神は細部に宿れり   作:でかい骨髄

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伝統芸能は地場産業を救う




趣味について

数多の夜を送り夏、晩夏の候

 

俺は3歳になっていた。

 

弟くんには本格的な自我が芽生え、俺は晴れて肉体からの

お払い箱 祓われたら成仏するって?喧しいわ。

 

弟くんの周りをふよふよと漂いながら今日も今日とて

妖精に稽古をつけてもらう。

なんの稽古かって?フフフ…なんと!そう!

 

念動力である(ドャァ)

 

いやマジですごくて、鍛えれば何と前世では㌧単位の

岩を持ち上げたりできるらしいので、妖精を師と崇め

鍛えてもらう次第となった。

 

ちなみに今は銀器のフォークを石壁に思いっきり突いて

少し歪ませられるぐらいの威力が出せる。

 

射程距離は廊下で試して約十メートル、

本数は2、調子が良ければ3本といった所。

道のりは長そうである…

 

さて、本題について。

俺の趣味は包丁研ぎだ。

 

友達にこの話をすることになるとまず、

「なんか怖い」

「何がおもろいの?」

「ずっと同じ事してて楽しい?」

これである

あのさぁ…楽しくなけりゃやるわけないじゃん!!

面白いよ包丁研ぎは!!奥深い趣味だよ!!

 

例えば包丁、鉄製の刃物には種類がある。

まず製法

 

鋳造品 溶かした鉄を型に流し込んで成形する

    品質は悪くほとんど流行らなかった

 

鍛造  世界累計に於いてベストセラー的存在

    赤めた鋼を叩いて伸ばして大凡を造り、

    削り上げて形を決定する。西東洋問わずの基本

    素材如何や造り手の熟練によって

    大きく左右される

   

プレス 近代の工業化の中で生まれた、数ミリの

    鋼板を機械で打ち出して形を作る

    ほとんどブレのない品質と兼ね備えた

    価格、あととんでもない生産性が魅力 

    殆ど個性がない工業生産品なので

    やや面白味に欠ける  

 

長くなったがこんな感じだ。よくゲームなんかで

カスタム要素があるように、包丁にも製法の他、

鋼やハンドルについて多くの組み合わせがある。

 

本格的に沼にハマるまでには幾つかの事件があった

100均工場でプレス生産された包丁から研ぎ始め、

家中の包丁を研いで満足していた俺だったが、小学5年

初めて鋼の刃物、昭和世代では聞き覚えがあるであろう

肥後守という折り畳みのナイフの本割込みと言う構造のを

こっそりと小遣いで買った俺は、それを研いで衝撃を受けた。

 

なんというかこう、柔らかいのだ。今までの

ステンレスの一枚板とは何か違う。本能でそう思った。

次に匂い、臭い。とにかく鉄臭いのだが、慣れると

どうにも不快にならなかった。

 

錆び。

死ぬほど錆びる。風呂場で研いで、湿った空気が流れる

脱衣所に水分を拭いて置いておいただけで赤錆が

地金(刃とは別の柔らかい鉄)を越えて刃にまわる。

 

どれもが新鮮な初体験だった。

研ぐうちに勝手がわかって

自分の中の何かが一つ成熟へ近づいた、

そんな気がしたのだった

 

そして次、試し斬り

段ボールに刃を宛てがってみると、包丁とは比べ物に

ならぬほどよく切れた。ヌルリと。

 

あれらの感動は忘れがたいものだった

ステンレスには無い欠点

錆びや匂い

欠点を補うかのごとく、味わったことの無い

ヌルリとした切れ味。

 

俺の、俺だけの宝物になった。

 

そこから肥後守は俺の相棒になった。

紙を切ったり草を刈ったり 

リンゴを剥いたり指を切ったり

 

布を裂く時も紐を断つ時も、新しい研ぎ方や

砥石を試してみるときも、いつもまず試したのはは

あいつだったなぁ

 

それで俺は、地金と鋼が織りなす硬くて柔い研ぎ心地に

病みつきになった

 

肥後守にもグレードがある。

俺のはクロム鋼、言っちゃなんだが安物で、鋼にしては

柔らかく、そのくせ嫌に錆びるので木なんかを削った

日には刃が潰れるし、雨が降れば湿気って薄く斑に

錆びるので研ぎ直す必要があった。

 

しかしこれは当時の俺、鋼を扱い始めた初心者の俺には

好都合なことだったのだ

 

柔いということは研ぎやすく、何度も研ぐということは

自然と研ぎが身につくので、鋼刃物の基本

 

錆びの手入れ

割り込み構造の研ぎ方

 

これを練習するのに最適な、後の本格的な刃物の研ぎに

対抗するためのワクチンのような役割を果たした。

 

刃物部分はこれぐらい

ぶっちゃけこれは異世界だろうがなんだろうが

そんなに心配はしていない。

努力次第で何とでもなるからだ。

…なるはずだ!!!(流れ出す閃光)

 

さてでは何が問題か。

努力だけではどうにもならぬ障害とは何であろうか。





当時の小学生では肥後守かミッキーナイフ(ボンナイフ)を持たぬものは遊ぶに不適格として排斥されたそうな

駄菓子屋で50円程度の値段で売られ、鉛筆削りや釣り具の備え、虫の解体なんでもござれ、小学生の手となり足となった、
鋼刃物のスタンダード 肥後守 
持ってて損はなど
きっと無いはず
是非に一本 試しあれ
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