神は細部に宿れり   作:でかい骨髄

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本題には触れないって言ったな。
すまんありゃあウソだった

書き溜めとか無いので遅れても許して下さい
エタリはしない!!(アイスワーム戦)


謎の白い妖精の正体とは?

 

さて、見事な調度品の数々や美しく彫り込まれた彫刻、

象嵌についてはある程度語れたし満足しよう。

まだベビーベットからも抜け出せないんだし多少はね?

 

ならば目下一番の探究心くすぐりし問題は…

ズバリあの妖精だ。

 

だって怖いんだもん!初めて見えたとき

(?!脳機能に異常?!)とか考えて

生後2週間辺りのときめちゃめちゃ不安になったわ!!

 

しかしどうやら父母にもっぽい見えているので

脳機能の問題ではないらしい

 

何やかかんやで生まれて半年ぐらい経った現在、

赤子特有の柔らか脳みそと

論理的思考(笑)をフルに使ったお陰で

 

なんとなく言葉も理解できるようになって来た

発音が厳しいねコレ ガキじゃ無理でしょこんなもん!!

 

どうやらやっぱりあれ妖精らしい

大人になると見えにくくなっていくっぽい

あと突然消える マジで 急に

彫刻とかに吸い込まれていったりふっと光が止んで

また別の方から同じのがでてくる

違いも何となくだけど判断できるよ

なんというかこう 直感に妖精さんが語りかけて教えてくれるのだ

 

時折どっかに吸い込まれること以外は実体無し蛍みたいなもんだな

青 緑 黄色ってなんか綺麗だし

 

何度かベビーベッドの彫り物にも降りてきたから

(心で)話しかけてみたりしたら時々返答があった

 

そこは本題として少しあとに考えるとして、

一応物理的にも少し質量?というか何かがある

手のひらに乗ってもらったときは触れてることは

分かるんだけど軽すぎてなんというかこう、

ティッシュを手のひらに乗せているような感じだな、うん。

妖精さん曰く お情けで触らしているだけで普段は

普通にすり抜けるらしい

 

凄えな

この世界に来て2番目ぐらいに感動してる

 

まだ生まれて半年ぐらいだけど

あ、一番は調度品ね。凄すぎでしょあれ 

前世でもあそこまで見事なのが一堂に会した所は

流石に映像でもそうは見なかったよ。

 

柱時計とかもあるし本格的に金持ちっぽいね俺の家

 

で、だ

本題はここから

どうやらこの彫刻どもには全部、

 

芸術的な飾り付け以外の()()があるらしい

 

美しさや資産といった価値的な話でも実用的とか儀礼用とかそういう意味でもなく。

 

これに気づいたのは少し前 始まりは寝台のささくれに指を突かれたときの事だ。

 

密度の高い良木が乳児の柔肌(俺の指ね)を貫いたのである

痛かった 赤ちゃんって神経がかなり敏感でさ、

痛えのなんのって傷口を確認したあとに

また誰か呼ぼうかと思って状態を見れば

傷が『無い』んだ。

(痛みに過敏だからただの勘違いかな?)なんて思って

違和感を覚えながらもその日は気にせずに寝ることにしたのよ。

 

でも何か特別なものが此処には有ると確信に至ったのはしかし、暇つぶしにと渡されたベビーラトルを天井にぶん投げて遊んでいた時のことだった。

 

キャッチをミスって頭に落ちてきたとき、痛い!と思って目を瞑り咄嗟に身構えたがしかし、いつまで経っても痛みがやって来ない。

ゆるりと目を開ければ明らかに頭蓋骨直線コースだったラトルが、なぜか首の横に何の音沙汰もなく転がっているではないか!! 驚いて重い首や頭部、あと特に意味はないがちっちゃな両手足を動かし辺りを見渡しても原因を探れども不審なものは何も…

いや、有る。 しかも2つだ 

 

一つは本命 妖精さん達

もう一つは この彫刻

 

普段は返事が返ってこない彼らだが

どうしてもこの謎の真実は明かしたいので

一応聞いてみることにした。

 

するとどうだろう またあの心に浮かび上がる感覚が

あったのだ!彼ら彼女らとの交信である!!

 

妖精達はかく語りて曰く

 

この家財に夥しく彫り削り込まれた紋様は

白や緑に輝く妖精達の力と合わさって、モチーフに沿った効力を表すお守りとして機能するらしい

 

邪気を払うなんてある種儀式の様なもんじゃ無く、物理的な作用を伴って。

例えば先のささくれ 柔い肌に刺されば痛み酷く出血や化膿は免れぬと考えた(便宜上)彼らは開いたはずであろう傷を塞ぎ、流れ出るはずであった血を止めて、

痛みを 損傷を癒したのだ。

 

または今のラトル。赤子の軟骨が未だ固まりきらぬ頭蓋に堅木で出来たラトルが当たればタダでは済まない所を、 最適解を編み出した彼らは 緩急の効いた風で一撫し、軌道を逸らしてゆっくりと受け止めてくれたのだとか。

 

コレは凄まじいことである。

親の負担は減るし子供の安全は人よりよほど正確に守ってくれる彼らが居る。

 

 

この、

この力を余すこと無く利用するために施されたものなのだとすればこの彫刻量にも

納得だ いくら金持ちと言っても 赤子や家具にここまでの金を掛けるとは道楽なんてものじゃ済まない筈だないとは思っていた。

 

興奮して激しく勘案していると珍しく、いや初めて彼らからの語りかけがあったのだ

 

またも妖精は語りて曰く

 

これら全ての彫刻には現実的で実用的な

価値が有るのだと

 

『唐草』が意味する子孫繁栄は

『女神』が意味するであろう祝福は

 

願いや祈りなどの子に託する想いではなくて

真に効力を発揮し子孫に飛び落ちる飛翔物を

壊れぬよう柔く受け止め

跡残るはずの傷を痛む間も無く完璧に癒すのだ

 

俺の目は輝いていた

この世に溢れる、まだ見ぬ神秘に

妖精さんはまだなんか言ってる

魔法? 別世界の特殊生物?

興味はあるがそれらすらも今俺の興味を引くには至らないのだ。

 

人の身になど余る想いが、心という器を飛び出して小さいな肺で息も絶え絶えに叫ぶ!叫び尋ねる!!

 

「あうぅぅぅぅぅーーー!!!

 ぃあぁぁぁぁぁぁあ?!!」

 

「(何故!!なぜ斯様な奇跡が起こる!!いや良い!

  他は!!他の性能は!?

  耐久力は?!重量は!!張力は?!密度は?!

  それからそれから!!…)」

 

いけねぇ、熱くなりすぎたな。妖精さんは返事を返してくれない。 大きな声を出してごめんなさい…

 

しかし皆皆様方には俺の気持ちも汲んでほしい!!

工作を趣味とするものとってこれほど素晴らしく心を狂わせてくれることはないのだ!!!

 

そして静かに彼らの返答を待つ。きっと俺の叫ぶのが聞こえたのであろう 家中から集まったの妖精の返答を

 

永遠にも感じる瞬間の後

俺は初めて、しかし確かに彼らの『声』を聞いた

 

始まりはクスクスと笑う声が、部屋のいずこからか響いたのだ

彼ら彼女は多くは語らずに、しかし確かに 辺りに響く

妖しげなるだが清らかなる声を張り上げ俺に語った

 

【わたしたちは、ひとや天の生む、細やかなるを愛す】

【わたしたちはのぞむ、ひとの手に依ってなりたつ

 美しきを】

【汝らはわたしたちに、最も多く無償の美しき細やかを

 遺してくれる。】

【なればこそ、それは御礼である!】

【わたしたちの支払う対価である!】

【わたしたちの見初めしモノには、常ならぬ力宿る!】

 

そしてふっと声から力が抜けて、猫と語らう幼子のような可愛らしい声で、

 

【そのもようにも、きざまれたものにも

 ながもちするように、力をかすんだ!

 こわれちゃったら、かなしいからね!】

 

或いはまた別の声が

 

 【みずにぬれてもくさらないようにもしたりするよ!】

 【火にあたってももえないようにだって出来るよ!】

つまりこれら彫刻は妖精の好物であるから、

耐火耐食堅牢様々な力を彼らは与えるのだと言う。

 

「あうぁぁうーー!!」

(もっとだ!もっと他には?!)

 

しかし彼らはこの問いにこう返したのを最後に、

何処かへ姿を散らしてしまった

 

【あせっちゃだめだよぉ!ふふふ!

 ぜんぶ教えちゃったらつまらないからさぁ!

 ゆっくり遊ぼう!】

 

【またね!才ある子!今代の神の愛子がひとり!

 そのさきゆきにさち多からんことを!】

 

そうして妖精の内いくつかは何処かへと飛び去り、

俺は極度の興奮と疲労により微睡みとともに深い思考の中へと落ちた。

 

あと俺は急いで駆けつけた使用人の人達に

慌ててオシメを確認されたり木匙でミルクを飲まされたりした

あ、あの泣いた訳じゃ無くってぇ…

いやあのその、ほんと すんません…

 

十数分後、一通り異常がないことを確認して

不思議そうに退出する使用人さん達を見送り

また深く思考する。 赤子の身に出来ることはそれぐらいしか無いから

思い描くことなど枚挙に暇がない

金属の種類は?木材の硬さや強度は?妖精の木目や色の好みは?産地のこだわりは?香りは?携わる人物は?魔法生物の素材とやらはどう影響をもたらす?前世世界においての想像上「だった」生き物 ドラゴンなどモチーフの意味は?亜人などや超常現象や化性は存在するのか?「神」は居られるのか?

人類の歩んだ歴史は? 科学や魔術の、いやもはやそれさえ区別する必要はない、文明の進歩は?

宗教は? 思考が止まらない!!駄目だ駄目だまた考えがそれる!!俺の悪い癖だぁ…!落ち着けぇ、落ち着けぇ…!

 

今はもっと手短に、俺の()()に近いところから考えよう

 

妖精らはかく語りき

 

水に当てても腐らぬと、火に当てても燃えぬと

どの材料を指すのかは分からなかったが

元々水に当てれば腐るということは

木や生体の 例えば革だろう

 

ならばこれが金属ならば?

木彫りではなく彫金の鉄であれば?

ならば彫金が施された馬車は?

鐙(馬に騎乗する際用いる金具)は?

鎧は?

剣は?

斧は?

洗濯板は?

食器は?

日用雑貨は?

家具は?

建築は?

()()()は?

 

少し間を置いて、俺の脳は覚醒する。

 

 

 

素材や組み合わせによらぬ新たな効果などと言う素晴らしい所業に、前世弱冠、今世齢半年の赤子である俺の全ては圧倒されていた。

 

前世では思いつかぬような全く新しいことが始まる予感が、

いや!確信が胸にときめくのだ!!

 

もう一度、今度は深く眠りにつく。

 

朧気に心残りを夢想する

あれは父さんと母さんか、

元気にしてっかなぁ?

 

我ながら間抜けな死に方をしたよ

…藻に足を滑らせるなんてさ。

孫の顔でも拝ませてやりたかったなぁ、いつか

 

置いてきた趣味の道具ら、こっちに持ってこれないのは残念だなぁ…

 

特に何年もかけて集め続けてたアレ

此処じゃ手に入んないだろうなぁ!!

 

悔しい悔しい悔しい悔しい!!

思い出せば悔しいことばかりだよ!!

 

 

父さんも母さんも泣いてんだろうな。

あんなに世話になったのに、下らんことで死んで

悲しませちゃったろうな 恩の欠片も返せずに

ごめん ごめんなさい

 

やはり、夢か…

俺はベッドから起きる

赤子らしくない、静かで抑制的な涙を流して。

 

窓のほんの隙間から風が吹き抜け、

薄いカーテンの幕を揺らす

強く少し肌寒いほどの涼やかな風が、だが窓ガラス

を揺らさないのは

外からの隙間風を妖精が運んだのだろう。

 

泣いて火照った俺の体を冷やしあげようとしている

気遣いが、冷涼な夜風を通して伝わる

 

泣いて少し楽になったので思考を切り替え、

趣味の存続についてを考える。

 

俺の前世の趣味、ズバリそれは

「刃物研ぎ」だ

 

これが始まったきっかけは小学二年生

大阪の中でも和歌山に近い方面に住んでいた俺は

父と母に連れられて向かった小旅行、

心斎橋という大阪の都会の方に

(たしか)大阪一大きな大手100均ショップが

あったのだ

上下2階のフロアがあり、1階の半分ほどが食品

もう半分と全てが二階が雑貨であったと思う

当時から父の影響で刃物や銃が好きだった俺は、

運命と呼ぶには余りに小さな出会いを果たす。

 

ちゃちな黄色いプラスチックの柄と鞘、

子供がケガをせぬよう先を落とされ、

幼児のやわい握力でも握れるように作られた

軽くて薄いステンレス鋼 小さな両刃で丸い刃の

三徳包丁子供用と出会ったのだった

 

一目見たとき、目に入ったのはそのきらめく

包丁の腹(部位の名称)に魅入られたのだ

今思い返せば何の変哲も無い

工場のプレスの後にバフで磨かれたのであろう

ただの鉄板の輝きは、当時の俺にとっては

何か重要な意味を孕んだ、鏡より魔性な輝きを放つ

宝物の一つにすらに見えたのだった。

 

それを一目見るなり、俺は父と母に駄々を捏ねて

までねだる覚悟を持った 普段は菓子などは

欲しがらない息子が強い興味を示したのに

両親も思う所あったのか、かごに入れてくれたのだ

 

はしゃぐ俺は父に尋ねた

「切れ味はどうなの?高いの?」と、

 

父は僅かに逡巡した後 幼い俺に正直に

優しい声色で言った

「100均のあまり良くないやつだから安いよ、

 あんまり切れ味は良くないかもね」と

 

少年の俺はやはり落胆したし

父も少しバツの悪そうな顔をしていた

だが幼い俺には諦めがつかなかった

切れ味を良くする方法は無いのか、と父に尋ねる

 

「あるよ」

 

本当に?

 

「どうやって」

 

「砥石っていうのを使って包丁を研ぐんだよ」

 

そこからは早かった

同じく100均の 2種類の砥石が組み合わさったものを

父母に強請り、帰宅後すぐに、辛うじて読める

後ろの説明書きを隈無く読み干して

 

水に浸した荒砥石で、何度も何度も研ぎまくったっけな

自分の包丁の切れ味に納得すると

今度は家のを片っ端から研いだ。

 

父も母も包丁を研がないので欠けだらけの包丁には、

安物の荒い砥石が随分と馴染み、

刃先をゾリゾリと研ぎ上げて

廃品同然の切れ味から、まともに使える程度まで

研ぎ直すことに成功したのだ

 

しかし親に許可を取っていたわけではなく

勝手に研いだものだから、叱咤を覚悟して

報告した。

 

だが父と母は俺を褒めてくれたのだ

 何のことはない。ただ幼い息子の研いだ包丁が

思いの外よく切れたから。

 

それだけの理由だろう

しかし俺には違った。いつも褒めてくれる家族だが

それは幼児だから褒める、幼児にしては出来たから

褒める。そうしているのが何となく心には伝わっていた。

 

しかしコレはどうだ 俺は、俺の研いだ包丁は今、

真の意味で褒められ 認められている。

 

だから嬉しかった

だから喜んだ

 

懐かしい話だ

それこそ、前世では思い出せなかったほどに。

 

 

そしてこの世界での我が趣味の存続に際しての

問題はだ、

この世界に砥石は、そもそもヤスリなどあるのか?

いや、そりゃあ有るだろう、と思われるかもしれない

刃物の発展は即ち人類の発展でもあるからだ。

その過程で細い目のヤスリや砥石は必ず発展するからだ。

 

しかし俺はずっとこの世界に違和感を覚えている

例えばこの木の仕上げ

 

荒い 粗いのだ

そもそも削りが粗い。木質は見事だ

繊維の詰まった茶色い木しかも多分大木だろうを

贅沢に使ってあるのだろう

しかし削りがだめだ

技巧では無い。この彫りなどは実用に向かぬほど

繊細で見事である。

 

だがなぁ!何だこのささくれは!!

ヤスリはたしかに施されているのに尚棘がある

これはアレだな

刃物が悪い!

 

マトモに研がれてないのを使ったな、俺には分かる

切れ味が悪い、少し欠けたような刃物を使うと

木材はありありとその道具の不足を映す

その跡が線を引いたように残るのだ。

 

しかしコレの跡は何かおかしい

普通切れ味の悪い刃物を使えば、途中でつっかえたり

刃が食い込み止まったりなどして

明らかな模様のずれを齎す

しかしこの彫りは、切れ味の悪い刃物に

特有の線が、まっすぐにそのまま長く

引かれているのだ。

 

なぜ切れない刃物が長く線を引ける?

職人の怪力でなんとかなったのだろうか?

 

謎は未だある 例えばこの宝石

刻みは見事だ。インタリオ(影彫)で米粒ほどの

丸い赤や緑の石に深く竜が刻んである

 

しかし磨くための細かな鑢目が駄目だ

見れば細毛程の傷が幾つか白い跡を引いている

此処まで繊細に竜を宝石に刻みつけるほどの技量を持つ者ならもっとピカピカに磨けるはずだ

単なるミス?こんな細やかな気遣いが出来る

宝石彫刻師がか?

 

そして宝石の彫りもそうだ

 

どうやって刻んだ?鉄じゃ厳しいだろうこの石は

乳歯で傷がつく程度に力を込めて

しゃぶってみたが ほんの小キズが一つ

(ちなみにこの乳歯、生まれたときには生え揃っていたので乳首を噛まぬように乳を吸うのに苦労した)

つまりモース硬度は7以上と推察する

スピネル ルビー ルビライト 

この赤みの深さはやはりルビーだろうか

 

最古ではメソポタミアのシリンダー、

中世西洋文明では14世紀頃から宝石彫刻師の

文化技術が発達したと耳にしたが、

 

しかしその殆どどれもが精々モース硬度7を下回る程度の

どれだけ硬くても加工が辛うじて出来るぐらいの石を多く

用いているのだ。

 

コレはつまり当時の道具のおおよその強度を示している

削らないのではなく削れない

彼らの道具では。

 

そう 削れないはずなのだ

 

魔法だろうか、特異な生物の素材の生物だろうか、

しかしやはり気を取られるのは妖精の存在

 

彼らが、それこそ何らかの方法で

例えば彼らの力を借りて宝石の強度を一時的に

下げるなどの方法を使っているんじゃないのか?

 

疑問は尽きない

赤子の脳では纏まらぬほど

 

しかしこの体、赤ちゃんだからすぐ眠くなって

敵わんな。 まだおねんねやーやーなの!

 

ともかく先んじては、成長せねばな、

 

今、今生後半年だし

 

そういや後々のセンスとか所謂

先天的な感覚ってこのぐらいの時期に養われるって

聞いたっけな…

 

こうしちゃ居れん!!何か、何か運動を!

 

手先の感覚を養う為にシルクのオシメを握りしめてみる

あっひんやりサラサラ、手触り柔らかにして

この軽やかさあぁ…また意識が遠のいてだから駄目だって

 

木彫りを撫で繰り回してみる

 

握ったりなぞったり宝石に爪をかけたり

 

あっまた治った この感覚癖になるな。

 

何度かささくれが指に刺さり、その度に妖精パワーが

傷を跡形もなく治してくれる

 

くすぐったいと言うかむず痒いと言うか

蚊に刺された所を掻きむしるときに生まれる

あの感覚に近いものがある

 

あとも残らないしでその後も何度か試していると

やめてねと怒られてしまった。ごめんちゃい

 

彫刻に目を凝らしてみる。何度見ても美しいや!

節もない良い材で作られてる。

丸みと視覚から伝わる暖かみが心地よい

 

柵を持ってつかまり立ちを敢行する

 

実は何度か試していたのだ、そう!

──直立二足歩行を──…!!

 

正直しんどいよ、初期はかなり足にも来たさ

じゃあなぜわざわざそんなに早く立つのかって?

もう少しハイハイでもして、身体の成熟を待てば

いいだろうって? 

駄目なのだ 遅いのだ 前の身であれば、

この様な堪えの効かない様は晒さなかった

しかし しかし今俺の眼前に広がるこの光景は、

耐え難い想いを俺の心に生み出すのだ!

 

もちろん運動のため、かごの外に出されたことは

幾度となくある しかし4足では駄目なのだ…!

2足でなければ 完璧な2足でなければ駄目なのだ!!

 

あの絨毯を完璧な両足で踏み付けて漸く、

俺はこの世に生まれ落ちる。

 

 

なれば拙速にして立ち上がることが必要、

俺は昇るぞ、まだまだ昇る

五指を動かし 2足で歩いて

乳児を脱し離乳食

母乳をしゃぶり尽くした上でそいつを糧にして…

天下の幼児へと成る…!!

 

野心である

野心がモルヒネのように疲労を麻痺させていたのだ

 

しかし俺は未だこれを両親に見せたことが無い。

気味悪がられるからではない

寧ろ生まれてたった半年に立てば早いと喜ばれるだろう

 

では何故か。

それは… 待ていッ!!この気配!! 不味いッ!!

 

ゆるりと尻餅をつきて寝転がる姿勢をとろうと

腰を曲げたが、しかし一足遅かった!!

 

「失礼します坊ちゃま。ミルクの御用意を…!!!」

使用人だっ…!! 6ヶ月にして今世最大のミスっ…!

「旦那様!!奥様!!ぉ、お坊ちゃまがお立ちに!!」

しくじった…伝えられる…親に 成長を…!!

数秒の間を開けて布の深靴がドタドタと館を

駆け回る音が向かってくる

 

や、やめろぉっ くるなぁ…

俺の

俺のそばに近寄るなぁァァーーーーっっ!!

 

「本当かレノアッッッ!!

 よく見つけたぁッ!】

「あらあらあらあらぁ もう立てるのねッッッ

 有望だわッッッ!!」

 

そう 今世の我が両親は親バカ出会った…

   重度の…

 

精々理解できたのはこれぐらいの簡単な文で、

あとはまた異世界語で俺のことを褒めそやし撫で回す

 

俺の体は内心と裏腹に

親の喜色に自らも喜んで

「えへえへ」とて笑う

 

俺の体にはこの前世から引き継いだ

意識とは別に、赤子としての無垢な意識、

魂と呼べるだろうものが備わっているのだ。

 

だからこの様に父と母との応対も

幼子として淀み無く出来る

普段暇な時には俺が体を操っているが

この子の感情が俺の心を上回ったときなどは

 

主導権が移動し この本来の子のもとへ

戻るのだ。

 

つまり俺の弟だな ヨシ!

かわいい子だよ 純粋な赤ん坊で

飛ぶ蝶の鱗粉や 微かな糸ぼこりが宙を舞うのも

つぶさに見て取れる、目がいいのだ

 

良いね、才能がある。

俺が隣について居るんだ

きっと手先も器用になるだろさ。

 

名前はアウレリオ君 

ネゴリディアンス・アウレリオ君だよ

 

ええやん

よく分からんが。

 

俺の名前は勝谷鏡介、

まあ使うこともないだろう。

 

父の手に抱き挙げられて、顔と顔をこすり合わせられる

ジョリジョリしてて痛いな。

 

(父さん、懐かしいよ…)

 

ここからも分かることは幾つか この家についてのこと

指の皮の厚みやタコ、仄かな鉄の香り、

そしてエプロンについた鉄の削りカス。

 

さては名のある職人か何かだろうか

ひょっとしてあの細工もこの細工も親父か…?

 

うっひよ〜〜〜〜!!

商家か何かと思えば、とんでもなく良さげな

家に生まれてきてしまいました〜!

 

マジか、いやマジで嬉しいな

つまり親父に師事すれば、この見事な彫金も

モノに出来るってコト…!?

 

テンション上がって…いや落ち着け

ここで身体の主導権が戻るのは不味い。

抱き上げた我が子の笑顔が急に真顔になれば、

両親にも不審がられちゃうし 

 

そもそもだ 確かに俺は彫金師にはなりたい

しかしそれは俺、この勝谷鏡介の夢であり、

 

彼 アウレリオ君の夢ではない

我が業未だ成らねども、それを稚児に被せる事の

何と悍ましきか

 

それに俺は芸術も好きだが、

最も好きなのはやはり刃物と砥石なのだ

 

質の良い刃物は生活を豊かにするし、

それを支えるには砥石の力が絶対的に必要だ

 

また話が纏まらないな、

つまり俺はどうしたいかって言うと

俺なんかの身には余る願いかもしれないが、

この子を幸せにしてやりたい。

だから、無理に彫金師の夢は勧めないことにするよ

 

もちろん軽い勧誘はするが、長い人生を行きなきゃいけないのはこの子だしね。 

 

俺は俺で、この子の歩む人生を特等席で

眺めさせてもらおうとするか。

 

 

俺の体でなくとも、視界を借りて見物ぐらいなら

許してくれるだろう。

 

気になることはたくさんあるんだ!!

 

文化だろ、風土に食物、植生、世界情勢 気候

地理 階級に 彫金 それこそ砥石の種類なんかをまとめてみたりしても良いかもな!俺の意識内限定だけど

 

貿易は? 今住んでる国の風土は?国防は?

隣人関係とかは? 学校とかあんのかな?

教育レベルは?識字率とかどうなんだろうか

食器は?マナーは?作法は?

 

凝り性でもの集め好きにはたまらない天国だねここは

見てすらいない、ただ考えてるだけでも楽しいよ

 

魔法とやらは使えんのかな

魔法生物ってどんなだ?

 

冶金技術はどの程度進歩してる?

 

前世に相当してる国の関係とか立場もあったりして

医学薬学はどうなってる?

それも魔法でなんとかできるとか?

 

疑問は絶えず、考えは尽きない。

しかしそれはまるで新たな物語を読み始めて

いるかの如き 喜びに満ち溢れた興奮を伴っていた。

 

取り敢えず未来への希望は出来たな、

この子を陰ながら支える。大人の俺が出来る限りの

力を割いて。

 

色々と決意が固まってきたし、

小便にも向かいたい。

 

あの〜付きましては父様?、そろそろアウレリオ君も

トイレに行きたがっているようですし、

降ろされては如何かと…?

あっ(聞こえて)ない…そりゃあそうですよね。

思念体?の俺の声が分かる訳ありませんよね。

 

アウレリオ君も本格的にヤバそうだな

泣くでも喚くでも無く静かに漏らすつもりだ…!

 

もしもそうなればもしかすると、万に一つだが、

お漏らし慣れしていない父上は、腕にかかった尿に

びっくりして、アウレリオ君を取り落としてしまうやも、

落とされるなどと溜まったものではない!

死んでしまうかもしれんからな…

 

ほんの直ぐさっきあまり干渉せぬようにと

考えたばかりだが、

 

(体の主導権を)貸せ

(うまいおもらしは)こうやるのだ

自分の意思でやるのは初めて(2回目)だが…

 

まず少し不機嫌そうな顔を意識して愚図る

すると少し慌てながら父が俺を下に降ろすので

新台に降ろされたのを背で感じ取った後

僅かに震えて放尿をキメる。

そして直ぐに泣くッ!、のでは無く

数秒沈黙、またに不快感が広かったのを確認して

「フエ、フェェェェェン!!」そして軽くジタバタ。

 

はい完璧 後は両親がオシメを交換してくれるので

ここでタイマーストップ。

記録は20秒程。完走した感想ですが

ケツが乾燥してなくてむず痒いので不快です

 

 

 

 

 




毎日投稿が目標
ここに書いてない用語とかあったら感想で言ってね
すぐに書き足します

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