだ……!」

 才人はお互いに共生できる道を差し向けたにも関わらず、自決に近い形で爆死したフクロウルの覚悟に激しい憤りを感じ抜いた。

 

 

 人間である三次元人達から異常者(ヒール)だと決め付けられ、考えを改めないが故に反乱を起こしたJフォース。

 そして、その三次元人の味方をする聖龍隊に激しい敵意を抱いたフクロウルが言い放った言葉が才人たちの脳裏に響いた。

「正義は我々Jフォースにあり!」

 二つの正義、二つの思想は決して交わる事無く、この大戦は続くのであった。

 

 

 

[メモリアルホールでの対決]

 

 スター・コマンドーの隊士たちに出撃命令が下り、総部隊長である村田順一は聖龍隊本部に恋人でもある愛澤マイと共に待機していた。

 するとそんな順一達の元に、親友であり同時に聖龍隊の新人隊士であるトウキが慌てた様子で駆け付けてきた。

「ジュン、あのカールからメッセージが届いているぞ」

「なに! カール指揮官が……!」

 トウキの報告によれば、いま各地を占拠しているJフォースの指揮官カールから伝言があるという。

 さっそく順一はカールからの伝言を伝え聞いた。

「村田順一に告ぐ! メモリアルホールにてお前を待つ! 必ず来い!」

 カールは今や全軍出撃して無人と化したJフォースの本拠地のメモリアルホールにて順一を待つと伝言。この伝言を一緒に聞いていたトウキは焦った様子で順一に言った。

「ジュン、これは罠だぞ!」

「……そうかもしれない。だけど、逃げる訳にはいかない!」

 順一は制止するトウキの言葉を聞き入れるものの、背を向ける訳にはいかない使命感から恋人のマイと共に出撃する事を決意する。

 そして順一とマイは、Jフォースが本拠地そのメモリアルホールに向かった。

 

 将軍ジェネシスが独立宣言をした場所としても有名になったメモリアルホール。

 此処に訪れた順一とマイは前進し、ホールの中央まで前進した。

 ホールは電灯が消えており、真っ暗闇であったが、中央まで進むと順一はカールに向かって訴え掛ける。

「カール指揮官! もう馬鹿げた事はやめてください!」

「……断る!」

「落ち着いてください、カール! 考え直してください!」

「我々Jフォースは独立する! これはその為の戦いなのだ! いくぞッ!」

 カールにクーデターをやめるよう訴える順一であったが、カールはこれを拒絶。独立の為に戦いとして順一達の前に立ちはだかった。

 颯爽と瞬間移動で目の前に現れたカールと対峙すると、ホールの灯りが点いて明るくなったと同時にカールが戦闘開始の合図として順一達に告げた。

「修司の弟子だというお前達と、一度本気で戦ってみたかった」

 旧友であり、かつての相棒である修司が育てた順一と本気の勝負を待ち望んでいたと告白したカールは俊足で順一に斬りかかった。

 一瞬の出来事であったが、順一は総長修司から授かった聖龍剣の兄弟刀【純心】でカールの刃を受け止めた。

 そして一時だけ順一とカールは鍔迫り合いすると、カールは一旦距離を置いてから、瞬間移動で己の姿を晦ました。

 順一とマイがカールの姿を探していると、カールは再び目の前に現れて順一に斬りかかる。

 順一はカールの刃を寸でのところで受け止め防ぎ、辛うじてカールの刃から己が身を護るのだけで精一杯だった。

(この人……強すぎる!)

 順一はカールと直接対決したことで、改めてカールの剣術の高さと強さに圧倒された。

 するとマイが順一の危機と知って、変身するとカールに向かって飛び掛かる。だがカールは容易にマイの突撃を回避すると、順一とマイは衝突してしまい床に転倒してしまう。

 そこにカールは刃から斬撃を放ち、順一とマイの二人に攻撃。危機に直面するマイだが、順一は即座に立ち上がり、カールが放った斬撃を刀で受け止めて、防ぎ切ろうと純心を前に押し出した。

 何とかカールからの斬撃を防ぎ切る事ができた順一だが、カールとの実力は歴然の差だった。

 順一は自分の、いや例えスター・コマンドーが全員そろっている状態で戦ったとしても、目の前のカールには到底及ばない実力の差を噛み締めた。

「このままでは負ける……!」

 順一は何とかカールが振り付ける刃を防ぎ切るのだけで精一杯の状態で、カールと対峙するしかできなかった。

 このまま順一はカールに斬られてしまうのか。順一と同じく一抹の不安を感じるマイは、激しい剣戟を繰り広げる順一とカールの一騎打ちを傍観するしかできなかった。

 

 と、順一とカールが激しく闘い合っている最中。

 聖龍隊本部で、Jフォースへの異常者(ヒール)疑惑を払拭させるべく奮闘していた修司の耳にも、カールが順一を呼び付けている事実が伝わって来た。

「なに! それは本当か、トウキ!」

「は、はい。カールからのメッセージを聞いて、ジュンはマイと一緒にメモリアルホールに向かいました」

「マズいぞ、ジュンの腕前じゃカールに勝つのは困難だ。急がねえとジュン達が危ない!」

 トウキから事の事情を聞かされ、修司は順一の技量ではカールに勝つのは難しいと断言した上で自らもメモリアルホールに向かおうとする。

 すると、その会話を傍らで聞いていたエリーゼが修司に訴える。

「修司、待って! カールと戦うのだけはやめて!」

 かつて恋心を寄せていた修司と、今の婚約者である最愛のカールの二人が闘い合うのを怖れるエリーゼ。

 だが、そんな彼女に修司は強く主張した。

「Jフォースと聖龍隊の誇りを賭けた戦いだ。逃げるわけにはいかない……!」

 そして修司はエリーゼの嘆願も虚しく、自らもメモリアルホールに向かった。

 

 将軍ジェネシスが演説を行っていたJフォースのメモリアルホール。

 此処でカールと順一は激しく鬩ぎ合っていた。

 マイも順一に加勢するが、カールの卓越した剣術に圧倒されて満身創痍となってしまってた。

 マイが座り込む中、順一とカールは激しい攻防を繰り広げていた。

 互いの刃が火花を散らす中、順一はカールからの斬撃を受け切る事しかできなかった。

 と、順一がカールに対して苦戦を強いられているその時。

「カール!」

 順一と対決していた指揮官カールに、修司の声が呼び止める。

 カールが声のする方を見上げてみると、そこには修司が聖龍剣を抜刀しているのが映った。

「見損なったぞ、カール!」

 修司はクーデターを起こしたJフォースを非難しながら、カールに斬りかかった。

 カールはこれを避けると、修司に問い質した。

「何をする?」

「今からでも遅くはない、クーデターをやめるんだ!」

「……断る」

「そうか……」

 カールの返答を聞いて、修司はもはや話し合いで解決できないと判断した。

 そして修司とカールは激しく火花を散らし始めた。

「行くぜ!」

 修司の掛け声とともに、両者は互いの刃で激しく鬩ぎ合った。

 激しい火花を散らして互角に渡り合う修司とカールの両者を見て、順一は思った。

「な、なんて凄い闘いなんだ……! 僕が、いや誰であろうと立ち入る事はできない」

 両者の激しい互角の鬩ぎ合いを目の当たりにし、誰であろうと決闘する二人の間に立ち入る事ができないと自覚する順一。

 

 激しい刃と刃のぶつかり合いに、順一達はただただ唖然と二人の決闘を見届けるしかできなかった。

 と、二人の刃が火花を散らし、双方ともに距離を離すとお互いに対峙し合う。

 そして対峙し合ったカールが、修司に斬りかかろうとしたその時だった。

「やめてーー!」

 一人の可憐な少女の悲痛な声がメモリアルホールに響いた。

 その声の主は、無理言ってトウキにセントラルホールまで連れてきてもらった、あの猫の獣人エリーゼだった。

「カール、やめて! 忘れたの? 修司は私たちの仲間だったじゃない! 私たち、仲間として昔はお互い助け合って……それに修司は私を助けてくれたのを忘れた!?」

 エリーゼはかつて修司と自分達Jフォースの軍人が同じ部隊に居た仲間であったこと、そして先日のスカイラグーン落下事件で修司たち聖龍隊が自分を助けてくれた恩を忘れたのかとカールに問い掛けた。

 このエリーゼの介入に、婚約者であるカールは険しい顔で言った。

「エリーゼの恩義もある。この場は退くとしよう。しかし今度会ったときは誰だろうが容赦はせん!」

 そう言い残すと、カールは瞬間移動で一瞬で姿を消した。

「あ、待てカール! ……くそっ」

 まだカールと話し終わってない修司は、カールが消えた事に不満を覚える。

 そんな修司に、エリーゼが悲痛な想いで訴える。

「修司! カールと、それにJフォースのみんなと戦うのをやめて! 戦えばどちらかが、きっと……」

 戦い合えば、どちらかが傷つき死んでいく結果を避けたい、平和的解決を望むエリーゼの訴えを聞いた修司は、毅然とした顔付きで彼女に返事した。

「誰かがJフォースをとめなければ、この戦いは終わらない……!」

「修司!」

 修司も本心を言えば平和的解決を望んでいた。しかし今となっては全てが遅く、誰かがJフォースを制止しなければ戦いが終わらない現実を告げる修司の言葉にエリーゼは悲観した。

 この修司の決断を前に、エリーゼはその場で泣き崩れてしまう。

 そんなエリーゼに、彼女をメモリアルホールにまで連れてきてあげたトウキが歩み寄り、宥めてあげる。

「……トウキ、エリーゼの事お願いするよ」

「ああ、彼女の事は任せてくれ」

 順一は無二の親友であるトウキにエリーゼの事を任せると、自らも修司と同様に一足先に聖龍隊本部に帰還した。

 

 この時トウキは、傍らのエリーゼも気づかない怪しい笑みを浮かべていた。

 

 

 

[裏切りの爆炎]

 

 スター・コマンドー隊士が各自散らばってJフォースが占拠した各地へと出撃していた。

 そして溶岩地帯。ここには明石薫、野上葵、三宮紫穂らチルドレンズと白浜兼一と風林寺美羽の5人が馳せ参じていた。

 5人が溶岩地帯に赴いたのは、突如として聖龍隊を裏切って飛び出した爆炎の武道家サイキック・フレイヤーを本部まで連れ戻す任務のため。

 サイキック・フレイヤーは武道家にして高レベルの超能力者であり、炎を自在に操れる能力者。

 その実力は、超能力少女である薫たちチルドレンズに、同じ武術を使用する兼一や美羽も一目置く凄腕の異常者(ヒール)ハンターだった。

 だが、何ゆえフレイヤーは聖龍隊を裏切り、わざわざ常人が立ち入らない領域である溶岩地帯で自分達を待ち受けているのか薫や兼一たちは疑問に思う。

 動揺や戸惑いを抱えながら、5人は危険な溶岩地帯を突き進む。

 そして降り注ぐ火山弾を避けながら、5人は溶岩地帯の中央、溶岩の中に浮かぶ小島へと辿り着いた。

 すると、その小島の真上から、巨大な火山弾と共に地面に着地した爆炎の武道家サイキック・フレイヤーが5人の前に立ちはだかった。

「……薫、葵、紫穂。それに兼一と美羽も来てくれたか。これはいい!」

 チルドレンズに武道家の兼一と美羽も駆け付けてきた事に大いに喜ぶフレイヤーに、明石薫が問い質した。

「フレイヤー、いったいどうしたんだ!? 突然、聖龍隊を裏切って……」

「そんな事はどうでもいい! チルドレン、そして兼一と美羽! 俺と戦え!」

 突然戦いを申し込まれる状況に、美羽は激しく戸惑う。

「な、何を急にそんな事を……?」

「黙って俺と本気の勝負をしろ! 手加減すると死ぬぞ!」

 しかしそんな戸惑いを目の当たりにしても本気の勝負を持ちかけるフレイヤーに、兼一が説き返す。

「そんな! 仲間同士で戦い合うのなんて無意味です!」

「この期に及んで、まだそんな事が言えるのか。どちらにしろ、俺はお前達を殺す気で戦う! お前達も死にたくなければ本気で来い!」

 そしてサイキック・フレイヤーは対峙する5人に一方的に攻めてきた。

「力こそが全てだ!」

 まずフレイヤーは御得意の必殺技、炎を纏った波動を放つ波動拳を2発放った。

「波動拳! 波動拳!」

 連続で放たれる炎の波動拳を前に、突然攻撃を仕掛けられた5人は散らばって回避。

 そしてテレポーターの野上葵が瞬間移動でフレイヤーの目前まで移動すると、改めてフレイヤーに問い掛けようとするが。

「フレイヤー! なんで急にアタイらと勝負なんか……」

「昇龍拳!」

 しかしフレイヤーは目前まで瞬間移動した葵に炎を纏ったスカイアッパーをさく裂させて彼女を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた葵は危うく溶岩に落下してしまいそうになるが、それを目撃した薫は慌ててサイコキネシスで葵の動きを制止して間一髪のところを救った。

 だが、そんな葵に気を取られている薫にフレイヤーは容赦ない追撃を喰らわす。

「仲間にばかり気を取られていては隙が生じるぞ……!」

 フレイヤーは口から火炎放射を吐いて、薫を火だるまにした。

「うわあああっ……!」

 火だるまにされて悶絶する薫。

 すると火炎放射を吐くフレイヤーの背後から、兼一と美羽に二人が強烈な飛び蹴りを喰らわした。

 だが、フレイヤーの強靭な肉体には余り効果が薄く、フレイヤーは火炎放射をやめて振り返ると二人に言った。

「本当の飛び蹴りとは……こうするのだ!」

 するとフレイヤーは跳び上がると「てりゃぁ!」の掛け声と共に兼一と美羽の二人に跳び蹴りを放った。

「ぐほっ」

 フレイヤーからの強烈な跳び蹴りを、兼一は美羽を庇ったために直撃してしまう。

 既による体術を極めつつも、高レベルの超能力をも駆使するサイキック・フレイヤーの猛攻に苦戦を強いられる5人。

 三宮紫穂も日本刀で攻めていくが、フレイヤーは彼女が巧みに振るう刀を右に左に避け続け、最後には真剣白羽取りで刀を受け止めると、紫穂の腹部に蹴りを浴びせて彼女を押し退ける。

 次第にフレイヤーの強力な体術と、高レベルの炎の超能力に追い詰められていく5人は再度フレイヤーに説得を試みた。

「ふ、フレイヤー……なんであんたと私たちが戦わなきゃならないんだ……!」

「分かりません……なんで仲間である貴方と戦わなければ……」

 薫に兼一が訴える中、そんな5人に甘さを感じたフレイヤーは此処で衝撃の告白をした。

「……相変わらず、あまいな。……いい事を教えてやろう。スカイラグーンを落としたのはあのドラゴン型の兵器ではない、この俺だ! お前達スター・コマンドーが駆けつけた時は、ちょうど動力炉を破壊し終わった時だったんだ」

 サイキック・フレイヤーの告白に衝撃を受ける5人に、フレイヤーは更に挑発的な言葉を吐く。

「意外と気持ちよかったぞ。無意味な破壊って奴はな! フアーーッハッハ!」

 挑発するかのように嘲笑を上げるフレイヤーの言動に、薫や兼一たちの内情に怒りが湧き上がった。

「何ですって! なんの……罪もない人たちを……!」

 美羽がフレイヤーを睨み付けると、薫と兼一もフレイヤーに怒号を放った。

「お前は……お前はもう仲間だったフレイヤーじゃない! ただの異常者(ヒール)だッ!」

「許せない……多くの罪もない人たちの命を……!」

 そんな怒りに駆り立てられる5人を前に、フレイヤーは言い放った。

「そうだッ! 怒れ、憎しめ、チルドレンズ! そして兼一、美羽! お前達の本当の実力を見せてみろッ!」

 5人に真実を打ち明けて、戦意を奮い立たせたフレイヤーは5人と再び戦い出した。

「命がけで戦ってこそ意味がある!」

 命を賭けた真剣勝負こそ、本当の武人としての誇りと喜びがあると説くフレイヤー。

「波動拳! 波動拳!」

 フレイヤーは再び炎を纏った波動を連続して放つ。しかしフレイヤーの真実を耳にした5人は炎の波動に恐れることなく、その炎を纏った波動を薫がサイコキネシスで打ち消した。

 波動拳を打ち消した直後、兼一と美羽がフレイヤーに急接近して怒りのこもった体術を激しくぶつける。

 兼一と美羽の本気の体術を受け止めつつ、フレイヤーは満足そうに二人の体術を弾いた。

 そして距離を置いたフレイヤーは兼一と美羽と対峙し、睨み合った。

「力こそが全てだ!」

 そして力こそ全てと説くと、二人に向けて先ほども放った跳び蹴りを放つ。

「てりゃぁ!」

 先ほどは直撃を受けてしまった兼一だったが、今度は完全にフレイヤーの跳び蹴りを見切った上で、跳び蹴りを仕掛けるフレイヤーの足を掴んで、そのまま振り回した。

「このーーッ!」

 武道家として多くの人から信頼が厚かったフレイヤーが、実は大勢の犠牲者を出したスカイラグーン落下事件の実行犯だったと知って、悲愴な想いを怒りに変えて振り回す兼一。

 そして兼一はフレイヤーを投げ飛ばすと、フレイヤーは地面に叩き付けられてしまうものの、其処に今度は怒り心頭の紫穂が日本刀を地面に寝そべるフレイヤーに突き刺そうと飛び掛かる。

 しかしフレイヤーは瞬時に紫穂からの剣戟を回避すると、素早く立ち上がり善戦を繰り広げる5人を称賛した。

「いいぞ! その調子だ! こうなったら俺も……!」

 フレイヤーは「はぁぁ~~っ!」と気合を込めると、自らの手から発生した火の玉を溶岩の中へ投げ込んだ。すると投げ込まれた溶岩が、まるで生き物の様に溶岩の柱となって5人に襲い掛かる。

 5人は必死に回避しながらフレイヤーと距離を縮めようとするが、フレイヤーは更に自らの超能力を最大まで活用し、火山弾を隕石の如く降らせてきた。

 頭上から続々と降ってくる火山弾に悪戦苦闘しながら避け続ける5人を前に、フレイヤーは睨みを利かせて言い放った。

「今日こそお前達に勝つ!」

 そしてフレイヤーは超能力で飛行する明石薫に向かて「昇龍拳!」の掛け声と共に跳び上がり、炎のアッパーカットを打ち込もうとする。

 薫は非常に焦った。前方からはフレイヤーの強烈な昇龍拳、背後からは頭上から降って来た火山弾、薫は逃げ場がなかった。

 と、その時「薫!」と、葵が薫をテレポーテーションさせてフレイヤーと火山弾の狭間から救い出した。

 その代わり巨大な火山弾はフレイヤー目がけて一直線に向かって飛んできていた。

 フレイヤーは目の前に飛んでくる火山弾を自慢の昇龍拳で粉々に粉砕するが、その代償として満身創痍の状態に至ってしまう。

 そんなフレイヤーに5人はトドメの攻撃をありったけ打ち込んで、フレイヤーを完膚なきまでに叩きのめした。

 

 5人からの本気の攻撃で倒されたフレイヤーは、薄れゆく意識の中、自分と本気で戦ってくれた5人を称賛した。

「……流石……だ……。スター……コマンドー……」

「フレイヤー! 何故、こんな事をしたんだよ!」

 薫がフレイヤーに何ゆえ自分達を裏切り、スカイラグーンを落下させたのか悲愴な面持ちで問い質すと、フレイヤーは告白した。

「ずっと……お前達と本気で戦いたいと思っていた…………そうしたら…………奴が……現れて……」

「奴? 誰なんです、それは?」

 兼一が問い掛けるものの、フレイヤーは遠のく意識で打ち明けた。

「そいつは言った……お前達と……スター・コマンドーと本気で戦いたければ……今回の作戦に加担しろ、と……」

「そんなっ! ウチらと戦うために裏切ったっちゅう訳か?」

 フレイヤーの告白に落胆する葵だが、そんな5人を前にフレイヤーは歩き出し、煮えたぎる溶岩の前で立ち止まった。

「お前達と……本気で戦えて…………うれし……かっ……た…………ぞ……」

「フレイヤー!!」

 サイキック・フレイヤーは5人に、最後に本気で戦えた事を心から喜ばしかったと言い残すと、自ら溶岩の中に身投げして果てた。

 

 格闘技者として「命を賭けて本気で戦いたい、そして勝ちたい」という欲望を抱いていたフレイヤーは、その純粋な欲望を抑え切れずに今回の騒動及び事件に加担してしまった。

 それは武人として、とても純粋なモノだったが、その為に多くを傷付け、多くを騙した上に裏切ったフレイヤーの罪が消える事はなかった。

 そしてスカイラグーンの墜落の真相が判明したとしても、今や大戦の火ぶたが切られた未曾有の戦火が納まる事はなく、聖龍隊とJフォースの戦いは続くのであった。

 

 

 

[極寒の中の悪意]

 

 極寒の北極。

 ここでもJフォースの軍隊が活動していた。

「た、助けてくれ……ッ」

 と、吹雪が吹き荒ぶ雪原に一人の二次元人が解き放たれていた。

 そんな二次元人の背後から、巨大な影が迫って来た。

「うわ、うわあーーっ!」

 荒ぶる吹雪の中、二次元人の絶叫が木霊した。

 その二次元人は氷漬けにされると、雪原の中を運ばれてJフォースの基地へと移送される。

 そして無残にも、その氷漬けされた二次元人は屋内に運ばれると粉々に粉砕されて殺害されてしまう。

「へっ、最近のハンター共はよわっちい連中ばっかだぜ」

 二次元人を氷漬けにし、無残にも粉砕したのは極北の暴れん坊、トドの獣人フロスト・キバトドスであった。

「ちぇっ、こんな調子じゃ……バニラアイス一個分にもならねえぜ」

 キバトドスは捕虜の二次元人を雪原に解き放ち、遊び半分に狩りながら皆殺しにするという無用な暴力行為を平然と行いながら好物のバニラアイスを食べていた。

「ふん、折角この北極基地で新兵器の完成が近いってデマ情報を流しておいたのに、凄腕の聖龍隊はまだ来ねえ……」

 キバトドスは凄腕の聖龍隊が偽情報に流されて自分の許にやって来るのを待ち侘びていた。

 と、そんなキバトドスの所に一本の通信が入った。

 キバトドスは慌ててモニター画面を点けてテレビ通話を始めた。

「こちらカール。キバトドス、そちらに変化はないか?」

「こ、これはカール指揮官……へい、こっちは依然として聖龍隊が喰い付いてきてません」

「そうか、奴らの戦力を分散させる為に北極基地にも新兵器の開発が進んでいると偽の情報を流したんだが……簡単に喰い付かないか、或いは吹雪の中進攻が遅れているか……」

「は、はぁ……ま、まあだけど、俺さまに任せてください! 聖龍隊の雑魚共がやって来ても、すぐに氷漬けにして倒しちまいますから!」

「それは結構な事だが……ところでキバトドス、お前まさか軍規を乱してはいないだろうな?」

「うへッ!? ど、どうしてそんな事を……!」

「お前を疑いたくはないが……だが、元々お前はその昔、暴れ回っていた元ならず者。それを私やジェネシス将軍に拾われて今の職務に就いているのを忘れてはないだろう。かつてならず者で傭兵だったお前を、修司と私で撃破されて今に至る……今は同じ軍の仲間では有るが、お前は今も昔も変わらない所がある。せめてJフォースの軍人として恥ずかしくない態度を振る舞ってほしい」

「わ、分かっていますって!」

「それならいい。とにかく、昔の様に無用な暴力行為は行うな。軍規を乱した以上、粛清は免れんからな。では、以上」

 通信相手であるカールは、キバトドスに軍規を乱す行為を避けるよう言い渡すと通信を切った。

 そして通信で昔からの性質を注意されたキバトドスは。

「ふん! カールの奴め! 昔、あの修司と共闘しなきゃ、俺さまに殺されていたのを忘れているのか! 修司と一緒でなきゃ、俺を倒せなかったくせに、今ではその修司率いる聖龍隊とケンカしている癖に暴力行為はやめろだと? ふざけんじゃねえ! Jフォースは今や反乱を起こして、昔の俺以上の暴挙に乗り出した癖に、偉そうに……!」

 キバトドスは踏ん反り返りながら自身が作り出した専用の巨大椅子に座り込み、またも好物のバニラアイスを頬張って行く。

 

 と、キバトドスの機嫌が悪くなった、ちょうどその時。

「おい、そこのでかいの!」「あぁん?」

 突然キバトドスを呼び付ける声に、キバトドスは凍て付いた床の方へと見下ろした。

 すると其処には聖龍隊スター・コマンドーの三人、ユウとニナミそして音無小夜の姿があった。

「ああん? テメェら誰だ!」

 キバトドスが怒鳴り散らすと、ユウが再度キバトドスに言い付けた。

「俺たちは聖龍隊がスター・コマンドーの一員だ。フロスト・キバトドス! お前の無慈悲な暴力と残忍な性分、ここで止めてやる!」

 ユウの言葉を聞いたキバトドスは、少し不満げながらもスグに拳と拳をぶつけ合わせて戦意を奮い立たせた。

「相手がこんなガキ共とは、俺もナメられたもんだ。まあいい、すぐに捻り潰してやるぜ!」

 キバトドスはユウ/ニナミ/小夜の三人と戦闘を開始した。

「氷のベッドでお寝んねしな!!」

 するとキバトドスは口から吐く冷気で前方に巨大な氷塊を形成。それを拳で打ち砕くと、無数の破片がユウ達に降り注ぐ。

「そんな氷の破片程度……!」

 ユウは自身から発生する炎を前方に壁の様に繰り出して、自分達に降り注ぐ氷の破片を全て蒸発させてみせる。

 と、キバトドスは次の一手として大木の様に太くて巨大な腕から氷の角を真上に向けて発射。ユウ達の頭上から巨大な氷柱を落としてきた。

 これにユウは先ほどと同じく炎の火柱で氷柱を全て蒸発。ニナミは氷壁を形成して自身を防護して、小夜は降り注ぐ氷柱を全て斬り落としていく。

 キバトドスが放った攻撃を全て防いで見せた三人。するとユウは相手のキバトドスが氷系の能力者だと認識した上で、キバトドスに自らが放つ大火を放った。

「ぎょええぇ~~ッ!」

 キバトドスは全身火だるまになりながら地べたを這いずり回るが。

「このッ」「ッ!」

 なんとスグに全身についた大火を振り払うと、火を放ったユウを握り掴んで捕えてしまう。

「ユウ!」「!」

 ニナミと小夜は、捕まったユウを見て絶句する。

 その一方でキバトドスに捕まったユウは、強烈な握力に圧迫されて悶絶していた。

 そんなユウを睨み付けて、キバトドスは握っているユウや床上のニナミと小夜に聞こえるよう語り始めた。

「俺さまに炎とは、修司やカールと同じ事してくれるじゃねえか……!」

「しゅ、修司とカール、だと……!?」

 キバトドスの発言にユウが睨み返すと、キバトドスは己の過去を語り明かした。

 かつてまだキバトドスが無法者として暴れ回っていた頃、そんなキバトドスを止めようとカールと修司の二人が挑んだという。しかし大柄で巨体なキバトドスとの戦闘は熾烈を極め、当初は修司もカールも苦戦を強いられていたという。しかし修司が機転を利かせ、自らを囮にキバトドスの傍らにあった液体燃料をカールに狙撃させて、キバトドスを灼熱の業火を味あわせて辛くも勝利したという。その後、敗北したキバトドスはJフォースの一員として働く代わりにそれまでの罪を赦してもらったというのだ。

 そんな過去の出来事を3人に語ったキバトドスは、再度ユウを握り潰そうと力を込め始める。

「ぐあッ!」

 強烈な握力に全身を握られるユウは更に悶絶するが、このまま握り潰されてたまるかと全身を発火させてキバトドスの手を焼き付けようとした。

「あっちっち!」

 炎から発せられる熱で思わずユウを放してしまうキバトドス。

 そして解放されたユウは、ニナミや小夜と合流して再びキバトドスに戦意を向けた。

「こ、小僧め!」

 キバトドスは怒り心頭で、ユウ達3人に激しい敵意を向ける。

「ぶっ潰してやる! 覚悟しな!!」

 キバトドスはその巨体を生かして、3人に向かって跳びかかり巨体からのボディプレスを仕掛けてきた。

 巨体からのボディプレスを3人は素早く移動して回避すると、キバトドスに猛攻撃を仕掛ける。

「燃えろッ!」

 ユウから灼熱の大火を再び浴びせられるキバトドスだが、ユウから放たれる大火を諸ともせずスグに自分の体を急速冷凍して火傷を治療してしまう。

「へへっ、炎なら昔の修司とカールとの戦いで、ある程度は耐性がついているんだよ」

 不敵な笑みを浮かべるキバトドスとは反対に、ユウは口元を歪ませる。

「今度は私達の番よ!」

 次に仕掛けたのはニナミと小夜の二人。まずはニナミが自身の氷系能力でキバトドスの下半身を凍て付かせ、身動きを封じた所を背後から小夜が刃で斬りかかった。

 しかしキバトドスは自力で自らの下半身に纏わる氷を粉砕し、背後から斬りかかろうとする小夜の方に振り返ると彼女を捕まえて投げ飛ばしてしまう。

「そりゃっ」

 小夜を投げ飛ばすキバトドス。振り投げられた小夜は、そのままニナミと激突してしまう。

 

 巨漢の猛威フロスト・キバトドスに苦戦させられるユウとニナミと小夜。

 キバトドスは追い詰めた3人を一気に潰そうと攻撃の態勢に入る。

「根性、叩き直してやるぜ!!」

 今までの戦闘では確実にダメージを負わせてきた筈なのに、未だそのパワーを誇るキバトドスの猛威に終始圧倒されてしまう3人。

 と、キバトドスが今まさに3人にトドメを喰らわせようとした、その時だった。

「キバトドス!」

 双方が対峙しているその時、キバトドスの名を呼び付ける声が施設内に響いた。

 その声に聞き覚えのあるキバトドスが恐る恐る声のした方へ振り向くと、そこにはキバトドスはもちろん聖龍隊でも見知った顔がいた。

「か、カール指揮官……!!」

 視線の先にいたのは、他でもないJフォース指揮官のカールだった。

 カールは今まさに聖龍隊の3人にトドメを刺そうとするキバトドスに向かって厳しく言い放った。

「キバトドス、この基地に辿り着いた聖龍隊を……ハンター達を倒していたのは、まだいい。しかし! 捕虜として捕えた敵を面白半分に殺害するとは何という事だ! これは立派な軍規違反だぞ!」

「し、しかしカール指揮官……」

「お前はやはり軍人には向いてなかったようだな。軍人たるもの、毅然とした態度で弱者を甚振る事無く、冷徹に任務を遂行させること! ……そして無用な暴力行為を仕出かす貴様を放置しておくのは、我々Jフォースの誇りに傷がつく! よって、この場で粛清する!」

 カールは軍規を乱し続けたキバトドスを粛清する為に、わざわざ北極基地に出向いたのだ。

 しかしキバトドスは、このまま黙ってカールに粛清の名目でやられる気は毛頭なかった。

「じょ……冗談じゃねえ! よわっちい連中を甚振るのが何がいけないんだ! 軍人ってのは弱い奴らの上に成り立っている組織だろうがッ! せっかくJフォースが反乱おっぱじめてくれたっていうのに、雑魚を嬲り殺す名目がなきゃ面白みがねえよ!」

 そしてキバトドスは「やられてたまるか!」と叫びながらカールに向かって突進した。が、これに対してカールは「……やはり、お前の様な愚か者には軍人は向かなかったようだな」と告げると、一気に通常の日本刀の二倍以上はあろうかという大剣を片手で抜刀すると、一気にキバトドスとすれ違った。

 両者が互いにすれ違った次の瞬間、キバトドスの巨体に一本の直線が走った。

「う、うが……!!」

 その一本の切断がキバトドスの巨体を一刀両断してみせ、その情景を目撃したユウ達3人は愕然と言葉を失くしてしまう。

 そんな3人を見て、今し方部下であるキバトドスを斬ったばかりとは思えない平然さでカールが3人に申し付けた。

「……済まなかったな。うちの部下、いや部下だった者が数々の無礼を働いて……」

 カールは3人に素直に謝罪し、頭を下げた。

 そんな今では敵対してしまっているカールに、3人は問い掛けた。

「い、いくら無用な暴力を振るっていたとはいえ、軍法会議にもかけず殺害するのはどうなんだ?」

「あなたはキバトドスの暴力を、同じ暴力で解決したんですよ」

「少し、やり過ぎなんじゃないかしら……」

 ユウとニナミと小夜が訴えると、カールは毅然とした態度で言い放った。

「何を言う! 本来、軍人は弱者を護る為の屈強な組織! それを力に任せて無用な暴力行為を働く輩を生み出し、そして放置するとは言語道断! 断罪しないで、どうする気だ!!」

 毅然とした態度で物凄い権幕を張るカールの発言に、圧倒される3人。そんな3人にカールは更に告げた。

「弱者を護らず、弱者を甚振った者を庇い立てする……そんな組織なのか、聖龍隊は!」

「「「!!」」」

 カールの言動を受けて、3人は全身に衝撃が走った。

 そしてカールの発言を痛感した3人に、カールは最後にこう言い残した。

「修司の弟子と聞いて少しは期待していたのだが……期待外れだったな」

 そう3人に冷徹な意見を述べ付けたカールは、施設の闇の中へと歩いて行き姿を消してしまう。

 

 残忍なキバトドスを自力で倒す事が出来ず、己の無力さを痛感する3人は深い絶望感へと苛まれてしまう。

 

 

 

[海上の攻防]

 

 一方ところは変わって現場は太平洋の海上。

 建設中の未来都市ジャッジ・ザ・シティの動力炉をJフォースの海軍が破壊。混乱に陥れた後に、港湾施設に籠城しようと海上を突き進んでいた。

 と、そのJフォース海軍部隊を聖龍隊がスター・コマンドーのメンバー、ハイパー・ブロッサム/ローリング・バブルス/パワード・バターカップの三人が追跡していた。

「待ちなさい!」

 三人のリーダー、ブロッサムが海上を突き進むJフォース海軍の部隊に通告するが、部隊は速度を落とさなかった。

 すると部隊の兵士が上空を飛行する三人に向けて銃火器で攻撃してきた。

「うわっ、攻撃してきましたよ、ブロッサム」

「どうするんだ!」

 バブルスとバターカップから問われて、ブロッサムは悩み抜いた末に決断を下した。

「……兵士を攻撃する訳にはいかないわ! 兵士じゃなく、彼らが所持している銃器を攻撃して使用不能にさせるわよ!」

 このブロッサムの決断にバブルスとバターカップも無言で頷いて承諾した。

 そして彼女達はそれぞれ、得物としているヨーヨーやシャボン玉そしてハンマーで海上を全速前進する兵士達が使用している武器を狙って攻撃した。

 兵士達が使う武器は、ブロッサムのヨーヨーで的確に直撃を喰らい破壊されるか、バブルスの使う不思議なシャボン玉で取り上げられるか、バターカップのハンマーを海面に打ち付けられた反動で海に落としてしまうかの三択で使えなくなってしまう。

 そんな追跡をすると同時に、武器を使用不能にさせられる戦況を見かねてか、部隊を率いる隊長がガールズの前に飛んできた。

「オレの部隊を攻撃するとは……命知らずが!」

「あ、あなたは……!」

 飛行する自分達の前に飛んできた軍の上官を見て、ブロッサムは驚いた。

 その上官とは、エイの獣人にして彼女達と同様に飛行能力を有するJフォース海軍所属のアクアデストロイヤー、ジェット・スティングレンだ。

 スティングレンは三人の前を飛行しながら、三人に問い掛ける。

「何故だ! 何故、修司や君達は我々の独立の邪魔をするんだ!?」

 これにブロッサムが答えた。

「三次元界に……三次元人達に危害が及ばない内に、この戦いが終わらないと二次元人全体が危なくなっちゃうの! 私達に総長は、それを見越してあなた達Jフォースを止めに来たの!」

「フン、修司や君たちは少しは二次元人の独立に対して理解がある方だと思っていたが……期待が外れたな」

 旧友である修司や、その修司が鍛えたスター・コマンドーの面々なら二次元人の独立に理解を示してくれると思っていたスティングレンは険しい顔を浮かべた。

 

 そしてJフォース海軍部隊が全員、港湾施設に立て篭もったのを見届けたスティングレンは、此処まで全速力で空を駆けていた自分と並走して付いてきたガールズを見て、施設の側に降り立った。

「フン。このオレが追い付かれるとはな……。だが、ここまでだ。いくぞ、スター・コマンドー!」

 スティングレンは、部下を全て安全な施設内に籠城させたのを視認すると、ここまで並走してきたガールズと己の誇りを懸けて戦いを始めた。

「軍の誇りに懸けて、貴様たちを倒す!」

 そして軍の誇りを懸けてスティングレンは攻撃を仕掛ける。

「これでもくらえ!」

 スティングレンは体から小型のエイの分身を放出すると、その小型エイはガールズの方に一直線に向かってきた。

「な、なにこれ?」

 ブロッサムたちが向かってくる小型エイに戸惑っていると、その小型エイはガールズに触れた途端に爆発。ガールズに痛手を負わせる。

「うわあっ!」

 バブルス達が突然のエイの爆発に驚くが、スティングレンは再度小型エイを放出してくる。

 もう攻撃は受けまいと、バターカップが向かってくる小型エイをハンマーで全て叩き潰した。

 するとスティングレンは次に彼女達に体当たりを仕掛けてきた。

「でぃやぁぁぁぁ~っ!!」

 スティングレンは一度海中に身を潜めた直後、直ぐに海上に飛び出ては頭上のガールズに体当たりする。

「きゃあっ」

 スティングレンの体当たりを受けて悲鳴を上げるブロッサムやバブルス。

 するとスティングレンは再び体当たりを仕掛けるつもりか、またも海中に潜水して身を隠す。

「追うわよ!」

 ブロッサムは、またしても海中から不意打ちを仕掛けられるのを防ぐために自分達も潜水してスティングレンを追撃しようと他の二人に声を掛ける。

 ブロッサムの声にバブルスとバターカップも同意して、彼女と共に海中へと潜水した。

 そして海中でスティングレンの姿を目視するのだが、これは全てスティングレンの策だった。

「かかったな!」

 スティングレンは装備していた吸引装置を稼働させ、ガールズの三人を吸い込もうとする。

「そらそらぁっ!」

 吸引装置を前に突き出して、三人を引き寄せてから攻撃しようとするスティングレンの目論見とは裏腹に、三人は必死に耐え凌ぐ。

 しかし水中では思った様に呼吸ができない三人は、遂に息苦しくなったのかスティングレンの吸引装置に吸い込まれてしまった。

「これでもくらえ!」

 そして吸引装置に吸い込まれた三人に、スティングレンは小型エイの分身を放出して三人を攻撃。

 海中で爆発する小型エイに直撃してしまい、ガールズは苦戦を強いられる。

「クラゲの方が、まだ手応えがありそうだ!」

 そんな三人を見て、スティングレンは手応えを余り感じない様子だった。

 そして海上に浮かび上がる三人に、スティングレンはトドメを刺そうとした。

「さらばだ……海の藻屑と消えるがいい!」

 スティングレンは自身の体から巨大なエイの分身を作り出し、それをガールズ目掛けて射出した。

 分身のエイが巨大な分、その威力も向上する爆発するエイの分身が迫って来て、ガールズは追い詰められる。

 しかし聖龍隊で培った「あきらめない心」で、ガールズは自身を奮い立たせた。

 そして三人の心が共感したその時、彼女たちの体が蒼く輝き始めた。

「なッ! あ、あの光は……?」

 その蒼い光を見たスティングレンは非常に驚いた。

 すると三人を蒼い光が包み込み、その光は一体の鳥の形へと形成されていった。

大聖光(だいせいこう) 魔鳥!」

 それは聖龍隊での長い経験が生み出した、心を許した仲間同士でしか繰り出せない必殺技【大聖光(だいせいこう) 魔鳥】だった。かつて聖龍隊を救った希望の象徴、魔鳥の姿を模したその陣形は、聖なる蒼い光を放ちながら如何なる強敵とも渡り合えるとまで言わしめる単身では決して作り出せない必殺技なのである。

 海上で大聖光を繰り出したガールズは、蒼い光に包まれながらスティングレンに突撃した。

「そうか、私と直接対決したい訳だな。いいだろう、修司が育んだ聖龍隊の若者と、我がJフォースの誇り、どちらが上か決着をつけてやろうぞ!」

 旧友である修司が育んだ弟子達と軍の誇りを懸けて直接対決を仕掛ける気を起こしたスティングレンも、ガールズに向かって突撃した。

 そして双方は互いに空中で激しく激突し、スティングレンは大打撃を受けたが、ガールズの方は大聖光が解除してしまった。本来、この大聖光はもっと大人数でやらなければスグにエネルギー切れで消滅してしまうのだ。

 お互い満身創痍に至ったスティングレンとガールズは、再び海上で向かい合った。

「はぁ、はぁ……な、なかなかやるな、聖龍隊が精鋭スター・コマンドー……」

「そ、そちらも凄い力ですよ。スティングレン隊長……」

 スティングレンとブロッサムは、互いに相手を褒め称え合いながらも謙遜した。

 そんな双方は互いに向き合い、相手を見据えて攻撃の機会を窺う。

 と、その時だった。

 一発の銃声と共に、銃弾がブロッサムの頬を掠めた。

「! なにっ?」

 ブロッサム達が突然の銃撃に驚いて、銃弾が飛んできた方へ目を向けると衝撃の情景が飛び込んできた。

「隊長を援護しろッ!」

「スティングレン隊長をお助けするぞ!」

「聖龍隊を迎え撃て!」

 それはスティングレンの指示で港湾施設に立て篭もっていたJフォース海軍の兵士達だった。

「お、お前ら……!」

 自分が下した命令を無視してまで、加勢しに来てくれた部下達を見てスティングレンは衝撃を受けた。

「隊長! 命令無視の違反なら、後で罰を受けます! 我々も加勢させてください!」

「お、お前達……! ッ……」

 危険を冒してまで加勢しに来た部下達の想いを受けて、スティングレンは非常に感極まった。

「ど、どうするんだよ、ブロッサム……!」

「あの部下の人たちとも、戦わなくてはならないのでしょうか……」

 スティングレンに味方するJフォースの兵士達を目の当たりにし、バターカップとバブルスは困惑してしまう。

 無論この事態にはブロッサムも同様に戸惑っており、兵士達との戦闘は避けられないと思われた。

 が、その時。対峙していたスティングレンがブロッサム達に言付けた。

「聖龍隊がスター・コマンドーが部隊、パワーパフガールズZ! 私は部下には危険な任務は……戦闘は負わせたくない。彼等が本格的に参戦する前に、お互いに決着を付けようではないか!」

 部下思いのスティングレンの提案に、ブロッサムは力強く頷いて承諾。バブルスとバターカップの二人も同意した。

 そしてガールズとスティングレンは一直線に飛来し、互いに攻撃を仕掛けた。

「でぃやぁぁぁぁ~っ!!」

 今までで最も高威力の体当たりを食らわそうと全速前進するスティングレンに対し、ガールズはブロッサムを先頭に突っ込んできた。

 そしてブロッサムとスティングレンが真正面から衝突しそうになったその瞬間。

 ブロッサムは口から凍て付く氷の息をスティングレンに吹きかけた。

「ぐあっ!」

 氷の息を吹きかけられたスティングレンは、叫ぶと同時に一瞬で凍ってしまい身動きできなくなってしまう。

 しかし彼はすぐさま自力で氷を突き破った。

「でぃやぁぁぁぁ~っ!!」

 氷を突き破ったスティングレンに、ガールズは最後の攻撃を放った。

「行くわよ、みんな!」

 ブロッサムの掛け声と共に、三人は各々の技を同時に放って三位一体の合体技をスティングレンに炸裂させた。

 このガールズ最大の攻撃を受けたスティングレンは、その圧倒的な技の輝きと威力に驚愕しつつも同時にガールズの強さを認めた上で、必殺技にかき消されて消滅した。

「隊長ーーっ!」「スティングレン隊長……!」

 目の前で上官であるスティングレン隊長を失って嘆く兵士達。

 そんな失意に駆られる兵士達を見て、ガールズの心は締め付けられた。

「私たち、何の為に戦っているんでしょう……」

「くそっ、こんな戦い……正義も何もない……!」

 悲しい面持ちを浮かべるバブルスに憤りを感じるバターカップの言葉を受けて、ブロッサムも自分達が作り出してしまった戦況を悲観した。

「こんな戦い……あっていいの……!?」

 

 かつて彼女達は正義の味方、スーパーヒロインに憧れていた。

 しかし今自分達が戦い、作り出している戦況には正義など感じられなかった。

 スティングレンの部下だった兵士達はその後、隊長であるスティングレンを失った事で戦意を失い大人しく聖龍隊に投降。聖龍隊は彼等を捕虜として捕らえた。

 悲しい現実ばかりが横行する、この戦いに終わりはあるのかと自問自答を繰り返すガールズであったと言う。

 

 

 

[輸送列車の死闘]

 

 そして最後の戦場。

 Jフォースが所有する巨大なミリタリートレイン。

 この列車をどうにか制止しようと、セレブナイトとハル、そして日向ひまわり達くノ一が制圧に向かってた。

 急行する列車上部でJフォースの兵士達と激しく混線する一行は、向かってくる兵士を撃退しながら進軍する。

 時にJフォースは列車の連結部分を自ら破壊して、列車を切り離して聖龍隊の進撃を阻もうとするが、列車が離れて行く前にセレブナイト達は進軍するのだった。

 そんな進撃するスター・コマンドーの7人によって撃退された故に退いてしまう兵士達を見て、輸送列車を護送する部隊の隊長は苛立った

「敵を前に退くとは……そんな弱輩な奴、オレの部隊には要らねえ!」

 すると次の瞬間、部隊長は逃げ延びてきた自分の部下を一振りで切断し、処分してしまった。

「オレは……弱い奴は極端に嫌いなんだよ!」

 そして軟弱な部下達に力説すると、誰しもに逃げ帰る事を禁止させた。

 この部隊長の指示を受けてか、セレブナイト達に進攻する兵士達は途中から退却する事無く、命を張って進撃を阻む。

「っ、中間から兵士達が退かなくなったぞ」

「おそらく、この列車の護送を務める部隊長か何かが撤退しないように言い付けたんだろう。セレブナイト、ここは意を決して突撃するしかなさそうだ」

 セレブナイトに語るハルの言葉を受けて、セレブナイトは意を決して進攻先に集まる兵士達を峰討ちで済ませながらも、進撃を再開した。

 そんな二人、いや一人と一匹の進撃をひまわり達くノ一が援護する。

 

 そして武装列車をも突破して、一行が先頭の車両に辿り着こうとしたその時。

 先頭車両の後ろの貨物室の屋根を突き破って派手に登場してきたJフォースの陸軍に所属するライオンの獣人が一行の前に立ちはだかった。

 それは輸送列車を利用する補給部隊の守備任務に着いている、見た目通り乱暴な性格の獣人、野生の破壊王の二つ名のスラッシュ・ビストレオ。

「このオレの部隊にケンカを売るとは、命知らずが! ……久々のエモノだ! 可愛がってやるぜ!」

 そう目の前の7人に告げたビストレオは、唸りながら威嚇すると目前の7人に宣言した。

「超特急であの世に送ってやる!」

 と、ビストレオは両足を思いっきり前に向けて振り放って足の爪から二つの斬撃を放った。

 斜め上に飛ぶ斬撃と、真っ直ぐに飛ぶ斬撃の二つの攻撃をセレブナイト達は回避し、ビストレオに接近する。

 セレブナイトは、自慢の剣術でビストレオの両手の爪と迫り合うが、ビストレオの方は容易く剣を両手の爪で受け止めていた。

「小僧! ちっとは楽しませてくれんだろうな!?」

 戦いをこよなく楽しむビストレオからの問い掛けに、セレブナイトは一旦距離を置いてビストレオに言い放った。

「ビストレオ……! 僕たちは君とは戦いたくない……お互いに平和的に話し合えないか?」

 しかし、このセレブナイトの発言にビストレオは目の色を変えて威嚇した。

「ウオオッ、ふざけんじゃねえ! オレの楽しみを奪う気か!? それ以前に、もうオレたちJフォースと貴様ら聖龍隊の溝など、埋まる筈は無いだろうがッ」

 そう言い終ると同時に、ビストレオは足の爪から再び斬撃を放ってセレブナイトに攻撃を仕掛ける。

「うわっ!」

 一発目の斬撃はどうにか剣で防げたものの、二発目の斬撃を回避できなかったセレブナイトは後ろへと倒れてしまい、その反動で危うく列車から落ちそうになってしまう。

「危ないッ」

 列車から落ちそうになるセレブナイトを、くノ一の日向ひまわりが間一髪で救い上げた。

 そんなセレブナイトとひまわりを視認して、ビストレオは強烈な体当たりを仕掛けようと突進してきた。

 だが、それをハルがレーザービームで援護、ビストレオは両手の爪を光らせて放たれたビームを防御する。

 ハルの援護のお蔭で、セレブナイトとひまわりはどうにか危機を脱して、再びビストレオと向き合った。

 ビストレオは吼えて威嚇すると、今度はその卓越した身体能力で跳躍して鋭利な足の爪でセレブナイトやハルそしてひまわり達に飛び掛かって攻撃してくる。

「そりゃっ!」

 ビストレオの跳躍してからの踏み潰し攻撃を何とか移動範囲が狭い列車の屋根上ながらも回避していくセレブナイトたち。

 その強烈な踏み付け攻撃は、屋根の鉄板をも容易く凹ますほどの威力であり、これを目の前にしたセレブナイトは驚愕した。

 と、皆がビストレオと激しい死闘を展開していたその時。

「! そろそろ時間の様ね……」

 ひまわりの目付きが鋭くなった。

 そして直進する列車が通って行く前方のレールに変化が。

 なんとレールが突如として爆発して、切断されてしまったのだ。

「なに! レールが……! ま、まさか……」

「その通りです。前もって、私たちくノ一組が爆薬を仕掛けておいたんです」

 進路方向先のレールが爆発したのを驚愕するビストレオに、ひまわりが説き明かす。

 一気に戦局は聖龍隊側に傾いた。しかしこのままでは列車は転倒して、その列車の屋根上に搭乗している自分達にも危険が。

 

 前もってくノ一達が仕掛けた爆薬によって、切断されたレール。

 それを目撃したビストレオは驚愕し、切断されたレールに差し掛かる前にセレブナイトたち聖龍隊を倒そうと急ぐ。

「こ、このヤローーッ!」

 しかしその前に、くノ一たちがワイヤー付きのくないを巧みに操って、ビストレオの自慢の脚部を片方、列車に縛り付けてしまった。

「な、なにっ!?」

 片足がワイヤーで括り付けられ、身動きができなくなってしまうビストレオ。

 そんなビストレオを尻目に、ひまわり達はセレブナイトとハルに言った。

「さあ、今の内に列車から飛び降りましょう!」

 この言葉を受けて、セレブナイト達は列車が激しく横転する前に飛び降りようとした、その時。

「た、助けてくれっ!」

 ビストレオが助けを求める声を発した。このビストレオの助けを求める声に、セレブナイトの足が止まった。

 そしてセレブナイトは、仲間達とは離別して、ビストレオの許へと駆け付ける。

「セレブナイト!?」

 突如として敵対しているビストレオの許へと駆け付けるセレブナイトを呼ぶ万里小路ハヤト。

 皆の声も聞き逃していないセレブナイトは、それでもビストレオの許へと駆け付けて、彼の足を縛り付けるワイヤーを剣で切り離していく。

「えいっ、えいっ……!」

 セレブナイトは、鋼鉄製のワイヤーをどうにか剣で切断しようと必死になる。

 そして全てのワイヤーを切断し終わったセレブナイトは、ビストレオに言った。

「さ、さあ早く……!」

「あ、ああ、ありがとう……」

 と、ビストレオがセレブナイトに礼を述べようとした次の瞬間、ニヤリとほくそ笑んだビストレオは「せいッ」の一声でセレブナイトの首元を足の爪から放つ斬撃で切り付けたのだ。

「っ……!」「せ、セレブナイト!」

 首元を切られて血を噴き出すセレブナイトに、ゆすら達は愕然とする。

「ハッハァ! 敵に情けを見せるとは……やはり修司が育てた軍人は弱輩だな! ハハッ」

「こ、この野郎……!」

 ビストレオの冷酷な一面に万里小路ハヤトは怒りを露わにする。

 と、倒れそうになるセレブナイトを支えようと駆け寄る日向ひまわりが腕を伸ばしてしゃがみ込んだその時。彼女の背中に爪を立てて張り付いていた猫のハルが姿を現した瞬間、ハルは目からレーザービームを直射してビストレオの両足を狙撃した。

「ぐおっ!」

 両足の膝をビームが貫通した事で悶絶するビストレオは、苦痛で転がり回った。

 そんな騙し討ちの末に、両膝をレーザーで撃ち抜かれたビストレオが苦痛で転がり回るのを尻目に、今度こそ一行は列車から飛び降りた。

 首元を不意打ちで攻撃されたセレブナイトは、ひまわりと万里小路ハヤトが肩を担いで運び、その他の面々は普通に列車から飛び降りて、レール切断の目前で危機を脱する。

 一方で足を撃ち抜かれた為に、移動するのも困難なビストレオは単身、列車が大転倒する目前で悔しがった。

「ち……チクショーーッ!!」

 そして輸送列車は爆発で途切れたレールに差し掛かり、そのままレールを踏み外して大転倒。Jフォースの補給を担当する輸送列車は転倒すると共に大爆発。炎上した。

 その爆発に巻き込まれ、スラッシュ・ビストレオは爆炎の中に消えていった。

 

 敵の情けをも利用して騙し討ちの不意打ちを仕掛けたビストレオ。

 だが最後には7人の、スター・コマンドーの連携に負けてしまい輸送列車と共に爆炎の中で果てた。

 

 

 

[宇宙港での激戦]

 

 8カ所で起こっていた事件を全て解決したスター・コマンドーは、聖龍隊本部に戻っていた。

 そんなスター・コマンドーに、新人でありスター・コマンドー総部隊長村田順一の親友トウキが報告した。

「Jフォースが突然、一か所に集まり出したぞ!」

「どこへだ?」

「宇宙港……スペースポートだ! 奴らは宇宙に出るつもりみたいだ!」

「急ごう! カールを止めないと……!」

 トウキからの報告を受けて、順一達は早急にJフォースの宇宙進出を食い止めに向かう。

 

 そして宇宙港。

 既に宇宙港からは、多くのJフォースの宇宙船が出立しているのが目の入って来た。

 順一達は連携して、Jフォースの兵士が配置されている宇宙港を進撃する。

 急がなければ、Jフォースの主立った主力部隊は宇宙に飛び立ってしまう。

 それを阻害する為に順一達は心を鬼にして進撃する。

 と、そんな快進撃を続ける順一達の前に、一本の雷鳴と共にJフォース指揮官カールは突如として出現した。

「カール上官、そこをどいてください!」

「独立を妨げる者は、容赦しない」

「いい加減にしてください! そんなものは幻なんです!」

「……残念だ。所詮、聖龍隊とは分かり合えんかったか。行くぞ、スター・コマンドー!」

 分かり合えない虚しさを噛み締めつつも、カールはスター・コマンドーに戦いを仕向けた。

「容赦はしない、行くぞッ!」

 こうして宇宙港での激戦が開幕してしまった。

 カールは瞬間移動で敵対するスター・コマンドーの前に移動すると、速攻で大剣を振るって攻撃する。

「きゃあっ」

 強烈な一撃はキュルケに直撃し、皆がカールの動きに動揺している最中も、カールは瞬間移動して此方を撹乱する。

「あ、葵! 同じテレポーターとして、何とかできないか!?」

 平賀才人がテレポーターの野上葵にどうにかできないかと問い詰めるが、それに三宮紫穂が返答した。

「それは無理だわ!」

 皆が何故なのかという視線を紫穂に向けると、紫穂は険しい表情で説いた。

「あれは正確には瞬間移動じゃないわ……! 瞬間移動に見えるけど、本当は目にも止まらない俊足で移動している超高速移動なのよ! でも私でも感知するのが精一杯で、完全に動きを補足するのは無理だわ」

 相手の思考や動きを感知できる紫穂でも捉えきれない動作をカールはしているのだと説くが、それではスター・コマンドーはカールの動きを捉える事は不可能に近かった。

 一方でカールは瞬間移動でスター・コマンドーを撹乱させながら、各隊士の前に忽然と出現すると強力な斬撃や衝撃波を繰り出して、目前の隊士を吹き飛ばす。

「うわあっ!」

 そんなカールに斬りかかる順一は、日本刀「純心」でカールの大剣と鍔迫り合いをして衝突した。

「ッ……!」「ッ……うおおおッ!」

 互いに激しく攻め合う順一とカール。しかし剣術でも腕力でも、カールは順一を遥かに凌駕していた。

「ていっ」「うっ……!」

 カールは順一を純心ごと弾き飛ばし、順一は転倒してしまう。

「ジュン!」「順一……!」

 明石薫やユウ達は、一斉に順一の危機にカールへと駆け出して攻撃を仕掛けようとする。

 しかしカールは電撃の塊を操り、自分を中心とした辺り一帯にエネルギーの電撃を放出して向かってくるスター・コマンドーの面々を圧倒する。

「うわっ!」

 スター・コマンドーはカールの瞬間移動からの数々の攻撃に悪戦苦闘する様で、一撃も攻撃を当てられない状況が続いてた。

「ぼ、僕らじゃ勝てないとでも言うのか……!?」

 順一は自分達ではカール指揮官に勝つことはできないのかと懸念した。

 そんな実力はあるものの、自分に対して有効な攻撃を仕掛けられない順一達スター・コマンドーにカールは申し付けた。

「……修司の弟子である君らの実力はその程度か! Jフォースの誇りを懸けて戦う私に対し、君たちも聖龍隊の誇りを懸けて戦いたまえ!」

 そんなカールに順一は唱えた。

「僕たちは……争う為に、戦う為に強くなっている訳じゃない……! 平和を護る為、弱い人々の平穏を護る為に戦っているだけだ……! はぁ、カール指揮官! お願いです、もう戦いをやめてください!」

 しかし順一の嘆願も、カールには届かなかった。

「何を言う! 軍人として、戦士として戦うのは常識! 我々は戦いを止めない、我らが宿願、二次元人だけの独立国家を宇宙に建造する為にも、私は戦い続ける!」

「カール……!」

 自らの信念を振り翳すカールの言論に、ルイズは悲愴な声でカールの名を叫ぶ。

 更にカールは己が信念を説き明かした。

「私は屈しない……! 我々Jフォースによる二次元人だけの国家は……今は亡き同志達に報いる為にも叶えばならない理想郷なのだ!」

「違う……! 二次元人だけの独立国家なんて、そんなの間違っている」

 カールの信念に満身創痍の白浜兼一が否定するが、そんな声にカールは聞く耳を持たなかった。

「さあ、立ち上がれスター・コマンドー! 我々を止めたくば、命を賭けて私を倒すしかないぞ!」

 スター・コマンドーを挑発するカールの言葉に、スター・コマンドーの隊士たちは力を振り絞り、少しずつ立ち上がる。

 そして立ち上がった面々は、カールに再度立ち向かおうと力を奮い立たせて向かって行った。

 

 その頃、聖龍隊本部では。

「Jフォースが、宇宙港に集まっているわ……」

「……出撃する」

「だめ! ……行かないで、修司! あなたとカールが戦うなんて……私、耐えられない……」

「……誰かが、カール達を……Jフォースを止めなくてはならない……出撃する!」

 エリーゼからの報国を受けて、現場に先立ったスター・コマンドーだけではカールを止めるのは至難の業だと判断した修司は、制止するエリーゼの悲願を聞き入れつつも出動した。

 そして現場に到着した修司は、急いでスター・コマンドーとカールの戦闘が展開されている場まで走り出した。

 その頃のスター・コマンドーはというと。

「ふんっ」「ぐはっ……!」

 カールが振るう大剣の一撃だけで、順一は容易く吹き飛ばされてしまう。

 そんな順一の周りには、既に満身創痍で倒れるスター・コマンドーの面々が地べたに倒れていた。

 力尽きて、万策尽きたスター・コマンドーを前にカールは呟き掛けた。

「……残念だ。修司の弟子と聞いて、もう少し歯が立つ相手だと思っていたんだが……」

「うっ……」

 自力で起き上がろうとする順一に、カールは無情にも(今、楽にしてやる)といった心境で順一に刃を突き付けた。

「せめてもの情け。一瞬で楽にしてやろう」

 そういうとカールは順一に向けて、一気に刃を振り下ろして順一にトドメを刺そうとした。これを地べたに倒れながらも見届けたスター・コマンドー一同は愕然とした。

 が、カールの刃が振り下ろされたその瞬間。

 カールの刃を修司が振るう聖龍剣が受け止め、カールと鍔迫り合いに発展した。

「そ、総長……!」「修司……!」

 忽然と助太刀に入った修司を見て、順一もカールも驚愕する。

 そして戦闘不能に陥ったスター・コマンドーの代わりに、修司がカールと対峙した。

 しかし修司の心は複雑だった。

「カール、お前とは戦いたくない。どいてくれ」

「ダメだ! 此処から先は誰一人、いかせん!」

「……お前を倒したら……エリーゼが悲しむ」

「うぬぼれるな、修司! 鬼神としての名が泣くぞ。そんな台詞は、私を倒してからにするんだな!」

 昔からの戦友として。そしてエリーゼと言う可憐な乙女に愛された者同士として、修司とカールは険しい顔色で向かい合った。

 そして悲しき闘いは今、火ぶたを切った。

 カールが仕掛ける瞬間移動からの斬撃を修司は己の剣術で全て見切った上で防ぎ切る。

 更に順一達を圧倒したエネルギーの電撃や塊を、修司は聖龍剣で全て受け切った上で無効化してしまう。

 その激しい闘いを目の当たりにしたスター・コマンドーは愕然とし、誰もが二人の激闘に参入する事は不可能だと自覚した。

「見事だ、修司……!」「お前もな、カール……!」

 互いに相手を認め合いながらも、避けられなかった闘いに苦悩を噛み締める二人。

 

 そんな激しい剣戟での勝負は、一瞬で決着がついた。

 修司とカールが斬り込んだ次の瞬間、互いがすれ違うと修司が膝をついた。だが、それはカールの攻撃を受けた為ではなく、戦友でありエリーゼが愛するカールを斬ったという己の罪科に対しての落胆からだった。

 こうして修司に斬られたカールは、苦しそうに斬られた箇所を押さえながら膝をついた。

 そしてスター・コマンドーも見届ける中、カールは修司に言った。

「……見事だ、修司! 流石は私の戦友であるだけの事はある……だが、もう遅い!」

「なんだと!」

「Jフォースは……既に宇宙に飛び立った! 私がここで……倒れても……Jフォースは滅びぬ」

「……カール」

「……修司。エリーゼには、こう伝えてくれ。私は、お前の婚約者になれた男は満足して死んでいったとな! ……さらばだ、修司!」

「カールッ!!」

 当初は婚約者エリーゼによる平和的解決の願いに悩んでいたものの、最後まで自分の信念を押し通して戦う道を選んだカール。

 そして覚悟の上で戦友修司と激突した事で敗北した彼は、婚約者エリーゼへの託を頼み戦死した。

 

 修司は戦友であるカールを倒した事で、かつて自分を愛してくれていたカールの婚約者エリーゼにどう顔向けすれば良いかと自問自答に苦しんだという。

 

 

 

[戦いの場は宇宙へ]

 

 カール指揮官の捨て身の時間稼ぎにより、Jフォースは宇宙へと飛び立ち、彼らが建造した巨大衛星ファイナルウェポンに拠点を移した。

 ファイナルウェポンは、その名のとおりJフォースの最終兵器であり、将軍ジェネシスはこのファイナルウェポンに二次元人だけの国家を築こうとしていた。

「Jフォースは、宇宙に出て行っちまった……」

「……トウキ、宇宙船の手配を。僕らが追い掛ける!」

 軍隊がファイナルウェポンへと移った経緯に戸惑う素振りを見せるトウキ。そんなトウキに順一達スター・コマンドーはJフォースを止めるべく宇宙に発つと宣言。

「ジュン! 無茶だ! 危なすぎる!」

「僕たちはすぐ、宇宙に出る! トウキ、本部は任せたよ」

 無論トウキは敵の本拠地であり宇宙と言う場所での戦闘に危機感を覚え、順一達に無謀だと告げる。が、順一達の決意は固く、順一はトウキに宇宙船の手配と聖龍隊本部での職務を任せた。

 

 その一方、修司はというと。

「エリーゼ? どこだ、エリーゼ!」

 戦友カールを殺めてしまい、そのカールの遺言を婚約者エリーゼに伝えようとしていたが、肝心のエリーゼの姿が見当たらなかった。

「修司、どうしたの? エリーゼが、どうかしたの?」

「アッコ! 大変だ、エリーゼの奴がどっか行っちまった!」

 辺りを何度も見渡す修司を見て、アッコが問い掛けると修司は慌てた様子で話した。

「……まさか、エリーゼの奴、Jフォースを追って宇宙へ……!?」

「え!?」

 修司の懸念に、アッコは愕然とする。

「アッコ、俺もスター・コマンドーと共に宇宙に……ファイナルウェポンに出る! エリーゼを、そしてジェネシスたちを止めに行く!」

「……言っても無駄な様ね。危険な任務になると思うけど、自分を大切にしてちょうだい……」

 アッコは修司の様子を見て、彼に何を言っても急行するのだろうと理解した上で、修司が出撃するのを容認した。

 アッコ自身も、エリーゼから過去の修司との思い出を聞いていた。かつてエリーゼは、当時の修司に恋心を抱いていたが、修司の人の愛情を感じない性分を知って失恋に至ったという。しかしそんなエリーゼの想いを受け止めつつ、修司は戦友カールのエリーゼへの想いを伝えさせるべく当時の軍隊仲間の皆々と協力して、カールとエリーゼの恋路に華を咲かせたという。故に、そんなエリーゼとカールの二人をどんなに修司が思っているのかアッコは理解していたのだ。

 そして修司はスター・コマンドーの許へと駆け付けた。

「エリーゼ、早まった事はするんじゃないぞ!」

 悲しみに暮れているであろうエリーゼの暴走を懸念した修司は、スター・コマンドーの許へと急ぐ。

「ジュン!」」「総長!」

 修司はスター・コマンドーの許へと駆け付けると、順一に声を掛けた。

「ジュン、俺も一緒にファイナルウェポンに行く! 俺は俺で、やらなきゃならない事があるんだ!」

 修司の力強い眼差しを見据えて、順一は修司も同行する事に拒絶しなかった。

「……分かりました、一緒にJフォースを止めに行きましょう!」

 こうして順一達スター・コマンドーと修司は同行して、ファイナルウェポンへと宇宙船で向かった。

 

 修司や順一達が宇宙に向かった一方、他の聖龍隊も各自でスター・コマンドーに続いてファイナルウェポンに乗り込もうと離陸の準備を行っていた。

「あっ、イテテ~~」

「こらっ、まだドジったな!」

「す、すいません……」

 そんな準備を熟練の隊士たちに混ざり、手伝っている順一の親友トウキは毎度の如く、資材を運んでいる途中、派手に転倒して資材を床に転がしてしまう。そんなトウキを熟練隊士は注意すると、トウキは穏やかな顔で謝る。

 と、トウキが床に散らばった資材を拾い集めようとしたその時。彼の着ている服の第一ボタンからアラームが鳴り、トウキはそのボタンを押して通信に出た。

「俺だ。いま聖龍隊の連中に動かれたらマズい、殺れ」

「……了解」

 トウキは通信に応答すると、即座に行動に移った。

「まったくドジな奴だな」

 そんなトウキの愛嬌のあるドジを呆れながらも微笑む周りの隊士達。

 すると、彼らが見ている中、トウキの様子が一変した。

「? おい、トウキ。どうした?」

 悍ましい殺伐としたオーラを放ち出したトウキに、周りの熟練隊士達が見ていると。

 トウキは両腕を前に交差させて、力を込めると一気に投身が膨れて、武装した屈強な男へと変身したのだ。

『!!』

 やや肥満体だったトウキが、屈強な男に変身した様を目の当たりにした聖龍隊士は驚愕した。

 そんな聖龍隊士たちを、変身したトウキは両腕に装備している武具から鋭利な刃物を突出させて斬り込んできた。

 そして次々とその場の聖龍隊士達を惨殺していくトウキ。現場はまさに地獄絵図だった。

 と、隊士たちを次々に斬り捨てていくトウキは、一人の隊士がスター・コマンドーに緊急報告しているのに気付いた。

「こちら聖龍隊、聖龍隊本部! スター・コマンドー応答願います! 誰か応答を……!」

 だが変身したトウキがそれに気づき、無線機から通信する隊士の背後からその隊士を斬り付けて殺めた。

「っ……ああッ」

「こちらスター・コマンドー、スター・コマンドーの平賀才人だ。どうした、何かあったのか?」

 と、緊急通信を傍受してスター・コマンドーの平賀才人が通信に出ると、トウキはそれに平然と応答した。

「あ、すいません。今の通信、間違いでした」

 いつもの穏やかな口調で応答するトウキに、才人は疑いはしなかった。

「ッ、作戦行動中は必要以外の通信はダメだって言われているだろ」

「はあ、どうもすみません」

「それじゃ、切るぞ」

 トウキとの通信を切った才人は、Jフォースが待ち受けているファイナルウェポンへと向かう道中での通信に呆れていた。

「まったく、これだから素人は……」

 そんな呆れ果てる才人を、傍らでルイズがほほ笑む。

 一方のトウキは、これ以上スター・コマンドーに自分の正体が明るみになるのを防ぐ為に、無線装置を破壊した。

 そして殺気に満ち溢れたトウキは、聖龍隊本部の一画その小部屋に入ると、そこに監禁していた女性の縄を解いて解放した。

「……カール……カール……カール……」

 それは婚約者であるカールを、かつて愛していた男修司に斬り捨てられて放心状態に陥っている猫の獣人エリーゼだった。

 トウキは、婚約者であるカールが死んだ事を知って、ショックを受けているエリーゼをスグに人目を避けて監禁していたのだ。

「へっ、男が死んだだけで心ここに非ず、か。何とも貧弱な女だぜ」

 放心状態のエリーゼに毒舌を吐くトウキは、そんな彼女にある物を手渡した。

「ほら、これ渡してやるよ」

 トウキがエリーゼに手渡したのは、禍々しいオーラを放つ黒い球体だった。

「それはオレがJフォースの基地から盗み出した、使用危険と見做されて厳重保管されていた兵器だ。これを使えばカールの仇が……そう、小田原修司を殺せるかもしれねえぜ」

「……カールの、仇……修司を、私が……」

 トウキの口車に乗せられ、エリーゼの空虚な心に言い表せない感情が留まる。

 そしてエリーゼに復讐の機会を与えるトウキは不敵な笑みを浮かべて言った。

「さてと……俺もジュン達を追うとするか。ヒヒヒ……」

 トウキはエリーゼを連れて、自らもファイナルウェポンに出向いた。

 

 それから数十分後。

 多くの聖龍隊隊士が惨殺された惨状の中、生存している聖龍隊隊士達にバーンズたち本部に居残っている聖龍HEADは指示を出していた。

「緊急通信だ! 宇宙に出たスター・コマンドーに緊急の通信をしろ!」

「無理です! 宇宙への無線機材は全て破壊されて、スター・コマンドーとの連絡手段は全て使用不能!」

 バーンズ達HEADは、スター・コマンドーに事実を伝えようとしていたが、宇宙に向けての無線通信を可能にする機材が全て破壊された為に連絡手段を全て失っていた。

 宇宙への通信を回復させようと、修理班が通信機器を直している間、バーンズ達HEADは血相を変えていた。

「まさか……まさか……トウキの奴が…………革命軍士のスパイだったとは……!」

 トウキの正体、それはメカルスが総指揮官を執っている革命軍士からのスパイだった。

 スパイだったトウキは、全てを失い絶望に打ちひしがれるエリーゼに復讐の力を与え、そして今自分を信じ切っているスター・コマンドーを倒すため自らも宇宙に飛び立った。

 

 Jフォース大戦は最終局面へと向かっていた。

 

 

 

[愛の末に]

 

 宇宙船で最終兵器ファイナルウェポンに到着した修司とスター・コマンドーは、迷う事無く進撃した。

「ジュン! ここは今やJフォースの最終拠点! 戦力を分断させる為に、俺とお前達とで別ルートから進撃しよう!」

「了解しました! 総長もお気をつけて!」

 進撃する道中、修司と順一達スター・コマンドーは敵戦力を分断させる為に、それぞれ別経路から進攻する事をお互いに承諾して、分かれた。

 そして単身へとなった修司は、たった一人に成りながらもエリーゼを、ゆくゆくはかつての上官であったジェネシスを制止する為に前進する。

 

 そんな修司がジェネシスの許へと向かう途中、足を踏み入れた一室にあのエリーゼが禁断の兵器を手に持って修司を待ち受けていた。

「エリーゼ!」

「……カールと……戦わないでと、あれほど言ったのに!」

「………………すまない」

 かつて愛していた修司に、今を愛してくれていたカールと戦わないよう訴えていたエリーゼに、彼女の想いを裏切った修司は重く険しい顔付きで一言謝罪する。

「……もう遅いのね。何も、かも」

 しかしエリーゼは既に愛してくれた異性のカールが、そしてJフォースの仲間達がもう帰ってこない現実に絶望し、悲しみの涙を流す。

「落ち着け、エリーゼ! 話を聞いてくれ!」

「さようなら、修司……」

 修司がどうにかエリーゼを宥めようと説得するが、エリーゼは使用すれば使用者の命も危険に冒される武装兵器を使おうと発動させようとする。

「エリーゼ、よせーーっ!」

 修司の必死の嘆願も虚しく、エリーゼは使用危険兵器を発動させ、頭部から足元まで金属製のアーマーで覆った巨大アーマーで武装してしまう。

 そして完全武装したエリーゼは、ここまで陥ってしまった自分に罪悪感を感じてか、修司に言い放った。

「ごめんね、修司……!」

 愛するカールを失った心の隙間を埋める為に、そのカールを斬り捨てるしかなかった修司に憎しみの矛先を向けるしか自分を保てない弱さに悲観し、エリーゼは使用者の生命を危険に晒す兵器で修司と戦闘に突入してしまった。

 

 苦しくも悲しくも、エリーゼと戦闘に突入してしまった修司は、何とかエリーゼ本人に傷を負わさない程度に彼女が装着している巨大アーマーに斬りかかった。

 しかしアーマーを斬り付けても傷一つ付ける事はできず、それどころか兵器は小型撃墜装置を放出して修司の周りにばら撒く。

 そして小型撃墜装置は、修司の周りに展開すると、修司に向かって一斉砲火を撃った。修司は、この射撃を何とか回避して、装置を全て聖龍剣で斬り落とす。

 しかし装置を撃墜しても、また新たな装置がアーマーから放出されて修司を襲う。

 ダメージを与える術を見出せず、圧倒されていく修司は苦戦を強いられる。だが、彼を本当に追い詰めているのは巨大アーマーの性能ではなく、そのアーマーを装着するまでに至ってしまったエリーゼの苦境にだった。

 エリーゼを殺めたくない、そんな修司の迷いが聖龍剣を鈍らせる。

 すると巨大アーマーから紫色の水晶体が射出されて、その水晶体が修司に目掛けて強力なビームが放たれたのだ。

 修司はこのビームを辛うじて避けると同時に、水晶体を破壊すべく斬りかかった。すると水晶体にヒビは入らなかったものの、アーマーの動きが微妙に変化した。

 これを見た修司は的確な判断力で察した。

(水晶を攻撃したらアーマーの動きが変わった……そうか! きっと、あの水晶体がアーマーの核、コアなんだ! それじゃアレを破壊すれば……)

 修司はアーマーから射出される巨大な紫の水晶体が、アーマーのコアであり、それを破壊すれば兵器も停止すると判断した。

 それから修司は、自分の周りを取り巻く撃墜装置を破壊しつつ、射出される水晶に斬り込んでいく。

 しかし何度か斬り込んで行く内に、修司の脳裏にある不安が過ぎった。

(このまま兵器を停止させてしまえば、搭乗者であるエリーゼの命は無事なのだろうか)

 そう考え込む修司に、巨大アーマーを装着するエリーゼは攻撃の手を緩めず、修司を追い込んでいく。

 すると巨大な水晶体は修司の真上に設置された次の瞬間、真上の水晶体と前方のアーマーの両方から修司を挟み込むようにビームが発射された。

 修司は真上からのビームを回避できたが、前方正面からのビームに腕が掠ってしまい、軽傷を負ってしまう。

 腕を痛めた修司だが、彼の決意は揺らぎなかった。微かな希望を信じて、今目の前で応戦して来るエリーゼを撃破し、復讐心に憑りつかれた彼女を解放する気持ちで戦い抜けば、きっと彼女を救い出せると自分に言い聞かせた。

 そして修司は何度も斬り込んで行った為にヒビが入った水晶体に強烈な突きを聖龍剣で突いた。

 その瞬間、水晶体は砕け散り、それと同時にエリーゼが搭乗しているアーマーも爆発を起こして炸裂した。

「エリーゼ!」

 巨大アーマーの爆発に巻き込まれて倒れるエリーゼに、修司は急いで駆け寄った。

 

 修司に敗北して爆発の現場に横たわるエリーゼ。修司は彼女に駆け寄った。

「エリーゼ! ……エリーゼ……」

 修司が駆け寄ると、エリーゼは瞼を開いて修司を見据える。

「……修司……」

「エリーゼ、しっかりしろ。しっかりするんだ!」

 修司がエリーゼに何度も声をかけると、彼女は悲愴な面持ちで切実な思いを打ち明けた。

「……お願い……もう、Jフォースに手を出さないで……もう私たち、二次元人を束縛しないで……」

 もう自分たち二次元人を束縛せず、自由にさせてほしいと三次元人である修司に訴えるエリーゼ。そんな彼女に修司は唱えた。

「エリーゼ、二次元人と三次元人は光と影の存在。どちらか一方だけが存在する世界なんて在り得ないんだ……二次元人だけの世界は幻なんだよ!」

 この修司の言葉を受けて、エリーゼは悟ったように表情を変えた。

「……そうね……私も薄々気づいてた……だけど、それでも信じたかった……二次元人だけの世界で、カールやみんなと……」

 二次元人だけの世界で婚約者のカールやJフォースの皆と生きていたかったと切に唱えるエリーゼの手を修司は取り、彼女を見守る。

「エリーゼ……!」「……修司……」

 修司が呼びかける中、エリーゼはそっと修司に微笑みを向けると彼女は静かに息を引き取った。

「エリーゼ! エリーゼ! エリーゼ! ……エリーゼ! エリーゼ……!」

 かつて自分を愛してくれたエリーゼを、カールに続いてその婚約者でもあるエリーゼを死に追いやった修司は深く絶望し、咆哮を上げた。

「俺は……俺は……いったい何のために……戦っているんだーーーー……ッ!!」

 

 修司もカールも、そしてエリーゼも本当は平和な世の中を、平和的解決を望んでいた。

 しかし現実は非情にもカールに信念を貫かせ、修司とカールを闘いへと導いてしまった。

 そしてカールは戦死し、そのカールの死によって深く絶望したエリーゼもまた復讐という選択肢を選んだ事で修司によって斬り倒されてしまった。

 カールやエリーゼは「二次元人だけの世界」こそ理想郷だと信じていたのに対し、修司や聖龍隊は「二次元人と三次元人が共存する世界」こそ本当の理想郷だと信じて疑わなかった。

 この互いの価値観の違いが、悲しくも切ない修司の戦いに繋がってしまったのである。

 

 

 

[信頼の末の……]

 

 修司がエリーゼと激しい戦闘を展開していたその頃。

 順一たちは順一たちで進撃を続け、ジェネシス将軍の玉座に辿り着く手前の部屋で衝撃的な対面を迎える事となる。

 ファイナルウェポンの道中、その部屋に辿り着いた順一たちは目の前に立つ一人の少年を見て驚いた。

「トウキ! きみ……なんで、こんなところに!?」

 目の前に聖龍隊本部に待機している筈の友人トウキを目撃して、順一が驚いているとトウキは不敵に笑み出した。

「……ククク。ファーーッハッハ! 聖龍隊もJフォースも、アマちゃん揃いで笑いを堪えるのに苦労したぜ。ま、おかげでやりやすかったがね」

「……な、なにを言っているんだ? トウキ、どういう事なんだ!」

「あの世でゆっくり考えな! 死ね、スター・コマンドー!」

 そういうとトウキは、聖龍隊本部で隊士達を虐殺した時と同様に屈強な武装兵士に変身した。

「あ! あなたは……!」「あの時の……!」

 赤ずきんと白雪は、変身したトウキを見て衝撃した。何故なら変身したトウキこそ、バイオラボラトリーでスプリット・マシュラームを細切れにした謎の男だったからだ。

 そして変身したトウキは、腕に装備している武具から鋭利な刃を突出させて順一達に敵意をむき出しにした。

「待ってたぜ、テメエらを嬲り殺せるこの時をな……!」

 トウキは両腕からのびるブレードを武器に、スター・コマンドーに襲い掛かる。

 スター・コマンドーの面々は、突然のトウキの変身に加えて彼が突如として襲い掛かってくる状況を呑み込めず、半ば混乱していた。

 トウキは両腕に装備しているブレードでスター・コマンドーの面々に斬りかかる。

「ひゃーーはっはっ!」

「きゃあっ」「ぐっ……!」

 ルイズや才人に斬りかかるトウキに、ルイズは間一髪のところで回避する一方で才人はトウキの斬撃を己の得物で受け止める。

 才人と鍔迫り合いを展開するトウキに、戸惑い困惑しながらも背後から明石薫が超能力で押さえ込もうと手を突き出した瞬間、才人と斬り合っていたトウキは常人以上の俊足で薫の目前まで迫ると彼女に言った。

「お前らの能力は既に把握済みだ。つまり動きもお見通しって事だよッ!」

 次の瞬間、トウキは薫に斬りかかろうと両腕のブレードを振り下ろして刃を交差させてクロス状に振るった。

 しかしトウキに斬りかかられる寸前で、テレポーターの野上葵が薫を瞬間移動させて救出する。

 攻撃が空振りに至ったトウキに、戸惑いを抱えつつも兼一と美羽の二人が背後から奇襲をかけた。

 だがトウキは背後からの奇襲に敏感に反応し、兼一と美羽の攻撃をかわすと反撃に転ずる。

「うわっ」「っ!」

 兼一と美羽はトウキが放つ斬撃に吹き飛ばされ、転倒してしまう。

 すると攻撃を続けるトウキに、今度はセレブナイトと音無小夜の二人が同時に斬りかかり反撃するが、トウキは両腕のブレードで双方の刃を受け止めて防ぎつつ、容易く反撃してしまう。

 そんな善戦するトウキを、今度はユウとニナミのコンビが攻撃するものの、二人が放つ炎と氷の攻撃をトウキは二刀流のブレードを大きく振るって放つ衝撃波でかき消してしまう。

 二人の攻撃をかき消したトウキ。すると彼にスパイダーライダーズの面々が、パートナーであるスパイダー達に蜘蛛の糸を射出させてトウキの動きを封じさせる。

「トウキ! 何の真似だよ!」

 突然変身して暴れ回るトウキに、ハンター・スティールが問い掛けるもののトウキは自力で強靭な蜘蛛の糸を引き千切ると発した。

「ヘっ、まだ仲間の気でいるとは……おめでたい奴らだぜ」

 そういうとトウキはハンター達に斬りかかり、彼らに軽傷を負わせる。

 するとお次は、生物研究所でトウキにマシュラームを惨殺されたおとぎ銃士の三人が、トウキに挑んだ。

「トウキ! あなたは一体……!?」

 赤ずきんが問い掛ける中、トウキは凶悪な顔付きで彼女たちを一瞬で斬り捨ててしまう。

 と、ここで仲間を次々に傷付けて行くトウキの悪行に見切りを付ける為、黒猫のハルがトウキに向かってレーザーを発射しながら急接近。触手でトウキに鋭い斬撃を切り込もうとする。

 だがトウキは不敵な微笑を浮かべると、レーザーを掻い潜ってハルにブレードを叩き込んだ。これにハルは深い傷を負ってしまうモノの、再生能力を使って回復する。

 次々にスター・コマンドーの仲間達を傷付けて行くトウキを前に、デジモンセイバーズの面々は動揺してしまってた。そんな彼らにトウキは容赦なく斬り付けた。

「け、結界……」

 未だ動揺を抑え切れない結界師の良守と時音が結界術を発動させようとするが、その寸前でトウキの攻撃を受けてしまい床に倒れ込んでしまう。

「トウキ、そこまでよ!」

 猛威を振るうトウキを制止しようとパワパフガールズと日向ひまわり達くノ一の面々が協力し合ってトウキに迫る。

 しかしトウキは彼女たちのスーパーパワーや忍術に怯む事無く、これまた容赦なく痛め付けて叩きのめす。

 トウキは最後に残った村田順一と深澤マイに戦意を向けると、二人に向かって斬りかかった。

「トウキ!」

 と、その時、親友のトウキの攻撃を順一が名刀純心で受け止める。

 そして激しい剣戟に発展する中、順一はトウキに問い掛ける。

「トウキ、なぜだ! なぜ、こんなことを……!」

 順一はトウキに何ゆえ自分達スター・コマンドーを襲って来るのか訊ねると、トウキは順一に、そしてその場のスター・コマンドーの面々に対して衝撃的な発言を告げた。

「まだ分からねえとは、テメエらはバカを通り越したお人好しだな! オレはテメェらをこのJフォース大戦に引き込むために聖龍隊に潜り込んだスパイなんだよ! あのスカイラグーンを襲撃した巨大兵器からJフォース仕様の部品を見つけたと言って、予め用意しておいた部品を聖龍隊に提出してJフォースに異常者(ヒール)の疑いをかけ……チルドレンズや兼一たちと本気の戦いをしたいとくだらねえ武道家の意地を利用してサイキック・フレイヤーに聖龍隊を裏切るよう唆し……お前ら聖龍隊とJフォースが戦争し合うのを裏で糸を引いていたのは、このオレなのよ!」

 トウキから真実を告げられて、衝撃で言葉を失くすスター・コマンドー一同。

 順一の親友として信頼を寄せていたトウキが、まさかの全ての戦いを、亀裂を引き起こした張本人だったと知って悲痛な想いを抑え切れなくなる一同。

 Jフォースと、あのサイキック・フレイヤーとの悲しき戦いを裏で操っていたのがトウキだと知って、順一はショックを隠し切れなかった。

「ハハハッ……、?」

 と、その時。順一と闘い合っているトウキの頬に生暖かい滴が零れ落ちたのに、トウキは気付いた。

(水?)

 トウキが自分の頬を伝う水滴に気付いた次の瞬間、トウキが目の前の順一の顔に目を向けてみると。

 順一が悲壮な顔で目から溢れんばかりの涙を流していた。

 親友と信じていたトウキのスパイと言う告白、そして信じいていた想いを裏切られた悲痛な想いから、順一は大粒の涙をポロポロと流した。

 そして順一は、意を決して親友であったトウキに日本刀純心を振り下ろした。

「うああああああああッ!!」

 悲しみの一太刀は、トウキの胴体に斜め下に向かって斬り付けられ、トウキに深い損傷を与えた。

 深い傷口から噴出するトウキの血を、順一は猛烈に浴びる。

 

 そして順一の悲しみの一太刀がトウキを戦闘不能に到らしめると、順一は自分達に戦いを仕掛けたトウキを呼び付ける。

「トウキ!」

「……くそっ……こんな奴らに……オレが負けるとは……」

「トウキ、なんで君が……?」

「……フフフ。ハーーハッハッ! アマすぎるぜ、ジュン! オレは最初から、貴様たちを監視するためにスパイとして、お前の下に送り込まれていたのよ!」

「……トウキ! 僕は、僕は! ……信じていたのに!」

「信じてたァ? ハーーッハッハ!! そのあまさが命取りだぜ! あばよ、テメエら! あの世で待ってるぜーーッ!」

「トウキーーーーッ!!」

 順一達の信じる心を嘲笑したトウキは、最後は自爆してその身を消滅させた。

 

 トウキの正体を知った順一達スター・コマンドーは、心に深い傷を負いながらも既に始まってしまったこのJフォース大戦を終わらせる為に前進するしかなかった。

 

 

 

[将軍との決戦]

 

 スパイだったトウキの真実を知っても尚、始まってしまった大戦を終幕させようと順一達は前進した。

 そして多くの罠や配置されている兵士の猛攻を掻い潜って、順一達は修司よりも先にジェネシス将軍が居る玉座の前に辿り着いた。

 順一達を己が目で捉えたジェネシスは、スッと立ち上がり、順一達を見下ろしながら向かい合った。

「ジェネシス将軍! いったい、どういうつもりなんです?」

 順一がジェネシスに問い詰めると、ジェネシスは平然と毅然とした態度で申し開いた。

「……二次元人だけの国を創る。それが、我々の願いだ。独立を妨げる者とは、断固として戦わせてもらう」

「戦う以外の方法も、たくさんあった筈だ!」

 順一が再度唱えると、ジェネシスは真実を順一達に突き付けた。

「……我々は三次元人たちに異常者(ヒール)と決め付けられた。戦う以外に、何ができたというのかね?」

「……それは……」

 返す言葉が見当たらない順一達に、ジェネシスは両脇を締め拳を構えて宣言した。

「今更やめる事はできん! いくぞ、スター・コマンドー!」

 ファイナル・ウェポンの中枢にまで辿り着いた順一達と戦う姿勢を見せるジェネシス。そんな彼に順一達は応戦する体制を構えた。

「……君たちを見てると、あの男の事を思い出すよ」

 ジェネシスは戦意ある順一達スター・コマンドーの面々を見て、彼らの師であり同時にかつての部下だった修司の事を思い返していた。

 そんな過去の修司の事を思い返しながら、ジェネシスは順一達と戦闘を開始した。

 

 ジェネシスは両手の握り拳から、拳状のエネルギーの塊を放って順一達に挑みかかる。

 順一達は続々とジェネシスの拳から繰り出されるエネルギーの塊を回避すると、ジェネシスに反撃していった。

 しかしジェネシスの屈強で大柄な体格には、ほとんどの攻撃が効かず苦戦を強いられるスター・コマンドー。

 それでも順一達は諦めず、様々な術や戦法でジェネシスに挑みかかる。

 だがジェネシスの体に傷を負わせる事は叶わず、順一達は忽ち追い詰められてしまう。

 そんな順一達に、ジェネシスは此処までの戦果を評して敬意を表す様にトドメを下そうとした。

 順一達は此処までかと諦めかけた、その時。

 巨大な拳を振り下ろそうとするジェネシスの顔に、暗闇から斬撃が飛んできて直撃した。

 ジェネシスも、順一達も今の斬撃は何なのかと暗闇に視線を向けると、暗闇から現れたのはあの小田原修司だった。

「そ、総長!」「修司か……!」

 暗闇から現れた修司を見て、同じ聖龍隊の順一達も、かつて修司の上官だったジェネシスも顔付きを一変させた。

 そしてジェネシスの玉座の間に遅れて辿り着いた修司は、ジェネシスに向かって言い放った。

「ジェネシス! あんたと俺たちの戦争で、多くの二次元人たちが死んだ! それなのに、未だ戦いをやめないと言うのか……!」

 これに対してジェネシスは、こう弁論した。

「独立の為の戦いだ……。どうしても犠牲は出る……」

「……カールやエリーゼも、そうだというのか? ……答えろ、ジェネシス!」

 険しい表情で問い詰める修司に、ジェネシスは覚悟を決めて言う。

「……今さら言い訳はすまい。かかってくるがいい、修司!」

 ジェネシスは、順一達に続いて修司とも戦う覚悟を決めた。

「これも運命(さだめ)か……仕方あるまい」

 かつての部下であり仲間である修司との戦いも運命だったのかと思い詰めたジェネシスは、修司にも攻撃を仕掛けた。

 

 修司も交えてジェネシスとの戦闘を続行する事となったスター・コマンドー。

 苦戦を強いられているスター・コマンドーに、修司は力説を唱えた。

「お前達! 確かにジェネシスは大軍隊を指揮する為に生み出された二次元人であり、それ故に戦闘力も桁外れだ。だが、俺たちが協力し合えば必ず勝機は見えてくる筈……!」

「総長……」

「ジュン、みんな! 一刻も早く、この戦いを終わらせるぞ! ……今まで死んだ、多くの二次元人達の弔いの為にも」

『了解!』

 修司からの励ましを受けて、順一達スター・コマンドーは士気を高めた。

 まずは良守たち結界師の二人に、結界を空中に張ってもらい、他の面々はその結界に飛び乗ってジェネシスの上半身を狙う。

 次々とジェネシスの上半身に攻撃が直撃し、確実にダメージを負わせていく一同。

 お次に超能力少女のチルドレンズがジェネシスに向かって、自分達のサイキックパワーを凝縮させた衝撃波を打ち出してジェネシスに大打撃を与える。

「うおっ!」

 チルドレンズの合体技に、思わず声を上げてしまうジェネシス。

 そんなチルドレンズに続いて、セレブナイトに平賀才人そして音無小夜が刃でジェネシスに斬りかかり、更に傷を負わせる。

 と、そこに今度はパワパフガールズの三人が必殺技を一体化させた究極技でジェネシスを総攻撃。ジェネシスは更に重傷を負ってしまう。

 そこに赤ずきん達おとぎ銃士の三人の炎や氷に大地の魔法がさく裂し、ハルのレーザービーム攻撃が直撃する。

 最後に修司と順一の二人が、己の得物である聖龍剣と純心に気力を込めて一気にジェネシスに跳びかかった。

「そう思い通りにはいかんぞ!」

 ジェネシスが拳からエネルギーの塊を射出しようとすると、その拳をスパイダーライダーズの面々が蜘蛛の糸で絡め取り動きを封じさせる。と、更に修司と順一を援護しようと大門大が御得意の強烈な拳をジェネシスに叩き込む。

 大の小さな拳が、ジェネシスの巨体に直撃すると意外にもそれでジェネシスは怯んでしまい、修司と順一に攻撃の隙を与えさせた。

 そして最後に、修司と順一はそれぞれが放つ斬撃を一体化させた合体技で、ジェネシスに巨大な斬撃をお見舞いして戦いを終わらせた。

 

 修司と順一、二人の斬撃を一体化させる合体技でジェネシスに重傷を負わせた事で遂に大戦を終わらせる事ができたと思ったスター・コマンドーの面々。

 しかしジェネシスを戦闘不能まで追い詰めたちょうどその時、一同がいるファイナルウェポンが突如として稼働し始めた。

「な、なんだ?」

「なんだッ!? 一体どうしたんだ?」

 順一や修司達が騒然とする中、彼らに追い詰められたジェネシスが顔色を一変させて言った。

「……バ、バカな! この兵器が動き出すなどあり得ない……」

「ジェネシスっ! これは、どういうことだ?」

 修司が問い詰めると、ジェネシスは激しく動揺しながら答えた。

「分からん。ただ、我々以外の何者かが、この兵器を勝手に動かしている……! いかん、このままでは地球が……危ない!」

「なんだと? くそっ、このままじゃ地球が危ない。ジェネシス、あんたは後回しだ。俺たちは、この兵器を止めに行く!」

 修司は順一達スター・コマンドーに急きょ何者かによって起動させられたファイナル・ウェポンを停止させる為に駆け抜けた。

 

 

 

[黒幕と過去の修司]

 

 修司と順一、そしてスター・コマンドーの一行は起動したファイナル・ウェポンを停止させるべく制御装置へと赴いた。

 だが、制御装置がある部屋の前まで辿り着くと、其処には漆黒の黒衣を纏った怪しい影が現れ、一行の目前に立ちはだかった。

「ククク……。ご苦労だったな、諸君!」

「お前は……メカルス! ……貴様の仕業だったのか!」

 目の前に現れた黒衣の存在の声を聞いて、修司はその黒衣を纏った者こそ自分の忌まわしきコピー、メカルスであるという事を察した。

「愉快だ。実に愉快だよ。聖龍隊!」

 メカルスは嘲笑を浮かびながら、目の前の一行に語り出した。

「ククク。Jフォースと聖龍隊とを、お互いに戦わせる作戦は実に上手くいった! ……トウキの奴も、スパイとしてよく働いてくれたよ! 親友であるお前に殺されてなければ、勲章の一つでも授与してやりたい程だったよ」

「トウキは、やはりあんたが送ったスパイだったのね!」

 メカルスの話を聞いて、信頼していた友のトウキをスパイとして自分達の下に送ったのはメカルスだと確証するルイズ。

「ククク。Jフォースほど、おめでたい連中もおるまい。あとは奴らが作った兵器で、地球を始末するだけだ」

「そんな事はさせません!」

 最終的にはJフォースが製造した兵器で地球を攻撃すると言いだすメカルスに、食い下がろうとする白浜兼一。

 するとメカルスは自分とは表裏一体である修司に嘲笑しながら賞賛し出した。

「フハハハハハ! 素晴らしいぞ、本物(オリジナル)。あのカールやエリーゼまでも、躊躇いなく倒すとは!」

「……テメエがそうさせたんだ!」

 修司が言い返すと、メカルスは修司に昔を思い出させる様に語り出した。

「違うな。お前の、俺たちの心が破壊を……殺戮を望み、欲しているのだ! 思い出せ、本物(オリジナル)。あれは……まだ……お前が米軍の秘密基地で養成されていた頃の事……」

 メカルスはそのまま語り明かし始めた。小田原修司の凄惨な過去を……。

 

 それはまだ、修司が己を鍛えようと、米軍で養成していた頃にまで遡る。

 何らかの処置を施された修司に、軍の学者達は防弾強化ガラスに護られながら修司に実験を行わせてた。

 修司の許に迫る戦車の群れ。その迫る戦車を修司はなんと素手で受け止め、押し合ったという。

 そして修司は自力で戦車を押し返して引っ繰り返してしまった。その後も修司は、迫りくる戦車を次々と投げ転がして走行不能にさせる。

 学者達は、そんな修司の異常なまでの人力に驚きつつも大変感銘を受けた。

 だが、惨劇は此処から始まった。

 修司は防弾ガラスに護られる学者達の存在に気付くと、殺気立った顔で学者達に迫った。

 一驚する学者。だが彼らと修司の間には通常よりも強化された防弾ガラスが張られてた。

「ふっ、バカな。ガラスの事が分からず突っ込んでくるとは」

 学者の一人が微笑を浮かべた次の瞬間、修司は素手で防弾ガラスを殴り始めた。

 この行為に学者達は修司を笑い飛ばすが、修司が血が滲み出る拳を何度もガラスに叩き付けていると、驚いた事に戦車でやっとヒビが入る強化ガラスに亀裂が走ったのだ。

 これに学者達に戦慄が走ったが、時既に遅く、修司は自力で防弾強化ガラスを打ち破り、学者達がいる屋内へと侵入してきた。

 学者達が逃げ惑う中、修司は自身が打ち破ったガラスの破片を手に持つと、逃げ惑う学者達を次々に襲った。

「うぎゃっ」「ぐはっ」

 修司は逃げ惑う学者達を次々にガラスの破片で切り付け惨殺していくと、そこに学者達の通報で駆け付けた武装兵士が雪崩れ込んできた。

 兵士たちは猛威を振るう修司に麻酔銃を撃ち付けるが、何発もの麻酔銃を受けた修司は平然としていた。

 そして修司は雪崩れ込んできた兵士達も、学者達と同じ様に惨殺していき、現場を血の海へと誘った。

 だが次々と施設内の学者や兵士達を惨殺していく修司に、兵士達は諦めず何発もの麻酔銃を撃ち込んでいく。

 すると次第に修司は大人しくなり、遂には意識が薄れていく修司に兵士が後頭部を殴り付けて完全に気絶させようとする。

「はぁ、はぁ……やっと大人しくなったか」

「此処まで人を惨殺できるとは……末恐ろしいガキだ」

 苦労の末、修司を気絶させた兵士達は、そろって修司の恐ろしさを噛み締める。

 そんな兵士の発言を、薄れゆく意識の中で聞いていた修司は、明確になる潜在意識で自分が起こした惨劇を目に焼き付けた。

(これが、俺……俺が起こした……俺が、殺ったのか……)

 そのまま修司の意識は無くなり、彼は昏睡状態に陥ってしまった。

 そして、この記憶は修司の表側の記憶からは消され、潜在意識に焼き付けられた。

 そして修司の潜在意識をコピーして生み出されたメカルスの記憶だけに、この時の惨劇の記憶が蘇ったという。

 

 そうして修司達に、過去の出来事を語ったメカルスは修司に向かって高々と告げた。

「修司よ! 俺達こそ、どんな異常者(ヒール)よりも末恐ろしい、異常者だったのだよ!」

 順一たちスター・コマンドーが衝撃を受け、言葉を失くす中、修司は険しい面差しでメカルスに言った。

「……それがどうした。そんな昔話で、この俺が止まるとでも思ったか?」

「フフフ……素晴らしいぞ、修司。そうこなくてはな!」

「死んでいった者たちの弔いの為に……メカルス、お前を倒す!」

 メカルスから自分が起こした惨劇の記憶を語られた修司は迷うことなく、自分のコピー、メカルスに敵意を向けて宣言する。

 そして修司達に、過去の修司が起こした惨劇を語ったメカルスは姿を晦まし、部屋の奥へと飛び去っていく。

 それを修司、そして順一たちスター・コマンドーは追い掛けた。

 

 

 

[死神からの射撃手]

 

 ファイナル・ウェポンの制御室奥に向かう一行。

 そして制御室奥の巨大動力炉。エネルギーが燃えたぎる動力炉の前で、メカルスは黒衣を纏った状態で浮遊して待ち構えていた。

「地獄に旅立つ準備はできたかな?」

 メカルスは見た目の通り、正しく死神の如く大きな鎌を武器に床上の一行に切りかかった。

 このメカルスの攻撃に皆は体勢を低くして回避すると、修司が先制攻撃を仕掛けた。

「このッ」

 しかし空中をどういう原理でか解らないが、浮遊しているメカルスに攻撃を直撃させるのは困難だった。

 黒衣を纏ってフワフワと舞いながら攻撃してくるメカルスに、一同は非常に困惑する。

 すると、メカルスが纏う黒衣を燃やしてやろうと、ユウと赤ずきんが炎の攻撃技でメカルスに火炎を放った。

「ぐあッ」

 黒衣を燃やされたメカルスは唸る様に火達磨になり、燃え盛る。

 しかしスグに火を消すと、再び床上の面々に向かって鎌を振りかざす。

「そうはさせるか!」

 と、メカルスが鎌を振り下ろした瞬間、平賀才人とセレブナイトが己の得物でメカルスが振るう鎌を防いだ。

 その瞬間、先ほどの火炎攻撃が有効だと認識したユウと赤ずきんが再度メカルスに大火を射出した。

「ぐあッ……!」

 全身が火達磨となったメカルスは、遂に床上へと着地して燃え盛る黒衣を内側から打ち破る様に剥ぐと身を構えて目前の面々に言い放った。

「フフフ……修司、スター・コマンドー! 待ち焦がれていたぞ! お前達と再び戦う、この瞬間をな!」

 メカルスは大鎌を振り回して、修司やスター・コマンドーへと攻める。

 修司はメカルスが振るう大鎌を聖龍剣で受け止めると、メカルスの背後から順一が斬りかかるものの、メカルスは軽々と跳躍して順一の刃をかわしてみせる。

 するとメカルスは大鎌を片手で振り構えると、聖龍隊の面々に言った。

「フフ、修司、順一! この攻撃はかわせまい」

 そう言うとメカルスは大鎌を回転させながら投げ付けて強烈な攻撃を仕掛けてきた。

 更にメカルスは両目からレーザービームを直射させて、床上の面々に攻撃を仕掛ける。

 大鎌の大回転と床上に直射されるレーザービームに逃げ場を失う面々。すると此処に結界師の良守と時音が結界術を形成して皆を護る。

「こしゃくな!」

 メカルスは振り投げた大鎌を手に戻すと、その大鎌を回転させながら大跳躍してスター・コマンドーの面々に切りかかる。

「ッ!」「こ、こんな攻撃……!」

 メカルスが振るう大鎌を、音無小夜と白雪が剣で防ぎ切るが、メカルスの圧倒的なパワーに負けて押し出されてしまう。

 すると其処に「これでどうだ、メカルス!」とハンター・スティールが仲間のスパイダーライダーズと共に蜘蛛の糸を射出してメカルスを絡み取り、動きを封じようとする。

「ぐぬぬぬ……!」

 蜘蛛の糸で雁字搦めになるメカルスは、なんとか自力で糸を振りほどこうと躍起になるものの、其処を修司と順一が連携してメカルスに斬りかかった。

「ぐはっ」

 修司と順一の連携攻撃がトドメとなり、メカルスの体は大爆発。消滅した。

 

 誰もがメカルスとの勝利に確信を持ったその時、メカルスの大爆発で亀裂が入ったのか皆が立っている床上が崩落した。

 崩落する床と共に下の階層に落ちた一行は、どうにか無事に着地。

 すると下の階層に落ちた皆の目に、我が目を疑う衝撃的な光景が飛び込んだ。

 それは壁際に、まるで射撃手の様な形態をしたメカルスと、床にこびり付く様なスライム状の顔だけのメカルスの、二体のメカルスボディだった。

 メカルスは射撃攻撃に特化した機体と、特殊な攻撃法に特化したスライム状の体の二つで修司や順一達と戦う算段だ。

「フハハハハーー! 死ぬがいい、聖龍隊! あの世でカールやエリーゼ、トウキが待っているぞ!」

 メカルスは一同に台詞を言い放つと、戦闘を開始した。

「飛び切りの恐怖を味わうがいい……!」

 するとメカルスは戦場に自分の頭部を模したオブジェクトを繰り出して、修司たちの移動範囲を狭める戦法を取る。

 修司たちは場に出現した通称メカルスヘッドとするオブジェクトに飛び乗って、射撃手形態のメカルス通称スナイパーメカルスの頭部を攻撃しようと試みる。

 しかしメカルスは、自らか所持している狙撃銃で目前の面々を狙い撃って特殊銃撃を開始する。

「結界!」

 良守が早々に結界を張った事で、スター・コマンドーの面々は間一髪メカルスの銃撃から逃れられた。

 と、ここで修司がスナイパーメカルスの頭部に飛び掛かって斬り込もうとしたが、そこにスライムメカルスが強力な突風を起こすほどの吸引力で皆を引き寄せた為に修司はスナイパーメカルスから遠ざかってしまう。

 修司は仕方なく、吸引をするスライムメカルスの方から斬りかかろうと接近するが、その前にスライムメカルスとの間にオブジェクトが出現し、行く手を阻む。だが修司はオブジェクトを連撃で破壊して、スライムメカルスへと急接近すると斬撃を何発も斬り込んだ。

 修司に続き、順一や他のスター・コマンドーの面々も各々の戦法で二体のメカルスに猛攻を仕掛けていく。

「このッ!」

 スライムメカルスが飛ばしてくる瓦礫の山を明石薫が御得意の超能力で抑え込む間、ハイパー・ブロッサムが武器であるヨーヨーでスライムメカルスに遠距離攻撃を仕掛ける。

 その一方で、スナイパーメカルスの狙撃に対しては、セレブナイトが犬魔法で狙いを外させてその間に音無小夜やおとぎ銃士の4人がスナイパーメカルスの頭部を狙って斬り込む。

 と、スライムメカルスが突風を起こして、一同を棘を生やしたオブジェクトに貫通させようと図るが、そのオブジェクトを修司と順一は強力な斬撃で一瞬にして大破させていく。

「地走り!」

 修司が聖龍剣を逆手で後ろから前に向けて押し出すように放つ、大地を駆ける斬撃「地走り」を繰り出して、遠距離からスライムメカルスを攻撃。

 さらに地面や床に沿って駆け抜ける斬撃の地走りはオブジェクトを貫通してスライムメカルスに大打撃を与えていく。

 しかしメカルスの圧倒的なパワーに、次第に押されていく一行。

「終わりだッ!」

 と、メカルスは此処で床上で戦闘している面々に向かって狙撃銃から強力なレーザービームを射出して、床一面を大爆発させる程の攻撃を仕掛けてきた。

「うわっ!」「きゃあっ」

 多くのスター・コマンドー隊士が爆発に巻き込まれ、黒こげに苛まれる中、修司と順一も爆発に巻き込まれつつも懸命に二体のメカルスボディに攻撃を続ける。

 更に現場には、メカルスヘッドが浮遊して皆の頭上から液体窒素を大量に投下して凍て付かせようとするが、氷に強いニナミが率先して皆を誘導していく。

 そんな液体窒素から退避する皆々に、スライムメカルスはまたも瓦礫を放射状に飛散させて床上の面々の頭上に降り注いだ。

 全員、どうにか放射状に飛んでくる瓦礫を回避すると、今度は更に頭上からスナイパーメカルスが狙撃して来る。

 頭上と地上の両方から攻撃を仕掛けてくる二体のメカルスに対し、一行は次第に体力が衰えてきた。

「こ、このままじゃ全滅だわ!」

「二体同時に攻撃されちゃ、堪ったもんじゃないわ!」

 ルイズとキュルケが動揺する中、順一は最後の手段を講じた。

「こうなったら……みんな! 大聖光をメカルスに仕掛けるぞ!」

 順一のこの言葉を受けて、スター・コマンドーは一致団結して陣を形成した。

「ククク、聖龍隊最強の布陣で攻撃するのか? だが、俺がそれを黙ってやらせるとでも思うか?」

 大聖光を仕掛けようとする順一達スター・コマンドーの行動を妨害しようと、スナイパーメカルスはスター・コマンドーに向けて強力な砲撃を撃ち込もうと狙撃銃を構えた。

 しかし、それを修司が跳躍して炎を纏った刃で制止する。

「ジュン! 今の内に大聖光を!」

 修司の言葉を受けて、スター・コマンドーの隊士達は鳥の形に布陣を形成して自身の体から蒼い光を放ち出した。

 そして一人一人から発せられる蒼い光が全員を包み込んだ時、スター・コマンドーは蒼い鳥となって宙に舞い上がった。

大聖光(だいせいこう) 魔鳥!」

 スター・コマンドー全体で築き上げた魔鳥の姿を象った大聖光。そのままスター・コマンドーは宙を舞って、まずは床上にのさばるスライムメカルスに急降下して突進した。

 大聖光(だいせいこう) 魔鳥で突撃するスター・コマンドー。その蒼い光を纏った突撃に、スライムメカルスは大爆発し、粉砕された。

 残るは狙撃手の姿をしたスナイパーメカルスのみとなった戦況に、スター・コマンドーは大聖光を纏ったままスナイパーメカルスにも突撃した。

 が、スナイパーメカルスは的確にスター・コマンドーの動きを見切り、彼らを狙撃して大聖光を弾き返した。

「うわっ!!」

 至近距離からの狙撃に、順一達は思わず弾き返されてしまう。

「うはははッ、そう思い通りに事が運べるとは思わない事だな!」

 そんなスター・コマンドーを嘲笑するスナイパーメカルス。しかし順一達は諦めなかった。

「まだだ……まだ僕らの光は失われちゃいない!」

 すると順一達は自らが発した大聖光を全て放出して、その光を全て修司めがけて飛ばした。

 修司に飛ばされた大聖光は、修司が持つ聖龍剣に纏わり付き、聖龍剣に蒼い光が纏った。

「総長! その光で、刃で……メカルスを!」

 順一は修司に大聖光を纏った聖龍剣でメカルスを断罪するよう願い出る。

 そんな順一達の願いを聞き入れて、スナイパーメカルスの懐下にいた修司は大跳躍して頭部を狙い澄ました。

 スナイパーメカルスは修司を狙撃しようとするが、狙撃銃の長い銃身が邪魔して至近距離の修司を狙撃するのが出来なかった。

 そしてそのままスナイパーメカルスの頭部に、修司は順一達の想いを乗せた蒼い光を纏う聖龍剣を突き刺して一気に振り下ろした。

「喰らえッッ!」

 スナイパーメカルスに絶大な攻撃を浴びせた修司。するとスナイパーメカルスの体は爆発し始め、メカルスそのものを倒す事に成功した。

 

 如何に一人一人が弱くとも、皆で力を合わせれば如何なる強敵をも倒せるのだ。

 

 

 

[終わり]

 

「……クク、ククク」

「何がおかしい?」

 完全に二つのボディを破壊されて追い詰められたメカルスの不敵な微笑に修司が険しい顔で問い質すと、メカルスは嘲笑を上げながら答えた。

「この兵器は既に地球に向けられている……制御装置も安全装置も全部ぶっ壊しておいた。もう誰にも止める事はできん……」

「くそ、なんてことだ!」

「フアーーッハッハ!! さらばだーーッ、聖龍隊!」

 メカルスは最後にファイナル・ウェポンが止まらない事を告げると、大爆発して消滅してしまった。

 

 修司と順一達は、どうにかして起動したファイナル・ウェポンを制止させようと、そのまま前進して中央動力炉へと駆け付ける。

 そして巨大な中央動力炉に辿り着いた一行は、ただただ立ち尽くすしか出来なかった、その時。

 一同の目の前に満身創痍のジェネシスが現れた。

「ジェネシス!」「ジェネシス将軍!」

 修司と順一が名を叫ぶと、ジェネシスは皆に謝罪した。

「……聖龍隊よ……私は……愚かだった。メカルスの作戦に、まんまと乗せられてしまった……」

「もういい! それよりも、この兵器をどうにか止めねえと……!」

 修司はどうにかして稼働した兵器を止める術を探している事をジェネシスに伝えると、ジェネシスは真剣な顔付きで修司に言った。

「……私の思想概念エネルギーなら、この兵器を止められる」

「そんなことをしたら、あんたが!」

「ジェネシス将軍、最後まで諦めないでください!」

 自身を構成させている思想概念を使えば兵器を止められると断言するジェネシスに、修司と順一は愕然とするがジェネシスは全ての過ちを贖罪する気持ちで言い切った。

「……大勢の部下を死なせて、生き残る訳にも行くまい。これぞ軍人としての生き方なのだ。さらばだ、修司、スター・コマンドー……さらばだ、聖龍隊! 愚かな我々を許してくれ……」

「ジェネシスーーッ!!」「将軍ーーッ!!」

 そしてジェネシスは、修司と順一達が見届ける中、自ら中央動力炉に突っ込んで、その身を捧げた。

 ジェネシスが動力炉に突っ込んだ直後、ファイナル・ウェポンは崩落を始め、聖龍隊一行は現場から離脱するしかできなかった。

 そしてファイナルウェポンは各所から爆発し、崩壊していく中、一同は乗り込む際に使用した宇宙船へと搭乗して脱出する。

 

 爆発するファイナルウェポンから脱出し、宇宙船で帰還する順一達。

 そんな順一は、今回のJフォース大戦を思い返して人知れず思慮にふけた。

 軍人の誇りを懸け、最後まで己の信念を貫き通して自分達に戦いを挑んだカール上官。自分達を欺いていたスパイだったトウキ。そして自分達の師である小田原修司のコピーでもあるメカルス。

 そんな彼らの思想や暴挙を思い返して、順一は考え込んだ。

 すると、その時。順一達が搭乗している宇宙船のモニターが映像通信を傍受した。

「こちら聖龍隊本部」「副長! HEAD!」

 映像に映し出されたのは、聖龍隊副長であるバーンズを筆頭としたジュピターキッド、ウォーターフェアリー、ミラーガール、セーラー戦士、ナースエンジェル、木之元桜、コレクターズ、魔法騎士、最終兵器ちせの聖龍HEADだった。

「無事だったか、ジュン。心配かけさせやがって……」

「……申し訳ありません」

「それは、まあいい。……それよりもジュン、お前達に伝えなきゃならない事があってな……」

「……?」

 突如、顔色を変えて順一達に言伝するバーンズに、順一が注目してるとバーンズは語り出した。

「……その……トウキの事なんだが……」

「……トウキが、メカルスが送り出したスパイだったという事ですか」

「! お前、それを何故……!」

 バーンズ達HEADが一驚する中、順一は答えた。

「ファイナルウェポン内で、トウキと接触。その直後、戦闘に突入して……彼の口から聞きました」

「そ、そうか……それで、トウキは?」

「……処分しました……」

 顔に影を落として答える順一の様子を見て、バーンズは返事した。

「そうか……いや、ご苦労だった。取り敢えず疲れただろう。帰ってゆっくり休め」

 バーンズが労いの言葉を順一達スター・コマンドーにかけた直後、順一は思い詰めた表情でバーンズに言った。

「あの、副長……」

「? なんだ?」

「……もしも……もしも……僕たちスター・コマンドーが全員、異常者(ヒール)になったら、どうしますか?」

 この順一からの質問に、同じ宇宙船内にいるスター・コマンドーの面々は暗い顔を浮かべ、その質問を問われたバーンズ達HEADは言葉を失くした。

「! なにくだらない事いってんだ。切るぞ、俺たちは忙しいんだ」

「あ、待ってください! これは真剣な質問なんです!」

「………………」

 順一の質問に黙り込むバーンズ達HEAD。そして順一は真剣な顔でHEADに願い出る。

「HEAD、もしも僕たちが異常者(ヒール)になってしまったら……お手数ですが、その時は伝説の英雄であるあなた達に、処理をお願いしたいです……」

 この順一の切願に、バーンズは一時黙り込むと、不愛想な面で言い返した。

「……くだらねえ事いってないで、早く帰ってこい」

 そうして順一たち宇宙側と聖龍HEADら地球側の通信は切れた。

「約束ですよ、HEAD……」

 順一は、万が一に自分達が異常者(ヒール)になってしまった時の保険として、信頼するHEADに自分達の処理を嘆願した。

 

 一方その頃、修司は。

 順一達が操縦する宇宙船の後部座席で一人、悩み抜いていた。

 メカルスが話していた、養成時代の自分の所業。何らかの改造処置を受けて、どんな存在よりも残虐な性格となり、多くの人命を無意味に殺傷していたかつての自分。

 そんな自分に葛藤しながら、修司は苦悩した。

「これが、俺……本当の、俺だというのか? 結局、誰も助けられなかった……!」

 修司は今回のJフォース大戦で、多くの戦友だったJフォース軍人を死に追いやった現実に苦しんだ。

「カール……! エリーゼ……! ……みんな……」

 戦友だったカール、そのカールの婚約者でかつて自分に恋心を抱いてくれてたエリーゼ、そしてJフォースの軍人たち。彼らを助けられなかった重責が修司に圧し掛かる。

 そして悩み抜く修司は、一つの仮説を立てた。

「エリーゼ、みんな……結局のところ、本当の異常者(ヒール)とは……二次元人を生み出している、三次元人(おれたち)だというのか……」

 修司は二次元人を生み出している、自分たち三次元人こそ異常者(ヒール)なのではと、異常者(ヒール)の定義に疑いを持った。

 

 

 

[その後の聖龍隊]

 

 全ての戦いが終わり、Jフォースへの疑いも晴れた。

 だが、戦闘で消えた命は帰って来ない。

 カールも、エリーゼも、多くの同胞だったJフォース軍人はもういない。

 そんな傷心の修司だったが、聖龍HEADの支援もあり、修司は苦渋ながらも聖龍隊の総長を務め続けた。

 三次元政府からは、今回はどうにか二次元界内での内乱で終わったJフォース大戦への責任を、聖龍隊に押し付ける事は無かった。

 しかし多くの罪なき命を消失してしまった責任と後悔が、修司自身に圧し掛かる。

 だがもし、修司が聖龍隊の総長を辞めてしまえば、代わりの三次元人が異常者(ヒール)認定を下す役職に就いてしまうかもしれない。その人物が本当に二次元人に対して平等な判定を下せるかという考慮から、HEADは修司に聖龍隊総長を続行させた。

「修司、すまない……」

 友を、かつて自分を愛してくれた異性を殺めた修司に役職を続けろと助言したバーンズ達HEADは実に心苦しかった。

 その後、地上に残った今回の大戦に参戦していなかったJフォースの軍人に、聖龍隊は和解を求めて一部の軍人達を組織に引き入れる事となった。

 更にスター・コマンドーは直属の部下だったトウキの裏切りを受けて、それから新しい部下を受け入れる事は無かったという。これによりスター・コマンドーの後任部隊であるニュー・スターズが結成される事となった。

 それから聖龍隊はJフォースが損失してしまった穴を埋める為に、三次元政府から直々に軍隊としての組織構成を認可されて、軍としての責任を負う事が決定。

 聖龍隊は軍事警察として組織を再構成し、Jフォースの犠牲者たちを弔いながらも日々、異常者(ヒール)摘発に力を入れたという。

 

 このJフォース大戦が招いた悲劇は、その後も引きずられる様に残った。

 反乱を起こしたJフォースの軍人の殆どが獣人タイプの二次元人であったために、その後しばらくは獣人タイプの二次元人に偏見が残ってしまった。

 しかし2010年代、聖龍隊総長小田原修司は信頼していたJフォースの軍人達にならって、獣人タイプの二次元人を聖龍隊に加盟させたという。

 だが、悲劇はその前に聖龍隊総長の小田原修司の身にも蓄積された形で症状が現れる展開へと誘われてしまう事を、Jフォース大戦を終えたばかりの修司も同僚のHEADや弟子のスター・コマンドーも知らなかった。

 

 

 

 ……こうしてJフォース大戦での全ての戦いは終わった。

 しかし、順一達の心に例えようのない不安が過る。

異常者(ヒール)」とは、いったい何なのか?

 ……もしかしたら、自分達も異常者(ヒール)となってしまうのか?

 

 そして修司自身も悩みにぶつかっていた。

 蘇りつつある過去の記憶が修司の心に迷いを生じさせる。

 ……異常者(ヒール)を許せない聖龍隊としての自分……。

「アイツら」を倒すサダメを負った、本当の自分……。

 全く異なる二つの運命……。

 

 不吉な予感は、現実となり

 修司の決断は悲劇へと繋がり

 ついに1人の三次元人と二次元人達を悲劇の、運命の戦いへと導く。

 

 そう遠くない未来で……

 

 

 

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