おっっっっっっっっ待たせしましたァ!!!
はい、およそ3ヵ月ぶりの投稿です。お待たせしてしまって申し訳ないです…
モチベとかの問題もあったんですけど、何より納得のいく文章が中々書けず、ズルズルと時間が過ぎていくばかり…おかげで夏も終わりそうです…
ぶっちゃけこの話もそこまで納得した文章が書けた訳ではないのですが、これ以上何も投稿せずにズルズルと引っ張るのはマズイと思ったので投稿しました。
気がつけば17000字を超えた長話になってしまったのですが、待たせた分のお詫びだと思って読んでいただけると幸いです。
それでは、ご覧下さい…m(_ _)m
衝撃的な出会いというのは、案外多く起こるものなのかもしれない。その思いを抱えるように、僕は目の前の人物を見続ける。
「ぱんぱかぱーん」という可愛らしい声と共に笑顔を向ける少女は、普通の人とは少し違う明るい光のような雰囲気を身にまとっていた。
「え、えっと…」
僕は一歩後ろに後ずさりながら、困惑の声を上げる。つい胸に添えてしまった手から感じる鼓動が、いつもより早く感じた。
どう反応すれば良いものか。僕は一生懸命考えようと頭をフル回転しようとするが、頭がワンワンと鳴いているような感覚のせいで中々考えがまとまらない。部屋は暑くないはずなのに体から変な汗が出てくる。
初めてユズさんと出会った時のような思考が停止する感覚とは違い、いつまでたっても考えがまとまらない感覚というのはもどかしいものだ。
そんなことを思いながらどれだけの時間がたったのだろう。僕の後ろを誰かが通り過ぎていく足音が聞こえたタイミングで、流石の少女もぎこちない僕の姿を不思議に思ったのか、未知の生き物を目の前にしたかのように首をコテンと横にかしげた。
「あの、大丈夫でしょうか…?アリスの顔に何かついてますか…?」
「…へっ!?いや大丈夫です、何もついていませんよ!?」
あぶないあぶない。つい少女のことをじっと見つめすぎていたようだ。これでは僕のことを不審に思っても仕方がない。
少し不意を突かれてしまったが、おかげで少し冷静になれたような気がする。ワンワンと鳴いていた頭が、少しずつクリアになっていく。これなら色々と動けそうだ。
コミュニケーションにおいて大事なのは、相手を知ることであると偉い人が言っていたような気がする。
いくらゲーム開発部の部室に見知らぬ誰かがいたとしても、まずはその相手のことを知ろうとしなければ始まらないだろう。
目の前の少女は自分のことを「アリス」と呼んでいるように思える。彼女の名前なのだろうか。僕は軽く深呼吸をし、下がった一歩を元に戻して聞いた。
「えっと、アリスさんでいいですか?」
「…!はい!アリスはアリスと言います!!」
どうやら合っていたようだ。名前を当てられて嬉しいのだろうか、目の前の少女改めアリスさんは少し前のめりになりながら笑顔を向けてきた。
その勢いにまた足を後ろに下げそうになるがグッとこらえ、アリスさんのことを色々と聞いていく。
「アリスさんはゲーム開発部の新入部員なんですか?今までみたことなかったので…」
「はい!アリスはゲーム開発部に所属しています!…其方こそ見知らぬものだが問おう、汝の名は何という?」
…なんか急にRPGの王様みたいな喋り方しだしたぞこの人。
話を聞く限り、どうやら彼女はゲーム開発部の新入部員で間違いないらしい。新入部員であるという言葉を聞いた僕はつい嬉しくなってしまう。ゲーム開発部に新たな仲間が加わったというのは喜ばしいことだ。
それにしてもあのお姉ちゃんたちが新入部員を見つけることが出来るとは思いもしなかった。何せ普段からゲーム三昧で勧誘らしきものをやっているところを見たことがなかったからだ。
元から新入部員を一人でも集めないとヤバいという話はお姉ちゃんたちから聞いていた。何がどうヤバいのか具体的な内容は教えてくれなかったが、ミドリお姉ちゃんとユズさんの焦燥具合から「あ、これ本当にヤバいやつなんだ…」という雰囲気はひしひしと伝わってきていたのだ。
それでも中々勧誘らしきものをしていなかったのは、大体モモイお姉ちゃんのせいであるといえる。勧誘活動しなくても大丈夫なのかと僕がモモイお姉ちゃんに聞いても、「まだ時間あるし、大丈夫でしょ」という謎の余裕ムードを醸し出しており、モモイお姉ちゃんが動かなければ動くに動けないミドリお姉ちゃんとユズさんが日に日に焦った表情をしていたのは記憶に新しい。
モモイお姉ちゃんは昔からそうなのだ。お姉ちゃんたちが小学生の頃、夏休みの宿題が出されたときは「あと25日もあるし、よゆーよゆー」とか言いながら毎日ゲームをしていた結果、夏休み残り数日になって半ベソかきながら大急ぎで宿題をやるのが才羽家の恒例行事になっていた。なんやかんや数日前までにはしっかり終わらせていたミドリお姉ちゃんをも巻き込んで行われるこの行事は夏の暑さすら凌駕する文字通りの激熱イベントであり、クーラーをつけていたのにも関わらず熱気で暑くなった部屋でぐったりしていた記憶がある。
ちなみに自由研究のテーマで「アオトの生態観察」と銘打った僕の行動観察日記を堂々と学校で発表した件についてはまだ許していない。
閑話休題。
新入部員としてゲーム開発部へとやってきたアリスさん。そのアリスさんも僕のことは気になるようで、RPGに出てくる王様のような口調で興味津々な顔をしながら自己紹介を求めてきた。
先ほどの「ぱんぱかぱーん」であったり、今の王様口調であったり、アリスさんは可愛い見た目に反して随分と癖が強いように思える。これがギャップというものなのだろうか。
お姉ちゃんたちも随分と面白い人を連れてきたものだと思いながら、名を名乗らないのも失礼なので僕も自己紹介をすることにする。
「僕の名前は才羽アオトって言います。よろしくお願いしますね、アリスさん」
「才羽…アオト…?」
すっかり冷静さを取り戻していた僕が堂々と自己紹介をすると、アリスさんは手を顎に近づけて考えるような素振りをみせた。
僕の名前に何か引っかかるものでもあったのだろうかと一瞬思ったが、才羽という名字を考えると引っかかるのも当然であろうという考えに至る。
そしてきっと、僕が才羽モモイと才羽ミドリの血縁関係者であることを察するのも時間はかからないだろうと予想すると、案の定たった数秒で何かに気づいたかのようにハッと顔を上げて僕に声をかけてきた。
「…!思い出しました!皆がよく話していたモモイとミドリの弟さんですね!!」
「…ふふっ、正解です。お姉ちゃんたちから僕のこと聞いていたみたいですね?」
「はい!とっても可愛い弟で、早くアリスに会わせたいって言っていました!」
「か、かわいい…」
かわいい。そう言われるのは悪い気がしないが、正直複雑な心境である。まだ10歳の子供だとはいえ、男なのだからカッコいいと言われたいという欲があるのは仕方がないことだろう。
そう思い意識をアリスさんの方に戻すと、気が付けばアリスさんが数歩こちらに近づいていた。
元々僕が見上げるようにアリスさんと接していたのが、近づいてきたことによって僕の顔が高層ビルを見上げるようにさらに上へと向く。未だ140㎝に届かない僕とアリスさんがこの距離で接すると、余計に身長差を感じる。
突然近づいてきてどうしたものかと思っていると、アリスさんが話しかけてきた。
「アリスはアオトに会えて嬉しいです!アオトよ、アリスのパーティに加わりませんか?」
グイッと顔を近づけてきてパーティ勧誘をしてきたアリスさん。
それに対して僕はこらえることが出来ずにまた後ろに一歩後ずさってしまった。しかし元々の距離か近かったこともあり、一歩後ろに下がった程度ではアリスさんとの近さは大して変わらない。
言動に一癖二癖あるとはいえ、アリスさんはとても可愛い顔をした人だ。そんな人に急に顔を近づけられたらどんな反応をしてしまうかは明白だった。
つい先ほど起きた、思考がまとまらず頭がワンワンなる感覚が再びこの身を襲う。今度は体だけでなく、顔まで異様に熱くなっているのがわかった。
心臓の鼓動も、手を添えなくともわかるほど早くなっており、いつか爆発してしまうのではないかという錯覚まで覚えてしまっていた。
思考が全くまとまらない中、なんとか返答しないといけないと思った僕は、ダチョウの脳味噌のようになってしまった頭で考え、アリスさんの問いかけに答えた。
「え、えっと……は、『はい』?」
「…!!ぱんぱかぱーん!!アオトがアリスのパーティに加わりました!!」
「な、仲間入りってことですか…?や、やったー?」
「はい!アリスも嬉しいです!!」
嬉しい。そう言うとアリスさんは両手で僕の手を取って上下にブンブンと振りながら喜びを表現する。その顔はまるで遊園地に遊びに来た無邪気な子供のようで、辺り一面を照らす太陽のような光を纏っていた。
僕は今どんな顔をしているのだろう。困惑か、戸惑いか、恥ずかしがっているのか、それとも笑顔か。今の自分がどんな自分であるかすらわからない、そんな異様な感覚に包まれた状態で、されるがままに腕を振られていた。
頭に響いていたワンワンと鳴くような感覚から一変、頭に血液が一気に集まるような感覚に加え、平衡感覚がつかめずグルグルこの場で回っているかのような感覚。
何もかもが正常に考えられない世界で、ただ目の前のアリスさんだけを認識できる僕は───
(惚れてまうやろぉぉぉぉぉぉ!!!!!)
…と、心の中でチャ〇カワイを召喚していた。
…いや、仕方がないと思うんですよこれは。
今まで生きてきた10年の中でここまで明確に好意をぶつけてきた相手は姉二人以外ではアリスさんが初めてではないだろうか。
そのアリスさんは可愛い顔、太陽のような笑顔、圧倒的スキンシップ、この3拍子をそろえたザ・光のような存在である。そんな存在が自分に会えて嬉しい仲間になってくれて嬉しいという好意をストレートにぶつけられてしまったら堕ちてしまうのも時間の問題というもの。
結局、何が言いたいのかというと…
(助けてお姉ちゃん……僕アリスさんのこと好きになっちゃう…!)
「アオトみーっけ!!」
「グフゥ!!?」
「助けて」という思いが通じたのか、アリスさんで思考を完全に支配されていた所に突如、何か大きな物体に衝突したような衝撃がこの身に走り、ぶつかった勢いを殺しきれず突っ込んできた物体と共に倒れこんだ。その衝撃につい僕も、ザクとは違ううめき声をあげてしまう。
勢いよく叩きつけられた背中。その背中からは冷たく硬い床の感触を感じられるも、胴体の方は柔らかく温かな感触に包まれている。背中の痛みをこらえながら目を開けると、何者かが僕の身体の上に覆いかぶさっていた。
ちらっと見える髪の毛は金色に輝いており、普段から鏡の前で見える僕の髪色と全く一緒のものであった。鼻から感じ取れる桃のような香りも、僕からすれば特別なものではなく毎日のように感じ取っていたものだ。
そう思考を巡らせていると、覆いかぶさっていた人物が体を少し離してきた。感じていた温かさが段々と冷めていくのが分かるが、代わりにその人物の全容が明らかになる。
頭に桃色の猫耳型ヘッドホンをつけている女の人。彼女は僕を、いたずらが上手くいった無邪気な子供のような笑顔で見つめてきた。その笑顔を見た僕はほんの少し呆れの感情と、安心という感情が胸の中を渦巻く。きっと僕も笑っていることだろう。
互いの視線がぶつかる。もしこれが恋愛小説や恋愛漫画とかなら心がときめくような甘酸っぱいシーンに映ることだろう。しかしそうはならない。何故なら目の前の人物が絶対に恋愛対象として見ることが出来ない人物であったからだ。
彼女は、家族だから。
「へへっ、久しぶりアオト!」
「うん、久しぶりモモイお姉ちゃん」
才羽モモイ。血のつながった才羽家三姉弟の長女と1カ月ぶりの再会を果たしたのだった。
―――――――――――――――――――――――
「あ、モモイ!」
「やっほ、アリス!ちゃんとお留守番してくれた?」
「はい!お留守番クエスト達成です!」
僕から体を離し、一緒に起き上ったモモイお姉ちゃんはアリスさんと会話をしていた。聞く感じ、モモイお姉ちゃんとミドリお姉ちゃんはアリスさんに部室のお留守番を任せてどこかに行っていたらしい。
モモイお姉ちゃんだけが部室に帰ってきたけど、ミドリお姉ちゃんはどこにいるのだろうか。
「ちょっとお姉ちゃーん!?先走りすぎだよー!」
「あ、ミドリー!おそいよー!」
「お姉ちゃんが早すぎるんだよ!アオトが来るからってはしゃいじゃって……あ、アオトだ」
そう思っていたのも束の間、部室棟の角からミドリお姉ちゃんが小走りで現れた。どうやらモモイお姉ちゃんがかなり急いで部室まで走ってきたようで、ミドリお姉ちゃんは置いてけぼりを食らってしまったようだ。
こうして少し遅れながらの登場になったミドリお姉ちゃんだが、どうやら僕のことに気づいたようだ。
「久しぶり、ミドリお姉ちゃん」
「うん、久しぶりだねアオト~」
「わぷっ…」
僕が手を振って再会を喜ぶと、ミドリお姉ちゃんが近づいてきて抱き着いてきた。モモイお姉ちゃんと同じように、何度も体感してきたこの感触。慣れてはいるが、やはり安心感というか、心が落ち着くセラピーのようなものを姉二人のハグから感じることが出来る。
姿はそっくりだが性格はまるで似ていない姉二人。だが僕を見つけては抱き着いてくる姿を見ると、やはりこの二人は見た目以外でも似ているところがあるのだなと思う。
才羽ミドリ。血のつながった才羽家三姉弟の次女との1カ月ぶりの再会。モモイお姉ちゃんほどのビックリするような衝撃はないが、むしろそれがミドリお姉ちゃんらしいと思いながら再会を喜び合った。
「モモイとミドリとアオトは仲良しさんですね!!」
「まあ、姉弟だからね」
僕とお姉ちゃんたちが抱き合う姿を見ていたアリスさんが仲良しさんだと呟いた。僕としても三姉弟の仲は良いものだと思っている。世間的には仲の悪い兄弟姉妹なんてザラにいるらしいので、こうして三人で仲良く過ごせることは恵まれているのではないだろうか。
そう思っていると、アリスさんから視線を感じる。僕がアリスさんの方を見ると、まるで鬼ごっこに混ざりたい子供のような顔をしてこちらを見ていた。
「羨ましいです…」
「アリス…?」
おっと?風向きが…
「アリスもアオトとハグが…「よし、部室に入ろうお姉ちゃん!!」…あれ?」
「うわっ、ビックリしたぁ…」
「ちょっと、急に大声ださないでよアオト!」
アリスさんが何か言おうとしたところを僕が大きめの声で打ち消させてもらった。お姉ちゃんたちをビックリさせてしまったことに関しては申し訳ない。特にミドリお姉ちゃんはかなり近い距離にいたので、大声が一層耳に響いたに違いないので、申し訳なさも大きい。
「ごめんごめん……さ、行こうよみんな!」
「ちょ、ちょっとアオト!?」
「急にどうしたっていうのさー!」
他の皆に有無を言わさず部室に入るように促す。先頭を歩く小柄な僕が、僕よりも大柄なお姉ちゃんたちを引き連れるように部室の中へと進んでいく。
その際、ちらっとアリスさんの顔を見た。流石に話の腰を折った罪悪感はあるため、アリスさんが落ち込んでいないかを確認するために見ると…
「アリスもアオトとハグがしたかったです…」
…と、お願い事を聞いてもらえなかった子供のような悲しい顔をしていた。
(ごめんなさいアリスさん…)
──もしアリスさんのハグを受け入れていたら底なし沼にはまるように堕ちるところまで堕ちてもう戻ってこれなくなるんじゃないかって思ったんです…
──今度また埋め合わせしますから許してください…
さらに膨れ上がった罪悪感を抱えたまま僕は1カ月ぶりの部室へ足を踏み入れた。
―――――――――――――――――――――――
ゲーム開発部。
ミレニアムサイエンススクールに登録されている部活の一つで、読んで字のごとくゲーム開発を目的に設立された部活である。
僕の姉である才羽モモイと才羽ミドリ、部長である花岡ユズと新しく加入した天童アリスの四人によって日々ゲーム開発に勤しんでいるようだ。
そんなゲーム開発部のメンバーはゲームを作るだけあって皆ゲームが大好きな集団である。アリスさんに関しては今日知り合ったばかりなので何とも言えないが、あの口調とゲーム開発部にいたい意思を見るにゲームが好きな部類なのだろう。
そんなゲーム大好き少女が集まったこの部活に与えられた部室は、予想するまでもなくゲーム関連の物に埋め尽くされている。棚にはゲームソフトが所狭しと置かれており、その景観はまるで本で埋め尽くされている図書館の棚のようである。
また他の棚にはレトロなものから最新のもののゲーム機が置かれており、『Wee』『ゲームガールカラー』『ゲームガールズアドバンスSP』『プライステーション』等々、ゲーム好きからすれば宝の山に思えるラインナップである。
そして床には今遊んでいる最中のゲーム機が散らばっており、コントローラーや電源の配線が蛇のように絡まっていた。お世辞にも綺麗な状態とは言えず、見る人によっては汚い部屋だと感じる様相である。
「お邪魔しまーす…」
久方ぶりに足を踏み入れた部室は大きく変わった様子もなく、少し変わったと言えるのは部室の端にSF映画に出てきそうな近未来的巨大武器が立てかけられているくらいだろう。あれはモニュメントだろうか。それ以外は変わらずの少し汚い部室であり、そのちょっとした汚さに懐かしさすら感じた。
モモイお姉ちゃんをゲームでボコボコにした思い出、ミドリお姉ちゃんとゲームで熱い戦いをした思い出、ユズさんにゲームで色々と教わった思い出、せいぜい数週間程度しか部室で過ごした思い出はないのだが、この1カ月という長い空白はそれらを思い出させて寂しいと感じさせるには十分すぎる時間であり、帰ってきたという嬉しさが胸の内からこみあげてくる。
そう感慨に更けていると部室のどこからか声が聞こえてきた。
「あ、アオトくんいらっしゃい~」
聞き覚えのある声。可愛らしくもあり、どこか弱々しさをも感じられる声が部室に置いてあるソファーから聞こえてきた。久方ぶりに来訪した僕を歓迎してくれている。
しかしソファーから聞こえてきたはずなのだが、その姿は見えない。寝ているのだろうか。しかも元が弱々しい声とはいえ聞こえた声は一層弱々しく聞こえた。1カ月前に聞いた声に比べて覇気が全然ないのだが…
少し心配になる気持ちを胸に僕はソファーの近くまで進む。大した距離はないのですぐにソファーの近くまで寄り、声をかけてきた人物の姿が明らかになった。
「あはは…久しぶりだねアオトくん…」
「あ、え、えっと…?久しぶり、ですね…?ユズさん…?」
花岡ユズ。ゲーム開発部の部長を務めており、僕の姉二人がゲーム開発部へと入部を決めた理由の一つとなった人物でもある。僕としても、非常に衝撃的な出会いをした人物だという印象が強い。あの時は半ベソかいてしまって申し訳なかったと思っている。
性格はかなり大人しめ…というよりは人見知りな部分が強い印象を受ける。ゲーム開発部のメンバーや僕と話すときはそこまで問題はないのだが、他の人相手だと人見知りを発動してしまい、終いにはロッカーの中に隠れてしまうという徹底ぶりである。
対してゲームの腕はかなりの力量を誇っており、その正体はかの有名なゲーマーである「UZQueen」である。僕も「UZQueen」のことは知っていたし、少し憧れていた部分もあったのでユズさんが「UZQueen」であることを知ったときはド肝を抜かれたものだ。
そんなユズさんと1カ月ぶりの再会を果たしたわけだが、そのユズさんの姿を前に僕は困惑の感情を隠せなかった。
まず、ユズさんはソファーに横たわっていた。部室に入って見えるソファーの背もたれから姿が見えなかったのはそのためだろう。しかし、ただ横たわっていただけなら別に驚きはしない。では何に驚いたのかというと、明らかに死にかけているその顔であった。
目を見ると明らかに光がともっていない。むしろ濁ったような色をしており重病人のような印象を受ける。口角も、僕を見ている時は上がっているが明らかに上がりきっていない。口角を上げる余裕すらないとでも言うのだろうか。
どうりでユズさんの声に覇気が全く感じられないわけだ。
「いや、ど、どうしたんですかユズさん?そんな今日が峠ですと言わんばかりの重病人みたいな雰囲気を醸し出して…」
「い、いやちょっとね…」
「はい…」
「久しぶりに運動したら疲れちゃって…」
「…はい?」
運動したら疲れた。ユズさんの口から語られた言葉だが、とてもじゃないが運動しただけには見えない疲れ方をしている。
「いや…え?運動するだけでこんなになっちゃうんですか?」
「うん……全然身体動かないし、アオトくんの声もすごく遠のいて聞こえるかな…」
「フルマラソンでも走ってたんです?」
いやどういうことなんだ。いくら毎日ゲームばかりして運動なんか一切やらなさそうなゲーム開発部とはいえ、運動しただけでこの疲れっぷりはいかがなものか。
これはゲーム開発部の運動不足問題を重く見ないといけない。そう思った僕は最近発売されたリング型の特殊なコントローラーを使った運動健康型ゲームの普及をしなくてはならないだろうと考える。
しかし、ゲーム開発部が運動するとはいったいどういう風の吹き回しなのだろうか。何かそうせざる負えない状況があったということなのか。
「ただいまー。ユズ、大丈夫~?」
「ユズちゃん、まだ動けそうにない…?」
「おかしいです…宿にいるはずなのにユズの体力が回復しません…」
後方からお姉ちゃんたちの声が近づいてきた。みんな心配そうにソファーの背もたれから身を乗り出して横たわっているユズさんを見る。
「うん、あまり大丈夫じゃないかも……動けるまであと1週間はかかるかな…」
「いや、時間かかりすぎでしょうユズさん。いくら年を取った人でも1週間はかかりませんよ?」
「でもユズ、流石に寝たきりはダメだと思うな?」
「そうだよユズちゃん。せめて今日一回くらいは立って歩こう?」
「でも……いま足が動かなくて…そもそも足の感覚が全く…」
「もう病院行きましょう?ユズさん」
足の感覚がないのはもう終わってるんですよユズさん。お姉ちゃんたちも流石に同じことを思ったのか、ユズさんを見る心配している表情に軽く呆れの感情が加わったように感じる。
「あ、『G.Bible』はどうだった?解析できそう?」
「えっ?あー、まだ時間かかるっぽいんだよね~」
「ヴェリタスのみんなも案外苦戦してるみたいで…」
『G.Bible』…?今日初めて出てきた聞いたことない単語に僕は首をかしげる。
「『G.Bible』…?それは何なの、モモイお姉ちゃん」
「ん?あーそっか、アオトは知らないんだよね…」
僕がそうモモイお姉ちゃんに聞くと、少しバツの悪そうな顔をしてモモイお姉ちゃんは答えた。心なしか隣にいるミドリお姉ちゃんまで同じような表情をしている。
まるで後ろめたいものを抱えているかのようだった。
「えーっと、どこから話したものか…」
「僕としては、この1カ月にあったことを全部話してもらいたいんだけど…」
「そうだよねぇ…」
「お姉ちゃん…アオトには全部話したら?」
そう、僕としてはこの1カ月に起きたことは知りたいところであった。特に気になるのはアリスさんとの出会い。勧誘など全くもってやってこなかったゲーム開発部が一体どうやってアリスさんを拾ってきたのか、僕としてはとても気になるところだ。
もちろん、『G.Bible』のことだって気になるのだが…
「……わかった、話すよ。この1カ月に何が起きたのか」
「あ、うん……もしかして身構えて聞かないといけないタイプだったりする…?」
「…割と?」
「……」
怖い。一体お姉ちゃんたちは何をやらかしたというのか。まさか犯罪まがいのことをやらかしていたわけではないだろうな。
しかしモモイお姉ちゃんは普通の人には考え付かない行為を平然とやるような才能があったりするので、犯罪行為をやってないとは信じきれないところがどうにもこそばゆい。
ワクワク感よりも恐怖感が勝る気持ちで僕は話を聞くことになった。
「どこから話そうかな……そう、あれは雪の降る寒い日───」
「今は夏だよ」
―――――――――――――――――――――――
廃部の危機。これがいわゆる事の発端だった。
ミレニアムサイエンススクールの部活動規則には、部活動として認められるための規定人数というものが存在しているらしい。その人数は、4人。
僕がゲーム開発部に通い始めたころは、モモイお姉ちゃんとミドリお姉ちゃんとユズさんの3人で活動をしていた。しかしこれは規定人数の4人を下回っていた人数であり、そのことが理由でゲーム開発部は正式な部活動として認められていなかったらしい。
さらにミレニアムの部活動では、その部活動に合った優秀な成果を出すことを求められていた。運動部では大会で結果を出すこと、技術開発系の部活では研究結果を発表するコンクールなどで賞を取ること等、その部が存在するに相応しいかを判断するためにもそういった成果を求めているのがミレニアムの部活動なのだ。いわば放課後に仲間で集まってワイワイやるだけのようなエンジョイ系の部活動は存続できないような仕組みになっている。
ここで僕が通っていた間のゲーム開発部の活動を振り返ってみる。お姉ちゃんたちがやっていた活動は、放課後みんなで部室に集まりワイワイとゲームをする。
以上。
優秀な成果どころか成果そのものすら僅かなもののみで、規定人数にすら達していないゲーム開発部は廃部寸前2アウトのところまで来ていたのだ。成果自体はあったのだが、それもクソゲーランキングで1位を取った「テイルズ・サガ・クロニクル」のみ。これでは部を存続させるだけの成果としてはあまりにも弱かったのだ。
そんな緊迫していた状況に置かれていた中でも、お姉ちゃんたちが肝心のゲーム開発をしている姿を僕は見たことが無かった。当時は何も知らなかったとはいえ、あまりにもそういったことをしている痕跡がなかったため、「僕が遊びに来ていることに気を使ってゲーム作りを止めているのなら、しばらく遊びに行くのは控えようか」とお姉ちゃんたちに聞いたこともある。
それに対して皆は「アオトと一緒にいると楽しいから気にしなくていい」と言ってくれた。特にモモイお姉ちゃんは、「アオトが来ると楽しいからむしろ来てほしい!ユウカの機嫌も良くなるしね!!」と熱弁していたので、僕としても嬉しかったためこうして遊びに行っていたのだ。ユウカさんの機嫌が良くなると言っていたモモイお姉ちゃんの言葉の意味があの時はよく分からなかったが、今回の話を聞いてよくわかった気がする。
どうやらユウカさんはゲーム開発部へ頻繁に顔を出してはこのままでは廃部になる旨の警告を何回もしていたらしい。そういえば、僕が遊びに来ていたときもユウカさんが何回か顔を出していたような気がする。しかしどの場面でもユウカさんは特に何も言わずに立ち去っていくことがほとんどだった。
おそらく僕に気を使ってくれていたのだと思う。いくら存続が危ぶまれるゲーム開発部とはいえ、僕がいるときに話すべき内容ではないと思ってくれていたのだろう。ユウカさんは優しい人だ。
しかしこれは、僕が部室にいるかどうかで警告があるかないかが決まるということである。ゲーム開発部からすれば聞きたくもない警告は、僕がいる限り聞くことはない。モモイお姉ちゃんの「ユウカの機嫌が良くなる」とはこのことだったのだ。
しかし、モモイお姉ちゃんもここまで影響があるとは思ってもいなかったらしく…
「いやごめん…ユウカの機嫌が良くなるからって冗談半分のつもりで言ったつもりだったんだけどまさかここまで効果があるなんて……ユウカから逃げるためにアオトを利用してる感じになっちゃった……ホントにごめん…」
と普段あまりみせない本当に申し訳なさそうな顔で謝ってきた。当時の僕としては一体何のことを言っているのかわからず、いきなりモモイお姉ちゃんが謝ってきたのだから状況を理解できず相当混乱した。
今回の話を聞いて、僕に謝ってきた理由も理解できたし、悪気がなかったのも分かっているので特に問題はないのだが。
……話を戻そうと思う。
僕がミレニアムに来られなくなった後もユウカさんによる警告活動が長きにわたり行われたが、それでも改善が見られなかった。故にユウカさんもゲーム開発部に堪忍袋の緒が切れたのだろう、正式な廃部が言い渡された。
流石に状況を重く見たのか、モモイお姉ちゃんを中心に猛反発をするも、改善の兆しが見えないゲーム開発部が悪いという至極全うな理由になすすべなく沈黙。そのままゲーム開発部の廃部は決定的なものになり、近日中に部室を明け渡すように言い渡されたのだった…
が、それでもと言わんばかりに食い下がったのがモモイお姉ちゃんであった。モモイお姉ちゃんは、部員の確保と存続に足りうる成果を出すとユウカさん豪語したのだが、その成果というのは「ミレニアムプライス」の受賞であった。
ミレニアム中の部活が各々の成果物を競い合うミレニアムでも最大級のコンテストである「ミレニアムプライス」。そのコンテストでゲーム開発部が受賞することは「高校球児がメジャーリーグに出る」レベルで難易度が高い話らしいのだが、ユウカさんはその話を了承。「ミレニアムプライス」の受賞でゲーム開発部の廃部が撤回される展開となり、首の皮が一枚つながったのだ。
その鬼難易度である「ミレニアムプライス」の受賞。それを成し遂げるためには切り札のようなものがなければならなかったのだが、その切り札をモモイお姉ちゃんは用意していたらしい。その切り札というのが伝説のゲームクリエイターが作ったとされるゲームの聖書「G.Bible」であった。
その「G.Bible」を手に入れるため、モモイお姉ちゃんとミドリお姉ちゃんは廃墟に向かう形となったのだが、そこに新たな助っ人を用意していた。その助っ人というのが、かの有名なシャーレの先生であった。
一体どんなマジックを使って先生を呼び寄せたのかは分からないが、その3人で廃墟に向かったところ、とある場所で眠っている少女を見つけたらしい。
その少女こそが今ゲーム開発部で楽しそうに活動している「天童アリス」その人であった。
その後アリスさんを部室にお持ち帰りした御一行であったが、ここでモモイお姉ちゃんが驚きの行動をする。なんと当時まだ無機質無感情であったというアリスさんをミレニアムの生徒に偽造し、ゲーム開発部の部員として迎え入れるという荒業をやってのけたのだ。
さらにミドリお姉ちゃんはアリスさんに「テイルズ・サガ・クロニクル」やその他多くのゲームをプレイさせ、今のアリスさんの人格を形成させるというとんでもない錬金術をやってのけた。
ユウカさんによるアリスさんの審査も通り、こうしてゲーム開発部の部員は4名となった。これで部の存続条件の一つを達成したわけだが、まだ「ミレニアムプライス」の受賞という問題も残っている。
その問題が残っていたことを改めて突き付けられたゲーム開発部は、前回の3人にユズさんとアリスさんを加えた5人で、前回廃墟に行った際は入手できなかった「G.Bible」を求めて再び廃墟へ向かった。前回訪れたアリスさんが眠っていた場所にて「G.Bible」を入手することが出来たゲーム開発部御一行。
ちなみに「G.Bible」を持って帰る際にデータをモモイお姉ちゃんの「ゲームガールズアドバンスGP」に移したそうなのだが、その際、モモイお姉ちゃんの「ゲームガールズアドバンスGP」に保存されていたセーブデータが全削除されたらしい。可哀そうに、南無~
そしてこの廃墟へ大冒険という名の運動をしたユズさんは疲労で死にかけているのであった。日頃の運動不足が、身体にどの様な影響を及ぼすのかがよく分かる。
ここまでの話を聞いて、相当濃い1カ月を送っていたものだというのが僕の感想だった。淡白な感想に思えるだろうが、こういう感想しか言えないほど情報が濃すぎてまとめきれないというのが本音である。
「いやなんか…すごい日々だったね?」
「いやあ、アオトもそう思う?大変だったんだから~」
「たはは」と少しおちゃらけた態度でモモイお姉ちゃんは言った。
「大体モモイお姉ちゃんのせいな気もするけど」
「あう…」
僕の言葉に図星を突かれたような声を上げたモモイお姉ちゃん。どうやらこの状況をつくってしまった自覚はあるようだ。
そもそも廃部云々に関して言えば、モモイお姉ちゃんがもっと危機感を持って事に当たっていれば少しはマシな状況になっていたかもしれないのだ。それでも夏休みの宿題を最後まで残しておくタイプのモモイお姉ちゃんに余裕を持たせるということを期待するのは酷な話なのかもしれないが。
「僕も色々と言いたいことはあるけど…とりあえず一つだけ。アリスさんは大丈夫なの?」
「え、アリス?」
「うん。だってアリスさんの編入って不正もいいとこだよね?公にバレたらまずくない?」
ゲーム開発部がどうなってしまうのかはかなり心配ではあるのだが、何より心配なのはアリスさんのことであった。
もちろんアリスさんの正体がわからないことによる不安感が全くないわけではないのだが、今の楽しそうに周りを明るく照らす光のようなアリスさんを見ていると然したる問題ではないと思える。やはり心配なのは、アリスさんの迎え入れ方だった。
お姉ちゃんたちがアリスさんを迎え入れた方法はハッキングによる偽造。法も秩序もかなぐり捨てた圧倒的な不正である。金さえ払えば入学させてくれるような裏口入学とは次元が違うのだ。
なぜかユウカさんが認めてくれているので、実質セミナー公認としてミレニアムの生徒となっているが、実際の彼女は経歴不明、怪しさ満点、不正で入学。公にバレてしまえばヴァルキューレ案件になってしまうような状態なことには変わらない。
「うーん…確かにそうだけどぉ…」
「“大丈夫、アリスのことならシャーレが公認、つまり連邦生徒会も公認しているようなものだから問題ないよ”」
「…えっ?」
アリスさんの件についてモモイお姉ちゃんと話していたら不意に、視界の外から聞いたことのない声。その声はとても落ち着いた雰囲気を醸し出しており、女性とは感じられない低めの声だった。
声のした方を振り返ると、そこにはスーツに身をこなした一人の大人が立っている。僕たちに比べて生きている年数が違うのだとハッキリと分かる大人な顔つき。お姉ちゃんたちとは比べ物にならないほど大きな背丈。
そしてその人はこのキヴォトスでは珍しい、僕と同じ「男性」だった。
「あっ、先生!」
「先生」、そう高らかに放ったモモイお姉ちゃんに釣られて他の皆も「先生!」と声をあげていく。声音でわかる、皆どれも嬉しそうな声だった。
対して僕は目の前に知らない大人がいることに混乱して固まっていた。同じ男性だからか、ユズさんやアリスさんと初めて会った時のような混乱具合ではないが、それでも目の前の人物が何者かという情報を処理するために頭を回すことで必死だった。
「えっと…」
「“君がアオトくんかな?モモイとミドリから話は聞いているよ”」
目の前にいる人物に呆気にとられていると、その男性から声をかけてくれた。
目線を僕に合わせて少し屈んで話すその男性の顔は、とても穏やかな顔をしていた。モモイお姉ちゃんやミドリお姉ちゃんとは違うけど、どこか安心できる表情。まるで色々な人に手を差し伸べる仏のような存在なのではないかと雰囲気だけで察してしまうほどだ。
「あ、えっと、才羽アオトです…お姉ちゃんたちがいつもお世話になっております…」
「“うん、私はシャーレで先生をやっている者だよ。よろしくね、アオトくん”」
「……!シャーレの先生…!」
目の前の人物がシャーレの先生だと名乗って数秒、僕はようやく目の前の人物が誰なのかを処理することが出来た。
確かにさっきまでのモモイお姉ちゃんの話にも、シャーレの先生が協力者であるということは聞いていた。しかし、最近話題に上がっているシャーレの先生に協力を仰げたというのが僕は信じきれなくて、半信半疑の状態になっていたのだ。
だがこうして実際に出会って、色々なメディアで見てきた顔と同じだと理解することが出来たのだった。
治安が悪化して遊びに行けなかった頃、その悪化した治安を良くしてまたミレニアムに遊びに行けるようにしてくれた存在。恩人ともいえる人に出会えた僕はテンションが上がっていた。
「あなたがシャーレの先生だったんですね!会えて嬉しいです!」
「“ははっ、そう言ってもらえるなんて嬉しいね”」
「ふふふ、ついにアオトも先生に出会っちゃったかー」
「「ちゃった」ってなにさ「ちゃった」って…でも、どうして先生がここにいるんですか?ゲーム開発部に協力してくれた理由も分からないですし…」
謎のからかいをするモモイお姉ちゃんを軽くいなして先生に問いかける。
なぜ恐らく多忙に多忙を重ねているであろう先生が、ミレニアムにある数多の部活の一つに過ぎないゲーム開発部に協力してくれているのか。僕にはよくわからなかった。
「“ゲーム開発部が困っているから協力したまでだよ。廃部になるのは悲しいからね”」
「…困っているからって……それだけの理由でここまで協力してくれたんですか…?」
「“うん、それ以外に理由はいるかい?”」
「………そっか、お姉ちゃんたちを助けてくれてありがとうございます、先生」
「“ふふっ、君はとても礼儀正しい子だね…どういたしまして”」
そう言って先生は僕の頭を撫でた。なんだかこそばゆいが、悪くない感覚だ。
ただお姉ちゃんたちが困っていたから助けてくれた。その言葉を聞いたとき、自分のことではないはずなのに嬉しくて胸が熱くなった。
誰にでも手を伸ばすような仏のような人。先生の穏やかな表情を見た時僕はそう思ったが、あながち間違いではないかもしれない。
「そういえば先生、今までどこに行ってたの?なかなか来ないな~って思いながら待ってたんだけど」
「“ごめんごめん。ちょっとヴェリタスの子たちと話してたんだ”」
モモイお姉ちゃんの問いに笑顔で答える先生。やはりそれなりに一緒に活動していたからなのだろうか、ゲーム開発部と先生は割と打ち解けているように思える。
「“あ、そうそう。ヴェリタスの子たちから伝言、「解析にまだ時間かかりそうだから他で時間潰してて。完了したら連絡するから」だそうだよ」
「マキたちでもこんなに苦戦するようなものだったとは……分かった、ありがと先生!」
おそらく「G.Bible」の話だろう。さっき「G.Bible」をヴェリタスに解析してもらっていると話していたので、その解析に時間が掛かっているということらしい。
「でもそれまで何して時間潰してようか…ゲームでもする?」
「“それもいいけど……アリス”」
「…?どうしましたか先生?」
「“アリスの武器、少し使ったら一回見せてほしいってウタハに言われていたよね?ちょうどいいタイミングじゃないかな?」
「…!そうでした!ウタハ先輩にメンテナンスのクエストを依頼されていたのでした!」
そう言うとアリスさんは部屋の端に立てかけられていた巨大武器に近づいて───
「~♪」
軽々と持ち上げ背負った。
「……!?えっ、あれってモニュメントじゃなかったの!?」
「え?何言ってるのさアオト、あれは立派なアリスの銃だよ?」
そう言うモモイお姉ちゃんに僕は驚きを隠せなかった。何かのゲームで出てきた武器のモニュメントだと思っていたものが実は本物の武器ですと言われたら驚くのも無理はないだろう。
「いや、え?撃てるのこの銃?ていうか重くないの?」
「140㎏」
「は?」
「140㎏あるよ、あの武器」
「……」
140㎏という言葉を聞いた途端、あまりの衝撃に絶句してしまった。140㎏という重さなど、僕どころかキヴォトス中の誰も簡単に持ち上げることなど出来ないだろう。
それをアリスさんは、これからお出かけするお供のカバンを背負うような軽さであの銃を背負ったのだ。あの華奢な体格からは想像できない馬鹿力に頭が混乱しそうになる。
「……」
「…?どうしましたかアオト?このスーパーノヴァが気になりますか?」
「スーパーノヴァ?」
ついジッとアリスさんのことを見つめていたところ、それに気づいたアリスさんが声をかけてきた
「はいこの銃の名前は『光の剣:スーパーノヴァ』です!」
『光の剣:スーパーノヴァ』
どうやらこの銃の名称らしい。改めてこの銃のことをよく見てみる。白と基調としたカラーに、所々カラーリングされている青色が近未来感を増長させている。
そして何よりこの巨大な銃身。宇宙規模の世界観を連想させるほどの巨大な銃身に、放たれる一撃はまさに全てを破壊する圧倒的な火力であると想像でき、そこから感じるロマンが僕の心を滾らせる。そして『光の剣:スーパーノヴァ』という名称。絶対最強の必殺技だと感じるその名前、ロマンを感じるその見た目、全ての要素が僕に心にクリティカルヒットし…
「カッコいい…!!」
すっかり僕はスーパーノヴァに惚れてしまっていた。
「…!アオトもこの武器を気に入ってくれたのですね!嬉しいです!」
「あー、アオト好きそうだもんねこの銃…」
アリスさんもこの武器が気に入っているらしく、興奮している僕に同調するように嬉しそうにしていた。
「おーい二人ともー、そろそろ行くよー」
「あ、待ってくださいモモイ、ミドリ、先生!」
そんな中、いつの間にか準備を済ませていたモモイお姉ちゃん、ミドリお姉ちゃん、先生がドアの前で僕たちを待っていた。
アリスさんは慌ててお姉ちゃんたちの所へ小走りに向かっていく。僕もそれに続いて向かおうとするが、その前に寝込んでいるユズさんにも声をかけようと思った。
「えっと、ユズさんは…」
「………ごめん、動けない……」
「あ、はい」
どうやらユズさんは本当に動けないらしく、部室で休んでいるらしい。
相も変わらず死にそうな顔をしているユズさんが復活する日は来るのだろうか。心配と少しの呆れの感情を抱えながら、お姉ちゃんたちのいるドアの近くまで向かう。
「ところで結局どこに行くんだっけ?」
「エンジニア部だよ!」
エンジニア部、これから向かうのはそういう部活のようだ。名前から察するに、何かを作っているような部活なのだろうか。
「それはどういった部活なの?」
「そうだね…一言で言えば『光の剣︰スーパーノヴァ』を作った部活かな」
「…!それって…!」
「ふふふ、私たちがこれから行く場所はね──」
「アオトが好きそうな場所だよ!」
アリスの話し方が分からない…これで本当に合っているのか…?正直上手く書けてる自信が無いです…
とりあえず完結まではちゃんと書きたいなと思っているのですが、ペースはかなり遅いかもです…
次回もいつ投稿できるか分かりませんが、とにかく頑張ります!
とりあえず次回はエンジニア部でのお話です。原作にはないお話ですが、楽しんで書かせていただきます。
ではまた次回、会える日まで〜(・ω・)ノシ