もしもジークアクスがナンバーワン戦隊ゴジュウジャーみたいなノリだったら 作:岩ノ森
ノーワンワールド「ブライダン城」、テガジューンの間にそれはいた。
「これは・・・・・」
無機質な仮面をつけた、表情が伺い知れない青年。
―バスク・オムからの立案だ 使い捨てるのには惜しい人材だと―
それは先日、ガリュードにやられたと思われていたユニバース戦士、カイ・シデンであった。意識を奪われ、声一つ発しない。ただカカシのようにそこに立っていた。
-そやつは我がしもべとなった。我の声以外は届かぬ-
「何故こんなやり方を!いくら何でも・・・!!」
―我に逆らうつもりか―
「・・・っ!いえ・・・」
―慈愛のブーケ お前の愛は、我に向けるべきもの そのしもべを使い、示して見せよ―
頭を下げ、敬礼をするブーケ。しかしあまりにも非情な作戦を女王に提示され、厳しい顔を隠せなかった。
「申し訳ありません少佐・・・。キシリアの暗殺に失敗いたしました・・・・・」
ブライダン城の何もない部屋。ゲーツ・キャパはバスク・オムに作戦の失敗を報告していた。修正を受けたのか頬に痣がある。
「せっかくのチャンスを棒に振りおって。何のための強化人間だ」
「・・・・・申し訳ございません」
ゲーツ・キャパはただただ謝罪するしかない。一度暗殺に失敗すればキシリアはもう二度とこのコロニーには来ないだろう。それどころか当分、表舞台に姿を現さないだろう。暗殺できる可能性はほぼゼロと言っていい。
「サイコガンダムはいまだ健在か?」
「はい、損傷らしい損傷もなく。またハンブラビも程なく完成するとのことです」
キケロガの光線を浴びたが、外側の装甲が剥がれただけで機能に問題は無いとのことであった。
「せっかくテガジューンのプロンプトを採取し、サイコガンダムに組み込んだのだ。まだまだ役立ってもらわねば、ブライダンと組んだ意味がない」
「故にあの姿に変化したというわけだったのですか」
「完全解析は不可能だった。あの女王の性能を1割も再現出来てはいないがな」
(1割であれなのか・・・)
ゲーツはあのサイコガンダムの性能、並びに自分たちが組んでいるブライダンの技術に恐れおののいた。何しろ灰色の幽霊のキケロガも堕とせるほどなのだ。完全再現ならどれだけの力を発揮できるのか、想像もつかなかった。
「キシリアの暗殺は諦める。プランBに移る」
「プランB,と申しますと?」
「イズマ・コロニーを破壊する」
コロニー破壊、言うまでもなく条約違反の大罪である。バスク・オムはそれを容赦なく取ろうというのだ。
「ジオン内部にいる反抗勢力の仕業に見せつける。うまくいけばジオン内部で内乱が起きる。我々の仕業とバレても、キシリアの来訪がコロニー破壊の原因となったと知れれば、現状不安定なジオンの信頼も地に落ちる。いずれにせよ敵の勢力を弱めることはできる」
そのために何百万と言う人間を平然と虐殺しようというのだ。ゲーツは内心、上官であるバスク・オムの過激な行動に恐怖を感じていた。
「そのためにはサイコガンダムの力が必要だ。やれるな?ドゥー?」
ドゥーは椅子に座り、足をプラプラさせていた。彼女の頬にも痛々しい痣があった。
「問題ない。僕はそのために生まれた」
「なら計画を実行しろ。連邦の未来のために」
バスク・オムが敬礼すると同時に、ゲーツも敬礼を返した。一方、ドゥーはつまらなそうに自分の足に結ばれていたハンカチを眺めていた。
「もう少し楽しみたかったなぁ」
ドゥーはハンカチを、自分のポケットに無造作に突っ込んだ。
「例のモビルアーマーを捜索しているのですが、未だどこに消えたのか報告はありません」
コモリ少尉がシャリア・ブルに報告する。シャリア・ブルは眉一つ動かさずその報告を聞いていた。
「あれだけ大きなもの、隠す場所は限られてくると思うのですが・・・」
「まあ仕方がないでしょう。奴らの力を借りているなら、見つからないのも無理はありません」
「え?」
「いえ、捜索を続行してください」
コモリ少尉は怪訝な顔をしながら業務に戻った。
ジオンの総力を挙げて探しても見つからないのは無理もない。何しろノーワンワールドという異世界に隠れたのだから。異世界を移動できない現代人類の科学では見つけるのは無理な話である。
(ブライダン・・・そして連邦ですか・・・・・)
異界の帝国と敵国が手を組んだとなれば、戦後もまもない不安定なジオンの立場は危うい。
(新たなる段階へ、移行すべきなのかもしれません・・・)
シャリア・ブルがジオンの未来について何を考えているのか、伺い知ることができる者は誰もいなかった。
何故か成り行きで始まったファイヤキャンドルとの恩返しナンバーワンバトル。何でこんなことになったんだっけ?そもそも恩返しってバトルになるの?
「おおっと、ベンチが汚れてちゃいけねえ」
ファイヤキャンドルは取りだしたハンカチを綺麗にベンチの上に敷いた。今時こんなことする奴いないだろ。
ハンカチ・・・。
「ありがと・・・」
「へへっ」
ググゥ~
腹が鳴った。そういえば昨日の夜から碌に食べてない。恥ずい・・・。
「おう、待ってな」
ファイヤキャンドルはどこからともなく色とりどりのフルーツを取りだして、目にも止まらぬナイフ捌きで一口カットにした。
「ほらよ」
「うん・・・」
ぎこちない手つきで私はフルーツを口に運ぶ。美味しいけどこのフルーツどこから調達したんだ?
「美味しいよ・・・」
「しゃあっ!!」
ガッツポーズするファイヤキャンドル。こんなんで勝ってそんなに嬉しいか?
一通り食べ終わり満腹感を覚えた。あんなことがあったのにのんびりと、心地よい眠気を覚えてきた。
「眠いのか?よし、俺の美声で!」
なんかいきなり子守唄歌いだした・・・。妙に美声なのが腹立つ・・・。
昔、お母さんにも歌ってもらったっけ・・・。
ポカポカ陽気と満腹感でうとうとと心地よい眠気が・・・。
バシュッ!
「「あ・・・」」
眠気に気を取られてる間にバッグをひったくられた。あの中、アンキーから貰った札束が入ってんだけど。
「待ちやがれぇ!!」
ファイヤキャンドルは槍を構えて、ひったくりに向かっていった。
「ブライダン特攻隊長の名に懸けて逃がさねえ!!」
「ひいぃぃ!!!」
「恩返しの最中にひったくられたら恩返しの意味がなくなるだろうがぁ!!返しやがれぇ!!!」
ボカスカボカスカとすごい乱闘が始まった。
ここまでしてナンバーワンになりたいの、あいつ?
軍警が来て、ひったくり犯を連行していった。
「一昨日きやがれオラァ!!」
犯人もファイヤキャンドルも両方ボロボロだ。すごい乱闘だったし。
「ほらよ!バッグだ!!」
満面の笑みで私にバッグを差し出してくる。その爽やかな笑顔はとても敵とは思えない。
「あのさ、聞きたいんだけど」
「何だ?」
「そんなにナンバーワンになりたい?」
「ああ!なりてえ!!」
一瞬の間も置かず答える。今の私にはその真っ直ぐな答えが眩しかった。
「ナンバーワンになって何の意味があるの?別に無理やり一番にならなくったって・・・」
「何だぁ?俺に負けそうでビビってんのかぁ?」
けんか腰に聞いてくる。ムッとするけど、すぐ怒りは収まった。
「意味ないじゃん、ナンバーワンになったって」
「・・・あん?」
「ナンバーワンになるために戦うって誰かを傷つけることでしょ?その過程で人を殺したりするかもしれない」
戦争だってそうだ。一番になりたい国同士が憎み合って戦って殺し合う。それに何の意味があるんだ。
「戦ってて誰かに裏切られたりもする。お互い傷つけあうだけなら戦わないで我慢し合えばいい。ひっそりと生きてさ、無理やり一番になる必要ないんだよ」
私は怖い。裏切られたり、失ったりするのが。だったら一人でいた方がいい。誰も傷つけないし、誰も殺さない。
「・・・お前は、いったい何のためにこの世に生まれたんだ?」
「・・・それを知るために頑張ってきたんだけど、結局見つからなかった」
「見つからなかったんじゃねえ。見つけてねえだけだ」
知った口を。サングラスの下であいつを睨む。
「俺だってまだ見つけてねえ。誰だってそうだ。そのために戦うんじゃねえのか?」
「・・・屁理屈じゃん」
「屁理屈で上等だ。ナンバーワンそのものじゃねえ。戦うことそのものに意味があるんじゃねえのか」
「・・・・・・・」
「俺は戦いてえ。戦って、相手の魂の形を感じてえ。何度負けようが、俺の炎は決して消えねえ!」
屁理屈だ。そんなの結局相手を殺すための詭弁だ。
でも燃え上がる。心の中に、メラメラとしたものが。
「生きるってのは、戦い続けることなんじゃねえのか?」
「生きることは・・・戦い・・・・・」
私だけじゃない。
みんな生きて戦ってる。
友達も、先生も、親も。
ドゥーも・・・。
「喋りすぎちまったな。恩返しバトルの再開と行こうぜ!!」
「私の負け」
「あん!?」
「バッグ取り返してもらったんだもん。あんたの勝ちだよ」
「マジか!?」
「・・・ま、マジ」
「っしゃあ!!俺こそ恩返しナンバーワンだぁ!!!!!」
子供みたいにはしゃいで。これが大人の姿かよ。
でもすごく嬉しそう。
私も勝てばこんな風に・・・。
ビキッ
あれ、何だろう。
心の奥から何かが湧き上がってくる。
これは・・・悔しさ・・・・・?
「ありがとよ!お前のおかげで吹っ切れたぜ!!ウルフレディ!!」
ファイヤキャンドルは憑き物が落ちたかのように、爽やかな感じで去って行こうとする。
「待って!!」
「あん?」
私は負けた。バトルで、こいつに。
「・・・次は負けない!!」
「・・・ああ!また勝負しようぜ!!」
そして今度こそファイヤキャンドルは姿を消した。
「戦うことは・・・生きること・・・・・魂を感じる・・・・・」
一人残された私は、ファイヤキャンドルの言葉を反芻していた。
戦うことは、人を殺すことじゃないの・・・?
戦うことに、そんな意義を見出せるの・・・?
―もう一度戦え アマテ・ユズリハ―
「!!」
いつの間にか私は真っ暗な空間にいた。
目の前にいるのは・・・テガソード。
「戦う・・・それは悪いことでしょ?戦争ってのはたくさんの人を殺す」
―戦いとは殺し合いではない 自分の意思を、相手とぶつけ合う この世の生きとし生ける者たちの宿命だ―
「そんなの・・・勝手だよ・・・。私はそんな重いもの背負えない」
―お前自身の恐怖に閉じこもるだけで満足か?―
「・・・・・・・・・・」
―古来よりすべての生物は戦い続けてきた 戦うこととは向き合うこと 他人に 己自身に―
「自分自身に・・・」
―お前が立ち止まっている間に、他の者は進み続ける 自分の存在を世界に証明するために―
「私が・・・存在してる理由・・・・・」
―そうだ 自分が何のために世界に存在するか それを見つけるのは己しかいない―
「私は・・・私は・・・・・!」
―アマテ・ユズリハ! お前自身の世界を切り開くのだ!!―
「うっ!!」
まばゆい光に包まれたかと思うと、元のコロニーに戻ってきていた。
手には、捨てたはずの赤い指輪があった。
「・・・・・・・・」
私は負けた。ドゥーに、ファイヤキャンドルに、自分自身に。
「私は・・・勝ちたい!!」
あいつに、あいつらに!自分自身に!!勝ちたい!!!
「マチュー!!」
「ニャアン!シュウジ!」
遠くからニャアンとシュウジが走ってくる。何をしていたのか、体中が汚れていた。
バシィッ!
ニャアンが近づいてきたかと思うと、頬を勢いよく叩かれた。
「勝手にいなくならないでよ!!心配したんだよ!!!」
「・・・・・ごめん、ニャアン、シュウジ」
人に殴られたなんて、いつぶりだろうか。
「でも殴ることないじゃん。ハハッ」
殴られて痛い。でも不思議と嫌な感じはしなかった。心の中が澄み渡っていた。
「マチュ・・・・・」
「迷いは消えたんだね」
「・・・・・・さあ?」
私にも分からない。もうこの先悩まないか、迷わないかなんて。保証できない。
でも、進むしかない。
そのためには決着を付ける必要がある。
「リンリン!」「リンリン!!」
「キャアアアアッ!!」
ブライダンの兵士アーイー達が毎度のごとく街を荒らしまわっている。
しかし、今回は普段と違う。
「出てこないかなーアイツ」
元締めがノーワン怪人ではなく連邦の兵士ドゥーであることだ。
「ドゥー!貴様何を遊んでいる!!」
「ゲーツ」
「こんなことをしてる場合ではないのだぞ!サイコガンダムを使い、このコロニーを破壊するのが我々の役目だ!!」
「いいじゃん、まだ整備に時間がかかるんだから。それまでの暇つぶしだよ」
「そんなことをしてる最中に灰色の幽霊でも出てきたらどうする!!」
自由奔放なドゥーを叱咤するゲーツ。このやり取りだけで普段の関係性が見て取れる。
「現れたか!!」
「お前は・・・!」
「ジオンの黄色い恐竜の奴」
そこに現れたのはエグザベだった。街を荒らす奴らがいるとすっ飛んできたようだ。
「お前がいるということは・・・灰色の幽霊も近くにいるな?」
「ああ、探しても中々見つからなかったからな。お前たちから出てきてくれてありがたい」
エグザベがそう言う間もなく、上空から修復が完了したキケロガが飛んできた。
「等身大の兵士をMAで倒しちゃルール違反だよ」
「僕も気は進まないが、コロニーが壊される前に早めにケリを付けさせてもらう」
シャリア・ブルの駆るキケロガが飛来し、勝負は決まったように見えた。
ガシャアンッ!!
「!!」
しかしその瞬間、ビルの丸い窓から異空間が生じモビルスーツが現れ、キケロガを蹴飛ばした。
「あれは・・・ザク?」
そのモビルスーツはジオンの緑のザクであった。またもジオンからブライダンが盗み出したのか。キケロガとザクでは性能差で一瞬で勝負がつくように思えた。
「何だ・・・?あのスピードは・・・?」
しかしザクはキケロガのオールレンジ攻撃を俊敏な速度で避け続けていた。目測だがそのスピードは通常の3倍はあるように思えた。
「リミッターを全て外しているのか!?」
キケロガの攻撃を避けつつ、マシンガンで応戦するザク。そのパイロットから放たれる殺気に、エグザベは覚えがあった。
「ガリュードか!灰色の幽霊と互角とはな・・・」
「ガリュード・・・。あの銃の戦士か!!」
ザクに乗っているのは、カイ・シデンを撃った謎の銃の戦士。確かにただならぬ気配は感じたが、まさかシャリア・ブルに対し互角に立ち回れるとは思いもしていなかった。
「じゃあ、こっちはこっちでやろうか」
「ターゲットを処理次第、すぐに作戦に移れよ」
「分かったよ」
「「エンゲージ」」
【センタイリング!!】
【ジャッカー!!】
【ゴーグルファイブ!!】
ドゥーとゲーツはそれぞれ、スペードエースとゴーグルレッドに変身し、エグザベに襲い掛かった。
「くっ!エンゲージ!!」
【ゴジュウティラノ!!】
エグザベもゴジュウティラノに変身し、ティラノハンマーで攻撃を受け止める。
ジオンと連邦の戦争が始まろうとしていた。
キケロガで攻撃を加え続けるシャリア・ブル。その表情は険しいものだった。
「なるほど。私を足止めするために・・・」
マシンガンで無数の弾を射撃してくるザク。一発一発の狙いも正確なものであった。
「本気で殺さなければいけませんね」
軍人の貌となるシャリア・ブル。ザクのパイロットであるガリュードの殺気を彼もまた感じ取っていた。
「頑張るねお前」
「だがいつまで続くか!早めに処理させてもらうぞ!!」
「くっ!!」
私たちが来るまで、エグザベは一人で戦っていた。
「エグザベ!!」
「っ!?マチュ!!」
匂いを辿ってようやくあいつらのいる場所にたどり着いた。後ろにはニャアンとシュウジもいる。
「来たんだ、アマテ」
「ドゥー・・・」
やっぱりドゥーもいた。上ではヒゲおじがキケロガで戦っている。
今、目の前で戦争が起きている。
「生半可な覚悟なら帰りなよ。無駄に死ぬだけだよ」
「ぐっ、そうだ・・・。これは戦争だ・・・!君が無理して戦う必要はない・・・!!」
ドゥーもエグザベも・・・。人の覚悟を・・・。
覚悟・・・。
「・・・・・うるさい!!!!!」
戦争で人を殺す覚悟なんてできてない!でも!!!
「私は戦う!ドゥー!!あんたと全力でぶつかる!!!」
そう決めたんだ!!自分自身で!!!
「あんたらと!!この世界と!!!そして自分自身と!!!!!」
殺すためじゃない。生きるために戦う!!!
「私はもう逃げない!!!二人とも、行くよ!!!」
「うん」「オーケー!!」
「「「エンゲージ!!!」」」
【CLAP YOUR HANDS!!】
音楽に合わせて、テガソードを力強く叩く。
【ゴジュウウルフ!!】
【ゴジュウレオン!!】
【ゴジュウユニコーン!!】
「私の世界は・・・私が切り開く!!!」
その瞬間、指輪が赤く光り輝き、胸のサークルから狼を模した剣が出た。
【ウルフデカリバー50!!】
「ウルフデカリバー!!行くぞ!!!」
「来なよアマテ。どちらが優秀か、戦って証明しよう」
これは、私が私であるための戦いだ!!!
・小ネタ 飛行に走る車
マチュ「暴走してる車止めないと!!」
ニャアン「でもどうやって!?」
シュウジ「童謡聞かせてあげたら故郷へ想いを馳せて帰るんじゃない?」
エグザベ「そんなバカな……」
シャリア・ブル「まあものは試しに」
〜シャリア・ブルのめっちゃいい声の童謡ふるさと〜
車「プップープップー」
シュウジ「車、泣きながら帰ってったね」
マチュ、ニャアン、エグザベ「嘘ぉ!!!???」
シャリア・ブル「……フンス」←めっちゃドヤ顔